説明

歩行者照明システム

【課題】 歩行者自身が提供した情報を利用し、簡単な機構と制御によって安全性の高い照明を行う。
【解決手段】 車両2にスポットランプ3を装備し、スポットランプ3から歩行者Mに向けてスポット光Sを照射する。歩行者Mは防犯ブザー等の発信機4を所持し、発信機4が歩行者Mの年齢を含む特性情報を発信する。道路施設5に中継器6とカメラ7を設置し、歩行者Mの特性情報と位置情報を車両2の制御装置に伝送する。制御装置は、歩行者Mの位置情報に基づいてスポットランプ3の旋回角度と点消灯を制御するとともに、歩行者Mの特性情報に応じてスポット光Sの照射パターンを変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両周辺の歩行者をスポット光で照明し、ドライバーの注意を喚起する歩行者照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者の位置をカメラやレーダーで検知し、スポットランプをアクチュエータで旋回し、検知した歩行者にスポット光を照射するシステムが知られている。例えば、特許文献1には、スポットランプの向きを現在照射中の歩行者から新たに検知した歩行者に調節することで、複数の歩行者の所在をドライバーに知らせる照明システムが記載されている。特許文献2には、レーダー装置からのレーザー光をスポット光と共通のレンズに透過させることで、光軸の調整機構を簡略化した照明システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−205950号公報
【特許文献2】特開2006−252264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車道近くでの歩行者の行動は、状況認識の違いによって各自多様であるが、お年寄りの行動には、飛び出しや無理な横断など、ドライバーにとって「まさか」と思われる挙動が含まれる。子供の場合も同様のことが云え、しかも動きが速いため、より危険である。ところが、従来の歩行者照明システムでは、歩行者の行動を一様に想定し、専ら車両側で安全対策を講じてきた。このため、お年寄りや子供の想定外の挙動に対応できないうえ、車両側の機構や制御が複雑化するという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、歩行者自身が提供した情報を利用し、簡単な機構と制御によって安全性の高い照明を行うことができる歩行者照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の歩行者照明システムは、車両に対する歩行者の位置を検知する検知器と、車両から歩行者に向けてスポット光を照射するスポットランプと、歩行者が所持する発信機と、検知器および発信機からの信号に基づいてスポットランプを制御する制御装置とを備え、発信機が歩行者の特性を含む情報を発信し、制御装置が歩行者の特性に応じてスポット光の照射パターンを変化させることを特徴とする。
【0007】
ここで、検知器としてはカメラやレーダー等を使用できる。検知器をそれぞれの車両に搭載することもできるが、車両と歩行者の相対位置や距離を高精度に検知できる点で、検知器を道路施設上に設備するのが好ましい。具体的には、制御装置を車両に搭載し、検知器を道路施設上に設置し、道路施設が検知器および発信機からの信号を制御装置に中継する中継器を備えたシステムを採用できる。
【0008】
また、制御装置は、中継器を介しあるいは直接的に他車両と双方向の通信を行い、この通信により取得した歩行者情報に従って、自車両のスポットランプを制御することも可能である。歩行者が所持する発信機は、少なくとも歩行者の年齢、加えて歩行者の身体的特徴(身長、機能障害)等の特性を含む情報を発信する。発信機としては、子供の場合に、通信機能を備えた防犯ブザーを好ましく使用でき、老人の場合は、通信機能を備えた杖等の装身具を使用でき、一般的には、携帯電話を広く使用できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歩行者照明システムによれば、歩行者が所持する発信機から歩行者の特性を示す情報を発信し、制御装置が歩行者の特性に応じてスポット光の照射パターンを変化させるので、比較的簡単な機構と制御によって歩行者を安全に照明できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す歩行者照明システムの概観図である。
【図2】図1の歩行者照明システムの電気的構成を示すブロック図である。
【図3】図2の制御装置が実行する照明プログラムを示すフローチャートである。
【図4】スポット光の照射パターンを例示する模式図である。
【図5】本発明の別の実施形態を示す歩行者照明システムの概観図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す歩行者照明システム1では、車両2にスポットランプ3が装備され、スポットランプ3から歩行者Mに向けてスポット光Sが照射される。歩行者Mは発信機4を所持し、発信機4の出力信号が道路施設5上の中継器6を経由して車両2に送られる。道路施設5は、街路灯、信号機、電柱等の既設構造物であって、中継器6に加えカメラ7を装備し、カメラ7で車両2および歩行者Mを含む道路周辺の映像を撮影するようになっている。
【0012】
図2に示すように、発信機4には、児童が所持する防犯ブザー11が用いられている。防犯ブザー11には、ブザーを鳴らす警報部12に加え、GPSやPHSを利用する通信部13が設けられている。通信部13は、特定の信号を常時出力し、この信号により歩行者Mの特性を示す情報、つまり、防犯ブザー11を所持する歩行者Mが子供であることを示す年齢情報を発信している。年齢情報に加え、防犯ブザー11から児童の身長、連絡先、現在位置を示す地理情報など、児童固有の特性情報を発信してもよい。
【0013】
中継器6は、映像処理部15と制御部16と通信部17とを備え、カメラ7および防犯ブザー11からの信号を車両2に中継する。映像処理部15は、カメラ7と共に検知器を構成し、カメラ7が撮影した映像に基づいて車両2に対する歩行者Mの位置を検知する。制御部16は、この位置情報に防犯ブザー11から受信した特性情報を組み合わせて歩行者情報を作成し、歩行者情報を通信部17から最寄りの車両2に送信する。なお、カメラ7にかえてミリ波レーダーを使用することもでき、両者を併用することも可能である。
【0014】
車両2には、中継器6と通信可能な制御装置20が搭載されている。制御装置20は、中継器6から歩行者情報を受信する通信部21と、各種制御情報を記憶する記憶部22と、歩行者情報と制御情報に基づいてスポットランプ3を制御する制御部23とを備えている。スポットランプ3は、アクチュエータ24によって水平方向へ旋回可能に設けられている。制御部23は、歩行者Mの位置情報に従ってアクチュエータ24の駆動量とスポットランプ3の点消灯を制御するとともに、歩行者Mの年齢情報に応じてスポット光Sの照射パターンを変化させるようになっている。
【0015】
なお、スポットランプ3としては、専用ランプのほかに、フォグランプや前照灯のロービーム、ハイビームランプを兼用できる。また、スポットランプ3の全体を旋回してもよく、光源、レンズ、リフレクタ等の光学系部品のみを回動してもよい。アクチュエータ24には、モータ、ソレノイド、圧電アクチュエータ等を使用できる。制御装置20に音声警報器25を接続し、歩行者Mを検知したときに、スポットランプ3の点灯と同時または早期に警報器25を動作させ、「お年寄りです」、「子供です」等の音声によってドライバーの注意を喚起することもできる。
【0016】
次に、歩行者照明システム1の動作について説明する。車両2の走行中は、図3に示すように、制御装置20が歩行者情報を待ち受ける状態にある(S31)。歩行者情報を受信すると、まず、車両2に対する歩行者Mの位置に基づいてスポットランプ3の旋回角度を計算する(S32)。次に、歩行者Mの特性に応じてスポット光Sの照射パターンを選択する(S33)。続いて、スポットランプ3を旋回し、その光軸を歩行者Mに向ける(S34)。そして、車両2と歩行者Mとの間の距離が危険域に達した時点で、スポットランプ3を点灯し、選択された最適パターンのスポット光Sを歩行者Mに照射する(S35)。
【0017】
スポット光Sの照射パターンは、主に歩行者Mの年齢に応じて変化させることができる。例えば、歩行者Mがお年寄りや子供である場合は、図4(a)に示すような点滅パターンとする。点滅の間隔をお年寄りの場合に長く、子供の場合に短くしてもよい。お年寄りでも子供でもない場合は、(b)に示すような非点滅パターンとする。お年寄りの眩惑を避けるために、(c)に示すような足元照射パターンを採用してもよい。その他、(d)に示すように、スポット光Sを色フィルタに透過させて着色パターンとしたり、(e)に示すように、スリットに透過させて異形パターンとしたりすることも可能である。
【0018】
こうすれば、歩行者自らが提供した特性情報に基づいて、スポット光Sの照射パターンを簡単かつ適切に変化させることができる。このため、ドライバーは点滅または着色パターンによって格別の注意を喚起され、お年寄りや子供の飛び出し、無理な横断に備えることができる。また、道路施設5上のカメラ7で車両2と歩行者Mの相対位置を高精度に検知できるうえ、位置および特性を含む歩行者情報を道路施設5上の中継器6を経由して車両2の制御装置20に整然と中継できるという利点もある。
【0019】
図5は本発明の別の実施形態を示す。この歩行者照明システム31では、制御装置が他車両との双方向通信により取得した歩行者情報に従って自車両のスポットランプを制御する。すなわち、図5(a)に示すように、歩行者Mの位置および特性を含む歩行者情報は、上記実施形態と同様に、道路施設5上の中継器6を経由して第1車両32に伝送され、第1車両32の制御装置20(図2参照)がスポットランプ33を制御する。
【0020】
図5(b)に示すように、第1車両32が歩行者Mを通過した後、この歩行者Mが車道を横断しようとしたとき、反対側車線の第2車両34が、第1車両32から直接または中継器6を介して取得した歩行者情報に従って、自車両34のスポットランプ35を制御し、この歩行者Mに最適パターンのスポット光Sを照射する。したがって、この実施形態によれば、特に、道路上に存在する複数台の車両32,34と歩行者Mが協力し、より安全な歩行者照明システム31を構築できる。
【0021】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、図4(a)に示すように、お年寄りが所持する杖28に発信機4を装備したり、図4(b)に示すように、携帯電話27を発信機として使用したりするなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各部の構成や制御を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 歩行者照明システム
2 車両
3 スポットランプ
4 発信機
5 道路施設
6 中継器
7 カメラ
11 防犯ブザー
20 制御装置
M 歩行者
S スポット光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する歩行者の位置を検知する検知器と、車両から歩行者に向けてスポット光を照射するスポットランプと、歩行者が所持する発信機と、検知器および発信機からの信号に基づいてスポットランプを制御する制御装置とを備え、発信機が歩行者の特性を含む情報を発信し、制御装置が歩行者の特性に応じてスポット光の照射パターンを変化させることを特徴とする歩行者照明システム。
【請求項2】
制御装置を車両に搭載し、検知器を道路施設上に設置し、道路施設が検知器および発信機からの信号を制御装置に中継する中継器を備えた請求項1記載の歩行者照明システム。
【請求項3】
制御装置が他車両との双方向通信により取得した歩行者の位置情報および特性情報に従って自車両のスポットランプを制御する請求項1又は2記載の歩行者照明システム。
【請求項4】
前記発信機が歩行者の年齢を示す情報を発信する請求項1〜3の何れか一項に記載の歩行者照明システム。
【請求項5】
前記発信機が通信機能を備えた防犯ブザーを含む請求項1〜4の何れか一項に記載の歩行者照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−51535(P2012−51535A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197747(P2010−197747)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】