説明

歪計校正システム、歪計校正装置、歪計の校正方法

【課題】歪計に任意の変位量を加えることができるようにする。
【解決手段】歪計校正装置20は、長尺の固定シャフト21と、固定シャフト21の一端に固定された歪計10の一方の端部を固定可能な第1の固定部材25と、固定シャフト21に沿って移動可能であり、歪計10の他方の端部を固定可能な第2の固定部材26と、第2の固定部材26に接続されたスライドシャフト24を介して、第1の固定部25材と第2の固定部材26の間隔を所望の幅に調整することのできるマイクロメータ30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪計の変位量と出力信号との関係を測定するために用いられる歪計に所望の変位を加えるための歪計校正装置、この歪計校正装置を用いた校正システム及び校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば火力発電所における、ボイラやタービンあるいはそれらの配管など、熱影響を受けやすい金属溶接部などの余寿命を検査する方法の一つとして、歪測定法が知られている。この歪測定法は、測定対象物表面の歪から金属溶接部などの余寿命を検査するものであるが、これらの計測対象面が表面温度600℃以上の高温になるため、高温下での測定が可能な歪計が必要である。
【0003】
このような歪計として、発明者らは、例えば、図3に示すように、筒状に構成された第1の電極12aと、第1の電極12aの内側へ進退可能とされ、第1の電極12aと共にコンデンサを構成する第2の電極12bと、第1の電極12aを支持するセラミック製の第1の絶縁支持体14aと、第2の電極12bを支持する第2の絶縁支持体14bと、第1及び第2の絶縁支持体14a,14bを測定対象物3に夫々取付ける取付部材16と、を備えた歪計10を提案している(特願2006−144074号、特願2006−144075号)。
【0004】
このような歪計10は、出力された信号に基づき歪を測定するため、予め、出力信号と歪計10に生じた変位との関係を求めておく必要がある。従来は、平滑な試験片の表面に歪計10を取り付けるとともに、裏面に変位計を取り付けておき、試験片に引張又は圧縮荷重を加えて変形させて、その際に測定された歪計より出力信号と、変位計により測定された変位との関係に基づき、出力信号と変位との関係を求めていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法では、試験片に引張又は圧縮荷重を加える際にヒステリシスが生じるため、試験片に任意の変位量を精度良く設定するのが困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、歪計に所望の変位量を精度良く加えることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の歪計校正システムは、所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定するための歪計校正システムであって、前記歪計の前記一対の測定部材を固定可能であるとともに、前記所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の固定部材と、前記一対の固定部材の相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えた歪計校正装置と、前記歪計の出力信号を測定する出力信号測定装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の歪計校正装置は、所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定する際に、前記歪計の一対の測定部材間の間隔を所望の間隔に調整するための校正装置であって、前記歪計の前記一対の測定部材を固定可能であるとともに、前記所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の固定部材と、前記一対の固定部材の相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の歪計校正装置は、所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定する際に、前記歪計の一対の測定部材間の間隔を所望の間隔に調整するための校正装置であって、前記所定の直線方向に延びる長尺の固定シャフトと、前記固定シャフトの一端に固定され、前記一対の測定部材の何れか一方を固定可能な第1の固定部材と、前記固定シャフトに沿って移動可能であり、前記一対の測定部材の他方を固定可能な第2の固定部材と、前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記の歪計校正装置において、前記間隔調整機構は、前記第2の固定部材に一端が接続され、前記固定シャフトと平行に進退可能なスライドシャフトと、突出部を備え、当該突出部を所望の幅、進退させることが可能なマイクロメータと、前記スライドシャフトに前記マイクロメータに向かう引張力を加え、前記スライドシャフトの他端と前記突出部とが当接した状態を保つばね部材と、からなるものであってもよい。なお、ばね部材としてはコイルばねや板ばねを用いることができる。
また、前記歪計は、高温下で使用される高温歪計であって、前記固定シャフト、前記第1の固定部材、前記第2の固定部材、及び前記スライドシャフトはセラミック又はSUS製であり、前記固定シャフト及び前記スライドシャフトは放熱フィンを有してもよい。
【0011】
また、本発明の歪計の校正方法は、所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定する歪計の校正方法であって、前記歪計の前記一対の測定部材を固定可能であるとともに、前記所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の固定部材と、前記一対の固定部材の相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えた歪計校正装置の、前記一対の固定部材に前記歪計の前記一対の測定部材を夫々固定し、前記間隔調整機構により前記一対の固定部材の相対変位量を変化させて、複数の相対変位位置における前記歪計の出力信号を測定し、測定した前記出力信号に基づき、前記歪計の出力信号と前記一対の測定部材の相対変位量との関係を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歪計の両端が固定された固定部材の間隔を任意に設定することができ、歪計に所望の変位量を精度良く加えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の歪計の変位量と出力電圧との関係を求めるために用いられる歪計校正システムの一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本実施形態の歪計校正システム100を示す図である。また、図2は、歪計校正システムを構成する歪計校正装置20の側面図である。図1に示すように、歪計校正システム100は、歪計10が取り付けられる歪計校正装置20と、歪計10に接続されたアンプ50及び電圧計51により構成される。歪計校正装置20は、従来技術の欄で説明したような、高温下において使用可能な歪計10の出力電圧と変位量の関係を求める際に、歪計10に所望の変位を加えるためのものである。
【0014】
図1及び図2に示すように、歪計校正装置20は、互いに平行に延びるように配置された一対の固定シャフト21と、固定シャフト21の中間部に、固定シャフト21の軸方向に適宜な間隔をあけて固定され、貫通孔22a、23aを有する第1及び第2のガイド部材22、23と、これら第1及び第2のガイド部材22、23の貫通孔22a、23aを貫通し、第1及び第2のガイド部材22、23に案内されて固定シャフト21に対して平行に変位可能なスライドシャフト24と、固定シャフト21の一端(図中下端)に固定された第1の歪計固定部材25と、固定シャフト21が貫通する貫通孔26bを有し、固定シャフト21に沿って移動可能な第2の歪計固定部材26と、固定シャフト21の他端(図中上端)近傍に取り付けられたマイクロメータ保持部27と、マイクロメータ保持部27に取り付けられたマイクロメータ30と、を備えている。固定シャフト21及びスライドシャフト24の第2のガイド部材23とマイクロメータ保持部27との間の部分には放熱フィン21aが取り付けられている。
【0015】
スライドシャフト24及び固定シャフト21は、セラミック製であり、それ以外の部材はSUS304製である。後述するように歪計校正装置20は、第1及び第2の歪計固定部材25、26を高温(例えば、600℃程度)の加熱炉の中で用いられるが、歪計校正装置20の構成部材がセラミック又はSUS304からなるものとしたため、高温に対する耐性を十分有する。
【0016】
マイクロメータ30は、その表面よりスピンドル31が突出しており、ハンドル部33を回転することによりスピンドル31を進退させることができ、その進退量が表示部32に表示されるようになっている。
【0017】
第1の歪計固定部材25及び第2の歪計固定部材26には、取付孔25a、26aが設けられており、この取付孔25a、26aに歪計10の絶縁支持体14a,14bが固定される。
【0018】
スライドシャフト24は、第1及び第2のガイド部材22、23により案内され、固定シャフト21と平行に変位可能である。スライドシャフト24が変位すると、第2の歪計固定部材26が固定シャフト21に沿って、第1の歪計固定部材25に対して近接又は離間する方向に移動する。
【0019】
マイクロメータ保持部27は、マイクロメータ30を保持可能であるとともに、マイクロメータ30のスピンドル31をスライドシャフト24の端面に向けて突出させるための孔27aが形成されている。また、スライドシャフト24のマイクロメータ30側の端部近傍には板状部材40が取り付けられており、この板状部材40とマイクロメータ保持部27との間にはばね41が取り付けられている。これにより、スピンドル31を進退させてもスライドシャフト24のマイクロメータ30側の端部とスピンドル31とが接触した状態が保たれる。なお、ばね41としてはコイルばねや板ばねを用いることができる。
【0020】
マイクロメータ30のスピンドル31を突出させると、スライドシャフト24を介して第2の歪計固定部材26が第1の歪計固定部材25に向けて変位する。これにより、スピンドル31の突出量と同じ距離だけ第1の歪計固定部材25と第2の歪計固定部材26とを近接させることができる。また、逆に、スピンドル31を退行させると、ばね41の収縮力によりスライドシャフト24を介して第1の歪計固定部材25を引き戻し、スピンドル31の退行量と同じ距離だけ、第2の歪計固定部材26を第1の歪計固定部材25から離間させることができる。このように、マイクロメータ30のスピンドル31の進退量と同じ距離だけ、第2の歪計固定部材26を第1の歪計固定部材25に対して近接又は離間する方向に変位させることができ、その変位量はマイクロメータ30の表示部32により視認できる。
【0021】
高温条件下における歪計10の出力電圧と、歪との関係を調べる場合には、図1に示すように、第1の歪計固定部材26及び第2の歪計固定部材25に、歪計10の第1の絶縁支持体14a及び第2の絶縁支持体14bを固定し、歪計10にアンプ51を介して電圧計50を接続する。
【0022】
そして、歪計10が高温の加熱炉内に位置するように、歪計校正装置20の中間部より歪計10の取り付けられている側を加熱炉内に挿入する。このように加熱炉内に一部を挿入することにより、歪計校正装置20は高温に曝されるが、上記のように歪計校正装置20を構成する部材はセラミック及びSUS304で構成されており、焼付け等をおこすことがない。また、固定シャフト21及びスライドシャフト24に取り付けられた放熱フィン21a、24aにより熱が放出されるため、マイクロメータ30が高温になるのを防ぐことができる。
【0023】
かかる状態において、表示部32を確認しながらマイクロメータ30のスピンドル31を進退させ、スピンドル31の変位量を複数通りに設定し、各変位量での歪計10から出力される出力電圧を電圧計50により測定する。上記のようにマイクロメータ30のスピンドル31の進退量と第1の歪計固定部材25及び第2の歪計固定部材26の間隔の変位量は等しいため、このように、スピンドル31の進退量と、それに対応する出力電圧の関係を求めることにより、歪計20の変位量と出力電圧の関係を求めることができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、マイクロメータ30のスピンドル31の進退量に応じた長さだけ、歪計10の14a、14bが固定された第1の歪計固定部材25及び第2の歪計固定部材26の間隔を近接又は離間させることができるため、歪計10の変位量を所望の値とすることができる。
【0025】
また、スライドシャフト24がセラミック製であり、これをガイドする第1及び第2のガイド部材22、23がステンレス(SUS304)製であるため、高温下において、両者が焼き付くのを防止できる。
また、歪計10を取り付ける際に溶接等を行う必要がないため、設置作業に手間がかからず、測定作業の効率を向上することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、マイクロメータ30のスピンドル31を所望の長さだけ進退させることにより、第1及び第2の歪計固定部材25、26を近接又は離間させて、歪計10に所望の変位を加えることとしたが、これに限らず、第1及び第2の歪計固定部材25、26を所望の長さ近接又は離間させる機構であればこれに変えて用いることができる。
また、本実施形態では、スライドシャフト24に取り付けられた板状部材40とマイクロメータ保持部27との間にばね41を取り付けることにより、スライドシャフト24とマイクロメータ30のスピンドル31が当接した状態を保つものとしたが、これに限らず、スライドシャフト24にマイクロメータ30に向かうような磁力を加えてもよく、要するに、スライドシャフト24にマイクロメータ30に向かうような力を加える機構を有すれば、スライドシャフト24とマイクロメータ30のスピンドル31が当接した状態を保つことができる。
【0027】
また、本実施形態では、高温状況下における歪計10の変位と出力電圧との関係を調べる場合について説明したが、これに限らず、常温下における歪計10の変位と出力電圧との関係を調べる場合であっても、本実施形態の歪計校正装置20を用いることができる。
【0028】
また、本実施形態では、変位に応じた電圧を出力する歪計10の変位と出力電圧との関係を求める場合について説明したが、これに限らず、変位に応じた信号を出力する歪計の変位と出力信号との関係を求める場合であれば本発明を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の歪計校正システムを示す図である。
【図2】歪計構成装置の側面図である。
【図3】歪計の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
10 歪計
12a 第1の電極
12b 第2の電極
14a 第1の絶縁支持体
14b 第2の絶縁支持体
16 取付部材
20 歪計校正装置
21 固定シャフト
21a 放熱フィン
22 第1のガイド部材
23 第2のガイド部材
24 スライドシャフト
24a 放熱フィン
25 第1の歪計固定部材
26 第2の歪計固定部材
27 マイクロメータ保持部材
30 マイクロメータ
40 板状部材
41 ばね
50 電圧計
51 アンプ
100 歪計構成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定するための歪計校正システムであって、
前記歪計の前記一対の測定部材を固定可能であるとともに、前記所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の固定部材と、前記一対の固定部材の相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えた歪計校正装置と、
前記歪計の出力信号を測定する出力信号測定装置と、を備えることを特徴とする歪計校正システム。
【請求項2】
所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定する際に、前記歪計の一対の測定部材間の間隔を所望の間隔に調整するための校正装置であって、
前記歪計の前記一対の測定部材を固定可能であるとともに、前記所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の固定部材と、
前記一対の固定部材の相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えることを特徴とする歪計校正装置。
【請求項3】
所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定する際に、前記歪計の一対の測定部材間の間隔を所望の間隔に調整するための校正装置であって、
前記所定の直線方向に延びる長尺の固定シャフトと、
前記固定シャフトの一端に固定され、前記一対の測定部材の何れか一方を固定可能な第1の固定部材と、
前記固定シャフトに沿って移動可能であり、前記一対の測定部材の他方を固定可能な第2の固定部材と、
前記第1の固定部材と前記第2の固定部材との相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えることを特徴とする歪計校正装置。
【請求項4】
前記間隔調整機構は、
前記第2の固定部材に一端が接続され、前記固定シャフトと平行に進退可能なスライドシャフトと、
突出部を備え、当該突出部を所望の幅、進退させることが可能なマイクロメータと、
前記スライドシャフトに前記マイクロメータに向かう引張力を加え、前記スライドシャフトの他端と前記突出部とが当接した状態を保つばね部材と、からなることを特徴とする請求項3記載の歪計校正装置。
【請求項5】
請求項4記載の歪計校正装置であって、
前記歪計は、高温下で使用される高温歪計であって、
前記固定シャフト、前記第1の固定部材、前記第2の固定部材、及び前記スライドシャフトはセラミック又はSUS製であり、
前記固定シャフト及び前記スライドシャフトは放熱フィンを有することを特徴とする歪計校正装置。
【請求項6】
所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の測定部材間の相対変位量に応じた信号を出力する歪計の出力信号と前記相対変位量との関係を測定する歪計の校正方法であって、
前記歪計の前記一対の測定部材を固定可能であるとともに、前記所定の直線方向に相対的に変位可能な一対の固定部材と、前記一対の固定部材の相対変位量を所望の値に調整可能な間隔調整機構と、を備えた歪計校正装置の、前記一対の固定部材に前記歪計の前記一対の測定部材を夫々固定し、
前記間隔調整機構により前記一対の固定部材の相対変位量を変化させて、複数の相対変位位置における前記歪計の出力信号を測定し、
測定した前記出力信号に基づき、前記歪計の出力信号と前記一対の測定部材の相対変位量との関係を求めることを特徴とする歪計の校正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−162679(P2009−162679A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2029(P2008−2029)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】