説明

歯磨剤組成物

【解決手段】 ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と塩化セチルピリジニウムとを配合してなることを特徴とする歯磨剤組成物。
【効果】 本発明の歯磨剤組成物は、塩化セチルピリジニウム由来の殺菌力が増強し、高い殺菌力を有すると共に、良好な分散性を有し、塩化セチルピリジニウムの粘膜滞留性にも優れたもので、各種剤型に調製して幅広く使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌力に優れると共に高い粘膜滞留性を有する、塩化セチルピリジニウム含有の歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔疾患の2大原因であるう触、歯周病の原因は、細菌の塊である歯垢であり、日常の口腔清掃手段として歯ブラシとその補助の目的から歯磨剤が使われている。
【0003】
歯磨剤の基本成分には、基材成分として研磨剤、湿潤剤、粘結剤、発泡剤等が配合されている。これらの成分以外には、殺菌剤、抗炎症剤、歯石抑制剤等の有効成分が配合され、その有用性が認められている。
【0004】
歯磨剤に配合される殺菌剤の中で、カチオン性殺菌剤として、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムが汎用されている。
【0005】
特に、カチオン性殺菌剤である塩化セチルピリジニウムは、比較的殺菌力が高く、洗口剤、歯磨剤に汎用されているが、歯磨剤の必須成分である、香料可溶化を目的としたノニオン界面活性剤ミセル中に取りこまれる、あるいは発泡剤のラウリル硫酸ナトリウム(SDS)等のアニオン界面活性剤とコンプレックスを形成し、殺菌力が著しく落ちる場合があり、その効果が十分に発揮されないこともよく知られている。
【0006】
その対策として、塩化セチルピリジニウムの殺菌力を維持させるため、可溶化剤であるノニオン界面活性剤を減量することが考えられたが、この場合には香料の溶存状態が不安定となり、製剤中で香料分離が発生し、安定性が著しく劣る場合がある。
【0007】
また、アニオン界面活性剤を減量すると、塩化セチルピリジニウムの殺菌力は維持させることが可能であるが、歯磨のブラッシング使用性に大きな影響を与える製剤の発泡性が低下するなど、歯磨剤としての使用感が減少するという問題があった。
【0008】
一方、塩化セチルピリジニウムの殺菌力を口腔内で十分発揮させるために口腔内での塩化セチルピリジニウムの滞留性を確保することが重要であり、検討がされてきた。
【0009】
例えば、特許文献1(特開2003−113059号公報)には、ポリビニルアルコールと塩化セチルピリジニウムを併用することで、塩化セチルピリジニウムの歯面吸着性を増強する技術が開示されている。
【0010】
しかしながら、この技術は、実際には歯磨剤組成物中の他の成分によって歯面への吸着が阻害されること、及び、狭い歯面のみに塩化セチルピリジニウムが滞留するのみであり、殺菌効果は一時的なものに止まり、殺菌効果を持続させることができないという問題点があった。
【0011】
このように、歯磨剤の有効成分として活用が望まれる塩化セチルピリジニウムであるが、ノニオン界面活性剤やアニオン界面活性剤を配合していても、塩化セチルピリジニウムの殺菌力の増強及び口腔内で比較的広い面積を有する粘膜への滞留性を強化する要望が高まっており、より優れた効果を発揮できる技術の開発が望まれる。
【0012】
なお、例えば、特許文献2(特開平7−215830号公報)には、脂肪酸ジエタノールアミドとポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はポリエチレングリコール脂肪酸モノエステルを用い、塩化セチルピリジニウムの抗菌活性を維持する技術が開示されているが、この技術は、殺菌力を向上させ得るものではない。
【0013】
また、特許文献3(特開平8−259444号公報)には、塩化セチルピリジニウムの殺菌力を増強する技術が開示されているが、口腔内での粘膜滞留技術に関する手段を開示するものではない。
【0014】
更に、特許文献4(特開平5−140106号公報)、特許文献5(特開2002−255771号公報)には、塩化セチルピリジニウムの安定化、歯面着色防止に関する技術が開示されているが、殺菌力増強及び粘膜滞留化に関する技術手段は開示されていない。
【0015】
また、塩化セチルピリジニウムの保存安定性を確保する目的で、特許文献6、7、8(特開平7−267840号公報、特開平8−133937号公報、特開2002−80334号公報)が提案されているが、殺菌力増強及び粘膜滞留性に関する技術は全く開示されていない。
【0016】
特許文献9(特開平8−259428号公報)には、ノニオン界面活性剤と塩化セチルピリジニウムを含む製剤にシクロデキストリンを配合し、殺菌力を維持すると共に、発泡性能を確保する口腔製剤に関する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、殺菌効果を維持することができるものの、単に泡立ちが増えるのみであり、粘膜滞留性を向上させる技術に関しては全く開示されていない。
【0017】
【特許文献1】特開2003−113059号公報
【特許文献2】特開平7−215830号公報
【特許文献3】特開平8−259444号公報
【特許文献4】特開平5−140106号公報
【特許文献5】特開2002−255771号公報
【特許文献6】特開平7−267840号公報
【特許文献7】特開平8−133937号公報
【特許文献8】特開2002−80334号公報
【特許文献9】特開平8−259428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、塩化セチルピリジニウム由来の殺菌力が増強し、かつ、優れた口腔内滞留性を有する、塩化セチルピリジニウムを含有する歯磨剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と、塩化セチルピリジニウムとを組み合わせて配合することにより、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤が、例えば2質量%以上という比較的多い量で配合されていても、塩化セチルピリジニウム由来の殺菌力が増強し、かつ、塩化セチルピリジニウムの粘膜滞留性が改善し、よって、高い殺菌力を有すると共に、良好な粘膜滞留性を有する歯磨剤組成物を得ることができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0020】
本発明における塩化セチルピリジニウム由来の殺菌能の向上は、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上を、塩化セチルピリジニウムに併用して配合することで、これら両成分が相互作用して、細菌、粘膜への吸着滞留性が向上し、それ故、殺菌効果、粘膜滞留効果が増強したものと推定される。
【0021】
従って、本発明は、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と塩化セチルピリジニウムとを配合してなることを特徴とする歯磨剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の歯磨剤組成物は、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と塩化セチルピリジニウムを配合したことで、塩化セチルピリジニウム由来の殺菌力が増強し、高い殺菌力を有すると共に、良好な分散性を有し、塩化セチルピリジニウムの粘膜滞留性にも優れたもので、各種剤型に調製して幅広く使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨剤組成物は、練歯磨、液状歯磨、液体歯磨等の歯磨類として調製できるもので、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と、塩化セチルピリジニウムとを配合してなるものである。
【0024】
本発明に用いられるゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート、ジメチルヒドロジャスモネートの配合量は、それぞれ組成物全体の0.00001〜0.01%(質量%、以下同様)、特に0.00005〜0.001%の範囲であることが、使用感の点から好ましい。それぞれの化合物の配合量が0.00001%に満たないと満足な配合効果が得られず、塩化セチルピリジニウムの殺菌能が充分に発揮されない場合があり、0.01%を超えると独特の刺激感が発現し、使用感に劣る場合がある。
【0025】
更に、本発明において、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上の化合物の合計配合量は、組成物全体の0.00002〜0.02%、特に0.00006〜0.002%、とりわけ0.00008〜0.0005%の範囲であることが、製剤安定性の面から好ましい。合計配合量が0.00002%未満では、十分な殺菌能を発揮できない場合があり、0.02%を超えると、独特の刺激感が発現し、使用感に劣る場合がある。
【0026】
本発明の歯磨剤組成物において、塩化セチルピリジニウムの配合量は、殺菌力発揮の観点から、組成物全体の0.001〜0.1%が好ましく、特に0.01〜0.05%が好ましい。配合量が0.001%より少ないと、殺菌能が充分発揮されない場合があり、0.1%を超えると独特の苦味が発現し、使用感に劣る場合がある。
【0027】
本発明の歯磨剤組成物は、その剤型に応じ、上記必須成分に加えて任意成分としてその他の添加剤を配合できる。具体的には、歯磨剤組成物に通常配合される研磨剤、湿潤剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、酵素剤、各種有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合して製造することができる。
【0028】
ここで研磨剤としては、シリカゲル、沈降シリカ、アルミノシリケート、ジルコノシリケート等のシリカ系研磨剤、第2リン酸カルシウム2水和物及び無水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられるが、特に沈降シリカ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等が好適に使用される。
これら研磨剤の配合量は、組成物全体の4〜60%、特に8〜45%とすることが好ましい。
【0029】
湿潤剤としては、ソルビット、グリセリン、プロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット等、粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、カーボポール、グアガム、アルギン酸ナトリウム、カチオン化セルロース、モンモリロナイト、ゼラチン等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を配合し得、具体的にはラウリル硫酸ナトリウム、α―オレフィンスルホン酸ナトリウム、N−アシルサルコシネート、N−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−アシルタウレート、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、プルロニック、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。界面活性剤の配合量は、組成物全体の0.1〜5%とすることができる。
【0031】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0032】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等、各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第一錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、オルトリン酸カリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、α−ビサボロール、イソプロピルメチルフェノール、クロロヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、アミラーゼ、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、オウバクエキス、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、着色剤(色素)としては、青色1号、黄色4号、二酸化チタン等が例示される。これら配合量は通常量とすることができる。
【0033】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨剤組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0034】
また、配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、組成中に0.000001〜1%配合するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、組成中に0.1〜2.0%配合するのが好ましい。
【0035】
本発明の歯磨剤組成物を収容する容器の材質は特に制限されず、通常、歯磨剤組成物に使用される容器を使用できる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチック容器等が使用できる。
【実施例】
【0036】
以下、実験例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
【0037】
〔実験例〕
表1〜4に示す組成の歯磨剤を常法により調製し、下記方法で殺菌力、粘膜滞留性を評価した。なお、香料は、表5に示す組成のものを使用した。結果を表1〜4に示す。
【0038】
殺菌力試験方法
表1〜4に示す歯磨剤組成物を常法により調製した後、各歯磨の2段階希釈(最低希釈度は7倍)の検体希釈培地をTHB培地(Bacto社製)にて調製した。その後、各々の検体希釈培地4mLに、前培養済みの菌液(ストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans ATCC25175))20μLを添加し、37℃で24時間嫌気培養した。培養後、細菌の生育の有無を肉眼で判定した。なお、殺菌力は、細菌の生育がなかった最高希釈度で示した。
【0039】
粘膜滞留量評価法
被験者の口腔を軽く洗浄後、頬粘膜を数回ブラッシング(ハブラシ;ふつう)し、毛先に付着した粘膜組織を採取し、採取した粘膜組織を生理食塩水100mLに分散した。試験管に粘膜組織分散液を均一に5mLずつ分注し、粘膜分散液とした。
次に、表1〜4に示す組成で調製した歯磨剤組成物1.0gに5mLの生理食塩水を加え、分散後、遠心上清液4mLを5mLの粘膜分散液に加え、37℃で30分間インキュベーションした。その後、4000rpmで10分間遠心分離を行ない、沈殿物を採取した。5mLの生理食塩水で同様に遠心洗浄操作を2回行なった後、抽出溶媒*5mLを混合後、同様に遠心を行ない、上清を採取し、試料とした。
試料溶液及び別途調製した標準塩化セチルピリジニウム溶液50μLにつき、次の条件で液体クロマトグラフ法により試験を行い、粘膜に滞留した塩化セチルピリジニウム量を測定した。
*抽出溶媒:無水過塩素酸ナトリウム1gを適量の水に溶かし、リン酸0.4gを加え
、更に水を加えて50mLとした。この液にエタノール(99.5%)を
150mL加え、混和した。
【0040】
試験条件:
検出器;紫外吸光光度計(波長:265nm)
カラム;内径4.6mm、長さ15cmのステンレス管にシリコーン樹脂で被膜処理し、
スルホン基を化学結合させた5μmの液体クロマトグラフ用シリカゲルを充てん
した((株)資生堂製 CAPCELL PAK SCX UG80)。
カラム温度;35℃付近の一定温度
移動相;メタノール/無水過塩素酸ナトリウム溶液(197gを水を加えて10000m
Lとしたもの)混液(3:1)。
流量;塩化セチルピリジニウムの保持時間が約9分になるように調整した。
【0041】
判定基準:
×:塩化セチルピリジニウム滞留量が10μg未満/試験管当たり。
△:塩化セチルピリジニウム滞留量が10μg以上30μg未満/試験管当たり。
○: 塩化セチルピリジニウム滞留量が30μg以上/試験管当たり。
総合評価:
×:殺菌力(殺菌力の最高希釈度)が2560倍未満又は塩化セチルピリジニウムの滞
留性評価が×である。
△:殺菌力(殺菌力の最高希釈度)が2560倍未満又は塩化セチルピリジニウムの滞
留性評価が△である。
○:殺菌力(殺菌力の最高希釈度)が2560倍で、かつ、塩化セチルピリジニウムの
滞留性評価が○である。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
表1〜4の結果から明らかなように、ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と塩化セチルピリジニウムを配合した歯磨剤組成物は、殺菌力が増強していると共に、粘膜滞留性が高いことが明らかとなった。
【0047】
一方、塩化セチルピリジニウムを含まない場合、塩化セチルピリジニウムにゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる1種類のみを併用して配合した場合は、殺菌力、粘膜滞留性ともに効果の低いことが明らかとなった。
【0048】
【表5】

なお、表5中の香料組成の配合量は%(質量%)である。
【0049】
【表6】

なお、表中の配合量(部)は質量部である(以下、同様)。
【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
【表10】

【0054】
【表11】

【0055】
下記組成の歯磨剤組成物を常法により調製し、上記実験例と同様に評価したところ、いずれも殺菌力が高く、口腔内滞留性に優れていることが確認された。
【0056】
〔実施例1〕
塩化セチルピリジニウム 0.02%
ゲルマクレン−D 0.00002
エチレンブラシレート 0.00001
ゲラニルイソブチレート 0.00005
ジメチルベンジルカルビニルアセテート 0.00003
フェノキシエチルイソブチレート 0.00001
ジメチルヒドロジャスモネート 0.00005
無水ケイ酸 20
ポリエチレングリコール#400 3
キサンタンガム 0.9
ポリアクリル酸ナトリウム 0.4
70%ソルビトール 35
サッカリンナトリウム 0.22
フッ化ナトリウム 0.22
酸化チタン 0.4
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
イプシロンアミノカプロン酸 0.03
香料A 1.4
ラウリル硫酸ナトリウム 2.7
精製水 バランス
計 100%
【0057】
〔実施例2〕
塩化セチルピリジニウム 0.02%
ゲルマクレン−D 0.00004
エチレンブラシレート 0.00002
ゲラニルイソブチレート 0.00005
ジメチルベンジルカルビニルアセテート 0.00003
フェノキシエチルイソブチレート 0.00004
炭酸カルシウム 35
カルボキシメチルセルロースナトリウム 1
プロピレングリコール 3
70%ソルビトール 35
サッカリンナトリウム 0.01
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
トラネキサム酸 0.05
香料B 1.2
ラウリル硫酸ナトリウム 2.2
精製水 バランス
計 100%
【0058】
〔実施例3〕
塩化セチルピリジニウム 0.02%
ゲルマクレン−D 0.00006
エチレンブラシレート 0.00001
ゲラニルイソブチレート 0.00007
ジメチルベンジルカルビニルアセテート 0.00005
リン酸水素カルシウム・2水和物 40
カラギーナン 0.6
アルギン酸ナトリウム 0.8
70%ソルビトール 25
キシリトール 5
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
香料C 1.1
ラウリル硫酸ナトリウム 2.0
精製水 バランス
計 100%
【0059】
〔実施例4〕
塩化セチルピリジニウム 0.02%
ゲルマクレン−D 0.00005
エチレンブラシレート 0.00002
ゲラニルイソブチレート 0.00008
水酸化アルミニウム 45
キサンタンガム 0.8
カラギーナン 0.7
プロピレングリコール 3
70%ソルビット 25
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 3
サッカリンナトリウム 0.15
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.76
パラオキシ安息香酸ブチル 0.1
香料D 1.4
精製水 バランス
計 100%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマクレン−D、エチレンブラシレート、ゲラニルイソブチレート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、フェノキシエチルイソブチレート及びジメチルヒドロジャスモネートから選ばれる2種以上と塩化セチルピリジニウムとを配合してなることを特徴とする歯磨剤組成物。

【公開番号】特開2006−16309(P2006−16309A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192819(P2004−192819)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】