説明

歯科治療用椅子

【課題】患者が座る時に、ワークテーブル上の歯科治療器材やインスツルメントホルダに取り付けられているマイクロエンジン,エアータービン等のインスツルメントが患者の目に触れず、患者に余計な恐怖感を与えない歯科治療用椅子の提供。
【解決手段】基台20に回動自在に取り付けられた回動リング30,40と、該回動リングに取り付けられたワークテーブル32とを有し、ワークテーブル32はスピットン52を有し、安頭台11の周りを回転移動可能である。ワークテーブル32及びインスツルメント33をヘッドレスト11の後側にし、患者が治療用椅子に腰掛けるときに、ワークテーブル上の機材やインスツルメントホルダ上のインスツルメントが患者の目に入らないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療用椅子、より詳細には、ワークテーブルやインスツルメントホルダを患者の頭部の周りに回動自在に取り付け、患者が治療椅子に座る時に、ワークテーブル上に載置されている歯科治療器材やインスツルメントホルダに取り付けられているマイクロエンジン,エアータービン等のインスツルメントが患者の目に触れないようにし、患者に余計な恐怖感を与えないようにした歯科治療用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、本発明が適用される歯科治療用椅子を具備する歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図で、該歯科治療ユニットは、歯科治療用椅子1,ワークテーブル2,スピットン3,無影灯4,ドクタ(術者)用インスツルメントホルダ5,フットスイッチ6,アシスタントインスツルメントホルダ7,ハンドピース(インスツルメント)8,インスツルメントホース9等から成り、インスツルメントホルダ5には、歯科治療において術者が使用する種々のハンドピース、例えば、エアータービン、マイクロエンジン、超音波スケーラ、マルチシリンジ等のインスツルメント8が収納されており、周知のように、歯科治療に当り、患者は治療椅子1に座り、頭を安頭台に固定して治療を受ける。治療中、術者は治療椅子1を上下動,倒起動,傾斜動等させて、患者を治療しやすい姿勢にして治療を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述のごとき歯科治療ユニットにおいては、ワークテーブル2の上には歯科治療に必要な種々の器材、例えば、ピンセットや鋏、更には、ガーゼ,薬剤瓶等が載置されており、患者が治療椅子に座る時に、これら器材が患者の目に入り、患者に恐怖感を与える。
【0004】
さらに、ワークテーブル2には、インスツルメントホルダ5が取り付けられており、該インスツルメントホルダ5には、歯科治療に必要な種々のインスツルメント、例えば、エアータービン、マイクロエンジン等8が搭載されており、これらも、患者に恐怖感を与えていた。
【0005】
本発明は、上述のごとき患者に恐怖感を与えるワークテーブルやインスツルメントホルダを、患者が治療椅子に座る際に、患者の目に触れないようにし、もって、患者に恐怖感を与えないようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、歯科治療用椅子の基台に回動自在に取り付けられた第1の回動リングと、該第1の回動リングに取り付けられたワークテーブルとを有し、前記第1の回動リングを前記基台のまわりに回動させることにより前記ワークテーブルが安頭台の周りを回転移動可能であることを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ワークテーブルはドクタ用インスツルメントホルダを一体的に具備することを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記基台は回動自在に取り付けられた第2の回動リングを更に有し、該第2の回動リングにアシスタント用インスツルメントホルダを一体的に具備することを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記基台は回動自在に取り付けられた第3の回動リングを更に有し、該第3の回動リングにスピットンを一体的に具備することを特徴としたものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3の発明において、前記ワークテーブル及びアシスタント用インスツルメントホルダは、前記安頭台の後側を回動して、当該歯科治療用椅子の左右反対の側に移動可能であることを特徴としたものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、前記スピットンは無影灯を一体的に具備することを特徴としたものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記基台は回動自在に取り付けられた第4の回動リングを更に有し、該第4の回動リングに無影灯を一体的に具備することを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、ワークテーブルやインスツルメントホルダを歯科治療用椅子の後部等に位置させることができるので、患者が歯科治療用椅子に腰掛ける際、ワークテーブルの上に載置されている歯科治療に必要な種々の器材、例えば、ピンセット,鋏,ガーゼ,薬剤瓶等、更には、インスツルメントホルダに搭載されている歯科治療に必要な種々のインスツルメント、例えば、エアータービン,マイクロエンジン等が、患者が治療椅子に座る際に、患者の目に触れないようにしたので、歯科治療に先立って、患者に恐怖感を与えるようなことはない。
【0014】
更には、ワークテーブル(及びドクタ用インスツルメントホルダ)とアシスタント用インスツルメントの位置を治療椅子の左右反対側の位置に交換可能に配置することができるので、右利きのドクタにも左利きのドクタにも容易に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明による歯科治療用椅子の一実施例を説明するための要部概略構成図で、図1(A)は患者が歯科治療用椅子に座る際におけるワークテーブル及びインスツルメントホルダの配置例を示す要部概略側面図、図1(B)は歯科治療中におけるワークテーブル及びインスツルメントホルダの配置例を示す要部概略平面図、図1(C)は患者が歯科治療用椅子に座る際におけるワークテーブル及びインスツルメントホルダの配置例を示す要部概略平面図で、図中、10は本発明による歯科治療用椅子の着座部を示し、該着座部10は、図示例の場合、ヘッドレスト(安頭台)11、バックレスト12、コンターシート13、レッグレスト14、フットステップ15等からなるが、該着座部は、レッグレスト及びフットステップがコンターシートと一体的に構成されたものでもよく、該着座部10を上下動、起倒動、傾斜動させて、診療しやすい状態にして歯科治療を行う。
【0016】
図1(A)において、20は前記着座部10を搭載する基台で、該基台20内には前記着座部10を上下動、起倒動、傾斜動等させる機構が具備されているが、本発明においては、該基台20の回りに、回動リング30が回動自在に取り付けられており、該回動リング30にはアーム31を介してワークテーブル32が取り付けられている。この回動リング30は、図1(B)に矢印Aにて示すように、基台20に対して回動自在に取り付けられており、この回動リング30を回転することによりワークテーブル32は、少なくとも、図1(B)に示す診療位置からバックレスト12の後側、つまり、図1(A)又は図1(C)に示す位置まで回動可能に取り付けられている。
【0017】
従って、ワークテーブル32は、図1(B)に矢印Aにて示すように、患者の頭部(ヘッドレスト)11のまわりを回動可能に移動することができ、患者が歯科治療用椅子に腰掛ける際に、ヘッドレストの後側(従って、バックレスト12の後側)に、図1(A)又は図1(C)に示す状態で位置させておくと、患者が治療椅子に乗る際、ワークテーブル32が患者の目に入るようなことはなく、従って、患者に余計な恐怖感を与えるようなことはない。
【0018】
ワークテーブル32には、通常、図示のように、インスツルメントホルダ33が一体的に取り付けられており、回動リング30を回動すると、インスツルメントホルダ33に搭載されているドクタ用インスツルメント34も一緒に回動されて、ヘッドレスト11の後側に位置され、患者が治療椅子に腰掛ける際、これらインスツルメント34が患者の目に触れる心配もない。
【0019】
図2は、図1に示した歯科治療用椅子に、更に、アシスタント用のインスツルメントホルダをも回動自在に取り付けた場合の実施例を説明するための図で、図2(A)は患者が歯科治療用椅子に座る際におけるワークテーブル及びインスツルメントホルダの配置例を示す要部概略側面図、図2(B)は歯科治療中におけるワークテーブル及びインスツルメントホルダの配置例を示す要部概略平面図、図2(C)は患者が歯科治療用椅子に座る際におけるワークテーブル及びインスツルメントホルダの配置例を示す要部概略平面図で、図中、40は歯科治療用椅子の基台20に回動自在に取り付けられた第2(回動リング30と区別する意味で第2とした)の回動リングで、該回動リング40にはアーム41を介してアシスタント用のインスツルメントホルダ42が取り付けられ、該ホルダ42にはアシスタント用のインスツルメント43、例えば、排唾チューブ,吸引(バキューム)管43等が取り付けられている。
【0020】
このアシスタント用のインスツルメントホルダ42の回動リング40も前記ワークテーブル用の回動リング30と同様、図2(B)に示すように、ヘッドレスト11のまわりを矢印Bにて示すように回動され、患者が治療用椅子に腰掛ける際、図2(A)又は図2(C)に示すように、バックレスト12の後側に回動され、患者の目に入らないように位置される。
【0021】
図2(B)は、右利きの術者がワークテーブル32(及びドクタ用インスツルメントホルダ33)を使用する時の配置例を示すが、左利きの術者が使用するときは、これらワークテーブル32(及びドクタ用インスツルメントホルダ33)及びアシスタント用インスツルメントホルダ43の位置を図示状態から反対側の位置、すなわち、歯科治療用椅子に対して左右反対側の位置にし、その状態で、術者及びアシスタントは、通常の歯科治療を行う。
【0022】
更には、ドクタ用インスツルメントホルダ33とアシスタント用インスツルメントホルダ42を、図2(C)に示すように、近接,対向させると、アシスタントは、例えば、Aにて示す位置にて、ドクタ用インスツルメント34とアシスタント用インスツルメント43を移動することなく、メンテナンス(インスツルメントの交換等)を行うことができる。
【0023】
以上には、歯科治療用椅子の基台20に、2段に回動リング30,40を設け、それぞれの回動リングにドクタ用インスツルメントホルダ及びアシスタント用のインスツルメントホルダを取り付けるようにした例を示したが、更には、基台20に同様の第3,第4の回動リングを設け、これら回動リングにスピットン或いは無影灯を取り付けるようにしておくと、これらスピットン及び無影灯とも、右利きの術者と左利きの術者とで、容易にその配置関係を変更することができ、右利きの術者にも左利きの術者にも容易に対応させることができる。
【0024】
図2において、50はスピットン取り付け用の回動リング(便宜的に第3の回動リング)で、該回動リング50にはアーム51を介してスピットン52が取り付けられており、該スピットン52は、回動リング50を、図2(B)において、矢印C方向へ回動することによって、歯科治療用椅子の反対側(ワークテーブル及びドクタ用インスツルメントホルダが位置する側)に移動可能になっている。なお、図2において、無影灯は記載されていないが、この無影灯は、スピットン(スピットンボックス)52に一体的に取り付けてもよく、或いは、更に、基台20に第4の回動リングを設け、この第4の回動リングに取り付けるようにしてもよい。
【0025】
図3は、本発明による歯科治療用椅子を斜め後方から見た一実施形態を示す全体斜視図で、図示例の場合、無影灯は省略してあるが、この無影灯は、前述のように、スピットン52上に取り付けてもよいが、基台20に更に無影灯用の回動リングを設け、該回動リングに取り付けるようにしてもよい。なお、これらスピットン及び/又は無影灯を取り付けた回動リングは、これらスピットン及び無影灯が治療椅子の前方を通すように回動され、ドクタ用インスツルメントホルダやアシスタント用インスツルメントホルダの回転経路と交わらないようにすると、取り付けアームの径方向の長さをあまり長くしなくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による歯科治療用椅子の一実施例を説明するための要部概略構成図である。
【図2】図1に示した歯科治療用椅子に、更に、アシスタント用のインスツルメントホルダをも回動自在に取り付けた場合の実施例を説明するための図である。
【図3】本発明による歯科治療用椅子を斜め後方から見た全体斜視図である。
【図4】本発明が適用される歯科治療ユニットの一例を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0027】
10…歯科治療用椅子の着座部、11…ヘッドレスト、12…バックレスト、13…コンターシート、14…レッグレスト、15…フットステップ、20…基台、30…ワークテーブル用回動リング、31…アーム、32…ワークテーブル、33…術者用インスツルメントホルダ、34…術者用インスツルメント、40…アシスタントインスツルメント用回動リング、41…アーム、42…アシスタント用インスツルメントホルダ、43…アシスタント用インスツルメント、50…スピットン用回動リング、51…アーム、52…スピットン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科治療用椅子の基台に回動自在に取り付けられた第1の回動リングと、該第1の回動リングに取り付けられたワークテーブルとを有し、前記第1の回動リングを前記基台のまわりに回動させることにより前記ワークテーブルが安頭台の周りを回転移動可能であることを特徴とする歯科治療用椅子。
【請求項2】
前記ワークテーブルはドクタ用インスツルメントホルダを一体的に具備することを特徴とする請求項1に記載の歯科治療用椅子。
【請求項3】
前記基台は回動自在に取り付けられた第2の回動リングを更に有し、該第2の回動リングにアシスタント用インスツルメントホルダを一体的に具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科治療用椅子。
【請求項4】
前記基台は回動自在に取り付けられた第3の回動リングを更に有し、該第3の回動リングにスピットンを一体的に具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歯科治療用椅子。
【請求項5】
前記ワークテーブル及びアシスタント用インスツルメントホルダは、前記安頭台の後側を回動して、当該歯科治療用椅子の左右反対の側に移動可能であることを特徴とする請求項3に記載の歯科治療用椅子。
【請求項6】
前記スピットンは無影灯を一体的に具備することを特徴とする請求項4に記載の歯科治療用椅子。
【請求項7】
前記基台は回動自在に取り付けられた第4の回動リングを更に有し、該第4の回動リングに無影灯を一体的に具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歯科治療用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−260229(P2007−260229A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−90979(P2006−90979)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】