説明

歯磨剤

【課題】苦味や刺激がなく、より高い使用感、特に清涼感や爽快感に優れた歯磨剤の提供。
【解決手段】バラ花びら抽出物および/またはバラ花びら精油を配合することを特徴とする歯磨剤。特に、バラ花びら抽出物がバラ花びら熱水抽出物であること、全質量に対してバラ花びら抽出物の配合量が0.01〜1質量%であること、また、バラ花びら精油が、バラの花びらの水蒸気蒸留物であること、全質量に対してバラ花びら精油の配合量が0.001〜1%であることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯磨剤に関し、更に詳細には、バラ花びら抽出物および/またはバラ花びら精油を含有する使用時の爽快感の高い歯磨剤に関する。
【背景技術】
【0002】
歯磨剤は、種々の成分より構成されているが、口腔内で使用するため、不快な味やにおいをマスキングし、さらに清涼感や爽快感を与えることを目的に、香料を配合することが一般的である。
【0003】
この香料は、使用時に鼻腔や口腔で香り、味として感知されることにより効果を発揮するものであり、従来、歯磨剤に添加される香料としては、メントール、ペパーミントオイル、スペアミントオイル、カルボン、アネトール等のミント系香料がよく用いられてきた(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、ミント系香料は、歯磨剤にある程度の清涼感をもたらすが、強い清涼感を付与するために多くの量を添加すると、逆に苦みや刺激を引き起こすという問題があった。
【0005】
また植物精油、例えば、チモール、メントール、サリチル酸メチル(冬緑油)、ユーカリプトール、カルバクロール、樟脳、アネトール、カルボン、オイゲノール、イソオイゲノール、リモネン、オシメン、n−デシルアルコール、シトロネル、α−サルピネオール、酢酸メチル、シトロネリルアセテート、メチルオイゲノール、シネオール、リナロール、エチルリナロール、サフロラバニリン、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シナモン油、ピメント油、ローレル油、セダーリーフ油、クローブ油などの植物精油の殺菌作用を期待した殺菌歯磨剤が考案されている(特許文献2)。しかし、これらも殺菌作用が十分でなかったり、苦みや刺激が強かったり、味覚が劣っていたりして、使用感の優れるものではなかった。
【0006】
さらに、皮膚再生、傷の縮小及び復元、炎症に有効であると報告されたローズシードオイルを1〜6%添加した歯磨剤も考案されているが、大量のローズシードオイルの添加は味覚が劣り、使用感の優れるものではなかった(特許文献3)。
【0007】
【特許文献1】特開平8−301743号公報
【特許文献2】特表平10−503196号公報
【特許文献3】特表2002−539146号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、苦味や刺激がなく、より高い使用感、特に清涼感や爽快感に優れた歯磨剤を提供することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、歯磨剤基剤にバラの花びら抽出物や、バラの花びら精油を配合することにより、刺激を与えることなく、清涼感や爽快感等の使用感が向上することを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明は、バラ花びら抽出物および/またはバラ花びら精油を配合することを特徴とする歯磨剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバラ花びら抽出物は、使用時に苦みや刺激を引き起こすことなく、歯磨剤に配合した際に口腔内に高い清涼感や爽快感等を付与することができるものである。
【0012】
特に、実質的に界面活性剤を含有しないような歯磨剤において、バラ花びら抽出物やバラ花びら精油を配合することにより、通常の歯磨き時間であっても爽快感等を与えることができると共に、既に報告されているバラ花びら抽出物の抗アレルギー作用や抗菌作用も期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の歯磨剤は、一般の歯磨剤基剤中に、バラ花びら抽出物および/またはバラ花びら精油を配合したものである。
【0014】
本発明で用いるバラ花びら抽出物は、バラの花びらを水若しくはアルコール等の水性溶媒またはこれらの混合溶媒で抽出したものであり、好ましくは、60℃以上、特に80℃から100℃の熱水によって抽出されたものである。
【0015】
この抽出操作において、原料として利用されるバラの花びらには、特に制約はないが、観賞用バラよりも野生種のバラ、例えば、ロサ・ケンテフォーリア(Rosa centiforia)、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、ロサ・ダマスカス(Rosa damascena)等の花びらを利用することが好ましい。
【0016】
上記のバラ花びら抽出物は、たとえば、固形物中にオイゲニインを0.3mg/g以上、ポリフェノールを3%以上含むものが好ましく、オイゲニインを0.6mg/g以上、ポリフェノールを7%以上含むものがさらに好ましい。
【0017】
本発明で使用するバラ花びら抽出物は、例えば、熱水抽出物を濃縮した状態で使用しても、あるいはさらに乾燥させたものや、熱水抽出物やその濃縮物を、デキストリン、トレハロース、ブドウ糖などの適当な担体と混合して、凍結乾燥法やスプレードライ法などにより固形化したものであっても良く、何れも歯磨剤中に配合することができる。また、バラ花びら抽出物は、例えば、ローズクリスタ((株)東洋発酵社製)等として既に市販されているので、これを利用しても良い。
【0018】
本発明の歯磨剤における、バラ花びら抽出物の配合量は、歯磨剤全質量に対して0.01〜1質量%(以下、単に「%」で示す)であることが好ましく、0.05〜0.5%であることがさらに好ましい。
【0019】
上記のバラ花びら抽出物は、既に抗アレルギー作用、美白作用、抗菌作用が報告されたものである。したがって、このバラ花びら抽出物を含有する本発明の歯磨剤は、口腔内で清涼感、爽快感を与えるのみならず、IgE−IgE受容体結合阻害活性、ヒスタミン遊離抑制作用などにより、くしゃみ、鼻水、かゆみを抑える作用があり、抗アレルギー作用が期待されている。また、強い抗菌作用があるので、菌を減らすことにより、炎症を改善できることが期待されている。
【0020】
一方、本発明の歯磨剤において、使用されるバラ花びら精油は、バラの花びらを水蒸気蒸留に付すことにより得られるもので、ローズオイルとも言われるものである。このバラ花びら精油は、一般に市販されており、これらを適宜購入し、使用することができる。
【0021】
本発明において、バラ花びら精油の配合量は、歯磨剤全質量に対して0.001〜1%が好ましく、0.005〜0.05%であることがさらに好ましい。また、バラ花びら抽出物とバラ花びら精油を併用する場合のそれらの比率は、バラ花びら抽出物:バラ花びら精油=20〜1:1が好ましく、15〜5:1がさらに好ましい。
【0022】
本発明の歯磨剤は、常法に従い、バラ花びら抽出物、バラ花びら精油を単独で、あるいはその両者を一般的な歯磨剤基剤に配合し、均一化することにより調製することができる。これらが配合される歯磨剤基剤に含まれる成分としては、収れん剤、歯垢形成抑制剤、抗菌剤、歯石予防剤、抗プラスミン剤、歯茎引き締め剤、各種ビタミンなどの有効成分や、研磨剤、湿潤剤、矯味剤、防腐剤、溶剤、粘着増強剤、着色剤、界面活性剤、各種酸類、pH調整剤などを例示することができる。
【0023】
上記のうち、有効成分である収れん剤としては、アルミニウム・クロルヒドロキシアラントイネート、炭酸水素ナトリウム、シャクヤクエキス、トウキエキス、乳酸アルミニウムなどが、歯垢形成抑制剤としては、デキストラナーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼなどが、抗菌剤としては、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、トリクロサン、ヒノキチオールなどが、歯石予防剤としては、ポリリン酸類などが、抗プラスミン剤としては、イプシロンアミノカプロン酸、トラネキサム酸、アラントインなどが、歯茎引き締め剤としては、塩化ナトリウムなどが、各種ビタミンとしては、酢酸トコフェロールなどがそれぞれ挙げられる。
【0024】
また、本発明の歯磨剤に配合しうる研磨剤としては、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウムなどが、湿潤剤としては、ソルビット液、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコールなどが、矯味剤としては、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、グリチルリチン、ペリラルチン、アスパルテーム、キシリトール、エリスリトール、トレハロースなどが、防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、塩化セチルピリジニウム、イソプロピルメチルフェノール、ソルビン酸カリウムなどが、溶剤としては、精製水、エタノールなどが、粘着増強剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カラギーナン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、キサンタンガム、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、ポリビニルアルコール、架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、非架橋型ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマーなどが、着色剤としては、酸化チタン、雲母チタン、カラメルなどが、界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが、各種酸類としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、ピロリン酸、リン酸、酢酸、グリセロリン酸やこれらの各種塩が、pH調節剤としては、水酸化ナトリウムなどがそれぞれ挙げられる。
【0025】
本発明においては、上記のように各種成分を配合することができるが、その好ましい形態の一つは、少なくとも歯磨剤基剤として、収れん剤および湿潤剤を含有する歯磨剤が挙げられる。また、別の好ましい態様は、実質的に界面活性剤を含有しない歯磨き剤である。ここで、界面活性剤を実質的に含有しないとは、歯磨剤中の界面活性剤の含有量が、0.1%以下であることを意味し、まったく配合しないほうがより望ましい。このような実質的に界面活性剤を含有しない歯磨剤は、通常、泡立たないため、発泡による不快感もなく長時間歯磨きをすることが可能である。そして、本発明の歯磨剤はバラ花びら抽出物、バラ花びら精油を配合してあるので、長時間歯磨きをすることも苦痛ではなく、しかも清涼感や爽快感も得られる利点がある。
【0026】
本発明において、特に好ましい形態の歯磨剤の一つとして、次のものが挙げられる。すなわち、歯磨剤中に、バラ花びら抽出物を0.05〜0.5%、バラ花びら精油を0.001〜1%含み、これらの比率は、バラ花びら抽出物:バラ花びら精油=15〜5:1のものである。そして、収れん剤として、アルミニウム・クロルヒドロキシアラントイネートを0.1〜0.3%、賦形剤として乳酸アルミニウムを0.5〜1%、ピロリン酸カルシウムを0.5〜2%、湿潤剤としてソルビット液を10〜30%、粘着増強剤としてヒドロキシエチルセルロースを0.1〜0.5%、キサンタンガムを1〜4%、カラギーナンを0.1〜0.5%、着色剤として酸化チタンを0.1〜1%、溶剤としてエタノールを1〜10%、精製水を50〜90%、矯味剤としてサッカリンナトリウムを0.01〜0.05%、防腐剤としてパラオキシ安息香酸エステルを0.001〜0.5%含むものであれば、より好ましい。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0028】
実 施 例 1
歯 磨 剤 :
表1に示す組成および下記製法により、歯磨剤を調製した。得られた歯磨剤について、歯磨き中の使用感(爽快感)を下記方法により評価した。この結果も表1に示す。
【0029】
( 組 成 )
【表1】

* :ローズクリスタ((株)東洋発酵製)
** :オット ローズ(山本香料(株)製)
*** :長岡実業(株)製
+ :長谷川香料(株)製
++ :栄香料(株)製
+++ :小川香料(株)製
【0030】
< 製 法 >
(A)精製水の一部に、サッカリンナトリウム、乳酸アルミニウム、アルミニウムクロ
ルヒドロキシアラントイネートを加え溶解する。
(B)次にパラオキシ安息香酸エステルをエタノールに溶解させ、(A)に投入混合す
る。
(C)上記(B)の混合物に、ソルビット液(70%D−ソルビトール液)、バラ花び
ら抽出物、バラ花びら精油、ピロリン酸カルシウム、酸化チタンを投入混合する。
比較品の場合は、バラの花びら抽出物、バラ花びら精油に代え、ハッカ油、アニス
油、ユーカリ油、オレンジ油を加える。
(D)上記(C)の混合物に、キサンタンガム、カラギーナン、ヒドロキシエチルセル
ロースを投入し、均一に混合した後、残りの精製水を加え、歯磨剤を得る。
【0031】
< 使用感の官能評価 >
被験者10人を用いた官能試験により、歯磨き中および歯磨き後の使用感(味、香り)を評価した。歯磨きは、上記表1に示す各組成の歯磨剤約1gを歯ブラシにとり、通常歯を磨く方法で約5分間程度歯を磨いてもらった。この歯磨き中および歯磨き後の口中での使用感を以下に示す基準で評価した。その平均値で示した結果を表2に示す。
【0032】
< 評価基準 >
評 点: 評価内容
5点 : 不快な味がなく、香りがとても爽やかである。
4点 : 不快な味がなく、香りが爽やかである。
3点 : 不快な味がややあり、香りがやや爽やかでない。
2点 : 不快な味がややあり、香りが爽やかでない。
1点 : 不快な味がかなりあり、香りが爽やかでない。
【0033】
【表2】

【0034】
この結果から明らかなように、バラ花びら抽出物を用いた本発明歯磨剤(発明品1、2)およびバラ花びら精油を用いた本発明歯磨剤(発明品3、4)は、これを配合しない歯磨剤(比較品5)はもとより、従来のハッカ油、アニス油、ユーカリ油、オレンジ油を用いた歯磨剤(比較品1〜4)ものに比べて、使用感が優れていた。
【0035】
特に、バラ花びら抽出物とバラ花びら精油を用いた本発明歯磨剤(発明品5、6)は、極めて優れた使用感のものであった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の歯磨剤は、苦みや刺激を引き起こすことなく、口腔内に高い清涼感や爽快感等を付与することができるものである。
【0037】
したがって一般の歯磨剤としては元より、特に、実質的に界面活性剤を含有しないような歯磨剤のように歯磨き時間が長くなる場合であっても爽快感等を与えることができるものである。

以 上



【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラ花びら抽出物および/またはバラ花びら精油を配合することを特徴とする歯磨剤。
【請求項2】
バラ花びら抽出物が、バラ花びら熱水抽出物である請求項1記載の歯磨剤。
【請求項3】
全質量に対してバラ花びら抽出物の配合量が0.01〜1質量%である請求項1または2記載の歯磨剤。
【請求項4】
バラ花びら精油が、バラの花びらの水蒸気蒸留物である請求項1ないし3の何れかに記載の歯磨剤。
【請求項5】
全質量に対してバラ花びら精油の配合量が0.001〜1%である請求項1ないし4の何れかに記載の歯磨剤。
【請求項6】
歯磨剤の基剤が、少なくとも収れん剤および湿潤剤を含有するものである請求項1ないし5の何れかに記載の歯磨剤。


【公開番号】特開2010−37290(P2010−37290A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203287(P2008−203287)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(508239171)シミック・エスエス・CMO株式会社 (1)
【Fターム(参考)】