歩行環境制御システム
【課題】歩行環境を制御し、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導することができる、歩行環境制御システムを提供すること。
【解決手段】歩行環境制御システム1は、歩行者の行き先と、当該歩行者の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連づけて格納する目標心理テーブル41と、歩行者の行き先を取得する行き先取得部32と、行き先取得部32が取得した行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を歩行者の目標生理心理状態として特定する、目標生理心理状態特定部33と、歩行者の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する現在歩行状態特定部31と、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩行状態に基づき、歩行者の歩行環境を特定した歩行環境とするための出力を行う出力処理部34とを備える。
【解決手段】歩行環境制御システム1は、歩行者の行き先と、当該歩行者の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連づけて格納する目標心理テーブル41と、歩行者の行き先を取得する行き先取得部32と、行き先取得部32が取得した行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を歩行者の目標生理心理状態として特定する、目標生理心理状態特定部33と、歩行者の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する現在歩行状態特定部31と、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩行状態に基づき、歩行者の歩行環境を特定した歩行環境とするための出力を行う出力処理部34とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者の歩行環境に影響を与える技術が用いられており、例えば、ユーザの動作に合わせて音楽等を再生する再生態様制御装置も提案されている(例えば、特許文献1)。この再生態様制御装置は、ユーザの上下動を基にユーザの歩行テンポを検出し、当該ユーザの歩行テンポに音楽コンテンツの再生速度を合わせるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−156641号公報(段落「0017」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商業施設における顧客の購買意欲の促進や、作業環境における作業者の作業効率の向上には、これらの顧客や作業者の生理的・心理的な状態(以下「生理心理状態」)を購買や作業に適した状態に誘導することが重要であると考えられる。しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、単に歩行者の歩行テンポに合わせて音楽を再生するものに過ぎず、歩行者の生理心理状態について何ら考慮していなかった。このため、歩行者の生理心理状態を所望の状態へと誘導することができず、購買意欲の促進や作業者の作業効率の向上に資することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、歩行環境を制御し、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導することができる、歩行環境制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の歩行環境制御システムは、歩行者の行き先と、当該歩行者の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連づけて格納する目標生理心理状態格納手段と、歩行者の行き先を所定方法で取得する行き先取得手段と、前記行き先取得手段が取得した行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する、目標生理心理状態特定手段と、前記歩行者の歩行動作を検出することにより、当該歩行者の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する、現在歩行状態特定手段と、前記目標生理心理状態特定手段が特定した目標生理心理状態に前記歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき、前記歩行者の歩行環境を前記特定した歩行環境とするための出力を行う出力手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の歩行環境制御システムは、請求項1に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記行き先取得手段は、前記歩行者の行き先を特定するための行き先情報を取得し、前記目標生理心理状態特定手段は、前記行き先取得手段が取得した行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する。
【0008】
また、請求項3に記載の歩行環境制御システムは、請求項1又は2に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記現在歩行状態特定手段は、前記歩行者の現在の歩調を特定する。
【0009】
また、請求項4に記載の歩行環境制御システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記出力手段は、前記歩行環境として音環境を特定し、前記歩行者の音環境を当該特定した音環境とするための音を出力する。
【0010】
また、請求項5に記載の歩行環境制御システムは、請求項4に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記出力手段は、出力する音の種別を前記音環境として特定する。
【0011】
また、請求項6に記載の歩行環境制御システムは、請求項4又は5に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記出力手段は、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき前記音を出力するタイミングを、前記音環境として特定する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の歩行環境制御システムによれば、歩行者の行き先に基づいて適切な目標生理心理状態を特定することができる。さらに、目標生理心理状態に歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定手段が特定した現在歩調に基づき、歩行者の歩行環境を当該特定した歩行環境とするための出力を行うので、歩行者を所望の歩行状態に誘導し、当該歩行者の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の歩行環境制御システムによれば、歩行者の行き先を特定するための行き先情報を取得し、当該行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を歩行者の目標生理心理状態として特定するので、歩行者に適した目標生理心理状態をより正確に特定することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の歩行環境制御システムによれば、現在歩行状態特定手段は歩行者の現在の歩調を特定するので、歩行者の歩調を介して当該歩行者の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の歩行環境制御システムによれば、出力手段は音を出力するので、歩行者の音環境を制御することができ、歩行者の聴覚を通じて当該歩行者を所望の歩行状態に誘導し、目標とする生理心理状態に誘導することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の歩行環境制御システムによれば、出力手段は、出力する音の種別を音環境として特定するので、歩行者の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適当な音種を特定し、当該音種の音によって歩行者の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の歩行環境制御システムによれば、出力手段は、現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき音を出力するタイミングを、音環境として特定するので、音の出力タイミングに歩行者の歩調を引き込み、歩行状態の変化を介して当該歩行者の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】歩行環境制御システムを適用したオフィスの斜視図である。
【図2】実施の形態に係る歩行環境制御システムを例示するブロック図である。
【図3】目標心理テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図4】目標歩調テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図5】目標心理−音種テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図6】好み−音種テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図7】履歴−音種DBに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図8】自然環境−音種テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図9】上下限歩調決定テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図10】歩行環境制御処理を示したフローチャートである。
【図11】音種決定処理のフローチャートである。
【図12】目標生理心理状態による音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図13】歩行者の好みによる音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図14】出力履歴による音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図15】自然環境による音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図16】引き込み出力処理のフローチャートである。
【図17】図16に続く引き込み出力処理のフローチャートである。
【図18】図17に続く引き込み出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る歩行環境制御システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態に係る歩行環境制御システムは、商業施設やオフィス等、歩行者が歩行する任意の歩行環境の制御に適用可能なシステムである。
【0021】
実施の形態に係る歩行環境制御システムの特徴の一つは、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導するための歩行状態を特定し、当該歩行者の歩行環境を、特定した歩行状態に当該歩行者を誘導するための歩行環境とする点にある。ここで「歩行環境」とは、歩行者の各種感覚(触覚、温覚、冷覚、痛覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、平衡感覚等)に影響しうるもの全てを含む概念であり、例えば音、振動、光等が含まれる。この歩行環境を制御して歩行者を所望の歩行状態に誘導することにより、当該歩行者の生理心理状態を所望の状態に誘導することが出来る。
【0022】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。図1は歩行環境制御システムを適用したオフィスの斜視図である。図1に示すように、以下では歩行環境制御システム1がオフィス2に設置された場合であって、制御対象領域に第1空間2a、第2空間2b、及び第3空間2cの出入り口が存在している場合を例として説明する。
【0023】
(構成)
図2は、実施の形態に係る歩行環境制御システムを例示するブロック図である。図2に示すように、この歩行環境制御システム1は、入力部10、出力部20、処理部30、及び記憶部40を備えている。
【0024】
(構成−入力部)
入力部10は、処理部30が実行する各種処理に必要な情報を当該処理部30に入力する入力手段であり、接地センサ11、及びカメラ12を備えている。接地センサ11は、歩行者3の足の接地を検出する。この接地センサ11としては、例えば赤外線遮蔽センサを用いることができる。具体的には、赤外線を発光する発光部と、発光部から発光された赤外線を受光する受光部とを、床面に沿って対向配置する。これにより、発光部と受光部との間で赤外線が遮蔽された場合、床面に接地した歩行者3の足によって赤外線が遮蔽されたとして、歩行者3の足の接地を検出することができる。カメラ12は、歩行環境制御システム1の制御対象領域を撮影する。これらの接地センサ11及びカメラ12からの出力は、処理部30に入力される。
【0025】
(構成−出力部)
出力部20は、処理部30の制御に基づいて歩行者3の歩行環境を所定の歩行環境とするための出力を行う出力手段である。この出力部20の具体的な構成は任意であり、例えば音を出力するスピーカを用いることができる。
【0026】
(構成−処理部)
処理部30は、歩行環境制御システム1に関する計算処理を行う処理手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0027】
この処理部30は、機能概念的に、現在歩行状態特定部31、行き先取得部32、目標生理心理状態特定部33、及び出力処理部34を備えている。現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する現在歩行状態特定手段である。行き先取得部32は、歩行者3の行き先を所定方法で取得する行き先取得手段である。目標生理心理状態特定部33は、歩行者3の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態を特定する、目標生理心理状態特定手段である。出力処理部34は、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に歩行者3を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩行状態に基づき、歩行者3の歩行環境を当該特定した歩行環境とするための出力を出力部20に行わせるものであり、出力部20と共に特許請求の範囲における出力手段を構成する。これらの処理部30の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0028】
(構成−記憶部)
記憶部40は、歩行環境制御システム1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0029】
この記憶部40は、目標心理テーブル41、目標歩調テーブル42、目標心理−音種テーブル43、好み−音種テーブル44、履歴−音種データベース(以下、データベースを「DB」と称する)45、自然環境−音種テーブル46、及び上下限歩調決定テーブル47を備えている。
【0030】
目標心理テーブル41は、歩行者3の行き先と、歩行者3の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連付けて格納する目標生理心理状態格納手段である。図3は目標心理テーブル41に格納されている情報の内容を例示した表である。図3に示すように、目標心理テーブル41は、テーブル項目として「行き先」及び「目標心理」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「行き先」に対応して格納される情報は、歩行者3の行き先を特定する情報である(図3では「第1空間」、「第2空間」、「第3空間」)。項目「目標心理」に対応して格納される情報は、歩行者3の行き先に対応する目標生理心理状態を特定する情報である。例えば、歩行者3の行き先としての第1空間2aが会議室である場合、当該会議室にて行われる会議に出席する歩行者3はある程度の緊張感を持っていることが望ましいため、項目「行き先」の「第1空間」に対応する目標生理心理状態としては、図3に示すように「緊張」が格納される。また、歩行者3の行き先としての第2空間2bが例えば執務エリアである場合、当該執務エリアで通常業務を行う歩行者3は緊張とリラックスとの中間の心理状態であることが望ましいため、項目「行き先」の「第2空間」に対応する目標生理心理状態としては、図3に示すように「普通」が格納される。また、歩行者3の行き先としての第3空間2cが例えば食堂である場合、当該食堂で食事をする歩行者3はリラックスすることが可能であるため、項目「行き先」の「第3空間」に対応する目標生理心理状態としては、図3に示すように「リラックス」が格納される。
【0031】
目標歩調テーブル42は、歩行者3の目標生理心理状態と、当該歩行者3の歩行状態を誘導する目標としての目標歩調とを、相互に関連付けて格納する。図4は目標歩調テーブル42に格納されている情報の内容を例示した表である。図4に示すように、目標歩調テーブル42はテーブル項目として「目標心理」及び「目標歩調」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「目標心理」に対応して格納される情報は目標生理心理状態を特定する情報である。項目「目標歩調」に対応して格納される情報は、歩行者3の歩調を誘導する内容を特定する情報(図4では、「遅」「維持」「速」)である。例えば、目標心理が「リラックス」の場合は、歩行者3の生理心理状態をリラックスした状態とするためには、当該歩行者3の歩調を遅くするように誘導を行うことが有効と考えられるため、目標歩調を「遅」としている。また、目標心理が「普通」の場合は、歩行者3の生理心理状態を普通の状態とするためには、当該歩行者3の歩調を維持するように誘導を行うことが有効と考えられるため、目標歩調を「維持」としている。また、目標心理が「緊張」の場合は、歩行者3の生理心理状態を緊張した状態とするためには、当該歩行者3の歩調を速くするように誘導を行うことが有効と考えられるため、目標歩調を「速」としている。
【0032】
目標心理−音種テーブル43は、歩行者3の目標生理心理状態、出力部20から出力させる音の種別(以下「音種」と表記する)、及び各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位を、相互に関連付けて格納する。図5は目標心理−音種テーブル43に格納されている情報の内容を例示した表である。図5に示すように、目標心理−音種テーブル43はテーブル項目として「優先順位ID」「目標心理」及び「音種」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「優先順位ID」に対応して格納される情報は、各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位を一意に識別する識別情報である(図5では「1」「2」等)。項目「目標心理」に対応して格納される情報は目標生理心理状態を特定する情報である。項目「音種」に対応して格納される情報は、目標生理心理状態に対応して出力部20から出力させる音種を特定する情報(図5では「水たまり」「膝上までの水」等)である。例えば、図5の例では、歩行者3の目標生理心理状態が「リラックス」である場合、出力部20から出力させる音種は、優先順位の高い順に「水たまり」「膝上までの水」「枯葉−乾燥」「枯葉−湿気」となっている。また、目標生理心理状態が「普通」である場合、出力部20から出力させる音種は、優先順位の高い順に「草むら」「玉石」「雪」となっている。また、目標生理心理状態が「緊張」である場合、出力部20から出力させる音種は、優先順位の高い順に「鉄板」「古い板張り」となっている。
【0033】
好み−音種テーブル44は、歩行者3の好み、出力部20から出力させる音種、及び各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位を、相互に関連付けて格納する。図6は好み−音種テーブル44に格納されている情報の内容を例示した表である。図6に示すように、好み−音種テーブル44はテーブル項目として「優先順位ID」「音種」及び「好み」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。このうち、項目「好み」に対応して格納される情報は、歩行者3の好みを特定する情報(図6では「嫌い」「普通」「好き」)である。例えば、図6の例では、音種「水たまり」「膝上までの水」は歩行者3が「嫌い」な音種となっている。また、音種「枯葉−乾燥」「枯葉−湿気」「草むら」「雪」「鉄板」「古い板張り」については歩行者3の好みが「普通」の音種となっている。また、音種「玉石」については、歩行者3が「好き」な音種となっている。
【0034】
履歴−音種DB45は、出力部20から出力させた音種と、当該出力を行った日とを、相互に関連付けて格納する。図7は履歴−音種DB45に格納されている情報の内容を例示した表である。図7に示すように、履歴−音種DB45はDB項目として「出力日」及び「音種」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。このうち、「出力日」に対応して格納される情報は、出力部20から音を出力させた日を特定する情報である(図7では「2008年10月17日」等)。例えば、図7の例では、2008年10月17日には音種「枯葉−湿気」が出力され、2008年10月18日には音種「枯葉−乾燥」が出力され、2008年10月19日には音種「玉石」が出力されている。
【0035】
自然環境−音種テーブル46は、各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位、自然環境、及び出力部20から出力させる音種を、相互に関連付けて格納する。図8は自然環境−音種テーブル46に格納されている情報の内容を例示した表である。図8に示すように、自然環境−音種テーブル46はテーブル項目として「優先順位ID」「自然環境」及び「音種」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。このうち、項目「自然環境」に対応して格納される情報は、各音種と何らかの関連性を有する季節や天気等を特定する情報であり、例えば図8に示すように、項目「季節」及び「天気」に対応する情報が格納される。図8では、例えば音種「水たまり」に対応する自然環境として、水たまりが発生しやすい季節「梅雨」、及び天気「雨」が格納されている。また、音種「膝上までの水」に対応する自然環境としては、海や川を連想させる季節「夏」が格納され、天気については「不特定」が格納されている。ここで「不特定」とは、対応する音種の出力が特定の天気に制約されないことを意味している。
【0036】
上下限歩調決定テーブル47は、歩行者3の歩行状態を誘導する目標としての目標歩調の上限及び下限を、歩行者3の属性(例えば性別や年代)と相互に関連付けて格納する。図9は上下限歩調決定テーブル47に格納されている情報の内容を例示した表である。図9に示すように、上下限歩調決定テーブル47はテーブル項目として「性別」及び「年代」を備え、これらの項目に対応して格納される情報と対応付けて、目標歩調の上限と下限とが格納されている。項目「性別」に対応して格納される情報は、歩行者3の性別を特定する情報である(図9では「男性」及び「女性」)。項目「年代」に対応して格納される情報は、歩行者3の年代を特定する情報である(図9では「20歳未満」「20歳以上40歳未満」「40歳以上60歳未満」「60歳以上」)。図9では、例えば20歳未満の男性における上限歩調は90歩/分、下限歩調は50歩/分となっている。これに対して、60歳以上の女性における上限歩調は50歩/分、下限歩調は40歩/分となっており、20歳未満の男性と比較して目標歩調の上下限が低く、幅の狭いものとなっている。このように、歩行者3の性別や年代によって異なる体力や体格等を考慮した目標歩調の上下限を上下限歩調決定テーブル47に格納することができる。
【0037】
なお、目標心理テーブル41、目標歩調テーブル42、目標心理−音種テーブル43、好み−音種テーブル44、自然環境−音種テーブル46、及び上下限歩調決定テーブル47に情報を格納するタイミングや方法は任意で、例えば公知の入力装置(図示省略)を用いて各種の情報を格納することができる。また、履歴−音種DB45に格納される情報については、後述する歩行環境制御処理の実行に応じて随時情報を追加格納される。また、好み−音種テーブル44及び履歴−音種DB45については、各歩行者3に一意に対応づけられた複数の好み−音種テーブル44及び履歴−音種DB45が記憶部40に格納される。
【0038】
(処理)
次に、このように構成される歩行環境制御システム1によって実行される歩行環境制御処理について説明する。図10は歩行環境制御処理を示したフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。
【0039】
この歩行環境制御処理は、例えば歩行環境制御システム1への電源投入後に自動的に起動される。歩行環境制御処理が起動されると、現在歩行状態特定部31は、入力部10からの入力に基づき、歩行環境制御システム1の制御対象領域における歩行者3の有無を判定する(SA1)。例えば、接地センサ11によって歩行者3の足の接地が検出された場合に歩行者3が存在すると判定させてもよい。あるいは、制御対象領域を撮影しているカメラ12から入力された画像情報を公知の画像解析技術を用いて解析し、当該画像情報に人間の映像が含まれていた場合に歩行者3が存在すると判定させてもよい。さらに、歩行者3の識別情報を公知の方法で取得し、当該識別情報に基づき歩行者3を一意に識別してもよい。
【0040】
その結果、歩行者3が存在しないと判定した場合(SA1、No)、現在歩行状態特定部31は歩行者3の有無の判定を継続する(SA1)。一方、歩行者3が存在すると判定した場合(SA1、Yes)、行き先取得部32は、歩行者3の行き先を取得する(SA2)。例えば、行き先取得部32は、歩行者3の足の接地を検出した接地センサ11の位置に基づき、当該歩行者3の位置を推定する。同様に、複数の接地センサ11からの出力に基づき時系列データとして歩行者3の位置を推定することにより、当該歩行者3の歩行方向を特定することができる。あるいは、歩行者3の識別情報を公知の方法で取得し、当該識別情報に基づいて、公知のスケジューラから当該歩行者3のスケジュールを特定し、当該スケジュールに基づき歩行者3の行き先を特定することもできる。あるいは、カメラ12から入力された画像情報を公知の画像解析技術を用いて解析し、撮影された歩行者3の位置や歩行方向等を特定することもできる。具体的には、画像情報における各画素位置と制御対象領域における位置座標との対応テーブル(図示省略)を予め記憶部40に記憶させておくことで、画像情報における歩行者3の画像の位置に対応する位置座標を当該対応テーブルから特定することができる。また、時系列データとして歩行者3の位置座標を取得することにより、当該歩行者3の歩行方向を特定することができる。
【0041】
次に、目標生理心理状態特定部33は、SA2で行き先取得部32が取得した行き先に対応する目標生理心理状態を目標心理テーブル41から取得し、当該取得した目標生理心理状態を歩行者3の目標生理心理状態として特定する(SA3)。図3に示した例では、行き先が第1空間2aの場合は「緊張」が目標生理心理状態として特定され、行き先が第2空間2bの場合は「普通」が目標生理心理状態として特定され、行き先が第3空間2cの場合は「リラックス」が目標生理心理状態として特定される。
【0042】
図10に戻り、出力処理部34は、SA3で目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に基づき、歩行者3の歩行状態を誘導する目標としての目標歩調を特定する(SA4)。例えば、出力処理部34は目標歩調テーブル42を参照し、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に対応して格納されている目標歩調を特定する。図4に示した例では、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態が「リラックス」の場合は「遅」が目標歩調として特定され、目標生理心理状態が「普通」の場合は「維持」が目標歩調として特定され、目標生理心理状態が「緊張」の場合は「速」が目標歩調として特定される。
【0043】
図10に戻り、出力処理部34は、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に歩行者3を誘導するための歩行環境として出力部20から出力させる音の種別を特定するための、音種決定処理を実行する(SA5)。
【0044】
ここで、音種決定処理について説明する。図11は音種決定処理のフローチャートである。図11に示すように、音種決定処理が開始されると、出力処理部34は出力部20から出力させる音種の候補を選択するための音種選択ルーチンとして、最初の音種選択ルーチンを設定する(SB1)。音種選択ルーチンとしては、例えば、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態による音種選択ルーチン、歩行者3の好みによる音種選択ルーチン、出力部20からの音の出力履歴による音種選択ルーチン、及び出力部20から音を出力させる場合の自然環境による音種選択ルーチンがある。
【0045】
次に、出力処理部34は、設定された音種選択ルーチンを実行する(SB2)。そして、音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が0か否かを判定する(SB3)。その結果、選択された音種の数が0であった場合(SB3、Yes)、出力処理部34は、直前に実行した音種選択ルーチンでは適当な音種が選択されなかったものとし、その前回に実行した音種選択ルーチンにおいて選択された音種候補の中から最も優先順位が高い音種を、出力部20から出力させる音種として決定し(SB4)、メインルーチンに戻る。
【0046】
一方、SB2で実行した音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が0でなかった場合(SB3、No)、出力処理部34は、音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が1か否かを判定する(SB5)。その結果、選択された音種の数が1であった場合(SB5、Yes)、出力処理部34は、現在選択されている音種を出力部20から出力させる音種として決定し(SB6)、メインルーチンに戻る。
【0047】
また、音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が1でなかった場合(SB5、No)、出力処理部34は、次順の音種選択ルーチンがあるか否かを判定する(SB7)。その結果、全ての音種選択ルーチンを実行しており、次順の音種選択ルーチンがないと判定した場合(SB7、No)、現在選択されている音種候補の中で最も優先順位が高い音種を、出力部20から出力させる音種として決定し(SB8)、メインルーチンに戻る。
【0048】
一方、全ての音種選択ルーチンを実行しておらず、次順の音種選択ルーチンがあると判定した場合(SB7、Yes)、出力処理部34は出力部20から出力させる音種の候補を選択するための音種選択ルーチンとして、次順の音種選択ルーチンを設定する(SB9)。そして、SB2に戻り、SB9で設定した音種選択ルーチンを実行する(SB2)。
【0049】
ここで、各音種選択ルーチンについて説明する。図12は目標生理心理状態による音種選択ルーチンのフローチャート、図13は歩行者3の好みによる音種選択ルーチンのフローチャート、図14は出力履歴による音種選択ルーチンのフローチャート、図15は自然環境による音種選択ルーチンのフローチャートである。本実施の形態では、目標生理心理状態による音種選択ルーチン、好みによる音種選択ルーチン、出力履歴による音種選択ルーチン、自然環境による音種選択ルーチンの順に各音種選択ルーチンが実行される場合を例として説明する。
【0050】
まず、目標生理心理状態による音種選択ルーチンについて説明する。図12に示すように、目標生理心理状態による音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「リラックス」か否かを判定する(SC1)。その結果、目標生理心理状態が「リラックス」である場合(SC1、Yes)、出力処理部34は目標心理−音種テーブル43を参照し、項目「目標心理」における「リラックス」に対応して項目「音種」に格納されている音種を出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SC2)。図5の例では、目標心理「リラックス」に対応する音種として、「水たまり」「膝上までの水」「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が選択される。
【0051】
一方、目標生理心理状態が「リラックス」ではない場合(SC1、No)、出力処理部34は図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「緊張」であるか否かを判定する(SC3)。その結果、目標生理心理状態が「緊張」である場合(SC3、Yes)、出力処理部34は目標心理−音種テーブル43を参照し、項目「目標心理」における「緊張」に対応して項目「音種」に格納されている音種を出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SC4)。図5の例では、目標心理「緊張」に対応する音種として、「鉄板」及び「古い板張り」が選択される。
【0052】
また、目標生理心理状態が「緊張」ではない場合(SC3、No)、すなわち目標生理心理状態が「普通」である場合は、出力処理部34は目標心理−音種テーブル43を参照し、項目「目標心理」における「普通」に対応して項目「音種」に格納されている音種を出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SC5)。図5の例では、目標心理「普通」に対応する音種として、「草むら」「玉石」及び「雪」が選択される。
【0053】
SC2、SC4、又はSC5の処理において、出力部20から出力させる音種の候補を選択した後、出力処理部34は選択した音種の候補を優先順位の高い順(優先順位IDの昇順)にソートし(SC6)、図11の音種決定処理に戻る。このように、目標生理心理状態による音種選択ルーチンにより、歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適した音種が選択される。
【0054】
次に、歩行者3の好みによる音種選択ルーチンについて説明する。図13に示すように、歩行者3の好みによる音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は歩行者3に対応して記憶部40に格納されている好み−音種テーブル44を参照し、項目「好み」における「好き」及び「普通」に対応して項目「音種」に格納されている音種を、出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SD1)。例えば、図12の目標生理心理状態による音種選択ルーチンの結果、目標心理「リラックス」に対応する音種として「水たまり」「膝上までの水」「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が音種候補として選択されていた場合、これらの音種候補のうち、図6に例示した好み−音種テーブル44の項目「好み」における「好き」及び「普通」に対応して項目「音種」に格納されている音種である「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が音種候補として選択される。すなわち、歩行者3にとって嫌いな音種である「水たまり」及び「膝上までの水」が候補から除外される。これにより、歩行者3に不快な感情を想起させる音の出力を回避することができる。なお、例えば図10のSA2において歩行者3の識別情報を取得した場合、当該識別情報に対応して記憶部40に格納されている好み−音種テーブル44を参照することができる。
【0055】
SD1において、出力部20から出力させる音種の候補を選択した後、出力処理部34は選択した音種の候補を優先順位の高い順(優先順位IDの昇順)にソートし(SD2)、図11の音種決定処理に戻る。
【0056】
次に、出力履歴による音種選択ルーチンについて説明する。図14に示すように、出力履歴による音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は履歴−音種DB45を参照し、音種候補として現在選択されている音種が過去に出力された日を特定する(SE1)。そして、音種の候補を、過去に出力されていない音種、出力日の古い順、優先順位の高い順にソートし(SE2)、図11の音種決定処理に戻る。例えば、図13の歩行者3の好みによる音種選択ルーチンの結果、「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が音種候補として選択されていた場合、図7の履歴−音種DB45によれば、音種「枯葉−乾燥」は2008年10月18日に出力され、音種「枯葉−湿気」は2008年10月17日に出力されている。そこで、出力日の古い順、すなわち「枯葉−湿気」、「枯葉−乾燥」の順に音種候補をソートする。これにより、歩行者3にとって常に新鮮な音種の音を出力することができ、当該歩行者3の飽きを防止することができる。
【0057】
次に、自然環境による音種選択ルーチンについて説明する。図15に示すように、自然環境による音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は自然環境−音種テーブル46を参照し、音種候補として現在選択されている音種に対応する自然環境を特定する(SF1)。そして、例えば公知のネットワークを介して取得した時刻情報や天候情報に基づき、歩行者3が歩行している現在の季節や天気を特定し、音種の候補を、当該特定した現在の季節と同じ順、現在の天気と同じ順、優先順位の高い順にソートし(SF2)、図11の音種決定処理に戻る。例えば、図14の出力履歴による音種選択ルーチンの結果、「枯葉−湿気」及び「枯葉−乾燥」が音種候補として選択されていた場合、図8の自然環境−音種テーブル46によれば、音種「枯葉−湿気」に対応する季節は「秋」、天気は「雨」と特定される。また、音種「枯葉−乾燥」に対応する季節は「秋」、天気は「晴」と特定される。ここで、現在の季節が夏であり、天気が晴である場合、何れの音種候補も現在の季節には一致していないことから、現在の天気に一致する音種「枯葉−乾燥」、次に現在の天気に一致しない音種「枯葉−湿気」の順に音種候補をソートする。
【0058】
図11に戻り、このように、音種「枯葉−乾燥」、音種「枯葉−湿気」の順に音種候補が選択された状態で全ての音種選択ルーチンが実行され、次順の音種選択ルーチンが無い場合、図11のSB8において、出力処理部34は、現在選択されている音種候補の中で最も優先順位が高い音種である「枯葉−乾燥」を出力部20から出力させる音種として決定する。これにより、歩行者3の好み、各音種の出力履歴、及び自然環境を考慮した上で、当該歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適当な音種を決定することができる。
【0059】
図10に戻り、SA5で音種決定処理を実行し、出力部20から出力させる音種を決定した後、出力処理部34は、SA4で特定した目標歩調が「維持」か否かを判定する(SA6)。その結果、目標歩調が「維持」であった場合(SA6、Yes)、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SA7)。例えば、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の足の接地を検出した接地センサ11からの入力に基づき、歩行者3の足の接地の時間間隔を特定し、当該特定した時間間隔から歩行者3の現在の歩調(例えば一分当りの歩数)を特定する。
【0060】
そして、出力処理部34は、現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在の歩調と一致するタイミングで、SA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SA8)。例えば、出力処理部34は、予め記憶部40に記憶されている音種「枯葉−乾燥」に対応する音のデータを取得し、接地センサ11からの入力に基づいて特定される歩行者3の足の接地と同じタイミングで出力部20から出力させる。このように、乾燥した枯葉を踏む音によって歩行者3の生理心理状態をリラックスした状態に誘導できると共に、足の接地に呼応して音が出力されることによる心地よさによっても、当該歩行者3の生理心理状態をリラックスした状態に誘導することができる。
【0061】
その後、出力処理部34は、SA7で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、SA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SA9)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SA9、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、現在歩行状態特定部31は、再度歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SA7)。
【0062】
一方、歩行者3の現在位置と行き先とが一致している場合(SA9、Yes)、歩行者3が行き先に到着したものとし、出力処理部34は出力部20からの音の出力を終了させる(SA10)。
【0063】
また、SA6の処理において、SA4で特定した目標歩調が「維持」でないと判定した場合(SA6、No)、すなわち目標歩調が「速」又は「遅」であった場合、出力処理部34は引き込み出力処理を実行する(SA11)。
【0064】
ここで、引き込み出力処理について説明する。この引き込み出力処理は、歩行者3の歩調を目標歩調に引き込むように出力部20から音の出力(引き込み出力)を行わせる処理である。図16から図18は引き込み出力処理のフローチャートである。
【0065】
図16に示すように、引き込み出力処理が開始されると、出力処理部34は出力部20からの引き込み出力に対する歩行者3の慣らしを開始する慣らし開始時刻として、現在時刻を設定する(SG1)。
【0066】
続いて、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SG2)。次に、出力処理部34は、SG2で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SG3)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SG3、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、出力処理部34は、現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在の歩調と一致するタイミングで、図10のSA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SG4)。
【0067】
次に、出力処理部34は、SG1で設定した慣らし開始時刻から現在時刻までの時間が、予め設定されている所定時間Xよりも長いか否かを判定する(SG5)。そして、慣らし開始時刻から現在時刻までの時間がXより長くない場合(X以下である場合)(SG5、No)、SG2に戻り、現在歩行状態特定部31が、歩行者3の現在の歩調及び位置を再度取得する(SG2)。一方、慣らし開始時刻から現在時刻までの時間がXより長い場合(SG5、Yes)、出力部20からの引き込み出力に対する歩行者3の慣らしが完了したものとし、出力処理部34は、図10のSA4で特定した目標歩調が「速」か否かを判定する(SG6)。
【0068】
その結果、目標歩調が「速」であった場合(SG6、Yes)、出力処理部34は、歩行者3の現在歩調に基づき出力部20から音を出力させるタイミングを特定するための係数αを1.05に設定する(SG7)。一方、目標歩調が「速」ではなかった場合(目標歩調が「遅」であった場合)(SG6、No)、出力処理部34は係数αを0.95に設定する(SG8)。
【0069】
SG7又はSG8の処理の後、出力処理部34は、出力部20から音を出力させるタイミング(以下「中間出力歩調」と表記する)を、「現在歩調×α」として特定する(SG9)。例えば、SG2で特定した現在歩調が60歩/分であり、SG7において係数αが1.05に設定された場合、中間出力歩調=60×1.05=63歩/分となる。
【0070】
続いて、図17に進み、出力処理部34は上下限歩調決定テーブル47を参照し、SG9で特定した中間出力歩調が、歩行者3の属性に対応する下限歩調より大きく、且つ上限歩調より小さいか否かを判定する(SG10)。例えば、図10のSA2において歩行者3の識別情報を取得した場合、当該識別情報に対応付けて記憶部40に予め記憶されている歩行者3の性別及び年齢を特定し、当該特定した性別及び年齢に対応して上下限歩調決定テーブル47に格納されている上下限歩調を特定することができる。例えば、歩行者3が30歳の男性である場合、上限歩調は90歩/分、下限歩調は50歩/分となる。
【0071】
その結果、中間出力歩調が、歩行者3の属性に対応する下限歩調より大きく、且つ上限歩調より小さい場合(SG10、Yes)、出力処理部34は、歩行者3の歩調を中間出力歩調に引き込み可能とし、引き込み開始時刻として現在時刻を設定し(SG11)、引き込み開始時の歩調として現在歩調を設定する(SG12)。
【0072】
続いて、出力処理部34は、中間出力歩調に対応するタイミングで、図10のSA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SG13)。
【0073】
例えば、図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「リラックス」、SA4で特定した目標歩調が「遅」であり、SA5で決定した音種が「枯葉−乾燥」、図16のSG2で特定した現在歩調が60歩/分、及びSG9で特定した中間出力歩調が60×0.95=57歩/分である場合、出力処理部34は、予め記憶部40に記憶されている音種「枯葉−乾燥」に対応する音のデータを取得し、当該取得した音を中間出力歩調に対応する57歩/分のタイミングで出力部20から出力させる。これにより、乾燥した枯葉の音によって歩行者3の気分をリラックスさせると共に、現在歩調よりもゆっくりとした音の出力タイミングに歩行者3の歩調を引き込み、徐々に歩調を遅らせて当該歩行者3の気分をリラックスさせることが可能となる。
【0074】
また、図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「緊張」、SA4で特定した目標歩調が「速」であり、SA5で決定した音種が「鉄板」、図16のSG2で特定した現在歩調が60歩/分、及びSG9で特定した中間出力歩調が60×1.05=63歩/分である場合、出力処理部34は、予め記憶部40に記憶されている音種「鉄板」に対応する音のデータを取得し、当該取得した音を中間出力歩調に対応する63歩/分のタイミングで出力部20から出力させる。これにより、鉄板の音によって歩行者3の気分を緊張させると共に、現在歩調よりも速い音の出力タイミングに歩行者3の歩調を引き込み、徐々に歩調を速めて当該歩行者3の気分を高揚させることが可能となる。
【0075】
続いて、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SG14)。次に、出力処理部34は、SG14で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SG15)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SG15、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、出力処理部34は、SG14で現在歩行状態特定部31が特定した現在歩調と、SG9で出力処理部34が特定した中間出力歩調とが一致したか否かを判定する(SG16)。
【0076】
その結果、現在歩調と中間出力歩調とが一致した場合(SG16、Yes)、歩行者3の歩調を中間出力歩調まで引き込むことができたものとし、出力部20から出力させる音の音量を増加させると共に、制御対象領域における照明(図示省略)の照度を増加させる(SG17)。この音量及び照度の増加により、歩行者3が目標歩調にて歩行を行っていることを当該歩行者3に提示し、目標歩調に追随して歩行することへのモチベーション増加を図ることができる。その後、図16のSG1に戻り、出力処理部34は出力部20からの引き込み出力に対する歩行者3の慣らしを再度開始する。
【0077】
また、図17のSG16において、現在歩調と中間出力歩調とが一致していない場合(SG16、No)、図18に進み、出力処理部34は、SG11で設定した引き込み開始時刻から現在時刻までの時間が、予め設定されている所定時間Yよりも短いか否かを判定する(SG18)。その結果、引き込み開始時刻から現在時刻までの時間がYよりも短い場合(SG18、Yes)、図17のSG13に戻り、出力処理部34は、図10のSA5で決定した音種の音を中間出力歩調に対応するタイミングで出力部20から出力させる(SG13)。
【0078】
一方、引き込み開始時刻から現在時刻までの時間がYよりも短くない場合(SG18、No)、あるいは、図17のSG10で中間出力歩調が歩行者3の属性に対応する下限歩調以下、又は上限歩調以上であった場合(SG10、No)、出力処理部34は、歩行者3の歩調を中間出力歩調に引き込むことが困難とし、現在歩調を中間出力歩調として再設定する(SG19)。その後、出力処理部34は、SG19で設定した中間出力歩調に対応するタイミングで、図10のSA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SG20)。
【0079】
続いて、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SG21)。次に、出力処理部34は、SG21で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SG22)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SG22、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、出力処理部34はSG19に戻り、SG21で現在歩行状態特定部31が特定した現在歩調を中間出力歩調として再設定する(SG19)。
【0080】
また、図16のSG2で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致した場合(SG3、Yes)、図17のSG14で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と歩行者3の行き先とが一致した場合(SG15、Yes)、及び図18のSG21で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と歩行者3の行き先とが一致した場合(SG22、Yes)、図16に戻り、出力処理部34は、照明照度を通常の照度に復帰させ(SG23)、出力部20からの音の出力を終了させ(SG24)、メインルーチンに戻る。
【0081】
図10に戻り、SA10で出力部20からの音の出力を終了させた後、又はSA11で引き込み出力処理を実行した後、SA1に戻り、現在歩行状態特定部31は歩行者3の有無を判定する(SA1)。以降、同様にSA1からSA11の処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0082】
(効果)
このように実施の形態によれば、歩行者3の行き先に基づいて適切な目標生理心理状態を特定することができる。さらに、目標生理心理状態に歩行者3を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩調に基づき、歩行者3の歩行環境を当該特定した歩行環境とするための出力を行うので、歩行者3を所望の歩行状態に誘導し、当該歩行者3の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0083】
特に、歩行者3の行き先を特定するための行き先情報を取得し、当該行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を目標心理テーブル41から取得し、当該取得した目標生理心理状態を歩行者3の目標生理心理状態として特定するので、歩行者3に適した目標生理心理状態をより正確に特定することができる。
【0084】
また、現在歩行状態特定部31は歩行者3の現在の歩調を特定するので、歩行者3の歩調を介して当該歩行者3の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0085】
また、出力部20に音を出力させるので、歩行者3の音環境を制御することができ、歩行者3の聴覚を通じて当該歩行者3を所望の歩行状態に誘導し、目標とする生理心理状態に誘導することができる。
【0086】
また、出力処理部34は、出力する音の種別を音環境として特定するので、歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適当な音種を特定し、当該音種の音によって歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【0087】
また、出力処理部34は、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩行状態に基づき音を出力するタイミングを、音環境として特定するので、音の出力タイミングに歩行者3の歩調を引き込み、歩行状態の変化を介して当該歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【0088】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0089】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。さらに、本発明によって、上述していない課題を解決したり、上述していない効果を奏することもある。
【0090】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、複数の入力部10や出力部20を、ネットワークを介して処理部30と相互に通信可能に接続してもよい。
【0091】
(適用対象について)
上述の実施の形態では、オフィス2における歩行環境の制御に歩行環境制御システム1を適用した場合を例示したが、商業施設、公園、病院、公共施設等、任意の歩行環境の制御に歩行環境制御システム1を適用することもできる。例えば、商業施設への入口近傍を歩行環境制御システム1の制御対象領域とし、現在歩行状態特定部31により歩行者3の現在位置が商業施設への進入路内であると特定された場合、目標生理心理状態を「リラックス」とし、現在位置が商業施設への進入路外であると特定された場合、目標生理心理状態を「普通」とする。これにより、歩行者3の興味を商業施設に向かう方向に引き付けることができ、当該歩行者3を商業施設へと誘導することができる。また、歩行者3を誘導する方向を歩行者3の属性に基づいて変化させたり(例えば、歩行者3が女性の場合は商業施設に向かう方向、男性の場合は娯楽施設に向かう方向等)、全歩行者中の一定の割合の歩行者3を当該歩行者3の属性や希望とは無関係に所定方向に向かわせたりすることができる。また、歩行者3の気分を高揚させるような音を足の接地タイミングに合わせて出力することにより、歩行者3の購買意欲の促進に資することができる。
【0092】
また、歩行者3の行き先を、歩行者3の属性、歩行者3により公知の入力手段を介して事前に入力された希望の行き先、あるいは歩行者3とは切り離された基準等に基づいて特定してもよい。例えば、行き先情報を格納する行き先情報格納手段を備え、行き先取得部32は、必要に応じて当該行き先情報格納手段に格納された行き先情報を参照することで、歩行者3の行き先を特定できる。
【0093】
(生理心理状態について)
上述の実施の形態では、歩行者3の生理心理状態を「リラックス」「普通」「緊張」の3種類に分類したが、他の基準によって生理心理状態を分類してもよい。例えば、「執務中向き」「出社時向き」「情報消化向き」「長期休憩向き」等、業務の場面を基準として生理心理状態を分類してもよい。あるいは、「心地よさ」の程度に応じて、生理心理状態を複数段階に分類してもよい。
【0094】
(現在歩行状態の特定について)
上述の実施の形態では、現在歩行状態特定部31は歩行者3の現在の歩調及び位置を取得すると説明したが、他の情報を取得してもよい。例えば、歩行者3の心拍数、ホルモン分泌、皮膚電位、体表面温度、呼吸間隔、まばたき数等の生体情報を測定してもよい。さらに、これらの情報に基づき、歩行者3の現在の生理心理状態を特定してもよい。これにより、例えば歩行者3の現在の生理心理状態が目標生理心理状態と一致しているか否か等を判断することができる。
【0095】
(目標心理テーブルについて)
実施の形態では、目標心理テーブル41は、歩行者3の行き先と、歩行者3の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連付けて格納すると説明したが、行き先以外の歩行者3の属性と目標生理心理状態とを相互に関連付けて格納してもよい。例えば、歩行者3の嗜好と目標生理心理状態とを相互に関連付けて格納してもよい。この場合、現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置が、当該歩行者3の嗜好に合致する店舗の近傍である場合に、目標生理心理状態を「緊張」状態とするような制御を行うことができ、当該歩行者3の購買意欲を刺激することも可能である。
【0096】
(接地センサについて)
上述の実施の形態では、接地センサ11として赤外線遮蔽センサを用いる場合を例に挙げて説明したが、他の手段を用いることもできる。例えば、床面近傍に設けたレーザーレンジファインダ等の距離センサを用いて歩行者3の足の接地を検出することができる。あるいは、床面に埋設した圧力センサを用いて、歩行者3の足から当該床面に加えられた圧力を検出することにより、歩行者3の足の接地を検出することができる。あるいは、カメラ12を用いて撮影した床面近傍の画像情報を公知の画像解析技術を用いて解析することにより、歩行者3の足の接地を検出することもできる。
【0097】
(出力部について)
上述の実施の形態では、出力部20は音を出力すると説明したが、歩行者3の歩行環境に影響を与える他の出力を行わせてもよい。例えば、床に埋設されたアクチュエータを用いて、振動を出力させてもよい。すなわち、歩行者3の足の接地タイミングに合わせて床を振動させてもよい。さらに、制御対象領域に設置された照明やプロジェクタを用いて、歩行者3の周囲の明るさを変化させたり、歩行者3の視界範囲内に映像を表示させてもよい。これにより、歩行者3の振動環境や視覚環境を制御することができ、歩行者3の触覚や視覚を通じて当該歩行者3を所望の歩行状態に誘導し、目標とする生理心理状態に誘導することができる。
【0098】
(出力部が出力する音について)
上述の実施の形態では、出力部20が出力する音として「枯葉」「水たまり」「鉄板」等を例示したが、その他の音を出力させてもよい。例えば、電子音、雷、楽器等の音を出力させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
この発明に係る歩行環境制御システムは、歩行環境を制御し、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導することができる、歩行環境制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 歩行環境制御システム
2 オフィス
2a 第1空間
2b 第2空間
2c 第3空間
3 歩行者
10 入力部
11 接地センサ
12 カメラ
20 出力部
30 処理部
31 現在歩行状態特定部
32 行き先取得部
33 目標生理心理状態特定部
34 出力処理部
40 記憶部
41 目標心理テーブル
42 目標歩調テーブル
43 目標心理−音種テーブル
44 好み−音種テーブル
45 履歴−音種DB
46 自然環境−音種テーブル
47 上下限歩調決定テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行環境制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者の歩行環境に影響を与える技術が用いられており、例えば、ユーザの動作に合わせて音楽等を再生する再生態様制御装置も提案されている(例えば、特許文献1)。この再生態様制御装置は、ユーザの上下動を基にユーザの歩行テンポを検出し、当該ユーザの歩行テンポに音楽コンテンツの再生速度を合わせるように制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−156641号公報(段落「0017」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、商業施設における顧客の購買意欲の促進や、作業環境における作業者の作業効率の向上には、これらの顧客や作業者の生理的・心理的な状態(以下「生理心理状態」)を購買や作業に適した状態に誘導することが重要であると考えられる。しかしながら、上記特許文献1に記載の装置は、単に歩行者の歩行テンポに合わせて音楽を再生するものに過ぎず、歩行者の生理心理状態について何ら考慮していなかった。このため、歩行者の生理心理状態を所望の状態へと誘導することができず、購買意欲の促進や作業者の作業効率の向上に資することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、歩行環境を制御し、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導することができる、歩行環境制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の歩行環境制御システムは、歩行者の行き先と、当該歩行者の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連づけて格納する目標生理心理状態格納手段と、歩行者の行き先を所定方法で取得する行き先取得手段と、前記行き先取得手段が取得した行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する、目標生理心理状態特定手段と、前記歩行者の歩行動作を検出することにより、当該歩行者の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する、現在歩行状態特定手段と、前記目標生理心理状態特定手段が特定した目標生理心理状態に前記歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき、前記歩行者の歩行環境を前記特定した歩行環境とするための出力を行う出力手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の歩行環境制御システムは、請求項1に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記行き先取得手段は、前記歩行者の行き先を特定するための行き先情報を取得し、前記目標生理心理状態特定手段は、前記行き先取得手段が取得した行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する。
【0008】
また、請求項3に記載の歩行環境制御システムは、請求項1又は2に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記現在歩行状態特定手段は、前記歩行者の現在の歩調を特定する。
【0009】
また、請求項4に記載の歩行環境制御システムは、請求項1から3のいずれか一項に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記出力手段は、前記歩行環境として音環境を特定し、前記歩行者の音環境を当該特定した音環境とするための音を出力する。
【0010】
また、請求項5に記載の歩行環境制御システムは、請求項4に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記出力手段は、出力する音の種別を前記音環境として特定する。
【0011】
また、請求項6に記載の歩行環境制御システムは、請求項4又は5に記載の歩行環境制御システムにおいて、前記出力手段は、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき前記音を出力するタイミングを、前記音環境として特定する。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の歩行環境制御システムによれば、歩行者の行き先に基づいて適切な目標生理心理状態を特定することができる。さらに、目標生理心理状態に歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定手段が特定した現在歩調に基づき、歩行者の歩行環境を当該特定した歩行環境とするための出力を行うので、歩行者を所望の歩行状態に誘導し、当該歩行者の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の歩行環境制御システムによれば、歩行者の行き先を特定するための行き先情報を取得し、当該行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を歩行者の目標生理心理状態として特定するので、歩行者に適した目標生理心理状態をより正確に特定することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の歩行環境制御システムによれば、現在歩行状態特定手段は歩行者の現在の歩調を特定するので、歩行者の歩調を介して当該歩行者の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の歩行環境制御システムによれば、出力手段は音を出力するので、歩行者の音環境を制御することができ、歩行者の聴覚を通じて当該歩行者を所望の歩行状態に誘導し、目標とする生理心理状態に誘導することができる。
【0016】
また、請求項5に記載の歩行環境制御システムによれば、出力手段は、出力する音の種別を音環境として特定するので、歩行者の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適当な音種を特定し、当該音種の音によって歩行者の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の歩行環境制御システムによれば、出力手段は、現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき音を出力するタイミングを、音環境として特定するので、音の出力タイミングに歩行者の歩調を引き込み、歩行状態の変化を介して当該歩行者の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】歩行環境制御システムを適用したオフィスの斜視図である。
【図2】実施の形態に係る歩行環境制御システムを例示するブロック図である。
【図3】目標心理テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図4】目標歩調テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図5】目標心理−音種テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図6】好み−音種テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図7】履歴−音種DBに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図8】自然環境−音種テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図9】上下限歩調決定テーブルに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図10】歩行環境制御処理を示したフローチャートである。
【図11】音種決定処理のフローチャートである。
【図12】目標生理心理状態による音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図13】歩行者の好みによる音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図14】出力履歴による音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図15】自然環境による音種選択ルーチンのフローチャートである。
【図16】引き込み出力処理のフローチャートである。
【図17】図16に続く引き込み出力処理のフローチャートである。
【図18】図17に続く引き込み出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る歩行環境制御システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、〔III〕最後に、実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態に係る歩行環境制御システムは、商業施設やオフィス等、歩行者が歩行する任意の歩行環境の制御に適用可能なシステムである。
【0021】
実施の形態に係る歩行環境制御システムの特徴の一つは、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導するための歩行状態を特定し、当該歩行者の歩行環境を、特定した歩行状態に当該歩行者を誘導するための歩行環境とする点にある。ここで「歩行環境」とは、歩行者の各種感覚(触覚、温覚、冷覚、痛覚、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、平衡感覚等)に影響しうるもの全てを含む概念であり、例えば音、振動、光等が含まれる。この歩行環境を制御して歩行者を所望の歩行状態に誘導することにより、当該歩行者の生理心理状態を所望の状態に誘導することが出来る。
【0022】
〔II〕実施の形態の具体的内容
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。図1は歩行環境制御システムを適用したオフィスの斜視図である。図1に示すように、以下では歩行環境制御システム1がオフィス2に設置された場合であって、制御対象領域に第1空間2a、第2空間2b、及び第3空間2cの出入り口が存在している場合を例として説明する。
【0023】
(構成)
図2は、実施の形態に係る歩行環境制御システムを例示するブロック図である。図2に示すように、この歩行環境制御システム1は、入力部10、出力部20、処理部30、及び記憶部40を備えている。
【0024】
(構成−入力部)
入力部10は、処理部30が実行する各種処理に必要な情報を当該処理部30に入力する入力手段であり、接地センサ11、及びカメラ12を備えている。接地センサ11は、歩行者3の足の接地を検出する。この接地センサ11としては、例えば赤外線遮蔽センサを用いることができる。具体的には、赤外線を発光する発光部と、発光部から発光された赤外線を受光する受光部とを、床面に沿って対向配置する。これにより、発光部と受光部との間で赤外線が遮蔽された場合、床面に接地した歩行者3の足によって赤外線が遮蔽されたとして、歩行者3の足の接地を検出することができる。カメラ12は、歩行環境制御システム1の制御対象領域を撮影する。これらの接地センサ11及びカメラ12からの出力は、処理部30に入力される。
【0025】
(構成−出力部)
出力部20は、処理部30の制御に基づいて歩行者3の歩行環境を所定の歩行環境とするための出力を行う出力手段である。この出力部20の具体的な構成は任意であり、例えば音を出力するスピーカを用いることができる。
【0026】
(構成−処理部)
処理部30は、歩行環境制御システム1に関する計算処理を行う処理手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0027】
この処理部30は、機能概念的に、現在歩行状態特定部31、行き先取得部32、目標生理心理状態特定部33、及び出力処理部34を備えている。現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する現在歩行状態特定手段である。行き先取得部32は、歩行者3の行き先を所定方法で取得する行き先取得手段である。目標生理心理状態特定部33は、歩行者3の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態を特定する、目標生理心理状態特定手段である。出力処理部34は、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に歩行者3を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩行状態に基づき、歩行者3の歩行環境を当該特定した歩行環境とするための出力を出力部20に行わせるものであり、出力部20と共に特許請求の範囲における出力手段を構成する。これらの処理部30の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0028】
(構成−記憶部)
記憶部40は、歩行環境制御システム1の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0029】
この記憶部40は、目標心理テーブル41、目標歩調テーブル42、目標心理−音種テーブル43、好み−音種テーブル44、履歴−音種データベース(以下、データベースを「DB」と称する)45、自然環境−音種テーブル46、及び上下限歩調決定テーブル47を備えている。
【0030】
目標心理テーブル41は、歩行者3の行き先と、歩行者3の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連付けて格納する目標生理心理状態格納手段である。図3は目標心理テーブル41に格納されている情報の内容を例示した表である。図3に示すように、目標心理テーブル41は、テーブル項目として「行き先」及び「目標心理」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「行き先」に対応して格納される情報は、歩行者3の行き先を特定する情報である(図3では「第1空間」、「第2空間」、「第3空間」)。項目「目標心理」に対応して格納される情報は、歩行者3の行き先に対応する目標生理心理状態を特定する情報である。例えば、歩行者3の行き先としての第1空間2aが会議室である場合、当該会議室にて行われる会議に出席する歩行者3はある程度の緊張感を持っていることが望ましいため、項目「行き先」の「第1空間」に対応する目標生理心理状態としては、図3に示すように「緊張」が格納される。また、歩行者3の行き先としての第2空間2bが例えば執務エリアである場合、当該執務エリアで通常業務を行う歩行者3は緊張とリラックスとの中間の心理状態であることが望ましいため、項目「行き先」の「第2空間」に対応する目標生理心理状態としては、図3に示すように「普通」が格納される。また、歩行者3の行き先としての第3空間2cが例えば食堂である場合、当該食堂で食事をする歩行者3はリラックスすることが可能であるため、項目「行き先」の「第3空間」に対応する目標生理心理状態としては、図3に示すように「リラックス」が格納される。
【0031】
目標歩調テーブル42は、歩行者3の目標生理心理状態と、当該歩行者3の歩行状態を誘導する目標としての目標歩調とを、相互に関連付けて格納する。図4は目標歩調テーブル42に格納されている情報の内容を例示した表である。図4に示すように、目標歩調テーブル42はテーブル項目として「目標心理」及び「目標歩調」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「目標心理」に対応して格納される情報は目標生理心理状態を特定する情報である。項目「目標歩調」に対応して格納される情報は、歩行者3の歩調を誘導する内容を特定する情報(図4では、「遅」「維持」「速」)である。例えば、目標心理が「リラックス」の場合は、歩行者3の生理心理状態をリラックスした状態とするためには、当該歩行者3の歩調を遅くするように誘導を行うことが有効と考えられるため、目標歩調を「遅」としている。また、目標心理が「普通」の場合は、歩行者3の生理心理状態を普通の状態とするためには、当該歩行者3の歩調を維持するように誘導を行うことが有効と考えられるため、目標歩調を「維持」としている。また、目標心理が「緊張」の場合は、歩行者3の生理心理状態を緊張した状態とするためには、当該歩行者3の歩調を速くするように誘導を行うことが有効と考えられるため、目標歩調を「速」としている。
【0032】
目標心理−音種テーブル43は、歩行者3の目標生理心理状態、出力部20から出力させる音の種別(以下「音種」と表記する)、及び各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位を、相互に関連付けて格納する。図5は目標心理−音種テーブル43に格納されている情報の内容を例示した表である。図5に示すように、目標心理−音種テーブル43はテーブル項目として「優先順位ID」「目標心理」及び「音種」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「優先順位ID」に対応して格納される情報は、各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位を一意に識別する識別情報である(図5では「1」「2」等)。項目「目標心理」に対応して格納される情報は目標生理心理状態を特定する情報である。項目「音種」に対応して格納される情報は、目標生理心理状態に対応して出力部20から出力させる音種を特定する情報(図5では「水たまり」「膝上までの水」等)である。例えば、図5の例では、歩行者3の目標生理心理状態が「リラックス」である場合、出力部20から出力させる音種は、優先順位の高い順に「水たまり」「膝上までの水」「枯葉−乾燥」「枯葉−湿気」となっている。また、目標生理心理状態が「普通」である場合、出力部20から出力させる音種は、優先順位の高い順に「草むら」「玉石」「雪」となっている。また、目標生理心理状態が「緊張」である場合、出力部20から出力させる音種は、優先順位の高い順に「鉄板」「古い板張り」となっている。
【0033】
好み−音種テーブル44は、歩行者3の好み、出力部20から出力させる音種、及び各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位を、相互に関連付けて格納する。図6は好み−音種テーブル44に格納されている情報の内容を例示した表である。図6に示すように、好み−音種テーブル44はテーブル項目として「優先順位ID」「音種」及び「好み」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。このうち、項目「好み」に対応して格納される情報は、歩行者3の好みを特定する情報(図6では「嫌い」「普通」「好き」)である。例えば、図6の例では、音種「水たまり」「膝上までの水」は歩行者3が「嫌い」な音種となっている。また、音種「枯葉−乾燥」「枯葉−湿気」「草むら」「雪」「鉄板」「古い板張り」については歩行者3の好みが「普通」の音種となっている。また、音種「玉石」については、歩行者3が「好き」な音種となっている。
【0034】
履歴−音種DB45は、出力部20から出力させた音種と、当該出力を行った日とを、相互に関連付けて格納する。図7は履歴−音種DB45に格納されている情報の内容を例示した表である。図7に示すように、履歴−音種DB45はDB項目として「出力日」及び「音種」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。このうち、「出力日」に対応して格納される情報は、出力部20から音を出力させた日を特定する情報である(図7では「2008年10月17日」等)。例えば、図7の例では、2008年10月17日には音種「枯葉−湿気」が出力され、2008年10月18日には音種「枯葉−乾燥」が出力され、2008年10月19日には音種「玉石」が出力されている。
【0035】
自然環境−音種テーブル46は、各音種の音を出力部20から出力させる際の優先順位、自然環境、及び出力部20から出力させる音種を、相互に関連付けて格納する。図8は自然環境−音種テーブル46に格納されている情報の内容を例示した表である。図8に示すように、自然環境−音種テーブル46はテーブル項目として「優先順位ID」「自然環境」及び「音種」を備え、これらの項目に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。このうち、項目「自然環境」に対応して格納される情報は、各音種と何らかの関連性を有する季節や天気等を特定する情報であり、例えば図8に示すように、項目「季節」及び「天気」に対応する情報が格納される。図8では、例えば音種「水たまり」に対応する自然環境として、水たまりが発生しやすい季節「梅雨」、及び天気「雨」が格納されている。また、音種「膝上までの水」に対応する自然環境としては、海や川を連想させる季節「夏」が格納され、天気については「不特定」が格納されている。ここで「不特定」とは、対応する音種の出力が特定の天気に制約されないことを意味している。
【0036】
上下限歩調決定テーブル47は、歩行者3の歩行状態を誘導する目標としての目標歩調の上限及び下限を、歩行者3の属性(例えば性別や年代)と相互に関連付けて格納する。図9は上下限歩調決定テーブル47に格納されている情報の内容を例示した表である。図9に示すように、上下限歩調決定テーブル47はテーブル項目として「性別」及び「年代」を備え、これらの項目に対応して格納される情報と対応付けて、目標歩調の上限と下限とが格納されている。項目「性別」に対応して格納される情報は、歩行者3の性別を特定する情報である(図9では「男性」及び「女性」)。項目「年代」に対応して格納される情報は、歩行者3の年代を特定する情報である(図9では「20歳未満」「20歳以上40歳未満」「40歳以上60歳未満」「60歳以上」)。図9では、例えば20歳未満の男性における上限歩調は90歩/分、下限歩調は50歩/分となっている。これに対して、60歳以上の女性における上限歩調は50歩/分、下限歩調は40歩/分となっており、20歳未満の男性と比較して目標歩調の上下限が低く、幅の狭いものとなっている。このように、歩行者3の性別や年代によって異なる体力や体格等を考慮した目標歩調の上下限を上下限歩調決定テーブル47に格納することができる。
【0037】
なお、目標心理テーブル41、目標歩調テーブル42、目標心理−音種テーブル43、好み−音種テーブル44、自然環境−音種テーブル46、及び上下限歩調決定テーブル47に情報を格納するタイミングや方法は任意で、例えば公知の入力装置(図示省略)を用いて各種の情報を格納することができる。また、履歴−音種DB45に格納される情報については、後述する歩行環境制御処理の実行に応じて随時情報を追加格納される。また、好み−音種テーブル44及び履歴−音種DB45については、各歩行者3に一意に対応づけられた複数の好み−音種テーブル44及び履歴−音種DB45が記憶部40に格納される。
【0038】
(処理)
次に、このように構成される歩行環境制御システム1によって実行される歩行環境制御処理について説明する。図10は歩行環境制御処理を示したフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。
【0039】
この歩行環境制御処理は、例えば歩行環境制御システム1への電源投入後に自動的に起動される。歩行環境制御処理が起動されると、現在歩行状態特定部31は、入力部10からの入力に基づき、歩行環境制御システム1の制御対象領域における歩行者3の有無を判定する(SA1)。例えば、接地センサ11によって歩行者3の足の接地が検出された場合に歩行者3が存在すると判定させてもよい。あるいは、制御対象領域を撮影しているカメラ12から入力された画像情報を公知の画像解析技術を用いて解析し、当該画像情報に人間の映像が含まれていた場合に歩行者3が存在すると判定させてもよい。さらに、歩行者3の識別情報を公知の方法で取得し、当該識別情報に基づき歩行者3を一意に識別してもよい。
【0040】
その結果、歩行者3が存在しないと判定した場合(SA1、No)、現在歩行状態特定部31は歩行者3の有無の判定を継続する(SA1)。一方、歩行者3が存在すると判定した場合(SA1、Yes)、行き先取得部32は、歩行者3の行き先を取得する(SA2)。例えば、行き先取得部32は、歩行者3の足の接地を検出した接地センサ11の位置に基づき、当該歩行者3の位置を推定する。同様に、複数の接地センサ11からの出力に基づき時系列データとして歩行者3の位置を推定することにより、当該歩行者3の歩行方向を特定することができる。あるいは、歩行者3の識別情報を公知の方法で取得し、当該識別情報に基づいて、公知のスケジューラから当該歩行者3のスケジュールを特定し、当該スケジュールに基づき歩行者3の行き先を特定することもできる。あるいは、カメラ12から入力された画像情報を公知の画像解析技術を用いて解析し、撮影された歩行者3の位置や歩行方向等を特定することもできる。具体的には、画像情報における各画素位置と制御対象領域における位置座標との対応テーブル(図示省略)を予め記憶部40に記憶させておくことで、画像情報における歩行者3の画像の位置に対応する位置座標を当該対応テーブルから特定することができる。また、時系列データとして歩行者3の位置座標を取得することにより、当該歩行者3の歩行方向を特定することができる。
【0041】
次に、目標生理心理状態特定部33は、SA2で行き先取得部32が取得した行き先に対応する目標生理心理状態を目標心理テーブル41から取得し、当該取得した目標生理心理状態を歩行者3の目標生理心理状態として特定する(SA3)。図3に示した例では、行き先が第1空間2aの場合は「緊張」が目標生理心理状態として特定され、行き先が第2空間2bの場合は「普通」が目標生理心理状態として特定され、行き先が第3空間2cの場合は「リラックス」が目標生理心理状態として特定される。
【0042】
図10に戻り、出力処理部34は、SA3で目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に基づき、歩行者3の歩行状態を誘導する目標としての目標歩調を特定する(SA4)。例えば、出力処理部34は目標歩調テーブル42を参照し、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に対応して格納されている目標歩調を特定する。図4に示した例では、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態が「リラックス」の場合は「遅」が目標歩調として特定され、目標生理心理状態が「普通」の場合は「維持」が目標歩調として特定され、目標生理心理状態が「緊張」の場合は「速」が目標歩調として特定される。
【0043】
図10に戻り、出力処理部34は、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態に歩行者3を誘導するための歩行環境として出力部20から出力させる音の種別を特定するための、音種決定処理を実行する(SA5)。
【0044】
ここで、音種決定処理について説明する。図11は音種決定処理のフローチャートである。図11に示すように、音種決定処理が開始されると、出力処理部34は出力部20から出力させる音種の候補を選択するための音種選択ルーチンとして、最初の音種選択ルーチンを設定する(SB1)。音種選択ルーチンとしては、例えば、目標生理心理状態特定部33が特定した目標生理心理状態による音種選択ルーチン、歩行者3の好みによる音種選択ルーチン、出力部20からの音の出力履歴による音種選択ルーチン、及び出力部20から音を出力させる場合の自然環境による音種選択ルーチンがある。
【0045】
次に、出力処理部34は、設定された音種選択ルーチンを実行する(SB2)。そして、音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が0か否かを判定する(SB3)。その結果、選択された音種の数が0であった場合(SB3、Yes)、出力処理部34は、直前に実行した音種選択ルーチンでは適当な音種が選択されなかったものとし、その前回に実行した音種選択ルーチンにおいて選択された音種候補の中から最も優先順位が高い音種を、出力部20から出力させる音種として決定し(SB4)、メインルーチンに戻る。
【0046】
一方、SB2で実行した音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が0でなかった場合(SB3、No)、出力処理部34は、音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が1か否かを判定する(SB5)。その結果、選択された音種の数が1であった場合(SB5、Yes)、出力処理部34は、現在選択されている音種を出力部20から出力させる音種として決定し(SB6)、メインルーチンに戻る。
【0047】
また、音種選択ルーチンにおいて選択された音種の数が1でなかった場合(SB5、No)、出力処理部34は、次順の音種選択ルーチンがあるか否かを判定する(SB7)。その結果、全ての音種選択ルーチンを実行しており、次順の音種選択ルーチンがないと判定した場合(SB7、No)、現在選択されている音種候補の中で最も優先順位が高い音種を、出力部20から出力させる音種として決定し(SB8)、メインルーチンに戻る。
【0048】
一方、全ての音種選択ルーチンを実行しておらず、次順の音種選択ルーチンがあると判定した場合(SB7、Yes)、出力処理部34は出力部20から出力させる音種の候補を選択するための音種選択ルーチンとして、次順の音種選択ルーチンを設定する(SB9)。そして、SB2に戻り、SB9で設定した音種選択ルーチンを実行する(SB2)。
【0049】
ここで、各音種選択ルーチンについて説明する。図12は目標生理心理状態による音種選択ルーチンのフローチャート、図13は歩行者3の好みによる音種選択ルーチンのフローチャート、図14は出力履歴による音種選択ルーチンのフローチャート、図15は自然環境による音種選択ルーチンのフローチャートである。本実施の形態では、目標生理心理状態による音種選択ルーチン、好みによる音種選択ルーチン、出力履歴による音種選択ルーチン、自然環境による音種選択ルーチンの順に各音種選択ルーチンが実行される場合を例として説明する。
【0050】
まず、目標生理心理状態による音種選択ルーチンについて説明する。図12に示すように、目標生理心理状態による音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「リラックス」か否かを判定する(SC1)。その結果、目標生理心理状態が「リラックス」である場合(SC1、Yes)、出力処理部34は目標心理−音種テーブル43を参照し、項目「目標心理」における「リラックス」に対応して項目「音種」に格納されている音種を出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SC2)。図5の例では、目標心理「リラックス」に対応する音種として、「水たまり」「膝上までの水」「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が選択される。
【0051】
一方、目標生理心理状態が「リラックス」ではない場合(SC1、No)、出力処理部34は図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「緊張」であるか否かを判定する(SC3)。その結果、目標生理心理状態が「緊張」である場合(SC3、Yes)、出力処理部34は目標心理−音種テーブル43を参照し、項目「目標心理」における「緊張」に対応して項目「音種」に格納されている音種を出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SC4)。図5の例では、目標心理「緊張」に対応する音種として、「鉄板」及び「古い板張り」が選択される。
【0052】
また、目標生理心理状態が「緊張」ではない場合(SC3、No)、すなわち目標生理心理状態が「普通」である場合は、出力処理部34は目標心理−音種テーブル43を参照し、項目「目標心理」における「普通」に対応して項目「音種」に格納されている音種を出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SC5)。図5の例では、目標心理「普通」に対応する音種として、「草むら」「玉石」及び「雪」が選択される。
【0053】
SC2、SC4、又はSC5の処理において、出力部20から出力させる音種の候補を選択した後、出力処理部34は選択した音種の候補を優先順位の高い順(優先順位IDの昇順)にソートし(SC6)、図11の音種決定処理に戻る。このように、目標生理心理状態による音種選択ルーチンにより、歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適した音種が選択される。
【0054】
次に、歩行者3の好みによる音種選択ルーチンについて説明する。図13に示すように、歩行者3の好みによる音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は歩行者3に対応して記憶部40に格納されている好み−音種テーブル44を参照し、項目「好み」における「好き」及び「普通」に対応して項目「音種」に格納されている音種を、出力部20から出力させる音種の候補として選択する(SD1)。例えば、図12の目標生理心理状態による音種選択ルーチンの結果、目標心理「リラックス」に対応する音種として「水たまり」「膝上までの水」「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が音種候補として選択されていた場合、これらの音種候補のうち、図6に例示した好み−音種テーブル44の項目「好み」における「好き」及び「普通」に対応して項目「音種」に格納されている音種である「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が音種候補として選択される。すなわち、歩行者3にとって嫌いな音種である「水たまり」及び「膝上までの水」が候補から除外される。これにより、歩行者3に不快な感情を想起させる音の出力を回避することができる。なお、例えば図10のSA2において歩行者3の識別情報を取得した場合、当該識別情報に対応して記憶部40に格納されている好み−音種テーブル44を参照することができる。
【0055】
SD1において、出力部20から出力させる音種の候補を選択した後、出力処理部34は選択した音種の候補を優先順位の高い順(優先順位IDの昇順)にソートし(SD2)、図11の音種決定処理に戻る。
【0056】
次に、出力履歴による音種選択ルーチンについて説明する。図14に示すように、出力履歴による音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は履歴−音種DB45を参照し、音種候補として現在選択されている音種が過去に出力された日を特定する(SE1)。そして、音種の候補を、過去に出力されていない音種、出力日の古い順、優先順位の高い順にソートし(SE2)、図11の音種決定処理に戻る。例えば、図13の歩行者3の好みによる音種選択ルーチンの結果、「枯葉−乾燥」及び「枯葉−湿気」が音種候補として選択されていた場合、図7の履歴−音種DB45によれば、音種「枯葉−乾燥」は2008年10月18日に出力され、音種「枯葉−湿気」は2008年10月17日に出力されている。そこで、出力日の古い順、すなわち「枯葉−湿気」、「枯葉−乾燥」の順に音種候補をソートする。これにより、歩行者3にとって常に新鮮な音種の音を出力することができ、当該歩行者3の飽きを防止することができる。
【0057】
次に、自然環境による音種選択ルーチンについて説明する。図15に示すように、自然環境による音種選択ルーチンが開始されると、出力処理部34は自然環境−音種テーブル46を参照し、音種候補として現在選択されている音種に対応する自然環境を特定する(SF1)。そして、例えば公知のネットワークを介して取得した時刻情報や天候情報に基づき、歩行者3が歩行している現在の季節や天気を特定し、音種の候補を、当該特定した現在の季節と同じ順、現在の天気と同じ順、優先順位の高い順にソートし(SF2)、図11の音種決定処理に戻る。例えば、図14の出力履歴による音種選択ルーチンの結果、「枯葉−湿気」及び「枯葉−乾燥」が音種候補として選択されていた場合、図8の自然環境−音種テーブル46によれば、音種「枯葉−湿気」に対応する季節は「秋」、天気は「雨」と特定される。また、音種「枯葉−乾燥」に対応する季節は「秋」、天気は「晴」と特定される。ここで、現在の季節が夏であり、天気が晴である場合、何れの音種候補も現在の季節には一致していないことから、現在の天気に一致する音種「枯葉−乾燥」、次に現在の天気に一致しない音種「枯葉−湿気」の順に音種候補をソートする。
【0058】
図11に戻り、このように、音種「枯葉−乾燥」、音種「枯葉−湿気」の順に音種候補が選択された状態で全ての音種選択ルーチンが実行され、次順の音種選択ルーチンが無い場合、図11のSB8において、出力処理部34は、現在選択されている音種候補の中で最も優先順位が高い音種である「枯葉−乾燥」を出力部20から出力させる音種として決定する。これにより、歩行者3の好み、各音種の出力履歴、及び自然環境を考慮した上で、当該歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適当な音種を決定することができる。
【0059】
図10に戻り、SA5で音種決定処理を実行し、出力部20から出力させる音種を決定した後、出力処理部34は、SA4で特定した目標歩調が「維持」か否かを判定する(SA6)。その結果、目標歩調が「維持」であった場合(SA6、Yes)、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SA7)。例えば、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の足の接地を検出した接地センサ11からの入力に基づき、歩行者3の足の接地の時間間隔を特定し、当該特定した時間間隔から歩行者3の現在の歩調(例えば一分当りの歩数)を特定する。
【0060】
そして、出力処理部34は、現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在の歩調と一致するタイミングで、SA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SA8)。例えば、出力処理部34は、予め記憶部40に記憶されている音種「枯葉−乾燥」に対応する音のデータを取得し、接地センサ11からの入力に基づいて特定される歩行者3の足の接地と同じタイミングで出力部20から出力させる。このように、乾燥した枯葉を踏む音によって歩行者3の生理心理状態をリラックスした状態に誘導できると共に、足の接地に呼応して音が出力されることによる心地よさによっても、当該歩行者3の生理心理状態をリラックスした状態に誘導することができる。
【0061】
その後、出力処理部34は、SA7で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、SA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SA9)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SA9、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、現在歩行状態特定部31は、再度歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SA7)。
【0062】
一方、歩行者3の現在位置と行き先とが一致している場合(SA9、Yes)、歩行者3が行き先に到着したものとし、出力処理部34は出力部20からの音の出力を終了させる(SA10)。
【0063】
また、SA6の処理において、SA4で特定した目標歩調が「維持」でないと判定した場合(SA6、No)、すなわち目標歩調が「速」又は「遅」であった場合、出力処理部34は引き込み出力処理を実行する(SA11)。
【0064】
ここで、引き込み出力処理について説明する。この引き込み出力処理は、歩行者3の歩調を目標歩調に引き込むように出力部20から音の出力(引き込み出力)を行わせる処理である。図16から図18は引き込み出力処理のフローチャートである。
【0065】
図16に示すように、引き込み出力処理が開始されると、出力処理部34は出力部20からの引き込み出力に対する歩行者3の慣らしを開始する慣らし開始時刻として、現在時刻を設定する(SG1)。
【0066】
続いて、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SG2)。次に、出力処理部34は、SG2で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SG3)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SG3、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、出力処理部34は、現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在の歩調と一致するタイミングで、図10のSA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SG4)。
【0067】
次に、出力処理部34は、SG1で設定した慣らし開始時刻から現在時刻までの時間が、予め設定されている所定時間Xよりも長いか否かを判定する(SG5)。そして、慣らし開始時刻から現在時刻までの時間がXより長くない場合(X以下である場合)(SG5、No)、SG2に戻り、現在歩行状態特定部31が、歩行者3の現在の歩調及び位置を再度取得する(SG2)。一方、慣らし開始時刻から現在時刻までの時間がXより長い場合(SG5、Yes)、出力部20からの引き込み出力に対する歩行者3の慣らしが完了したものとし、出力処理部34は、図10のSA4で特定した目標歩調が「速」か否かを判定する(SG6)。
【0068】
その結果、目標歩調が「速」であった場合(SG6、Yes)、出力処理部34は、歩行者3の現在歩調に基づき出力部20から音を出力させるタイミングを特定するための係数αを1.05に設定する(SG7)。一方、目標歩調が「速」ではなかった場合(目標歩調が「遅」であった場合)(SG6、No)、出力処理部34は係数αを0.95に設定する(SG8)。
【0069】
SG7又はSG8の処理の後、出力処理部34は、出力部20から音を出力させるタイミング(以下「中間出力歩調」と表記する)を、「現在歩調×α」として特定する(SG9)。例えば、SG2で特定した現在歩調が60歩/分であり、SG7において係数αが1.05に設定された場合、中間出力歩調=60×1.05=63歩/分となる。
【0070】
続いて、図17に進み、出力処理部34は上下限歩調決定テーブル47を参照し、SG9で特定した中間出力歩調が、歩行者3の属性に対応する下限歩調より大きく、且つ上限歩調より小さいか否かを判定する(SG10)。例えば、図10のSA2において歩行者3の識別情報を取得した場合、当該識別情報に対応付けて記憶部40に予め記憶されている歩行者3の性別及び年齢を特定し、当該特定した性別及び年齢に対応して上下限歩調決定テーブル47に格納されている上下限歩調を特定することができる。例えば、歩行者3が30歳の男性である場合、上限歩調は90歩/分、下限歩調は50歩/分となる。
【0071】
その結果、中間出力歩調が、歩行者3の属性に対応する下限歩調より大きく、且つ上限歩調より小さい場合(SG10、Yes)、出力処理部34は、歩行者3の歩調を中間出力歩調に引き込み可能とし、引き込み開始時刻として現在時刻を設定し(SG11)、引き込み開始時の歩調として現在歩調を設定する(SG12)。
【0072】
続いて、出力処理部34は、中間出力歩調に対応するタイミングで、図10のSA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SG13)。
【0073】
例えば、図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「リラックス」、SA4で特定した目標歩調が「遅」であり、SA5で決定した音種が「枯葉−乾燥」、図16のSG2で特定した現在歩調が60歩/分、及びSG9で特定した中間出力歩調が60×0.95=57歩/分である場合、出力処理部34は、予め記憶部40に記憶されている音種「枯葉−乾燥」に対応する音のデータを取得し、当該取得した音を中間出力歩調に対応する57歩/分のタイミングで出力部20から出力させる。これにより、乾燥した枯葉の音によって歩行者3の気分をリラックスさせると共に、現在歩調よりもゆっくりとした音の出力タイミングに歩行者3の歩調を引き込み、徐々に歩調を遅らせて当該歩行者3の気分をリラックスさせることが可能となる。
【0074】
また、図10のSA3で特定した目標生理心理状態が「緊張」、SA4で特定した目標歩調が「速」であり、SA5で決定した音種が「鉄板」、図16のSG2で特定した現在歩調が60歩/分、及びSG9で特定した中間出力歩調が60×1.05=63歩/分である場合、出力処理部34は、予め記憶部40に記憶されている音種「鉄板」に対応する音のデータを取得し、当該取得した音を中間出力歩調に対応する63歩/分のタイミングで出力部20から出力させる。これにより、鉄板の音によって歩行者3の気分を緊張させると共に、現在歩調よりも速い音の出力タイミングに歩行者3の歩調を引き込み、徐々に歩調を速めて当該歩行者3の気分を高揚させることが可能となる。
【0075】
続いて、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SG14)。次に、出力処理部34は、SG14で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SG15)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SG15、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、出力処理部34は、SG14で現在歩行状態特定部31が特定した現在歩調と、SG9で出力処理部34が特定した中間出力歩調とが一致したか否かを判定する(SG16)。
【0076】
その結果、現在歩調と中間出力歩調とが一致した場合(SG16、Yes)、歩行者3の歩調を中間出力歩調まで引き込むことができたものとし、出力部20から出力させる音の音量を増加させると共に、制御対象領域における照明(図示省略)の照度を増加させる(SG17)。この音量及び照度の増加により、歩行者3が目標歩調にて歩行を行っていることを当該歩行者3に提示し、目標歩調に追随して歩行することへのモチベーション増加を図ることができる。その後、図16のSG1に戻り、出力処理部34は出力部20からの引き込み出力に対する歩行者3の慣らしを再度開始する。
【0077】
また、図17のSG16において、現在歩調と中間出力歩調とが一致していない場合(SG16、No)、図18に進み、出力処理部34は、SG11で設定した引き込み開始時刻から現在時刻までの時間が、予め設定されている所定時間Yよりも短いか否かを判定する(SG18)。その結果、引き込み開始時刻から現在時刻までの時間がYよりも短い場合(SG18、Yes)、図17のSG13に戻り、出力処理部34は、図10のSA5で決定した音種の音を中間出力歩調に対応するタイミングで出力部20から出力させる(SG13)。
【0078】
一方、引き込み開始時刻から現在時刻までの時間がYよりも短くない場合(SG18、No)、あるいは、図17のSG10で中間出力歩調が歩行者3の属性に対応する下限歩調以下、又は上限歩調以上であった場合(SG10、No)、出力処理部34は、歩行者3の歩調を中間出力歩調に引き込むことが困難とし、現在歩調を中間出力歩調として再設定する(SG19)。その後、出力処理部34は、SG19で設定した中間出力歩調に対応するタイミングで、図10のSA5で決定した音種の音を出力部20から出力させる(SG20)。
【0079】
続いて、現在歩行状態特定部31は、歩行者3の現在の歩調及び位置を取得する(SG21)。次に、出力処理部34は、SG21で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致したか否かを判定する(SG22)。その結果、歩行者3の現在位置と行き先とが一致していない場合(SG22、No)、歩行者3は行き先に到着していないとし、出力処理部34はSG19に戻り、SG21で現在歩行状態特定部31が特定した現在歩調を中間出力歩調として再設定する(SG19)。
【0080】
また、図16のSG2で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と、図10のSA2で行き先取得部32が取得した歩行者3の行き先とが一致した場合(SG3、Yes)、図17のSG14で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と歩行者3の行き先とが一致した場合(SG15、Yes)、及び図18のSG21で現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置と歩行者3の行き先とが一致した場合(SG22、Yes)、図16に戻り、出力処理部34は、照明照度を通常の照度に復帰させ(SG23)、出力部20からの音の出力を終了させ(SG24)、メインルーチンに戻る。
【0081】
図10に戻り、SA10で出力部20からの音の出力を終了させた後、又はSA11で引き込み出力処理を実行した後、SA1に戻り、現在歩行状態特定部31は歩行者3の有無を判定する(SA1)。以降、同様にSA1からSA11の処理を所定の周期で繰り返し実行する。
【0082】
(効果)
このように実施の形態によれば、歩行者3の行き先に基づいて適切な目標生理心理状態を特定することができる。さらに、目標生理心理状態に歩行者3を誘導するための歩行環境を特定し、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩調に基づき、歩行者3の歩行環境を当該特定した歩行環境とするための出力を行うので、歩行者3を所望の歩行状態に誘導し、当該歩行者3の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0083】
特に、歩行者3の行き先を特定するための行き先情報を取得し、当該行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を目標心理テーブル41から取得し、当該取得した目標生理心理状態を歩行者3の目標生理心理状態として特定するので、歩行者3に適した目標生理心理状態をより正確に特定することができる。
【0084】
また、現在歩行状態特定部31は歩行者3の現在の歩調を特定するので、歩行者3の歩調を介して当該歩行者3の生理心理状態を目標とする状態に誘導することができる。
【0085】
また、出力部20に音を出力させるので、歩行者3の音環境を制御することができ、歩行者3の聴覚を通じて当該歩行者3を所望の歩行状態に誘導し、目標とする生理心理状態に誘導することができる。
【0086】
また、出力処理部34は、出力する音の種別を音環境として特定するので、歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導するために適当な音種を特定し、当該音種の音によって歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【0087】
また、出力処理部34は、現在歩行状態特定部31が特定した現在歩行状態に基づき音を出力するタイミングを、音環境として特定するので、音の出力タイミングに歩行者3の歩調を引き込み、歩行状態の変化を介して当該歩行者3の生理心理状態を目標生理心理状態に誘導することができる。
【0088】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0089】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。さらに、本発明によって、上述していない課題を解決したり、上述していない効果を奏することもある。
【0090】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。例えば、複数の入力部10や出力部20を、ネットワークを介して処理部30と相互に通信可能に接続してもよい。
【0091】
(適用対象について)
上述の実施の形態では、オフィス2における歩行環境の制御に歩行環境制御システム1を適用した場合を例示したが、商業施設、公園、病院、公共施設等、任意の歩行環境の制御に歩行環境制御システム1を適用することもできる。例えば、商業施設への入口近傍を歩行環境制御システム1の制御対象領域とし、現在歩行状態特定部31により歩行者3の現在位置が商業施設への進入路内であると特定された場合、目標生理心理状態を「リラックス」とし、現在位置が商業施設への進入路外であると特定された場合、目標生理心理状態を「普通」とする。これにより、歩行者3の興味を商業施設に向かう方向に引き付けることができ、当該歩行者3を商業施設へと誘導することができる。また、歩行者3を誘導する方向を歩行者3の属性に基づいて変化させたり(例えば、歩行者3が女性の場合は商業施設に向かう方向、男性の場合は娯楽施設に向かう方向等)、全歩行者中の一定の割合の歩行者3を当該歩行者3の属性や希望とは無関係に所定方向に向かわせたりすることができる。また、歩行者3の気分を高揚させるような音を足の接地タイミングに合わせて出力することにより、歩行者3の購買意欲の促進に資することができる。
【0092】
また、歩行者3の行き先を、歩行者3の属性、歩行者3により公知の入力手段を介して事前に入力された希望の行き先、あるいは歩行者3とは切り離された基準等に基づいて特定してもよい。例えば、行き先情報を格納する行き先情報格納手段を備え、行き先取得部32は、必要に応じて当該行き先情報格納手段に格納された行き先情報を参照することで、歩行者3の行き先を特定できる。
【0093】
(生理心理状態について)
上述の実施の形態では、歩行者3の生理心理状態を「リラックス」「普通」「緊張」の3種類に分類したが、他の基準によって生理心理状態を分類してもよい。例えば、「執務中向き」「出社時向き」「情報消化向き」「長期休憩向き」等、業務の場面を基準として生理心理状態を分類してもよい。あるいは、「心地よさ」の程度に応じて、生理心理状態を複数段階に分類してもよい。
【0094】
(現在歩行状態の特定について)
上述の実施の形態では、現在歩行状態特定部31は歩行者3の現在の歩調及び位置を取得すると説明したが、他の情報を取得してもよい。例えば、歩行者3の心拍数、ホルモン分泌、皮膚電位、体表面温度、呼吸間隔、まばたき数等の生体情報を測定してもよい。さらに、これらの情報に基づき、歩行者3の現在の生理心理状態を特定してもよい。これにより、例えば歩行者3の現在の生理心理状態が目標生理心理状態と一致しているか否か等を判断することができる。
【0095】
(目標心理テーブルについて)
実施の形態では、目標心理テーブル41は、歩行者3の行き先と、歩行者3の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連付けて格納すると説明したが、行き先以外の歩行者3の属性と目標生理心理状態とを相互に関連付けて格納してもよい。例えば、歩行者3の嗜好と目標生理心理状態とを相互に関連付けて格納してもよい。この場合、現在歩行状態特定部31が特定した歩行者3の現在位置が、当該歩行者3の嗜好に合致する店舗の近傍である場合に、目標生理心理状態を「緊張」状態とするような制御を行うことができ、当該歩行者3の購買意欲を刺激することも可能である。
【0096】
(接地センサについて)
上述の実施の形態では、接地センサ11として赤外線遮蔽センサを用いる場合を例に挙げて説明したが、他の手段を用いることもできる。例えば、床面近傍に設けたレーザーレンジファインダ等の距離センサを用いて歩行者3の足の接地を検出することができる。あるいは、床面に埋設した圧力センサを用いて、歩行者3の足から当該床面に加えられた圧力を検出することにより、歩行者3の足の接地を検出することができる。あるいは、カメラ12を用いて撮影した床面近傍の画像情報を公知の画像解析技術を用いて解析することにより、歩行者3の足の接地を検出することもできる。
【0097】
(出力部について)
上述の実施の形態では、出力部20は音を出力すると説明したが、歩行者3の歩行環境に影響を与える他の出力を行わせてもよい。例えば、床に埋設されたアクチュエータを用いて、振動を出力させてもよい。すなわち、歩行者3の足の接地タイミングに合わせて床を振動させてもよい。さらに、制御対象領域に設置された照明やプロジェクタを用いて、歩行者3の周囲の明るさを変化させたり、歩行者3の視界範囲内に映像を表示させてもよい。これにより、歩行者3の振動環境や視覚環境を制御することができ、歩行者3の触覚や視覚を通じて当該歩行者3を所望の歩行状態に誘導し、目標とする生理心理状態に誘導することができる。
【0098】
(出力部が出力する音について)
上述の実施の形態では、出力部20が出力する音として「枯葉」「水たまり」「鉄板」等を例示したが、その他の音を出力させてもよい。例えば、電子音、雷、楽器等の音を出力させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
この発明に係る歩行環境制御システムは、歩行環境を制御し、目標とする生理心理状態に歩行者を誘導することができる、歩行環境制御システムに有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 歩行環境制御システム
2 オフィス
2a 第1空間
2b 第2空間
2c 第3空間
3 歩行者
10 入力部
11 接地センサ
12 カメラ
20 出力部
30 処理部
31 現在歩行状態特定部
32 行き先取得部
33 目標生理心理状態特定部
34 出力処理部
40 記憶部
41 目標心理テーブル
42 目標歩調テーブル
43 目標心理−音種テーブル
44 好み−音種テーブル
45 履歴−音種DB
46 自然環境−音種テーブル
47 上下限歩調決定テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の行き先と、当該歩行者の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連づけて格納する目標生理心理状態格納手段と、
歩行者の行き先を所定方法で取得する行き先取得手段と、
前記行き先取得手段が取得した行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する、目標生理心理状態特定手段と、
前記歩行者の歩行動作を検出することにより、当該歩行者の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する、現在歩行状態特定手段と、
前記目標生理心理状態特定手段が特定した目標生理心理状態に前記歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき、前記歩行者の歩行環境を前記特定した歩行環境とするための出力を行う出力手段と、
を備えた歩行環境制御システム。
【請求項2】
前記行き先取得手段は、
前記歩行者の行き先を特定するための行き先情報を取得し、
前記目標生理心理状態特定手段は、
前記行き先取得手段が取得した行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する、
請求項1に記載の歩行環境制御システム。
【請求項3】
前記現在歩行状態特定手段は、前記歩行者の現在の歩調を特定する、
請求項1又は2に記載の歩行環境制御システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記歩行環境として音環境を特定し、前記歩行者の音環境を当該特定した音環境とするための音を出力する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の歩行環境制御システム。
【請求項5】
前記出力手段は、出力する音の種別を前記音環境として特定する、
請求項4に記載の歩行環境制御システム。
【請求項6】
前記出力手段は、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき前記音を出力するタイミングを、前記音環境として特定する、
請求項4又は5に記載の歩行環境制御システム。
【請求項1】
歩行者の行き先と、当該歩行者の生理心理状態を誘導する目標としての目標生理心理状態とを、相互に関連づけて格納する目標生理心理状態格納手段と、
歩行者の行き先を所定方法で取得する行き先取得手段と、
前記行き先取得手段が取得した行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する、目標生理心理状態特定手段と、
前記歩行者の歩行動作を検出することにより、当該歩行者の現在の歩行に関する現在歩行状態を特定する、現在歩行状態特定手段と、
前記目標生理心理状態特定手段が特定した目標生理心理状態に前記歩行者を誘導するための歩行環境を特定し、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき、前記歩行者の歩行環境を前記特定した歩行環境とするための出力を行う出力手段と、
を備えた歩行環境制御システム。
【請求項2】
前記行き先取得手段は、
前記歩行者の行き先を特定するための行き先情報を取得し、
前記目標生理心理状態特定手段は、
前記行き先取得手段が取得した行き先情報に対応する行き先に関連付けて格納されている目標生理心理状態を前記目標生理心理状態格納手段から取得し、当該取得した目標生理心理状態を前記歩行者の目標生理心理状態として特定する、
請求項1に記載の歩行環境制御システム。
【請求項3】
前記現在歩行状態特定手段は、前記歩行者の現在の歩調を特定する、
請求項1又は2に記載の歩行環境制御システム。
【請求項4】
前記出力手段は、前記歩行環境として音環境を特定し、前記歩行者の音環境を当該特定した音環境とするための音を出力する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の歩行環境制御システム。
【請求項5】
前記出力手段は、出力する音の種別を前記音環境として特定する、
請求項4に記載の歩行環境制御システム。
【請求項6】
前記出力手段は、前記現在歩行状態特定手段が特定した現在歩行状態に基づき前記音を出力するタイミングを、前記音環境として特定する、
請求項4又は5に記載の歩行環境制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図5】
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【図7】
【図8】
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【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−270516(P2010−270516A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123869(P2009−123869)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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