説明

歯磨組成物

【解決手段】 40〜60質量%の水分含量を有する歯磨組成物に、イソプロピルメチルフェノールと、ラウリル硫酸ナトリウムと、エタノールとを配合し、ラウリル硫酸ナトリウムに対するエタノールの質量比を0.05〜5.0としたことを特徴とする歯磨組成物。
更に、トリクロサンを含有することを特徴とする請求項1に記載の歯磨組成物。
【効果】 本発明の歯磨組成物は、水分含量が多くても、イソプロピルメチルフェノールの経日析出を抑え、イソプロピルメチルフェノールの保存安定性に優れ、口腔疾患の原因となる口腔内細菌に対して効率的に作用して、優れた殺菌力を安定して発揮し、使用性も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含量が多い歯磨組成物に難水溶性殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノールを配合した際のイソプロピルメチルフェノールの経日安定性を向上させ、かつ、殺菌活性の安定性を改善した歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周病の2大口腔疾患の原因は、口腔内プラーク中の各種細菌によるものであると考えられ、特に、う蝕は、ストレプトコッカス ミュータンス(S.mutans)等の連鎖球菌、歯周病はポルフィロモナス ジンジバリス(P.gingivalis)等の偏性嫌気性グラム陰性桿菌を主とした細菌による感染症であり、また、口臭の原因としてはフゾバクテリウム ニュークレアタム(F.nucleatum)等の口腔内細菌が関与している。従って、口腔内疾患の予防、改善に有効な手段として、プラークコントロール、即ち、口腔内の病原性細菌数を低レベルに保つことが有用であることが言われている。
【0003】
口腔内の病原性細菌数を低下させる手段としては、難水溶性殺菌剤やカチオン性殺菌剤を歯磨組成物に配合することが有効な手段となっており、歯磨組成物に配合される殺菌剤の中でイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン等の難水溶性殺菌剤は、カチオン性殺菌剤に比べて抗菌スペクトルが広い傾向にある特徴を有することから、歯磨剤に配合され、上市されている。
【0004】
しかしながら、水分含量が多い状態で難水溶性殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノールを歯磨剤に配合する場合には、イソプロピルメチルフェノールが経日で析出を起こし、十分な殺菌活性を示さないという課題があることが知られていた。
【0005】
この課題を解決するための手段として、例えば、特許文献1(特開平11−322554号公報)には、アニオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を特定の比率で配合し、水分含量を40質量%以下とすることで、フェノール系殺菌剤を安定配合した口腔用組成物が開示されている。しかしながら、本発明者が検討したところ、水分含量を40質量%より低くすると、粘稠性が増加することにより使用感を損なう課題や、研磨剤による歯牙への損傷が懸念されるという課題があった。
【0006】
従って、水分含量が多い状態で、難水溶性殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノールを歯磨剤に安定配合でき、上記課題も解消し得る技術の開発が望まれる。
【0007】
【特許文献1】特開平11−322554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、水分含量の多い歯磨組成物に、イソプロピルメチルフェノールを経日安定性よく配合でき、それにより殺菌活性の安定性が損なわれることがなく、使用感も良好な歯磨組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、水分含量が40〜60質量%の歯磨組成物に、イソプロピルメチルフェノール、ラウリル硫酸ナトリウム、エタノールを配合し、かつ、ラウリル硫酸ナトリウムとエタノールとをラウリル硫酸ナトリウムに対するエタノールの質量比が0.05〜5.0となるように併用することで、後述する実験例の結果から明らかなように、イソプロピルメチルフェノールの経日での結晶析出が著しく抑えられ、使用性も良好で、かつ、高い殺菌活性が安定して発揮されること、更には上記歯磨組成物にトリクロサンを配合することで、浮遊性細菌への殺菌力が高まることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
従って、本発明は、40〜60質量%の水分含量を有する歯磨組成物に、イソプロピルメチルフェノールと、ラウリル硫酸ナトリウムと、エタノールとを配合し、ラウリル硫酸ナトリウムに対するエタノールの質量比を0.05〜5.0としたことを特徴とする歯磨組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の歯磨組成物は、水分含量が多くても、イソプロピルメチルフェノールの経日析出を抑え、イソプロピルメチルフェノールの保存安定性に優れ、口腔疾患の原因となる口腔内細菌に対して効率的に作用して、優れた殺菌力を安定して発揮し、使用性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の歯磨組成物は、練歯磨として好適に調製されるもので、特定の水分含量を有し、イソプロピルメチルフェノール、ラウリル硫酸ナトリウム、エタノールを必須に含有するものである。
【0013】
本発明で用いるイソプロピルメチルフェノールは、1−ヒドロキシ−4−イソプロピル−3−メチルフェノールであり、例えば、商品名ビオゾールとして大阪化成(株)から販売されているものを使用することができる。その配合量は、組成物全量に対して0.001〜2質量%、特に殺菌効果の点より0.01〜0.5質量%が好適である。配合量が0.001質量%未満では、十分な殺菌効果が発揮されない場合があり、また、2質量%を超えると口腔粘膜に対して刺激を現すおそれがある。
【0014】
本発明で用いるラウリル硫酸ナトリウムは、アニオン性界面活性剤であり、東邦化学工業(株)から販売されているものを使用することができる。ラウリル硫酸ナトリウムの配合量は、組成物全量に対して0.1〜5質量%、特に使用感の点から0.2〜2質量%が好ましい。配合量が0.1質量%未満では泡立ちが十分ではない場合があり、また、5質量%を超えると、泡立ちが過剰となり、使用感の面から好ましくない場合がある。
【0015】
本発明で用いるエタノールは、1価低級アルコールであり、日本アルコール販売(株)より販売されているものを用いることができる。エタノールの配合方法は、香料中に配合しても良いし、香料中ではなく別添加で配合しても良く、もしくは香料中と別添加との両方で配合しても良い。エタノールの合計配合量は、組成物全体の好ましくは0.02〜10質量%、より好ましくはイソプロピルメチルフェノールの経日安定性の点より0.1〜4質量%である。0.02質量%未満では、イソプロピルメチルフェノールが経日で析出する場合があり、10質量%を超えると、歯磨組成物の相分離が起こるおそれがある。
【0016】
本発明では、イソプロピルメチルフェノールの経日安定性を保つために、上記したラウリル硫酸ナトリウムとエタノールとを、ラウリル硫酸ナトリウムに対してエタノールを、質量比で0.05〜5.0、好ましくはイソプロピルメチルフェノールの析出防止の点より0.1〜2.0、より好ましくは0.1〜1.0の割合で配合することが必要である。上記配合比が0.05未満では、イソプロピルメチルフェノールが経日で析出し、高い殺菌活性が発揮されず、5.0を超えると歯磨組成物の相分離が起こり、保存安定性に劣る。
【0017】
本発明の歯磨組成物は、上記必須成分を配合し、水分含量が40〜60質量%、好ましくは40〜50質量%となるように調製することが必須である。水分含量が40質量%未満では、粘稠性が増加することにより使用感が損なわれ、かつ研磨剤による歯牙への損傷が生じ易くなってしまい、60質量%を超えると、イソプロピルメチルフェノールの溶解性、安定性が低下し、高い抗菌活性が得られない。なお、上記水分含量を有する歯磨組成物は、配合される精製水や、水で希釈された成分(例えばソルビット等)中の水分量を合計した、組成物中の総水分含量が、上記範囲となるように適宜調整することで得ることができる。
【0018】
更に、本発明の歯磨組成物には、浮遊性細菌への殺菌力を向上させるために、トリクロサンを配合することが好ましい。
本発明で用いるトリクロサンは、広範囲な抗菌スペクトルをもつハロゲン化ジフェニルエーテル型の殺菌剤であり、化学名は2’,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテルであり、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)からイルガサンの商品名で販売されている。
【0019】
トリクロサンの配合量は、組成物全量に対して0.001〜2質量%、特に殺菌効果の点より0.01〜0.5質量%が好適である。配合量が0.001質量%未満では、十分な殺菌効果が発揮されない場合があり、また、2質量%を超えると口腔粘膜に対して刺激が発現するおそれがある。
【0020】
本発明の歯磨組成物は、上記必須成分に加えて任意成分としてその他の添加剤を配合でき、例えば研磨剤、粘稠剤、粘結剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、有効成分、色素、香料等を配合でき、これら成分と水とを混合し製造できる。
【0021】
研磨剤としては、沈降性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート、ジルコノシリケート、第2リン酸カルシウム2水和物、第2リン酸カルシウム無水和物、ピロリン酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、2酸化チタン、結晶性ジルコニウムシリケート、ポリメチルメタアクリレート、不溶性メタリン酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ゼオライト、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、カルシウム欠損アパタイト、第3リン酸カルシウム、第4リン酸カルシウム、第8リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤などが挙げられる。研磨剤の配合量は、剤型により調整され、練歯磨には5〜80質量%配合することができる。
【0022】
粘稠剤としては、グリセリン、ソルビット、プロピレングリコール、分子量200〜6000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール等の1種又は2種以上が使用できる。
【0023】
粘結剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、カーボポール、グアガム、ゼラチン、アビセル、それにモンモリロナイト、カオリン、ベントナイト等の無機粘結剤等が挙げられる。粘結剤の配合量は、剤型により調整できるが、練歯磨には0.1〜5質量%配合することができる。
【0024】
界面活性剤としては、構成必須要件であるラウリル硫酸ナトリウムに加え、本発明の特徴を損なわない範囲でその他のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を添加することができる。その他のアニオン性界面活性剤としては、例えばラウロイルサルコシン塩、ミリスチルサルコシン塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、N−ラウロイルタウリン塩、α−オレフィンスルホン酸塩、両性界面活性剤としては、例えばN−アシルグルタメート、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ノニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルグリコシド、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ラウリン酸デカグリセリル等が挙げられる。界面活性剤の配合量は、組成物の形態、使用目的等に応じ適宜選択される。例えば、練歯磨には0〜10質量%配合することができる。
【0025】
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン等、防腐剤としては、ブチルパラベン、エチルパラベン等のパラベン類、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。
【0026】
各種有効成分としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化第1錫、フッ化ストロンチウム、モノフルオロリン酸ナトリウム等のフッ化物、正リン酸のカリウム塩、ナトリウム塩等の水溶性リン酸化合物、トラネキサム酸、イプシロン−アミノカプロン酸、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、ヒノキチオール、アスコルビン酸、塩化ナトリウム、酢酸dl−トコフェロール、ジヒドロコレステロール、α−ビサボロール、クロルヘキシジン塩類、アズレン、グリチルレチン、グリチルレチン酸、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、グリセロホスフェートなどのキレート性リン酸化合物、グルコン酸銅等の銅化合物、乳酸アルミニウム、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム、ベルベリン、ヒドロキサム酸及びその誘導体、トリポリリン酸ナトリウム、ゼオライト、メトキシエチレン、無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エピジヒドロコレステリン、塩化ベンゼトニウム、塩化ナトリウム、ジヒドロコレステロール、トリクロロカルバニリド、クエン酸亜鉛、トウキ軟エキス、オウバクエキス、カミツレ、チョウジ、ローズマリー、オウゴン、ベニバナ等の抽出物などが挙げられる。
【0027】
香料は、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、歯磨組成物に用いられる公知の香料素材を使用することができ、実施例の香料に限定されない。
【0028】
また、香料の配合量も特に限定されないが、上記の香料素材は、製剤組成中に0.000001〜1質量%使用するのが好ましい。また、上記香料素材を使用した賦香用香料としては、製剤組成中に0.1〜2.0質量%使用するのが好ましい。
【0029】
着色剤としては、青色1号、責色4号、緑色3号等が例示される。なお、これら成分の配合量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実験例及び実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において配合量はいずれも質量%である。
〔実験例〕
実験方法
表1,2に示す組成の練歯磨組成物を下記方法で調製し、結晶析出の有無、安定性、使用感、バイオフィルム残存生菌数、浮遊性細菌殺菌力を下記方法で評価した。結果を表1,2に示す。
【0031】
(1)試験歯磨組成物の調製
イソプロピルメチルフェノールを配合した表1に示す組成の歯磨組成物を調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30,厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。これらの歯磨組成物の調製には、イソプロピルメチルフェノール(大阪化成(株))、ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株))、エタノール(日本アルコール販売(株))を用いた。他成分については、シリカ(無水ケイ酸)、増粘性シリカ(無水ケイ酸)、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、ショ糖モノラウレート、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ソルビット液、サッカリンナトリウム、精製水は化粧品原料基準規格品、フッ化ナトリウムは医薬部外品原料規格品を用いた。香料については、表3に示す香料A〜香料Iまでを作成し、配合した。
【0032】
また、イソプロピルメチルフェノール及びトリクロサンを配合した表2に示す組成の歯磨組成物を調製し、最内層が直鎖状低密度ポリエチレンからなる直径26mmのラミネートチューブ(LDPE55/PET12/LDPE20/白LDPE60/EMAA20/AL10/EMAA30/LDPE20/LLDPE30,厚み257μm(大日本印刷(株)製))に50g充填した。これらの歯磨組成物の調製には、イソプロピルメチルフェノール(大阪化成(株))、トリクロサン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株))、ラウリル硫酸ナトリウム(東邦化学工業(株))、エタノール(日本アルコール販売(株))を用いた。他成分については、シリカ(無水ケイ酸)、増粘性シリカ(無水ケイ酸)、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、ショ糖モノラウレート、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、ソルビット液、サッカリンナトリウム、精製水は化粧品原料基準規格品、フッ化ナトリウムは医薬部外品原料規格品を用いた。
【0033】
使用したラミネートチューブの層構成における略号と名称は以下の通りであり、略号に続く数字は各層の厚み(μm)を示したものである。
LDPE:低密度ポリエチレン
白LDPE:白色低密度ポリエチレン
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン
AL:アルミニウム
PET:ポリエチレンテレフタレート
EMAA:エチレン・メタクリル酸の共重合体樹脂
【0034】
(2)結晶析出確認の評価方法
表1,2の歯磨組成物を作成し、−10℃で1ヶ月保存した後、室温に戻し、黒色紙上に5cm歯磨剤をのせ、目視にて結晶析出確認を行った。更に、歯磨剤を指により押しつぶし、結晶析出確認を行った。結晶析出確認は、下記基準で評価した。
○:結晶析出が確認されなかった。
×:結晶析出が確認された。
【0035】
(3)安定性(液分離)の評価方法
表1,2の歯磨組成物を作成し、50℃で1ヶ月保存した後、室温に戻し、更に、紙上に5cm歯磨剤を出し、歯磨剤から水分として液分離が発生したかを下記基準で確認した。
○:液分離が発生しなかった。
×:液分離が発生した。
【0036】
(4)使用感の評価方法
表1,2の歯磨組成物を作成し、歯磨剤約1gを市販品歯ブラシにのせて3分間ブラッシングを行い、口腔内での分散性について下記基準で評価した。
○:分散性が良い。
△:分散性がやや悪い。
×:分散性が悪い。
【0037】
(5)バイオフィルム残存生菌数の評価方法
凍結保存してあったアクチノマイセス ビスコーサス、フゾバクテリウム ニュークレアタム、ポルフィロモナス ジンジバリス培養液40μLをそれぞれ5mg/Lヘミン(Sigma社製)及び1mg/LビタミンK(和光純薬工業社製)を含むトッドヘーウィットブロース(Becton and Dickinson社製)培養液(THBHM)4mLに添加し、37℃で二晩嫌気培養(80vol%窒素、10vol%二酸化炭素、10vol%水素)した。凍結保存してあったベイヨネラ パービューラー培養液80μLを1.26%乳酸ナトリウム(Sigma社製)を含むトッドヘーウィットブロース(Becton and Dickinson社製)培養液(THBL)4mLに添加し、同様に培養した。培養後、ベイヨネラ パービューラーを除く3菌種の菌液からそれぞれ300μLを採取し、30mLのTHBHMに添加し、更に一晩培養した。ベイヨネラ パービューラーの菌液から同様に300μLを採取し、30mLのTHBLに添加し、一晩培養した。再培養後、各菌液を遠心分離(10,000rpm、10min)し、上清を廃棄した。各沈査(細菌)に対して、吸光度(550nm)がおよそ0.1になるように、ベイサルメディウムムチン培養液(BMM)を添加し、再懸濁した。4種の菌液を等量混合し、撹拌後24穴マルチディッシュ(住友ベークライト社製)の各ウェルに1mLずつ分注した。一日間の嫌気培養を行った後、培養液全量を排出し、1mLのBMMを添加した。同操作を6日間継続し、プレート上にバイオフィルムを形成させた。
【0038】
表1,2の歯磨組成物を作成し、−10℃で1ヶ月保存した後、室温に戻し、歯磨剤10gに人工唾液(30mL)を加えて撹拌した後、遠心(10,000rpm、20min)し、得られた上清を試料原液とした。培養6日目にこの試料原液を添加し、3分間放置した。その後、生理食塩水で3回洗浄し、更に試料原液を添加し、3分間放置した。その後、生理食塩水で12回洗浄し、1mLのBMMを添加し、再び嫌気培養した。培養7日目にも同様の処置を行い、残存したバイオフィルムを4mLのTHBHM中で分散し、試験管に移した。このバイオフィルムを超音波破砕後(10秒、200μA)、段階希釈(×10)を行い、各菌溶液を血液寒天平板(トッドヘーウィットブロース(Becton and Dickinson社製)30g/L、寒天(Becton and Dickinson社製)15g/L、ヘミン(Sigma社製)5mg/L、ビタミンK(和光純薬工業社製)1mg/L、蒸留水にて1Lにメスアップ)に塗沫した。平板は肉眼でコロニーが確認できるまで嫌気培養し、各平板のコロニー数をカウント後、定法により生菌数(単位;cfu/ウェル:colony forming unitの略)を算出した。
なお、人工唾液としては、3.73gの塩化カリウム、0.14gのリン酸2水素1カリウム、0.15gの塩化カルシウム・2水和物、0.02gの塩化マグネシウム・6水和物を精製水に溶解し、水酸化カリウムでpHを7に調整し、1,000mLとしたものを使用した。
【0039】
(6)浮遊性細菌殺菌力の評価方法
表2の歯磨組成物を作成し、−10℃で1ヶ月保存した後、室温に戻し、歯磨10gに人工唾液(30mL)を加えて撹拌した後、遠心(10,000rpm、20min)し、得られた上清を試料原液とした。この試料原液を前もって培養した口腔細菌分散液(A.naeslundi T14Vを人工唾液に分散し、波長660nmでの濁度(OD660)=1に調整したもの)2mLに対し、2mLを30秒間作用させた後、50μLを分取してTHB液体培地(4mL)に添加し、殺菌力評価サンプルとした。この殺菌力評価サンプル液を嫌気培養(37℃、8時間)した後、増殖した菌量を濁度(OD660)を指標に測定し、数値の小さいものがより高い殺菌力が得られたものとして評価した。
なお、人工唾液としては、3.73gの塩化カリウム、0.14gのリン酸2水素1カリウム、0.15gの塩化カルシウム・2水和物、0.02gの塩化マグネシウム・6水和物を精製水に溶解し、水酸化カリウムでpHを7に調整し、1,000mLとしたものを使用した。
【0040】
【表1】

*水分量:ソルビット液に含まれる水分及び精製水の合計量
【0041】
表1の結果から明らかなように、エタノール/ラウリル硫酸ナトリウムの質量比が0.05より小さい場合(比較例1,3)は、結晶析出が認められ、エタノール/ラウリル硫酸ナトリウムの質量比が5.0より大きい場合(比較例5)は液分離が生じ、いずれの歯磨組成物も殺菌活性に劣り、また、水分量が60%より多い場合(比較例2)は結晶析出が確認され、殺菌活性が低く、使用感にも劣り、水分量が40%より少ない場合(比較例4)は、使用感に劣るものであった。これらに対して、40〜60%の水分含量を有し、かつ、イソプロピルメチルフェノール、ラウリル硫酸ナトリウム、エタノールを含有し、ラウリル硫酸ナトリウムに対するエタノールの質量比が0.05〜5である歯磨組成物(実施例1〜9)は、イソプロピルメチルフェノールの結晶析出が抑えられ、殺菌活性が高まることが確認された。
【0042】
【表2】

*水分量:ソルビット液に含まれる水分及び精製水の合計量
【0043】
表2の結果より、40〜60%の水分含量を有し、かつ、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ラウリル硫酸ナトリウム、エタノールを含有し、ラウリル硫酸ナトリウムに対するエタノールの質量比が0.05〜5である歯磨組成物(実施例10〜17)は、イソプロピルメチルフェノールの析出が抑えられ、殺菌活性が高まることが確認された。更に、トリクロサンを配合することにより、浮遊性細菌への高い殺菌力も有することが確認された。
【0044】
【表3】

【0045】
【表4】

【0046】
【表5】

【0047】
【表6】

【0048】
【表7】

【0049】
【表8】

【0050】
【表9】

【0051】
[実施例18]練歯磨
イソプロピルメチルフェノール 0.1質量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料E 1.3
塩化セチルピリジニウム 0.05
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.5
シリカ 18
増粘性シリカ 5
ポリアクリル酸ナトリウム 0.7
キサンタンガム 0.5
ソルビット液(70%) 30
サッカリンナトリウム 0.2
プロピレングリコール 4
パラオキシ安息香酸メチル 0.06
パラオキシ安息香酸ブチル 0.01
酸化チタン 0.3
フッ化ナトリウム 0.21
水 37.07
計 100.0質量%
エタノール/ラウリル硫酸ナトリウムの質量比:0.10
水分量:46.07質量%
上記の歯磨組成物は、イソプロピルメチルフェノールの析出が抑えられ、殺菌活性が高いことを確認した。
【0052】
[実施例19]練歯磨
イソプロピルメチルフェノール 0.1質量%
トリクロサン 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料F 1.4
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.0
ポリオキシエチレン(5)ステアリルエーテル 0.8
シリカ 18
増粘性シリカ 3
アルギン酸ナトリウム 0.6
ポリアクリル酸ナトリウム 0.6
ソルビット液(70%) 30
サッカリンナトリウム 0.2
プロピレングリコール 3
酸化チタン 0.3
ε−アミノカプロン酸 0.03
フッ化ナトリウム 0.21
水 39.66
計 100.0質量%
エタノール/ラウリル硫酸ナトリウムの質量比:0.08
水分量:48.66質量%
上記の歯磨組成物は、イソプロピルメチルフェノールの析出が抑えられ、殺菌活性が高いことを確認した。
【0053】
[実施例20]練歯磨
イソプロピルメチルフェノール 0.05質量%
トリクロサン 0.02
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料G 1.2
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.5
シリカ 18
増粘性シリカ 3
ヒドロキシエチルセルロース 1.2
ポリエチレングリコール400 3
アルギン酸ナトリウム 0.2
ソルビット液(70%) 35
サッカリンナトリウム 0.2
酸化チタン 0.3
フッ化ナトリウム 0.21
トラネキサム酸 0.05
水 35.07
計 100.0質量%
エタノール/ラウリル硫酸ナトリウムの質量比:0.13
水分量:45.57質量%
上記の歯磨組成物は、イソプロピルメチルフェノールの析出が抑えられ、殺菌活性が高いことを確認した。
【0054】
[実施例21]練歯磨
イソプロピルメチルフェノール 0.05質量%
トリクロサン 0.10
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
香料H 1.2
ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 1.6
シリカ 17
増粘性シリカ 3
キサンタンガム 1.2
アルギン酸ナトリウム 0.3
プロピレングリコール 3
ソルビット液(70%) 35
サッカリンナトリウム 0.2
酸化チタン 0.3
フッ化ナトリウム 0.21
ビタミンE 0.05
水 35.79
計 100.0質量%
エタノール/ラウリル硫酸ナトリウムの質量比:0.28
水分量:46.29質量%
上記の歯磨組成物は、イソプロピルメチルフェノールの析出が抑えられ、殺菌活性が高いことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
40〜60質量%の水分含量を有する歯磨組成物に、イソプロピルメチルフェノールと、ラウリル硫酸ナトリウムと、エタノールとを配合し、ラウリル硫酸ナトリウムに対するエタノールの質量比を0.05〜5.0としたことを特徴とする歯磨組成物。
【請求項2】
更に、トリクロサンを含有することを特徴とする請求項1に記載の歯磨組成物。

【公開番号】特開2006−69909(P2006−69909A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251780(P2004−251780)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】