説明

歯周病、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonasgingivalis)に対するポルフィリン結合メトロニダゾール

本発明は、概して、特定の生物体または生物群を対象とした分子標的薬剤(TMA)およびその使用に関する。より詳しくは、本発明は、特定の生物体が必要とする天然または誘導性の栄養要求を含む標的部分を、標的生物に送達されるためにその部分に結合された薬剤を方向付けるための媒体として有するTMAを提供する。本発明のTMAは、選ばれた生物体に抗微生物剤および診断薬などの分子をターゲティングするうえで有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、特定の生物体または生物群を対象とする分子標的薬剤(TMA)およびその使用に関する。より詳しくは、本発明は、特定の生物体が必要とする、天然または誘導性の栄養要求を含む標的部分を、標的生物に送達されるためにその部分に連結された薬剤を方向付けるための媒体として有するTMAを提供する。本発明のTMAは、抗微生物剤および診断薬などの分子を、選ばれた生物体にターゲティングするうえで有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
先行技術の説明
本明細書において提供される参照文献の詳細は、本明細書の最後に記載される。
【0003】
本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術が任意の国における一般的な一般知識の一部を形成するという承認またはいかなる形の示唆ではなく、そのように受け取られるべきではない。
【0004】
歯を支持する組織の感染症は、哺乳類にとっての世界的な問題である。例えば、オーストラリアにおいて、「口腔破壊歯周炎」として公知の状態である歯の弛緩および損失により、ヒツジは、まだ生産的であるのに処分される。文明の最初期から、歯周組織に影響を及ぼす疾患の証拠書類がある。それにもかかわらず、歯周病の指標が開発され、細菌性病因が実証されたのは、最近の40年またはその程度においてのみである。成人における歯周病の発生率は、アメリカ合衆国における全人口の約30%〜発展途上国における人口の約70%の範囲であると報告されている。
【0005】
歯周病は、不十分な口腔衛生などの局所環境因子、歯周組織の形態に関連する素因子、遺伝性因子、ならびに全身性疾患および歯周外傷からの改変因子を含む様々な因子によって引き起こされる。歯周病の有病率は、教育のレベル、収入、および歯の処置への即時のアクセスなどの様々な社会経済的因子と相関すると報告されている。管理不良の糖尿病および喫煙も、疾患に対する危険因子である。歯周病の高い有病率およびその処置に関連する高い経済的コストは、より効果的な処置に対する要請を駆り立てる。
【0006】
ポルフィロモナス・ジンジバリスは、歯と歯肉組織(歯肉溝)との間にある深い歯周ポケットの堅い境界に存在する。歯肉溝の生体構造は、唾液分泌および嚥下などの清浄プロセスの低下を引き起こし、P. ジンジバリスなどの微生物の占有が、歯肉炎を促進し、長期間にわたって破壊的歯周炎の進行をもたらす細菌活性の送達を可能にする。歯周病において、歯肉縁下領域における酸化還元電位は低く、溝を通って流れる溝浸出液によって提供される内因性の栄養素は、アミノ酸およびペプチドが豊富であり、したがって、P. ジンジバリスのコロニー形成に理想的な環境を提供する。
【0007】
ポルフィロモナス・ジンジバリスは、破壊的歯周炎に関わる主要な病原体の一つである。それは、直径0.3〜0.5μmのグラム陰性嫌気性桿菌である。P. ジンジバリスに特有の特徴は、線毛、被膜、および小胞である。
【0008】
線毛(F)は細く、直径約5 nmの毛様であり、宿主組織への細菌性接着および歯肉縁下微生物相内での初期コロニー形成細菌との共凝集を媒介すると信じられている。カプセル(C)は、電子密度が高いが、その機能は未知である。小胞(V)は円形であり、生物体の成長に必須なアミノ酸を提供するための、歯周ポケットにおける支持組織の分解および宿主タンパク質の加水分解に必要とされるプロテアーゼを含む。プロテアーゼは、局所免疫応答を妨害し、細菌性接着および共凝集において重要な線毛タンパク質のプロセシングおよび成熟に貢献する能力も有する。
【0009】
P. ジンジバリスは、多くの異なる機能について、ヘムを必要とする。細胞表面ヘムの捕捉は、活性酸素種に対する効果的な防御メカニズムであることが示唆されており、ヘムの捕獲は、エネルギー代謝にとって重要である可能性が高い。P. ジンジバリスゲノムに存在するヘム生合成経路における最後の3つの酵素をコードする3つの推定遺伝子、HemN、HemG、およびHemHがある。HemH(ポルフィリンフェロケラターゼ)の細胞内発現は、外因性プロトポルフィリンIX(PPIX)が捕獲され、細胞へと輸送された時点で、鉄の充満する環境においてFe2+およびPPIXのヘムへのキレート化を可能にすることによって、ヘムの代替として成長因子となることを可能にする。
【0010】
HemN(コポルフィリノーゲンオキシダーゼ)およびHemG(プロトポルフィリノーゲンオキシダーゼ)のホモログの存在は、ポルフィリン大環状分子の官能性の改変によって、関連するポルフィリンから必須ポルフィリンを生成する能力を伝達し得ると考えられる。成長に必要なヘムをバイパスするために、外因性の非鉄ポルフィリンとの組み合わせにおいてその他の鉄源を使用できる能力は、P. ジンジバリスのポルフィリン捕獲システムの少なくともいくつかが、非鉄ポルフィリンを認識し得ることを示唆する。ジンジパインKgpはヘモグロビンプロテアーゼであり、HA2ドメインは、ヘムに結合することが報告されており、ヘムを捕獲するためのヘモフォア(hemophore)として機能もする。
【0011】
ヘモグロビンは、炎症を起こした歯周ポケットにおけるヘム関連ポルフィリンおよび鉄の即時源であり、P. ジンジバリスにおけるその結合は、TonB依存性タンパク質、HmuR、およびジンジパインのHA2ドメインによって、明確に実証されている。
【0012】
メトロニダゾールは、P. ジンジバリスを含むさまざまな嫌気性菌に対して抗菌活性を示すことが公知の抗生物質である。メトロニダゾールを使用することの一つの主な不利な点は、口腔に存在する嫌気性細菌の異なる種間を識別することができないため、結果としてP. ジンジバリスを選択的に阻害することができない点である。
【0013】
口腔には、有益および有害の両方の多種多様な細菌が存在するので、メトロニダゾールなどの抗生物質の単独での使用は、選択性を提供せず、存在する嫌気性菌叢全体を殺傷すると考えられる。
【0014】
従って、特定の生物体に対する選択的ターゲティングを強化するために改変された薬剤が必要である。加えて、この選択性は、診断薬などの分子または標的生物に提示されることが必要な任意のその他の広範な分子のための一般的なターゲティング媒体として有用である。
【発明の開示】
【0015】
発明の概要
本発明は、標的生物が必要とする特定の栄養要求に基づく、特定の生物体または生物群に対して選択的であるTMAを提供する。必要とされる栄養要求は、生物体にとって天然のもの、または突然変異誘発などによって人工的に誘導されたものであっても良い。生物体は、寄生生物を含む原核微生物または真核生物であり得る。簡潔にするため、「生物体」および「微生物」という用語は、ほとんど同じ意味で使用され得る。好ましい態様において、本発明は、ポルフィリンまたはポルフィリン様分子を栄養要求として必要とする生物体への特異性を示す、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子標的部分を含むTMAを提供する。本明細書における「ポルフィリン」への言及は、フリーベース(free-based)ポルフィリン(すなわち、非金属含有ポルフィリン)ならびに金属ポルフィリンを含む。特に好ましい標的生物は、P. ジンジバリスおよびその親類である。実際において、必要とされる栄養要求は、そこに連結された任意の分子を標的生物または生物群に送達するための媒体を提供する。P. ジンジバリスの場合、特異性を可能にするのは、必要とする栄養要求であるヘムの取り込みメカニズムである。本質的に、ポルフォリンの取り込みメカニズムは、金属非依存性(例えば、HA2システム)または金属依存性(例えば、HasAシステム)であり得る。
【0016】
そのため、本発明は、概して、一般化学式(I)を含むTMAに関し:

式中、Tは、標的生物が必要とする栄養要求または該必要とする栄養要求の類似体もしくは誘導体を含む標的部分であり、xは、化学的結合の実体またはリンカー基であり、Aは、生物体を標的とすることを必要とされる薬剤であり、nは、1以上の整数であり、(x-A)1、(x-A)2、(x-A)3・・・(x-A)nは、同じまたは異なっても良く、各々は、化学的結合の実体によって標的部分に独立して結合される。
【0017】
化学的結合の実体は、各々の(x-A)nに対して同じ、または異なっても良い。好ましくは、n=1である。任意の事象において、xは、エステルもしくはアミドもしくはその他の型の化学結合または尿素結合もしくはカルバメート結合を含む結合であり得る。
【0018】
別の態様において、薬剤Aは、標的部分Tに直接結合または複合される。この例において、TMAは、一般化学式(II)を含み:

式中、T、A、およびnは、上のように定義される。
【0019】
従って、一般化学式は、化学式(III)として示されてもよく:

式中、T、x、A、およびnは、上のように定義され、mは0または1である。
【0020】
本発明のTMAは、一つまたは複数の栄養要求を必要とする一つまたは複数の生物体による、生物学的環境における感染症の処置に特に応用できる。この態様において、標的薬剤Aは、標的部分Tに連結される細胞毒性分子である。
【0021】
好ましい態様において、標的部分Tは、細胞毒性薬剤に連結されたポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を含む。ポルフィリン様分子は、誘導体ポルフィリンを含む。上に示されるように、両方のフリーベース(すなわち、非金属)ポルフィリンは、本発明による金属ポルフィリンである。この態様において、TMAは、生物体P. ジンジバリスによるヒトを含む動物被験体における感染症を処置するために使用される。
【0022】
本発明は、薬学的または獣医学的組成物における本発明のTMAの組み入れ、およびとりわけ微生物感染症を処置することにおけるそれらの使用にまで及ぶ。
【0023】
別の態様において、標的にされる薬剤は、同定可能なシグナルを提供できるレポーター分子として使用されるレポーター分子である。そのようなTMAは、とりわけ特定の生物体または生物群の計数、局在、または可視化に適用され得る診断薬とみなされると考えられる。
【0024】
本明細書全体にわたって、特に文脈が必要としない限り、「含む(comprise)」という単語または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などのバリエーションは、記載される要素もしくは整数または要素もしくは整数群の含有を意味するが、任意のその他の要素もしくは整数または要素もしくは整数群の排除を意味しないことが理解されると思われる。
【0025】
本明細書において使用される略語のリストを、表1に提供する。
【0026】
(表1)略語

【0027】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、薬剤を望ましい生物体または生物群にターゲティングする手段を提供する。「生物体」という用語は、寄生生物を含む原核および真核生物を含む。原核生物は、微生物を含む。故に、「生物体」および「微生物」という用語は、生物体が原核生物または真核生物であるかに決して限定されず、本明細書においてほとんど同じ意味で使用され得る。ターゲティング機構は、任意の分子または薬剤を生物体へ送達するための媒体として、標的生物が必要とする天然または誘導性の栄養要求を含む。この例において、生物体は、単一の型、種、属、もしくは族であり得、共通の栄養要求を必要とする生物体の二つ以上の型、種、属、もしくは族の群であり得る。送達される分子または薬剤に連結されるか、そうでなければ結合される標的媒体は、本明細書において「分子標的薬剤」またはTMAと呼ばれる。
【0028】
本発明を詳細に記載する前に、特に別に示されない限り、本発明は、特定の製剤、合成方法、治療プロトコール、または同様のものは、変化させても良いことから、それらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書において使用される用語は、特定の態様のみを記載する目的のためであり、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0029】
本明細書において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、特に別に文脈が前もって指示しない限り、複数の局面を含むことが留意されなければならない。したがって、例えば、「TMA」または「標的薬剤」への言及は、TMAまたは薬剤ならびに二つ以上のTMAまたは薬剤を含み、「必要とされる栄養要求(auxotrophic requirement)」は、単一ならびに二つ以上を必要とすることを含む、などである。
【0030】
本発明は、概して、一般化学式(I)を含むTMAに関し:

式中、Tは、標的生物が必要とする栄養要求または該必要とする栄養要求の類似体もしくは誘導体を含む標的部分であり、xは、化学的結合の実体またはリンカー基であり、Aは、生物体を標的とすることを必要とされる薬剤であり、nは、1以上の整数であり、(x-A)1、(x-A)2、(x-A)3・・・(x-A)nは、同じまたは異なっても良く、各々は、化学的結合の実体またはx基を介して標的部分に独立して結合され、n>1の場合、xは各々の(x-A)n実体に対して同じまたは異なっても良い。
【0031】
整数nは、1以上任意の整数であり得、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20の整数を含む。しかしながら、好ましくは、n=1である。
【0032】

上の表示は、実際においてTが、(x-A)に関して一価であり得る、または複数の(x-A)実体をともない、その各々が同じまたは異なっても良い多価であり得ることを意味する。さらに、化学的結合の実体は、T上の任意の場所に置かれ得る。xは、結合の任意の型であり得るが、好ましくはエステルもしくはアミド結合または尿素もしくはカルバメート結合である。
【0033】
特定の環境において、Aは、任意の結合実体を必要とせずに、Tに結合、接合、またはそうでなければ連結され得る。この場合、TMAは、一般化学式(II)を含み:

式中、T、A、およびnは、上に定義されるとおりである。
【0034】
従って、その最も広範の態様において、本発明は、一般化学式(III)を含むTMAを提供し:

式中、T、X、A、およびnは、上のように定義され、mは0または1である。
【0035】
Tが、複数のAを含む場合、その各々は、同じまたは異なっても良く、次いで、これは化学式IIに包含され、

が、

として示され得る。この局面において、An=Ai、Aj、Ak、Al・・・Anであり、Ai、Aj・・・の各々は、同じまたは異なっても良い。
【0036】
化学式IIにおける表示は、各々のAとTとの間の結合機構を包含する。
【0037】
本発明は、TMAのモノスルホンおよびジスルホン誘導体を含む本TMAの異性体を含み、本明細書において以下に記載される化合物20、21、39、40、41、および42は、それらの異性体ならびにモノ-およびジスルホン酸誘導体を含めて、特に有用である。化合物20および21の2-スルホン酸および4-スルホン酸誘導体は、特に好ましい。スルホン酸基は、ポルフィリン末端(例えば、2-、4-、β-ピロール、ならびにα、β、およびδメソ位)上の利用できる位置に組み込まれ得る。
【0038】
本明細書において使用されるように、「必要とされる栄養要求」という用語は、生物体がその環境から強制的に補給しなければならない任意の栄養素、化合物、または成長因子を指す。必要とされるものは、天然または人工的に誘導されたものであり得る。そのようなものとして、この用語は、生物体がそれ自身で合成することができない任意の化合物または栄養素を具体的に含む。本発明を決して限定しない例示的な、必要とされる栄養要求は、以下を含む:必須アミノ酸、ビタミン、ヘムおよびその他のポルフィリン、有機成長因子、ならびに同様のもの。
【0039】
一般化学式(I)においてAとして示される「生物体を標的とすることを必要とされる薬剤」は、本明細書において「標的薬剤」とも呼ばれる。
【0040】
本発明のTMAは、生物学的環境における生物体または生物群の標的細胞毒性に特に応用できる。環境に応じて、この応用は、「処置」、すなわち特定の生物体の数を選択的に減らすことと見なされても良い。この点で、標的薬剤は、抗生物質またはその他の抗微生物化合物などの細胞毒性分子である。
【0041】
別の態様において、標的薬剤は、診断などにおける使用のためのレポーター分子または遺伝子操作における使用などのための核酸分子である。
【0042】
しかしながら、一つの好ましい態様において、TMAは、ヒト被験体を含む動物における感染症を処置するために使用され、感染症は、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン誘導体を含むポルフィリン様分子が栄養要求性必要条件である生物体によって引き起こされる。特に好ましい標的生物は、ヘモグロビンおよびその前駆体ならびにヘムが栄養要求性必要条件であるものを含む。
【0043】
ポルフィリン大環状分子は、拡大ベンゼン環システムに似ており、平面ポルフィリン大環状分子またはその部分が、多くの共鳴型をともなう高度に接合したシステムであり、それが多様な生物学的プロセスに関与することを可能にする。金属ポルフィリン大環状分子の中心には、金属へのキレート化のために利用できる中心腔がある(Smith, Porphyrins and Metalloporphyrins, Elsevier Scientific Publishing Company, Amsterdam, 1976)。しかしながら、本発明は、キレート化金属をともなうポルフィリンおよびともなわないポルフィリンの両方を検討する。非金属ポルフィリンは、本明細書においてフリーベースポルフィリンとも呼ばれる。
【0044】
ポルフィリンは、ピロール環のβ位(図1における1〜8位)において、様々な置換を有し得る。テトラフェニルポルフィリンなどの合成化合物以外は、ポルフィリン環のメソ位(図1において示されるようなα、β、γ、およびδ)は、概して置換されない(Cannnon、1993、前記)。しかしながら、メソ位における置換を含むポルフィリン様分子は、本発明の範囲内である。
【0045】
ポルフィリンは、さまざまな細菌株に対する重要な抗菌活性を実証し、鉄などの必須必要条件を吸収および代謝する細菌細胞の能力に干渉することによってそれらの抗菌特性を発揮する。P. ジンジバリスにおけるヘムの結合部位は、HA2ドメインであり、HA2によるヘム認識は、ポルフィリンのみによって媒介され得ることが提唱されている。HA2含有タンパク質は、フラットな平面構造(鉄結合)またはわずかに「曲がった」構造(非鉄複合体)のいずれかのポルフィリンを認識することが可能であると本明細書において提唱されている。しかしながら、HasAシステムなどの金属ベースの輸送システムも、本発明によって検討される。
【0046】
一つの態様において、本発明のTMAは、ヒト被験体を含む動物における感染症を処置するために適合され、その感染症は、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を栄養要求として必要とするP. ジンジバリスによって引き起こされる。
【0047】
本明細書における「ポルフィロモナス・ジンジバリス」またはその略語「P. ジンジバリス」への言及は、この生物体のすべての突然変異体、誘導体、および変異体ならびに血清学的サブタイプへの言及を含む。本発明は、代謝、構造、生化学、免疫学、および/または疾患誘発レベルにおいてP. ジンジバリスに関連する微生物にも及ぶ。関連微生物の例は、サルモネラ(Salmonella)spp.、セラチア(Serratia)spp.、エルシニア(Yersinia)spp.、クレブシエラ(Klebsiella)spp.、ビブリオ(Vibrio)spp.、緑膿菌(Pseudomonas)spp.、大腸菌(E. coli)、およびヘモフィルス(Haemophilus)sppを含むが、それらに限定されない。
【0048】
ポルフィロモナス・ジンジバリスは、成長因子としてヘムを必要とし、ほとんどの生物体と異なり、鉄を必須認識因子として必要としない。代わりに、HA2受容体が、ポルフィリン大環状分子を認識する。ポルフィロモナス・ジンジバリスは、ゲノム配列を読むことによって実証されるように、ポルフィリン合成に関与する多くの酵素を欠くので、その代謝に必要なポルフィリン大環状分子を生合成することができない。そのため、外因性ヘムまたはその他のポルフィリンの存在は、P. ジンジバリスの成長に必須である。
【0049】
ポルフィロモナス・ジンジバリスは、慢性破壊性成人歯周炎の主な病原体であり、破壊性歯周炎の複雑な微生物群における病原体としてのその成功は、出血を促進するシステインプロテアーゼの能力に起因し得る。
【0050】
P. ジンジバリスにおけるヘムの機能は、溶血、ヘモグロビンタンパク質分解、および効率的なヘム捕獲のための細胞表面タンパク質Kgpを必要とする。ポルフィロモナス・ジンジバリスは、システインプロテアーゼドメインおよび血球凝集素ドメインを含む付加的なC末端ドメインHA1〜HA4を含む多ドメインタンパク質である、ジンジパインとして公知のリジン特異的Kgpおよびアルギニン特異的RgpAシステインプロテイナーゼを含む。
【0051】
P. ジンジバリスにおけるヘモグロビンの結合部位は、HA2ドメインであり、3つのHA2含有タンパク質:ジンジパインKgp、RgpA、および推定血球凝集素タンパク質HagAの一部であることが提唱されている。HA2ドメインは、ジンジパインにおいて保存されているので、これは、標的阻害に対するこの特徴の利用を可能にする。上に示されるように、非金属ポルフィリン(曲がった形態)および金属ポルフィリン(平面形態)は、HA2システムによって使用され得ることが提唱されている。
【0052】
生物体セラチア・マルセッセンス(marcescens)のHasA受容体は、ほとんどの生物体によるヘム捕獲のための典型的なヘモフォアを例証する。ヘム/HasA結合相互作用は、ヘム/HA2結合相互作用とは根本的に異なる。ヘム/HasA複合体の結晶構造は、ヘムが、His32およびTyr75への鉄配位に基づいて、分子の2つの部分の間の界面に位置することを示した。
【0053】
対照的に、HA2へのヘムの結合は、鉄配位を介さない。組み換えタンパク質を使用した結合研究は、ヘム部分のプロピオン酸基との相互作用によるHA2ドメインへのヘムの結合を示した。認識のためには、ポルフィリンのビニル局面について厳格な必要条件はないが、ポルフィリン壁の側面認識があることも信じられている。これは、標的生物P. ジンジバリスを選択的に阻害するために有害分子を組み込むための、特定の位置におけるポルフィリン大環状分子の誘導体化を可能にする。
【0054】
P. ジンジバリスの成長を支持するために、細胞に鉄を取り込むために、鉄をポルフィリンに配位する必要はない。実際に、P. ジンジバリスに対する選択的な薬物を開発することとの関連で金属ポルフィリンの使用を回避することは、この方式でHasA型結合相互作用によるその他の生物体の阻害が予防され、より選択的な薬物を生み出すので、おそらく有利である。以前の研究は、PPIXの6位および7位におけるプロピオン酸基が、P. ジンジバリスによるその取り込みにとって重要であることも示した。それにもかかわらず、本発明は、フリーベース(非金属)ポルフィリンならびに金属ポルフィリンの両方を検討する。
【0055】
P. ジンジバリス細胞がポルフィリン不足の場合、それらは、鉄が充満する環境下でさえも増殖することができない。しかしながら、細胞が静止期の直後にポルフィリンで処置される場合、ヘム不足培養は回復する。金属化(ヘム)およびフリーベースポルフィリン(PPIXおよびDPIX)の両方は、同様の回復プロファイルを生ずるので、細胞が、鉄非依存性様式で、ポルフィリンを捕獲しかつポルフィリンに応答するという証拠を提供する。
【0056】
本明細書において使用されるように、「ポルフィリン」、「ポルフィリン様分子」、および「ポルフィリン類似体」という用語は、図1において示されるようなポルフィリン大環状分子を含む任意の分子を包含することが理解されるべきである。
【0057】
本発明の好ましい態様において、TMAの標的部分は、ポルフィリン類似体である。言い換えると、ポルフィリン類似体は、それに連結、接合、または結合された任意の分子または薬剤を、ポルフィリンを必要とする生物体へ送達するための媒体である。
【0058】
本明細書において使用されるように、「ポルフィリン類似体」という用語は、任意の一つのピロール環のβ-位(図1における1〜8位)またはポルフィリン環のメソ位(図1において示されるようなα、β、γ、およびδ)において、一つまたは複数の置換基を含むポルフィリン様分子を包含することが理解されるべきである。従って、「ポルフィリン類似体」という用語は、以下に示されるポルフィリン類似体を具体的に含むが、決してそれらに限定されない。

式中:

ピロール環のβ-位(1〜8)における置換基は、ポルフィリンの治療的特性を定義するうえで重要であり、概して、ポルフィリン環のメソ位(α、β、γ、およびδ)は置換されないということが示されている。側鎖としてのPPIXの2位および4位におけるビニル基は、ポルフィリン分子の不安定さを引き起こす。PPIXのビニル基が、DPIXを与えるような水素などの、分子への接合を提供しない基で置換される場合、分子の安定性が大いに強化される。
【0059】
しかしながら、本明細書において使用されるような「ポルフィリン類似体」という用語は、ポルフィリン大環状分子のメソ位の一つまたは複数における置換を含むポルフィリン類似体を包含することが理解されるべきである。置換基の例は、ポルフィリン末端(例えば、2-、4-、α、β、およびδメソ位)上のすべての利用できる位置におけるモノスルホン酸およびジスルホン酸誘導体を含む。本明細書において例示される任意の化合物の2-スルホン酸および4-スルホン酸誘導体(化合物20および21を含む)は、特に好ましい。
【0060】
組み換えタンパク質を使用した結合研究は、ヘム部分のプロピオン酸基との相互作用によるP. ジンジバリスのHA2ドメインへのヘムの結合を示した。そのため、好ましいポルフィリン類似体は、HA2による認識のためのプロピオン酸基の少なくとも一つを保有するものである。以前の研究は、1〜4位における官能性ならびに6位および7位におけるプロピオン酸側鎖の修飾の役割も調査した。1位および3位におけるP. ジンジバリスのHA2ドメインによって認識される、容認される唯一の官能基は、メチル基であることが示されており、2位および4位における容認される官能基のリストは、ジュウテロポルフィリンにおけるような水素、メチル基、プロトポルフィリンにおけるようなビニル基、スルホン酸基、およびジュウテロポルフィリンビス-エチレングリコール基を含む(表2)。
【0061】
(表2)HA2結合について、ポルフィリンのビニル面において容認される官能基

【0062】
プロピオン酸側鎖基の変化は、P. ジンジバリスの正常な成長を阻害するとみられていることが示されている。そのため、ポルフィリンの2位および4位にスルホン酸基を付加することが提唱された。なぜなら、それらの位置において、官能性をスルホン酸基に変更することで、提唱されるHA2ドメインへの結合は大きく変わらないと考えられるからである。
【0063】
そのため、好ましい態様において、標的部分は、少なくとも一つのプロピオン酸側鎖を含むポルフィリン類似体を含み、より好ましい態様において、ポルフィリン類似体は、少なくとも二つのプロピオン酸側鎖を含む。
【0064】
一つの特定の態様において、本発明は、一般化学式(I)を含むTMAを提供し:

式中、Tは、ポルフィリン類似体を含む標的部分であり、xは、化学的結合またはリンカー基であり、Aは、生物体を標的とすることを必要とされる薬剤であり、nは、1〜4の間の整数であり、(x-A)1、(x-A)2、(x-A)、および(x-A)4は、同じまたは異なっても良く、各々は、標的部分に独立して結合される。
【0065】
上に示されるように、xは、TにAを結合、接合、または連結する手段に応じて、必要または不要である。
【0066】
特に好ましい態様において、ポルフィリン類似体は、DPIXを含む。
【0067】
一つの態様において、標的薬剤(A)は、一つまたは複数の標的生物に対して微生物殺生性または微生物増殖抑制性効果を有する任意の薬剤であり得る。例えば、標的薬剤は、抗菌剤、抗真菌剤、および抗寄生生物化合物を含むが、決してそれらに限定されない。これらは、自然発生的であり得るまたは化学的に送達され得る。
【0068】
本発明の例示的な薬剤は、以下を含むが、それらに限定されない:アミノグリコシド(ゲンタマイシン、ネオマイシン、およびストレプトマイシンを含む)、ベータ-ラクタム、ペニシリン(アンピシリン、アモキシシリン、コ-アモキシクラブ、およびフルクロキサシリンを含む)、セファロスポリン(セファレキシン、セファクロル、およびセフロキシムを含む)、クロラムフェニコール、シクロセリン、イオノフォア、グリコペプチド、リンコサミド、マクロリド(エリスロマイシンおよびクラリスロマイシンを含む)、モノバクタム、ポリペプチド抗生物質、ニトロイミダゾール(メトロニダゾール、ニモラゾール、およびチニダゾールを含む)、キノロン(シプロフロキサシンを含む)、ストレプトグラミン、スルホンアミド、テトラサイクリン(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリンを含む)、バンベルマイシン、カルバドックス、ノボビオシン、スペクチノマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピシン、トリメトプリム(モノプリム(Monoprim))、およびバンコマイシン。
【0069】
標的薬剤は、化合物が、生物学的システムまたは生物体において、修飾および/または代謝された時点でのみ、活性または完全活性を獲得する化合物である、薬剤の前駆体を含んでもよい。
【0070】
メトロニダゾールは、嫌気性条件において、メトロニダゾール分子が嫌気性条件において普通は細胞を修復すると考えられるDNA修復酵素を阻害するように変化し、嫌気性細菌の死をもたらすが好気性組織に対する効果を有しないので、P. ジンジバリス感染症などの嫌気性感染症に対して特に効果的である。メトロニダゾールの一次作用は、日常的な薬物投与の間に簡単に獲得可能な濃度におけるDNA鎖切断を引き起こすことによる、DNA複製の迅速な阻害である(Sigeti et al., J Infect Dis. 148: 1083-1089, 1983)が、ニトロ基のフェレドキシン媒介還元の後にのみ生じる(Edwards et al., Janssen Research Foundation Series 2:673-676, 1980)。メトロニダゾールのニトロ基は、体内に輸送された時点で、オキシムおよびヒドロキシルアミンを介して体内においてインサイチューでアミンへと還元される。オキシムおよびヒドロキシルアミン中間体は、本発明に包含される。嫌気性条件下において、ニトロイミダゾールは、毒性である中間体へと代謝的に還元される(Olive, Brit. J. Cancer 40: 94-104, 1979)。DNA修復酵素の阻害が、放射線に対する嫌気性組織の感受性を増加させ得るので、メトロニダゾールは、癌に対する放射線治療において使用される。メトロニダゾールは、特定の原虫感染症、特にジアルジア(Giardia)sppに対する効果的な抗生物質でもある。メトロニダゾールは、それが不安定なアミノ型である場合にのみ活性があり、故に、プロドラッグとして使用される。
【0071】
P. ジンジバリスに対するメトロニダゾールの素晴らしい活性があることが示されている(Poulet et al., J. Clin. Periodontol. 26: 261-263, 1999; Mitchell, J. Clin. Periodontol. 11: 145-158, 1984)。感受性嫌気性菌が臨床耐性をまだ発生していない抗生物質でもあるため、それは、嫌気性感染症に対する好ましい薬物である(Ghayoumi, Journal of the Western Society of Periodontology/Periodontal abstracts 49: 37-40, 2001)。メトロニダゾールを使用することの一つの主な不利な点は、メトロニダゾールが、活性の非常に広範なスペクトルを有し、そのため、P. ジンジバリスに対して選択的ではないことである。
【0072】
そのため、一つの特に好ましい態様において、標的薬剤はメトロニダゾールである。
【0073】
従って、本発明は、還元型のNO2基を含むメトロニダゾールまたはその誘導体を含む分子標的薬剤(TMA)を検討し、該メトロニダゾールは、ポルフィリン分子またはその類似体もしくは誘導体に化学的結合を介して連結される。
【0074】
一つの態様において、ポルフィリンは、プロピオン酸基によってメトロニダゾールに連結される。
【0075】
加えて、ポルフィリンは、非金属ポルフィリンまたは金属ポルフィリンであり得る。NO2の「還元型」は、オキシムまたはヒドロキシルアミンを含む。化学的結合基は、とりわけエステルまたはアミド結合であり得る。
【0076】
一つまたは複数の標的薬剤は、当業者にとって明白な任意の手段を使用して、標的部分に結合、化学的に結合、または接合、またはそうでなければ連結され得る。
【0077】
一つの好ましい態様において、標的部分は、少なくとも一つ、より好ましくは少なくとも二つのプロピオン酸側鎖を含むポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子であり、これらの側鎖の少なくとも一つが、プロピオン酸基のカルボキシル基とヒドロキシル基を含む標的薬剤との間でエステル結合を形成するために使用される。
【0078】
一つの特定の好ましい態様において、本発明は、DPIXの6位および7位におけるプロピオン酸側鎖およびメトロニダゾールのヒドロキシル基を介するエステル結合を含むメトロニダゾール置換付加体をともなう標的部分としてDPIXを含むTMAを検討する。チニダゾールとメトロニダゾールとの間の唯一の差は、チニダゾールがヒドロキシル部分の代わりにスルホン部分を有するが、嫌気性菌に対して活性があることも証明されているという点であるため、メトロニダゾールのヒドロキシル基は、エステル結合による6位および7位におけるプロピオン酸側鎖への接着に特に都合が良い。これは、メトロニダゾール上のヒドロキシル基が、嫌気性菌の活性に必須ではない可能性を示す。
【0079】
従って、本発明は、化合物19、20、もしくは21、またはその異性体の任意の一つの化学構造を含むTMAをさらに検討する。

【0080】
本発明に従って、P. ジンジバリスは、ポルフィリン大環状分子の一側面を認識するのみであり、その側面に選択的に結合することが提唱されている。そのため、プロピオン酸基の一つに結合するのみである標的薬剤を含み、ポルフィリン大環状分子上の一つのプロピオン酸基を無傷のままにする一付加体であるTMAは、P. ジンジバリスへのTMAの認識、結合、および取り込みを補助し得る。従って、一つの好ましい態様において、例えば化合物20および21などの本発明のTMAは、少なくとも一つの「遊離」プロピオン酸基を含む。
【0081】
本発明は、標的病原体の細胞表面または外膜に結合された時点での標的薬剤の選択的加水分解を可能にするために、標的薬剤とポルフィリン分子のプロピオン酸側鎖または複数の側鎖との間のリンカーとして、アルギニン(Arg/R)またはリジン(Lys/K)などのアミノ酸を組み込むアミドスペーサーを含むTMAも検討する。
【0082】
アミノ酸とカルボン酸との間のペプチド結合の形成は、縮合反応の例であり、分子は、付随する水分子の除去をともなって結合し得る。このことは、ジンジパインが、アルギニンおよびリジン特異的であるので、特に有用であると思われ、歯垢のタンパク質分解活性の高い割合を占めるシステインプロテアーゼの豊富な源である。このことは、その他の生物体がジンジパインを有さず、結果として、アミドスペーサーが、その他の生物体によって簡単に開裂され得ないが、P. ジンジバリスによって選択的に開裂され得るので、P. ジンジバリスに対する増加した選択性を意味すると考えられる。
【0083】
例えば、メトロニダゾールに関して、いくつかのアプローチが利用できる。一つは、プロピオン酸基の置換に関与し(スキームAを参照されたい)、もう一方(スキームB)は、大環状分子骨格の先行する誘導体化を必要とする。第一にそこにアミノ基を置くことによる、またはメトロニダゾールのニトロ基を還元し(インビボで生じ、メトロニダゾールはプロドラッグである)、次いでそれを使用してアミド結合を形成することによる、ポルフィリンメソ-位を介する結合も可能である。

スキームA

スキームB
【0084】
スキームAにおいて示される合成化学が、ポルフィリン誘導体上のアミノ基とメトロニダゾール誘導体のアミノ基との間の尿素結合の生成を対象とし得ることも予想される。スキームBが、ポルフィリン誘導体上のアミノ基と親化合物であるメトロニダゾールのヒドロキシルとの間で作られ得るカルバメートエステル結合を生成するために改変され得ることも予想される。
【0085】
本発明は、ポルフィリン大環状分子の2位および/または4位においてビニル基を含む、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子への標的薬剤の結合を含むTMAにまでおよぶ。さらに本発明は、ビニル基(2位および/または4位)の一つにおけるスルホン酸基の付加を検討する。これに関連して、薬剤の「治療的」性質は、急性または慢性感染症を引き起こす生物体などを殺傷または阻害する能力に関するものである。
【0086】
別の態様において、本発明は、標的部分に結合、化学的に結合、またはそうでなければ連結される複数の標的薬剤を含むTMAにまでおよぶ。例えば、複数の標的薬剤は、ビニル基および/またはプロピオン酸基の一つまたは複数を介してポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子に結合され得る。従って、単一のポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子は、一つ、二つ、三つ、または四つの結合標的薬剤を含み得る。
【0087】
複数の標的薬剤(例えば、メトロニダゾール)を含む例示的な化合物TMAは、化合物39、40、41、および42、ならびにその異性体として示され、メトロニダゾールなどの標的薬剤の置換は、ビニル位の一つまたはプロピオン酸側鎖の一つを介して生じる。

【0088】
本発明は、化合物43および44、またはその成果物(issues)などの三置換付加体にまでおよび、ただ一つのプロピオン酸側鎖が、標的生物による結合のために無傷のままにされる。

【0089】
標的薬剤としてメトロニダゾールを使用して例示されるが、本発明は、標的部分に結合され得る任意の適した標的薬剤を含むTMAにまでおよぶ。
【0090】
本発明のTMAは、当業者にとって明らかであると考えられる任意の方法を使用して合成され得る。メトロニダゾールに接合されたDPIX標的部分を含むTMAの産生に対する例示的な合成戦略は、以下および実施例において提示される。しかしながら、本発明は、例示されるTMAまたは例示される合成の方法に決して限定されないことが理解されるべきである。
【0091】
ジュウテロポルフィリンIX(DPIX)5は、DPIX標的部分の産生に対する前駆体として選ばれた。ジュウテロヘミン23は、Smith J. Porphyrins Phthalocyanines 1999, 4, 319-324の方法に従って、プロトヘミンから調製された(スキーム1)。

スキーム1 試薬および条件:i、レゾルシノール、160℃で加熱、1時間。
【0092】
これは、レゾルシノール融液においてプロトヘミンを加熱すること、Schummプロチオ脱ビニル化反応によってなされ、2位および4位におけるビニル基は、この反応において水素によって置換される。このメカニズムは、フェノール試薬上での求電子性置換反応に関与し、粗ジュウテロヘミン23を産出する。次いで、この反応は、任意の残留未反応レゾルシノール、不純物、および形成された任意のレゾルシノールポリマーを除去するために、洗浄が無色になるまでジエチルエーテルで洗浄され、収率98%で純粋なジュウテロヘミン23を産出した。構造の確認は、MALDI-TOF質量分析によって証明され、564.2に親イオンピークが生じた[計算値(M)+、564.4]。
【0093】
ジュウテロヘミン23を合成するための別の方法も行なわれた。これは、Adler et al. (Bioinorg. Chem. 1977, 7, 187-188)の方法に従い、熱いプロピオン酸が、融液がおよそ140℃まで冷却された後に添加され、結果として生じる溶液が、水に注ぎ込まれた。次いで、溶液は、水酸化ナトリウムで中和され、さらに1時間加熱され、その後、溶液は冷却され、微細沈殿物をより大きな粒子へと凝集させた。溶液は、濾過がゆっくりであるので、大きな焼結漏斗で真空濾過され、濾液が透明になるまで濾過された。沈殿物を風乾し、メタノールで溶解し、溶液を再度濾過し、残留物を真空で乾燥した。水を加熱しながら粗ジュウテロヘミン23に添加し、溶液を濾過した。水を除去し、収率76%においてジュウテロヘミン23を産出した。構造の確認は、MALDI-TOF質量分析によって証明され、564.2に親イオンピークが生じた[計算値(M)+、564.4]。次の段階は、脱金属化を介してジュウテロヘミン23からDPIX 5を調製することであり、これは、様々な方法を採用した。
【0094】
初めに、Smithの鉄粉法に従って、DPIX 5を、DPIX DME 24を介して、ジュウテロヘミン23から調製した(スキーム2)。

スキーム2 試薬および条件:i、鉄粉、10 M HCl、氷冷CH3COOH、160℃で加熱、30分;ii、H2SO4、CH3OH、還流、一晩;iii、KOH、CH3OH、還流、一晩。
【0095】
第一の段階は、ジュウテロヘミン23を脱金属化するために、Fe(0)を用いたFe(III)のFe(II)への還元に関与した。Fe(III)は、Fe(II)に還元されるので、そのイオン半径は増加し、結果としてより大きくなり、ポルフィリンのコアにそれほどうまく合わない。また、強塩酸は、ポルフィリンへのFe(II)の再挿入を防ぐために、ポルフィリンのコアをプロトン化する。
【0096】
第二の段階は、メタノールおよび濃硫酸におけるDPIX 5の簡単なエステル化に関与し、粗DPIX DME 24を産出した。構造の確認は、MALDI-TOF質量分析によって証明され、539.3に親イオンピークが生じた[計算値(M+H)+、539.7]。5%メタノール/クロロホルムの溶出液を用いる中性アルミナカラムを介する粗物質のクロマトグラフィーは、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなって、収率61%で純粋なDPIX DME 24を提供した。
【0097】
第三の段階は、対応する酸5へのDPIX DME 24の加水分解に関与した。加水分解は、低い収率にもかかわらず、許容される純度をともなって進行した。この反応について得られた収率は、35〜40%の範囲であった。これは、この化合物に対する65%の文献前例と矛盾した。収率は低かったが、生成物DPIX 5は、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルを有した。DPIX 5は、ジュウテロヘミン23から直接調製もされた(スキーム3)。

スキーム3 試薬および条件:i、鉄粉、10 M HCl、氷冷CH3COOH、160℃で加熱、30分。
【0098】
初めに、この反応からの生成物は、55〜60%の収率で産生された。しかしながら、この反応についての文献の方法は、簡単には再現できない。水層が酢酸エチルの代わりにジクロロメタンで抽出された場合、1H NMRおよびMALDI質量分析の両方は、12%の低い収率にもかかわらず、非常に純粋な生成物が獲得されることを示した。観測された低い収率は、反応の試案(work-up)に問題が存在することを推測させ、水層からの不十分な抽出により、生成物の有意な割合が、失われていることが考えられた。しかしながら、ジクロロメタンによる水層の繰り返し抽出は、この問題を克服せず、収率は12%のままだった。酢酸エチルは、多くのポルフィリンが溶液から結晶化することを防いだので、試案抽出における使用に対して最良の溶媒であることが見出された。ジュウテロヘミン23のすべてが、脱金属化されるわけではないことが結論付けられ、ポルフィリンが塩酸においてあまり可溶ではないという事実により、脱金属化は見込みがないと考えられた。そのため、別の方法が調査され、反応混合物は、乾燥塩化水素ガスで浄化された。
【0099】
次いで、DPIX 5は、Smith、1999、前記;1976、前記の硫酸鉄法に従って、ジュウテロヘミン23から調製された(スキーム4)。

スキーム4 試薬および条件:i、Fe(II)SO4、HCl(g)、ピリジン、CH3OH、攪拌、1時間。
【0100】
ジュウテロヘミン23は、ピリジンおよびメタノールに溶解され、硫酸鉄が添加され、乾燥塩化水素ガスが迅速に溶液を通された。しかしながら、この方法は、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなって、収率17%のみにおいてDPIX 5を産生した。
【0101】
ポルフィリン、ジュウテロヘミン23を脱金属化するためのすべての方法が使い尽くされたと考えられる場合、DPIX 5を合成するための全く異なるアプローチが利用された。これは、DPIX 5を形成するための異なる前駆体HPIX 25の使用に関与した。

【0102】
HPIX 25とプロトヘミンとの間の唯一のその他の差は、プロトヘミンの2位および4位におけるビニル基がHPIX 25ではヒドロキシエチル基に置換されていることである。PPIXは、Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、HPIX 25から調製された(スキーム5)。

スキーム5 試薬および条件:i、p-トルエンスルホン酸、クロロベンゼン、140℃で加熱、2時間;ii、H2SO4、CH3OH、還流、一晩;iii、KOH、CH3OH、還流、一晩;iv、レゾルシノール、160℃で加熱、1時間。
【0103】
この手順の第一の段階は、HPIX 25の2位および4位におけるヒドロキシエチル基のビニル基への酸触媒脱水に関与した。クロロベンゼンは、沸点が低く、より簡単な除去を可能にするので、ジクロロベンゼンの代わりに使用された。以前の研究から、PPIXは結晶化が難しく、ジクロロメタンの代わりに酢酸エチルを使用することで、PPIXの有意な量が溶液から結晶化することを防ぐことが見出されたので、酢酸エチルが抽出溶媒として使用された。
【0104】
第二の段階は、メタノールにおける簡単な酸触媒エステル化に関与し、暗赤色固体として粗PPIX DME 26を産出した。構造の確認は、MALDI-TOF質量分析によって証明された。2% v/vメタノール/クロロホルムの溶出液を用いたシリカカラムを介する粗物質のクロマトグラフィーは、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなって、収率83%において純粋なPPIX DME 26を提供した。
【0105】
第三の段階は、対応する酸PPIXへのPPIX DME 26の加水分解に関与した。加水分解は、PPIXの77%を効率的に産出しながら進行した。1H NMRによる生成物の分析およびMALDI-TOF質量分析による構造のさらなる確認によって、生成物が、さらなる精製をともなわずに使用されるのに十分な純度であることが決定付けられた。
【0106】
関与する第四の段階では、Schummプロチオ脱ビニル化反応を介したDPIX 5へのPPIXの脱ビニル化を試みた。これは、レゾルシノール融液におけるPPIXの手短な加熱に関与した。しかしながら、生成物のTLC分析は、反応が生じなかったことを示した。反応は、レゾルシノールとともにより長い加熱をともなって繰り返されたが、TLC分析は、それでも反応が生じなかったことを示した。脱ビニル化は、Schummプロチオ脱ビニル化反応が金属化ポルフィリンに対してのみ機能するので、成功しなかった。
【0107】
次いで、脱水の前にCu(II)がHPIX 25に添加され(スキーム6)、反応が、HPIX 25の代わりにCu(II) HPIX 27で開始して実行されることが示唆された。これは、Cu(II) DPIXへのCu(II) PPIX 28の脱ビニル化およびその後のCu(II) DPIXからDPIX 5へのCu(II)の除去を可能にすると考えられる。

スキーム6 試薬および条件:i、酢酸Cu(II)、ジメチルホルムアミド、クロロベンゼン、還流、3時間;ii、p-トルエンスルホン酸、クロロベンゼン、140℃で加熱、2時間;iii、レゾルシノール、160℃で加熱、1時間;iv、H2SO4、還流、3時間。
【0108】
Adler, et al. Inorg. Nucl. Chem. 1970, 32, 2443-2445の方法に従って、HPIX 25および酢酸銅(II)は、ジメチルホルムアミドに溶解され、溶液は、3時間還流で加熱された。冷却に際して、溶媒は蒸発させられ、黒色結晶を産出した。しかしながら、MALDI-TOFおよびESI質量分析の両方は、銅(II) HPIX 27が獲得されず、ほとんど開始物質が回収されたことを示唆した。
【0109】
鉄粉法および硫酸銅法の両方が、それらの独自の点において欠点があることが決定された。鉄粉法では、ポルフィリンの塩酸への溶解が不十分であることが見出されたので欠点があり、ポルフィリンは酢酸に可溶であったが、酢酸は弱すぎてポルフィリンのコアをプロトン化することができない。この問題を解決するために、塩酸の代わりにギ酸が使用された。ギ酸は、塩酸よりも弱いが、強有機酸であり、ポルフィリンを容易に溶媒和することができる。初めに、鉄粉法は、酸素および水蒸気が存在する大気条件下で実行された。これは、Fe(II)が、Fe(III)状態へ酸化され、ポルフィリンに再挿入され得ることを意味した。次いで、反応は、窒素ガスで反応混合物を浄化し、反応を反応の全期間窒素ガス下に保つことによって、無酸素条件下で実行された。Fe(0)は、5分の間隔で添加され、鉄ポルフィリン、ジュウテロヘミン23が、特徴的な茶色を有し、フリーベースポルフィリン、DPIX 5が、特徴的な赤紫色を有することが観測された。TLCによって反応を追跡することで、反応が、およそ15分後に最良に機能することが観測された。しかしながら、反応が20分よりも長く続くと、反応は開始物質に戻る。硫酸鉄法も、Fe(II)が還元剤としてのFe(0)を置換し、還元剤の少なくとも5〜10等量が、ポルフィリンにおけるFe(III)を還元するために必要とされるので欠点があり、Fe(II)を使用することは、開始物質へと平衡をシフトし得るより多くのFe(II)が産生されることを引き起こすと考えられる。この問題を解決するために、Fe(0)が、ギ酸方法において、Fe(II)の代わりに使用された。
【0110】
ジュウテロヘミン23の脱金属化に対する条件を最適化するために、ギ酸法が採用され、Fe(0)が、ギ酸と併せて使用される(スキーム7)。

スキーム7 試薬および条件:i、鉄粉、ギ酸、還流、20分。
【0111】
最適化された条件を用いて、純粋なDPIX 5は、1H NMRスペクトルによって証明されるように(図2)、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなって、収率76%で合成が成功した。Feは常磁性金属なので、非常に明確な1H NMRスペクトルの獲得は、成功した、かつ完全な脱金属化を証明する。構造のさらなる確認は、高解像度FTICR質量分析によって証明され、511.2320に親イオンピークが生じた[計算値C30H30N4O4+H+、511.2339]。
【0112】
良い収率において達成された純粋なDPIX 5の合成をともなって、次いで、注目は、DPIX 5の6位および7位におけるプロピオン酸側鎖とメトロニダゾールのヒドロキシル基を介するエステル結合によって、DPIXメトロニダゾール置換付加体19、20、および21を合成することに集中された。、チニダゾール18とメトロニダゾールとの間の唯一の差は、チニダゾール18がヒドロキシル部分の代わりにスルホン部分を有するが、嫌気性菌に対して活性があることも証明されているということなので、メトロニダゾールのヒドロキシル基が、エステル結合による6位および7位におけるプロピオン酸側鎖への接着のために選ばれた。これは、メトロニダゾール上のヒドロキシル基が、嫌気性菌に対する活性に必須ではないことを示す。
【0113】
目的が、DPIX一メトロニダゾール置換付加体20および21を合成することであったので、内部無水物29の合成が試みられた。これは、メトロニダゾールとDPIX内部無水物29との反応が、副産物をともなわずに一付加体20および21を与えるために、メトロニダゾールが無水物29の開環の後にポルフィリンの一つのプロピオン酸側鎖にのみ選択的に接着することを可能にすることが望まれたからである。DPIX 5は、その後無水酢酸と反応させられ、TLCによる反応の分析により、内部無水物29が形成されることが推測され(スキーム8)、開始物質が有意に極性の低い化合物へと完全に変換されることを示した。

スキーム8 試薬および条件:i、Ac2O、還流、4時間;ii、メトロニダゾール、トルエン、還流、4時間。
【0114】
次いで、内部無水物29は中間体であると信じられていたので、トルエン中の余剰メトロニダゾールが、中間体と反応させられた。しかしながら、反応は、一付加体20および21のごく微量の混合物をともなって、ほとんど二付加体19を産出しながら進行した。MALDI質量分析による中間体の特徴付けによって、DPIX二無水物30が代わりに形成されることが示された(スキーム8)。これは、MALDI-TOF質量分析によって証明され、595.5に親イオンピークが生じた[計算値(M+H)+、595.7]。これは、中間体がトルエン中の余剰メトロニダゾールと反応させられた場合に、なぜ、形成された化合物のほとんどが化合物19であったのかを説明すると考えられる。二無水物30を1等量より少ないメトロニダゾールと反応させることは、一置換付加体20および21の形成を促す。
【0115】
DPIX二付加体19およびDPIX一付加体20および21を合成するための別のアプローチも、調査された。このアプローチは、二無水物30を形成する代わりに二[酸塩化物]31を形成することによって、5を活性化することに関与した。このアプローチの背後にあるアイデアは、メトロニダゾールの化学量論的量の使用が、二付加体19の化学量論的混合物、一付加体20および21の混合物、ならびに未反応開始物質DPIX 5を与えるだろうというものであった。二[酸塩化物]31を1等量より少ないメトロニダゾールと反応させることは、一付加体20および21の形成を促すと考えられる。次いで、DPIX 5は、同じ手順で、より多くの一付加体20および21を産出した。
【0116】
DPIX二[酸塩化物]31は、共溶媒としてジクロロメタンを使用してDPIX 5を塩化チオニルと反応させることによって調製された。次いで、DPIX二[酸塩化物]31は、トルエンにおいて塩基触媒としてトリエチルアミンをともなって0.4等量のメトロニダゾールで処置され、未反応開始物質5、二付加体19、ならびに一付加体20および21を産出した(スキーム9)。

スキーム9 試薬および条件:i、塩化チオニル、CH2Cl2、還流;ii、メトロニダゾール、CH2Cl2、Et3N、還流;iii、H2O、トルエン、攪拌、30分。
【0117】
生成物は、CH2Cl2:CH3OH:CH3NO2の溶媒システムを使用して、シリカカラム上で分離され、ESI質量分析による異なるバンドの初期分析は、2つの一メトロニダゾール一メチルエステル生成物、2つの一酸一メチルエステル生成物、2つの一酸塩化物一メチルエステル生成物、DPIX DME 24、およびDPIX二[酸塩化物]31に相当する、8つの余分なピークを示した。
【0118】
メチルエステルの形成を防ぐために、二[酸塩化物]31とメトロニダゾールとの反応の直後に、水が添加された。任意の未反応酸塩化物を遊離カルボン酸5へと加水分解し、それによって、メチルエステルの形成を回避する。その後に、トルエンおよび水の混合物が添加され、二相混合物は、蒸発乾固する前に30分間攪拌された。トルエンは、トルエンおよび水の混合物が、共沸混合物を形成し、水のより簡単な除去を可能にするので、二相システムにおける使用のための溶媒として選ばれた。このことで、混合物における生成物の数が12から4まで減少した。
【0119】
5、19、20、および21の混合物を、CH2Cl2:CH3OH:CH3NO2の溶媒システムを用いるシリカカラムを通すことによって分離した。溶媒システムの初期極性は、30:1:1であった。極性は、第一のバンドが溶出する20:1:1に増加され、次いで、第二のバンドが溶出する10:1:1に増加された。未反応の開始物質5は、それが非常に極性のある二塩基酸DPIX 5であるので、カラムのベースラインに残った。初めに、二塩基酸DPIX 5は、純メタノールを用いてさえもカラムから出なかった。次いで、溶媒は、DPIX 5が溶出するCH3OH:NH3の1:1混合物に変えられた。これは、アンモニアがシリカを非活性化するからである。DPIX 5は、CH3OH:NH3の1:1混合物を用いてカラムからはがされ、より多くの一付加体20および21を合成するためにリサイクルされた。第一のバンドを含む画分は、組み合わせられて蒸発乾固され、二メトロニダゾール置換付加体19を産出した。
【0120】
図3において図示される二付加体19の1H NMRスペクトルは、それぞれのイミダゾール環上のメチル基による1.54および1.56 ppmにおける2つの特徴的な一重線、ならびにイミダゾールメチンプロトンに起因する7.42および7.47 ppmにおける2つの特徴的な一重線を示す。9.04 ppmにおける一重線は、2位および4位におけるβ-ピロール水素の特徴である。9.91、9.96、10.03、および10.05 ppmにおける4つの一重線は、ポルフィリン大環状分子の4つのメソプロトンの特徴である。これらのピークの統合は、それぞれ6:2:2:1:1:1:1の比を生じ、ポルフィリンが二置換されたことを示す。
【0121】
また、二付加体19の赤外線スペクトルは、ヒドロキシル伸縮を示さなかったが、二付加体19のイミダゾール環に起因する1661および1653 cm-1における特徴的なNO2伸縮を示した。構造のさらなる確認は、高解像度FTICR質量分析によって証明され、817.3349に親イオンピークが生じた[計算値C42H44N10O8+H+、817.3416]。
【0122】
第二のバンドを含む画分は、組み合わせられて蒸発乾固され、一置換メトロニダゾール付加体20および21の混合物を産出した。
【0123】
図4において図示される一付加体20および21の混合物の1H NMRスペクトルは、イミダゾール環上のメチル基による0.77〜0.79 ppmでわずかに開裂される特徴的な一重線、ならびにイミダゾールメチンプロトンに起因する7.12 ppmでわずかに開裂される特徴的な一重線を示した。8.92〜8.96 ppmでわずかに開裂される一重線は、2位および4位におけるβ-ピロール水素の特徴である。9.81〜9.91 ppm間の4つの開裂一重線は、ポルフィリン大環状分子の4つのメソプロトンの特徴である。これらのピークの統合は、3:1:2:1:1:1:1の比を生じ、それぞれポルフィリンが一置換されたことを示す。図4のパネルf)において見られ得るように、2つのバンドはおよそ等比であり、これは2つの一置換付加体20および21のおよそ1:1の混合物があることを示唆する。
【0124】
また、20および21の赤外線スペクトルは、それぞれDPIX 5のプロピオン酸ならびに20および21のメトロニダゾール上のニトロ基に起因する、3136 cm-1におけるヒドロキシル伸縮および1562 cm-1におけるNO2伸縮を示した。構造のさらなる確認は、高解像度FTICR質量分析によって証明され、664.2869に親イオンピークが生じた[計算値C36H37N7O6+H+、664.2879]。
【0125】
当業者にとって明白であると考えられる任意の手段を使用して、TMAの活性を評価し得る。典型的には、活性アッセイは、標的へのTMAの結合を評価するアッセイおよび/または標的生物に対する任意の微生物増殖抑制もしくは微生物殺生活性を評価するためにアッセイを含むと考えられる。加えて、非標的種に対するTMAの活性を評価するためのさらなるアッセイが行なわれてもよい。
【0126】
標的分子へのTMAの結合を評価するために使用され得る例示的な結合アッセイは、ELISA、表面プラズモン共鳴(Georgiadis et al., J. Am. Chem. Soc. 122: 3166-3173, 2000; Nelson et al., Anal. Chem. 73: 1-7, 2001)、電気泳動移動度シフトアッセイ、水晶マイクロバランスアッセイ(Caruso et al., Anal. Chem. 69: 2043-2049, 1997)、および同様のものを含む。しかしながら、本発明のTMAの標的結合能力は、任意の便利な方法を使用して評価され得、本発明は、TMAを評価するための任意の一つの方法によって決して定義または限定されない。
【0127】
本発明の一つの特定の態様において、一置換付加体としてメトロニダゾールに接合されたDPIXを含むTMAを、P. ジンジバリスのHA2ドメインを含むタンパク質に結合する能力について調査した。
【0128】
これは、一付加体20および21がHA2に結合するKD50を確立することによってなされた。ヘムは、ヘムが〜15 nMの結合解離定数をともなってHA2に非常によく結合することが公知であるので、標準として使用された。
【0129】
HA2に対する一付加体20および21のKD50を、酵素免疫吸着測定法(ELISA)を使用して確立し、96ウェルポリスチレンプレートを、pH 9.0のアルカリコーティングバッファーにおいて一付加体20および21またはヘミンのいずれかでコーティングした。次いで、プレートを洗浄し、任意の非特異的結合を防ぐための強界面活性剤Tween-20を含むリン酸緩衝生理食塩水溶液で30分間ブロックした。次いで、pH 5.5の弱酸性酢酸バッファーにおけるHA2の希釈は、96ウェルプレートの列を下げながら滴定され、プレートは、HA2への一付加体20および21またはヘミンのいずれかの結合を可能にするために、IRセンサーCO2インキュベーターにおいて37℃で1.5時間インキュベートされた。マウスからの一次抗体、抗ジンジパインモノクローナル抗体5A1が、HA2への一付加体20および21またはヘミンのいずれかの結合を検出するために、添加された。次いで、アルカリホスファターゼ(AP)を接合された二次ヤギ抗マウス抗体が、一次抗体を検出するために添加され、HA2への一付加体20および21またはヘミンのいずれかの結合は、APによって触媒される基質パラ-ニトロフェノールリン酸塩のパラ-ニトロフェノールへの脱リン酸化の量として、Bio-radマイクロプレートリーダー上で光学密度として記録された。
【0130】
この結合曲線は、結合の速度が解離の速度と同じである場合に得られ、化合物の相対的な結合強度の比較を可能にする、結合解離定数KD50の決定を可能にするために飽和した。図5において示されるように、HA2に対するヘミンのKD50は、15 +/- 10 nMであり、HA2に対する一付加体20および21のKD50は、30 +/- 10 nMであった。これは、HA2へのヘミンの結合と比較して、一付加体20および21が、〜50%の強さでHA2に結合することを示す。ヘミンは、HA2に非常に良く結合することが公知であるので、これは、一付加体20および21が、実際にHA2に結合し、同様にかなり強く結合することを示す。このKD50は、3つの同様のKD50の手段から得られ、HA2が、一付加体20または21の一つのみを認識し、そのため、結合強度が半分であることを示唆している可能性がある。または、それは、メトロニダゾールによるプロピオン酸部分の置換が、実際にはHA2へのより弱い結合を引き起こし得るという事実によって説明され得、2つのプロピオン酸基が、HA2への最適な結合に必要であり得るという仮説を重視すると考えられる。一付加体20および21の分離ならびにそれらを個々に試験することは、この点を解決すると思われる。
【0131】
TMAの微生物殺生または微生物増殖抑制活性は、当業者にとって公知の任意の方法を使用して決定され得る。例示的な方法は、定性アッセイ;定量アッセイ;および特徴付けアッセイを含む。定性法は、細菌および菌類を阻害する構成物質の存在を同定するための抽出物または化合物の予備スクリーニングにおいて使用されるが、これらの化合物に関するその他の情報をほとんど提供しない。定量アッセイ(例えば、「最小阻止濃度法および同様のもの」)は、具体的には化合物の抗微生物活性の効能に関する、より特定の情報を提供する。最後に、抗微生物アッセイを分析化学のための技術と組み合わせる技術(本明細書において記載される「フェノールレッドアガーオーバーレイ法」など)は、調査人が、同定されている抗微生物構成物質の化学的性質に関する重要な情報を生成することを可能にし、天然産物化学のための非常に力強いツールを提供する。
【0132】
本明細書において使用されるように、「微生物増殖抑制性」という用語は、微生物の複製を阻害する化合物の能力を指すが、微生物の殺傷が関与しなくてもよい。「微生物増殖抑制性」という用語は、とりわけ「細菌増殖抑制性」および「菌類増殖抑制性」という用語の意味を包含することが理解されるべきである。「微生物殺生性」という用語は、一つまたは複数の微生物を殺傷する化合物の能力を指すことが理解されるべきである。「微生物殺生性」という用語は、とりわけ「細菌殺生性」および「菌類殺生性」という用語の意味を包含することが理解されるべきである。
【0133】
微生物増殖抑制および微生物殺生アッセイを含む例示的な抗微生物アッセイは、Murray et al. (Manual of Clinical Microbiology, American Society for Microbiology, 1999)およびReeves (Clinical Antimicrobial Assays, Oxford University Press, 1999)に詳細に記載されている。
【0134】
本発明の一つの特定の態様において、一置換付加体としてメトロニダゾールに接合されたDPIXを含むTMAは、P. ジンジバリスおよびその他のさまざまな微生物の成長を阻害する能力について調査された。
【0135】
標的生物に対するメトロニダゾールと比較して一付加体20および21の効能を比較するために、一付加体20および21ならびにメトロニダゾールを、標準対照を用いて標的生物P. ジンジバリスに対して試験した。4つのセクションに分けられた96ウェルポリスチレンプレートにおいて、一付加体20および21の混合物、メトロニダゾール、DPIX 5、およびDMSOの一連の希釈が作り上げられた。これらは、4通りの試験チューブに移され、P. ジンジバリス細胞が3通りに添加され、1つの試験チューブをP. ジンジバリス細胞を含まないブランク対照として残した。P. ジンジバリス細胞の成長を、3日(72時間)にわたってモニターし、成長を、培地の濁度によって注目し、光学密度として記録した。
【0136】
この成長阻害アッセイは、3回繰り返され、結果は一致することが示された。成長阻害アッセイは、メトロニダゾールならびに一付加体20および21の混合物に対する成長応答における差を示す。結果は、図6に要約される。
【0137】
図6Aは、一付加体20および21ならびにメトロニダゾールの両方が20μMにおいてP. ジンジバリスの成長を完全に阻害したことを示す。両方によるこの完全な阻害は、4μMにおいてもまだ観測される(図6B)。しかしながら、濃度が2μMまで減少すると(図6C)、メトロニダゾールのみが、成長を完全に抑制し、一付加体20および21は、約およそ20時間までのみ成長を抑制し、その後は、一付加体20および21は活性を失い、P. ジンジバリス細胞は元のバイオマスに戻り、1μMでは(図6D)、メトロニダゾールもおよそ50時間後にその活性を失い、P. ジンジバリス細胞の元のバイオマスまでの成長回復が後に続いた。0.5μMでは(図6E)、一付加体20および21ならびにメトロニダゾールの両方による成長抑制の効果はない。このことから、一付加体20および21ならびにメトロニダゾールの最小阻止濃度(MIC)は、それぞれおよそ2〜4μMおよび1〜2μMであることが決定され得る。これは、一付加体20および21の混合物が、メトロニダゾールのおよそ半分の効能であることを意味する。
【0138】
これは、メトロニダゾールが、培地において一付加体20および21の混合物から加水分解しておらず、細胞表面に実際に保存されている可能性があることを示唆する。これは、メトロニダゾールが培地において加水分解された場合、一付加体がDPIX 5およびメトロニダゾールの1:1混合物を含むので、メトロニダゾールと近い/同一の効果があると考えられるからである。結合アッセイからのKD50の平均は、HA2への一付加体20および21の強い結合を示すので、高濃度において、一付加体のより多くが、細胞の表面においてHA2に結合する可能性があり得ると考えられる。これは、メトロニダゾールが、細胞結合エステラーゼによって加水分解され得、細胞への輸送のための活性メトロニダゾールを放出するというより高い可能性があることを意味する。
【0139】
一付加体20および21の混合物がHA2へ強く結合し、メトロニダゾールのおよそ半分の効能であることを確立したので、次いで、標的生物P. ジンジバリスに対する一付加体20および21の選択性を評価するために、一付加体20および21ならびにメトロニダゾールを、関連生物であるP. メラニノジェニカ(P. melaninogenica)および非関連生物であるF. ヌクレアタム(F. nucleatum)などの細菌のその他の株に対して試験した。図7は、標準対照をともなう20μMの一付加体20および21におけるP. ジンジバリス、P. メラニノジェニカ、およびF. ヌクレアタムの成長阻害を示す。
【0140】
図7Aは、20μMにおける一付加体20および21ならびにメトロニダゾールによるP. ジンジバリスの完全な阻害を示す。図7Bは、関連生物P. メラニノジェニカに対するメトロニダゾールによる成長の完全な抑制もあることを示す。しかしながら、一付加体20および21は、同じ濃度においてP. メラニノジェニカの阻害に対する効果を有しないように見え得る。代わりに、成長を刺激するように見え、これは、P. メラニノジェニカが、ヘムを獲得するためのその他のメカニズムを有することを示唆する。
【0141】
標的部分に接合され得るその他の標的薬剤は、当業者によって容易に解明されると考えられ、従って、本発明は、決して上に挙げられる標的薬剤に限定されると考えられるべきではない。
【0142】
前記に示されるように、標的薬剤は、診断薬またはその他の非細胞毒性薬剤であってもよい。診断的応用を有するTMAを生成するために使用され得る例示的な標的薬剤は、光学的に検出可能なラベルを含むが、決してそれらに限定されない。
【0143】
本明細書において使用されるように、「光学的に検出可能なラベル」という用語は、蛍光、リン光、および/または白熱光を発光する任意の分子、原子、またはイオンを指す。光学的に検出可能なラベルの発光スペクトルは、紫外線(約350nm〜約3nmの波長領域)、可視(約350nm〜約800nmの波長領域)、近赤外線(NIR)(約800nm〜約1500nmの波長領域)、および/または赤外線(IR)(約1500nm〜約10μmの波長領域)の範囲から適切に選ばれ得る。しかしながら、検出の簡単さにより、一つの特に好ましい態様において、光学的に検出可能なラベルは、可視波長領域において検出可能である。
【0144】
本発明のさらに好ましい態様において、光学的に検出可能なラベルは、フルオロフォアを含む。
【0145】
本明細書において使用されるように、「フルオロフォア」という用語は、蛍光の特性を示す任意の分子を指す。本明細書における目的で、「蛍光」という用語は、特定の波長の光を吸収し、より長い波長の光を再発光する分子の特性として定義され得る。波長変化は、プロセスにおいて生じるエネルギー損失に関する。「フルオロフォア」という用語は、とりわけ化学的フルオロフォアおよび蛍光色素を具体的に包含することが理解されるべきである。
【0146】
本発明に従ってフルオロフォアとして使用され得る多くの蛍光色素が入手可能である。使用に対するその潜在性を決定する蛍光色素またはその他のフルオロフォアの重要な特性は、フルオロフォアの励起波長であり、それは、光源の利用できる波長に適合しなければならない。しかしながら、多くの異なる蛍光色素およびその他のフルオロフォアが、当業者に馴染みがあると思われ、蛍光マーカーの選択は、本発明を決して限定しない。
【0147】
TMAにおいて標的薬剤として使用され得る、便利な「フルオロフォア」は、以下の群より選択される光源を使用して励起可能な任意の蛍光マーカーを含む:
(i)アルゴンイオンレーザー- 青い488 nm線を含み、緑〜赤領域において蛍光する多くの色素およびフルオロクロムの励起に適している。さまざまな波長(458 nm、488 nm、496 nm、515 nm、およびその他)において発光する波長可変アルゴンレーザーも利用できる。
(ii)ダイオードレーザー- 635 nmの発光波長を有する。現在利用できるその他のダイオードレーザーは、532 nmにおいて作動する。この波長は、プロピジウムヨウ化物(PI)を最適に励起する。約476 nmの光を発光する青色ダイオードレーザーも利用できる。
(iii)HeNeガスレーザー- 赤い633 nm線で作動する。
(iv)HeCdレーザー- 325 nmにおいて作動する。
(v)100 W水銀アークランプ- HoechstおよびDAPIなどのUV色素の励起に対して最も効率的な光源。
(vi)Xeアークランプおよび石英ハロゲンランプは、WGMを励起し、故にセンサーとして粒子を利用するための手段として同様に使用され得る。
【0148】
本発明のより好ましい態様において、蛍光マーカーは、以下より選択される:Alexa Fluor色素;BoDipy 630/650およびBoDipy 650/665を含むBoDipy色素;Cy色素、特にCy3、Cy5、およびCy5.5;6-FAM(フルオレセイン);フルオレセインdT;ヘキサクロロフルオレセイン(HEX);6-カルボキシ-4'、5'-ジクロロ-2'、7'-ジメトキシフルオレセイン(JOE);488-Xおよび514を含むオレゴングリーン色素;ローダミングリーン、ローダミンレッド、およびROXを含むローダミン色素;カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA);テトラクロロフルオレセイン(TET);およびテキサスレッド。
【0149】
「リン光粒子」、「リン光体粒子」、および「リン光体」という用語は、本明細書においてほとんど同じ意味で使用される。リン光の光学的に検出可能なラベルを構成するものは、当業者によって容易に理解されると考えられる。しかしながら、本発明を決して限定しない例として、適したリン光体は、ZnS、ZnS:Cu、酸化Eu、およびディスプレー装置において使用されるその他のリン光体を含む。
【0150】
本明細書において使用されるように、「光学的に検出可能なラベル」という用語は、複数の光学的に検出可能なラベルおよび光学的に検出可能なラベルの混合物も包含することが理解されるべきである。
【0151】
一付加体20および21を非関連細菌に対して試験することも有用であり、歯肉溝には歯周病を引き起こす細菌の大きくて複雑な群が存在するので、一付加体20および21を、非関連生物F. ヌクレアタムに対しても試験した。図7Cは、20μMにおけるメトロニダゾールによるF. ヌクレアタムの完全な阻害、およびおよそ45時間までの一付加体20および21によるF. ヌクレアタムの初期抑制を示し、その後、F. ヌクレアタム細胞は、それらの元のバイオマスに戻る。これは、メトロニダゾールの作用と比較して、一付加体20および21のP. メラニノジェニカおよびF. ヌクレアタムと比較したP. ジンジバリスに対する選択性を示唆する。
【0152】
さらに別の局面において、本発明は、薬学的に許容される担体または希釈剤をともなう本明細書において記載されるTMAを含む薬学的または獣医学的組成物を検討する。
【0153】
注射可能な使用に適した組成物型は、滅菌水性溶液(水溶性)および滅菌注射可能溶液を即座に調製するための滅菌粉末を含む。それは、製造および保存条件下で安定でなければならず、細菌および菌類などの微生物汚染作用にから保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、および同様のもの)、その適した混合物、および植物油を含む溶媒または希釈媒質であり得る。適切な流動性は、例えばスーパーファクタント(superfactants)の使用によって、維持され得る。微生物の作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、および同様のものなどの、様々な抗菌および抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合、例えば糖または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが好ましい。注射可能組成物の持続性の吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの、吸収を遅らせる薬剤の組成物における使用によってもたらされ得る。
【0154】
注射可能な滅菌溶液は、活性成分および任意で必要とされるその他の活性成分をともなう適当な溶媒において、必要とされる量の活性化合物を組み込み、続いて濾過滅菌またはその他の適当な滅菌手段によって調製される。注射可能な滅菌溶液を調製するための滅菌粉末の場合、適した調製方法は、活性成分プラス任意の付加的に望ましい成分の粉末を産出する真空乾燥および凍結乾燥技術を含む。
【0155】
標的薬剤が適切に保護される場合、例えば不活性希釈剤もしくは吸収可能な食用の担体をともなって経口で投与されてもよく、硬殻もしくは軟殻ゼラチンカプセルに封入されてもよく、錠剤に圧縮されてもよく、食事のとともに直接的に取り込まれるか、母乳を介して投与されてもよい。経口治療的投与のために、活性成分を、賦形剤とともに組み込んでもよく、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁液、シロップ、ウエハースなどの形で使用され得る。そのような組成物および調製物は、標的薬剤を重量の少なくとも1%含むべきである。組成物および調製物のパーセンテージは、当然変化し得、適切には単位重量の約5〜約80%の間であり得る。そのような治療的に有用な組成物における標的薬剤の量は、適切な投与量が得られると思われるようなものである。本発明に従う好ましい組成物および調製物は、経口調剤単位型が、約0.1μg〜200 mgの間のモジュレーターを含むように調製される。代わりの調剤量は、約1μg〜約1000 mgおよび約10μg〜約500 mgを含む。これらの調剤は、個体あたりまたはkg体重あたりであり得る。投与は、時間、日、週、月、または年あたりであり得る。
【0156】
錠剤、トローチ、ピル、カプセル、および同様のものは、以後に載せられる構成要素を含んでもよい。ゴム、アカシア、コーンスターチ、もしくはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモスターチ、アルギン酸、および同様のものなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤;ならびにスクロース、ラクトース、もしくはサッカリンなどの甘味剤が添加され得、ペパーミント、ウィンターグリーン油、もしくはサクランボ香味料などの香料添加剤が添加され得る。調剤単位型がカプセルの場合、上のタイプの物質に加えて、液体担体を含み得る。様々なその他の物質が、コーティングとして、または調剤単位の物理的な形を改変するために存在し得る。例えば、錠剤、ピル、またはカプセルは、シェラック、糖、または両方でコーティングされ得る。シロップまたはエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてスクロース、防腐剤としてメチルおよびプロピルパラベン、色素、およびサクランボまたはオレンジ風味などの香味料を含み得る。当然、任意の調剤単位型の調製において使用される任意の物質は、薬学的に純粋であり、採用される量において実質的には非毒性であるべきである。加えて、活性化合物は、持続放出調製物および製剤に組み込まれ得る。
【0157】
薬学的に許容される担体および/または希釈剤は、任意およびすべての溶媒、分散媒質、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、ならびに同様のものを含む。薬学的活性物質に対するそのような媒質および薬剤の使用は、当技術分野において周知であり、任意の従来の媒質または薬剤が、モジュレーターと不適合である場合以外は、治療的組成物での使用が意図される。補足活性化合物が、組成物に組み込まれてもよい。
【0158】
本発明の別の局面は、一つまたは複数の栄養要求を必要とする微生物による、微生物が該必要とする栄養要求を捕捉する生物学的環境における、感染症の予防または処置のための方法を検討し、該方法は、該微生物に対する微生物殺生または微生物増殖抑制効果を有するのに十分な時間および条件下で、本明細書において記載されるようなTMAの有効量を該環境に投与することを含む。
【0159】
「生物学的環境」という用語は、標的微生物が必要とする一つまたは複数の栄養要求を捕捉する任意の環境を含むために、その最も広範の文脈において使用される。好ましくは、生物学的環境は、哺乳類、爬虫類、両生類、魚類、もしくは鳥類などの動物被験体の細胞、組織、もしくは器官上もしくは器官内である、または家畜動物の蹄である。より好ましくは、動物は、ヒトまたは家畜動物などの哺乳類である。
【0160】
本発明の一つの好ましい態様において、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子は、標的微生物が必要とする栄養要求である。さらにより好ましくは、ヘムが、該微生物が必要とする栄養要求である。
【0161】
従って、本発明の別の局面は、ヘムを栄養要求として必要とする微生物による、微生物が該ヘムを捕捉する生物学的環境における、感染症の予防または処置のための方法を検討し、該方法は、該微生物に対する微生物殺生または微生物増殖抑制効果を有するのに十分な時間および条件下で、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を含むTMAの有効量を該環境へ投与することを含む。
【0162】
作用の任意の一つの理論またはモードに本発明を限定することを意図しないが、P. ジンジバリスおよびその親類が、完全な機能的ポルフィリン合成経路を有さず、故に、ポルフィリン栄養要求性であることが提唱される。特に、P. ジンジバリスが、グルタミル-t RNAリダクターゼ、ポルフォビリノーゲンシンターゼ、ポルフォビリノーゲンデアミナーゼ、ウロポルフィリノーゲンIIIコシンターゼ、ウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ、コプロポルフィリノーゲンIIIオキシダーゼ、HemM、またはウロポルフィリノーゲンIIIメチラーゼの一つまたは複数を欠くことが提唱される。結果として、P. ジンジバリスは、成長および/もしくは維持のため、または少なくとも成長および/もしくは維持を容易にするために、ポルフィリンを捕捉する必要がある。
【0163】
従って、特に好ましい態様において、本方法は、動物被験体の口腔におけるP. ジンジバリス感染症の処置に適合される。
【0164】
本発明の方法は、例えば歯周病の間の口腔におけるP. ジンジバリス感染症を特に対象とし、微生物感染症および特にヘム、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、ポルフィリン様分子を栄養要求として必要とするP. ジンジバリスまたは任意のその他の微生物による感染症に起因する任意の疾患状態にまでおよぶ。本明細書において検討される微生物の例は、サルモネラspp.、セラチアspp.、エルシニアspp.、クレブシエラspp.、ビブリオspp.、緑膿菌spp.、大腸菌、ヘモフィルスsppを含むが、それらに限定されない。本発明によって検討されるP. ジンジバリスまたは関連微生物感染症の例は、粘膜の感染症ならびにヒツジ、畜牛、およびヤギなどの家畜動物の蹄の感染症と同様に、口腔、鼻咽頭、中咽頭、膣、および尿道の感染症を含む。
【0165】
「有効」量は、標的生物に対する微生物殺生または微生物増殖抑制効果を有する十分な量を意味する。
【0166】
本発明の関連する局面は、哺乳類におけるP. ジンジバリスまたは関連微生物による感染症に起因する歯周、肺、膣、尿道、または蹄疾患の予防または処置のための方法を検討し、該方法は、微生物に対する微生物殺生または微生物増殖抑制効果を有するのに十分な時間および条件下で、本明細書において記載されるようなTMAの有効量を該哺乳類に投与することを含む。
【0167】
「感染症」という用語は、最も一般的な意味において使用され、疾患状態を引き起こす、または疾患状態を引き起こす能力を有する微生物の存在、繁殖、または成長を含む。「感染症」という用語は、正常な菌叢の一部として存在する場合、P. ジンジバリスまたはその他の微生物をさらに包含する。そのような細菌は、特定の環境下で、疾患発生に関与し得る。予防は、P. ジンジバリスもしくは関連微生物のレベルを軽減するために、またはP. ジンジバリスもしくはその親類による感染症に起因する疾患状態発生の可能性を軽減するために、本発明に従って検討される。
【0168】
本発明は、ヒトにおけるP. ジンジバリスまたは関連微生物の処置を特に対象とする。しかしながら、本発明は、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ、ロバ)、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ)、研究室試験動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ハムスター)、および捕獲された野生動物などのその他の哺乳類におけるP. ジンジバリスまたは関連微生物の予防または処置に拡張する。
【0169】
本発明の関連する局面において、一つまたは複数の栄養要求を必要とする標的微生物による感染症を予防または処置するための薬剤の製造におけるTMAの使用が提供される。
【0170】
好ましくは、標的微生物は、栄養要求として、ヘム、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を必要とする。より好ましくは、標的微生物は、P. ジンジバリスである。
【0171】
さらに別の局面において、本発明は、一つまたは複数の栄養要求を必要とする生物体を計数する、可視化する、または位置を特定する方法を提供し、該方法は、標的薬剤Aが光学的に検出可能なラベルである一般化学式(I)、(II)、または(III)の任意の一つのTMAを該生物体または該生物体の環境に投与すること、および該光学的に検出可能なラベルを検出することを含み、光学的に検出可能なラベルの検出が、生物体の存在、位置、および/または量を示す。
【0172】
一つの好ましい態様において、生物体が必要とする栄養要求は、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を含む。
【0173】
別の好ましい態様において、方法は、P. ジンジバリスまたは関連生物を計数する、可視化する、または位置を特定するために使用される。
【0174】
さらに別の局面において、本発明の方法は、一つまたは複数の栄養要求を必要とする微生物による、微生物が該必要とする栄養要求を捕捉する生物学的環境における、感染症を診断するために使用され得、該方法は、活性薬剤Aが光学的に検出可能なラベルである一般化学式(I)、(II)、または(III)の任意の一つのTMAを該生物学的環境に投与することを含み、微生物の存在が、TMAによって示される。
【0175】
一つの好ましい態様において、方法は、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を栄養要求として必要とする微生物によって引き起こされる感染症を診断するために使用される。より好ましい態様において、方法は、P. ジンジバリスまたは関連生物による感染症を診断するために使用される。
【0176】
別の好ましい態様において、方法は、ヒトまたはその他の動物被験体の口腔における感染症を診断するために使用される。
【0177】
本発明は、以下の非限定的な実施例によって、さらに記載される。
【0178】
実施例1
一般手順
融点は、Reichert融点ステージ顕微鏡またはGallenkamp融点装置上で記録され、補正されなかった。
【0179】
1H核磁気共鳴(1H NMR)スペクトルは、300 Kにおいて、200.13 MHzの周波数でのBruker Avance DPX 200分光光度計または300.13 MHzの周波数でのBruker Avance DPX 300分光光度計で記録された。試料は、他に特に記載されない限り、内部参照としてテトラメチルシラン(TMS)を含む重水素クロロホルム(CDCl3)に溶解された。シグナルは、他に特に記載されない限り、TMS(SiMe41H=0 ppm)または溶媒残留物ピーク(CDCl31H=7.26 ppm)に対する化学シフト(ppmにおけるδ)、相対積分、多重度(s、一重線;br、広範一重線;d、二重線;t、三重線;m、多重線;dd、二重線の二重線;dt、三重線の二重線)、結合定数(HzにおけるJ)、および帰属に換算して、この順番において記録された。この論旨において描かれるポルフィリンに対する1H NMRデータの提示において採用されるナンバリングシステムは、付録A1において記載される。NMRデータは、Silicon Graphics Industries (SGI)および標準Brukerソフトウェア(xwinNMR)を使用するPCワークステーション上で処理された。
【0180】
マトリクス支援レーザー脱離イオン化法- 飛行時間型(MALDI-TOF)質量スペクトルは、Micromass Tof Spec 2E分光光度計で記録された。質量スペクトルは、マトリクスなしで記録された。質量スペクトルは、分子イオンのアイソトープピークのエンベロープとして獲得された。エンベロープの最大に相当する質量が報告され、刺激スペクトルの最大と比較された。
【0181】
低解像度エレクトロスプレーイオン化(ESI)質量スペクトルは、ThermoQuest Finnigan LCQ Decaイオントラップ質量分光光度計で記録された。機器は、制御され、データは、Xcaliburソフトウェアを使用して収集された。高解像度質量分析は、the Australian National University, Canberra, AustraliaのDr. Keith Fisherによって、4.7 T超伝導マグネットをともなうエレクトロスプレーモードにおけるBrukerフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分光光度計で行なわれた。
【0182】
赤外線吸収スペクトルを、規定された溶媒における溶液として、Perkin-Elmer Model 1600 FTIR分光光度計またはShimadzu Model 8400 FTIR分光光度計で記録した。強度略語が使用される:w、弱;m、中;s、強。
【0183】
電子吸収スペクトルを、298 Kおよび約10-5 M溶液において規定された溶媒を使用してCary 1E UV-Vis分光光度計またはCary 5E UV-Vis分光光度計で実行した。
【0184】
調製用のカラムクロマトグラフィーは、Merck Kieselgel 60シリカゲル(SiO2、0.040〜0.063 mm)上で規定どおりに実行された。すべてのカラムは、再蒸留された溶媒を使用して、薄暗い所(アルミニウムホイル)で実行された。分析薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Merck Kieselgelシリカゲル 60 F-254プレコーティングシート(0.2 mm)を使用して行なわれた。カラムクロマトグラフィーおよびTLCに対する溶媒システムの比は、定められるようにv/vとして表現した。
【0185】
分析および調製用の逆相HPLCは、Rheodyne 7125インジェクターをともなうWaters 600E溶媒送達システムおよび溶媒システムCH3OH:CH3CN:CF3COOH(50:50:0.05)を使用するWaters 486 UV検出器で実行された。機器は制御され、データは、Milleniumソフトウェアを使用して収集された。
【0186】
試薬は、市販されている試薬グレード化学薬品であり、ほとんどの試薬は、さらなる精製をともなわずに使用された。レゾルシノールは、ジクロロメタンから再結晶化された。ピリジンは、水素化カルシウム上で蒸留することによって乾燥された。すべての市販の溶媒は、文献の方法に従って精製され、使用の前に規定どおりに蒸留された。エーテルは、ジエチルエーテルを指し、軽油(light petroleum)は、60〜80℃の沸点をともなう分画を指す。塩化カルシウム上で蒸留したクロロホルムを乾燥し、使用の直前にそれを中性アルミナのカラムに通すことによって、エタノールを含まないクロロホルムを得た。重水素クロロホルムを中性アルミナのカラムに通すことによって、NMR分光法における使用の前に脱酸した。重水素溶媒は、Aldrich、Merck、およびCambridge Isotope Laboratoriesから購入された。
【0187】
ウシヘモグロビン(Hb)、Hb-アガロースビーズ、ヘミン(Hm)、およびHm-アガロースビーズは、Sigma-Aldrich Companyから供給された。RgpAの配列に由来する合成HA2遺伝子の翻訳産物は、C-末端ポリヒスチジンタグ(国際特許出願、国際公開公報第2002061091号)をともなって大腸菌において発現され、rHA2と呼ばれる。rHA2は、Hb-アガロース親和性クロマトグラフィーによって機能的に精製された。抗ジンジパインモノクロナール抗体(mAb)5A1は、マウスにおいて調製された。アルカリホスファターゼ(AP)を接合された二次ヤギ抗マウス抗体は、Dako Corporationによって供給された。4-ニトロフェニルリン酸(p-NPP)は、Boehringerによって供給された。P. ジンジバリスATCC 33277細胞を、すべての成長アッセイにおいて使用し、培養物を、CO2(5%)、H2(10%)、およびN2(85%)を含む大気中、37℃で嫌気的に成長させた。P. ジンジバリスおよびP. メラニノジェニカ細胞を、Center for Disease Control (CDC)培地において成長させ、F. ヌクレアタム細胞を、Brain Heart Infusion (BHI)培地において成長させた。
【0188】
実施例2
ジュウテロヘミンの合成
方法1:
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、プロトヘミン(10.1 g、15.5 mmol)とレゾルシノール(30.2 g、274 mmol)とを粉砕し、1時間空気コンデンサー下で160℃において還流して加熱し、粗ジュウテロヘミンを産出した。反応混合物は、濾過され、洗浄が無色になるまでエーテルで洗浄され、m.p.>300℃;m/z (MALDI-TOF) 564.2 [計算値(M)+、564.4]の黒色固体として、ジュウテロヘミン23(9.12 g、98.1%)を産出した。
【0189】
方法2:
Adler et al. (前記1977)の方法に従って、プロトヘミン(5.00 g、7.67 mmol)とレゾルシノール(25.0 g、227 mmol)とを粉砕し、25分間空気コンデンサー下で190℃において還流して加熱した。温度が200℃よりも上に上がらないよう注意した。融液を140℃まで冷却した後、熱いプロピオン酸(50 ml)を攪拌しながら添加し、結果として生じた溶液を水(500 ml)に注ぎ込んだ。溶液は、水酸化ナトリウム(10 M、950 ml)で中和され、1時間加熱された。溶液を冷却させ、微細な沈殿物を凝集させるために12時間放置した。溶液は、濾過がゆっくりであるので、大きな焼結漏斗で真空濾過され、濾液が透明になるまで濾過された。沈殿物を風乾し、メタノール(100 ml)に溶解した。溶液を濾過し、溶媒を除去した。残留物は、真空デシケーターに移され、真空に12時間放置され、粗ジュウテロヘミン23を提供した。水を加熱しながら添加し、溶液を濾過した。溶媒を除去し、方法1によって獲得された生成物と同一の質量スペクトルをともなう黒色固体としてジュウテロヘミン23(3.51 g、76.3%)を産出した。
【0190】
実施例3
1,3,5,8-テトラメチルポルフィリン-6,7-ジプロパン酸ジメチルエステル- ジュウテロポルフィリンIXジメチルエステル(DPIX DME)24の合成
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロヘミン23(200 mg、0.333 mmol)を、氷冷酢酸(50 ml)および塩酸(10 M、2 ml)に溶解し、鉄粉(50.2 mg、0.899 mmol)を添加し、反応混合物を、30分間160℃において還流して加熱した。冷却された溶液は、水(52 ml)で希釈され、飽和酢酸ナトリウム溶液(80 ml)で処置され、酢酸エチル(2×100 ml)で抽出された。組み合わせられた酢酸エチル層は、塩酸(1.5 M、2×100 ml)で抽出された。水層が組み合わせられ、水酸化ナトリウム(3 M)でpH 4に調整され、酢酸エチル(3×100 ml)へ抽出された。溶媒を除去し、メタノール(200 ml)および硫酸(10 ml)の混合物を添加し、溶液を一晩放置した。溶液は水酸化ナトリウム(3 M)でpH 4に調整され、酢酸エチルで抽出された。酢酸エチル層におけるポルフィリンは、塩酸(1.5 M)で酸化され、層は分離された。ポルフィリンは、酸抽出物のpHを水酸化ナトリウムでpH 4に調整した後に、クロロホルム(3×50 ml)で水相から抽出された。クロロホルム抽出物を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。粗生成物を、2% v/vメタノール/クロロホルムの溶出液を用いて中性アルミナカラム上でクロマトグラフィーに供した。赤紫色溶出物の蒸発は、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなうm.p. 219〜220℃(文献m.p. 217〜220℃)の赤紫色固体としてジュウテロポルフィリンIXジメチルエステル24(110 mg、61.3%)を産出した。

【0191】
実施例4
1,3,5,8-テトラメチル-ポルフィン-6,7-ジプロパン酸- ジュウテロポルフィリンIX(DPIX)5の合成
方法1:ギ酸法
ジュウテロヘミン23(2.01 g、3.35 mmol)およびギ酸(80 ml)を、機械的攪拌機を装備した100 ml 三つ口丸底フラスコにおいて、窒素下で還流して加熱し、激しく攪拌した。鉄粉(2.00 g、35.8 mmol)を、500 mg部分ずつ5分の間隔で添加し、反応混合物を、反応の進行をチェックするためにTLCによって5分間隔で追跡し、20分後に完了させた。反応混合物は水(100 ml)に注ぎ込まれ、結果として生じた混合物は、飽和酢酸ナトリウム溶液(80 ml)で処置され、酢酸エチル(4×100 ml)で抽出された。組み合わせられた酢酸エチル層は、塩酸(1.5 M、3×100 ml)で抽出され、水層が組み合わせられ、炭酸水素ナトリウムでpH 4に調整された。ポルフィリンは、酢酸エチル(4×200 ml)で水相から抽出され、溶媒が除去され、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなうm.p.>300℃の黒紫色結晶としてジュウテロポルフィリンIX 5(1.30 g、76.0%)を産出した。

【0192】
方法2:鉄粉法
抽出のための溶媒として酢酸エチルを使用する試案1
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロヘミン23(400 mg、0.667 mmol)を、氷冷酢酸(100 ml)および塩酸(10 M、2 ml)に溶解し、鉄粉(100 mg、1.79 mmol)を添加し、反応混合物を、さらに30分間150℃において還流して加熱した。冷却された溶液は、水(102 ml)で希釈され、飽和酢酸ナトリウム(160 ml)と混合され、酢酸エチル(4×60 ml)で抽出された。組み合わせられた酢酸エチル層は、塩酸(1.5 M、2×100 ml)で抽出された。水層が組み合わせられ、水酸化ナトリウム(3 M)でpH 4に調整され、酢酸エチル(3×100 ml)へ抽出された。溶媒が除去され、方法1によって獲得された生成物と同一の1H NMRおよび質量スペクトルをともなう赤紫色固体としてジュウテロポルフィリンIX 5(208 mg、61.1%)を産出した。
【0193】
抽出のための溶媒としてジクロロメタンを使用する試案2
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロヘミン23(1.02 g、1.70 mmol)を、氷冷酢酸(400 ml)および塩酸(10 M、5 ml)に溶解し、鉄粉(1.01 g、18.1 mmol)を添加し、反応混合物そ、さらに30分間160℃において還流して加熱した。冷却された溶液は、水(405 ml)で希釈され、飽和酢酸ナトリウム(640 ml)と混合され、ジクロロメタン(3×450 ml)で抽出された。組み合わせられたジクロロメタン層は、塩酸(1.5 M、3×300 ml)で抽出された。水層が組み合わせられ、炭酸水素ナトリウム溶液でpH 4に調整され、ジクロロメタン(5×300 ml)へ抽出された。溶媒が除去され、方法1によって獲得された生成物と同一の1H NMRおよび質量スペクトルをともなう赤紫色固体としてジュウテロポルフィリンIX 5(106 mg、12.2%)を産出した。
【0194】
抽出のための溶媒としてn-ブタノールを使用する試案3
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロヘミン23(100 mg、0.167 mmol)を、氷冷酢酸(50 ml)および塩酸(10 M、2 ml)に溶解し、鉄粉(140 mg、2.51 mmol)を添加し、反応混合物を、さらに40分間窒素下で170℃において還流して加熱した。反応混合物はTLCによって追跡された。冷却された溶液は、水(52 ml)で希釈され、飽和酢酸ナトリウム(80 ml)と混合され、ジクロロメタン(4×100 ml)で抽出された。組み合わせられたジクロロメタン層は、塩酸(1.5 M、2×300 ml)で抽出された。水層が組み合わせられ、炭酸水素ナトリウム溶液でpH 4に調整され、ジクロロメタン(5×300 ml)へ抽出された。水層は、n-ブタノール(1×200 ml)へ抽出された。溶媒が除去され、方法1によって獲得された生成物と同一の1H NMRおよび質量スペクトルをともなう赤紫色固体としてジュウテロポルフィリンIX 5(10.5 mg、12.3%)を産出した。
【0195】
方法3:硫酸鉄法
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロヘミン23(500 mg、0.834 mmol)を、ピリジン(5 ml)およびメタノール(45 ml)に溶解した。硫酸鉄(500 mg)を添加し、乾燥塩化水素ガスを、溶液に迅速に通した。溶液は、水(100 ml)で希釈され、飽和酢酸ナトリウム(160 ml)と混合され、酢酸エチル(4×60 ml)で抽出された。組み合わせられた酢酸エチル層は、塩酸(1.5 M、2×100 ml)で抽出された。水層が組み合わせられ、水酸化ナトリウム(3 M)でpH 4に調整され、酢酸エチル(3×100 ml)へ抽出された。溶媒が除去され、方法1によって獲得された生成物と同一の1H NMRおよび質量スペクトルをともなう赤紫色固体としてジュウテロポルフィリンIX 5(70.8 mg、16.6%)を産出した。
【0196】
方法4:1,3,5,8-テトラメチルポルフィリン-6,7-ジプロパン酸ジメチルエステル- ジュウテロポルフィリンIXジメチルエステル(DPIX DME)24の脱エステル化
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロポルフィリンIXジメチルエステル24(50.2 mg、0.0931 mmol)を、水酸化カリウム(1.01 g、18.0 mmol)、水(95 ml)、およびメタノール(5 ml)の溶液(25 ml)に溶解した。混合物は、酢酸エチルで抽出された。水層は、酢酸エチル-水(1:1、150 ml)で抽出され、pH 4へ酸化された。酢酸エチル抽出物は、無水硫酸ナトリウムで乾燥され、濾過され、溶媒が除去され、方法1によって獲得された生成物と同一の1H NMRおよび質量スペクトルをともなう赤紫色固体としてジュウテロポルフィリンIX 5(18.4 mg、38.7%)を産出した。
【0197】
実施例6
ジュウテロポルフィリンIX-TMS付加体合成の試み
Royappa et al. Langmuir 14:6207-6214, 1998の方法に従って、ジュウテロポルフィリンIX 5(30.0 mg、0.0588 mmol)を、無水エーテルに溶解した。乾燥ピリジン(9.3 mg、0.12 mmol)を添加し、反応フラスコを窒素でパージした。塩化トリメチルシリル(13.0 mg、0.119 mmol)を、反応混合物が激しく攪拌される間、30秒にわたって添加した。反応物を、窒素中で3時間攪拌した。次いで、溶媒が真空下で除去され、赤紫色固体を産出した。生成物の質量スペクトル(MALDI-TOFおよびESI)および1H NMR(200 MHz;CDCl3;SiMe4)分光法の両方が、ジュウテロポルフィリンIX-TMS付加体が得られなかったことを示唆し、反応が生じなかったことを示した。
【0198】
実施例7
2,4-ジエテニル-1,3,5,8-テトラメチル-ポルフィン-6,7-ジプロパン酸ジメチルエステル- プロトポルフィリンIXジメチルエステル26(PPIX DME)の合成
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ヘマトポルフィリンIX 25(500 mg、0.744 mmol)およびp-トルエンスルホン酸(1.25 g、6.47 mmol)を、2時間、クロロベンゼン(250 ml)中でN2ガス下で140℃において還流して加熱した。冷却された溶液を、アンモニア(128 ml)と振盪し、氷冷酢酸(50 ml)そ添加し、有機層を分離した。水層は、酢酸エチル(2×50 ml)で抽出され、有機抽出物が組み合わせられ、無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過され、溶媒が除去された。メタノール(200 ml)および硫酸(18 M、10 ml)を残留物に添加し、反応混合物を、室温において一晩暗所に放置した。溶液は、水(500 ml)で希釈され、ジクロロメタン(2×80 ml)で抽出された。組み合わせられた有機抽出物は、炭酸水素ナトリウムで洗浄され、無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過され、溶媒が除去された。粗生成物を、2% v/vメタノール/クロロホルムの溶出液を用いてシリカカラム上でクロマトグラフィーに供した。溶液の蒸発は、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなうm.p. 198〜202℃の暗赤色固体としてプロトポルフィリンIXジメチルエステル26(365 mg、83.1%)を産出した。

【0199】
実施例8
2,4-ジエテニル-1,3,5,8-テトラメチル-ポルフィン-6,7-ジプロパン酸- プロトポルフィリンIX(PPIX)3の合成
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、プロトポルフィリンIXジメチルエステル26(100 mg、0.169 mmol)を、水酸化カリウム(3.02 g、53.8 mmol)およびメタノール(35 ml)の溶液に溶解し、一晩暗所においてN2ガス下で還流して加熱した。冷却に際して、溶液は酢酸エチルで抽出された。組み合わせられた酢酸エチル層は、塩酸(3 M、2×50 ml)で抽出された。水層が組み合わせられ、水酸化ナトリウム(3 M)でpH 4に調整され、酢酸エチル(3×100 ml)へ抽出された。酢酸エチル層は、無水硫酸ナトリウム上で乾燥され、濾過され、溶媒が除去され、文献において引用されるものと同一の1H NMRスペクトルをともなうm.p.>300℃の赤紫色固体として純粋なプロトポルフィリンIX 3(72.8 mg、76.6%を産出した。)

【0200】
実施例9
銅(II)ヘマトポルフィリンIX 27合成の試み
Adler、1970前記の方法に従って、ヘマトポルフィリンIX 25(200 mg、0.298 mmol)および酢酸銅(II)(100 mg、0.669 mmol)を、ジメチルホルムアミド(80 ml)に溶解し、溶液を3時間還流して加熱した。冷却に際して、溶媒が除去され、黒色結晶を産出した。MALDI-TOFおよびESI質量スペクトルの両方が、銅(II)ヘマトポルフィリンIX 27が獲得されなかったことを示唆し、反応が生じなかったことを示した。
【0201】
実施例10
ジュウテロポルフィリンIX二置換付加体および一置換付加体の合成
ジュウテロポルフィリンIX二[酸塩化物]31を介する方法1
ジュウテロポルフィリンIX 5(200 mg、0.392 mmol)を、30分間窒素下で、塩化チオニル(10 ml)およびジクロロメタン(40 ml)の混合物中で還流した。冷却に際して、溶媒が除去された。残留物を、ジクロロメタン(3×20 ml)に溶解し、塩化チオニルの任意の痕跡を除去するために、ジクロロメタンの各々の添加後に溶媒を除去した。ジクロロメタン(50 ml)を、結果として生じた残留物に添加し、メトロニダゾール(26.8 mg、0.157 mmol)を、トリエチルアミン(5滴)とともに溶液に添加した。溶液を1時間窒素下で還流し、冷却に際して、溶媒を除去した。トルエン(20 ml)を添加し、蒸発させた。トルエン(20 ml)および水(0.5 ml)の混合物を添加し、二相混合物を30分間攪拌した。溶媒が除去され、赤黒色固体として生成物の混合物を産出した。
【0202】
混合物を、CH2Cl2:CH3OH:CH3NO2の30:1:1混合物の溶出溶媒でシリカカラムを通した。溶出溶媒を、第一のバンドが溶出する20:1:1に変えた。次いで、溶出溶媒の極性を、第二のバンドが溶出する10:1:1に増加させた。
【0203】
第一のバンドを含む画分は、蒸発乾固され、m.p. 90℃の暗赤色固体として二メトロニダゾール置換付加体19(11.8 mg、3.7%)を産出した。

【0204】
第二のバンドを含む画分は、蒸発乾固され、m.p. 70℃の暗赤色固体として一メトロニダゾール置換付加体20および21(26.2 mg、8.2%)の混合物を産出した。

【0205】
ジュウテロポルフィリンIX二無水物30を介する方法2
ジュウテロポルフィリンIX 5(56.0 mg、0.110 mmol)を、無水酢酸(28.0μl、0.297 mmol)およびトルエン(40 ml)中で4時間還流した。混合物を熱い間に濾過し、次いで、冷却させた。無水酢酸は、室温において高真空下で除去され、粗ジュウテロポルフィリンIX二無水物30を生じた。粗生成物30およびメトロニダゾール(14.5 mg、0.0847 mmol)を、11時間30分窒素下でトルエン(12 ml)中で還流して加熱した。溶媒は、高真空下で除去され、方法1によって獲得された生成物と同一の1H NMRおよび質量スペクトルをともなう赤黒色固体として生成物5、19、20、および21(28.6 mg)の混合物を産出した。
【0206】
実施例11
N-ピリジニウムスルホン酸の合成
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ピリジン(8 ml)を、クロロホルム(24 ml)に溶解し、溶液を、氷塩バスにおいて機械的に攪拌した。クロロスルホン酸(3 ml)が、有毒ガス排出装置付き実験容器(fume cupboard)において滴下方式で添加され、厚く白い沈殿物が濾過され、0℃の水で洗浄され、P2O5上で乾燥され、m.p. 128〜130℃の白色固体としてN-ピリジニウムスルホン酸(2.42 g)を産出した。m/z(MALDI-TOF)161.1[計算値(M+H)+、161.2]。
【0207】
実施例12
2,4-ジスルホン-1,3,5,8-テトラメチルポルフィリン-6,7-ジプロパン酸- ジュウテロポルフィリンIX-2,4-ジスルホン酸(DSA)11の合成
Smith、1999前記;1976前記の方法に従って、ジュウテロポルフィリンIX 5(5.0 mg、0.0098 mmol)を、N-ピリジニウムスルホン酸(75.0 mg、mmol)と入念に混合し、混合物を、30分間165℃で溶融し、冷却し、少量のジクロロメタン(5 ml)および水(5 ml)に溶解した。氷塩バス中に、ジュウテロポルフィリンIX-2,4-ジスルホン酸11は、紫色固体として結晶化した。固体は濾過され、溶媒は蒸発され、m.p.>300℃、λmax (H2O)/nm 401(log ε 5.25)、507(4.30)、542(4.24)、569(4.23)、617(4.11);m/z(MALDI-TOF)671.3[計算値(M+H)+、671.7]の紫色固体としてジュウテロポルフィリンIX-2,4-ジスルホンサン11(4.2 mg、63.6%)を産出した。
【0208】
実施例13
生物学的試験- バッファーの調製
コーティングバッファー
コーティングバッファーは、炭酸水素ナトリウム(50 mM)、塩化ナトリウム(137 mM)、およびアジ化ナトリウム(10 mM)を含む重炭酸バッファー(0.1 M)であった;pH 9.0。
【0209】
ブロッキング/洗浄バッファー(PBS)
ブロッキング/洗浄バッファーは、Tween-20(0.1%、v/v 1 ml/L)をともなう、塩化ナトリウム(137 mM)、無水リン酸水素二ナトリウム(8.1 mM)、塩化カリウム(2.7 mM)、リン酸二水素カリウム(1.5 mM)、およびアジ化ナトリウム(10 mM)を含む1×リン酸緩衝生理食塩水であった;pH 7.4。
【0210】
結合バッファー
結合バッファーは、Tween-20(0.1%、v/v 1 ml/L)をともなう、塩化ナトリウム(150 mM)およびアジ化ナトリウム(10 mM)を含む酢酸バッファー(0.05 mM)であった;pH 5.5。
【0211】
検出バッファー
検出バッファーは、トリス(20 mM)、塩化マグネシウム(1 mM)、およびアジ化ナトリウム(10 mM)を含む25×AP現像バッファーであった;pH 9.5。
【0212】
実施例14
生物学的試験- 結合アッセイ
一メトロニダゾール置換付加体20および21の混合物ならびにヘム(両方とも5μg/ml)は、pH 9.0のコーティングバッファーにおいて、96ウェルプレートのプラスチックウェル表面上にコーティングされた。トリス/Tween-20バッファー pH 7.5(TBS)で非結合ポルフィリン20および21またはヘムを洗い流した後、プレートは、30分間TBSでブロックされた。pH 5.5の結合バッファーにおけるrHA2の希釈は、TBSで洗浄する前に、37℃で1時間30分間、コーティングされたポルフィリン20および21またはヘムと4通りにインキュベートされた。一次マウス5A1 mAb(0.5μg/ml)を、TBSに加え、プレートを、TBSで洗浄する前に、37℃で1時間インキュベートした。アルカリホスファターゼ(AP)を接合された二次ヤギ抗マウスAbを、TBSに加え、プレートを、TBSで洗浄する前に、37℃で1時間インキュベートした。基質、パラ-ニトロフェニルリン酸(p-NPP)を、pH 9.5の検出バッファーに加え、プレートを、37℃で1時間インキュベートし、次いで、p-NPPからp-NPへの脱リン酸化に対するAP活性を、あらかじめプログラムされた間隔で405 nm(最大吸収3.0 ELISAユニット)においてBio-rad Benchmarkプレートリーダーでモニターした。明らかな解離定数は、ベストフィットKD50結合曲線から計算された。
【0213】
実施例15
生物学的試験- 成長阻害アッセイ
培養および生物学的試験は、P. ジンジバリスATCC 33277細胞上で実行され、培養物を、CO2(5%)、H2(10%)、およびN2(85%)を含む大気中、37℃で嫌気的に成長させた。培養物は、ヘム、メナジオン、ならびにDMSO、DPIX 5、メトロニダゾール、DPIX 5+メトロニダゾール、または付加体20および21のいずれかとインキュベートされた。4つのセクションに分けられた96ウェルポリスチレンプレートにおいて、一付加体20および21の混合物、メトロニダゾール、DPIX 5、ならびにDMSOの一連の希釈が作り上げられた。これらは、4通りに試験チューブに移され、P. ジンジバリス細胞が3通りに添加され、1つの試験チューブをP. ジンジバリス細胞を含まないブランク対照として残した。P. ジンジバリス細胞の成長を、3日(72時間)にわたってモニターし、成長を、培地の濁度によって注目し、光学密度として記録した。
【0214】
当業者は、本明細書において記載される本発明が、具体的に記載されるのも以外のバリエーションおよび改変を受けやすいことを高く評価すると思われる。本発明が、すべてのそのようなバリエーションおよび改変を含むことが理解されるべきである。本発明は、個々にまたは集合的に本明細書において述べられるまたは示される段階、特徴、組成物、および化合物のすべて、ならびに該段階または特徴の任意の二つ以上の、任意のおよびすべての組み合わせも含む。
【0215】
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】図1は、基本的なポルフィリン構造およびナンバリングシステム(Fischer命名法)を示すグラフ表示である。α-ピロールおよびβ-ピロールという用語は、それぞれポルフィリンのピロール環の窒素原子に対してα-およびβ-である位置を指す。ピロールサブユニット間の架橋炭素原子は、メソ位を指し、α、β、γ、およびδとラベルされる。文字A〜Dは、個々の環を示すために使用される。ポルフィリンのビニル面は、炭素1〜4を指す。ポルフィリンのプロピオン酸面は、炭素5〜8を指す。
【図2】図2は、DPIXの1H NMRスペクトルを示すグラフ表示であり、9.11 ppmにおける一重線は、2位および4位におけるβ-ピロール水素の特徴であり、10.05、10.10、および10.17 ppmにおける一重線は、ポルフィリン大環状分子の4メソプロトンの特徴である。パネルc)における9.11 ppmにおける一重線ピークの開裂は、β-ピロール水素と隣接する-CH3基からの水素との間の結合による。3.41〜3.48 ppmおよび4.43〜4.50 ppmにおける三重線は、プロパン酸側鎖上の-CH2基により、3.65、3.68、3.74、および3.77 ppmにおける一重線は、4つの-CH3基による。同様に、パネルe)における3.74および3.77 ppmにおける一重線の小さな開裂は、隣接するβ-ピロール水素をともなう-CH3プロトン間の結合による。最後に、-4.13 ppmにおけるピークは、内部NHプロトンの特徴であり、脱金属をさらに証明する。
【図3】図3は、DPIX二置換メトロニダゾール付加体19の1H NMRスペクトルを示すグラフ表示である。
【図4】図4は、DPIX一置換メトロニダゾール付加体20および21の1H NMRスペクトルを示すグラフ表示である。
【図5】図5は、HA2の濃度の関数として、405 nmにおける光学密度のプロットとして獲得された結合曲線を示すグラフ表示である。KDは、解離定数を表し、KD50は、一付加体20および21の半分がHA2に結合される濃度である。結合定数Kaが、以下の式によってKDに関連することに留意されたい:KD=1/Ka
【図6】図6は、様々な濃度において化合物20および21によって引き起こされるP. ジンジバリスの成長阻害を示すグラフ表示である。A- 72時間にわたる20μM 20および21+対照でのP. ジンジバリスの成長阻害;B- 72時間にわたる4μM 20および21+対照でのP. ジンジバリスの成長阻害;C- 72時間にわたる2μM 20および21+対照でのP. ジンジバリスの成長阻害;D- 72時間にわたる1μM 20および21+対照でのP. ジンジバリスの成長阻害;E- 72時間にわたる0.5μM 20および21+対照でのP. ジンジバリスの成長阻害。
【図7】図7は、20μMにおける化合物20および21によるP. ジンジバリス、プレボテラ(Prevotella)・メラニノジェニカ、およびフソバクテリウム(Fusobacterium)・ヌクレアタムの成長阻害を示すグラフ表示である。A- 72時間にわたる20μM 20および21+対照でのP. ジンジバリスの成長阻害;B- 72時間にわたる20μM 20および21+対照でのP. メラニノジェニカの成長阻害;C- 72時間にわたる20μM 20および21+対照でのF. ヌクレアタムの成長阻害。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般化学式(I)を含む、分子標的薬剤(TMA):

式中、Tは、標的生物が必要とする栄養要求(auxotrophic requirement)または該必要とする栄養要求の類似体もしくは誘導体を含む標的部分であり、xは、化学的結合の実体またはリンカー基であり、Aは、生物体を標的とすることを必要とされる薬剤であり、nは、1以上整数であり、(x-A)1、(x-A)2、(x-A)3・・・(x-A)nは、同じまたは異なってもよく、各々が、化学的結合の実体を介して標的部分に独立して結合される。
【請求項2】
標的部分Tが、ポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン誘導体である、請求項1記載のTMA。
【請求項3】
ポルフィリン分子または類似体もしくは誘導体が、金属を含まないポルフィリンである、請求項2記載のTMA。
【請求項4】
ポルフィリン分子または類似体もしくは誘導体が、金属ポルフィリンである、請求項2記載のTMA。
【請求項5】
薬剤Aが、アミノグリコシド(ゲンタマイシン、ネオマイシン、およびストレプトマイシンを含む)、ベータ-ラクタム、ペニシリン(アンピシリン、アモキシシリン、コ-アモキシクラブ、およびフルクロキサシリンを含む)、セファロスポリン(セファレキシン、セファクロル、およびセフロキシムを含む)、クロラムフェニコール、シクロセリン、イオノフォア、グリコペプチド、リンコサミド、マクロリド(エリスロマイシンおよびクラリスロマイシンを含む)、モノバクタム、ポリペプチド抗生物質、ニトロイミダゾール(メトロニダゾール、ニモラゾール、およびチニダゾールを含む)、キノロン(シプロフロキサシンを含む)、ストレプトグラミン、スルホンアミド、テトラサイクリン(テトラサイクリン、ドキシサイクリン、オキシテトラサイクリンを含む)、バンベルマイシン、カルバドックス、ノボビオシン、スペクチノマイシン、クリンダマイシン、イソニアジド、リファンピシン、トリメトプリム(モノプリム(Monoprim))、およびバンコマイシンからなるリストより選択される、請求項1または2または3または4記載のTMA。
【請求項6】
xが、エステル結合である、請求項5記載のTMA。
【請求項7】
xが、アミド結合である、請求項5記載のTMA。
【請求項8】
xが、尿素結合である、請求項5記載のTMA。
【請求項9】
xが、カルバメート結合である、請求項5記載のTMA。
【請求項10】
TMAが、ポルフィロモナス(Porphyromonas)の種を標的とする、請求項1記載のTMA。
【請求項11】
ポルフィロモナスが、ポルフィロモナス・ジンジバリス(gingivalis)、または、サルモネラ(Salmonella)spp.、セラチア(Serratia)spp.、エルシニア(Yersinia)spp.、クレブシエラ(Klebsiella)spp.、ビブリオ(Vibrio)spp.、緑膿菌(Pseudomonas)spp.、大腸菌(E. coli)、およびヘモフィルス(Haemophilus)sppからなるリストより選択される関連生物である、請求項1記載のTMA。
【請求項12】
還元型のNO2基を含むメトロニダゾールまたはその誘導体を含み、該メトロニダゾールが、化学的結合によってポルフィリン分子またはその類似体もしくは誘導体に結合される、分子標的薬剤(TMA)。
【請求項13】
TMAが、ポルフィロモナスの種を標的とする、請求項12記載のTMA。
【請求項14】
ポルフィロモナスが、ポルフィロモナス・ジンジバリス、または、サルモネラspp.、セラチアspp.、エルシニアspp.、クレブシエラspp.、ビブリオspp.、緑膿菌spp.、大腸菌、およびヘモフィルスsppからなるリストより選択される関連生物である、請求項12記載のTMA。
【請求項15】
化合物20、21、39、40、41、42、およびその異性体ならびにモノスルホン酸およびジスルホン酸誘導体に関するリストより選択されるTMA。
【請求項16】
TMAが、化合物20または21の2-スルホン酸または4-スルホン酸誘導体である、請求項15記載の単離されたTMA。
【請求項17】
化合物43、44、その異性体、ならびにそのモノスルホン酸およびジスルホン酸誘導体からなるリストより選択される、単離されたTMA。
【請求項18】
請求項15または16の化合物ならびに一つまたは複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤を含む組成物。
【請求項19】
ヘムを栄養要求として必要とする微生物による、微生物が該ヘムを捕捉する生物学的環境における、感染症の予防または処置のための方法であって、該微生物に対する微生物殺生または微生物増殖抑制効果を有するのに十分な時間および条件下で、標的部分としてポルフィリン、ポルフィリン類似体、またはポルフィリン様分子を含むTMAの有効量を該環境に投与することを含む、方法。
【請求項20】
TMAが、還元型のNO2基を含むメトロニダゾールまたはその誘導体を含み、該メトロニダゾールが、化学的結合を介してポルフィリン分子またはその類似体もしくは誘導体に結合される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
TMAが、化合物20、21、39、40、41、42、異性体ならびにそのモノスルホン酸およびジスルホン酸誘導体からなるリストより選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
TMAが、化合物20または21の2-スルホン酸または4-スルホン酸誘導体である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
TMAが、化合物43、44、その異性体ならびにモノスルホン酸およびジスルホン酸誘導体からなるリストより選択される、請求項20記載の方法。
【請求項24】
微生物が、ポルフィロモナス・ジンジバリスである、請求項19または20または21または22記載の方法。
【請求項25】
生物学的環境が、口腔である、請求項24記載の方法。
【請求項26】
生物学的環境が、肺の空洞、膣、尿道、および蹄より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
一つまたは複数の栄養要求を必要とする対象生物体を計数する、可視化する、または位置を特定する方法であって、標的薬剤Aが光学的に検出可能なラベルである一般化学式(I)、(II)、または(III)の任意の一つのTMAを該生物体または該生物体の環境に投与すること、および該光学的に検出可能なラベルを検出することを含み、光学的に検出可能なラベルの検出が、生物体の存在、位置、および/または量を示す、方法。
【請求項28】
ポルフィロモナス・ジンジバリスに関連する歯周病を処置するための薬剤の製造における、請求項1または12または15または17記載のTMAの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−505936(P2008−505936A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−520618(P2007−520618)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/AU2005/001038
【国際公開番号】WO2006/005137
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507013501)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (1)
【Fターム(参考)】