説明

歯ブラシのブラシヘッドの駆動周波数を変化させることによる運動の振幅の変更

駆動システムがブラシヘッドを駆動周波数で駆動する。前記駆動システムは、前記ブラシヘッドの運動の振幅の5乃至30%の範囲内の変化をもたらすよう該ブラシヘッドの共振と相互に作用するようにして、選択された周波数偏移及び変調周波数で、中心周波数を中心として前記駆動周波数を変更する周波数変調システムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、電動歯ブラシに関し、より具体的には、このような歯ブラシであって、該歯ブラシの動作中、該歯ブラシの(毛及び毛板(bristle plate)を含む)ブラシヘッド部の振幅の周期的な変化又は変動をもたらすようにして駆動される歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
電動歯ブラシにおいては、通常、ブラシヘッドが振動するようなブラシヘッドの運動の振幅と、クリーニング効果及び感覚体験(sensory experience)の両方との間に相関関係がある。振幅が大きければ大きいほど、良好なクリーニング結果を供給する。しかしながら、振幅には実用上限があり、不快感の原因となる振幅の詳細な特性に関しては不確定要素があるが、前記実用上限より大きいと、一般ユーザに不快感が生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明においては、ユーザがより大きな振幅を許容することを可能にする特定の方法であって、感覚的ブラッシング体験(sensory brushing experience)を増大させ、歯ブラシの洗浄効果も改善する特定の方法で振幅が変えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、本発明は、共振周波数を持つ電動歯ブラシを共振駆動するシステムであり、動作中、前記歯ブラシのブラシヘッド部が、中心点を中心とした振幅を持つ経路を通って動くシステムであって、ブラシヘッドを駆動周波数で駆動する共振駆動システムを有し、前記駆動システムが、ユーザの不快感なしに改善された感覚体験を供給する、5乃至30%の範囲内の前記ブラシヘッド部の振幅の周期的な変化をもたらすよう中心周波数を基準として前記駆動周波数を変化させる回路を含むシステムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
一般的に、中心位置を中心として振動するよう設計されたブラシヘッド部を持つ電動歯ブラシは、本願明細書では中心周波数Fと呼ばれる予め選択された周波数で駆動される。中心周波数は、駆動システムの設計者によって決定され、動作中歯ブラシによって消費される電力に対して最大限の効率を供給するために歯ブラシの共振周波数又はその近くであるよう選択され得る。
【0006】
電磁駆動システムを用いるこのような歯ブラシの例は、米国特許番号第5,189,751号において示されている。米国特許番号第5,189,751号は、本発明の譲受人によって所有されており、米国特許番号第5,189,751号の内容は、参照により本願明細書に盛り込まれる。しかしながら、本発明は、'751特許に示されている駆動システムなどの特定の駆動システムに限定されないことは理解されたい。振動するブラシヘッド動作をもたらす多くの他の駆動システムもよく知られており、本発明で用いられ得る。
【0007】
一般的に、共振駆動歯ブラシは、共振においては、ブラシヘッドの運動の振幅が非常に大きく、一般ユーザに著しい不快感をもたらすことから、共振からわずかに外れて動作する。歯ブラシが、共振からわずかに外れて、例えば3又は4Hzだけ共振周波数より上又は下で動作される場合、ユーザの不快感なしに効率的なクリーニング結果が得られる。図1は、共振駆動歯ブラシの周波数に対するブラシヘッド電圧(エネルギ)(brushhead voltage (energy) )のグラフを示している。プロット線12が、歯ブラシの共振周波数近辺の範囲14において1つの大きなピークを持っていることに注意されたい。
【0008】
上記のように、歯ブラシのブラシヘッドの運動の振動中の振幅が、歯ブラシの動作によってもたらされるクリーニングの望ましい感覚的作用(sensory effect)の供給及び歯のクリーニングにおける重要な要素(major factor)であることは既知である。感覚的作用は、歯の効果的なクリーニング及び歯肉の治療が実際に行なわれていることを示す体験をユーザに供給するので、非常に重要である。従って、振幅を増大させることは、クリーニング効果及び感覚的作用を高めるのに望ましいように思われるであろうが、上記のように、特定の程度を越える振幅の増大は、一般ユーザに著しい不快感をもたらすであろう。
【0009】
本発明においては、ブラシの運動の平均振幅の増大をもたらす振幅(運動)変調を実質的にもたらすブラシヘッドの運動(振幅)の周期的な変化(Δ)をもたらすために、駆動周波数が、周波数変調などによってFを中心として周期的に変更される。これは、ユーザの不快感なしに、ユーザの感覚的ブラッシング体験の改善、及びクリーニング効果の可能な限りの改善をもたらす。
【0010】
本発明においては、共振駆動歯ブラシで、まず、中心周波数Fが、歯ブラシの共振周波数のより近くに、一般的には、(結果として生じる不快感のため)別の方法で近付けられるであろうよりも近くに近付けられる。中心周波数の共振周波数への接近は、周波数変調により結果として生じるブラシの運動の振幅の変化に著しい影響を及ぼす。示されている実施例においては、例えば、256.5Hzの歯ブラシ共振周波数に対して、中心周波数は259Hzである。
【0011】
中心周波数が共振周波数に近づくにつれて、ピーク振幅はその最高点に近づく一方で、Δ振幅の変化又は変動は最小に近づく。これは、周波数変調を用いて259Hzの周波数において駆動される歯ブラシの、共振周波数に対するピーク振幅(20)のグラフ及び共振周波数に対する振幅の変化(21)のグラフを備える図4及び5において図示的に示されている。ブラシヘッドの振幅の変化に影響を及ぼす駆動信号の要素は、Fを中心とした周波数偏移(D)、即ち、中心周波数を基準とした駆動周波数のプラス及びマイナスの変化量と、変調周波数(F)と、波形(時間に対する周波数のグラフである図10に全て図示されている)、及びデューティファクタを含む。
【0012】
上記の周波数変調の要素(とりわけ、変調周波数(F)、周波数偏移(D)及び波形)の組合せは、振幅の変化を5乃至30%の範囲内に維持しなければならない。振幅の変化(変動)は図9に図示されている。図9は、Fを中心として周波数変調された駆動信号の場合の時間に対するブラシヘッド振幅変動のグラフである。5%未満では、事実上、感覚的ブラッシング体験又はクリーニングにおける変化がない一方で、30%を超えると、一般ユーザには著しい不快感がある。好ましくは、前記変化は、20%より大きくなく、最も好ましくは、10%である。
【0013】
波形は、駆動周波数が変えられる方法のことを意味し、即ち、駆動周波数を1ステップで変化させるのが、方形波変調信号であるのに対して、周波数を最大偏移に達するよう一連のより小さなステップで経時的に変化させるのが、図10に示されているような三角波変調信号である。
【0014】
上記のように、ブラシヘッドの運動のピーク振幅は、Fが共振周波数にある場合に最大であるが、振幅の変化(変動)は、Fが共振周波数にある場合に最小である。従って、上記のように、本発明の要点である振幅の周期的な変化を得るためには、中心周波数は、装置の共振周波数から若干、本実施例においては略々3Hz、離れていなければならない。
【0015】
本願明細書に記載されている、振幅の変化に影響を及ぼす駆動信号の周波数変調のための要素は、共振駆動システムに基づいているが、非共振システムにおいても、振幅の周期的な変化をもたらす駆動信号の別のタイプの変調が、クリーニング効果及び/又はクリーニングの感覚的ブラッシング体験を高める可能性は十分にある。しかしながら、本願明細書の説明は、共振駆動システムに基づいている。
【0016】
様々な変調周波数(速度(rate))及び様々な周波数偏移(D)の効果が、図6及び7のグラフに示されている。これらのグラフの両方とも、259Hzの中心周波数Fを用いて歯ブラシの振幅の変化(Δ振幅)対ブラシヘッド共振周波数をプロットしている。共振周波数と中心周波数との間の選択周波数差(例えば、259Hzの中心周波数で256.5Hzの共振周波数参照)に対して、図6は、変調周波数の増大が、ブラシの振幅の変化(Δ振幅)の著しい減少をもたらすことを示している一方で、図7は、周波数偏移の増大が、ブラシの振幅の変化(Δ振幅)の増大をもたらすことを示している。
【0017】
より詳細には、図6から、所与の中心周波数Fの場合は、変調周波数は、振幅変調に強い負の影響(strong inverse effect)を及ぼす。例えば、256.5Hzの共振周波数に対して中心周波数が259Hzである実施例において、12Hzの変調周波数は、周波数偏移、波形及びデューティファクタという他の要素に依存して、特定の範囲内の振幅の変化をもたらす。12Hzから24Hzへの変調周波数の増大は、振幅の変化(変動)、即ちΔAを減少させ、40Hzへの変調周波数の更なる増大は、振幅変動を零に近づける。
【0018】
より詳細には、図7から、偏移(D)、即ち、中心周波数Fに対する周波数の変化は、振幅変調に正の影響(direct effect)を及ぼす。例えば、示されている実施例においては、好ましい偏移は±3.5Hzである。偏移の倍増は、振幅の変化(変動)を略々2倍にする。
【0019】
上記のように、振幅の変化に或る程度まで影響を及ぼす他の要素は、変調信号の波形と、変調周波数のデューティファクタとを含む。変調周波数の変更のための三角波形の使用は、方形波形とは対照的に、振幅の変化(ΔA)に略々半分の影響(half the effect)を及ぼす。デューティファクタに関しては、デューティファクタが減少させられる場合に振幅の変化は増大する。
【0020】
約10%の振幅変化(ΔA)のための好ましい実施例は、262Hzの共振周波数、259Hzの中心周波数F、12Hzの変調周波数F及び3.5Hzの周波数偏移(D)を持つ。波形は三角形であり、デューティファクタは48%である。このようなシステムでは、不快感なしに、感覚体験の増大及びクリーニングの改善が生じる。図3は、このような装置の周波数に対するエネルギの分布、具体的には、駆動信号の周波数スペクトルを示している。
【0021】
図2は、上記のシステムの構造上の実施例を示すブロック図である。中心周波数Fは、回路、即ちブロック30によって生成される。中心周波数は、周波数源回路32に加えられ、周波数源回路32には、ブロック34によって周波数変調信号Fも供給される。周波数源32によって生成される周波数は、ブロック36によって表わされているような歯ブラシの駆動電子回路(drive electronics)に加えられ、前記駆動電子回路は、バッテリなどの電源38によって駆動される。
【0022】
或る実施例においては、駆動電子回路36は、磁気駆動コイル40を駆動し、前記磁気駆動コイル40の動作は、磁気結合装置41によって機械的共振系42に結合され、前記機械的共振系42は、振動するようにしてブラシ44を駆動する。
【0023】
上記の装置において、中心周波数Fを中心とした駆動周波数の変更は、よく知られている、駆動周波数が選択された速度で変更される従来の周波数変調手段によって達成される。しかしながら、周波数の変更は、別の装置によって達成され得る。この装置は図8に示されている。同時に生成される2つの駆動信号が組み合わされ、結果として生じる信号がブラシヘッドを駆動する。第1周波数信号は、周波数発生器60によって生成される一方で、第2周波数信号は、周波数発生器62によって生成される。一般的には、一方の信号は、装置の共振周波数である一方で、他方の信号は、共振周波数から少々外された周波数である。或る場合には、262Hzの共振周波数(第1周波数)に対して、第2周波数は242Hzであり得る。一般に、差は、5乃至30Hzの範囲内であろう。
【0024】
次いで、2つの信号は、それらが組み合わされるオペアンプ64に加えられる。オペアンプ64の出力は、組み合わされた信号であり、前記2つの信号の結果は、ブラシヘッドの振幅における変化をもたらす“うなり”である。この出力は、高周波を取り除くためにフィルタをかけられる。図8に示されている駆動回路の残りの部分は、図2のものと同様である。
【0025】
しかしながら、この場合もやはり、ユーザの不快感のために、時間を通じての振幅の変化、即ち振幅変調の範囲に対する制限はある。従って、前記2つの信号の周波数の選択は、望ましい結果の実現に関する重要な要素である。
【0026】
上記のように、共振駆動システムにおいて周波数変調を用いる第1実施例が上に記載されており、他の実施例では2つの信号のうちの1つが共振周波数にある。
【0027】
従って、駆動信号を変調する周波数によってブラシヘッドの運動の振幅における変化、要するに、振幅変調をもたらすシステムが開示されている。振幅変調は、不快感なしに、ユーザの改善された感覚体験、及び改善されたクリーニング効果をもたらす。
【0028】
説明のために本発明の好ましい実施例が開示されているが、特許請求の範囲に規定されている本発明の精神から逸脱することなしに様々な変形例、修正例及び代替例が実施例に盛り込まれ得ることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】略々259Hzに既知の共振周波数を持つ電動歯ブラシの周波数に対するブラシヘッド電圧(エネルギ)の図である。
【図2】本発明の歯ブラシ駆動システムの一実施例のブロック図である。
【図3】図2のシステムを用いる周波数に対するブラシヘッド電圧(エネルギ)の図である。
【図4】259Hzで駆動される電動歯ブラシのブラシヘッド共振周波数に対する振幅の変化(変動)の図を示す。
【図5】259Hzで駆動される電動歯ブラシのブラシヘッド共振周波数に対するピーク振幅の図を示す。
【図6】異なる変調速度を備える周波数変調駆動信号についてブラシヘッド共振周波数に対する振幅の変化(変動)の図を示す。
【図7】変調の異なる最大周波数偏移を備える周波数変調駆動信号についてブラシヘッド共振周波数に対する振幅の変化(変動)の図を示す。
【図8】本発明の別の実施例のブロック図である。
【図9】時間に対する歯ブラシのブラシ部の振幅の変動の図である。
【図10】時間に対する駆動周波数の変動の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振周波数を持つ電動歯ブラシを共振駆動するシステムであり、動作中、前記歯ブラシのブラシヘッド部が、中心点のまわりに振幅を持つ経路を通って動くシステムであって、ブラシヘッドを駆動周波数で駆動する共振駆動システムを有し、前記駆動システムが、ユーザの不快感なしに改善された感覚体験を供給する、5乃至30%の範囲内の前記ブラシヘッド部の振幅の周期的な変化をもたらすよう中心周波数に対して前記駆動周波数を変化させる回路を含むシステム。
【請求項2】
前記振幅の変化が20%未満である請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記中心周波数が、0乃至5Hzの範囲内で前記歯ブラシの共振周波数と異なる請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記駆動周波数の変化が周波数変調によって達成される請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記中心周波数と前記共振周波数との間の差が略々±3Hzである請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記駆動周波数が、前記中心周波数から1乃至14Hzの範囲内の周波数偏移を持つ請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記周波数偏移が略々3.5Hzである請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
駆動周波数変化が、3乃至40Hzの範囲内の変調周波数を持つ請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記変調周波数が略々12Hzである請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記駆動周波数の変化が、三角波の形をとる請求項4に記載のシステム。
【請求項11】
前記駆動周波数の変化が、略々48%のデューティファクタを持つ請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記駆動システムが、2つの駆動信号源を含み、一方の信号源が略々前記共振周波数にあり、他方の信号源が前記共振周波数とわずかに異なる周波数にある請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
第2信号源の周波数が、5乃至30Hzの範囲内で第1信号源の周波数と異なる請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−514397(P2007−514397A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−543705(P2006−543705)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052741
【国際公開番号】WO2005/058188
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】