説明

歩行型草刈り機

【課題】 草刈り開始時と停止時における操作レバーの操作工数を減らし、作業効率を高めることができる歩行型草刈機の提供。
【解決手段】 ハンドル9部付近に刈刃クラッチレバー95とスロットルレバー94を備えた歩行型草刈り機において、刈刃クラッチレバー95のOFF状態からON状態への切り換えに連動してスロットルレバー94をOFF状態からON状態に切り換える連動機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行型草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行型草刈り機のハンドル部付近には、デッドマンクラッチレバー、スロットルレバー、刈刃クラッチレバー、走行レバーなどの操作部が備えられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−167131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、それぞれの操作レバーはそれぞれが独立して操作可能な構造であったため、以下に述べるような問題があった。
すなわち、刈刃を回転させて草刈りを開始するためには、刈刃クラッチレバーと刈刃の回転スロットルレバーをそれぞれ個別に操作する必要があり、また、草刈りを停止する際も両レバーをそれぞれ個別に操作する必要があるため、レバー操作が面倒であるという問題点があった。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、草刈り開始時と停止時における操作レバーの操作工数を減らし、作業効率を高めることができる歩行型草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、ハンドル部付近に刈刃クラッチレバーとスロットルレバーを備えた歩行型草刈り機において、
前記刈刃クラッチレバーのOFF状態からON状態への切り換えに連動してスロットルレバーOFF状態からON状態に切り換える連動機構を備えることを特徴とする手段とした。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、
前記連動機構は、刈刃クラッチレバーとスロットルレバーとが刈刃クラッチレバーの中途部に連結された第1スロットル連動アームとスロットルレバーの中途部に連結された第2スロットル連動アームを介して連結され、
前記刈刃クラッチレバーがOFF状態で第2スロットル連動アームの先端側に備えた係合ピンが第1スロットル連動アームの先端に備えたスライド溝の一端に係合することで、刈刃クラッチレバーのON側への回動操作に連動してスロットルレバーをON側に切り換え操作するように構成されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明では、上述のように、刈刃クラッチレバーのOFF状態からON状態への切り換えに連動してスロットルレバーOFF状態からON状態に切り換える連動機構を備えたことで、刈刃クラッチレバーをON操作するだけで、スロットルレバーをON状態に切り換えることができる。
これにより、操作レバーの操作工数を減らし、作業効率を高めることができる。
【0009】
請求項2記載の発明では、上述のように、刈刃クラッチレバーがOFF状態で第2スロットル連動アームの先端側に備えた係合ピンが第1スロットル連動アームの先端に備えたスライド溝の一端に係合することで、刈刃クラッチレバーのON側への回動操作に連動してスロットルレバーON側に切り換え操作するようにしたことで、刈刃クラッチレバーがOFF状態のときは、係合ピンがスライド溝に沿って相対移動するため、スロットルレバーを単独でON側へ操作することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例の歩行型草刈機の全体を示す平面図である。
【図2】実施例の歩行型草刈機の全体を示す正面図である。
【図3】実施例の歩行型草刈機の全体を示す背面図である。
【図4】実施例の歩行型草刈機の全体を示す右側面図である。
【図5】実施例の歩行型草刈り機を示すカバーの一部を外した状態の平面図である。
【図6】図5において刈取部を横方向いっぱいにスライドさせた状態を示す平面図である。
【図7】実施例の歩行型草刈り機を示すカバーの一部を外した状態の斜視図である。
【図8】図7において刈取部を横方向いっぱいにスライドさせた状態を示す斜視図である。
【図9】実施例の歩行型草刈り機における刈取部を上昇させた状態を示すカバーを外した状態の側面図である。
【図10】図9における刈取部を下降させた状態を示す側面図である。
【図11】実施例の歩行型草刈り機における刈取部側を正面から見て時計方向にローリングさせた状態を示す正面図である。
【図12】実施例の歩行型草刈り機における刈取部側を正面から見て反時計方向にローリングさせた状態を示す正面図である
【図13】スライドロック機構の詳細及び作動を示す説明図である。
【図14】遠隔操作機構の詳細及び作動を示す説明図である。
【図15】スロットルレバー連動機構の詳細及び作動を示す説明図である。
【図16】刈刃クラッチレバー連動機構の詳細及び作動を示す説明図である。
【図17】刈刃への動力伝達構造を示す斜視図である。
【図18】刈刃への動力伝達構造を示す正面図である。
【図19】図18のS19−S19線における縦断側面図である。
【図20】デッドマンクラッチレバーと走行レバーとの関係を示す平面図である。
【図21】デッドマンクラッチレバーと走行レバーとの関係を示す縦断側面図である。
【図22】カムプレートを示す斜視図である。
【図23】走行段階プレートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
まず、この実施例1の歩行型草刈り機を図面に基づいて説明する。
この歩行型草刈り機は、クローラ(駆動輪)11による走行駆動部1と、先端側に左右一対のキャスター21、21を備えた支持フレーム2と、刈刃31を備えた刈取部3と、横スライド機構4と、昇降機構5と、ローリング軸受け機構6と、ロック機構7と、昇降機構5の遠隔操作機構8と、ハンドル9と、を主な構成として備えている。
【0013】
さらに詳述すると、クローラ11による走行駆動部1にはエンジン12、エンジン12と直結されたトランスミッション13などを備え、この走行駆動部1の上部に操舵などの操作を行うハンドル9が設けられている。
【0014】
支持フレーム2は、走行駆動部1に対しローリング軸受け機構6を介してローリング自在に連結されている。
このローリング軸受け機構6は走行駆動部1側のローリング軸受け61と、ローリング軸受け61に対しローリング可能に連結された支持フレーム2側のローリング軸62とで構成されている。
そして、支持フレーム2は、ローリング軸受け機構6におけるローリング軸62に対し横スライド機構4を介して横方向スライド可能に連結されている。
【0015】
横スライド機構4は、ローリング軸62の前後に平行状態で備えた前後2本のレールガイド62a、62bに沿って横スライド可能となっている。
また、この横スライド機構4には、スライドロック及び解除を行うロック機構7を備えている。
このロック機構7は、レールガイド62bに備えたスライドロックピン71に対し、支持フレーム2側に備えたスライドロックアーム72に備えた係合部72aを係合させることにより、支持フレーム2の横スライドがロックされるようになっている。
すなわち、スライドロックアーム72は、付勢手段(コイルスプリング)74により常時スライドロックピン71に係合する方向に付勢されることにより、支持フレーム2の横スライドがロックされるようになっている。また、操作レバー73の操作により複数の伝動リンク機構75を介してスライドロックアーム72を付勢手段74の付勢力に抗して回転支軸72bを中心に回動させることにより、スライドロックピン71に対する係合部72aの係合状態が解除され、これにより、横スライドが可能になる。
なお、スライドロックピン71は、スライド前の位置と、最大にスライドさせた位置に設けられている。
【0016】
刈取部3は、支持フレーム2に対し昇降機構5を介して昇降自在に吊下された状態で設けられている。
この昇降機構5は、支持フレーム2と刈取部3との間に設けられた上下方向において平行な平行リンク5a、5bで構成されるリンク機構51を備え、上側のリンク5aをワイヤー5cを介して上下方向に回動させることにより、刈取部3の地面からの高さ調整が行われるようになっている。
【0017】
また、昇降機構5は、走行駆動部1側における操縦者の足下に備えた遠隔操作機構8により、刈取部の刈り高さ調整及びロックとロック解除が行えるようになっている。
【0018】
すなわち、この遠隔操作機構8は、調整ラッチ爪81と、刈り高さロックペダル82と、刈り高さ調整ペダル83を備える。
調整ラッチ爪81の外周には複数の係止爪81aを備え、回転支軸81bから突出するアーム81cの先端にワイヤー5cの他端が連結されている。
刈り高さロックペダル82は、回転支軸82aより先端側に備えたロックピン82bが調整ラッチ爪81の係止爪81aに常時係合する方向にコイルスプリング(付勢手段)82cにより付勢されている
刈り取り高さ調整ペダル83は、回転支軸83aより先端側に係合ピン83bが備えられ、刈り高さ調整ペダル82を踏み込む度に係合ピン83bが調整ラッチ爪81の係止爪81aに係合して調整ラッチ爪を1段ずつ回転させる。これにより、調整ラッチ爪81のアーム81cが回転してワイヤー5cを引いて刈取部3を1段ずつ上昇させるように構成されている。
なお、刈り高さ調整ペダル82の踏み込みで調整ラッチ爪81が回転する度に、刈り高さロックペダル82が付勢手段の付勢力に抗して回動し、ロックピン82bが次の係止爪81aに係合してロックするようになっている。
【0019】
刈刃31の回転は走行駆動部1側からの出力軸であるPTO軸14から伝動軸32を介して刈取部3の上面に備えたベベルギヤ機構33に伝達され、伝動軸32で伝達された水平方向の回転動力をベベルギヤ機構33により刈刃31の縦軸回転に変換して伝達される。
そして、伝動軸32は、PTO軸14に対してユニバーサルジョイント34を介して連結される筒状の第1軸部32aと、ベベルギヤ機構33の入力軸33aに対してユニバーサルジョイント35を介して連結される棒状の第2軸部32bで構成され、第1軸部32aと第2軸部32bとはスプライン結合により相対回転不能、かつ軸方向長さを伸縮可能に構成されている。
【0020】
ハンドル9は、高さ調整可能であり、そのグリップ91には、操作パネル92を備えている。
そして、グリップ部91にはデッドマンクラッチレバー93を備え、操作パネル92には、スロットルレバー94と、刈刃クラッチレバー95と、走行レバー96を備えている。
この走行レバー96は中立の位置に戻る方向に付勢手段で付勢されている。
【0021】
デッドマンクラッチレバー93は、グリップ91の上部に併設されていて、グリップ91を握る際にこのデッドマンクラッチ93を同時に握った状態で走行レバー96を前進又は後進位置に操作することで、走行レバー96を操作した前進又は後進位置にロックされるようになっている。そして、この状態でデッドマンクラッチ93から手を離すと、走行レバー96のロック状態が解除され、付勢手段の付勢力で中立の位置に戻るようになっている。
スロットルレバー94は、ワイヤー94aを介してエンジン側スロットルレバー(図示省略)に接続されていて、スロットルレバー94を前側に倒すことによりスロットル開度を開いて走行速度が速くなる。
刈刃クラッチレバー95は、前側に倒すことでクラッチが入り、刈刃31の回転を開始する。
【0022】
ところが、この実施例では、刈刃クラッチレバー95とスロットルレバー94とがスロットル連動アーム95a、94bを介して連結され、刈刃クラッチレバー95がOFF状態では、スロットルレバー94を単独操作可能であるが、刈刃クラッチレバー95を前側に倒してON状態にすると、スロットルレバー94が連動して前側に倒され、スロットルON状態にする連動機構Bを備える。
すなわち、刈刃クラッチレバー95がOFF状態では、刈刃クラッチレバー95の中途部に連結された第2スロットル連動アーム95aの先端側に備えた係合ピン95bが第1スロットル連動アーム94a
の先端であるスロットルレバー94の中途部に備えたスライド溝94cの一端に係合することで、刈刃クラッチレバー95の前側への回動操作に連動してスロットルレバー94も前側に倒されてスロットルON状態になるが、刈刃クラッチレバー95がOFF状態ではスライド溝94cにより係合ピン95bの係合状態が解除される方向であるため、スロットルレバー94の単独操作が可能になる。
なお、スロットルのONとはスロットル開度を開く方向で、OFFとはスロットル開度を閉じる方向を意味する。
【0023】
また、刈刃クラッチレバー95は、走行駆動部1のPTOクラッチ(図示省略)につながっているワイヤー95cを支点越え機構95dを介して引っ張ることで、刈刃クラッチのON・OFF操作が行われる。
刈刃クラッチレバー95の回転支軸部95eにはレバー戻しアーム95fが備えられ、デッドマンクラッチレバー93には刈刃クラッチレバー95を前側いっぱいに倒した状態でレバー戻しアーム95fに当接するレバー戻しピン93aが設けられている。このため、グリップ部91から手を離すことで、デッドマンクラッチレバー93をON状態からOFF状態に切り替わると、レバー戻しピン93aがレバー戻しアーム95fを上方へ押し上げ、刈刃クラッチレバー95をOFF状態にすることができる連動機構Cを備えている。
【0024】
次に、この実施例1の作用・効果を説明する。
この実施例1では、上述のように、刈刃クラッチレバーのOFF状態からON状態への切り換えに連動してスロットルレバーOFF状態からON状態に切り換える連動機構を備えたことで、刈刃クラッチレバーをON操作するだけで、スロットルレバーをON状態に切り換えることができる。
これにより、操作レバーの操作工数を減らし、作業効率を高めることができる。
【0025】
また、上述のように、刈刃クラッチレバーがOFF状態で第2スロットル連動アームの先端側に備えた係合ピンが第1スロットル連動アームの先端に備えたスライド溝の一端に係合することで、刈刃クラッチレバーのON側への回動操作に連動してスロットルレバーON側に切り換え操作するようにしたことで、刈刃クラッチレバーがOFF状態のときは、係合ピンがスライド溝に沿って相対移動するため、スロットルレバーを単独でON側へ操作することができるようになる。
【0026】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 走行駆動部
11 クローラ(駆動輪)
12 エンジン
13 トランスミッション
14 PTO軸
2 支持フレーム
21 キャスター
3 刈取部
31 刈刃
32 伝動軸
32a 第1軸部
32b 第2軸部
33 ベベルギヤ機構
33a 入力軸
34 ユニバーサルジョイント
35 ユニバーサルジョイント
36 刈刃カバー
37 刈刃カバー
4 横スライド機構
5 昇降機構
5a 上側のリンク
5b 下側のリンク
5c ワイヤー
51 リンク機構
6 ローリング軸受け機構
61 ローリング軸受け
62 ローリング軸
62a レールガイド
62b レールガイド
7 ロック機構
71 スライドロックピン
72 スライドロックアーム
72a 係合部
72b 回転支軸
73 操作レバー
74 コイルスプリング(付勢手段)
75 伝動リンク
8 遠隔操作機構
81 調整クラッチ爪
81a 係止爪
81b 回転支軸
81c アーム
82 刈り高さロックペダル
82a 回転支軸
82b ロックピン
83 刈り高さ調整ペダル
83a 回転支軸
83b 係合ピン
9 ハンドル
91 グリップ
92 操作パネル
92a フレーム
92b フレーム
93 デッドマンクラッチレバー
93a レバー戻しピン
93b 支軸
93c 支点部
93d カムプレート
93e カムプレート
93f ロックピン
94 スロットルレバー
94a ワイヤー
94b 第2スロットル連動アーム
94c スライド溝
95 刈刃クラッチレバー
95a 第1スロットル連動アーム
95b 係合ピン
95c ワイヤー
95d 支点越え機構
95e 回転支持部
95f レバー戻しアーム
96 走行レバー
96a 支点部
96b 支軸
96c アーム
96d ワイヤー
96e 走行段階プレート
96f ロック溝
96g コイルスプリング
B スロットル連動機構
C 刈刃クラッチ連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル9部付近に刈刃クラッチレバー95とスロットルレバー94を備えた歩行型草刈り機において、刈刃クラッチレバー95のOFF状態からON状態への切り換えに連動してスロットルレバー94をOFF状態からON状態に切り換える連動機構を備えることを特徴とする。
【請求項2】
請求項1に記載の歩行型草刈り機において、
前記連動機構は、刈刃クラッチレバーとスロットルレバーとが刈刃クラッチレバーの中途部に連結された第1スロットル連動アームとスロットルレバーの中途部に連結された第2スロットル連動アームを介して連結され、
前記刈刃クラッチレバーがOFF状態で第2スロットル連動アームの先端側に備えた係合ピンが第1スロットル連動アームの先端に備えたスライド溝の一端に係合することで、刈刃クラッチレバーのON側への回動操作に連動してスロットルレバーをON側に切り換え操作するように構成されていることを特徴とする。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−99323(P2013−99323A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226280(P2012−226280)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(390005234)株式会社筑水キャニコム (21)
【Fターム(参考)】