説明

歯科検査用シート及び歯科検査用具

【課題】 齲歯等の早期発見を実現することができ、利用するときに専門的な技術や知識が必要とされない歯科検査用シートを提供すること。
【解決手段】 歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が配置され、前記検査用領域には、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬が保持されていることを特徴とする歯科検査用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科検査用シート、及び、当該歯科検査用シートを備える歯科検査用具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、齲歯の原因が、プラークの中に含まれるミュータンス連鎖球菌等の齲蝕原因菌であることは知られている。齲蝕原因菌が食品に含まれる糖分を分解して乳酸を産出し、この乳酸が歯のエナメル質を溶かすのである。
【0003】
ところで、齲蝕がエナメル質のみにとどまっている場合には、齲蝕部分を削除して修復材を詰めるという比較的簡単な方法で、齲歯を治療することが可能である。しかし、齲蝕が進行するにつれ、治療に麻酔を必要としたり、神経の除去が必要になったりと、治療がより困難になっていくのが一般的である。そのため、齲歯の治療を行う上で、齲歯の早期発見は大変重要なことである。
【0004】
しかしながら、初期の齲歯は痛みなどの自覚症状をともなわないため、齲歯の早期発見は困難であるという問題があった。齲蝕がエナメル質に限局している間は患者が痛みを感じることは殆どなく、齲蝕が象牙質に達して象牙細管が露出することで、初めて患者が歯痛を覚えることが多いからである。
【0005】
このような問題を解決すべく、従来、例えば、唾液を採取し、薬剤を用いて唾液中のミュータンス連鎖球菌等を検査することにより、齲歯に対する感受性を測定する方法が存在する(例えば、特許文献1参照)。また、歯垢を採取し、pH指示薬と糖類とを用いて、歯垢からの酸の産出量を測定する方法が存在する(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特表2002−516997号公報
【特許文献2】特開2004−205210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、一旦、唾液を採取し、採取した唾液に対して薬剤を用いる方法であるため、手順が煩雑であり、個人が手軽に実施することは困難であるという問題があった。また、特許文献2に記載の方法は、歯垢を採取し、採取した歯垢に対してpH指示薬と糖類とを用いる方法であるため、特許文献1に記載の方法と同様に、手順が煩雑であり、個人が手軽に実施することは困難であるという問題があった。
【0007】
個人でいつでも簡単に実施できる方法でなければ、真に齲歯の早期発見につながる方法であるとは言い難い。そのため、誰でも簡単に実施可能な、齲歯を早期に発見することができる方法が待望されている。
【0008】
また、特許文献1、2に記載の方法では、唾液や歯垢を口外に取り出した後に検査を行うため、齲歯等の位置を把握することができないという問題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、齲歯等の早期発見を実現することができ、利用するときに専門的な技術や知識が必要とされない歯科検査用シート及び歯科検査用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下のようなものを提供する。
(1) 歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が配置され、上記検査用領域には、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬が保持されていることを特徴とする歯科検査用シート。
【0011】
(1)の発明によれば、歯科検査用シートを口内に入れて噛み合わせることにより、歯面と歯面接触部とが接触し、歯面接触部に保持された指示薬が唾液等の液性によって変色するため、唾液等を口内から採取することなく指示薬の色から齲歯等の有無を認識することができる。従って、専門的な技術や知識を必要とせず、個人で簡単に検査を行うことができ、痛み等の自覚症状が生じる前に齲歯を発見することが可能となる。
また、歯面接触部が歯列に沿う略U字形状を有していて、歯科検査用シートを口内に入れて噛み合わせた際に、歯面と歯面接触部とが略対応して接触するため、指示薬が変色した位置から概ね齲歯等の位置を把握することができる。従って、例えば、初期症状が生じている位置や患者自身が記憶している罹患履歴等と指示薬の変色位置とを照合し、齲歯等の有無を判断することも可能であり、利便性に優れる。
【0012】
さらに本発明は、以下のようなものを提供する。
(2) 歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が線対称に2つ配置され、当該対称軸で折り畳まれ得るように構成され、上記検査用領域には、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬が保持されていることを特徴とする歯科検査用シート。
【0013】
(2)の発明によれば、歯科検査用シートを対称軸で折り畳んで口内に入れて噛み合わせることにより、上下の歯面と歯面接触部とが夫々接触し、歯面接触部に保持された指示薬が唾液等の液性によって変色するため、唾液等を口内から採取することなく指示薬の色から齲歯等の有無を認識することができる。従って、専門的な技術や知識を必要とせず、個人で簡単に検査を行うことができ、痛み等の自覚症状が生じる前に齲歯を発見することが可能になる。さらに、上下の歯を一度に検査することができるため、利便性に優れる。
【0014】
さらに本発明は、以下のようなものを提供する。
(3) 歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が表裏同位置に配置され、表面と裏面との間に撥水性の層が形成され、上記検査用領域は、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬を保持していることを特徴とする歯科検査用シート。
【0015】
(3)の発明によれば、歯科検査用シートを口内に入れて噛み合わせることにより、歯面と歯面接触部とが接触し、歯面接触部に保持された指示薬が唾液等の液性によって変色するため、唾液等を口内から採取することなく指示薬の色から齲歯等の有無を認識することができる。従って、専門的な技術や知識を必要とせず、個人で簡単に検査を行うことができ、痛み等の自覚症状が生じる前に齲歯を発見することが可能となる。
また、表面と裏面との間に撥水性の層が形成されているため、一方の面に接触した唾液等が歯科検査用シート内部に浸透してもう一方の面に保持されている指示薬と反応することを防止することができる。従って、上下の歯を一度に検査することができるため、利便性に優れる。
【0016】
さらに本発明は、以下のようなものを提供する。
(4) 上記(1)の2枚の歯科検査用シートと、該歯科検査用シートを重ね合わせるときにその間に挟まれる撥水性の分離シートとからなることを特徴とする歯科検査用具。
【0017】
(4)の発明によれば、2枚の歯科検査用シートの間に撥水性の分離シートを挟むことにより、一方の歯科検査用シートに接触した唾液等が他方の歯科検査用シートに浸透して該歯科検査用シートに保持されている指示薬と反応することを防止することができる。従って、2枚の歯科検査用シートの間に分離シートを挟んで口内に入れ、噛み合わせることにより、上下の歯を一度に検査することができ、利便性に優れる。
【0018】
さらに本発明は、以下のようなものを提供する。
(5) 上記(2)の歯科検査用シートと、該歯科検査用シートが折り畳まれたときにその間に挟まれる撥水性の分離シートとからなることを特徴とする歯科検査用具。
【0019】
(5)の発明によれば、歯科検査用シートを折り畳んでその間に分離シートを挟むことに
より、一方の面に接触した唾液等が他方の面まで浸透して該面に保持された指示薬と反応することを防止することができる。従って、歯科検査用シートを折り畳んで分離シートを挟み、口内に入れて噛み合わせることにより、上下の歯を一度に検査することができ、利便性に優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、齲歯等の早期発見を実現することができ、利用するときに専門的な技術や知識が必要とされない歯科検査用シート及び歯科検査用具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1(a)は、本発明に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
歯科検査用シート11は、合成樹脂製の基盤シート12と、基盤シート12の一面に貼り付けられたリトマス試験紙13とを備える。基盤シート12は、略矩形状の把持部12aと略半楕円形状の挿入部12bとからなり、把持部12aは、挿入部12b外周の一部を構成する円弧で最も曲率の大きい先端部17から突出する形状を有している。なお、図中、18は、挿入部12b外周の一部を構成する直線からなる奥辺を示し、19a、19bは、挿入部12b外周の一部を構成する円弧で相対的に曲率の小さい側辺を示す。
把持部12aは、被検査者が把持する部分であり、挿入部12bは、被検査者の口内に挿入される部分である。このように、本発明において、歯科検査用シートは、把持部と挿入部とを備えることが望ましい。把持部と挿入部とを区別することによって、被検査者の手に唾液が接触することを防止することができるため、衛生的に検査を行うことができるとともに、手が接触したことによって検査結果に影響が生じることを防止することができるからである。
【0022】
リトマス試験紙13は、歯列に沿う略U字形状を有している。貼り付けられたリトマス試験紙13の表面は、検査用領域14となる。図中、二点鎖線で囲われた領域15は、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域14は、歯面接触領域15を含む。
【0023】
本実施形態において、基盤シート12は、合成樹脂製のシートである場合について説明したが、本発明において、基盤シート12は、唾液等の液体に接触したり歯面に接触したりしても破損しない程度の強度を有していれば、その材質は、特に限定されるものではない。基盤シート12の材質としては、例えば、合成樹脂、紙、合成樹脂膜で被覆された紙等を挙げることができる。また、基盤シート12の形状については、歯面接触領域15を含む形状であり、且つ、口に入る形状であれば、特に限定されない。また、本実施形態においては、検査用領域14をその表面に有するリトマス試験紙13が、歯列に沿う略U字形状である場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば基盤シート12を全て覆う形状であってもよい。
なお、本発明において、検査用領域は、必ずしも、歯面接触領域の全部を含む形状である必要はなく、歯面接触領域の一部を含むものであってもよい。このようにした場合には、歯面の一部のみを検査することが可能となる。
【0024】
被検査者は、歯科検査用シート11を用いて検査を行う際、把持部12aを手に持って、挿入部12bを口内に挿入して噛む。すると、リトマス試験紙13が貼り付けられている面の側の被検査者の歯面が、歯面接触領域15に接触する。歯面接触領域15と接触した歯が齲歯である場合、リトマス試験紙13の齲歯と接触した箇所が赤く変色する。これは、齲歯の表面が酸性となっているためである。これにより、被検査者は、齲歯が存在している可能性が高いこと、及び、齲歯のおおよその位置を知ることができる。
被検査者が歯科検査用シート11を口内に入れるときに把持部12aを手に持つことにより、リトマス試験紙13が被検査者の手に触れ、齲歯の有無と無関係に反応が起こる可能性が低減する。
【0025】
図1(b)は、本発明に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
歯科検査用シート21は、図1(a)に示した歯科検査用シート11のリトマス試験紙13が、複数の断片23aからなるリトマス試験紙群23に置き換えられたものである。
リトマス試験紙群23を構成する各断片23aは、互いに所定幅の隙間部26をあけて、全体として歯面接触領域25に沿うように、合成樹脂製の基盤シート22に貼り付けられている。
リトマス試験紙群23は、全体として、歯列に沿う略U字形状を有している。貼り付けられたリトマス試験紙群23の表面は、検査用領域24となる。図中、二点鎖線で囲われた領域25は、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域24は、歯面接触領域25を含む。
【0026】
リトマス試験紙群23を構成する断片23aが、互いに所定幅の隙間部26をあけて、基盤シート22に貼り付けられているため、1枚の断片23aに接触した唾液等の液体が他の断片23aに浸透する可能性が低くなる。これにより、齲歯の表面に接触していない断片23aが変色する可能性は低くなる。従って、図1(b)に示す歯科検査用シート21によれば、齲歯の位置をより正確に特定することが可能になる。
【0027】
図1(b)に示すように、リトマス試験紙群23を構成する断片23aが、互いに所定幅の隙間部26をあけて、基盤シート22に貼り付けられる場合、基盤シート22の材質は、合成樹脂等、水分を吸収しない材質であることが望ましい。
1枚の断片23aに浸透した唾液等の液体が基盤シート22を経由して他の断片23aに浸透してしまうことを防止することができるからである。
【0028】
本実施形態では、断片23aが歯列の個々の歯に対応するように配置されている場合について説明するが、本発明において、断片23aの配置についてはこの例に限定されるものではない。すわなち、リトマス試験紙群23を構成する断片23aが配置される場合、断片23aは、各断片23a間の隙間部26が歯面接触領域24を横断し且つ全体として歯面接触領域24に沿うように配置されていれば、必ずしも、個々の歯に対応するように配置されている必要はない。例えば、左右の奥歯と、前歯とに対応するように、3つの断片が配置されていてもよい。このようにした場合、被検査者は、齲歯のおおよその位置を把握することができる。
【0029】
図1(a)、(b)では、基盤シート上の検査用領域にリトマス試験紙が貼り付けられている場合について例示した。
本実施形態では、指示薬がリトマスである場合について説明するが、本発明において、指示薬としては、特に限定されるものではなく、例えば、ブロモチモールブルー(BTB)を挙げることができる。また、指示薬が検査用領域上に保持される形態としては、図1(a)、(b)に示したように、指示薬が浸された試験紙が基盤シート上に貼り付けられる形態以外に、基盤シートの一部が指示薬に含浸されている形態を挙げることができる。このようにした場合、指示薬が含浸された部分の表面が、検査用領域となる。
【0030】
図1(c)は、本発明に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
【0031】
歯科検査用シート31を構成する基盤シート32は、検査用領域34に予めpH指示薬37を含浸している。図中、二点鎖線で囲われた領域35は、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域34は、歯面接触領域35を含む。検査用領域34は、シリコーン樹脂製の撥水性被膜38によって、歯列の個々の歯に対応する形で複数の区画37aに区切られている。そのため、検査用領域34の一区画37aと接触した液体が他の区画37aに浸透する可能性は低くなる。これにより、齲歯の表面に接触していない箇所のpH指示薬37が変色する可能性は低くなる。従って、図1(c)に示した歯科検査用シート31によれば、齲歯の位置をより正確に特定することが可能になる。
【0032】
本実施形態では、検査用領域34が歯列の個々の歯に対応するように区切られている場合について説明するが、本発明において、検査用領域34が区画される態様については、この例に限定されるものではない。すなわち、歯面接触領域34を横断する形状の撥水性被膜38によって検査用領域34が区画されていれば、必ずしも、個々の歯に対応するように検査用領域34が区画されている必要はない。
【0033】
本実施形態では、撥水性被膜38がシリコーン樹脂からなる場合について説明したが、本発明において、撥水性被膜38の材質は、撥水性を有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0034】
図2(a)は、本発明に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
歯科検査用シート41は、合成樹脂製の基盤シート42と、基盤シート42の一面に貼り付けられたリトマス試験紙43とを備える。基盤シート42は、略矩形状の把持部42aと略楕円形状の挿入部42bとからなり、把持部42aは、挿入部42b外周を構成する円弧で最も曲率の大きい先端部47から突出する形状を有している。図中、49は、基盤シート42を構成する挿入部42bの対称軸であり、対称軸49は、略楕円形状を有する挿入部42bの短軸に相当する。
【0035】
基盤シート42の一面には、挿入部42の外周に沿うように、略楕円環形状を有するリトマス試験紙43が貼り付けられている。歯科検査用シート42には、リトマス試験紙43が貼着された面に、対称軸49に沿った溝49aが押圧加工によって形成されていて、歯科検査用シート42は、溝49aに沿って折り畳まれる(図2(b)参照)。なお、溝49aは、リトマス試験紙43が貼着されていない面に形成されていてもよい。
リトマス試験紙43が貼着された領域は、対称軸49(溝49a)を境界として、一方が検査用領域44aに、もう一方が検査用領域44bとなる。図中、二点鎖線で囲われた領域45a及び一点鎖線で囲われた領域45bは、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域44aは、歯面接触領域45aを含む。検査用領域44bは、歯面接触領域45bを含む。
【0036】
歯科検査用シート41は、リトマス試験紙43が貼り付けられた面が外側になるように、溝49aを折り目にして折り畳まれて使用される。折り畳まれた歯科検査用シート41を用いることによって、上下両方の歯面を同時に検査することが可能となる。
また、基盤シート42上には、披検査者が、歯科検査用シートのどちらの面が、上下のどちらの歯に接触するか又は接触したかを認識可能とするための指標46a、46bが描かれている。指標46aは、円で囲まれた「上」の文字を示すものであり、指標46bは、円で囲まれた「下」の文字を示すものである。図2(a)に示す例では、歯面接触領域45aが被検査者の上側の歯面に接触し、歯面接触領域45bが被検査者の下側の歯面に接触することになる。
図2(b)は、折り畳まれようとしている図2(a)に示した歯科検査用シートを模式的に示す斜視図である。
【0037】
本実施形態では、基盤シート42上の対称軸49に沿って溝49aが形成され、溝49aを折り目にして折り畳まれて使用される場合について説明するが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1(a)に示す2枚の歯科検査用シート11の奥辺18同士がシール等によって接続されていてもよい。
【0038】
図2(c)は、歯科検査用シートの他の一例を示す平面図である。
歯科検査用シート51は、合成樹脂製の基盤シート52と、基盤シート52の一面に貼り付けられたリトマス試験紙53とを備える。基盤シート52は、把持部52aと挿入部52bとからなる。挿入部52bは、2つの略半楕円が当該楕円の相対的に曲率の小さい側辺同士を接して並んだ形状を有する。把持部52aは、挿入部52b外周を構成する円弧で最も曲率の大きい先端部57の一方から突出する矩形状を有する。
図中、59は、基盤シート52を構成する挿入部52bの対称軸であり、対称軸59は、挿入部52bを構成する2つの略楕円の接線に相当する。なお、図中、58は、挿入部52b外周の一部を構成する直線からなる奥辺を示す。
【0039】
基盤シート52の一面には、奥辺58を除く挿入部52の外周に沿うように、略半楕円が相対的に曲率の小さい側辺同士を接して線対称になるように2つ並んだ形状を有するリトマス試験紙53が貼り付けられている。歯科検査用シート52には、リトマス試験紙53が貼着された面に、対称軸59に沿った溝59aが押圧加工によって形成されていて、歯科検査用シート52は、溝59aに沿って折り畳まれる。なお、溝59aは、リトマス試験紙53が貼着されていない面に形成されていてもよい。
リトマス試験紙53が貼着された領域は、対称軸59(溝59a)を境界として、一方が検査用領域54aに、もう一方が検査用領域54bとなる。図中、二点鎖線で囲われた領域54a及び一点鎖線で囲われた領域54bは、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域54aは、歯面接触領域55aを含む。検査用領域54bは、歯面接触領域55bを含む。
【0040】
歯科検査用シート51は、リトマス試験紙53が貼り付けられた面が外側になるように、溝59aを折り目にして折り畳まれて使用される。折り畳まれた歯科検査用シート51を用いることによって、上下両方の歯面を同時に検査することが可能となる。
また、基盤シート52上には、被検査者が、歯科検査用シートのどちらの面が、上下のどちらの歯に接触するか又は接触したかを認識可能とするための指標56a、56bが描かれている。指標56aは、円で囲まれた「上」の文字を示すものであり、指標56bは、円で囲まれた「下」の文字を示すものである。図2(c)に示す例では、歯面接触領域55aが被検査者の上側の歯面に接触し、歯面接触領域55bが被検査者の下側の歯面に接触することになる。
【0041】
図2(d)は、歯科検査用シートの他の一例を示す平面図である。
歯科検査用シート61は、矩形状の合成樹脂製の基盤シート62と、基盤シート62の一面に貼り付けられたリトマス試験紙63とを備える。図中、69は、基盤シート62を構成する挿入部62bの対称軸であり、対称軸69は、基盤シート62の2つの長辺の中間点を結ぶ直線に相当する。
【0042】
基盤シート62の一面には、同形の略半楕円が相対的に曲率の大きい先端部同士を接して2つ並んだ形状を有するリトマス試験紙63が、対称軸69と2つの楕円の接線が重なるように貼り付けられている。歯科検査用シート62には、リトマス試験紙63が貼着された面に、対称軸69に沿った溝69aが押圧加工によって形成されていて、歯科検査用シート62は、溝69aに沿って折り畳まれる。なお、溝69aは、リトマス試験紙63が貼着されていない面に形成されていてもよい。
リトマス試験紙63が貼着された領域は、対称軸69(溝69a)を境界として、一方が検査用領域64aに、もう一方が検査用領域64bとなる。図中、二点鎖線で囲われた領域64a及び一点鎖線で囲われた領域64bは、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域64aは、歯面接触領域65aを含む。検査用領域64bは、歯面接触領域65bを含む。
【0043】
歯科検査用シート61は、リトマス試験紙63が貼り付けられた面が外側になるように、溝69aを折り目にして折り畳まれて使用される。折り畳まれた歯科検査用シート61を用いることによって、上下両方の歯面を同時に検査することが可能となる。
また、基盤シート62上には、披検査者が、歯科検査用シートのどちらの面が、上下のどちらの歯に接触するか又は接触したかを認識可能とするための指標66a、66bが描かれている。指標66aは、円で囲まれた「上」の文字を示すものであり、指標66bは、円で囲まれた「下」の文字を示すものである。図2(d)に示す例では、歯面接触領域66aが被検査者の上側の歯面に接触し、歯面接触領域66bが被検査者の下側の歯面に接触することになる。
【0044】
図2(a)〜(d)の実施形態において、図1(b)に示した歯科検査用シート21と同様に、リトマス試験紙の代わりに複数の断片からなるリトマス試験紙群が貼着されていてもよい。また、本実施形態においては、検査用領域は貼り付けられたリトマス試験紙の表面であるとしたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、リトマス試験紙の代わりにpH試験紙が貼り付けられていたり、基盤シートに直接BTB溶液等のpH指示薬が含浸されていたりしてもよい。
【0045】
図3は、本発明に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
歯科検査用シート71は、図1(a)に示した歯科検査用シート11が表裏両面に検査用領域を有している。また、表面と裏面との間には撥水性層80が形成されている。
【0046】
歯科検査用シート71は、基盤シート72、基盤シート72の表裏各面に貼り付けられたリトマス試験紙73a及び73b、並びに、表面と裏面との間に配置された撥水性層80を備える。リトマス試験紙73a、73bは、歯列に沿う略U字形状である。貼り付けられたリトマス試験紙73aの表面は、検査用領域74となる。図中、二点鎖線で囲われた領域75は、検査時に被検査者の歯面に接触する歯面接触領域を示す。検査用領域74は、歯面接触領域75を含む。
また、リトマス試験紙73bの表面は、検査用領域(図示せず)となる。該検査用領域は、歯面接触領域75の裏面に存在する歯面接触領域(図示せず)を含む。
【0047】
歯科検査用シート71を用いることによって、上下両方の歯面を同時に検査することが可能となる。基盤シート72上には、披検査者が、歯科検査用シート71のどちらの面が、上下のどちらの歯に接触するか又は接触したかを認識可能とするための指標76が描かれている。指標76は、円で囲まれた「上」の文字を示すものである。図3に示す例では、歯面接触領域75が被検査者の上側の歯面に接触することになる。
【0048】
基盤シート72の表面と裏面との間に撥水性層80を備えることにより、リトマス試験紙73aとリトマス試験紙73bとのいずれか一方と接触した唾液等の液体が、基盤シート72を通じて、他方のリトマス試験紙に浸透する可能性は低くなる。従って、齲歯と接触していない方のリトマス試験紙が、もう一方のリトマス試験紙から浸透してきた液体に反応して変色する可能性は低くなる。これにより、齲歯の位置がより特定されやすくなる。
【0049】
図3の実施形態において、図1(b)に示した歯科検査用シート21と同様に、複数の断片からなるリトマス試験紙群を用いることとしてもよい。また、本実施形態においては、検査用領域は貼り付けられたリトマス試験紙の表面であるとしたが、本発明はこの例に限定されない。例えば、リトマス試験紙の代わりにpH試験紙が貼り付けられていたり、基盤シートに直接BTB溶液等のpH指示薬が含浸されていたりしてもよい。
【0050】
図3の実施形態において、基盤シート72の表面と裏面との間に撥水性層80が形成されている場合について説明したが、基盤シート72が撥水性の物質で作られている場合、撥水性層80は形成されていなくてもよい。
【0051】
図4は、図1に示した2枚の歯科検査用シートと、1枚の撥水性分離シートとによって構成される歯科検査用具の一例を模式的に示す斜視図である。
歯科検査用具81を使用するときは、合成樹脂製の撥水性分離シート82を2枚の歯科検査用シート11の間に挟む。このとき歯科検査用シート11のリトマス試験紙13が貼り付けられていない側の面が、撥水性分離シート82と接する。
本実施形態においては、撥水性分離シート82の材質が合成樹脂である場合について説明したが、本発明において、材質は水分を吸収しない物質であればよく、この例に限定されない。撥水性分離シート82の材質としては、例えば金属、合成樹脂膜で覆われた紙等を挙げることができる。
【0052】
検査時に、2枚の歯科検査用シート11の間に撥水性分離シート82を挟むことにより、一方の歯科検査用シート11と接触した液体が、もう一方の歯科検査用シート11に浸透する可能性は低くなる。従って、齲歯と接触していない方の歯科検査用シート11が、もう一方の歯科検査用シート11から浸透してきた液体に反応して変色する可能性は低くなる。これにより、齲歯の位置がより特定されやすくなる。また、歯科検査用シート11を歯科検査用具81の形で用いることにより、上下の歯を一度に検査することができるため、利便性に優れる。
【0053】
図5は、図2に示した2枚の歯科検査用シートと1枚の撥水性分離シートとによって構成される歯科検査用具の一例を模式的に示す斜視図である。
歯科検査用具91を使用するときは、撥水性分離シート82を歯科検査用シート41の内側に挟む。
【0054】
検査時に、歯科検査用シート41の内側に撥水性分離シート82を挟むことにより、歯科検査用シート21の一方の面と接触した液体が、もう一方の面に浸透する可能性は低くなる。従って、齲歯と接触していない方の面のリトマス試験紙が、もう一方の面から浸透してきた液体に反応して変色する可能性は低くなる。これにより、齲歯の位置がより特定されやすくなる。
【0055】
以上、本発明の実施形態の説明において、齲歯が検査の対象になるものとして説明したが、本発明において、検査の対象は齲歯に限定されない。例えば、歯肉炎等の歯周疾患は、齲蝕と同じく、歯垢を主要な原因として発生する。そのため、上述した実施形態の歯科検査用シート及び歯科検査器具は、歯周疾患の発見に利用することも可能である。
【0056】
また、上記の実施形態において、リトマス試験紙やpH指示薬等、酸性の液体と接触したときに色が変化する指示薬を用いる場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。表面が酸性であること以外の齲歯の特徴を利用して、その特徴を検出したときに変色する他の指示薬を、検査用領域に保持するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)〜(c)は、それぞれ本実施形態に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】(a)〜(d)は、それぞれ本実施形態に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
【図3】本実施形態に係る歯科検査用シートの一例を模式的に示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係る歯科検査器具の一例を模式的に示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係る歯科検査器具の一例を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0058】
11 歯科検査用シート
12 基盤シート
13 リトマス試験紙
14 検査用領域
15 歯面接触領域
80 撥水性層
82 撥水性分離シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が配置され、前記検査用領域には、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬が保持されていることを特徴とする歯科検査用シート。
【請求項2】
歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が線対称に2つ配置され、当該対称軸で折り畳まれ得るように構成され、前記検査用領域には、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬が保持されていることを特徴とする歯科検査用シート。
【請求項3】
歯列に沿う略U字形状を有する歯面接触領域を少なくとも含む検査用領域が表裏同位置に配置され、表面と裏面との間に撥水性の層が形成され、前記検査用領域は、接触した液体の性質によって色が変化する指示薬を保持していることを特徴とする歯科検査用シート。
【請求項4】
請求項1に記載の2枚の歯科検査用シートと、該歯科検査用シートを重ね合わせるときにその間に挟まれる撥水性の分離シートとからなることを特徴とする歯科検査用具。
【請求項5】
請求項2に記載の歯科検査用シートと、該歯科検査用シートが折り畳まれたときにその間に挟まれる撥水性の分離シートとからなることを特徴とする歯科検査用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−167224(P2007−167224A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−366966(P2005−366966)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(598098526)アルゼ株式会社 (7,628)
【Fターム(参考)】