説明

歯磨剤組成物

【課題】歯と歯のすきまの表面の着色除去能に優れる歯磨剤組成物の提供。
【解決手段】次の成分(A)及び(B):
(A)吸油量10〜125mL/100g及び平均粒子径1〜30μmであり、ゆるみ見かけ比重0.15〜0.3g/cm3及び固め見かけ比重0.25〜0.5g/cm3を有する研磨性シリカ 10〜30質量%、
(B)30メッシュ篩を通過するが200メッシュ篩を通過しない顆粒 0.5〜30質量%
を含有する歯磨剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯と歯のすきまの表面の着色除去能に優れる歯磨剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に歯の着色を除去する方法としては、過酸化物等により歯を漂白したり、ポリエチレングリコール等で着色物を溶かしたり、着色を抑制する成分、例えばポリリン酸等で歯に対する着色物の結合を弱めたることで化学的に着色を除去する方法と、歯磨き剤に研磨性の粒子を配合して歯の表面を物理的に研磨する方法がある。
【0003】
後者の物理的な研磨に関しては、通常歯の表面に付着する歯垢等を除去することにより、表面の着色も除去される結果となり、歯を傷つけずに歯の表面の歯垢、着色等の汚れを除去することは難しい。
【0004】
そこで、従来より、崩壊性顆粒を歯磨剤に配合すると、粉末の研磨剤を配合した場合よりも高い歯垢除去効果を有しながら、使用時に顆粒の崩壊により歯の表面をほとんど傷付けないことが知られており(特許文献1)、歯垢の除去力向上などを目的として、歯磨剤に顆粒を配合することが行われている。
【0005】
また、従来より研磨性粉体が歯垢除去の目的で歯磨剤に配合されており、顆粒と研磨性粉体との併用も報告されている(特許文献2及び3)。
【特許文献1】特開平1−299211号公報
【特許文献2】特開平10−316547号公報
【特許文献3】特開2006−69983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、顆粒と研磨性粉体を併用し物理的な効果を高めることで、歯垢だけでなく歯の表面の着色も除去できると考えられるが、研磨性粉体の硬度が低すぎると歯垢除去能が十分でなく、その硬度が高すぎると歯の表面を傷付けてしまうという問題は十分解決されていない。これを解決するため研磨性粉体の硬度を調節しても、歯のすきまの歯垢や歯の表面に対する着色除去効果は十分向上しなかった。このように、着色による汚れは、歯垢よりもより強固に歯に付着しており、歯の表面を傷つけずに汚れを除去することは難しく、特に、歯と歯のすきまの表面の着色除去を効果的に行うことは極めて困難であった。
従って、本発明の目的は、歯の表面を傷付けることなく、歯と歯のすきまの表面の着色除去能に優れる歯磨剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、顆粒と併用する研磨性粉体の特性について種々検討したところ、研磨性シリカのうち、特にゆるみ見かけ比重と固め見かけ比重の両者が一定の範囲にある研磨性シリカを用いた場合、歯ブラシによるブラッシング時に、歯ブラシを介して歯と歯のすきま部分の奥の表面に砕けた顆粒や当該研磨性シリカがしっかりかみこんで、歯と歯のすきまの歯の表面に力が伝わり、歯、及び歯のすきま部分を含めた表面の着色除去能に優れ、かつ歯を傷付けない歯磨剤が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)吸油量10〜125mL/100g及び平均粒子径1〜30μmであり、ゆるみ見かけ比重0.15〜0.3g/cm3及び固め見かけ比重0.25〜0.5g/cm3を有する研磨性シリカ 10〜30質量%、
(B)30メッシュ篩を通過するが200メッシュ篩を通過しない顆粒 0.5〜30質量%
を含有する歯磨剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の歯磨剤組成物を用いれば、歯の表面だけでなく歯のすきま部分の表面にまで研磨性シリカと砕けた顆粒がしっかりとかみこむのでブラッシングにより、特に歯のすきま表面の着色を効率的に除去することができ、歯を傷付けることがほとんどない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で用いる研磨性シリカ(A)は、10〜125mL/100gの吸油量を有するが、この範囲であると歯のすきまの着色除去能及び歯の摩損防止に有効である。研磨性シリカの場合、吸油量が少なくなると着色除去能を有すると同時に、歯の表面を傷付けてしまう傾向がある。一方、吸油量が多いものは、着色除去能が十分でない。当該吸油量は、20〜100mL/100g、さらに40〜80mL/100gが好ましい。ここで吸油量は、JIS K5101に準拠して測定する。
【0011】
また研磨性シリカの平均粒子径は、1〜30μmであり、着色除去効果の点から2〜25μmが好ましく、さらに3〜20μm、特に5〜15μmが好ましい。平均粒子径は、粒子径が大きすぎると、歯の隙間に入り難く、また小さすぎると着色除去能が十分でなく、いずれの場合も効果が著しく低下する。
【0012】
さらに、本発明で用いる研磨性シリカは、ゆるみ見かけ比重0.15〜0.3g/cm3及び固め見かけ比重0.25〜0.5g/cm3を有するものである。ここで、ゆるみ見かけ比重及び固め見かけ比重は、粉体の圧縮度を求めるための粉体物性の測定値である。ゆるみ見かけ比重は、粉体を自然落下することで定められた容量のカップへ試料を充填し、秤量することで導き出される測定値であって、粉体を自然落下させた状態の充填密度を示すものである。また、固め見かけ比重は、ゆるみ見かけ比重を測定した充填試料をタッピングすることで脱気し、最密充填された状態の見かけ密度である。これらの比重は、ASTMの規格に従って測定でき、測定装置としては粉体特性評値装置PT−S(ホソカワミクロン(株))等を用いることができる。本発明においては、これらの測定値が一定の範囲にある研磨性シリカを用いることにより、シリカ粒子の硬さと表面状態から、歯のエナメル質表面を研磨せずに歯のすきまの着色除去能が向上することを見出した。
【0013】
研磨性シリカのゆるみ見かけ比重及び固め見かけ比重が、これらの範囲であると、歯のすきまの着色除去能が良好である。ゆるみ見かけ比重は、0.18〜0.29g/cm3がより好ましく、0.22〜0.28g/cm3が特に好ましい。固め見かけ比重は、0.35〜0.49g/cm3がより好ましく、0.4〜0.48g/cm3が特に好ましい。
【0014】
これらの特性を有する研磨性シリカ(A)としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、グルコノシリケート等が挙げられ、その市販品としては、Zeodent 124、Zeodent 103(ヒューバー社)等が挙げられる。
【0015】
研磨性シリカ(A)の含有量は、着色除去効果及び歯の摩損防止の点から10〜30質量%が好ましく、さらに12〜25質量%、特に14〜25質量%が好ましい。
【0016】
本発明に用いられる顆粒(B)は、30メッシュ篩(JIS規格)を通過するが200メッシュ篩(JIS規格)を通過しない顆粒である。また、当該顆粒の粒子径は75〜500μmである。前記研磨性シリカ(A)とこの顆粒(B)とを併用することにより、歯のすきまの着色除去能が向上し、かつ歯を傷付けることのない歯磨剤が得られる。
【0017】
このような顆粒としては、例えば、一次粒子を造粒して得られる顆粒として特公平06−021053号に記載された水不溶性粉末材料を水不溶性無機結合剤で結着させて得られる顆粒、特許3170250号に記載された炭酸カルシウムの微細粒子のみを凝集させて得られる顆粒、特開平04−243815号に記載された水不溶性粉末材料を水不溶性有機結合剤で結着させて得られる顆粒が挙げられる。
また、一次粒子を凝集して得られる顆粒として、例えば特開平09−12436号に記載されたBET法による比表面積が150〜450m2/gである湿式法シリカ顆粒などを挙げることができる。
【0018】
本発明においては、歯磨きを行う過程で崩壊する顆粒であることが必要であり、使用感の点からは顆粒1個当たり0.1〜30gの荷重を加えたときに崩壊する崩壊強度を有するものが好ましい。また、顆粒にする成分としては、炭酸カルシウム又は無水ケイ酸を主成分として含む顆粒であることが好ましい。顆粒の含有量は、歯磨剤組成物全体中に0.5〜30質量%であり、好ましくは1〜25質量%、さらに好ましくは2〜20質量%程度である。
【0019】
また、本発明においては、歯のすきまの着色除去効果の点から、成分(A)と成分(B)の含有質量比((A)/(B))は0.33〜60であるが、好ましくは0.5〜50、さらに1〜30、特に3〜15が好ましい。このような含有比にした場合に特に研磨性シリカの前記特有の作用と、顆粒の崩壊に基づく着色除去効果とが相乗的に増強される。
【0020】
本発明の歯磨剤組成物には、さらに(C)水不溶性有機粉体を配合することにより、歯の着色防止効果が向上する。水不溶性有機粉体としては、天然系水不溶性有機粉体や合成系水不溶性有機粉体粉末が挙げられる。水不溶性有機粉体としては、例えば粉末セルロース、水不溶性デンプン、水不溶性寒天、水不溶性カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの水不溶性有機粉体は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
粉末セルロースとしては、パルプ粉末、不溶性粉末セルロース、粉末α−セルロース、パルプ等のセルロース類を化学処理して不溶化したものを粉砕したもの等を1種又は2種以上使用することができる。歯垢及び着色除去効果の点から粉末セルロースの平均重合度は、350以上が好ましく、より好ましくは350〜2250、さらに好ましくは440〜2250である。また、粉末セルロースは、平均粒径10〜300μmの非造粒粉末セルロースであることが好ましく、さらに好ましくは10〜100μmである。
【0021】
水不溶性有機粉体の含有量は、歯磨剤組成物全体中に0.2〜4質量%が好ましく、歯垢及び着色除去効果の点からは0.4質量%以上が好ましく、組成物の使用感の点からは3質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。
【0022】
本発明の歯磨剤組成物を製造する際には、水不溶性有機粉体は、粉体として配合しても、水、低級アルコール、多価アルコールなどの液体に分散させた分散液として配合してもよい。低級アルコールとしては、エタノール、イソプロパノールなどを例示することができ、多価アルコールとしては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどを例示することができる。製造する際には、水、低級アルコール、多価アルコールなどの液体に分散させた分散液を用いるのが好ましい。
【0023】
本発明の歯磨剤組成物には、さらに着色除去効果を向上させる目的で、ポリエチレングリコールを配合することができる。本発明に用いるポリエチレングリコールは、平均分子量200〜1000が好ましく、その含有量は、歯磨剤組成物全体中に好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜8質量%、特に好ましくは3〜7質量%である。
【0024】
本発明の歯磨剤組成物には、粘結剤を配合するのが好ましい。粘結剤として、例えば、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ペクチン、トラガントガム、アラビアガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体からなる群から選ばれる2種以上を配合することが好ましい。粘結剤の含有量は、歯磨剤組成物全体中に、通常0.1〜3質量%程度、好ましくは0.2〜2.0質量%程度である。
【0025】
本発明の歯磨剤組成物には、前記成分の他、例えば発泡剤、発泡助剤、湿潤剤、甘味剤、pH調整剤、香料、保存料、酵素、殺菌剤、薬効成分、顔料、色素等を適宜含有させることができる。
【0026】
湿潤剤としては、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、キシリトール、マルチット、ラクチット、トレハロース等が好適に用いられる。
【0027】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等が挙げられる。
【0028】
pH調整剤としては、例えば、リン酸及びその塩(リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウムなど)、クエン酸及びその塩(クエン酸ナトリウム等)、リンゴ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、アスパラギン酸及びその塩、コハク酸及びその塩、グルクロン酸及びその塩、フマル酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウムなどが挙げられる。pH調整剤の含有量は、所望のpHとなる限り特に制限されないが、組成物全体中に、好ましくは0.01〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%程度である。本発明の組成物のpHは、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常4〜10程度である。
【0029】
香料としては、l−メントール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、ペパーミント油、スペアミント油、オシメン、n−アミルアルコール、シトロネロール、α−テルピネオール、サリチル酸メチル、メチルアセテート、シトロネオールアセテート、シネオール、リナロール、エチルリナロール、ワニリン、チモール、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、桂皮油、ピメント油、シソ油、丁子油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0030】
また、発泡剤としては、アニオン界面活性剤や非イオン界面活性剤を配合することができる。
アニオン界面活性剤としては、例えばアシルグルタミン酸ナトリウム、アシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、N−メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩等が挙げられる。これらのアニオン界面活性剤における疎水基のアルキル基、アシル基は炭素数6〜18、特に10〜14のものが好ましい。また、その塩としてはナトリウム塩が好ましい。アニオン界面活性剤としては、発泡性が良く、また、安価に入手可能な点からアルキル硫酸エステル塩が特に好ましい。
アニオン界面活性剤は、本発明の歯磨剤組成物中に0.1〜5質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.2〜2質量%である。
【0031】
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシアルキレン付加系界面活性剤、アミンオキサイド系界面活性剤、モノ又はジエタノールアミド系界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを挙げることができる。この中でもソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルが好ましく、モノステアリン酸デカグリセリン、モノミリスチン酸ペンタグリセリン等のポリグリセリン脂肪酸エステルが特に好ましい。本発明ではこれらを1種以上用いることができる。
非イオン界面活性剤の含有量は、本発明の歯磨剤組成物中に0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.2〜10質量%である。
【0032】
また、その他の各種有効成分としては、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、トラネキサム酸、イプシロンアミノカプロン酸、酢酸dl−トコフェロール、アズレン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、ゼオライト、デキストラナーゼ、ムタナーゼ、アミラーゼ、メトキシエチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、ジヒドロコレステロール、クエン酸亜鉛、トウキ、オウバク、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、トリクロサン、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、トリクロロカルバニリド等が挙げられる。
【0033】
水の含有量は、剤形などに応じて適宜設定することができるが、組成物全体中に、通常0〜60質量%程度、好ましくは10〜50質量%程度である。
【実施例】
【0034】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、特に断らない限り、「%」は「質量%」を示す。
【0035】
実施例1〜6及び比較例1〜5
表1に記載の処方で練歯磨を調製した。
(1)歯のすきま(歯間部)表面の着色除去効果評価法
図1に示すように、R4の曲面同士を向き合わせたアルミブロックによる歯間部モデルを作成し、この歯間部モデルの表面にモデル着色物としてえんぴつ硬度2Hの印刷インク(素材:カーボンブラック及びオレフィン樹脂)を厚さ10μmでシルクスクリーン印刷したテープ(素材:OPP、厚さ:25μm)を取り付けた。図2に示すように作成したモデル着色物の付着した歯間部モデル(アルミブロック)を試験台に装着し、ブラッシングマシーンを用いて表1の歯磨剤の各々による刷掃を行った。結果を合わせて表1に示す。
刷掃条件は、荷重200g、速度120rpm、振幅30mm、刷掃回数120回として、歯ブラシ(花王:チェックスタンダード)を使用し評価した。(1/2)*πR4×幅15mmの領域を歯間部の評価領域とし、刷掃後にビデオテープ磁性層を展開して、デジタルカメラで撮影すると共に画像解析した。画像解析によって、評価領域において印刷インクが剥がれて印刷前のテープが露出した(白くなった)部分の面積(mm2)を計算して、歯間部における着色汚れ除去率を評価した。評価結果は、比較例1による効果を基準(100%)とし、これに対する除去率の相対値で示した。
【0036】
(2)象牙質摩損性評価法
図3に示すように、ブラッシングマシーンの試験台の上に歯の象牙質とほぼ同等の硬さと考えられるアクリル製の板を取り付け、表1の歯磨剤を塗布した後、歯ブラシ(花王:チェックスタンダードの毛束2列植毛処理品)による刷掃を行った(図4)。
刷掃条件は、荷重200g、速度120rpm、振幅30mmに設定し、刷掃回数はそれぞれ480回、720回及び960回とした。なお、120回ごとにはみ出た歯磨剤を整え、また必要な場合付け足すという調整を加えた。擦掃回数ごとにブラッシングによって削れたアクリル板の擦掃痕断面の3Dデータを高速表面形状スキャニングシステム(三谷商事;NAZCA-3D)にて生成し、解析ソフト(三谷商事;WinROOF)で定量化することによって断面積(μm2)を計算した。擦掃回数と断面積の間には高い正の相関が得られたので、擦掃回数当たりの断面積変化を象牙質摩損性の指標とした。評価結果は、比較例1による値を基準(100%)とし、これに対する相対値で示した。結果を合わせて表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
表1及び表2から明らかなように、歯のすきま表面の着色除去効果に優れ、かつ歯の摩損防止効果に優れているのは、顆粒(B)に加えて、前記ゆるみ見かけ比重と固め見かけ比重が特定の範囲にある研磨性シリカを配合した場合であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】歯間部の着色汚れ除去効果試験に用いた歯間モデル及び歯間部評価領域を示す概念図である。
【図2】歯間部の着色除去効果評価時のブラッシングマシーンの図である。
【図3】象牙質摩損性評価時のブラッシングマシーンの図である。
【図4】象牙質摩損性評価に用いた歯のモデルを示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B):
(A)吸油量10〜125mL/100g及び平均粒子径1〜30μmであり、ゆるみ見かけ比重0.15〜0.3g/cm3及び固め見かけ比重0.25〜0.5g/cm3を有する研磨性シリカ 10〜30質量%、
(B)30メッシュ篩を通過するが200メッシュ篩を通過しない顆粒 0.5〜30質量%
を含有する歯磨剤組成物。
【請求項2】
成分(A)と成分(B)の含有比((A)/(B))が0.33〜60である請求項1記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
さらに(C)水不溶性有機粉体を0.2〜4質量%含有するものである請求項1又は2記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
さらにポリエチレングリコールを含有するものである請求項1〜3のいずれか1項記載の歯磨剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−51759(P2009−51759A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218967(P2007−218967)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】