説明

歯科用又は外科用のハンドヘルド器具

この発明は、脱着可能な直線状ツールが回転可能に設計された歯科用又は外科用の器具に関する。この器具は、管状シース(1)と、前記管状シースに装着された中空シャフト(3)であって上流部材(5)と前記シャフトの前記上流部材(5)を部分的に握持する上流部(11)及び前記ツール(13)の外径と実質的に一致する内径を有する下流部(12)を有してなる下流部材(6)とから成る中空シャフト(3)と、前記中空シャフト(3)と共に回転可能で前記軸(AA)に沿って移動可能に装着され、前記シャフトの前記上流部材(5)の内部に同軸に配置されたクランプ(14)と、前記顎部(17)が前記中空シャフト(3)の前記上流部材(5)内に進出して前記ツールをしっかりと握持する方法で前記クランプ(14)を軸方向に移動する手段とを備えて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療用器具の分野に関する。より詳細には、この発明は、歯科医院又は歯科研究室及び顕微鏡手術で使用されるバー又は同様の部材で端部が構成された脱着可能な直線状ツールを高速で回転可能に設計された器具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、このような型の器具の一例が国際公開公報WO2005/089666号に記載されている。一般的に、電機モータ又は空気タービンによってその端部が駆動される中空回転シャフトの内部に配置され、ベアリングによって固定管状シースに装着されたクランプで、ツールの軸部は保持される。クランプの握持及び解放は、一方向に又は他方向に回転可能にシャフトに装着されたスリーブを回転することによって、実行される。
【0003】
作業領域(オペレーションエリア)を視認しやすくするために、歯科用器具又は顕微鏡手術用のハンドヘルド器具はどう見ても長くて細いノーズを必要とする。このような制約によって、残念であるが、ノーズの端部がツールを案内する確実性が制限されている。
【0004】
ツールの軸部は、その直径が通常わずか2.35mmであるが、限定された硬さを有し「真円ではない」こともあって、軸部の握持を保証するクランプは軸部をわずかに強制する危険性がある。これが原因になって、軸部が追従してツールの作用端部が振動する。
【0005】
時を得ない振動がバーの正確な作動に非常に大きな悪影響を与えることは容易に理解することができるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、特に、ツールの軸部を不完全に握持し案内することで生じる騒音及び振動を大幅に低減し、又は、実になくすことのできる器具を提供することを目的とする。また、この発明は、ボールベアリングへのストレスをなくし、ボールベアリングの寿命を延ばすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
より正確には、この発明は、歯科用又は外科用の器具であって、バー(bur)又は同様の部材で端部が構成された脱着可能な直線状ツールを高速で回転可能に設計された器具に関する。この器具は、
・縦軸を有する管状シース
・同軸を有し、前記シースの内部に回転可能に装着され、上流部材と下流部材とで構成された中空シャフトであって、前記下流部材は、前記シャフトの前記上流部材を部分的に握持する上流部と、前記ツールの外径と実質的に一致する内径を有する下流部とを有してなり、
・前記シャフトと共に回転可能にかつ前記軸に沿って移動可能に装着され、前記上流部材の内部に同軸に配置されたクランプであって、このクランプは、その上流部において、前記ツールの外径と実質的に一致する内径を有し、さらに、前記ツールを握持するように設計されたいくつかの弾性変形可能顎部まで延びている中空シャフトであり、
・縦軸方向に沿って前記クランプを、前記顎部が前記シャフトの上流部材5内に進出して前記ツールをしっかりと握持する前記上流方向、又は、前記顎部が前記上流部から脱出して前記ツールを解放する方向である下流方向に移動させる手段、
を備えている。
【0008】
この発明における他の特徴及び利点は、1つの器具における部分縦断面図を示す1つの添付図面を参照した以下の説明で明らかになるであろう。
【0009】
理解を容易にするため、この説明において、器具の端部を明確にするために、文言「上流」及び文言「下流」を用いている。この「上流」は回転によってツールが駆動される方向(図の右側)であり、「下流」はツールの作用先端を担う端部(図の左側)である。さらに、器具の上流側端部は図示していない。その理由は、前記国際公開公報WO2005/089666号に記載された器具の上流側端部と同一であること、にある。この公報はツールの作動方法を理解するのに参照されることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図において、1は軸AAを有する円筒状シースである。円筒状シース1の下流側にあるノーズ2は、細長くなっており、オペレーターが作業領域の最良の視野を得ることができるように通常5〜10°の角度αに形成されている。
【0011】
シース1は同軸AAを有する中空シャフト3を本質的に備えている。その上流端は駆動シャフトに結合されている。このシャフト3は、実質的な中央に、前記ノーズ2に配置されたボールベアリング4によってシース1に回転可能に装着されている。第2のベアリング(図示しない。)は、上流側に配置され、シース1内でシャフト3を回転させる。
【0012】
より詳細には、中空シャフト3は、上流部材5と下流部材6とからなっている。
【0013】
中空シャフト3の上流部材5は、その端部で形成された端部8と横棒9との間を締め付け軸方向に可動のスプリング7で部分的に囲繞されている。スプリング7の種々の機能は以下に示されている。スプリング7は横棒9を上流側に付勢している。
【0014】
横棒9は、シース1の上流部にネジ止め又は非ネジ止めされてもよい外部スリーブ10の運動によって、シャフト3の縦長スロット(図示しない。)内で上流方向又は下流方向に移動可能になっている。スリーブ10を一方向に回転させると横棒9はスプリング7を圧縮する限り下流方向に移動する。一方、スリーブ10を他方向に回転させると横棒9は上流側に移動してスプリング7の圧縮を解除する。
【0015】
図には、共に円筒状を成す上流部11及び下流部12を備えたシャフト3の下流部材6が示されている。
【0016】
上流部11は、端部8に隣接するまでシャフト3の上流部材5を握持している。下流部12は、器具で操作されるツールの軸部13の外径と実質的に一致する内径を有している。ベアリング4は下流部12の上流端に位置していることに注意を要する。
【0017】
クランプ14は、縦軸方向に可動であり、シャフト3の上流部材5内にシャフト3と同軸に配置されている。シース1におけるリム8の位置まで実質的に達するその上流部において、クランプ14は、操作されるツールの軸部13の外径と実質的に一致する内径を有する中空シャフト15の形態になっている。さらに、中空シャフト15は、同じ内径を有し、弾性変形可能17であり、互いに120°に分割されている3つの顎部まで延びている。中空シャフト15の端部は、下流方向に向かって厚さが増加する円錐形状を有する楔18を構成している。横棒9によって、シャフト3の上流部材5とクランプ14とは一体になって回転する。
【0018】
最後に、シャフト3の上流部材5は、その一部であるわけではなく、楔18の円錐形状と一致する円錐形状を内部に有している独立リング19まで延びている。独立リング19の均一な外径は、シャフト3の上流部材5の内径よりもわずかに小さく、その結果、楔18とシャフト3における下流部材6の上流部11との間にリング19が浮遊可能になるクリアランスが確保されている。
【0019】
図には、適切な方向における、上流方向に横棒9の付勢が可能となるように、シース1の上流部の回りにスリーブ10を回転させてなる作動姿勢にある器具が示されている。クランプ14の3つの顎部17もまたクランプ14の上流部に向かって駆動されて、浮動リング19内に挿入されている。スプリング7に補助された状態で、顎部はツールの軸部13を強力に圧縮し、軸部13は移動不能になってシャフト3で回転されることができる。
【0020】
スリーブ10が他の方向に回転すると、横棒9は下流方向に復帰し、また、顎部17は上流方向に滑走することができる。そして、これらの顎部は、リング19から脱出し、シャフト3における上流部材5の下流側端部(図にはこの位置は示されていない。)に隣接して、ツールの軸部13を解放して、軸部13が機器から取り外される。
【0021】
このように、顕微鏡手術用器具が提供され、その利点は以下に示される。
【0022】
1.シャフト3を、クランプ14を囲繞する上流部材5と、シャフト3の上流部材5を部分的に囲繞する下流部材6とが同軸になるように、作製し、かつ、ツールの軸部13が通行する筒(バレル)を形成することによって、
・クランプ14の軸と筒6の軸とを完全に一致させること、
・シース1におけるノーズ2の端部にツールを完全に案内すること、及び、
・器具の内部に浸入することを防止するために屑を分離すること、
が可能になる。
【0023】
2.クランプの下流側にある筒6にベアリング4を配置することによって、ベアリングによって決定される回転軸とツールの軸との同心度を高めることができる。
【0024】
3.クランプ14を確実に握持する浮動円錐状リング19によって、
・リング19が浮遊していることに起因して筒6とクランプとの軸がわずかに同心からずれた場合にも、これらの軸を自動的に回転軸に一致させること、及び、
・リング19が浮遊して自身でブロックすることに起因してツールが振動した場合に、握持力が解除されることを防止すること、
が可能になる。
【0025】
したがって、この発明に係る器具は、騒音及び振動が大幅に低減され、ツールの握持力が極めて改善され、ツールが確実に案内され、かつ、ベアリングの寿命が極めて延びるという特徴を有している。
【0026】
これらの利点は、器具にとって極めて重要であり、この器具に装着される約50,000〜100,000回転/分の回転速度で回転可能なツールは、振動することなく最高精度で作動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、1つの器具の部分縦断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バー又は同様の部材で端部が構成された脱着可能な直線状ツール(13)を高速で回転可能とするように設計された歯科用又は外科用の器具であって、
前記器具は、
・縦軸(AA)を有する管状シース(1)と、
・同軸を有し、前記管状シースの内部に回転可能に装着された中空シャフト(3)であって、上流部材(5)と、前記中空シャフトの前記上流部材(5)を部分的に握持する上流部(11)、及び、前記ツール(13)の外径と実質的に一致する内径を有する下流部(12)を有してなる下流部材(6)とから成る中空シャフト(3)と、
・前記中空シャフト(3)と共に回転可能で前記軸(AA)に沿って移動可能であり、前記中空シャフトの前記上流部材(5)の内部に同軸に配置されたクランプ(14)であって、その上流部において前記ツール(13)の外径と実質的に一致する内径を有し、さらに、前記ツールを握持するように設計されたいくつかの弾性変形可能な顎部(17)まで延びている中空シャフト(15)であるクランプ(14)と、
・前記クランプ(14)を、前記顎部(17)が前記中空シャフト(3)の前記上流部材(5)内に進出して前記ツールをしっかりと握持する縦軸の上流方向に、又は、前記顎部が前記上流部から脱出して前記ツールを解放する縦軸の下流方向に、移動させる手段とを備えていることを特徴とする器具。
【請求項2】
前記顎部(17)の端部は、下流方向に向かって厚さが増加する円錐形状を有する楔(18)を構成していること、及び、
前記中空シャフト(3)の前記上流部材(5)は実際にその一部であるわけではなく前記楔(18)の円錐形状と一致する円錐形状を内部に有している独立リング19まで構成され、前記楔(18)と前記中空シャフト(3)における前記下流部材(6)の前記上流部(11)との間に前記リング(19)が浮遊可能になるクリアランスが確保されるように、前記リングの均一な外径が前記中空シャフト(3)の前記上流部材(5)の内径よりもわずかに小さくなっていることを特徴とする請求項1に記載の器具。
【請求項3】
前記管状シース(1)は、オペレーターに作業領域の最良の視野を提供するように5〜10°の角度αに形成されている細長いノーズ(2)を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の器具。
【請求項4】
前記中空シャフト(3)は、前記管状シース(1)の前記ノーズ(2)内であって前記クランプ(14)の下流側に、前記中空シャフト(3)における前記下流部材(6)の下流部(12)の上流端に向いて、配置されたベアリング(4)によって、前記管状シース(1)の内部に回転可能に装着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の器具。
【請求項5】
軸方向に前記クランプ(14)を移動させる前記手段は、前記管状シース(1)の上流部にネジ止め又は非ネジ止めされ、前記クランプ(14)の軸方向の移動を保証するスリーブ(10)を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の器具。

【図1】
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【公表番号】特表2009−535136(P2009−535136A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508264(P2009−508264)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050621
【国際公開番号】WO2007/124962
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(508078606)ビエン−エアー ホールディング エスアー (9)
【氏名又は名称原語表記】Bien−Air Holding SA
【住所又は居所原語表記】Langgasse 60,CH−2504 Bienne,Switzerland
【Fターム(参考)】