説明

歪み計測装置

【課題】配管のフランジ部等を形成するのに用いられる、外縁が円形状をなしている板状部材の表面の歪みの状態を正確に計測する。
【解決手段】歪み計測装置101は、複数の長尺の支持用アーム102を備える。各支持用アームは、その端部を基部103に保持され、計測対象面201aに平行な平面内に放射状に延びでいる。各計測対象面201aには、計測対象面201aの縁部分を保持する保持部104が設けられる。計測用アーム105は、計測対象面201aと平行に延び、長さ方向に伸縮自在である。ダイアルゲージ106は、計測用アーム105に設けられ、計測対象面の歪みを計測する。連結部107は、ダイアルゲージ106が計測対象面201aと平行な平面内で回転自在となるよう、基部103と計測用アーム105とを連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の端部に設けられるフランジ部等に用いられ外縁が円形状をなしている板状部材の表面の歪みを計測するための歪み計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所や化学プラントに導入されているタービン、ボイラー、反応器等の配管では、その端部にフランジ部が形成されていて、フランジ部のシート面同士を当接させて配管同士を連結することが行われている。
【0003】
フランジ部のシート面は、配管の連結に際してボルトによる締付け力が加えられたり、加熱されたり、経年変化により腐食したり劣化したりして、歪むことがある。このため、定期的にシート面を補修して配管の連結箇所でのシート面の間からの漏洩を未然に防ぐことが重要となる。そして、フランジ部のシート面を補修する際には、特許文献1や非特許文献1に記載の歪計測装置を用いてシート面の歪みを計測することが行われている。この歪計測装置では、支柱1が、先端にダイヤルゲージ25が取り付けられた計測軸26の回転中心をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3677588号公報(段落0005〜0006、図1、図4)
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】桐原玲、″特集 軸力測定 フランジ継手からの漏洩防止技術″、第14頁右列第19行〜第15頁右列第10行、[online]、2003年10月、新興プランテック株式会社ウェブサイト内、[2010年2月22日検索]、インターネット〈URL:http://www.s-plantech.co.jp/technical/pdf/0310_rosetubosi.pdf〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載の歪計測装置をフランジFに取り付けても、主リンク4や副リンク6のガタツキ、及び、ピン5,7,8,9での遊びによって、支柱1がフランジFのなす面に対して直交する方向に延びて安定するとは限らない。このため、特許文献1や非特許文献1に記載の歪計測装置を用いて、配管の端部に設けられるフランジ部等に用いられ外縁が円形状をなしている板状部材の表面の歪みを計測しようとすると、計測を行う毎に計測結果が変化してしまう。
【0007】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、外縁が円形状をなしている板状部材の表面の歪みの状態を正確に計測することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歪み計測装置は、外縁が円形状をなす計測対象面の歪みを計測する歪み計測装置であって、複数の長尺の支持用アームと、各前記支持用アームを保持して前記計測対象面に平行な平面内に放射状に延出させる基部と、前記支持用アームに設けられ、前記計測対象面の縁部分を保持する保持部と、前記計測対象面と平行に延び、長さ方向に伸縮自在の計測用アームと、前記計測用アームに設けられ、前記計測対象面の歪みを計測する計測部と、前記計測部が前記計測対象面と平行な平面内で回転自在となるよう前記基部と前記計測用アームとを連結する連結部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保持部に計測対象面の縁部分を保持させると基部は計測対象面の円形状中心に位置することになり、基部を中心とする計測用アームの回転に伴って計測部が計測対象面と平行な平面内で回転するので、外縁が円形状をなしている板状部材の表面の歪みの状態を正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】歪み計測装置の平面図である。
【図2】図1のA−A線断面である。
【図3】基部の平面図である。
【図4】連結部の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の一形態を、図1ないし図4に基づいて説明する。本実施の形態は、発電所や化学プラントに導入されているタービン、ボイラー、反応器等の配管の端部に設けられるフランジ部を構成するリング状の金属円板201の一方の面(計測対象面201a)の歪みを計測するための歪み計測装置101への適用例である。
【0012】
図1は、歪み計測装置101の平面図である。歪み計測装置101は、支持用アーム102と、基部103と、保持部104と、計測用アーム105と、計測部としてのダイアルゲージ106と、連結部107(図2及び図4も参照)とを含む。計測装置101は、予め水平に向けられて配置される金属円板201に取り付けられ、この金属円板201の計測対象面201aの歪みを計測する。
【0013】
支持用アーム102は、長尺の部材であり、一例として、アルミニウム金属で形成され、計測装置101全体の軽量化が図られている。支持用アーム102の断面形状は、略正方形である。支持用アーム102は、計測装置101に四本設けられ、それぞれが、計測対象面201aと平行に延び、図1に示すように、基部103(詳細は、図3に基づいて後述)を中心として周回り方向に90度間隔で並べて配置される。
【0014】
図2は、図1のA−A線断面である。図1及び図2に基づいて、保持部104について説明する。保持部104は、各支持用アーム102における基部103とは反対側の端部に設けられ、計測対象面201aの縁部分を保持する。保持部104は、いずれも、柱状部材151と、上方固定部152と、アダプタ部153と、下面押え部154と、上面押え部154aと、を備える。
【0015】
柱状部材151は、上下方向に延びる角柱体である。柱状部材151の上方部分には、水平方向に貫通した貫通孔(図示せず)が形成される。上方固定部152は、この貫通孔に挿通された支持用アーム102を柱状部材151に対して固定する。
【0016】
上方固定部152の下端には、アダプタ部153が取り付けられる。アダプタ部153は、基礎板155を有する。基礎板155は、水平に延びて柱状部材151の下面に当接する。基礎板155から上方には、立設板156が立設する。この立設板156は、柱状部材151の側面に対面する。アダプタ部153は、下方固定部158も有する。下方固定部158は、クッション材157を有し、立設板156とともに柱状部材151を挟み込む。また、基礎板155の下面からは、第1ラックギア160が垂下する。第1ラックギア160は、金属円板201の内側に向く歯部159を有する。第1ラックギア160の下端からは、下方片161が、金属円板201の内側に向けて延びる。下方片161には、上下に貫通する雌ネジ孔(図示せず)が形成される。
【0017】
下面押え部154は、シャフト162を有する。シャフト162の中腹には、下方片161の雌ネジ孔に螺合する雄ネジ部(図示せず)が形成される。シャフト162の下端には、ハンドル163が設けられる。シャフト162の上端には、金属円板201の下面201bに接触する接触体164が設けられる。
【0018】
上面押え部154aは、板材165を有する。板材165の下面は、計測対象面201aに接触する。板材165の上面には、クッション材166が設けられる。板材165における金属円板201の外側に向く縁からは、第1ラックギア160の歯部159に噛合する第2ラックギア167が、上下に延びる。
【0019】
作業者は、支持用アーム102に対して上下方向及び支持用アーム102の長さ方向に柱状部材151を動かす。続いて、作業者は、上方固定部152によって支持用アーム102と柱状部材151とを固定する。また、作業者は、下方固定部158によって、柱状部材151に対しアダプタ部153を取り付ける。続いて、作業者は、クッション材166を基礎板155の下面に接触させ、第2ラックギア167を第1ラックギア160に噛合させ、板材165と接触体164とで金属円板201を挟み、ハンドル163を動かして接触体164を金属円板201の下面201bに押し付ける。このようにすることで、各保持部104は、金属円板201を外側から挟み込んで、計測対象面201aの縁部分を保持する。
【0020】
図3は、基部103の平面図である。図2及び図3に基づいて、基部103について説明する。基部103は、各支持用アーム102の端部を保持して、これらの支持用アーム102を計測対象面201aに平行な平面内に放射状に延出させる。基部103は、第1基礎柱体171と、ケース体172と、第2基礎柱体173と、アーム連結部材174と、ボルト174aとを有する。
【0021】
ケース体172は、三枚の板状部材175a,175b,175cを、互いに離間して上下に並べて有する。また、第1基礎柱体171は、上下に延びる円柱体で、上方の板状部材175aの中心と中間の板状部材175bの中心とを連結する。上方の板状部材175aの隅領域と中間の板状部材175bの隅領域とは、四本の柱部材176によって連結される。上方の板状部材175aと中間の板状部材175bとの間の上方空間177には、各支持用アーム102の端部が入り込む。そして、この支持用アーム102の端面は、第1基礎柱体171の側面に当接している。
【0022】
アーム連結部材174は、平面視略L字上に折り曲げられた板状部材である。このアーム連結部材174は、隣り合う支持用アーム102の端部近傍の側面に跨って配置される。ボルト174aは、アーム連結部材174の端部と支持用アーム102の側面とを締結する。そして、一つのアーム連結部材174に二つのボルト174aを用いることで、アーム連結部材174は隣り合う支持用アーム102を連結し、各支持用アーム102を計測対象面201aに平行な平面内で第1基礎柱体171から放射状に延出させる。
【0023】
第2基礎柱体173は、第1基礎柱体171の軸線AXと一致させて上下に延び円柱体で、中間の板状部材175bの中心と下方の板状部材175cの中心とを連結する。中間の板状部材175bの隅領域と下方の板状部材175cの隅領域とは、四本の柱部材178によって連結される。中間の板状部材175bと下方の板状部材175cとの間の下方空間179には、連結部107が設けられている。
【0024】
図1及び図2を参照する。ケース体172の下方には、アームブラケット180が配置される。アームブラケット180は、二つの突出片180aとこれらを連結する連結片180bとを有して下向きに開いたコ字形状をなしている。連結片180bは、計測対象面201aと平行に拡がる平板状をなす。二つの突出片180aは、互いに平行であって、いずれも連結片180bに対し直交する平板状をなす。
【0025】
計測用アーム105は、アームブラケット180の二つの突出片180aに保持され、計測対象面と平行に延びている。また、計測用アーム105は、長さ方向に伸縮自在のスライドユニット181を三つ有する。いずれのスライドユニット181も、大径パイプ181aと、この内部にスライド自在に入り込む小径パイプ181bと、大径パイプ181aに対し小径パイプ181bを固定する固定レバー181cと、を有する。このようなスライドユニット181は、上方に二つ下方に一つ、断面方向から見て三角形の頂点に位置するように互いに平行に並ぶ。ここで、二つの突出片180aは、それぞれ、各大径パイプ181aの一方の端部及び中腹部を保持し、大径パイプ181aを一方の突出片180aから外側に延出させる。各大径パイプ181aの他方の端部は、板部材182によって連結される。各小径パイプ181bの先端部は、板部材183によって連結される。
【0026】
ダイアルゲージ106は、計測対象面201aの歪みを計測するものであって、計測用アーム105の先端部に位置する板部材183に取り付けられる。このダイアルゲージ106は、下方に延出する測定子184を有する。測定子184の先端は、金属円板201の計測対象面201aに接触する。そして、測定子184の先端は、計測用アーム105の回転の動き(図2及び図4に基づいて後述)に伴って第1基礎柱体171の軸線AXを中心に回転し、計測対象面201aを摺動する。ダイアルゲージ106は、この摺動による測定子184の振動に基づいて、計測対象面201aの凹凸の大きさに応じた検出値を出力する。
【0027】
図4は、連結部107の正面断面図である。図2及び図4に基づいて、連結部107について説明する。連結部107は、ダイアルゲージ106が計測対象面201aと平行な平面内で回転自在となるよう、基部103と計測用アーム105とを連結する。この連結部107は、ギア185と、回転柱186と、ラジアルベアリング187と、スラストベアリング188と、荷重受け部材189と、を含む。
【0028】
板状部材175bの下面から下方に延びる第2基礎柱体173には、ラジアルベアリング187が取り付けられている。このラジアルベアリング187の外周には、ギア185が、第2基礎柱体173の軸回り方向に設けられている。ギア185から下方には、軸線AXに一致させて回転柱186が上下に延出する。この回転柱186は、板状部材175cの中央に形成された孔部190に入り込み、アームブラケット180の連結片180bの上面中央に連結している。
【0029】
荷重受け部材189は、板状部材175cの下面に取り付けられる。この荷重受け部材189には、軸線AXに沿って貫通孔191が形成される。回転柱186は、この貫通孔191に入り込んでいる。
【0030】
スラストベアリング188は、孔部190内に位置付けられ、荷重受け部材189の上面に載置され、回転柱186をその軸回り方向に回転自在に支持している。
【0031】
ところで、ギア185には、ウォームギア192が噛み合っている。ウォームギア192は、その軸回りに回転自在となるように、支持部材(図示せず)によってケース体172に支持されている。ウォームギア192は、水平方向に延びて下方空間179からケース体172の外側に延出する。ウォームギア192の先端には、作業者がウォームギア192をその軸回り方向に回すためのハンドル193が設けられている。
【0032】
以上に述べたように構成される本実施の形態の計測装置101を用いて、作業者は、保持部104に、予め水平に向けられて配置される金属円板201の計測対象面201aの縁部分を保持させる。ここで、支持用アーム102は、基部103から計測対象面201aに平行な平面内に、90度間隔で放射状に延びている。このため、各保持部104が計測対象面201aの縁部分を保持すると、基部103は、金属円板201のなす円形状の中心位置に位置付けられる。
【0033】
続いて、作業者は、固定レバー181cを動かして計測用アーム105を伸縮させ、ダイアルゲージ106を計測対象面201aの上方に位置付け、測定子184の先端を計測対象面201aに接触させる。
【0034】
続いて、作業者は、ハンドル193を動かしウォームギア192をその軸回りに回す。これにより、ギア185が軸線AXの軸回り方向に回転し、これに伴って、測定子184の先端は計測対象面201aに接触した状態で金属円板201の周方向に摺動する。ダイアルゲージ106は、この摺動による測定子184の振動に基づいて、計測対象面201aの凹凸の大きさに応じた検出値を出力する。
【0035】
このように、本実施の形態の計測装置101によれば、保持部104に計測対象面201aの縁部分を保持させると基部103は金属円板201の計測対象面201aの円形状中心に位置することになり、この基部103を中心とする計測用アーム105の回転に伴ってダイヤルゲージ25が計測対象面201aと平行な平面内で回転するので、外縁が円形状をなしている金属円板201の表面(計測対象面201a)の歪みの状態を正確に計測することができる。
【0036】
さらに、本実施の形態の計測装置101では、連結部107にラジアルベアリング187及びスラストベアリング188とが含まれている。このため、計測用アーム105は、軸線AXを中心として非常に滑らかに回転する。これにより、連結部107で生じるガタツキがなくなり、ダイアルゲージ106による金属円板201の表面(計測対象面201a)の歪みの計測が、より一層正確になる。
【0037】
なお、本実施の形態では、計測装置101が支持用アーム102を四本備えていたが、この支持用アーム102の本数は四本に限られることはない。一例として、計測装置101は支持用アーム102を六本備え、これらの支持用アーム102が基部103を中心として60度間隔で放射状に延びるよう配置されていても良い。
【符号の説明】
【0038】
101 計測装置
102 支持用アーム
103 基部
104 保持部
105 計測用アーム
106 ダイアルゲージ(計測部)
107 連結部
187 ラジアルベアリング
188 スラストベアリング
201a 計測対象面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁が円形状をなす計測対象面の歪みを計測する歪み計測装置であって、
複数の長尺の支持用アームと、
各前記支持用アームを保持して前記計測対象面に平行な平面内に放射状に延出させる基部と、
前記支持用アームに設けられ、前記計測対象面の縁部分を保持する保持部と、
前記計測対象面と平行に延び、長さ方向に伸縮自在の計測用アームと、
前記計測用アームに設けられ、前記計測対象面の歪みを計測する計測部と、
前記計測部が前記計測対象面と平行な平面内で回転自在となるよう前記基部と前記計測用アームとを連結する連結部と、
を備える歪み計測装置。
【請求項2】
前記連結部が、ベアリングを含む、
請求項1記載の歪み計測装置。
【請求項3】
複数の前記支持用アームが、90度間隔で配置されている、
請求項1又は2記載の歪み計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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