歪センサとそれを用いた転造盤
【課題】測定対象の歪、例えば、転造盤の固定ダイスの歪をその固定ダイスに埋め込まずに直接測定することを可能にした歪センサを提供する。
【解決手段】板材から成る金属ケース2の一面に収納溝4を設け、その収納溝4に、一端にリード線5を接続した圧電素子3を埋めて歪センサ1の本体部7を構成した。この歪センサ1は本体部7を測定対象とクランプ部材との間に挟みつけて使用する。
【解決手段】板材から成る金属ケース2の一面に収納溝4を設け、その収納溝4に、一端にリード線5を接続した圧電素子3を埋めて歪センサ1の本体部7を構成した。この歪センサ1は本体部7を測定対象とクランプ部材との間に挟みつけて使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象の歪を簡便、かつ、高感度に計測できる歪センサと、それを用いて加工条件の制御や加工中に起こる機械のトラブルなどの原因究明を可能にした転造盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ねじ転造盤において、素材(ワーク)に対するダイスの押し付け荷重を測定し、測定データを加工に反映させて加工条件を適正化することが既になされている。一例を挙げると、下記特許文献1は、ねじ転造時の反力が反映される部位の歪を測定し、得られた測定データに基づいてロールダイスの素材に対する押し付け荷重を求めて加工条件を制御することを提案している。
【0003】
その特許文献1は、対のロールダイス間に設けられたテンションメンバの歪を歪ゲージで測定してダイスの押し付け荷重を求めているが、図12に示すような平ダイス(可動ダイス11と固定ダイス12)を用いた転造盤では、固定ダイス12を支えるダイスホルダ13に縦長の素子セット孔16を設け、その素子セット孔16に圧電素子(歪センサ)17を埋め込んでダイスを素材に押し付けたときの図中C方向の荷重を、反力による歪を測定して求めることが行われている。
【0004】
なお、この場合の素子セット孔16に対する圧電素子17の埋め込みは、素子セット孔16の余剰空間に樹脂を充填して圧電素子17の周囲を樹脂で固める方法でなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−285135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の転造盤では、主として、図12におけるC方向の荷重を測定してこれを加工条件の制御に反映させているが、転造の状況によっては、固定ダイス12に対して、C方向の荷重のほかに、可動ダイス11の前進方向であるD方向の荷重や、C、Dの2方向に対して直角なA又はB方向の荷重も同時に加わる。
【0007】
その複数方向の荷重による歪を、全方向の荷重ができるだけ正確に反映される場所、例えば、ダイスそのものから測定することができたならば、より好ましくは、3次元方向の力の分布も併せて求めることができたならば、転造条件の数値化をより適確なものにして製造のさらなる安定化や製品の不良率低減などを図ることが可能になる。また、ねじ転造時の様々なトラブルや製品の不良発生の原因究明もしやすくなる。
【0008】
ところが、図12の方法では、圧電素子17を縦向きに配置しており、また、固定ダイスの歪を間接的に検出していることから、A,B方向やD方向の荷重が固定ダイス12からダイスホルダ13に安定して伝わらず、そのために、それらの方向の荷重測定については高感度が得られず、測定データを加工条件のより高度な制御や、機械のトラブル、加工不良などの原因究明に反映させるのが難しかった。
【0009】
特許文献1が開示している方法も、歪を測定するテンションメンバに対しては、ロールダイス押し付けの反力しか伝わらないため、上記と同様の問題がある。
【0010】
また、図12の方法では、素子セット孔16に樹脂を注入して圧電素子17をダイスホルダ13に一体的化させているため、圧電素子17の取り付け、取り外しができず、転造盤の保守性も極めて悪かった。
【0011】
この発明は、測定対象の歪を最適箇所で測定できる歪センサを提供すること、及び、各種部品の成形を行う転造盤にこの発明の歪センサを採用して固定ダイスの歪を保守性を高めながら直接測定可能となすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明は、一端にリード線を接続した偏平な圧電素子と、断面矩形の板状金属ケースとを備え、前記圧電素子を、前記金属ケースの内部に埋めた歪センサを提供する。この歪センサは、金属ケースと圧電素子が一体化して本体部が構成されており、その本体部を測定対象とクランプ部材との間に挟みつけて使用する。
【0013】
圧電素子の金属ケース内部への埋め込みは、金属ケースの一面に収納溝を設けるか、ケースの側面や端面に開放する空洞を金属ケースに設け、その収納溝や空洞に圧電素子を収納し、収納溝や空洞の余剰空間に樹脂を充填する方法で行える。
【0014】
この歪センサの好ましい形態を以下に列挙する。
(1)前記金属ケースを一方向に長い直線のケースとし、前記収納溝を、ケース長手方向に対してケースの平面視で斜め(金属ケースの幅寸法を2等分する中心線に対して平面視で斜め)に配置し、その収納溝に短冊状に形成された前記圧電素子を埋め込んだもの。
(2)前記金属ケースを平面視で屈曲したケースとしてこの金属ケースの一面にケースと同方向に屈曲した収納溝を設け、その収納溝に収納溝の屈曲状況に適合するように成形された前記圧電素子を埋め込んだもの。この形態の歪センサは、金属ケースの屈曲角を調整して平面視形状をJ字や半円やU字状にすることができる。
(3)基板上に圧電セラミックス層を設けた圧電素子を用いるもの。
(4)感受方向の異なる複数の圧電セラミックス層を基板上に積層して設けて各圧電セラミックス層の出力を個別に取り出すように構成された圧電素子を用いるもの。
(5)前記金属ケースが焼き入れ鋼(好ましくは、焼入れしたステンレス鋼)からなるもの。
【0015】
これらの歪センサは、複数の方向から力を受ける測定対象の歪検出に利用することができる。この発明は、その歪センサを用いて固定ダイスの歪を直接検出する転造盤も併せて提供する。
【0016】
その転造盤は、可動ダイスと固定ダイスを相対移動させて素材の成形を行うものであって、この発明の歪センサを有している。その歪センサを前記固定ダイスの上面に載せ、固定ダイスの背後に設置されたダイスホルダ(保持ブロック)の上面にボルトで固定するクランプ部材を設けてそのクランプ部材の先端のクランプ面と前記固定ダイスとの間にセンサの本体部が全長にわたって押圧される状態に挟み、この状況下で固定ダイスの歪を検出する。
【発明の効果】
【0017】
この発明の歪センサは、金属ケースに圧電素子を埋め込んで構成しており、測定対象の表面にクランプ部材で押圧して使用することができる。その方法での使用は、取り付け位置の設定などに自由度があり、最適箇所での歪測定が行える。また、歪センサを測定対象に埋め込む必要がなく、着脱可能であるため、歪センサの交換などについての保守性も高まる。
【0018】
なお、この発明の歪センサは、測定対象とクランプ部材との間に挟み込んで使用するので、金属ケースの厚み寸法をできるだけ小さくし、一方で、クランプ部材による締付力はできるだけ大きくするのが好ましい。センサの撓み性の向上、測定対象との一体性の向上による高感度測定を期待できるからである。
【0019】
その要求に応えて金属ケースの厚み寸法を減少させた歪センサは、破損対策が要求されることがある。その破損対策として、上記(1)や(2)の形態が有効である。
【0020】
金属ケースは、大きな締付力に耐える必要があるため、材料強度を高めたものが好ましいが、材料が焼き入れ鋼の金属ケースに収納溝を設け、その収納溝に圧電素子を埋め込んだセンサを試作してクランプ部材による締め付け固定の試験を行った結果、前記収納溝を金属ケースの長手方向と平行(幅寸法を2等分する中心線に対して平面視で平行)にしたセンサは、金属ケースの厚み寸法を小さくするとクランプ部材による締付力に耐えきれなくて割れることがあった。
【0021】
これに対し、収納溝をケース長手方向に対して斜めに配置した上記(1)の形態の歪センサは、同一条件での締め付けによる割れが起こらなかった。収納溝をケース長手方向に対して斜めにすることで、クランプ部材による締付部が収納溝を幅方向に跨ぐ状態になり、収納溝の両側の本来の肉厚が維持された部分による補強効果が得られて金属ケースの耐圧性能が向上したと考えられる。全体を平面視において屈曲させたものも、同様の理由から収納溝をケース長手方向に対して斜めに設けたものと同様の効果を期待できる。
【0022】
圧電素子は、基板上に圧電セラミックス層を設けたものがよい。高分子材料で形成されたフイルム状の圧電素子も市場に提供されているが、圧電セラミックスを用いたものが歪の検出感度に優れる。
【0023】
また、上記(4)の形態の圧電素子を有する歪センサは、複数のセンサをひとつの金属ケースを共用して1つに統合したものと等価であり、同一測定対象に加わる複数方向の荷重を1つのセンサで測定することができる。
【0024】
圧電素子は、歪検出感度に方向性があり、特定方向からの荷重に対して高出力が得られる。従って、感受方向(高出力が得られる方向)が異なる複数の圧電セラミックス層を設けて各圧電セラミックス層の出力を個別に取り出すものにすれば、複数方向の荷重を個別に測定することが可能である。
【0025】
金属ケースに対する圧電素子の一体化は、圧電素子を収納した収納溝や空洞の余剰空間に樹脂を充填して行うと安定した一体化が行なえる。
【0026】
次に、この発明の転造盤は、この発明の歪センサをクランプ部材で締め付けて固定ダイスに固定しているので、固定ダイスの歪を直接検出してその歪を誘起させた荷重を正確に測定することができる。
【0027】
また、歪センサは、クランプ部材と固定ダイスとの間に単に挟み込んでいるだけであるので、自由に着脱でき、そのために、保守性の悪化の問題も解消される。
【0028】
なお、固定ダイスと可動ダイスを組み合わせて用いる転造盤においては、先に述べたように、固定ダイスに対して複数方向から荷重が加わる。その複数方向からの荷重を上記(4)の形態の圧電素子を用いることで個別に求めることができ、転造条件の制御の更なる適正化が図れるようになる。
【0029】
また、より詳しい荷重データが得られ、その荷重データを機械のトラブルや製品の加工不良が起きたときの原因究明に役立てることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の歪センサの第1形態を示す底面を上にした斜視図
【図2】図1の歪センサの縦断面図
【図3】図2の一部を拡大した断面図
【図4】圧電素子の側面図
【図5】この発明の歪センサの第2形態を示す底面図
【図6】この発明の歪センサの第3形態を示す底面図
【図7】この発明の歪センサの第4形態を示す底面図
【図8】この発明の歪センサの第5形態を示す底面図
【図9】この発明の歪センサの第6形態を示す斜視図
【図10】この発明の歪センサを用いた転造盤の一例の概要を示す斜視図
【図11】図10の転造盤の要部の端面図
【図12】周知のねじ転造盤の一例の概要を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて、この発明の歪センサと転造盤の実施の形態を説明する。
この発明の歪センサの第1形態を図1〜図4に、第2形態を図5に、第3形態を図6に、第4形態を図7に、第5形態を図8に、第6形態を図9にそれぞれ示す。これ等の歪センサ1は、金属ケース2と圧電素子3を組み合わせて構成されている。
【0032】
金属ケース2は、焼き入れして硬度を高めた細長い断面矩形の板状鋼材(例えば、ステンレス鋼材)を材料として用いたものであって、一面に収納溝4を有する。その収納溝4は、金属ケース2の一端から他端近くまで延ばして設けられている。
【0033】
圧電素子3は、図4に示すように、金属(例えば、銅)の基板3a上に圧電セラミックス層3bを設け、その圧電セラミックス層3bが荷重を受けて歪んだときに歪の大きさに応じた電圧を発生し、その電圧が一端に接続されたリード線5を介して外部に出力されるものになっている。この圧電素子3は、圧電セラミックス層に代わる他の圧電体を基板上に設けたものであってもよい。短冊状に形成したその圧電素子3が金属ケース2に設けた収納溝4に埋め込まれている。
【0034】
圧電セラミックス層3bは、感受方向の異なるものが複数層積層して基板3a上に設けられていてもよい(この構造は図示せず)。各圧電セラミックス層3bの出力を多心のリード線5経由で個別に取り出すように構成された圧電素子を用いることで、複数の方向から加わる荷重を個別に求めることができる。
【0035】
圧電素子3の金属ケース2に対する一体化は、収納溝4の余剰空間に樹脂6を充填して行なっている。樹脂6はエポキシ樹脂を使用したが、それに限定されるものではなく、他の硬化性樹脂でもよい。その樹脂6として、FRP(繊維強化樹脂)のスペーサと硬化性樹脂接着剤を組み合わせたものを使用してもよい。収納溝4に圧電素子3を収納し、その後、収納溝4の開口部に蓋となるFRPのスペーサを入れ、そのスペーサを接着剤で固定する構造にすると、圧電素子3を金属ケース2に対して簡単に、信頼性よく一体化することができる。その一体化によってセンサの本体部7が形成され、その本体部7からリード線5が引き出された構造の歪センサ1が完成する。
【0036】
なお、リード線5は、外被5aの端末部を本体部7の内部に引き込んで本体部7に接着することで口出し部の断線を起こり難くすることができる。
【0037】
図5に示すように、金属ケース2に設ける収納溝4は、リード線5の引き込み口4aとなす部分の幅がその他の部分の幅よりも狭くなっていてもよく、この構造は、図1の構造に比べて金属ケース2の強度低下が小さく抑えられる(後述する図7の構造も同様)。
【0038】
また、図6、図7に示すように、金属ケース2に設ける収納溝4をケース長手方向に対して斜めに配置し、その収納溝4に圧電素子3を埋め込む構造もセンサの耐破損性の向上が図れて好ましい。ここでいう「ケース長手方向に対して斜め」とは、金属ケース2の長手方向に対して(幅寸法を2等分する中心線Cに対して)収納溝4の向きが平面視において傾くことを意味する。
【0039】
収納溝4をケース長手方向に対して斜めに配置すると、クランプ部材による締付部Aが図6、図7に示すように収納溝4を幅方向に跨ぐ状態になり、収納溝4の両側の本来の肉厚が維持された部分(溝の両側の肉厚部)による補強効果が得られて金属ケース2の耐圧性能が向上してクランプ力による同ケースの割れが起こり難くなる。
【0040】
図8は、金属ケース2を平面視(底面視)で屈曲させ、この金属ケース2の一面にケースと同方向に屈曲した収納溝4を設けてその収納溝4に圧電素子3を埋め込んでいる。この場合の収納溝4は金属ケース2の屈曲状況に適合するように屈曲した溝として形成されている。図8の歪センサ1は、平面視U字状をなしているが、半円状のもの、屈曲角を90°程度にして平面視J字状にしたものなども考えられる。この構造も、図6や図7の形態と同様の保護効果を期待できる。
【0041】
図9は、収納溝4に代えて金属ケース2に空洞8を設け、その空洞8に圧電素子3を収納し、空洞8の余剰空間に樹脂6を充填して本体部7を構成したものである。これは、金属チューブを偏平に潰したものを金属ケース2として使用することができ、収納溝の加工が不要になるためコスト低減を期待できる。
【0042】
図10は、この発明の歪センサを使用したねじ転造盤の一例である。このねじ転造盤10は、可動ダイス11と固定ダイス12を素材に押し付け、可動ダイス11を前進させることで固定ダイス12との間の素材を転がして可動ダイス11と固定ダイス12の成形面に形成された成形用の山、谷(図示省略)で素材を塑性変形させて素材外周にねじ山とねじ溝を生じさせる。
【0043】
固定ダイス12は、ダイスホルダ13によって背後から支えられている。その構成は従来のねじ転造盤と同じである。従来のねじ転造盤では、測定対象である固定ダイス12の歪の検出が間接的になされていたのに対し、この発明のねじ転造盤は、固定ダイス12の歪を同ダイスの上面に押し当てた歪センサ1で直接測定するようにしており、この点が従来品と異なる。
【0044】
固定ダイス12の上面は、可動ダイス11との相対移動が起こる方向に長い。その上面に歪センサ1を上面の長さ方向と平行になる向きにして載せ、その歪センサ1をクランプ部材14で上から押圧して固定ダイス12との間にセンサの本体部7が全長にわたって押圧される状態に挟み込んでいる。歪センサ1は、収納溝4を設けた側を下面とし、その下面を固定ダイス12の上面に押し付けており、反体側の面(上面)を固定ダイス12の上面に押し付ける形態に比べて感度のよい歪測定がなされる。
【0045】
クランプ部材14は、ダイスホルダ13に螺合させたボルト15で中央付近を締め付けてダイスホルダ13に固定している。その締め付けにより、クランプ部材14の先端下部のクランプ面による本体部7の押圧がなされ、そのために、本体部7が固定ダイス12に強固に固定されて固定ダイス12と一体となって歪むようになる。
【0046】
その歪に応じた電圧が圧電素子3に誘起されてそれが検出信号としてリード線5経由で出力される。
【0047】
このような方法でのクランプでは、圧力や熱などによるクランプ部材14の撓みが避けられない。その撓みによりクランプ部材14のクランプ面の一部が浮き上がって歪センサ1に加わる押圧力が特定箇所に集中する。また、クランプ部材14のクランプ面を湾曲させるなどして意図的に押圧力を特定箇所に集中させることも行われている。そのようなときや、応力疲労を生じやすい状況で使用されるとき、例えば、使用中に継続して振動が加わるときなどに金属ケース2の割れが起こりやすい。このようなときに、図6〜図8のような形態のセンサの有効性が顕著に発揮される。
【0048】
上述したように、歪センサ1をクランプ部材14で固定ダイス12との間に挟み込むことで固定ダイス12の歪を直接検出することができ、また、この構造では歪センサ1の着脱が自由に行なえるため、センサ交換などに関する保守性の悪さの問題も解消される。歪センサ1は、固定ダイス12の端面(可動ダイス11が進退する方向の端面)に押し付けて使用することもできる。歪の方向によっては、検出の位置を異ならせることで検出感度を高められることがある。
【0049】
なお、感受方向の異なる複数の圧電セラミックス層を備えた歪センサ1を使用する場合には、複数方向から固定ダイス12に加わる荷重の各々に対応した複数の検出信号が同一歪センサから出力される。その信号を利用したフィードバック制御を行なうことで転造の安定性を高めることができる。また、各方向の荷重データを、機械のトラブルや製品の加工不良の原因究明に利用することも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明の歪センサは、転造用ダイスやダイス以外の成形型などをワークに押し付けたときの押し付け荷重の測定、クランプ部材などによる押圧力の測定、構造物や複数部位間に挟まれた部材に生じる歪の測定など広範な用途に利用することができる。
【0051】
また、この発明は、ねじ転造盤のほかに、溝や鍔などの付いたロールを成形するローリング盤や各種部品の転造成形を行う転造盤に適用してもその有効性が発揮される。
【符号の説明】
【0052】
1 歪センサ
2 金属ケース
3 圧電素子
3a 基板
3b 圧電セラミックス層
4 収納溝
4a 引き込み口
5 リード線
5a 外被
6 樹脂
7 本体部
8 空洞
10 ねじ転造盤
11 可動ダイス
12 固定ダイス
13 ダイスホルダ
14 クランプ部材
15 ボルト
16 素子セット孔
17 圧電素子
【技術分野】
【0001】
この発明は、測定対象の歪を簡便、かつ、高感度に計測できる歪センサと、それを用いて加工条件の制御や加工中に起こる機械のトラブルなどの原因究明を可能にした転造盤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ねじ転造盤において、素材(ワーク)に対するダイスの押し付け荷重を測定し、測定データを加工に反映させて加工条件を適正化することが既になされている。一例を挙げると、下記特許文献1は、ねじ転造時の反力が反映される部位の歪を測定し、得られた測定データに基づいてロールダイスの素材に対する押し付け荷重を求めて加工条件を制御することを提案している。
【0003】
その特許文献1は、対のロールダイス間に設けられたテンションメンバの歪を歪ゲージで測定してダイスの押し付け荷重を求めているが、図12に示すような平ダイス(可動ダイス11と固定ダイス12)を用いた転造盤では、固定ダイス12を支えるダイスホルダ13に縦長の素子セット孔16を設け、その素子セット孔16に圧電素子(歪センサ)17を埋め込んでダイスを素材に押し付けたときの図中C方向の荷重を、反力による歪を測定して求めることが行われている。
【0004】
なお、この場合の素子セット孔16に対する圧電素子17の埋め込みは、素子セット孔16の余剰空間に樹脂を充填して圧電素子17の周囲を樹脂で固める方法でなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−285135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の転造盤では、主として、図12におけるC方向の荷重を測定してこれを加工条件の制御に反映させているが、転造の状況によっては、固定ダイス12に対して、C方向の荷重のほかに、可動ダイス11の前進方向であるD方向の荷重や、C、Dの2方向に対して直角なA又はB方向の荷重も同時に加わる。
【0007】
その複数方向の荷重による歪を、全方向の荷重ができるだけ正確に反映される場所、例えば、ダイスそのものから測定することができたならば、より好ましくは、3次元方向の力の分布も併せて求めることができたならば、転造条件の数値化をより適確なものにして製造のさらなる安定化や製品の不良率低減などを図ることが可能になる。また、ねじ転造時の様々なトラブルや製品の不良発生の原因究明もしやすくなる。
【0008】
ところが、図12の方法では、圧電素子17を縦向きに配置しており、また、固定ダイスの歪を間接的に検出していることから、A,B方向やD方向の荷重が固定ダイス12からダイスホルダ13に安定して伝わらず、そのために、それらの方向の荷重測定については高感度が得られず、測定データを加工条件のより高度な制御や、機械のトラブル、加工不良などの原因究明に反映させるのが難しかった。
【0009】
特許文献1が開示している方法も、歪を測定するテンションメンバに対しては、ロールダイス押し付けの反力しか伝わらないため、上記と同様の問題がある。
【0010】
また、図12の方法では、素子セット孔16に樹脂を注入して圧電素子17をダイスホルダ13に一体的化させているため、圧電素子17の取り付け、取り外しができず、転造盤の保守性も極めて悪かった。
【0011】
この発明は、測定対象の歪を最適箇所で測定できる歪センサを提供すること、及び、各種部品の成形を行う転造盤にこの発明の歪センサを採用して固定ダイスの歪を保守性を高めながら直接測定可能となすことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、この発明は、一端にリード線を接続した偏平な圧電素子と、断面矩形の板状金属ケースとを備え、前記圧電素子を、前記金属ケースの内部に埋めた歪センサを提供する。この歪センサは、金属ケースと圧電素子が一体化して本体部が構成されており、その本体部を測定対象とクランプ部材との間に挟みつけて使用する。
【0013】
圧電素子の金属ケース内部への埋め込みは、金属ケースの一面に収納溝を設けるか、ケースの側面や端面に開放する空洞を金属ケースに設け、その収納溝や空洞に圧電素子を収納し、収納溝や空洞の余剰空間に樹脂を充填する方法で行える。
【0014】
この歪センサの好ましい形態を以下に列挙する。
(1)前記金属ケースを一方向に長い直線のケースとし、前記収納溝を、ケース長手方向に対してケースの平面視で斜め(金属ケースの幅寸法を2等分する中心線に対して平面視で斜め)に配置し、その収納溝に短冊状に形成された前記圧電素子を埋め込んだもの。
(2)前記金属ケースを平面視で屈曲したケースとしてこの金属ケースの一面にケースと同方向に屈曲した収納溝を設け、その収納溝に収納溝の屈曲状況に適合するように成形された前記圧電素子を埋め込んだもの。この形態の歪センサは、金属ケースの屈曲角を調整して平面視形状をJ字や半円やU字状にすることができる。
(3)基板上に圧電セラミックス層を設けた圧電素子を用いるもの。
(4)感受方向の異なる複数の圧電セラミックス層を基板上に積層して設けて各圧電セラミックス層の出力を個別に取り出すように構成された圧電素子を用いるもの。
(5)前記金属ケースが焼き入れ鋼(好ましくは、焼入れしたステンレス鋼)からなるもの。
【0015】
これらの歪センサは、複数の方向から力を受ける測定対象の歪検出に利用することができる。この発明は、その歪センサを用いて固定ダイスの歪を直接検出する転造盤も併せて提供する。
【0016】
その転造盤は、可動ダイスと固定ダイスを相対移動させて素材の成形を行うものであって、この発明の歪センサを有している。その歪センサを前記固定ダイスの上面に載せ、固定ダイスの背後に設置されたダイスホルダ(保持ブロック)の上面にボルトで固定するクランプ部材を設けてそのクランプ部材の先端のクランプ面と前記固定ダイスとの間にセンサの本体部が全長にわたって押圧される状態に挟み、この状況下で固定ダイスの歪を検出する。
【発明の効果】
【0017】
この発明の歪センサは、金属ケースに圧電素子を埋め込んで構成しており、測定対象の表面にクランプ部材で押圧して使用することができる。その方法での使用は、取り付け位置の設定などに自由度があり、最適箇所での歪測定が行える。また、歪センサを測定対象に埋め込む必要がなく、着脱可能であるため、歪センサの交換などについての保守性も高まる。
【0018】
なお、この発明の歪センサは、測定対象とクランプ部材との間に挟み込んで使用するので、金属ケースの厚み寸法をできるだけ小さくし、一方で、クランプ部材による締付力はできるだけ大きくするのが好ましい。センサの撓み性の向上、測定対象との一体性の向上による高感度測定を期待できるからである。
【0019】
その要求に応えて金属ケースの厚み寸法を減少させた歪センサは、破損対策が要求されることがある。その破損対策として、上記(1)や(2)の形態が有効である。
【0020】
金属ケースは、大きな締付力に耐える必要があるため、材料強度を高めたものが好ましいが、材料が焼き入れ鋼の金属ケースに収納溝を設け、その収納溝に圧電素子を埋め込んだセンサを試作してクランプ部材による締め付け固定の試験を行った結果、前記収納溝を金属ケースの長手方向と平行(幅寸法を2等分する中心線に対して平面視で平行)にしたセンサは、金属ケースの厚み寸法を小さくするとクランプ部材による締付力に耐えきれなくて割れることがあった。
【0021】
これに対し、収納溝をケース長手方向に対して斜めに配置した上記(1)の形態の歪センサは、同一条件での締め付けによる割れが起こらなかった。収納溝をケース長手方向に対して斜めにすることで、クランプ部材による締付部が収納溝を幅方向に跨ぐ状態になり、収納溝の両側の本来の肉厚が維持された部分による補強効果が得られて金属ケースの耐圧性能が向上したと考えられる。全体を平面視において屈曲させたものも、同様の理由から収納溝をケース長手方向に対して斜めに設けたものと同様の効果を期待できる。
【0022】
圧電素子は、基板上に圧電セラミックス層を設けたものがよい。高分子材料で形成されたフイルム状の圧電素子も市場に提供されているが、圧電セラミックスを用いたものが歪の検出感度に優れる。
【0023】
また、上記(4)の形態の圧電素子を有する歪センサは、複数のセンサをひとつの金属ケースを共用して1つに統合したものと等価であり、同一測定対象に加わる複数方向の荷重を1つのセンサで測定することができる。
【0024】
圧電素子は、歪検出感度に方向性があり、特定方向からの荷重に対して高出力が得られる。従って、感受方向(高出力が得られる方向)が異なる複数の圧電セラミックス層を設けて各圧電セラミックス層の出力を個別に取り出すものにすれば、複数方向の荷重を個別に測定することが可能である。
【0025】
金属ケースに対する圧電素子の一体化は、圧電素子を収納した収納溝や空洞の余剰空間に樹脂を充填して行うと安定した一体化が行なえる。
【0026】
次に、この発明の転造盤は、この発明の歪センサをクランプ部材で締め付けて固定ダイスに固定しているので、固定ダイスの歪を直接検出してその歪を誘起させた荷重を正確に測定することができる。
【0027】
また、歪センサは、クランプ部材と固定ダイスとの間に単に挟み込んでいるだけであるので、自由に着脱でき、そのために、保守性の悪化の問題も解消される。
【0028】
なお、固定ダイスと可動ダイスを組み合わせて用いる転造盤においては、先に述べたように、固定ダイスに対して複数方向から荷重が加わる。その複数方向からの荷重を上記(4)の形態の圧電素子を用いることで個別に求めることができ、転造条件の制御の更なる適正化が図れるようになる。
【0029】
また、より詳しい荷重データが得られ、その荷重データを機械のトラブルや製品の加工不良が起きたときの原因究明に役立てることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の歪センサの第1形態を示す底面を上にした斜視図
【図2】図1の歪センサの縦断面図
【図3】図2の一部を拡大した断面図
【図4】圧電素子の側面図
【図5】この発明の歪センサの第2形態を示す底面図
【図6】この発明の歪センサの第3形態を示す底面図
【図7】この発明の歪センサの第4形態を示す底面図
【図8】この発明の歪センサの第5形態を示す底面図
【図9】この発明の歪センサの第6形態を示す斜視図
【図10】この発明の歪センサを用いた転造盤の一例の概要を示す斜視図
【図11】図10の転造盤の要部の端面図
【図12】周知のねじ転造盤の一例の概要を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に基づいて、この発明の歪センサと転造盤の実施の形態を説明する。
この発明の歪センサの第1形態を図1〜図4に、第2形態を図5に、第3形態を図6に、第4形態を図7に、第5形態を図8に、第6形態を図9にそれぞれ示す。これ等の歪センサ1は、金属ケース2と圧電素子3を組み合わせて構成されている。
【0032】
金属ケース2は、焼き入れして硬度を高めた細長い断面矩形の板状鋼材(例えば、ステンレス鋼材)を材料として用いたものであって、一面に収納溝4を有する。その収納溝4は、金属ケース2の一端から他端近くまで延ばして設けられている。
【0033】
圧電素子3は、図4に示すように、金属(例えば、銅)の基板3a上に圧電セラミックス層3bを設け、その圧電セラミックス層3bが荷重を受けて歪んだときに歪の大きさに応じた電圧を発生し、その電圧が一端に接続されたリード線5を介して外部に出力されるものになっている。この圧電素子3は、圧電セラミックス層に代わる他の圧電体を基板上に設けたものであってもよい。短冊状に形成したその圧電素子3が金属ケース2に設けた収納溝4に埋め込まれている。
【0034】
圧電セラミックス層3bは、感受方向の異なるものが複数層積層して基板3a上に設けられていてもよい(この構造は図示せず)。各圧電セラミックス層3bの出力を多心のリード線5経由で個別に取り出すように構成された圧電素子を用いることで、複数の方向から加わる荷重を個別に求めることができる。
【0035】
圧電素子3の金属ケース2に対する一体化は、収納溝4の余剰空間に樹脂6を充填して行なっている。樹脂6はエポキシ樹脂を使用したが、それに限定されるものではなく、他の硬化性樹脂でもよい。その樹脂6として、FRP(繊維強化樹脂)のスペーサと硬化性樹脂接着剤を組み合わせたものを使用してもよい。収納溝4に圧電素子3を収納し、その後、収納溝4の開口部に蓋となるFRPのスペーサを入れ、そのスペーサを接着剤で固定する構造にすると、圧電素子3を金属ケース2に対して簡単に、信頼性よく一体化することができる。その一体化によってセンサの本体部7が形成され、その本体部7からリード線5が引き出された構造の歪センサ1が完成する。
【0036】
なお、リード線5は、外被5aの端末部を本体部7の内部に引き込んで本体部7に接着することで口出し部の断線を起こり難くすることができる。
【0037】
図5に示すように、金属ケース2に設ける収納溝4は、リード線5の引き込み口4aとなす部分の幅がその他の部分の幅よりも狭くなっていてもよく、この構造は、図1の構造に比べて金属ケース2の強度低下が小さく抑えられる(後述する図7の構造も同様)。
【0038】
また、図6、図7に示すように、金属ケース2に設ける収納溝4をケース長手方向に対して斜めに配置し、その収納溝4に圧電素子3を埋め込む構造もセンサの耐破損性の向上が図れて好ましい。ここでいう「ケース長手方向に対して斜め」とは、金属ケース2の長手方向に対して(幅寸法を2等分する中心線Cに対して)収納溝4の向きが平面視において傾くことを意味する。
【0039】
収納溝4をケース長手方向に対して斜めに配置すると、クランプ部材による締付部Aが図6、図7に示すように収納溝4を幅方向に跨ぐ状態になり、収納溝4の両側の本来の肉厚が維持された部分(溝の両側の肉厚部)による補強効果が得られて金属ケース2の耐圧性能が向上してクランプ力による同ケースの割れが起こり難くなる。
【0040】
図8は、金属ケース2を平面視(底面視)で屈曲させ、この金属ケース2の一面にケースと同方向に屈曲した収納溝4を設けてその収納溝4に圧電素子3を埋め込んでいる。この場合の収納溝4は金属ケース2の屈曲状況に適合するように屈曲した溝として形成されている。図8の歪センサ1は、平面視U字状をなしているが、半円状のもの、屈曲角を90°程度にして平面視J字状にしたものなども考えられる。この構造も、図6や図7の形態と同様の保護効果を期待できる。
【0041】
図9は、収納溝4に代えて金属ケース2に空洞8を設け、その空洞8に圧電素子3を収納し、空洞8の余剰空間に樹脂6を充填して本体部7を構成したものである。これは、金属チューブを偏平に潰したものを金属ケース2として使用することができ、収納溝の加工が不要になるためコスト低減を期待できる。
【0042】
図10は、この発明の歪センサを使用したねじ転造盤の一例である。このねじ転造盤10は、可動ダイス11と固定ダイス12を素材に押し付け、可動ダイス11を前進させることで固定ダイス12との間の素材を転がして可動ダイス11と固定ダイス12の成形面に形成された成形用の山、谷(図示省略)で素材を塑性変形させて素材外周にねじ山とねじ溝を生じさせる。
【0043】
固定ダイス12は、ダイスホルダ13によって背後から支えられている。その構成は従来のねじ転造盤と同じである。従来のねじ転造盤では、測定対象である固定ダイス12の歪の検出が間接的になされていたのに対し、この発明のねじ転造盤は、固定ダイス12の歪を同ダイスの上面に押し当てた歪センサ1で直接測定するようにしており、この点が従来品と異なる。
【0044】
固定ダイス12の上面は、可動ダイス11との相対移動が起こる方向に長い。その上面に歪センサ1を上面の長さ方向と平行になる向きにして載せ、その歪センサ1をクランプ部材14で上から押圧して固定ダイス12との間にセンサの本体部7が全長にわたって押圧される状態に挟み込んでいる。歪センサ1は、収納溝4を設けた側を下面とし、その下面を固定ダイス12の上面に押し付けており、反体側の面(上面)を固定ダイス12の上面に押し付ける形態に比べて感度のよい歪測定がなされる。
【0045】
クランプ部材14は、ダイスホルダ13に螺合させたボルト15で中央付近を締め付けてダイスホルダ13に固定している。その締め付けにより、クランプ部材14の先端下部のクランプ面による本体部7の押圧がなされ、そのために、本体部7が固定ダイス12に強固に固定されて固定ダイス12と一体となって歪むようになる。
【0046】
その歪に応じた電圧が圧電素子3に誘起されてそれが検出信号としてリード線5経由で出力される。
【0047】
このような方法でのクランプでは、圧力や熱などによるクランプ部材14の撓みが避けられない。その撓みによりクランプ部材14のクランプ面の一部が浮き上がって歪センサ1に加わる押圧力が特定箇所に集中する。また、クランプ部材14のクランプ面を湾曲させるなどして意図的に押圧力を特定箇所に集中させることも行われている。そのようなときや、応力疲労を生じやすい状況で使用されるとき、例えば、使用中に継続して振動が加わるときなどに金属ケース2の割れが起こりやすい。このようなときに、図6〜図8のような形態のセンサの有効性が顕著に発揮される。
【0048】
上述したように、歪センサ1をクランプ部材14で固定ダイス12との間に挟み込むことで固定ダイス12の歪を直接検出することができ、また、この構造では歪センサ1の着脱が自由に行なえるため、センサ交換などに関する保守性の悪さの問題も解消される。歪センサ1は、固定ダイス12の端面(可動ダイス11が進退する方向の端面)に押し付けて使用することもできる。歪の方向によっては、検出の位置を異ならせることで検出感度を高められることがある。
【0049】
なお、感受方向の異なる複数の圧電セラミックス層を備えた歪センサ1を使用する場合には、複数方向から固定ダイス12に加わる荷重の各々に対応した複数の検出信号が同一歪センサから出力される。その信号を利用したフィードバック制御を行なうことで転造の安定性を高めることができる。また、各方向の荷重データを、機械のトラブルや製品の加工不良の原因究明に利用することも可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明の歪センサは、転造用ダイスやダイス以外の成形型などをワークに押し付けたときの押し付け荷重の測定、クランプ部材などによる押圧力の測定、構造物や複数部位間に挟まれた部材に生じる歪の測定など広範な用途に利用することができる。
【0051】
また、この発明は、ねじ転造盤のほかに、溝や鍔などの付いたロールを成形するローリング盤や各種部品の転造成形を行う転造盤に適用してもその有効性が発揮される。
【符号の説明】
【0052】
1 歪センサ
2 金属ケース
3 圧電素子
3a 基板
3b 圧電セラミックス層
4 収納溝
4a 引き込み口
5 リード線
5a 外被
6 樹脂
7 本体部
8 空洞
10 ねじ転造盤
11 可動ダイス
12 固定ダイス
13 ダイスホルダ
14 クランプ部材
15 ボルト
16 素子セット孔
17 圧電素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にリード線(5)を接続した偏平な圧電素子(3)と、断面矩形の板状金属ケース(2)とを備え、前記圧電素子(3)を、前記金属ケース(2)の内部に埋めて本体部(7)を構成し、その本体部(7)を測定対象とクランプ部材(14)との間に挟みつけて使用するようにした歪センサ。
【請求項2】
前記金属ケース(2)を一方向に長い直線のケースとしてこの金属ケース(2)の一面に収納溝(4)を設け、その収納溝(4)をケース長手方向に対してケースの平面視で斜めに配置し、その収納溝(4)に短冊状に成形された前記圧電素子(3)を埋め込んだ請求項1に記載の歪センサ。
【請求項3】
前記金属ケース(2)を平面視で屈曲したケースとしてこの金属ケース(2)の一面にケースと同方向に屈曲した収納溝(4)を設け、その収納溝(4)に収納溝の屈曲状況に適合するように成形された前記圧電素子(3)を埋め込んだ請求項1に記載の歪センサ。
【請求項4】
前記圧電素子(3)として、基板(3a)上に圧電セラミックス層(3b)を設けたものを用いた請求項1〜3のいずれかに記載の歪センサ。
【請求項5】
前記圧電素子(3)として、感受方向の異なる複数の圧電セラミックス層(3b)を基板(3a)上に積層して設けて各圧電セラミックス層(3b)の出力を個別に取り出すものを用いた請求項4に記載の歪センサ。
【請求項6】
可動ダイス(11)と固定ダイス(12)を一方向に相対移動させ、両ダイス(11,12)間に挟んだ素材を塑性変形させて成形する転造盤であって、
請求項1〜5のいずれかに記載の歪センサ(1)を有し、その歪センサ(1)を前記固定ダイス(12)の上面に載せ、
前記固定ダイス(12)の背後に設置されたダイスホルダ(13)の上面にボルト(
15)で固定するクランプ部材(14)を設けてそのクランプ部材(14)の先端のクランプ面と前記固定ダイス(12)との間にセンサの本体部(7)が全長にわたって押圧される状態に挟み、その歪センサ(1)で前記固定ダイス(12)の歪を検出するようにした転造盤。
【請求項1】
一端にリード線(5)を接続した偏平な圧電素子(3)と、断面矩形の板状金属ケース(2)とを備え、前記圧電素子(3)を、前記金属ケース(2)の内部に埋めて本体部(7)を構成し、その本体部(7)を測定対象とクランプ部材(14)との間に挟みつけて使用するようにした歪センサ。
【請求項2】
前記金属ケース(2)を一方向に長い直線のケースとしてこの金属ケース(2)の一面に収納溝(4)を設け、その収納溝(4)をケース長手方向に対してケースの平面視で斜めに配置し、その収納溝(4)に短冊状に成形された前記圧電素子(3)を埋め込んだ請求項1に記載の歪センサ。
【請求項3】
前記金属ケース(2)を平面視で屈曲したケースとしてこの金属ケース(2)の一面にケースと同方向に屈曲した収納溝(4)を設け、その収納溝(4)に収納溝の屈曲状況に適合するように成形された前記圧電素子(3)を埋め込んだ請求項1に記載の歪センサ。
【請求項4】
前記圧電素子(3)として、基板(3a)上に圧電セラミックス層(3b)を設けたものを用いた請求項1〜3のいずれかに記載の歪センサ。
【請求項5】
前記圧電素子(3)として、感受方向の異なる複数の圧電セラミックス層(3b)を基板(3a)上に積層して設けて各圧電セラミックス層(3b)の出力を個別に取り出すものを用いた請求項4に記載の歪センサ。
【請求項6】
可動ダイス(11)と固定ダイス(12)を一方向に相対移動させ、両ダイス(11,12)間に挟んだ素材を塑性変形させて成形する転造盤であって、
請求項1〜5のいずれかに記載の歪センサ(1)を有し、その歪センサ(1)を前記固定ダイス(12)の上面に載せ、
前記固定ダイス(12)の背後に設置されたダイスホルダ(13)の上面にボルト(
15)で固定するクランプ部材(14)を設けてそのクランプ部材(14)の先端のクランプ面と前記固定ダイス(12)との間にセンサの本体部(7)が全長にわたって押圧される状態に挟み、その歪センサ(1)で前記固定ダイス(12)の歪を検出するようにした転造盤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−256156(P2010−256156A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106123(P2009−106123)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(505194262)有限会社IMP (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(505194262)有限会社IMP (7)
【Fターム(参考)】
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