説明

歯科用ガスバーナ

【課題】歯科用ガスバーナにおいて、着火の際の放電音をなくして医療環境を静粛に保つこと、点火中であること或いは点火中のガスバーナが消えてしまったことを表示し、或いは、電池の消費量を抑えて、電池の長寿命化を図る。
【解決手段】ガスボンベ11と、ガスボンベ11からのガスを供給するガス供給流路12と、ガス供給流路12の端部に設けられたフレーム筒13と、ガス供給流路12に設けられたガス流量調整弁16とを有し、ガス流量調整弁16によってガスボンベ11からフレーム筒13へ供給するガスの流量を調整してフレーム筒13からの火炎の大きさを制御する。フレーム筒13のガス噴出口近傍にヒータ14を有し、ヒータ14を加熱後、ガス流量調整弁16を開いて加熱されたヒータ14によりフレーム筒13から噴出されるガスを着火させる。着火後はヒータ14をオフにし、フィラメント15をオンにし、少電力でガスの燃焼を保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用ガスバーナ、より詳細には、歯科技工において、鑞着や鋳造等の熱作業に使用するガスバーナに係り、特に、従来の圧電式着火手段に代って、ヒータ式着火手段を用いることによって、着火時にノイズ音(雑音)を発生しないようにした歯科用ガスバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、本発明が適用されるガスバーナの一例を説明するための概略図で、図中、1はバーナ支柱管(ガス供給流路)、2は点火栓支柱、3は点火栓制御ボックス、4はカバー、5はプロテクターで、同図は、カバー4を開いた状態を示している。このガスバーナは、周知のように、点火栓制御ボックス3内に、前記バーナ支柱管1に連通するガスボンベが収納されており、ガス点火・消火スイッチ20を押すことにより、ガスバーナ支柱管1の下方に設けられている弁を開き、該弁を通して噴出されたガスがガスバーナ支柱管1内を上昇し、該ガスバーナ支柱管1の上部に設けられたフレーム(flame)筒6で燃焼し、該ガス点火・消火スイッチ20を再度押すことによって前記弁が閉じ、ガスの燃焼を消す。
【0003】
ガスを燃焼させるためには、前記ガス点火・消火スイッチ20を押して、前記弁を開くとともに点火栓7とフレーム筒6の略中心部に設けられた放電端子8との間に火花放電を発生させ、フレーム筒6より放出されるガスを点火させるが、その際の放電音が雑音になって環境を騒々しいものにし、また、電池駆動式のガスバーナにおいては、電力の消費量が大きくなり、電池の寿命が短く、その維持管理が大変である等の問題があった。
【0004】
また、一旦、点火したガスは燃焼し続けるが、何らかの原因でガスが消えてしまうと、前記弁を遮断しないと、ガスが放出され続けて危険である。また、実際に、ガスが燃えているかどうかを目で確認することは難しく、ガスが燃焼しているにも関わらず、手を近づけてしまうことがあり、危険である。そのため、ガスバーナが点灯中であることを表示するために、ガス噴出口近傍を目視しやすい赤色ランプで照明(表示)したり、スピーカ9、或いは、パイロットランプ10等を設けておき、ガスバーナ点火中、該スピーカ9を鳴らし、或いは、パイロットランプ10を点灯しておくようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のごとき実情に鑑みてなされたもので、歯科用ガスバーナにおいて、着火の際の放電音をなくして医療環境を静粛に保つこと、ガスバーナが点火中であること或いは点火中のガスバーナが消えてしまったことを表示し、或いは、電池の消費量を抑え、電池の長寿命化を図ること等を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ガスボンベと、該ガスボンベからのガスを供給するガス供給流路と、該ガス供給流路の端部に設けられたフレーム筒と、前記ガス供給流路に設けられたガス流量調整弁とを有し、該ガス流量調整弁によって前記ガスボンベから前記フレーム筒へ供給するガスの流量を調整して該フレーム筒からの火炎の大きさを制御するようにした歯科用ガスバーナにおいて、前記フレーム筒のガス噴出口近傍にヒータを有し、該ヒータを加熱後、前記ガス流量調整弁を開いて前記加熱されたヒータにより前記フレーム筒から噴出されるガスを着火させることを特徴としたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記フレーム筒のガス噴出口近傍にフィラメントを有し、着火後は、前記ヒータの加熱を遮断し、該フィラメントを加熱することによりガスの燃焼を保持させるようにしたことを特徴としたものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ガス流量調整弁が開の時はブザー音及び/又はランプ表示にて警報を発生するようにしたことを特徴としたものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記ガス噴出口近傍に赤色ランプを有し、ガス燃焼時、該赤色ランプにて前記ガス噴出口近傍を照明し、ガスが燃焼中であることを該照明光によって表示するようにしたことを特徴としたものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記ガス流量調整弁が開かれている間、前記ヒータの抵抗値を検出する手段を有し、該ヒータの抵抗値が低下した時に、ブザー音及び/又はランプ表示にて警告を発生することを特徴としたものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記ヒータの抵抗値が低下した時に、前記ガス流量調整弁を閉じることを特徴としたものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記ガス供給流路にガス流検出手段を有し、前記ガス流量調整弁が開の時に、該ガス供給流路のガス流が低下したことを検出した時に、前記ガス流量調整弁を閉じることを特徴としたものである。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかの発明において、前記ガス供給流路のガス流が低下した時に、ブザー音及びランプ表示にて警告を発生するようにしたことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によると、ガスボンベと、該ガスボンベからのガスを供給するガス供給流路と、該ガス供給流路の端部に設けられたフレーム筒と、前記ガス供給流路に設けられたガス流量調整弁とを有し、該ガス流量調整弁によって前記ガスボンベから前記フレーム筒へ供給するガスの流量を調整して該フレーム筒からの火炎の大きさを制御するようにした歯科用ガスバーナにおいて、前記フレーム筒のガス噴出口近傍にヒータを有し、該ヒータを加熱後、前記ガス流量調整弁を開いて前記加熱されたヒータにより前記フレーム筒から噴出されるガスを着火させるようにしたので、ガス点火時、放電音等の雑音が発生せず、医療環境を静粛に保つことができる。
【0015】
請求項2の発明によると、請求項1の発明において、前記フレーム筒のガス噴出口近傍にフィラメントを有し、着火後は、前記ヒータの加熱を遮断し、該フィラメントを加熱することによりガスの燃焼を保持させるようにしたので、省電力に貢献し、特に、電池駆動式のガスバーナにおいては、電池の消耗を減らし、電池の寿命を長く保つことができる。
【0016】
請求項3の発明によると、請求項1又は2の発明において、前記ガス流量調整弁が開の時はブザー音及び/又はランプ表示にて警報を発生するようにしたので、ガスバーナが点火中、該ガスバーナが点火していることを術者に知らせるので、術者が燃焼中の炎に触れて火傷等の怪我をするような心配がない。
【0017】
請求項4の発明によると、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記ガス噴出口近傍に赤色ランプを有し、ガス燃焼時、該赤色ランプにて前記ガス噴出口近傍を照明し、ガスが燃焼中であることを目視しやすい赤色ランプの点灯色によって表示するようにしたので、術者は、ガスバーナが燃焼中であることを容易に確認することができ、術者が燃焼中の炎に触れて火傷等の怪我をするような恐れがない。
【0018】
請求項5の発明によると、請求項1乃至4のいずれかの発明において、前記ガス流量調整弁が開かれている間、前記ヒータの抵抗値を検出する手段を有し、該ヒータの抵抗値が燃焼時に対して変化した時に、ブザー音及び/又はランプ表示にて警告を発生するようにしたので、ガス燃焼中に、該ガスの燃焼が自然に消えてしまったような場合において、該ガスの燃焼が消えてしまったことを迅速に術者に知らせるので、術者は直ちに再点火することができ、所期の作業手順に従って作業を進めることができる。
【0019】
請求項6の発明によると、請求項1乃至5のいずれかの発明において、前記ヒータの抵抗値が燃焼時に対して変化した時に、前記ガス流量調整弁を閉じるようにしたので、未燃焼のガスが噴出し続けるような心配はなく、ガスの滞留等による危険を防止することができる。
【0020】
請求項7の発明によると、請求項1乃至6のいずれかの発明において、前記ガス供給流路にガス流検出手段を有し、前記ガス流量調整弁が開の時に、該ガス供給流路のガス流が燃焼時に対して変化したことを検出した時は、前記ガス流量調整弁を閉じるようにしたので、ガス燃焼中に、該ガスの燃焼が自然に消えてしまったような場合において、未燃焼のガスが噴出し続けるような心配はなく、ガスの滞留等による危険を防止することができる。
【0021】
請求項8の発明によると、請求項7の発明において、前記ガス供給流路のガス流が燃焼時に対して変化した時は、ブザー音及び/又はランプ表示にて警告を発生するようにしたので、ガス燃焼中に、該ガスの燃焼が自然に消えてしまったような場合において、該ガスの燃焼が消えてしまったことを迅速に術者に知らせるので、術者は直ちに再点火することができ、所期の作業手順に従って作業を進めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明による歯科用ガスバーナの一実施例を説明するための要部概略構成図で、図中、11はガスボンベ、12はガス供給流路(図におけるバーナ支柱管1に相当)、13は該ガス供給流路12を通して送給されたガスを噴出、燃焼させるためのフレーム(flame)筒(図1におけるクレーム筒6に相当)、14は該フレーム筒13から噴出されたガスを点火させるためのヒータ(例えば、セラミックヒータ)、15は点火されたガスを燃焼させ続けるためのフィラメントで、フレーム筒13からガスを噴出する前に、該ヒータ14を加熱しておき、ガスがフレーム筒13から噴出された時に該ガスを燃焼(着火)させ、その後は、該ヒータ14をオフにしてフィラメント15をオンにし、少電力でガスの燃焼を維持するようにしている。
【0023】
ガス供給流路12には、ガス流量調整弁16、ガス流(ガスの圧力、流量、又は、流速等の)検出器17が配設されており、制御装置18は、前記ガス流量調整弁16の開閉を制御し、更には、前記ガス流量調整弁16の開閉度を調整して火炎の大きさを調整する。なお、これらガスボンベ11,ガス流量調整弁16,ガス流検出装置17,制御装置18等は、図2に示した点火制御ボックス3に備えられている。
【0024】
制御装置18は、更に、ヒータ14のオン・オフ及びフィラメント15のオン・オフを制御するものであり、該制御装置18は、ガスバーナの点火に先立って、該制御装置18に設けられている点火スイッチ(図2に示したガス点火・消火スイッチ20)を押下すると、まず、ヒータ14がオンされ、該ヒータ14が十分に加熱された後、或いは、ヒータ14がオンされて所定時間経過後に、ガス流量調整弁16が開かれ、フレーム筒13からガスが噴出され、噴出されたガスは既に加熱されているヒータ14によって着火され、燃焼を開始する。燃焼した時の炎の大きさは、制御装置18に設けられているガス流量調整用ボリウム等によって任意所望の大きさに調整される。
【0025】
ヒータ14の抵抗値は、ガスが点火されると、該ガスの燃焼によってその抵抗値が変化するので、該ガスの点火に伴うヒータ14の抵抗値の変化を、制御装置18に設けられている検出器で検出し、その検出結果に基づいて、ヒータ14の点灯を止め、代って、フィラメント15を点灯し、該フィラメント15の点灯によってガスの燃焼を保持する。
【0026】
ガスの燃焼は、前述のように、ヒータ14の抵抗値の変化を検出して検出するようにしてもよいが、その他、フレーム筒13の近傍にサーミスタ等、任意所望の温度検出器或いはフレーム(炎)検出器等を設けておき、ガスが燃焼していることを検出し、ガスが燃焼中であることを、ブザー音及び/又はランプ表示等によって知らせる。
【0027】
ガスの燃焼は、制御装置18に設けられているスイッチ(例えば、図2に示したガス点火・消火スイッチ20)を押すことによって止めることができるが、このスイッチを押すことなく或いはガス流量調整弁16が開状態であるにもかかわらず、ガスの燃焼が停止してしまった時は、前記ヒータ14の抵抗値の変化或いは炎検出器によって、ガスの燃焼が停止してしまったことを検出し、ブザー音及び/又はランプ表示等によって、術者が意図しないのにもかかわらず、自然にガスの燃焼が停止してしまったことを術者に知らせる。
【0028】
更に、制御装置18は、ガス供給流路12中に設けられているガス流検出器17によって、該ガス供給流路12中に流れているガスの圧力、流量、流速等を監視しており、ガス燃焼中に(換言すれば、ガス流量調整弁16が開かれている時に)、該ガス流検出器17によってガスの流量が変化したことを検出した時は、ガスの燃焼が自然に停止したものと判断し、ガス流量調整弁16を閉じ、同時に、ブザー音及び/又はランプ表示にて、ガスの燃焼が消えた(停止)ことを知らせる。
【0029】
更に、ガスが燃焼していることを目視にて確認することは困難であるので、フレーム筒13の近傍に赤色発光ランプ等を設けておき、ガス燃焼中、ガス噴出口近傍を該赤色発光ランプで照明して、ガスが燃焼中であることを目視しやすい赤色光にて表示するようにし、術者が炎に触れて火傷等することのないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による歯科用ガスバーナの一実施例を動作説明するための要部概略構成図である。
【図2】本発明が適用される、歯科用ガスバーナの要部外観図である。
【符号の説明】
【0031】
1…バーナ支柱管(ガス供給流路)、2…点火栓支柱、3…点火栓制御ボックス、4…カバー、5…プロテクター、6,13…フレーム筒、7…点火栓、8…放電端子、9…スピーカ、10…パイロットランプ、11…ガスボンベ、12…ガス供給流路、14…ヒータ、15…フィラメント、16…ガス流量調整弁、17…ガス流検出器、18…制御装置、20…ガス点火・消火スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボンベと、該ガスボンベからのガスを供給するガス供給流路と、該ガス供給流路の端部に設けられたフレーム筒と、前記ガス供給流路に設けられたガス流量調整弁とを有し、該ガス流量調整弁によって前記ガスボンベから前記フレーム筒へ供給するガスの流量を調整して該フレーム筒からの火炎の大きさを制御するようにした歯科用ガスバーナにおいて、前記フレーム筒のガス噴出口近傍にヒータを有し、該ヒータを加熱後、前記ガス流量調整弁を開いて前記加熱されたヒータにより前記フレーム筒から噴出されるガスを着火させることを特徴とする歯科用ガスバーナ。
【請求項2】
前記フレーム筒のガス噴出口近傍にフィラメントを有し、着火後は、前記ヒータの加熱を遮断し、該フィラメントを加熱することによりガスの燃焼を保持させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の歯科用ガスバーナ。
【請求項3】
前記ガス流量調整弁が開の時はブザー音及び/又はランプ表示にて警報を発生するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用ガスバーナ。
【請求項4】
前記ガス噴出口近傍に赤色ランプを有し、ガス燃焼時、該赤色ランプにて前記ガス噴出口近傍を照明し、ガスが燃焼中であることを該照明光によって表示するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の歯科用ガスバーナ。
【請求項5】
前記ガス流量調整弁が開かれている間、前記ヒータの抵抗値を検出する手段を有し、該ヒータの抵抗値が低下した時に、ブザー音及び/又はランプ表示にて警告を発生することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の歯科用ガスバーナ。
【請求項6】
前記ヒータの抵抗値が低下した時に、前記ガス流量調整弁を閉じることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の歯科用ガスバーナ。
【請求項7】
前記ガス供給流路にガス流検出手段を有し、前記ガス流量調整弁が開の時に、該ガス供給流路のガス流が低下したことを検出した時に、前記ガス流量調整弁を閉じることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の歯科用ガスバーナ。
【請求項8】
前記ガス供給流路のガス流が低下した時に、ブザー音及びランプ表示にて警告を発生するようにしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の歯科用ガスバーナ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−278649(P2007−278649A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−108385(P2006−108385)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【出願人】(000150671)株式会社長田中央研究所 (194)
【Fターム(参考)】