説明

歯の化粧セット

【解決手段】非水溶性皮膜形成剤、炭素数2〜4の低級アルコール、及び白色顔料を含有してなる塗布組成物(A)と、非水溶性皮膜形成剤、可塑剤、及び白色顔料を含有してなるフィルム組成物(B)とからなることを特徴とする歯の化粧セット。
【効果】本発明の歯の化粧セットは、塗布組成物とフィルム組成物の二つの剤型からなることで、フィルム組成物を歯に貼付し、フィルム組成物で被覆するには時間と労力を要する歯間部、歯肉辺縁部及び歯の先端部等を塗布組成物で被覆することにより、簡便性・操作性に優れ、ムラのない外観と優れた光沢、容易に歯から剥離しない耐久性を確保することができ、歯に艶や光沢、良好な色調を与え、歯の美白効果に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯の表面に皮膜を形成したり塗布することにより歯に艶や任意の色調を与える、塗布組成物とフィルム組成物を併用した歯の化粧セットに関し、更に詳しくは、フィルム組成物を歯に貼付し、フィルム組成物で被覆しきれない歯間部、歯肉辺縁部や歯の先端部等に塗布組成物を塗布して用いるものであって、塗布組成物やフィルム組成物を単独で使用した場合には得られない色ムラのない優れた外観を提供でき、かつ簡便で容易に歯から剥がれない耐久性と優れた光沢を有する歯の化粧セットに関する。
【背景技術】
【0002】
歯の色調を一時的に化粧感覚で変えたり、歯の着色防止等を目的に、非水溶性皮膜形成剤を用いた塗布組成物が多数提案されている(特許文献1〜3:特開平4−82821号公報、特開平6−256147号公報、特開平9−100215号公報)。しかしながら、塗布前に歯の表面の水分を十分に除去しても、塗布している間に唾液で再び濡れて皮膜が不均一に析出するため、ムラなく塗ることが困難であった。また、「塗る」という行為そのものが塗りムラの原因であり、塗布形態である限り塗りムラから完全に逃れることは出来なかった。
【0003】
一方、歯の表面の着色汚れの除去や装飾シールとして歯にフィルム組成物を貼付する例が提案されているが(特許文献4,5:特開平10−17448号公報、特開2003−212742号公報)、フィルム組成物で歯を隠蔽して歯の色を変えることを目的とした場合、歯の唇側全面をきれいに被覆できないと、フィルム組成物を貼付した部分と貼付していない部分のコントラストが拡大し、不自然さが強調されていた。それを解消するには異なる歯の大きさに合わせてフィルム組成物を丁寧にカットする必要があるが、多大な時間と労力を要し、操作性、簡便性に課題があった。
なお、塗布組成物とフィルム組成物を併用した例は報告されていない。
【0004】
【特許文献1】特開平4−82821号公報
【特許文献2】特開平6−256147号公報
【特許文献3】特開平9−100215号公報
【特許文献4】特開平10−17448号公報
【特許文献5】特開2003−212742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯の表面に皮膜を形成したり塗布することで歯に艶や任意の色調を与え、しかも外観のムラがなく、かつ、簡便性・操作性に優れ、容易に歯から剥離しない耐久性を有する歯の化粧セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、非水溶性皮膜形成剤、炭素数2〜4の低級アルコール、及び白色顔料を含有する塗布組成物(A)と、非水溶性皮膜形成剤、可塑剤、及び白色顔料を含有するフィルム組成物(B)とからなる歯の化粧セットで、前記フィルム組成物(B)を歯に貼付し、更に、フィルム組成物(B)で被覆しきれない歯間部、歯肉辺縁部及び歯の先端部等を塗布組成物(A)で被覆することにより、フィルム組成物で被覆しきれない歯面は塗布組成物を塗布することで被覆でき、歯の表面に皮膜を均一に形成して歯面が色ムラなく被覆され、これにより歯に艶や任意の色調を与え、光沢も良く、外観ムラがほとんどなく、しかも、操作性、簡便性に優れ、容易に歯から剥離せず、歯を満足に美白できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
この場合、上記塗布組成物(A)には、更に増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上を含有することが好ましい。また、非水溶性皮膜形成剤は、セラック、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)の2種以上の共重合体、及び(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましく、フィルム組成物(B)の可塑剤としては、クエン酸トリエチル及び/又は平均分子量400〜2,000のポリプロピレングリコールが好ましい。また、白色顔料は酸化チタンが好ましい。
【0008】
従って、本発明は、非水溶性皮膜形成剤、炭素数2〜4の低級アルコール、及び白色顔料を含有してなる塗布組成物(A)と、非水溶性皮膜形成剤、可塑剤、及び白色顔料を含有してなるフィルム組成物(B)とからなることを特徴とする歯の化粧セットを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯の化粧セットは、塗布組成物とフィルム組成物の二つの剤型からなることで、フィルム組成物を歯に貼付し、フィルム組成物で被覆するには時間と労力を要する歯間部、歯肉辺縁部及び歯の先端部等を塗布組成物で被覆することにより、簡便性・操作性に優れ、ムラのない外観と優れた光沢、容易に歯から剥離しない耐久性を確保することができ、歯に艶や光沢、良好な色調を与え、歯の美白効果に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を更に詳しく説明すると、本発明の歯の化粧セットは、非水溶性皮膜形成剤、炭素数2〜4の低級アルコール、及び白色顔料を含有してなる塗布組成物(A)と、非水溶性皮膜形成剤、可塑剤、及び白色顔料を含有してなるフィルム組成物(B)とからなるものである。
【0011】
塗布組成物(A)に用いられる皮膜形成剤は、非水溶性の皮膜形成剤であり、この場合、用いられる非水溶性皮膜形成剤の水への溶解性は、以下の方法により目視で判定した。即ち、1mmol/L塩化カルシウム水溶液(水酸化ナトリウムでpH6.0に調整)100gに0.1g添加し、37℃で16時間撹拌後、更に37℃で24時間静置した時に沈殿物が存在した場合を非水溶性であると判定した。
【0012】
塗布組成物(A)に用いられる非水溶性皮膜形成剤は特に制限されないが、セラック、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル樹脂、キチン、キトサン、メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体,メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体等のアミノアルキルメタクリレートコポリマー、(メタ)アクリル酸メチル/メタクリル酸コポリマー共重合体,メタクリル酸/アクリル酸エステル/アクリル酸tert−ブチル共重合体,アクリル酸エステル/メタクリル酸エステルの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールによる中和品,アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステル共重合体,(メタ)アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸tert−ブチルアミド共重合体等の(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)の2種以上の共重合体、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等が挙げられ、中でもセラック、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)の2種以上の共重合体、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体が好ましく、特にセラック、アルカリ値が24〜32mg KOH/乾燥質量であるメタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体が好ましい。
【0013】
本発明に用いられるセラックは、ラックカイガラ虫が分泌する天然樹脂であって、「科学と工業Vol.51」p356〜361によれば、その成分はヒドロキシカルボン酸がエステル又はラクトン結合により縮合したものであると考えられている。例えば、日本シェラック工業(株)の乾燥透明白ラック、乾燥乳状白ラック等が挙げられる。
【0014】
また、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体としては、本品をイソプロパノール/アセトン混合溶液(60/40(w/w))に溶解させて12.5%溶液を調製しブルックフィールド型粘度計(ULアダプター、回転数30rpm、20℃、測定時間2分)で測定した時の粘度が1〜15mPa・sであるものが好ましい。例えばdegussa.社製のオイドラギットRLPO、RSPO等が挙げられる。
更に、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体としては、アルカリ値が24〜32mg KOH/乾燥質量であるものが好ましく、例えばdegussa.社製のオイドラギットRLPO等が好適である。なお、上記アルカリ値の測定は、乾燥したサンプル1g中に含まれる塩基性官能基を過塩素酸により滴定して求めた。
【0015】
(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)から選ばれる2種以上の共重合体は、20質量%のエタノール溶液をBL型粘度計(No.1又は2ローター、回転数12rpm、20℃、測定時間2分)で測定した時の粘度が10〜2,500mPa・sであるものが好ましい。
更に、(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)から選ばれる2種以上の共重合体に含まれるアルキル鎖長は、炭素数1〜4又は炭素数8であることが好ましい。
【0016】
このような(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)から選ばれる2種以上の共重合体としては、例えば、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体であるオイドラギットS100、アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体であるオイドラギットL100(degussa.社製)、メタクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸tert−ブチル共重合体であるルビマー100P(BASF社製)、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステルの2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールによる中和品であるプラスサイズL−53P(互応化学工業(株)製)、アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステル共重合体であるAMPHOMER V−42(National Starch and Chemical社製)、アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸tert−ブチルアミド共重合体であるウルトラホールドストロング(BASF社製)等が挙げられる。
【0017】
(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体は、30質量%のエタノール溶液をBL型粘度計(No.1〜3の適当なローター、回転数12rpm、20℃、測定時間2分)で測定した時の粘度が50〜10,000mPa・sであるものが好ましい。
更に、(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体に含まれるアルキル鎖長は、炭素数1〜4、6、8、12、13又は18であることが好ましい。
このような(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体としては、例えば、ユカーフォーマー202、ユカーフォーマーSM(三菱化学(株)製)等が挙げられる。
【0018】
塗布組成物(A)には、上記非水溶性皮膜形成剤の1種を単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができるが、その配合量は、塗布組成物全体の10〜50%(質量百分率、以下同じ)が好ましく、更に好ましくは10〜40%である。配合量が10%未満の場合には十分な皮膜強度を得られず、皮膜の耐久性が低下し、操作性も悪くなる場合がある。50%を超える場合には乾燥性が低下して操作性が悪くなるだけでなく、光沢が低下する場合がある。
【0019】
本発明に用いられる炭素数2〜4の低級アルコールとしては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等が挙げられるが、特にエタノールが好ましい。塗布組成物(A)に用いられる炭素数2〜4の低級アルコールの配合量は、塗布組成物全体の15〜88%が好ましく、特に34〜86%が好ましい。
【0020】
本発明に用いられる白色顔料は特に制限されないが、例えば、雲母チタン、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、魚鱗箔、酸化亜鉛、低温焼成酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、マイカ、酸化アルミニウム、セリサイト、及びこれらの複合体等が挙げられ、中でも酸化チタンが好ましい。
【0021】
酸化チタンとしては、特に樹枝状の短軸0.04〜0.07μm、長軸0.2〜0.3μmの粒子径を有する酸化チタンが透明性を有していることから好ましい。このような樹枝状の酸化チタンは、商品名TTO−D−1、TTO−D−2(共に石原テクノ(株)製)として市販されている。
なお、上記粒子径は、電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N)を用いて10万倍に拡大し、任意に選定した10サンプルの長軸及び短軸の長さを測定してそれぞれ平均値を算出して求めた。
【0022】
白色顔料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよく、塗布組成物(A)への白色顔料の配合量は、塗布組成物全体の1〜10%が好ましく、更に好ましくは1〜8%である。配合量が1%未満の場合には、重ね塗りしても十分な色調を歯に付与出来ない場合があり、配合量が10%を超える場合には不自然な色調と光沢の低下をまねく場合がある。
【0023】
更に、本発明の塗布組成物(A)には、粘性を付与して操作性を向上させ、且つ塗りムラを抑制させるために増粘剤を添加することが好ましい。増粘剤の種類は特に制限されないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0024】
増粘剤として用いられるヒドロキシプロピルセルロースは特に制限されないが、2質量%水溶液の粘度(20℃)が単一円筒形回転粘度計((株)トキメック製TVB−20L型、ローターNo.L、M2又はM4を使用、回転数60rpm、測定時間4分)で測定した時に6〜4,000mPa・sであるものが好ましく、例えば、日本曹達(株)製のHPC−L(6〜10mPa・s)、HPC−M(150〜400mPa・s)、HPC−H(1,000〜4,000mPa・s)が挙げられる。
【0025】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは特に制限されないが、2質量%水溶液の粘度(20℃)を日本薬局方第十三改正解説書・一般試験法の粘度測定法第1法に従って測定したときに2〜5,000mm2/sであり、特に好ましくは2〜1,200mm2/sであり、かつメトキシル基及びヒドロキシプロポキシル基を日本薬局方第十四改正・条文と注釈第二部のヒドロキシプロピルメチルセルロースの定量法に従って測定したときにメトキシル基が27〜30%、特に28〜30%、ヒドロキシプロポキシル基が4〜12%、特に7〜12%であるものが好ましい。このようなヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、例えば信越化学(株)製TC−5R、メトローズ65SHが挙げられ、特に粘度が2〜1,200mm2/sであり、かつメトキシル基及びヒドロキシプロポキシル基がそれぞれ28〜30%、7〜12%である信越化学(株)製TC−5Rが好ましい。
【0026】
ポリビニルピロリドンとしては、K値が12〜90であるものが好ましく、更に好ましくは25〜90のものである。なお、K値は、日本薬局方第十四改正・条文と注釈第二部に記載の方法により算出されたものである。これらに該当する市販品としては、BASF社製のKollidon30(K値27〜32.4)、Kollidon90F(K値81〜97.2)等が挙げられる。
【0027】
増粘剤を配合する場合、その配合量は、塗布組成物全体の0.1〜5%が好ましく、特に0.5〜3%が好ましい。配合量が5%を超える場合には、粘度が高くなりすぎて操作性が低下しムラになったり光沢が低下したりするだけでなく、耐久性が低下する場合がある。
【0028】
塗布組成物(A)には、必要に応じて可塑剤を添加することができる。可塑剤の種類は特に制限されないが、水、クエン酸トリエチル、平均分子量400〜2,000のポリプロピレングリコール等が好ましい。なお、ポリプロピレングリコールの平均分子量は化粧品原料基準(第2版注解)記載の水酸基価測定法に従って水酸基価を測定し、平均分子量を算出した。算出式は以下の通りである。
ポリプロピレングリコール(ジオールタイプ)の場合、
平均分子量=56.11×2000/水酸基価
ポリプロピレングリコール(トリオールタイプ)の場合、
平均分子量=56.11×3000/水酸基価
【0029】
塗布組成物(A)への可塑剤の配合量は、塗布組成物全体の0〜20%が好ましく、更に好ましくは2〜15%である。配合量が20%を超える場合には、乾燥性が低下し操作性が悪くなるだけでなく、フィルム強度が低下し剥がれ易くなる場合がある。
【0030】
塗布組成物(A)は、例えば、増粘剤を添加する場合には最初に無水エタノール等に加え、密閉容器中で撹拌して溶解させ、続いて予め低級アルコールに溶解させた非水溶性皮膜形成剤を添加し、均一に分散し、最後に必要に応じて可塑剤を滴下し、白色顔料を加え分散させて調製することができる。なお、pHは必要に応じてpH調整剤を用いて調整する。
【0031】
本発明のフィルム組成物(B)は、例えばエタノール等の揮発性溶剤に非水溶性皮膜形成剤、可塑剤、及び白色顔料、更に必要に応じて増粘剤等を加えて分散した溶液(以下、フィルム組成物(B)の前駆溶液と略す。)を、シリコーン等でコーティングしたシート等の支持体の上に展延して揮発性溶剤を除去後、支持体を剥がすことで得られる。なお、揮発性溶剤としては、エタノール等を使用でき、その使用量はフィルム組成物(B)の前駆溶液中の50〜80%である。
【0032】
本発明において、フィルム組成物(B)中の各成分の含有量(%)は、下記に示す(式1)により算出した値である。
【数1】

【0033】
フィルム組成物(B)に用いられる非水溶性皮膜形成剤は、塗布組成物(A)に用いられる非水溶性皮膜形成剤と同様のものを使用でき、塗布組成物(A)に使用する非水溶性皮膜形成剤と同一であっても異なっていても良い。なお、フィルム組成物(B)に用いられる非水溶性皮膜形成剤の水への溶解性についても、上記塗布組成物(A)に用いられる非水溶性皮膜形成剤と同様に判定することができる。
【0034】
フィルム組成物(B)に用いられる非水溶性皮膜形成剤の含有量は、フィルム組成物全体の48〜91%が好ましく、更に好ましくは57〜86%である。含有量が48%未満の場合には十分なフィルム強度が得られず、貼付時の破損等により操作性が低下する場合があり、91%を超える場合には、フィルムの柔軟性が低下し操作性が悪くなるだけでなく、歯への接着性が低下して剥がれ易くなる場合がある。
【0035】
フィルム組成物(B)に用いられる白色顔料は、塗布組成物(A)に用いられる白色顔料と同様のものを使用でき、塗布組成物(A)に使用する白色顔料と同一であっても異なっても良い。
フィルム組成物(B)に用いられる白色顔料の含有量は、フィルム組成物全体の1〜11%が好ましく、更に好ましくは3〜9%である。含有量が1%未満の場合には、十分な色調を歯に与えることができない場合があり、11%を超える場合には不自然な色調と光沢の低下をまねく場合がある。
【0036】
更に、塗布組成物(A)の白色顔料の配合量(質量%)/フィルム組成物(B)の白色顔料の含有量(質量%)の比は、0.10〜6.0、特に0.20〜2.5であることが好ましい。質量比が0.10未満の場合には、フィルム組成物(B)の色調が濃すぎて塗布組成物(A)の色調とのコントラストが大きくなり、歯の全面を均一な色調で揃えられず外観が悪くなる場合がある。質量比が6.0を超える場合には、逆に塗布組成物(A)の色調が濃すぎてフィルム組成物(B)の色調とのコントラストが大きくなり外観が悪くなる場合がある。
【0037】
本発明のフィルム組成物(B)に用いられる可塑剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ブチレングリコール、平均分子量400〜2,000、好ましくは400〜1,500のポリプロピレングリコール、クエン酸トリエチル、アセチルグリセリン脂肪酸エステル、ブチルフタリルブチルグリコレート等が挙げられ、特に平均分子量400〜2,000のポリプロピレングリコール、クエン酸トリエチルが好ましい。なお、ポリプロピレングリコールの平均分子量は化粧品原料基準(第2版注解)記載の水酸基価測定法に従って水酸基量(mol)を測定し、平均分子量を算出した。
【0038】
可塑剤の含有量は、フィルム組成物全体の8〜35%、特に10〜30%が好ましい。可塑剤の含有量が8%未満の場合には歯への接着性が低下して操作性や耐久性が悪くなる場合があり、35%を超える場合には手指への粘着性とフィルムの柔軟性が高すぎて操作性が低下するだけでなく、フィルムに皺が寄って光沢が低下する場合がある。
【0039】
本発明のフィルム組成物(B)には、必要に応じて増粘剤を添加することができる。増粘剤の種類は特に制限されないが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンが好ましく、塗布組成物(A)に用いられる増粘剤と同様のものを使用することができる。なお、塗布組成物(A)に使用する増粘剤とと同一であっても異なっても良い。
【0040】
フィルム組成物(B)中の増粘剤の含有量は、フィルム組成物全体の0〜6%が好ましく、特に0.1〜4%が好ましい。含有量が6%を超える場合には、歯への接着性が低下して剥がれ易くなる場合がある。
【0041】
フィルム組成物(B)の厚さは10〜500μmが好ましく、特に30〜200μmが好ましい。厚さが10μm未満の場合には、フィルムが柔らかすぎて貼付時の操作性が悪く、破損やシワが寄って光沢、外観が悪くなる場合がある。厚さが500μmを超える場合には、塗布組成物(A)とフィルム組成物(B)の色調を合わせることが困難で外観が悪くなるだけでなく、フィルム組成物(B)と口唇の接触が多くなり歯から剥がれ易くなる場合がある。なお、フィルム組成物(B)のフィルムの厚さはデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VH−8,000)を用いて拡大し測定した値である。
【0042】
また、フィルム組成物(B)の面積は、3〜60mm2が好ましく、より好ましくは5〜50mm2であり、必要に応じて上記面積になるようにフィルムをカットするなどして、歯の表面に貼付することが望ましい。面積が3mm2未満の場合には、小さすぎて貼付時の操作性が悪いだけでなく、フィルム組成物(B)の外観の良さを活かすことができない場合がある。面積が60mm2を超える場合には、歯からはみ出さないように貼付する必要があるため貼付するのに多大な時間を必要とし、簡便性が低下する場合がある。なお、フィルム組成物(B)により形成されるフィルムの面積は、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VH−8,000)で取得した画像をWinROOF Ver5(三谷商事(株)製)を用いて計測した値である。
【0043】
本発明の塗布組成物(A)及びフィルム組成物(B)には、更に必要に応じて適宜、他の成分を配合することができる。
【0044】
例えば、乳化、分散などの目的で、界面活性剤として、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤等の界面活性剤の1種を単独で又は2種以上を併用することができる。
この場合、アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、N−パルミトイルグルタミン酸ナトリウムなどのN−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ミリストイルサルコシンナトリウムなどのN−アシルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ミリストイルメチルタウリンナトリウムなどのN−メチル−N−アシルタウリンナトリウム、N−メチル−N−アシルアラニンナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ラウリルポリオキシエチレン(POE)硫酸ナトリウム、ラウリルPOE酢酸ナトリウム、ラウリルPOEリン酸ナトリウム、ステアリルPOEリン酸ナトリウム等が用いられる。
【0045】
ノニオン性界面活性剤としては、ステアリン酸モノグリセリル、ラウリン酸デカグリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル、シヨ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステルなどの糖脂肪酸エステル、マルチトール脂肪酸エステル、ラクチトール脂肪酸エステルなどの糖アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ミリスチン酸モノ又はジエタノールアミドなどの脂肪酸エタノ−ルアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪酸エステル等が用いられる。
【0046】
両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、N−ラウリルジアミノエチルグリシン、N−ミリスチルジアミノエチルグリシンなどのN−アルキルジアミノエチルグリシン、N−アルキル−N−カルボキシメチルアンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等が用いられる。
【0047】
界面活性剤の塗布組成物(A)への配合量、及びフィルム組成物(B)中の含有量は、0.01〜1%である。
【0048】
更に、本発明においては、有効成分として、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、アミラーゼ、プロテアーゼ、溶菌酵素、スーパーオキサイドディスムターゼなどの酵素、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどの水溶性ポリリン酸塩、アラントイン、ジヒドロコレスタノール、グリチルリチン酸類、グリチルレチン酸、ε−アミノカプロン酸、トラネキサム酸、ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、塩化ナトリウム、トリクロサン、クロルヘキシジン塩類、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、アスコルビン酸及びその塩類、トコフェロール、オウゴン、オオバク、ローズマリー、チョウジ、タイムなどの生薬抽出物等を配合し得る。なお、配合量は本発明の効果を妨げない範囲で有効量とすることができる。
【0049】
本発明の塗布組成物(A)及びフィルム組成物(B)のそれぞれには、更に、アネトール、カルボン、ペパーミント油、スペアミント油などの香料、安息香酸又はそのナトリウム塩、パラベン類などの防腐剤、赤色3号、赤色104号、黄色4号、青色1号、緑色3号、ベンガラなどの色素又は着色剤、サッカリン又はそのナトリウム塩、ステビオサイド、グリチルリチン、アスパルテームなどの甘味剤等を配合し得る。
【0050】
本発明の塗布組成物(A)及びフィルム組成物(B)のpHは、口腔内及び人体に対して安全性上問題ない範囲であれば特に限定されるものではなく、各組成物のpHが同一であっても異なっていてもよいが、望ましくは精製水で10倍希釈した時の水相のpHが5.0〜10.0であり、更に望ましくは5.5〜9.0である。pH5.0未満の場合には適用時間によっては脱灰の懸念があり、pH10.0を超える場合には、味が悪くなる場合がある。なお、pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等を配合し得る。
【0051】
本発明の歯の化粧セットは、例えば、必要により歯の表面の唾液を除いた後、歯の表面にフィルム組成物(B)を貼付し、更に、フィルム組成物(B)で被覆しきれなかった歯の表面部分に塗布組成物(A)を塗布して被覆することができるが、この場合、フィルム組成物(B)の上から歯全体を塗布組成物(A)で被覆(歯表面に貼付されたフィルム上に塗布組成物(A)を重ねて塗布)してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0053】
〔実施例1〜28、比較例1〜8〕
表1〜5に示す組成の塗布組成物及びフィルム組成物を下記方法で調製し、それぞれを歯の化粧セットとして、下記方法で評価を行った。結果を表1〜5に示す。
【0054】
塗布組成物(A)の調製方法
増粘剤を添加する場合には、最初に無水エタノールに加え、密閉容器中で撹拌して溶解させた。続いて予めエタノールに溶解させた非水溶性皮膜形成剤を添加し、均一に分散した。最後に必要に応じて可塑剤を滴下し、pH調整剤、顔料を加え分散させて塗布組成物(A)を得た。なお、pHは精製水で10倍希釈した時の25℃における水相のpHをpHメーター(東亜ディーケーケー(株)製、HM−26S)で測定した。
【0055】
フィルム組成物(B)の調製方法、及び各成分の含有量の算出方法
(1)フィルム組成物(B)の調製方法
非水溶性皮膜形成剤をエタノールに添加し、密閉容器中で撹拌・溶解後、可塑剤及び白色顔料を加えて分散した(この段階で一部採取し塗布組成物(A)と同様にpH測定)。続いて、表面をシリコンでコーティングしたポリエチレンテレフタレートシート(質量Wf)上に展延すると同時にシートごと質量(W0)を測定した。40℃の恒温槽に24時間静置後、再びシートごと質量(W1)を測定した。各成分の含有量の算出式は以下の通りである。最後に、ポリエチレンテレフタレートシートから剥離してフィルムを得た。
【数2】

【0056】
(2)メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体のアルカリ値の定量方法
まず最初に、ガラスシャーレ中にサンプル1gを正確に秤量し、80℃の恒温槽に5時間静置後、再度正確に秤量して乾燥質量DWを求めた。
乾燥質量DW=W1/W0
乾燥前重量:W0
乾燥後重量:W1
別にサンプル2gを正確に秤量し(W2)、氷酢酸96mL+精製水4mLに溶解後、5%酢酸水銀(II)の氷酢酸溶液を5mL添加し、0.1mol/L過塩素酸水溶液で滴定した。同様に、ブランクを用いて滴定した。
【数3】

滴定前重量:W2
サンプル滴定量:V1
ブランク滴定量:V0
【0057】
簡便性・操作性、外観、光沢、耐久性の評価方法
10名の被験者を用いて以下の方法で官能評価を実施した。まず、上顎の左右1〜3番の歯の唇面をティッシュで軽く押さえて唾液を除去し、上記の方法によりフィルム組成物(B)により作成したフィルムを所定の大きさにカットして歯に貼付した。次に、上記フィルムで被覆しきれなかった部分に、平筆を用いて塗布組成物(A)を塗布した。フィルム組成物(B)により作成したフィルムを貼付し、塗布組成物(A)を塗布し終わるまでの時間で「簡便性・操作性」を評価した。
更に、被験者は口を大きく横に広げて歯を出した状態で直立し、評価者が徐々に被験者に近づきながら、色ムラ等の不快感を感じ始める距離で「外観」を評価した。
また、50cm離れた所から光沢を評価した。
更に、処置直後の口腔内を1/1.2倍の大きさで写真撮影した。食事を禁止した状態で3時間経過後、再度写真撮影を行い、処置直後と比較して塗布組成物(A)とフィルム組成物(B)により作成したフィルムの残存性を「耐久性」として評価した。
各評価項目の基準は以下の通りである。
【0058】
簡便性・操作性の評価基準
4点:3分未満
3点:3分以上4.5分未満
2点:4.5分以上6分未満
1点:6分以上
外観の評価基準
4点:50cm未満の距離に近づいても不快感を感じない。
3点:50cm以上1m未満の距離でもほとんど不快感を感じない。
2点:1m以上2m未満の距離に近づくと不快感を感じる。
1点:2m以上離れた所から見ても不快感を感じる。
光沢の評価基準
4点:本来の歯を上回る光沢がある。
3点:本来の歯と同等の光沢がある。
2点:本来の歯よりも若干光沢が劣る。
1点:光沢がほとんどない。
耐久性の評価基準
4点:全く剥離しない。
3点:歯の先端部のみわずかに剥離するが問題ないレベルである。
2点:歯の先端部だけでなく、少なくとも1本以上の歯が1/4未満剥離。
1点:少なくとも1本以上の歯が1/4以上剥離。
【0059】
各評価項目ごとに被験者の評点の平均値を算出し、最終的な評価を下記基準で行った。
各評価項目の被験者の評点の平均値
◎:3.5点以上
○:2.6点以上3.5点未満
△:1.5点以上2.6点未満
×:1.5点未満
【0060】
総合評価
◎:全ての評価項目で◎である。
○:全ての評価項目で×、△がなく、◎が0〜3個である。
△:全ての評価項目で×がなく、いずれかの評価項目に△が1個以上ある。
×:いずれかの評価項目に×がある。
【0061】
【表1】

【0062】
表中、各例のフィルム組成物(B)の各成分の数値はフィルム組成物(B)の前駆溶液中の配合量。( )内の数値は、フィルム組成物(B)中の各成分の含有量[(式1)により算出]である(以下、同様)。
【数4】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
非水溶性皮膜形成剤
メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体A;degussa.社製、オイドラギットRLPO、アルカリ値28.0、粘度5mPa・s
メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体B;degussa.社製、オイドラギットRSPO、アルカリ値14.5、粘度4mPa・s
セラック;日本シェラック工業(株)製、乾燥透明白ラック
低級アルコール
エタノール;甘糟化学産業(株)製、無水エタノール
イソプロパノール;新日本石油化学(株)製、イソプロピルアルコール
白色顔料
酸化チタン−1;石原テクノ(株)製、TTO−D−1、樹枝状、短軸0.05μm、長軸0.25μm
酸化チタン−2;石原産業(株)製、CR−50、球状、平均粒子径250μm
増粘剤
ポリビニルピロリドン;PVP K90、BASF社製
ヒドロキシプロピルセルロース;日本曹達(株)製、HPC−H、粘度2500mPa・s
ヒドロキシプロピルメチルセルロース;信越化学工業(株)製、TC−5R、粘度6.1mm2/s
可塑剤
クエン酸トリエチル;ファイザー製薬社製、シトロフレックス2
ポリプロピレングリコール400;日本油脂(株)製、ユニオールD−400、平均分子量400
ポリプロピレングリコール700;日本油脂(株)製、ユニオールD−700、平均分子量700
ポリプロピレングリコール2000;日本油脂(株)製、ユニオールD−2000、平均分子量2000
その他(水溶性ポリマー)
アクリル酸エチル/メタクリル酸共重合体;degussa.社製、オイドラギットL100−55
【0068】
実施例1〜28、比較例1〜8の結果から、本発明の歯の化粧セットが上記4つの評価項目(簡便性・操作性、外観、光沢、耐久性)の全てに優れていることが確認された。
【0069】
〔実施例29〕
下記組成の歯の化粧セットを前述の実施例1〜28と同様に調製し、評価した。その結果、「簡便性・操作性」「外観」「光沢」「耐久性」はいずれも○であった。
<歯の化粧セット1>
○塗布組成物
メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体 20%
(degussa.社製、オイドラギットS100、粘度930mPa・s)
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 59.98%
酸化チタン 8%
(石原テクノ(株)製、TTO−51(A)、球状、粒子径20μm)
ポリビニルピロリドン(BASF社製、PVP K30) 2%
ポリエチレングリコール400 10%
(ライオン(株)製、PEG#400K)
水酸化カリウム 0.02%
計 100.0%
(pH7.5)
【0070】
○フィルム組成物 ( )内は、(式1)により算出した乾燥後の質量%
(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体
(三菱化学(株)製、ユカフォーマー202、有効成分30%含有したエタノール溶液、粘度100mPa・s) 93%(79.9%)
ポリプロピレングリコール400 4%(11.5%)
(日本油脂(株)製、ユニオールD−400、平均分子量400)
酸化ジルコニウム(日本電工(株)製、N−PC) 3%(8.6%)
計 100.0%
(pH8.2)
表面をシリコーンでコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、40℃で24時間乾燥して厚さ200μm、面積35mm2のフィルム組成物を調製。
塗布組成物の顔料配合量/フィルム組成物の顔料含有量は0.93。
【0071】
〔実施例30〕
下記組成の歯の化粧セットを前述の実施例と同様に調製し、評価した。その結果、「簡便性・操作性」「外観」「光沢」「耐久性」はいずれも○であった。
<歯の化粧セット2>
○塗布組成物
セラック(日本シェラック工業(株)製、乾燥透明白ラック) 35%
エチルセルロース(ダウケミカル社製、エトセル45P) 1%
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 57.98%
酸化亜鉛(堺化学工業(株)製、NANOFINE−50、球状) 5%
ヒドロキシプロピルセルロース 1%
(日本曹達(株)製、HPC−L、粘度8.6mPa・s)
水酸化ナトリウム 0.02%
計 100.0%
(pH7.5)
【0072】
○フィルム組成物 ( )内は、(式1)により算出した乾燥後の質量%
アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸tert−ブチルアミド共重合体
(BASF社製、ウルトラホールドストロング、有効成分40%含有したエタノール溶液、粘度50mPa・s) 92.98%(84.2%)
クエン酸トリエチル 5%(11.3%)
(ファイザー製薬社製、シトロフレックス2)
酸化チタン、シリカを順次被覆した球状シリカ 2%(4.5%)
(触媒化学工業(株)製、ACS−152010)
クエン酸ナトリウム 0.02%
計 100.0%
(pH7.5)
表面をシリコーンでコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、40℃で24時間乾燥して厚さ200μm、面積35mm2のフィルム組成物を調製。
塗布組成物の顔料配合量/フィルム組成物の顔料含有量は1.11。
【0073】
〔実施例31〕
下記組成の歯の化粧セットを前述の実施例と同様に調製し、評価した。その結果、「簡便性・操作性」「外観」「光沢」「耐久性」はいずれも○であった。
<歯の化粧セット3>
○塗布組成物
アクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体 20%
(degussa.社製、オイドラギットL100、粘度272mPa・s)
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 66.99%
精製水 10%
雲母チタン・マイカ複合体(メルク社製、EXTENDER W) 1%
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 2%
(信越化学(株)製、メトローズ60SH、粘度50mPa・s)
酢酸ナトリウム 0.01%
計 100.0%
(pH5.8)
【0074】
○フィルム組成物 ( )内は、(式1)により算出した乾燥後の質量%
メタクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸tert−ブチル共重合体
(BASF社製、ルビマー100P、粘度50mPa・s) 20%(78.4%)
クエン酸トリエチル(ファイザー製薬社製、シトロフレックス2) 5%(19.6%)
カオリン(土屋カオリン社製、カオリンASP) 0.5%
(2.0%)
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 74.48%
炭酸ナトリウム 0.02%
計 100.0%
(pH7.5)
表面をシリコーンでコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、40℃で24時間乾燥して厚さ200μm、面積35mm2のフィルム組成物を調製。
塗布組成物の顔料配合量/フィルム組成物の顔料含有量は0.50。
【0075】
〔実施例32〕
下記組成の歯の化粧セットを前述の実施例と同様に調製し、評価した。その結果、「簡便性・操作性」「外観」「光沢」「耐久性」はいずれも○であった。
<歯の化粧セット>
○塗布組成物
アクリル酸エステル/メタクリル酸エステルの2−アミノ2−メチル−1−プロパノールによる中和品(互応化学工業(株)製、プラスサイズL53P、有効成分50%含有したエタノール溶液、粘度60mPa・s) 50%
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 32%
シリカ被覆マイカ 3%
(触媒化成工業(株)製、ベルベットベール Hタイプ)
酸化チタン 3%
(石原テクノ(株)製、TTO−D−1、樹枝状、短軸0.05μm、長軸0.25μm)
ポリビニルピロリドン(BASF社製、PVP K30) 2%
精製水 10%
計 100.0%
(pH7.2)
【0076】
○フィルム組成物 ( )内は、(式1)により算出した乾燥後の質量%
アクリル酸オクチルアミド/アクリル酸エステルコポリマー 20%(74.1%)
(National Starch and Chemical社製、AMPHOMER
V−42、粘度100mPa・s)
クエン酸トリエチル(ファイザー製薬社製、シトロフレックス2) 5%(18.5%)
酸化チタン・シリカ被覆セリサイト 1%(3.7%)
(触媒化成工業(株)製、SOFT VISION 05855Z)
酸化チタン 1%(3.7%)
(石原テクノ(株)製、TTO−D−1、樹枝状、短軸0.05μm、長軸0.25μm)
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 73%
計 100.0%
(pH6.2)
表面をシリコーンでコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、40℃で24時間乾燥して厚さ30μm、面積35mm2のフィルム組成物を調製。
塗布組成物の顔料配合量/フィルム組成物の顔料含有量は0.81。
【0077】
〔実施例33〕
下記組成の歯の化粧セットを前述の実施例と同様に調製し、評価した。その結果、「簡便性・操作性」「外観」「光沢」「耐久性」はいずれも○であった。
<歯の化粧セット>
○塗布組成物
エチルセルロース(ダウケミカル社製、エトセル45P) 4%
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 92.5%
重質炭酸カルシウム(白石工業(株)製、ホワイトインP−70) 3%
ポリビニルピロリドン(BASF社製、PVP K30) 0.5%
計 100.0%
(pH6.2)
【0078】
○フィルム組成物 ( )内は、(式1)により算出した乾燥後の質量%
ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート 20%(78.4%)
(第一三共(株)製、AEA三共)
クエン酸トリエチル(ファイザー製薬社製、シトロフレックス2) 5%(19.6%)
魚鱗箔(角八魚鱗箔製、パールエッセンス) 0.5%
(2.0%)
エタノール(甘糟化学産業(株)製、無水エタノール) 74.5%
計 100.0%
(pH8.8)
表面をシリコーンでコーティングしたポリエチレンテレフタレートフィルム上に展延し、40℃で24時間乾燥して厚さ30μm、面積35mm2のフィルム組成物を調製。
塗布組成物の顔料配合量/フィルム組成物の顔料含有量は1.50。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶性皮膜形成剤、炭素数2〜4の低級アルコール、及び白色顔料を含有してなる塗布組成物(A)と、非水溶性皮膜形成剤、可塑剤、及び白色顔料を含有してなるフィルム組成物(B)とからなることを特徴とする歯の化粧セット。
【請求項2】
塗布組成物(A)が、更に増粘剤としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の歯の化粧セット。
【請求項3】
非水溶性皮膜形成剤が、セラック、メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル/メタクリル酸塩化トリメチルアンモニウムエチル共重合体、(メタ)アクリル酸(アルキルエステル又はアルキルアミド)の2種以上の共重合体、及び(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)共重合体から選ばれる少なくとも1種以上である請求項1又は2記載の歯の化粧セット。
【請求項4】
フィルム組成物(B)に含有する可塑剤が、クエン酸トリエチル及び/又は平均分子量400〜2,000のポリプロピレングリコールである請求項1,2又は3記載の歯の化粧セット。
【請求項5】
白色顔料が酸化チタンである請求項1乃至4のいずれか1項記載の歯の化粧セット。

【公開番号】特開2008−1649(P2008−1649A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173600(P2006−173600)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】