歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイス
(i)機能部分の遠位端に全体が結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスであって、機能部分が、(a)閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、(b)ハンドル部分とを備える歯科デバイスと、(ii)歯科用シーラント組成物とを具備し、歯科デバイスが、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含む組成物を硬化させることによって取得可能な材料から作製される部品キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスと、シーラントとを備える部品キットに関する。本発明による部品キットを用いることにより歯根管を一体として閉塞し得る。本発明は、本発明の部品キットにおいて用い得る、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスにも関する。本発明は、さらに本発明による歯科デバイスを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯根管系全体を閉塞することは、歯内治療の第1の目標である。完全に閉塞できないことが、歯内治療の失敗の最も頻度の高い原因であり、それは以下の理由のためである。
歯根管系は複雑である。歯牙は、多数の管を含み得る。切歯は、2つの主な管を含み得る。小臼歯は、3つの主な管を含み得る。大臼歯、特に下顎大臼歯は、5つの主な管を含み得る。さらに、いずれの主な歯根管も、ループ状、フィン状、側方および付帯管を含み得る。歯内を治療する間に、3次元歯根管系は、清浄化し、均一な固体充填物によって充填しなければならない。このような管を清浄化および充填しない場合、病巣が永続化することは避けられない。病巣は、ついには炎症になり、歯牙を失うことにさえなろう。
【0003】
歯内治療において用いるための歯科用歯根管閉塞ポイントは周知である。通常の閉塞ポイントは、広い端部と、狭い端部(チップ)とを備える高分子ベースまたは金属のプレハブ錐体である。ポイントは、歯根管治療時に歯根管内に導入することにより、歯根管を完全に閉塞するような方式において清浄化し、整形した主歯根管を充填する。
【0004】
この数十年においては、歯根管シーラーと組み合わせたグッタ・ペルカ錐体が、最も普通の材料であり、側方加圧充填またはマスターポイント技法によって歯根管を充填するのに用いる。従って、歯根管シーラーを施用し、複数のグッタ・ペルカ・ポイントを挿入することにより主管を充填する。第1の閉塞ポイントを入れることにより開口先端部をシールし、多数の付属ポイントを用いて残りの管を充填する。鋭利な鋼製器具を用いてポイントを押圧し、側方にグッタ・ペルカを広げることにより主および付帯管を充填する。該器具により側方に大きな力が加えられるので、十分に注意をしないと歯牙を破壊する恐れがある。さらに、最下部のポイントは、無理に開口先端部を通り周縁組織内に押し込まれる場合があるので、炎症を起こす恐れがある。加えて、グッタ・ペルカは、押圧器具に接着することが多く、注意深く引き出さないと、該器具を取り出すときに充填物が緩んだり、移動することになろう。
【0005】
臨床成果をさらに改善し、歯根管の治療をもっと容易にかつ安全なものにするために、一方側では歯根管シーラーと空洞壁との間、および歯根管シーラーと歯根管閉塞ポイントとの間の優れた接合が、新規な応用技法によって実現されなければならない。さらに、閉塞ポイントの調製方法も、低コストで容易に実施されるものでなければならないが、その際、閉塞ポイントの品質が高いことも条件である。
【0006】
米国特許第5051093号には、一回使用の閉塞材と、多回使用の挿入用延伸器具とを備える歯根管充填デバイスが開示されている。
米国特許出願公開第2003/0045604号には、可溶性の熱可塑性歯科用歯根管錐体が開示されており、該錐体は、除去が容易であり、熱可塑性シーラーに接合され、放射線不透過性が少なくともAl 3mm/mmである。米国特許出願公開第2003/0045604号の歯科用歯根管充填錐体は、フィラーと、熱可塑性ポリマーとを含み、該熱可塑性ポリマーが、重合性ジエポキシドモノマーとアミンモノマーの重合によって生成し、前記アミンモノマーが、第1級モノアミンおよび/またはジ第2級ジアミンであり、前記フィラーが、放射線不透過性が少なくともアルミニウム3mm/mmである前記錐体の40〜90重量%を構成する。さらに、米国特許出願公開第2003/0045604号には、フィラー表面上でジエポキシドモノマーとアミンモノマーとを熱付加重合させる工程と、熱および/または加圧プロセスによって表面改質フィラーを成形(流延)する工程とを含む、歯科用歯根管充填錐体を調製するための方法が開示されている。米国特許出願公開第2003/0045604号には、歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスは教示または示唆されていない。
【0007】
国際公開第2004/115589号には、同じ材料で作製され、単一ユニットとして成形された、シャフト部分と、充填材部分とを含む歯内閉塞材が開示されている。ハンドル部分が含まれ、該ハンドル部分は、シャフト部分および充填材部分とともに単一ユニットとして一体成形してもよい。国際公開第2004/115589号には、歯内閉塞材と、特定のシーラントとを含む部品キットは開示されていない。
【特許文献1】米国特許第5051093号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0045604号
【特許文献3】国際公開第2004/115589号
【非特許文献1】J D Pecora et al.,Braz.Dent.J.12(2001)27
【非特許文献2】Gogos C.; et al Journal of Endodontics,Vol 30,No.4(2004)p.238−240
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
歯科デバイスと、歯根管を一体として閉塞するのに用い得る歯根管シーラントとを備える部品キットを提供することが、本発明の課題である。
歯科デバイスと、歯根管を閉塞するのに用いるときに歯科デバイスとの化学的相容性を有する歯根管シーラントとを備える部品キットを提供することが、本発明の課題である。
【0009】
歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、該デバイスを用いることによって歯内治療時に閉塞ポイントが容易に施用されかつ除去され、容易に製造され得る歯科デバイスを提供することが、本発明の課題である。
最後に、本発明による歯科デバイスを調製するための方法を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、
(i)機能部分の遠位端(distal end)に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、機能部分が、
(a)閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、
(b)ハンドル部分と
を備える歯科デバイスと、
(ii)歯科用シーラント組成物と
を具備し、歯科デバイスが、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製される部品キットを提供する。
【0011】
本発明は、歯根管内で歯根管壁に接着する一体的な閉塞を形成するのに用い得る部品キットを提供する。一体的な閉塞は、本質的に均一な材料を表す。従って、歯科デバイスは、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製する。
【0012】
本発明は、ハンドリング性を容易にし、歯根管の閉塞の精度を増進するために、歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスの新規な形体および好ましい表面をも示唆する。
【0013】
本発明による歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスのハンドル部分は、オペレータの指によって、または間接的にピンセットなどの器具によってしっかりと握り得る。圧力をかけることにより、テーパ形閉塞ポイント部分は、その最終位置内に押し込む。ハンドル部分は、好ましくは、平面であり、手順の最後で該ポイントを縮小するのに用いる器具が容易にバイパスできる。ハンドル部分に好ましくは設けられた平面は、該ポイントの大きさおよびテーパを識別するための刻印用の空間をも提供する。
【0014】
本発明による歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスのネック部分は、ハンドル部分を管内部(intra−canicular)テーパ形閉塞ポイント部分と接合する。ネック部分は、テーパ形閉塞ポイント部分よりも小さい直径であってもよく、これにより手順の最後での該ポイントの縮小が容易になる。ネック部分では、シリコン止めを装備してもよく、この助けによって、テーパ形閉塞ポイント部分が歯根管の調製に用いる器具の長さと同一の最終位置に到達するように制御される。ネック部分は、その全長にわたり本質的に同じ直径を有することにより、ストッパがスライドしながら移動し、ネック部分で位置取りすることが可能になる。
【0015】
本発明による歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスの管内部テーパ形閉塞ポイント部分は、好ましくは、対応する歯根管器具と類似の形状にする。それは、過剰のシーラントが歯冠方向に逃げるのを可能にする軸方向の溝を備え得る。管内部テーパ形閉塞ポイント部分の表面は、歯根管シーラントが該ポイントの表面を容易かつ完全に濡らすことを可能にし、歯根管ポイントと歯根管シーラントの間の結合強度をも改良するための微細構造を好ましくは有する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、機能部分の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、機能部分が、
(a)閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、
(b)ハンドル部分と
を備える歯科デバイスを提供する。
第3の態様では、本発明は、本発明による歯科デバイスを調製するための方法であって、
(a)熱可塑性高分子材料を用意する工程と、
(b)歯科デバイスを形成する工程と
を含むことを特徴とする方法を提供する。
第4の態様では、本発明は、歯根管を充填するための本発明の歯科デバイスの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による部品キットは、歯科デバイスと、歯科用シーラント組成物とを有する。歯科デバイスは、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含む組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製する。従って、歯科デバイスの材料は、硬化シーラントと相容性である。好ましくは、歯科デバイスは、対応するシーラント組成物の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる。
【0018】
歯科用シーラントは、AH Plus(Dentsply De Trey)などのエポキシド−アミンベースの歯根管シーラントでよく、このシーラントは、歯根管の空洞壁に結合したときに4MPaの接着力を示す(J D Pecora et al.,Braz.Dent.J.12(2001)27)。シーラントが、エポキシド−アミンベースの歯根管シーラントである場合、歯科デバイス材料は、硬化されるエポキシドアミンポリマーである。
【0019】
好ましくは、シーラントの歯科デバイス材料に対する接着力は、せん断結合強度試験においてグッタ・ペルカに対するシーラントの接着力より大であり(Gogos C.; et al Journal of Endodontics,Vol 30,No.4(2004)p.238−240)、この試験では、結合面(直径3mm)が円形である歯科デバイスの2つの供試体を用い、シーラーを用いて結合した後、Gogosらが開示した条件下でZwick Z010 TNDデバイスを用いてせん断結合試験にかける。さらに、本発明の部品キットの特定の実施形態では、シーラントの歯根管壁に対する接着力は、せん断結合強度試験においてシーラントの歯科デバイス材料に対する接着力より大である(Gogos C.ら)。従って、歯科デバイスと歯根管壁の間の結合のいずれの破壊も、シーラント層と歯科デバイスの間で起きることになり、これによって、歯根管壁が継続して保護されることになろう。本発明の部品キットのさらなる特定の実施形態では、シーラントの歯根管壁に対する接着力は、最大でも、シーラントの歯科デバイス材料に対する接着力と同じである。
【0020】
歯科デバイスは、連鎖成長重合反応または逐次重合反応によって得ることができる材料から作製し得る。好ましい実施形態では、歯科デバイスは、エポキシドアミンポリマーを含有する材料から作製する。
【0021】
好ましくは、キットは、歯科デバイス系を備える。該系は、本発明による歯科デバイスの2つ以上の異なる実施形態を含み得る。該系は、各実施形態の1つまたは複数の歯科デバイスを含み得る。好ましくは、該系は、異なるテーパまたは直径を備えた閉塞ポイントを有する実施形態を含むことにより、異なる大きさおよび形体の歯根管を閉塞するのに有用である。好ましくは、歯科デバイス系は、トレイに入れて提供し、トレイでは、歯科デバイスを並べ、取外し可能なように接着することにより歯科手順において識別およびハンドリングが容易になる。
【0022】
図1aに示すように、歯科デバイスは、機能部分3の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分2を備え、機能部分が、閉塞ポイント部分2に隣接したネック部分32と、ハンドル部分33とを備える。ハンドル部分33は、平滑な形体であり、それによって刻印のための表面を提供する。さらに、ハンドル部分が平滑な形体であるために望ましくない視野障害部分が減少する。ネック部分32は、シリコンストッパなどのストッパ手段4を備える。ストッパ手段は、着色標識を備えることによりテーパ形閉塞ポイント部分2のタイプまたは大きさを示し得る。ネック部分32は、テーパ形閉塞ポイント部分2よりも直径が小さいために、望ましくない視野障害部分が減少する。さらに、治療においてテーパ形閉塞ポイント部分2を歯根管内に正しく入れた後、機能部分を除去するとき、ネック部分32の直径が小さいために切断時の効率が向上する。テーパ形閉塞ポイント部分2は、歯根管を調製するために用いる歯根管器具の形状に適合させ得る。さらに、テーパ形閉塞ポイント部分2は、過剰のシーラントを排出するための1つまたは複数の延伸チャネル部分22を備え得る。
【0023】
図1bは、本発明による好ましい歯科デバイスの平滑なハンドル部分33の断面を示す概略図である。
図1cは、ストッパ手段を備えていない本発明による歯科デバイスを示す。図1aに示す実施形態と同様に、歯科デバイスは、機能部分3の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分2を備える。機能部分3は、閉塞ポイント部分2に隣接したネック部分32と、ハンドル部分33とを備える。ネック部分32は、テーパ形閉塞ポイント部分2よりも直径が小さいために、望ましくない視野障害部分が減少する。さらに、テーパ形閉塞ポイント部分2は、過剰のシーラントを排出するための1つまたは複数の延伸チャネル部分22を備える。
【0024】
図1dは、機能部分の遠位端に全体が結合しているテーパ形閉塞ポイント部分2の肩部分を示す。テーパ形閉塞ポイント部分2は、テーパ形閉塞ポイント部分2の表面全体に分布した多数の凹部を備えた粗い表面を有する。テーパ形閉塞ポイント部分2は、過剰のシーラントを排出するための延伸チャネル部分22をも備える。
【0025】
図2は、本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する。従って、図2aに示すように、歯根管は、標準法に従って調製する。示した歯牙は、主歯根管(main root canal)100および側方管(lateral canal)101、102、103および104を有する。続いて、通常の技法によって調製済みの歯根管100の壁を歯根管シーラントでコートすることにより、図2bに例示するように歯根管100の壁上に歯根管シーラントのコーティング110を提供する。シーラントは、側方管101〜104内に部分的に侵入する。好ましい歯根管シーラントは、硬化時に、本発明の歯科デバイスの熱可塑性材料と相容性である材料を提供する。次の工程では、本発明による歯科デバイス1を歯根管100内に導入する。歯科デバイスは、ハンドル部分33によって直接手によるかまたは間接的にピンセットにより好都合に保持し得る。いずれの場合でも、歯科デバイス1の機械的特性のために、テーパ形閉塞ポイント部分2が制御され、テーパ形閉塞ポイント部分2は、歯根管内に押し込まれ、テーパ形閉塞ポイント部分2は歯根管100内の望ましい位置に到達する。侵入の深さは、ストッパ手段4に基づき容易に制御し得るが、これは、歯根管の先端から歯牙の最上端までの距離を示す位置にストッパ手段4をネック部分32に沿って配置したからである。歯根管100を調製するために用いた歯科器具から、本発明の歯科デバイス1に距離を写すことができる。本発明の歯科デバイス1を歯根管内の正しい位置に置いた後、該デバイスを切断することにより、歯根管内に永久に残るデバイスの部分をデバイスの機能部分を含む部分から分離する。切断は、好ましくは、図2dに示すような熱い器具によって実施し得る。
本発明による歯科デバイスを用いた歯根管治療の結果、閉塞ポイント部分2およびシーラントは、好ましくは図2eに示すような一体物として歯根管の永久充填物を形成する。
【0026】
図3は、各種の閉塞ポイント部分を有する歯科デバイス系の側面図を示す。該系は、本発明の歯科デバイスの3つの異なる実施形態を示す。各実施形態は、正面図、および歯科デバイスの縦軸の周りに90°回転した後の対応する図において示す。3つの異なる実施形態は、異なる閉塞ポイント部分を特徴とする。各実施形態の閉塞ポイント部分の種類または特質が、そのハンドル部分において指示されているので、本発明の適当な歯科デバイスを識別し、選択することが容易である。この図に示す実施形態は、過剰の歯科用シーラントを排出するための延伸チャネル部分を備えていない。
【0027】
図4は、各種の閉塞ポイント部分を有するさらなる歯科デバイス系の側面図を示す。該系は、本発明の歯科デバイスの4つの異なる実施形態を示す。各実施形態は、正面図において示す。過剰のシーラントを排出するための延伸チャネルの形状および深さを示す対応する断面を示す。3つの異なる実施形態は、異なる閉塞ポイント部分を特徴とする。各実施形態の閉塞ポイント部分の種類または特質が、そのハンドル部分において指示されているので、本発明の適当な歯科デバイスを識別し、選択することが容易となる。
【0028】
図5は、適切なトレイ内に配列した図4に示すような歯科デバイス系の実施形態を示す。トレイは、本発明による複数の歯科デバイスを収容するための凹部を備える。各凹部は、同じタイプの複数の歯科デバイスを収容するように適合化されている。異なる凹部の歯科デバイスは、タイプが異なる。トレイの各部分は、歯科デバイスの閉塞ポイント部分を収容し、保持するための狭いチャネルを備える。歯科デバイスのハンドル部分は、識別を容易にするために所定の位置に保持する。ハンドル部分は、施術者が容易にかつ確実に握り得るようにトレイで提供される。トレイを適切に置くことによって、歯科デバイスを見る角度を最適になし得るように、トレイでは、所定の向きで歯科デバイスを提供する。トレイ内の歯科デバイスの位置を操作しないことには施術者がハンドル部分のラベルを識別することが不可能になるような位置まで、歯科デバイスのハンドル部分が、縦軸の回りに回転しないように凹部の深さを適切にする。トレイは、プラスチック材料などの任意の材料から作製し得る。
【0029】
本発明による歯科デバイスは、好ましくは、高分子材料から作製する。該材料は、非架橋熱可塑性材料でもよい。歯科材料はまた、熱成型法に適した部分架橋材料でもよい。歯科材料のガラス転移温度は、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは20℃〜100℃、さらにより好ましくは35℃〜70℃の範囲である。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明による歯科デバイスのテーパ形閉塞ポイント部分は、歯内シーラントの濡れおよび接着を促進するために粗い、そうでなければ機械的もしくは化学的に改変した表面構造を有する。テーパ形閉塞ポイント部分は、過剰のシーラントを排出するための1つまたは複数の延伸チャネル部分を備え得る。
【0031】
好ましい実施形態では、ハンドル部分は、非円形断面を有する。ネック部分は、円形断面および円筒形状を有し得る。さらに、ネック部分の直径は、閉塞ポイント部分の最大直径と同じかまたはそれより小さいことが好ましい。
【0032】
本発明による歯科デバイスは、ネック部分にスライド可能に備えられているストッパ装置をさらに備え得る。
本発明による歯科デバイスを調製する方法には、特別な制限はない。必要とする大きさの生成物を成形するために通常用いる任意の方法を用い得る。その方法として、射出成形、熱圧力成形法、ラピッド・プロトタイピングなどの成形法;組成物がモールド内で重合する流延法;または本発明のデバイスをバルク材料から圧延するなどの機械的方法がある。レーザまたは水ジェットを用いる方法も、本発明による歯科デバイスを調製するために企図されている。
【0033】
好ましくは、歯科デバイスは、熱可塑性組成物に基づいて取得し得る。熱可塑性組成物は、熱可塑性ポリマーと、フィラーとを含み得る。
好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーは、重合可能なジエポキシドモノマーおよびアミンモノマーの重合によって形成する。該アミンモノマーは、第1級モノアミンおよび/またはジ−sec−ジアミンから選択し得る。好ましい実施形態では、重合可能な組成物は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ジベンジルアミン、1−アミノアダマンタンおよび/またはトリシクロデカンジアミンを含む。
【0034】
アミンモノマーが、第1級モノアミンを含有する場合、アミンモノマーとエポキシドモノマーを重合することにより、以下のスキーム1に従って、反復単位(I)を有する付加ポリマーを形成し得る。
【化1】
アミンモノマーが、ジ−sec−ジアミンを含有する場合、アミンモノマーとエポキシドモノマーを重合することにより、以下のスキーム2に従って、反復単位(II)を有する付加ポリマーを形成し得る。
【化2】
アミンモノマーが、第1級モノアミンおよびジ−sec−ジアミンを含有する場合、アミンモノマーとエポキシドモノマーを重合することにより、反復単位(I)および(II)を有する付加ポリマーを形成し得る。
上記のスキーム1および2では、Rは、ジエポキシドから形成される部分であり、以下の基から選択し得る。
【化3】
【0035】
上記のスキーム1および2では、R1は、
置換C1〜C18アルキル基、
C1〜C18ポリオキシアルキレン基、
置換または非置換C5〜C18シクロアルキル基、
置換または非置換C5〜C18アリールまたはヘテロアリール基でよく、該置換アルキル基、該置換シクロアルキル基、該置換アリール基または該置換ヘテロアリール基は、C1〜C6アルコキシ基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、−COCH3、NO2、COOC2H5、ヒドロキシル基、またはホスホン酸基やリン酸基などのリン含有基から選択される1〜3個の置換基を含んでもよい。
【0036】
上記のスキーム1および2では、R2は、
酸素および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を鎖中に含み得る置換または非置換C1〜C18アルキレン基、
酸素および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を鎖中に含み得る置換または非置換C1〜C18アルケニレン基、
酸素および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を環状鎖中に含み得る置換または非置換C5〜C18シクロアルキル基、
置換または非置換C5〜C18アリーレンまたはヘテロアリーレン基でよく、該置換アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基は、C1〜C6アルコキシ基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、−COCH3、NO2、COOC2H5、ヒドロキシル基、またはホスホン酸基やリン酸基などのリン含有基から選択される1〜3個の置換基を含んでもよい。
【0037】
好ましくは、エポキシドモノマーは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、またはΔ3−テトラヒドロフタール酸ジグリシジルエステルなどのジグリシジルエーテルの群から選択されるジエポキシドである。具体的な例として、ビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]プロパンを挙げ得る。
【0038】
好ましくは、ジ−sec−ジアミンは、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジル−3,6−ジオキサ−オクタンジアミン−1,8、N,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9、N,N’−ジベンジル−(2,2,4)/(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンジアミンおよびN,N’−ジメチル−p−キシレンジアミンから選択される。N,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9が、特に好ましい。
【0039】
好ましくは、第1級モノアミンは、選択されたアミンとしてベンジルアミン、1−アミノアダマンタン、α−フェネチルアミンおよびエタノールアミンである。1−アミノアダマンタンが好ましい。
【0040】
部分架橋した熱可塑性材料を用いることは可能である。架橋は、重縮合反応において少量の多官能化アミンなどを用いることにより実施し得る。さらに、熱可塑性材料を調製するときに、ラジカル重合可能な基を有する少量のモノマーを用いることが可能である。ラジカル重合可能な基は、続いて重合することにより架橋され得る。部分架橋は、熱可塑性材料の機械的性質を適合化させるために用い得る。
【0041】
熱可塑性材料は、熱可塑性材料に対して40〜90重量%の量においてフィラーを含有し得る。フィラーは、望ましい放射線不透過性および機械的性質を提供する。好ましくは該材料の放射線不透過性は、少なくともアルミニウム3mm/mmである。該フィラーは、La2O3、ZrO2、BiPO4、CaWO4、BaWO4、SrF2、Bi2O3などの無機フィラーでよい。フィラーは、高分子粒子、破砕高分子などの有機フィラーでもよい。フィラーは、さらに有機および/または無機フィラーの組合せでもよい。フィラーは、好ましくは少なくともAl 3mm/mm、より好ましくは少なくともAl 5〜7mm/mm、最も好ましくは少なくともAl 7mm/mmの放射線不透過性を材料に提供する。
【0042】
好ましい実施形態では、材料は、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの極性有機溶媒に可溶性である。材料は、安定剤、可塑剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0043】
本発明によれば、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスは、通常のグッタ・ペルカ材料よりはるかに強く、可撓性であり、歯根管を調製するのに用いる器具に類似の機械的性質を有する材料から作製し得る。従って、ポイントは、曲がった領域を容易に通過することができ、最終位置に制御されて置くことができる、すなわち歯根管を調製したのと同じ長さまで入れることができる。
【0044】
通常、歯科デバイスの形成は、圧縮成形によって実施してよく、加熱モールドが、プリフォーム・ブランクの周りに圧搾される。より好ましくは、歯科デバイスの形成は、射出成形によって実施してよく、粉末またはペレットを液体状にし、モールド内に射出し、加圧下で冷却し、押し出す。従って、付加高分子を含有する熱可塑性材料は、ホッパー手段から、スクリュー手段および加熱壁手段を備える射出ユニット内に移動する。回転スクリュー手段の運動のために、材料は、射出ユニットの熱い壁手段に沿って射出ノズルの方向に移動する。熱いシリンダ壁、およびスクリュー手段によって生成するせん断力のために、材料は可塑化する。射出ノズルは、可塑化材料をダイ内に射出するように配置されている。本発明によれば、材料のガラス転移温度より上の110℃〜150℃、好ましくは120℃〜140℃まで材料が加熱され、射出ノズルにおいて射出成形されるように射出ユニットが操作される。さらに、射出圧力が400〜600バールの範囲であるように射出ユニットが操作される。材料をダイ内に射出した後、ダイを加圧下に保持することにより、モールド内の固化材料の望ましくない収縮が低減する。このようにして取得した歯科デバイスは、固化した後ダイから取り外す。
次に、以下の実施例に基づいて、本発明をより詳細に例示することにする。
【実施例1】
【0045】
608,434g(1.787mol)のビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]プロパン、216,045g(0.634mol)のN,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9および175,521g(1.153mol)のアミノアダマンタンをアルミニウム容器内で70℃で72時間、周囲温度で反応させた。こうして取得した付加ポリマーのガラス転移温度Tgは58,0℃である。バルク・ポリマーの粒子の大きさを機械的に減少させ、その粒子を射出成形法でさらに加工する。
圧力500バール、ノズル温度180℃で該ポリマーをモールド内に押し出す。
【実施例2】
【0046】
550,000g(1,616mol)のビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]プロパン、275,081g(0.808mol)のN,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9,122,991g(0.808mol)のアミノアダマンタン、2259,125gのタングステン酸カルシウム(粒径0.5μm)および20,350gのアエロジルA200をミキサ内で均一に混合し、該混合物を70℃で24時間重合する。バルク・ポリマーの粒径を低減した後、成形圧500バール、ノズル温度180℃でモールド内への押出しを実施する。こうして取得したポイントの放射線不透過性は、Al 10.4mm/mmであり、歯科閉塞ポイントとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】ネック部分に装備したストッパ手段をさらに備える本発明による歯科デバイスを示す図である。
【図1b】本発明による好ましい歯科デバイスの平滑なハンドル部分の断面を示す概略図である。
【図1c】本発明による歯科デバイスを示す図である。
【図1d】機能部分の遠位端でテーパ形閉塞ポイント部分に全体が接合する肩の部分を示す拡大図である。
【図2a】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2b】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2c】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2d】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2e】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図3】異なる閉塞ポイント部分およびハンドル部分における対応する表示部を有する歯科デバイス系を示す図である。
【図4】それぞれが過剰のシーラントを排出するための延伸チャネル部分を備える異なる閉塞ポイント部分を有する歯科デバイスのさらなる系を示す図である。
【図5】適切な歯科用椅子のサイド・トレイに配列した図4に示す歯科デバイス系の一実施形態を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスと、シーラントとを備える部品キットに関する。本発明による部品キットを用いることにより歯根管を一体として閉塞し得る。本発明は、本発明の部品キットにおいて用い得る、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスにも関する。本発明は、さらに本発明による歯科デバイスを調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯根管系全体を閉塞することは、歯内治療の第1の目標である。完全に閉塞できないことが、歯内治療の失敗の最も頻度の高い原因であり、それは以下の理由のためである。
歯根管系は複雑である。歯牙は、多数の管を含み得る。切歯は、2つの主な管を含み得る。小臼歯は、3つの主な管を含み得る。大臼歯、特に下顎大臼歯は、5つの主な管を含み得る。さらに、いずれの主な歯根管も、ループ状、フィン状、側方および付帯管を含み得る。歯内を治療する間に、3次元歯根管系は、清浄化し、均一な固体充填物によって充填しなければならない。このような管を清浄化および充填しない場合、病巣が永続化することは避けられない。病巣は、ついには炎症になり、歯牙を失うことにさえなろう。
【0003】
歯内治療において用いるための歯科用歯根管閉塞ポイントは周知である。通常の閉塞ポイントは、広い端部と、狭い端部(チップ)とを備える高分子ベースまたは金属のプレハブ錐体である。ポイントは、歯根管治療時に歯根管内に導入することにより、歯根管を完全に閉塞するような方式において清浄化し、整形した主歯根管を充填する。
【0004】
この数十年においては、歯根管シーラーと組み合わせたグッタ・ペルカ錐体が、最も普通の材料であり、側方加圧充填またはマスターポイント技法によって歯根管を充填するのに用いる。従って、歯根管シーラーを施用し、複数のグッタ・ペルカ・ポイントを挿入することにより主管を充填する。第1の閉塞ポイントを入れることにより開口先端部をシールし、多数の付属ポイントを用いて残りの管を充填する。鋭利な鋼製器具を用いてポイントを押圧し、側方にグッタ・ペルカを広げることにより主および付帯管を充填する。該器具により側方に大きな力が加えられるので、十分に注意をしないと歯牙を破壊する恐れがある。さらに、最下部のポイントは、無理に開口先端部を通り周縁組織内に押し込まれる場合があるので、炎症を起こす恐れがある。加えて、グッタ・ペルカは、押圧器具に接着することが多く、注意深く引き出さないと、該器具を取り出すときに充填物が緩んだり、移動することになろう。
【0005】
臨床成果をさらに改善し、歯根管の治療をもっと容易にかつ安全なものにするために、一方側では歯根管シーラーと空洞壁との間、および歯根管シーラーと歯根管閉塞ポイントとの間の優れた接合が、新規な応用技法によって実現されなければならない。さらに、閉塞ポイントの調製方法も、低コストで容易に実施されるものでなければならないが、その際、閉塞ポイントの品質が高いことも条件である。
【0006】
米国特許第5051093号には、一回使用の閉塞材と、多回使用の挿入用延伸器具とを備える歯根管充填デバイスが開示されている。
米国特許出願公開第2003/0045604号には、可溶性の熱可塑性歯科用歯根管錐体が開示されており、該錐体は、除去が容易であり、熱可塑性シーラーに接合され、放射線不透過性が少なくともAl 3mm/mmである。米国特許出願公開第2003/0045604号の歯科用歯根管充填錐体は、フィラーと、熱可塑性ポリマーとを含み、該熱可塑性ポリマーが、重合性ジエポキシドモノマーとアミンモノマーの重合によって生成し、前記アミンモノマーが、第1級モノアミンおよび/またはジ第2級ジアミンであり、前記フィラーが、放射線不透過性が少なくともアルミニウム3mm/mmである前記錐体の40〜90重量%を構成する。さらに、米国特許出願公開第2003/0045604号には、フィラー表面上でジエポキシドモノマーとアミンモノマーとを熱付加重合させる工程と、熱および/または加圧プロセスによって表面改質フィラーを成形(流延)する工程とを含む、歯科用歯根管充填錐体を調製するための方法が開示されている。米国特許出願公開第2003/0045604号には、歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスは教示または示唆されていない。
【0007】
国際公開第2004/115589号には、同じ材料で作製され、単一ユニットとして成形された、シャフト部分と、充填材部分とを含む歯内閉塞材が開示されている。ハンドル部分が含まれ、該ハンドル部分は、シャフト部分および充填材部分とともに単一ユニットとして一体成形してもよい。国際公開第2004/115589号には、歯内閉塞材と、特定のシーラントとを含む部品キットは開示されていない。
【特許文献1】米国特許第5051093号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0045604号
【特許文献3】国際公開第2004/115589号
【非特許文献1】J D Pecora et al.,Braz.Dent.J.12(2001)27
【非特許文献2】Gogos C.; et al Journal of Endodontics,Vol 30,No.4(2004)p.238−240
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
歯科デバイスと、歯根管を一体として閉塞するのに用い得る歯根管シーラントとを備える部品キットを提供することが、本発明の課題である。
歯科デバイスと、歯根管を閉塞するのに用いるときに歯科デバイスとの化学的相容性を有する歯根管シーラントとを備える部品キットを提供することが、本発明の課題である。
【0009】
歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、該デバイスを用いることによって歯内治療時に閉塞ポイントが容易に施用されかつ除去され、容易に製造され得る歯科デバイスを提供することが、本発明の課題である。
最後に、本発明による歯科デバイスを調製するための方法を提供することが、本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様では、本発明は、
(i)機能部分の遠位端(distal end)に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、機能部分が、
(a)閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、
(b)ハンドル部分と
を備える歯科デバイスと、
(ii)歯科用シーラント組成物と
を具備し、歯科デバイスが、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製される部品キットを提供する。
【0011】
本発明は、歯根管内で歯根管壁に接着する一体的な閉塞を形成するのに用い得る部品キットを提供する。一体的な閉塞は、本質的に均一な材料を表す。従って、歯科デバイスは、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製する。
【0012】
本発明は、ハンドリング性を容易にし、歯根管の閉塞の精度を増進するために、歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスの新規な形体および好ましい表面をも示唆する。
【0013】
本発明による歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスのハンドル部分は、オペレータの指によって、または間接的にピンセットなどの器具によってしっかりと握り得る。圧力をかけることにより、テーパ形閉塞ポイント部分は、その最終位置内に押し込む。ハンドル部分は、好ましくは、平面であり、手順の最後で該ポイントを縮小するのに用いる器具が容易にバイパスできる。ハンドル部分に好ましくは設けられた平面は、該ポイントの大きさおよびテーパを識別するための刻印用の空間をも提供する。
【0014】
本発明による歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスのネック部分は、ハンドル部分を管内部(intra−canicular)テーパ形閉塞ポイント部分と接合する。ネック部分は、テーパ形閉塞ポイント部分よりも小さい直径であってもよく、これにより手順の最後での該ポイントの縮小が容易になる。ネック部分では、シリコン止めを装備してもよく、この助けによって、テーパ形閉塞ポイント部分が歯根管の調製に用いる器具の長さと同一の最終位置に到達するように制御される。ネック部分は、その全長にわたり本質的に同じ直径を有することにより、ストッパがスライドしながら移動し、ネック部分で位置取りすることが可能になる。
【0015】
本発明による歯根管の閉塞において使用するための歯科デバイスの管内部テーパ形閉塞ポイント部分は、好ましくは、対応する歯根管器具と類似の形状にする。それは、過剰のシーラントが歯冠方向に逃げるのを可能にする軸方向の溝を備え得る。管内部テーパ形閉塞ポイント部分の表面は、歯根管シーラントが該ポイントの表面を容易かつ完全に濡らすことを可能にし、歯根管ポイントと歯根管シーラントの間の結合強度をも改良するための微細構造を好ましくは有する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、機能部分の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、機能部分が、
(a)閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、
(b)ハンドル部分と
を備える歯科デバイスを提供する。
第3の態様では、本発明は、本発明による歯科デバイスを調製するための方法であって、
(a)熱可塑性高分子材料を用意する工程と、
(b)歯科デバイスを形成する工程と
を含むことを特徴とする方法を提供する。
第4の態様では、本発明は、歯根管を充填するための本発明の歯科デバイスの使用を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による部品キットは、歯科デバイスと、歯科用シーラント組成物とを有する。歯科デバイスは、歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含む組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製する。従って、歯科デバイスの材料は、硬化シーラントと相容性である。好ましくは、歯科デバイスは、対応するシーラント組成物の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる。
【0018】
歯科用シーラントは、AH Plus(Dentsply De Trey)などのエポキシド−アミンベースの歯根管シーラントでよく、このシーラントは、歯根管の空洞壁に結合したときに4MPaの接着力を示す(J D Pecora et al.,Braz.Dent.J.12(2001)27)。シーラントが、エポキシド−アミンベースの歯根管シーラントである場合、歯科デバイス材料は、硬化されるエポキシドアミンポリマーである。
【0019】
好ましくは、シーラントの歯科デバイス材料に対する接着力は、せん断結合強度試験においてグッタ・ペルカに対するシーラントの接着力より大であり(Gogos C.; et al Journal of Endodontics,Vol 30,No.4(2004)p.238−240)、この試験では、結合面(直径3mm)が円形である歯科デバイスの2つの供試体を用い、シーラーを用いて結合した後、Gogosらが開示した条件下でZwick Z010 TNDデバイスを用いてせん断結合試験にかける。さらに、本発明の部品キットの特定の実施形態では、シーラントの歯根管壁に対する接着力は、せん断結合強度試験においてシーラントの歯科デバイス材料に対する接着力より大である(Gogos C.ら)。従って、歯科デバイスと歯根管壁の間の結合のいずれの破壊も、シーラント層と歯科デバイスの間で起きることになり、これによって、歯根管壁が継続して保護されることになろう。本発明の部品キットのさらなる特定の実施形態では、シーラントの歯根管壁に対する接着力は、最大でも、シーラントの歯科デバイス材料に対する接着力と同じである。
【0020】
歯科デバイスは、連鎖成長重合反応または逐次重合反応によって得ることができる材料から作製し得る。好ましい実施形態では、歯科デバイスは、エポキシドアミンポリマーを含有する材料から作製する。
【0021】
好ましくは、キットは、歯科デバイス系を備える。該系は、本発明による歯科デバイスの2つ以上の異なる実施形態を含み得る。該系は、各実施形態の1つまたは複数の歯科デバイスを含み得る。好ましくは、該系は、異なるテーパまたは直径を備えた閉塞ポイントを有する実施形態を含むことにより、異なる大きさおよび形体の歯根管を閉塞するのに有用である。好ましくは、歯科デバイス系は、トレイに入れて提供し、トレイでは、歯科デバイスを並べ、取外し可能なように接着することにより歯科手順において識別およびハンドリングが容易になる。
【0022】
図1aに示すように、歯科デバイスは、機能部分3の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分2を備え、機能部分が、閉塞ポイント部分2に隣接したネック部分32と、ハンドル部分33とを備える。ハンドル部分33は、平滑な形体であり、それによって刻印のための表面を提供する。さらに、ハンドル部分が平滑な形体であるために望ましくない視野障害部分が減少する。ネック部分32は、シリコンストッパなどのストッパ手段4を備える。ストッパ手段は、着色標識を備えることによりテーパ形閉塞ポイント部分2のタイプまたは大きさを示し得る。ネック部分32は、テーパ形閉塞ポイント部分2よりも直径が小さいために、望ましくない視野障害部分が減少する。さらに、治療においてテーパ形閉塞ポイント部分2を歯根管内に正しく入れた後、機能部分を除去するとき、ネック部分32の直径が小さいために切断時の効率が向上する。テーパ形閉塞ポイント部分2は、歯根管を調製するために用いる歯根管器具の形状に適合させ得る。さらに、テーパ形閉塞ポイント部分2は、過剰のシーラントを排出するための1つまたは複数の延伸チャネル部分22を備え得る。
【0023】
図1bは、本発明による好ましい歯科デバイスの平滑なハンドル部分33の断面を示す概略図である。
図1cは、ストッパ手段を備えていない本発明による歯科デバイスを示す。図1aに示す実施形態と同様に、歯科デバイスは、機能部分3の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分2を備える。機能部分3は、閉塞ポイント部分2に隣接したネック部分32と、ハンドル部分33とを備える。ネック部分32は、テーパ形閉塞ポイント部分2よりも直径が小さいために、望ましくない視野障害部分が減少する。さらに、テーパ形閉塞ポイント部分2は、過剰のシーラントを排出するための1つまたは複数の延伸チャネル部分22を備える。
【0024】
図1dは、機能部分の遠位端に全体が結合しているテーパ形閉塞ポイント部分2の肩部分を示す。テーパ形閉塞ポイント部分2は、テーパ形閉塞ポイント部分2の表面全体に分布した多数の凹部を備えた粗い表面を有する。テーパ形閉塞ポイント部分2は、過剰のシーラントを排出するための延伸チャネル部分22をも備える。
【0025】
図2は、本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する。従って、図2aに示すように、歯根管は、標準法に従って調製する。示した歯牙は、主歯根管(main root canal)100および側方管(lateral canal)101、102、103および104を有する。続いて、通常の技法によって調製済みの歯根管100の壁を歯根管シーラントでコートすることにより、図2bに例示するように歯根管100の壁上に歯根管シーラントのコーティング110を提供する。シーラントは、側方管101〜104内に部分的に侵入する。好ましい歯根管シーラントは、硬化時に、本発明の歯科デバイスの熱可塑性材料と相容性である材料を提供する。次の工程では、本発明による歯科デバイス1を歯根管100内に導入する。歯科デバイスは、ハンドル部分33によって直接手によるかまたは間接的にピンセットにより好都合に保持し得る。いずれの場合でも、歯科デバイス1の機械的特性のために、テーパ形閉塞ポイント部分2が制御され、テーパ形閉塞ポイント部分2は、歯根管内に押し込まれ、テーパ形閉塞ポイント部分2は歯根管100内の望ましい位置に到達する。侵入の深さは、ストッパ手段4に基づき容易に制御し得るが、これは、歯根管の先端から歯牙の最上端までの距離を示す位置にストッパ手段4をネック部分32に沿って配置したからである。歯根管100を調製するために用いた歯科器具から、本発明の歯科デバイス1に距離を写すことができる。本発明の歯科デバイス1を歯根管内の正しい位置に置いた後、該デバイスを切断することにより、歯根管内に永久に残るデバイスの部分をデバイスの機能部分を含む部分から分離する。切断は、好ましくは、図2dに示すような熱い器具によって実施し得る。
本発明による歯科デバイスを用いた歯根管治療の結果、閉塞ポイント部分2およびシーラントは、好ましくは図2eに示すような一体物として歯根管の永久充填物を形成する。
【0026】
図3は、各種の閉塞ポイント部分を有する歯科デバイス系の側面図を示す。該系は、本発明の歯科デバイスの3つの異なる実施形態を示す。各実施形態は、正面図、および歯科デバイスの縦軸の周りに90°回転した後の対応する図において示す。3つの異なる実施形態は、異なる閉塞ポイント部分を特徴とする。各実施形態の閉塞ポイント部分の種類または特質が、そのハンドル部分において指示されているので、本発明の適当な歯科デバイスを識別し、選択することが容易である。この図に示す実施形態は、過剰の歯科用シーラントを排出するための延伸チャネル部分を備えていない。
【0027】
図4は、各種の閉塞ポイント部分を有するさらなる歯科デバイス系の側面図を示す。該系は、本発明の歯科デバイスの4つの異なる実施形態を示す。各実施形態は、正面図において示す。過剰のシーラントを排出するための延伸チャネルの形状および深さを示す対応する断面を示す。3つの異なる実施形態は、異なる閉塞ポイント部分を特徴とする。各実施形態の閉塞ポイント部分の種類または特質が、そのハンドル部分において指示されているので、本発明の適当な歯科デバイスを識別し、選択することが容易となる。
【0028】
図5は、適切なトレイ内に配列した図4に示すような歯科デバイス系の実施形態を示す。トレイは、本発明による複数の歯科デバイスを収容するための凹部を備える。各凹部は、同じタイプの複数の歯科デバイスを収容するように適合化されている。異なる凹部の歯科デバイスは、タイプが異なる。トレイの各部分は、歯科デバイスの閉塞ポイント部分を収容し、保持するための狭いチャネルを備える。歯科デバイスのハンドル部分は、識別を容易にするために所定の位置に保持する。ハンドル部分は、施術者が容易にかつ確実に握り得るようにトレイで提供される。トレイを適切に置くことによって、歯科デバイスを見る角度を最適になし得るように、トレイでは、所定の向きで歯科デバイスを提供する。トレイ内の歯科デバイスの位置を操作しないことには施術者がハンドル部分のラベルを識別することが不可能になるような位置まで、歯科デバイスのハンドル部分が、縦軸の回りに回転しないように凹部の深さを適切にする。トレイは、プラスチック材料などの任意の材料から作製し得る。
【0029】
本発明による歯科デバイスは、好ましくは、高分子材料から作製する。該材料は、非架橋熱可塑性材料でもよい。歯科材料はまた、熱成型法に適した部分架橋材料でもよい。歯科材料のガラス転移温度は、好ましくは0℃〜150℃、より好ましくは20℃〜100℃、さらにより好ましくは35℃〜70℃の範囲である。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明による歯科デバイスのテーパ形閉塞ポイント部分は、歯内シーラントの濡れおよび接着を促進するために粗い、そうでなければ機械的もしくは化学的に改変した表面構造を有する。テーパ形閉塞ポイント部分は、過剰のシーラントを排出するための1つまたは複数の延伸チャネル部分を備え得る。
【0031】
好ましい実施形態では、ハンドル部分は、非円形断面を有する。ネック部分は、円形断面および円筒形状を有し得る。さらに、ネック部分の直径は、閉塞ポイント部分の最大直径と同じかまたはそれより小さいことが好ましい。
【0032】
本発明による歯科デバイスは、ネック部分にスライド可能に備えられているストッパ装置をさらに備え得る。
本発明による歯科デバイスを調製する方法には、特別な制限はない。必要とする大きさの生成物を成形するために通常用いる任意の方法を用い得る。その方法として、射出成形、熱圧力成形法、ラピッド・プロトタイピングなどの成形法;組成物がモールド内で重合する流延法;または本発明のデバイスをバルク材料から圧延するなどの機械的方法がある。レーザまたは水ジェットを用いる方法も、本発明による歯科デバイスを調製するために企図されている。
【0033】
好ましくは、歯科デバイスは、熱可塑性組成物に基づいて取得し得る。熱可塑性組成物は、熱可塑性ポリマーと、フィラーとを含み得る。
好ましい実施形態では、熱可塑性ポリマーは、重合可能なジエポキシドモノマーおよびアミンモノマーの重合によって形成する。該アミンモノマーは、第1級モノアミンおよび/またはジ−sec−ジアミンから選択し得る。好ましい実施形態では、重合可能な組成物は、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、ジベンジルアミン、1−アミノアダマンタンおよび/またはトリシクロデカンジアミンを含む。
【0034】
アミンモノマーが、第1級モノアミンを含有する場合、アミンモノマーとエポキシドモノマーを重合することにより、以下のスキーム1に従って、反復単位(I)を有する付加ポリマーを形成し得る。
【化1】
アミンモノマーが、ジ−sec−ジアミンを含有する場合、アミンモノマーとエポキシドモノマーを重合することにより、以下のスキーム2に従って、反復単位(II)を有する付加ポリマーを形成し得る。
【化2】
アミンモノマーが、第1級モノアミンおよびジ−sec−ジアミンを含有する場合、アミンモノマーとエポキシドモノマーを重合することにより、反復単位(I)および(II)を有する付加ポリマーを形成し得る。
上記のスキーム1および2では、Rは、ジエポキシドから形成される部分であり、以下の基から選択し得る。
【化3】
【0035】
上記のスキーム1および2では、R1は、
置換C1〜C18アルキル基、
C1〜C18ポリオキシアルキレン基、
置換または非置換C5〜C18シクロアルキル基、
置換または非置換C5〜C18アリールまたはヘテロアリール基でよく、該置換アルキル基、該置換シクロアルキル基、該置換アリール基または該置換ヘテロアリール基は、C1〜C6アルコキシ基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、−COCH3、NO2、COOC2H5、ヒドロキシル基、またはホスホン酸基やリン酸基などのリン含有基から選択される1〜3個の置換基を含んでもよい。
【0036】
上記のスキーム1および2では、R2は、
酸素および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を鎖中に含み得る置換または非置換C1〜C18アルキレン基、
酸素および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を鎖中に含み得る置換または非置換C1〜C18アルケニレン基、
酸素および硫黄原子から選択される1〜5個のヘテロ原子を環状鎖中に含み得る置換または非置換C5〜C18シクロアルキル基、
置換または非置換C5〜C18アリーレンまたはヘテロアリーレン基でよく、該置換アルキレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基は、C1〜C6アルコキシ基、F、Cl、Brなどのハロゲン原子、−COCH3、NO2、COOC2H5、ヒドロキシル基、またはホスホン酸基やリン酸基などのリン含有基から選択される1〜3個の置換基を含んでもよい。
【0037】
好ましくは、エポキシドモノマーは、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、N,N−ジグリシジルアニリン、またはΔ3−テトラヒドロフタール酸ジグリシジルエステルなどのジグリシジルエーテルの群から選択されるジエポキシドである。具体的な例として、ビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]プロパンを挙げ得る。
【0038】
好ましくは、ジ−sec−ジアミンは、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジル−3,6−ジオキサ−オクタンジアミン−1,8、N,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9、N,N’−ジベンジル−(2,2,4)/(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジシクロヘキシルエチレンジアミンおよびN,N’−ジメチル−p−キシレンジアミンから選択される。N,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9が、特に好ましい。
【0039】
好ましくは、第1級モノアミンは、選択されたアミンとしてベンジルアミン、1−アミノアダマンタン、α−フェネチルアミンおよびエタノールアミンである。1−アミノアダマンタンが好ましい。
【0040】
部分架橋した熱可塑性材料を用いることは可能である。架橋は、重縮合反応において少量の多官能化アミンなどを用いることにより実施し得る。さらに、熱可塑性材料を調製するときに、ラジカル重合可能な基を有する少量のモノマーを用いることが可能である。ラジカル重合可能な基は、続いて重合することにより架橋され得る。部分架橋は、熱可塑性材料の機械的性質を適合化させるために用い得る。
【0041】
熱可塑性材料は、熱可塑性材料に対して40〜90重量%の量においてフィラーを含有し得る。フィラーは、望ましい放射線不透過性および機械的性質を提供する。好ましくは該材料の放射線不透過性は、少なくともアルミニウム3mm/mmである。該フィラーは、La2O3、ZrO2、BiPO4、CaWO4、BaWO4、SrF2、Bi2O3などの無機フィラーでよい。フィラーは、高分子粒子、破砕高分子などの有機フィラーでもよい。フィラーは、さらに有機および/または無機フィラーの組合せでもよい。フィラーは、好ましくは少なくともAl 3mm/mm、より好ましくは少なくともAl 5〜7mm/mm、最も好ましくは少なくともAl 7mm/mmの放射線不透過性を材料に提供する。
【0042】
好ましい実施形態では、材料は、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミドなどの極性有機溶媒に可溶性である。材料は、安定剤、可塑剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0043】
本発明によれば、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスは、通常のグッタ・ペルカ材料よりはるかに強く、可撓性であり、歯根管を調製するのに用いる器具に類似の機械的性質を有する材料から作製し得る。従って、ポイントは、曲がった領域を容易に通過することができ、最終位置に制御されて置くことができる、すなわち歯根管を調製したのと同じ長さまで入れることができる。
【0044】
通常、歯科デバイスの形成は、圧縮成形によって実施してよく、加熱モールドが、プリフォーム・ブランクの周りに圧搾される。より好ましくは、歯科デバイスの形成は、射出成形によって実施してよく、粉末またはペレットを液体状にし、モールド内に射出し、加圧下で冷却し、押し出す。従って、付加高分子を含有する熱可塑性材料は、ホッパー手段から、スクリュー手段および加熱壁手段を備える射出ユニット内に移動する。回転スクリュー手段の運動のために、材料は、射出ユニットの熱い壁手段に沿って射出ノズルの方向に移動する。熱いシリンダ壁、およびスクリュー手段によって生成するせん断力のために、材料は可塑化する。射出ノズルは、可塑化材料をダイ内に射出するように配置されている。本発明によれば、材料のガラス転移温度より上の110℃〜150℃、好ましくは120℃〜140℃まで材料が加熱され、射出ノズルにおいて射出成形されるように射出ユニットが操作される。さらに、射出圧力が400〜600バールの範囲であるように射出ユニットが操作される。材料をダイ内に射出した後、ダイを加圧下に保持することにより、モールド内の固化材料の望ましくない収縮が低減する。このようにして取得した歯科デバイスは、固化した後ダイから取り外す。
次に、以下の実施例に基づいて、本発明をより詳細に例示することにする。
【実施例1】
【0045】
608,434g(1.787mol)のビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]プロパン、216,045g(0.634mol)のN,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9および175,521g(1.153mol)のアミノアダマンタンをアルミニウム容器内で70℃で72時間、周囲温度で反応させた。こうして取得した付加ポリマーのガラス転移温度Tgは58,0℃である。バルク・ポリマーの粒子の大きさを機械的に減少させ、その粒子を射出成形法でさらに加工する。
圧力500バール、ノズル温度180℃で該ポリマーをモールド内に押し出す。
【実施例2】
【0046】
550,000g(1,616mol)のビス−2,2−[4−(2,3−エポキシプロポキシ)−フェニル]プロパン、275,081g(0.808mol)のN,N’−ジベンジル−5−オキサノナンジアミン−1,9,122,991g(0.808mol)のアミノアダマンタン、2259,125gのタングステン酸カルシウム(粒径0.5μm)および20,350gのアエロジルA200をミキサ内で均一に混合し、該混合物を70℃で24時間重合する。バルク・ポリマーの粒径を低減した後、成形圧500バール、ノズル温度180℃でモールド内への押出しを実施する。こうして取得したポイントの放射線不透過性は、Al 10.4mm/mmであり、歯科閉塞ポイントとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1a】ネック部分に装備したストッパ手段をさらに備える本発明による歯科デバイスを示す図である。
【図1b】本発明による好ましい歯科デバイスの平滑なハンドル部分の断面を示す概略図である。
【図1c】本発明による歯科デバイスを示す図である。
【図1d】機能部分の遠位端でテーパ形閉塞ポイント部分に全体が接合する肩の部分を示す拡大図である。
【図2a】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2b】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2c】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2d】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図2e】本発明による歯科デバイスを用いる歯根管治療に関わる工程を例示する図である。
【図3】異なる閉塞ポイント部分およびハンドル部分における対応する表示部を有する歯科デバイス系を示す図である。
【図4】それぞれが過剰のシーラントを排出するための延伸チャネル部分を備える異なる閉塞ポイント部分を有する歯科デバイスのさらなる系を示す図である。
【図5】適切な歯科用椅子のサイド・トレイに配列した図4に示す歯科デバイス系の一実施形態を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)機能部分の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、前記機能部分が、
(a)前記閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、
(b)ハンドル部分と
を備える歯科デバイスと、
(ii)歯科用シーラント組成物と
を具備し、前記歯科デバイスが、前記歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製されることを特徴とする部品キット。
【請求項2】
前記歯科デバイスが、熱可塑性材料から作製される、請求項1に記載の部品キット。
【請求項3】
前記歯科デバイスが、熱成型法に適した部分架橋材料から作製される、請求項1に記載の部品キット。
【請求項4】
前記歯科デバイス材料のガラス転移温度が、0℃〜150℃の範囲である、請求項2または3に記載の部品キット。
【請求項5】
前記歯科デバイスの前記テーパ形閉塞ポイント部分が、粗い、または機械的もしくは化学的に改変された表面構造を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項6】
前記歯科デバイスの前記テーパ形閉塞ポイント部分が、過剰のシーラントを排出するための延伸チャネル部分を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項7】
前記歯科デバイスの前記ハンドル部分が、非円形断面を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項8】
前記歯科デバイスの前記ネック部分の直径が、前記閉塞ポイント部分の最大直径の直径と同じかまたはそれより小さい、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項9】
ストッパ手段が、前記歯科デバイスの前記ネック部分にスライド可能に備えられている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項10】
前記歯科デバイスが、成形法によって得られた、または得ることができる、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項11】
前記歯科デバイスが、射出成形、熱圧力成形法およびラピッド・プロトタイピングから選択される方法によって得られた、または得ることができる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項12】
前記歯科デバイスが、連鎖成長重合反応によって得ることができる材料から作製される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項13】
前記歯科デバイスが、逐次重合反応によって得ることができる材料から作製される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項14】
前記歯科デバイスが、エポキシド−アミンポリマーを含有する材料から作製される、請求項13に記載の部品キット。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の歯科デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の部品キット中の請求項15に記載の歯科デバイスの使用。
【請求項1】
(i)機能部分の遠位端に一体的に結合しているテーパ形閉塞ポイント部分を備える、歯根管の閉塞に使用するための歯科デバイスであって、前記機能部分が、
(a)前記閉塞ポイント部分に隣接したネック部分と、
(b)ハンドル部分と
を備える歯科デバイスと、
(ii)歯科用シーラント組成物と
を具備し、前記歯科デバイスが、前記歯科用シーラント中に含まれる1つまたは複数の硬化可能な成分を含有する組成物を硬化させることによって得ることができる材料から作製されることを特徴とする部品キット。
【請求項2】
前記歯科デバイスが、熱可塑性材料から作製される、請求項1に記載の部品キット。
【請求項3】
前記歯科デバイスが、熱成型法に適した部分架橋材料から作製される、請求項1に記載の部品キット。
【請求項4】
前記歯科デバイス材料のガラス転移温度が、0℃〜150℃の範囲である、請求項2または3に記載の部品キット。
【請求項5】
前記歯科デバイスの前記テーパ形閉塞ポイント部分が、粗い、または機械的もしくは化学的に改変された表面構造を有する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項6】
前記歯科デバイスの前記テーパ形閉塞ポイント部分が、過剰のシーラントを排出するための延伸チャネル部分を備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項7】
前記歯科デバイスの前記ハンドル部分が、非円形断面を有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項8】
前記歯科デバイスの前記ネック部分の直径が、前記閉塞ポイント部分の最大直径の直径と同じかまたはそれより小さい、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項9】
ストッパ手段が、前記歯科デバイスの前記ネック部分にスライド可能に備えられている、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項10】
前記歯科デバイスが、成形法によって得られた、または得ることができる、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項11】
前記歯科デバイスが、射出成形、熱圧力成形法およびラピッド・プロトタイピングから選択される方法によって得られた、または得ることができる、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項12】
前記歯科デバイスが、連鎖成長重合反応によって得ることができる材料から作製される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項13】
前記歯科デバイスが、逐次重合反応によって得ることができる材料から作製される、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の部品キット。
【請求項14】
前記歯科デバイスが、エポキシド−アミンポリマーを含有する材料から作製される、請求項13に記載の部品キット。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の歯科デバイス。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の部品キット中の請求項15に記載の歯科デバイスの使用。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3】
【図4】
【図5】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図2e】
【図3】
【図4】
【図5】
【公表番号】特表2008−528652(P2008−528652A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553543(P2007−553543)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000963
【国際公開番号】WO2006/082078
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000963
【国際公開番号】WO2006/082078
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(502289695)デンツプライ デトレイ ゲー.エム.ベー.ハー. (28)
【Fターム(参考)】
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