説明

歯磨組成物

本発明は、口腔用として許容できるビヒクル;亜鉛イオン源;および多糖系増粘剤であって多糖主鎖に沿って糖残基単位当たり最大で0.5の荷電基を有する多糖系増粘剤、たとえばキサンタンガムおよび/またはヒドロキシエチルセルロースを含む、歯磨組成物を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用として許容できるビヒクル;亜鉛イオン源;および多糖系増粘剤であって多糖主鎖に沿って糖残基単位当たり最大で0.5の荷電基を有する多糖系増粘剤、たとえばキサンタンガムおよび/またはヒドロキシエチルセルロースを含む、歯磨組成物を包含する。
【背景技術】
【0002】
[0001] 金属イオン、たとえば亜鉛イオンは有効な抗微生物剤であることが知られている。これらの金属イオンは抗歯肉炎および抗歯垢の有益性を提供し、ブレス(吐息)を改善し、過敏性を軽減することができる。特に、クエン酸亜鉛は抗歯垢、抗歯肉炎および抗歯石効力をもつことが示されている。さらに、亜鉛は抗口臭剤(anti-malodor)としてのそれの効力も示されている。
【0003】
[0002] 単一組成物中で亜鉛イオンを他の有効成分と組み合わせることによって多数の療法有益性を提供する歯磨剤を開発することが求められている。
[0003] しかし、亜鉛陽イオン、トリクロサン(triclosan)に対する抗細菌性増強剤としての無水マレイン酸コポリマー、および増粘剤、たとえばカルボキシメチルセルロースを合わせて含有する歯磨組成物は、流動学的特性が乏しいという技術的問題を伴う可能性がある。特に、その歯磨組成物は許容できないほど高い粘度を示す可能性があり、このため組成物はディスペンサーから分注するのが困難になりかつ歯のブラッシングに際して口内で分散しにくくなる可能性があり、その結果、消費者にとって口当たりが良くない。そのような歯磨組成物は経時的な粘度漸増を示す傾向もある。配合物の粘度が経時的に絶えず増大すると、その配合物の分注は困難になり、その結果として消費者は不満を抱くであろうと思われる。
【発明の概要】
【0004】
[0004] 本発明は、亜鉛イオンを含む歯磨組成物に関する。
[0005] 本発明の目的のひとつは、亜鉛陽イオン、トリクロサンに対する抗細菌性増強剤としての無水マレイン酸コポリマー、および少なくとも1種類の増粘剤を合わせて含有する、良好な流動学的特性を示すことができる歯磨組成物を提供することである。
【0005】
[0006] 本発明のもうひとつの目的は、チューブまたはポンプなどのディスペンサーから組成物を容易に分注できる粘度をもちかつ口内で歯のブラッシングに際して易分散性である歯磨組成物を提供することである。
【0006】
[0007] 本発明の他の目的は、組成物の粘度を有意に変動させることなくある範囲の量の亜鉛陽イオンを組成物中に含むことができ、その粘度は組成物をディスペンサーから容易に分注できるものである、歯磨組成物を提供することである。
【0007】
[0008] 本発明のさらに他の目的は、亜鉛陽イオンを含有する、経時的な粘度漸増を示す傾向のない歯磨組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[0009] 当技術分野では、亜鉛イオンを含有する口腔用組成物中に含有される抗細菌性化合物を歯の組織へ送達して取り込ませて抗細菌剤および亜鉛イオンの療法効力を付与するための口腔ケア組成物を提供することが求められている。
【0009】
[0010] 亜鉛塩をトリクロサンと組み合わせて用いて、トリクロサンを含有する現在の歯磨配合物より改善された効力を提供することが、歯石防除、ブレスフレッシュニング効果および歯垢/歯肉炎軽減の分野で望まれている。
【0010】
[0011] 本明細書において証明するように、本発明の好ましい態様は、亜鉛イオン、たとえばクエン酸亜鉛、およびトリクロサンを、トリクロサンのための抗細菌性増強剤と組み合わせることによって、多数の療法有益性を備えた歯磨剤を提供することができる。この歯磨剤は増粘剤を含有するが、なお許容できる流動学的特性を示す。
【0011】
[0012] 本発明の好ましい態様は、歯磨組成物の初期粘度が許容できるものであって歯磨組成物をディスペンサーから容易に分注できること、および歯磨組成物が安定な流動性をもち、それが経時的な粘度漸増の傾向をもつことなく速やかに、たとえば製造して数日以内に安定な粘度に達することをも提供できる。
【0012】
[0013] 本明細書中で用いるすべてのパーセントは、別途特定しない限り歯磨組成物の重量によるものである。すべての測定は、別途特定しない限り25℃で行われる。
[0014] 本明細書中で“含む(comprising)”は、最終結果に影響を及ぼさない他の段階および他の成分を付加できることを意味する。この用語には、用語“からなる(consisting of)”および“本質的にからなる(consisting essentially of)”が含まれる。本明細書中で“有効量”は、当業者の適切な判断の範囲内でプラスの有益性、好ましくは口腔健康上の有益性を有意に誘導するのに十分であって、ただし重篤な副作用を避けるのに十分なほど少ない、すなわち妥当な損益比を提供する、化合物または組成物の量を意味する。
【0013】
[0015] 本発明の歯磨組成物は、練り歯磨または歯磨剤の形態であってもよい。本明細書中で用いる用語“歯磨剤”は、別途特定しない限りペースト状またはゲル状配合物を意味する。歯磨組成物は、いずれかの希望する形態、たとえば深部ストライプ型(deep striped)、表面ストライプ型(surface striped)、多層型であってゲルがペーストを取り囲んだもの、またはそのいずれかの組合わせであってもよい。
【0014】
[0016] 歯磨組成物は、通常の投与コースで特定の療法剤の全身投与のために意図的に飲み込まれることはなく、むしろ口腔活性を得るために実質的にすべての歯の表面および/または口腔組織と接触させるのに十分な時間、口腔内に保持される製品である。
【0015】
[0017] 本明細書中で用いる用語“水性キャリヤー”は、本発明の組成物中に用いるための安全かつ有効な物質を意味する。そのような物質には、増粘剤、保湿剤、イオン活性成分、緩衝剤、抗歯石剤、研削研磨剤、過酸化物源、炭酸水素アルカリ金属塩、界面活性剤、二酸化チタン、着色剤、着香剤系、甘味剤、抗微生物剤、薬草剤(herbal agent)、脱感作剤、着色軽減剤、およびその混合物が含まれる。
【0016】
[0018] 第1観点において、本発明は、口腔用として許容できるビヒクル;亜鉛イオン源;および多糖系増粘剤であって多糖主鎖に沿って糖残基単位当たり最大で0.5の荷電基を有する多糖系増粘剤を含む、歯磨組成物を提供する。
【0017】
[0019] 本発明は、本明細書中の他の個所に詳述する接着剤を含有する歯磨配合物を含むことができる。無水マレイン酸コポリマー、たとえばGantrezポリマーを用いる場合、亜鉛陽イオンは、歯磨配合物中に存在する可能性のある特定の増粘剤、特にヒドロコロイドとして存在して亜鉛陽イオンと架橋により反応するのに利用されるカルボキシレート基などの基を高濃度で有する増粘剤と反応する傾向がある。そのような反応により、無水マレイン酸コポリマーと、たとえば歯磨組成物中に増粘剤として存在するいずれかのセルロース系ポリマーとの間に、イオン橋が形成される傾向がある。バルク処方における許容できないほど高い粘度がこの相互作用から生じる。
【0018】
[0020] しかし本発明者らは、反応性基、たとえばカルボキシレート基の濃度が低い増粘剤、たとえばキサンタンガムを唯一の増粘剤として、または複数の増粘剤のひとつとして無水マレイン酸コポリマー系に使用すると、亜鉛イオンと無水マレイン酸コポリマーの間の化学的相互作用のために供給される部位がより少ないことを見出した。これによって、他の増粘系、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)またはCMC/カラギーナン配合物をベースとするものを用いた場合に可能なものより高いレベルの亜鉛塩、たとえばクエン酸亜鉛を、許容できないほどの粘度増大なしに含有させることが可能になる。
【0019】
[0021] 本発明の好ましい態様によれば、亜鉛陽イオンおよびトリクロサンの両方を含有する歯磨剤を配合して、異なる相補的な作用法をもつ2種類の有効成分を付与することができ、これは完全にまたは部分的にキサンタンガムを含有する歯磨剤ガム系の使用により達成できる。この歯磨剤は、たとえば組成物の重量を基準として1から2重量%の比較的高いレベルのクエン酸亜鉛を用いることによって高レベルの亜鉛有効成分を使用でき、許容できないほどの粘度増大の結果としての製品の審美性に対する不都合な影響はない。歯垢および歯肉炎に対して使用するためのクエン酸亜鉛の特に好ましい量は、組成物の重量を基準として2重量%である。
【0020】
[0022] いずれかの理論により拘束されるわけではないが、本発明者らは、組成物中に特定のヒドロコロイドも存在すると、亜鉛陽イオンと無水マレイン酸コポリマー系の間の何らかの相容性が有意に低下すると考える。これは無水マレイン酸コポリマーとヒドロゲルの間に起きるイオン橋形成によるものであり、これは亜鉛陽イオンの二価陽イオン性によって促進される。増粘剤として用いられるそのようなヒドロコロイドであるカルボキシメチルセルロース(CMC)は、主鎖に沿って置換した基の量および性質のため特にこの結合を生じやすい。亜鉛をトリクロサンおよび無水マレイン酸コポリマー、たとえばGantrez製品の存在下で使用するためには、この反応を排除または制限しなければならない。
【0021】
[0023] CMCおよびキサンタンガムは両方とも、それらの主鎖に沿ってカルボキシレート基を含む。両物質とも荷電した多糖類であるが、主鎖に沿った荷電カルボキシレート基の密度はかなり異なり、CMCの方がキサンタンガムよりはるかに高い。たとえば、既知の市販CMCのひとつであるCMC 2000S(CPKelcoから入手できる)は、糖残基当たり約0.9の置換度のカルボキシレート基をもつ。これと比較して、キサンタンガムは糖残基当たり<0.4の置換度のカルボキシレート基をもつ。鎖に結合したカルボキシレート基の数は、二価イオン、たとえばZn2+を含有する混合物の流動学的特性にとって重要である;亜鉛イオンが2つの対向するカルボキシレート基に架橋した状態で、これらのイオンがカルボキシレート基と錯化してイオン性の架橋または橋を形成するという事実によるものである。
【0022】
[0024] これらの結合は、CMCにみられるカルボキシレート基だけでなく、他の増粘剤、たとえばi−カラギーナンにみられるスルフェート基からも形成される可能性がある。そのような結合は鎖の鎖間会合および大きな網状構造の形成をもたらす可能性があり、これはポリマー種の粘度または溶解度を劇的に増大させる作用をする可能性がある。
【0023】
[0025] 一部において本発明者らは、歯磨剤中のCMCをキサンタンガムで置き換えると網状構造の形成に利用されるイオン結合の数が減少し、これにより組成物の粘稠度として示される配合物粘度を低下させることができ、一方ではCMCガム系を含有する歯磨剤のものと同様な流動学的特性を維持できることを見出した。あるいは、他の態様において、荷電していない水溶性セルロース誘導体であるヒドロキシエチルセルロース(HEC)の使用により、イオン橋形成の可能性をすべて排除でき、Zn2+陽イオンの存在に関係なく適合する粘稠度をもつ歯磨配合物を調製できる。
【0024】
[0026] 本発明は第1観点において、口腔用として許容できるビヒクル;亜鉛イオン源;および多糖系増粘剤であって多糖主鎖に沿って糖残基単位当たり最大で0.5の荷電基を有する多糖系増粘剤を含む、歯磨組成物を提供する。
【0025】
[0027] 多糖系増粘剤は、キサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロースのうち少なくとも1つを含むことができる。多糖系増粘剤は、一般にキサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロースのうち少なくとも1つからなる。好ましくは、多糖系増粘剤は組成物の重量を基準として0.1から1.5重量%まで、好ましくは組成物の0.5から1重量%までの量で存在するキサンタンガムからなる。
【0026】
[0028] 亜鉛イオン源は、有機酸の亜鉛塩、一般にクエン酸亜鉛を含むことができる。亜鉛塩は、組成物の重量を基準として0.5から2.5重量%まで、一般に組成物の重量を基準として1から2重量%までの量で存在することができる。
【0027】
[0029] 歯磨組成物は、一般に歯磨剤に必要な流動学的特性を付与する増粘剤を含有し、これにより歯磨剤を長期間にわたって分注容器内に保存した後でも利用者が信頼性をもって容器から分注することができる。歯磨剤は、分注されるためだけでなく歯のブラッシングに際して口内で許容できる粘稠度を示すためにも、適正な粘度をもたなければならない。代表的な増粘剤には、加工セルロース、たとえばカルボキシメチルセルロース(CMC)、および他の多糖類またはガム成分が含まれる。
【0028】
[0030] 多糖系増粘剤は、キサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロースのうち少なくとも1つを含むことができる。多糖系増粘剤は、一般にキサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロースのうち少なくとも1つからなる。好ましくは、多糖系増粘剤は組成物の重量を基準として0.1から1.5重量%まで、好ましくは組成物の0.5から1重量%までの量で存在するキサンタンガムからなる。しかし、少量の追加の増粘剤、たとえばカラギーナン、トラガントゴム、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルプロピルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(ナトリウムCMC)、およびコロイドシリカが存在してもよい。1態様において、増粘剤の濃度は組成物の重量を基準として0.1重量%〜5重量%の範囲である。他の態様において、増粘剤の濃度は組成物の重量を基準として0.5重量%〜2重量%の範囲である。
【0029】
[0031] 本発明の組成物は、少なくとも1種類の亜鉛イオン源を含む。亜鉛イオン源は、亜鉛と無機または有機の対イオンとの可溶性または貧溶性化合物であってもよい。例には、亜鉛のフッ化物、塩化物、塩化フッ化物、酢酸塩、ヘキサフルオロジルコン酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、グリシネート、ピロリン酸塩、メタリン酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、炭酸塩、および酸化物が含まれる。
【0030】
[0032] 亜鉛イオンは、歯肉炎、歯垢、過敏性の軽減、ブレス(吐息)改善の有益性を補助することが見出された。
[0033] 亜鉛イオンは、歯磨組成物中にある有効量の金属イオン源(単数または複数)に由来する。有効量は、少なくとも1000ppm、好ましくは2,000ppmから15,000ppmまでの亜鉛イオンと定義される。より好ましくは、亜鉛イオンは3,000ppmから13,000ppmまで、よりさらに好ましくは4,000ppmから10,000ppmまでの量で存在する。これは歯の表面へ送達するための組成物中に存在する亜鉛イオンの全量である。
【0031】
[0034] 適切な亜鉛イオン源の例は、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、酒石酸亜鉛、炭酸亜鉛、リン酸亜鉛、およびU.S. Pat. No. 4,022,880に挙げられた他の塩類である。
【0032】
[0035] 亜鉛イオン源(単数または複数)は、最終組成物の0.25%から11%(重量)までの量で存在するであろう。好ましくは、亜鉛イオン源は、0.4から7%まで、より好ましくは0.45%から5%までの量で存在する。
【0033】
[0036] 歯垢形成ならびに歯垢形成に関連する口腔感染症および歯科疾患を抑制するために、当技術分野でさまざまな抗細菌剤が示唆されている。たとえば、ハロゲン化ヒドロキシジフェニルエーテル化合物、たとえばトリクロサンは、それらの抗細菌活性が当技術分野で周知であり、口腔の細菌蓄積による歯垢形成に対抗するために口腔用組成物中に用いられている。
【0034】
[0037] 本発明の口腔ケア組成物の調製に有用なハロゲン化ジフェニルエーテル系の抗細菌性化合物には、抗歯垢有効性および安全性の考慮に基づいて、2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(トリクロサン)および2,2’−ジヒドロキシ−5,5’−ジブロモ−ジフェニルエーテルが含まれる。1態様において、抗細菌性化合物は2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシ−ジフェニルエーテル(“トリクロサン”)である。
【0035】
[0038] 本発明は、口腔ケア用の抗細菌性化合物を含有することもできる。限定ではない適切な抗細菌性化合物の例には、フェノールおよびそれの同族体、モノおよびポリアルキルならびに芳香族ハロフェノール、レゾルシノールおよびそれの同族体、ならびにビスフェノール系化合物が含まれる。そのようなフェノール系化合物はU.S. Pat. No. 5,368,844に十分に開示されており、それの全体を本明細書に援用する。フェノール系化合物には、n−ヘキシルレゾルシノールおよび2,2’−メチレンビス(4−クロロ−6−ブロモフェノール)が含まれる。
【0036】
[0039] ハロゲン化ジフェニルエーテルまたはフェノール系の抗細菌性化合物は、本発明の口腔用組成物中に療法有効量で存在する。1態様において、療法有効量は組成物の重量を基準として0.05重量%〜2重量%の範囲である。他の態様において、療法有効量は口腔用組成物の重量を基準として0.1重量%〜1重量%の範囲である。
【0037】
[0040] 抗細菌剤の有効性は、歯および歯肉軟組織領域へのそれの送達およびそれらによる取込みに依存する。したがって本発明は、抗細菌剤および接着剤をも含有することができる。有用な抗細菌剤のひとつはハロゲン化ジフェニルエーテルであり、一般にトリクロサンを含む。トリクロサンは、組成物の重量を基準として0.1から1重量%まで、一般に組成物の0.2から0.5重量%までの量で存在することができる。
【0038】
[0041] 抗細菌性増強剤が、トリクロサンなどの抗細菌剤と合わせて含有されてもよい。トリクロサンのための特に好ましいクラスの抗細菌性増強剤のひとつには、無水マレイン酸またはマレイン酸と他の重合性エチレン性不飽和モノマーとの1:4〜4:1コポリマーが含まれる。たとえば、代表的な無水マレイン酸コポリマーのひとつには、30,000から約5,000,000g/モルまで、または30,000から500,000g/モルまでの範囲の分子量(“M.W.”)を有するメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーが含まれる。これらのコポリマーはたとえば商標Gantrezで市販されており、これにはISP CorporationのGantrez AN 139(M.W.500,000g/モル)、AN 119(M.W.250,000g/モル);およびGantrez S-97医薬用グレード(M.W.700,000g/モル)が含まれる。ある観点において、無水マレイン酸コポリマーは一般に、30,000から約1,000,000g/モルまでの範囲の分子量を有するメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーを含む。
【0039】
[0042] 他の観点において、本発明は、口腔用として許容できるビヒクル;抗細菌剤としてのトリクロサン;抗細菌剤の増強剤としてのメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー;亜鉛イオン源としての有機酸の亜鉛塩;および多糖系増粘剤であってキサンタンガムからなる多糖系増粘剤を含む、歯磨組成物を提供する。ある観点において、キサンタンガムは組成物の重量を基準として0.5から1.5重量%までの量で存在し、亜鉛塩は組成物の重量を基準として1から2.5重量%までの量で存在し、トリクロサンは組成物の重量を基準として0.1から1重量%までの量で存在する。
【0040】
[0043] 第3観点において、本発明は、細菌性歯垢の蓄積を治療および予防するための方法であって、本発明による歯磨組成物を口腔に投与することを含む方法を提供する。
[0044] 本発明組成物は、必須成分および任意成分を含む。本発明組成物の必須成分および任意成分を以下の節に記載する。
【0041】
[0045] 本発明組成物を調製する際には、1種類以上の水性キャリヤーを組成物に添加することが望ましい。そのような物質は当技術分野で周知であり、調製される組成物に望まれる物理的および審美的特性に基づいて当業者によって容易に選択される。水性キャリヤーは一般に歯磨組成物の40%から99%まで、好ましくは70%から98%まで、より好ましくは90%から95%まで(重量)を構成する。
【0042】
[0046] 本発明の実施により口腔用組成物を調製する際には、保湿剤と共に水相を含む口腔用として許容できるビヒクルが存在する。保湿剤には、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、およびその混合物のうち1以上が含まれる。1態様において、水は組成物の重量を基準として少なくとも10重量%の量で存在する。他の態様において、水は組成物の重量を基準として少なくとも30重量%〜60重量%の量で存在する。さらに他の態様において、保湿剤の濃度は一般に合計で口腔用組成物の40〜60重量%となる。
【0043】
[0047] 歯磨組成物、たとえば練り歯磨およびゲル剤は、一般に研磨剤をも含有する。1態様において、研磨剤には最高20ミクロンの粒度をもつ結晶性シリカ、たとえば市販のZeodent 115もしくはZeodent 165、シリカゲルまたはコロイドシリカが含まれる。他の態様において、研磨剤には、錯体である非晶質アルカリ金属アルミノケイ酸塩、水和アルミナ、メタリン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、およびリン酸二カルシウム2水和物などの組成物が含まれる。1態様において、研磨剤は、本発明の半固体状またはペースト状の歯磨組成物中に15重量%〜60重量%の量で含有される。他の態様において、本発明の組成物は、組成物の重量を基準として20重量%〜55重量%の範囲の濃度をもつ研磨剤を含有する。
【0044】
[0048] 口腔用組成物は、抗齲食剤としてフッ化物イオン源またはフッ化物付与化合物を含有することもできる。1態様において、フッ化物イオン組成物は、口腔用組成物の25ppmから5,000ppmの範囲のフッ化物イオンを供給するのに十分な量で付与される。他の態様において、フッ化物イオン組成物は、口腔用組成物の500から1500ppmの範囲のフッ化物イオンを供給するのに十分な量で付与される。代表的なフッ化物イオン付与化合物には、無機フッ化物塩、たとえば可溶性アルカリ金属塩、たとえばフッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウムおよびモノフルオロリン酸ナトリウム、ならびにスズのフッ化物、たとえばフッ化スズ(II)および塩化スズ(II)が含まれる。
【0045】
[0049] いずれか適切な着香剤または甘味剤も、本発明の口腔用組成物の調製に際して使用できる。適切な着香成分の例には、香油、たとえばスペアミント、ペパーミント、ウィンターグリーン、チョウジ、セージ、ユーカリ、マヨラマ、シナモン、レモン、オレンジの油、およびサリチル酸メチルが含まれる。適切な甘味剤には、ショ糖、乳糖、マルトース、キシリトール、シクラミン酸ナトリウム、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、サッカリンなどが含まれる。適切には、着香剤または甘味剤は、それぞれまたは合わせて口腔用組成物の0.1重量%〜5重量%を構成することができる。
【0046】
[0050] 種々の他の物質を本発明の口腔用組成物に含有させることができる:たとえばホワイトニング(増白)剤:過酸化尿素、過酸化カルシウムおよび過酸化水素を含む;保存剤、ビタミン、たとえばビタミンB6、B12、EおよびK、シリコン、クロロフィル化合物、ならびに歯牙過敏性の治療のためのカリウム塩、たとえば硝酸カリウムおよびクエン酸カリウム。これらの作用剤が存在する場合、それらは目的とする特性および特徴に実質的に不都合な影響を及ぼさない量で本発明組成物中に含有される。
【0047】
[0051] 歯磨組成物のためのディスペンサーは、練り歯磨を分注するのに適したチューブ、ポンプ、または他のいずれの容器であってもよい。
[0052] 本発明を実施する際、目的とする効果、たとえばホワイトニング(増白)、ブレスフレッシュニング、齲食予防、疼痛軽減、歯肉の健康、歯石防除などを得るために、利用者は本発明の歯磨組成物をヒトまたは下等動物の希望する領域の歯の表面に適用するだけでよい。組成物を他の口腔表面、たとえば歯肉組織または粘膜組織に適用することもできるが、歯磨組成物を歯に適用した場合に有益性が最も良好に達成されると考えられる。歯磨組成物を歯および/または口腔の表面に直接または間接的に接触させることができる;しかし、歯磨組成物を直接適用することが好ましい。歯磨組成物をいかなる手段でも適用できるが、好ましくはブラシで、または歯磨剤スラリーですすぐことにより適用する。
【0048】
[0053] 本発明の口腔用組成物の製造は、そのような組成物を調製するための種々の標準法のいずれかにより達成される。歯磨剤を製造するために、保湿剤、たとえばグリセリン、グリセロール、ソルビトール、およびプロピレングリコールのうち1種類以上、増粘剤、ならびに抗細菌剤、たとえばトリクロサン、およびビヒクルを含有するビヒクルを調製し、いずれかの界面活性剤を添加し、続いて研磨剤およびフッ化物塩をこのプレミックスとブレンドする。最後に、着香剤を添加し、そしてpHを6.8〜7に調整する。
【0049】
[0054] 以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はそれらに限定されないと理解される。本明細書および特許請求の範囲に述べるすべての量および割合は、別途指示しない限り重量による。
【実施例】
【0050】
実施例1:歯磨配合物
[0055] クエン酸亜鉛として添加した亜鉛陽イオンおよびトリクロサンを必要量のGantrezポリマーと一緒に含有する多数の歯磨配合物を、一般的な工程および装置により配合し、実験室評価を行なって、製品の流動性に対して亜鉛陽イオンがもつ影響を判定した。試料1〜3の配合物は組成物の重量を基準として0.3重量%の共通量のトリクロサンを有し、増粘剤は組成物の重量を基準として0.8重量%の量で存在するキサンタンガムからなっていた。これらの配合物につき、クエン酸亜鉛の量は組成物の重量を基準として0.5から1ないし2重量%まで変動した。
【0051】
[0056] 組成物のブルックフィールド粘度を下記に従って測定した:ジャーまたはチューブ内の製品をブルックフィールド粘度計(Model RVT)下に置き、これをヘリパススタンド(helipath stand)によって一定速度で降下させる。製品と接触した時点で90秒間、測定を続ける。レコーダーにより粘度を時間の関数としてモニターする。歯磨剤の粘度は急速に増大し(スピンドルがペーストの適宜な深さに達するのに伴って)、次いで徐々に数値が増大し始めるであろう。このプロフィール変化に達した後45秒間、粘度の測定を行なう。
【0052】
[0057] 組成物および粘度値を表1に示す。
[0058] ブルックフィールド粘度レベルはかなり低く、各例について50ブルックフィールド単位(BFU)未満であることが分かる。これは、歯磨剤について許容できるほど低い粘度である。
【0053】
[0059] 亜鉛レベルを高めるのに伴なう有意の粘度増大もない。粘度が大きくなる傾向はあるが、このキサンタンガム含有配合物のバルク粘度は、最高レベルの亜鉛においてすら依然として許容できる。キサンタン配合物においてはセルロース増粘に基づくものより粘度漸増の程度がはるかに低いことも分かる。したがって、キサンタン配合物におけるこれらの初期粘度値は感知できるほど経時変化しないはずである。
【0054】
実施例2:比較試料1〜3
[0060] 比較試料1について、表1に示すように、ゲル化系としてすべてCMCを用いたクエン酸亜鉛/Gantrez/トリクロサン配合物は100ブルックフィールド単位を超える初期粘度をもつ。この粘度は消費者が製品を分注するのを妨げ、分散性および口当たりについてほぼ確実に問題を生じるであろう。比較試料2および3については、同様に表1に示すように、ある比率のCMC対カラギーナンに基づくゲル化系を使用し、2つの異なるレベルのクエン酸亜鉛を用いた。粘度は100ブルックフィールド単位未満に降下し、したがって比較例1の場合よりは低かったが、なお許容できないほど高かった。
【0055】
[0061] これらの初期値はエージング経過にわたって漸増してさらに大きな粘度問題となる可能性がきわめて高い。この配合に基づけば、生じるであろう高粘度のため2%のクエン酸亜鉛配合物は考慮すらできないことも注目すべきである。
【0056】
【表1】

【0057】
[0062] 本発明の範囲を、実施例に開示した特定の態様によって限定すべきではない;これらは本発明の幾つかの観点の説明のためのものであり、機能的に均等な態様はいずれも本発明の範囲に含まれる。実際に、本明細書に提示および記載したもののほかに本発明の多様な改変が当業者に明らかになるであろう;これらは特許請求の範囲に含まれるものとする。
【0058】
[0063] 本明細書に引用したすべての参考文献について、それぞれの開示内容全体を全体として本明細書に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.口腔用として許容できるビヒクル;
b.亜鉛イオン源;および
c.多糖系増粘剤であって、多糖主鎖に沿って糖残基単位当たり最大で0.5の荷電基を有する多糖系増粘剤
を含む歯磨組成物。
【請求項2】
多糖系増粘剤がキサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロースのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに接着性物質を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
多糖系増粘剤がキサンタンガムおよびヒドロキシエチルセルロースのうち少なくとも1つからなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
さらに抗細菌剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
抗細菌剤がハロゲン化ジフェニルエーテルを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
多糖系増粘剤が、組成物の重量を基準として0.1から1.5重量%までの量で存在するキサンタンガムからなる、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
キサンタンガムが、組成物の0.5から1重量%までを構成する、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
亜鉛イオン源が有機酸の亜鉛塩を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
亜鉛イオン源がクエン酸亜鉛を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
亜鉛塩が、組成物の重量を基準として0.5から2.5重量%までの量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
亜鉛塩が、組成物の重量を基準として1から2重量%までの量で存在する、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
ハロゲン化ジフェニルエーテルがトリクロサンを含む、請求項6に記載の組成物。
【請求項14】
トリクロサンが、組成物の重量を基準として0.1から1重量%までの量で存在する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
トリクロサンが、組成物の重量を基準として0.2から0.5重量%までの量で存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
無水マレイン酸コポリマーが、30,000から1,000,000g/モルまでの範囲の分子量を有するメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマーを含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
接着性物質が無水マレイン酸コポリマーを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項18】
a.口腔用として許容できるビヒクル;
b.抗細菌剤としてのトリクロサン;
c.抗細菌剤の増強剤としてのメチルビニルエーテル/無水マレイン酸コポリマー;
d.亜鉛イオン源としての有機酸の亜鉛塩;および
e.多糖系増粘剤であって、キサンタンガムからなる多糖系増粘剤
を含む歯磨組成物。
【請求項19】
キサンタンガムが組成物の重量を基準として0.5から1.5重量%までの量で存在し、亜鉛塩が組成物の重量を基準として1から2.5重量%までの量で存在し、トリクロサンが組成物の重量を基準として0.1から1重量%までの量で存在する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
細菌性歯垢の蓄積を治療および予防するための方法であって、請求項1に記載の歯磨組成物を口腔に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2012−522777(P2012−522777A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−503394(P2012−503394)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/039268
【国際公開番号】WO2010/114546
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(590002611)コルゲート・パーモリブ・カンパニー (147)
【氏名又は名称原語表記】COLGATE−PALMOLIVE COMPANY
【Fターム(参考)】