説明

歯科用材料を形成する方法

表面に硬化性歯科用接着剤を塗布し、該歯科用接着剤に2番目の硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップを含む、歯科用材料を形成する方法。硬化性歯科用コンポジットは、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位、異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位、又はその両方を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に逐次的な硬化を必要とする、硬化性歯科用組成物から歯科用材料を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性ポリマー材料は、コンポジット、充填材、修復材、セメント、および接着剤などを含む様々な歯科用途に使用される。このような材料は、硬化時に収縮することが多い。これは、材料が例えば歯科用充填材又は修復材におけるような圧迫される環境中にあるとき、特に問題である。圧迫される環境中にある間、収縮時の寸法の変化によって材料内に歪みが発生する可能性があり、これは、典型的には、周囲の環境(例えば、歯)に対する応力になる。このような力によって、歯とポリマー材料との間に界面破壊が生じ、その結果、物理的な隙間が生じ、後で歯の窩洞への微小漏洩が生じる可能性がある。或いは、このような力は、歯および/又はコンポジット内の破損に繋がる可能性がある。
【0003】
一般に、ポリマー歯科用材料を硬化させる慣用的な方法には、コンポジットを口腔表面の所定の位置に接着剤で保持することが必要であり、接着剤を硬化させた後、続いてコンポジット材料を硬化させることが必要である。更に具体的には、慣用的な方法は、次のステップ、即ち、歯を表面処理(例えば、エッチング、プライマー処理)するステップ、歯の表面に硬化性接着剤を塗布するステップ、接着剤をキュアするステップ、硬化した接着剤上にコンポジット材料(例えば、修復材)を付けるステップ、およびコンポジット材料をキュアするステップの1つ以上を使用する。また、このような方法は、典型的には、約380nm〜520nmで放射する青色光源を使用し、硬化を誘導する。
【0004】
従って、硬化中又は硬化後に歯科用材料および周囲環境に加わる応力の量を低減する、歯科用材料(例えば、歯科用接着剤および歯科用コンポジット)の硬化方法が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第4,652,274号明細書
【特許文献2】米国特許第4,642,126号明細書
【特許文献3】米国特許第6,187,836号明細書
【特許文献4】米国特許第6,084,004号明細書
【特許文献5】米国特許第5,545,676号明細書
【特許文献6】米国特許第5,856,373号明細書
【特許文献7】米国特許第6,187,833号明細書
【特許文献8】米国特許出願第10/050218号明細書
【特許文献9】米国特許第4,298,738号明細書
【特許文献10】米国特許第4,324,744号明細書
【特許文献11】米国特許第4,385,109号明細書
【特許文献12】米国特許第4,710,523号明細書
【特許文献13】米国特許第4,737,593号明細書
【特許文献14】米国特許第6,251,963号明細書
【特許文献15】欧州特許出願第0173567A2号
【特許文献16】米国特許出願第 号明細書
【特許文献17】米国特許第5,130,347号明細書
【特許文献18】米国特許第5,063,257号明細書
【特許文献19】米国特許第5,520,725号明細書
【特許文献20】米国特許第5,859,089号明細書
【特許文献21】米国特許第5,925,715号明細書
【特許文献22】米国特許第5,962,550号明細書
【特許文献23】米国特許第5,154,762号明細書
【特許文献24】米国特許第5,871,360号明細書
【特許文献25】米国特許第4,872,936号明細書
【特許文献26】米国特許第5,227,413号明細書
【特許文献27】米国特許第5,367,002号明細書
【特許文献28】米国特許第5,965,632号明細書
【特許文献29】米国特許出願第09/916399号明細書
【特許文献30】米国特許出願ファイル番号57157US003号
【特許文献31】米国特許出願ファイル番号57435US002号
【特許文献32】米国特許第5,501,727号明細書
【特許文献33】米国特許第4,695,251号明細書
【特許文献34】米国特許第4,503,169号明細書
【特許文献35】米国特許第6,387,981号明細書
【特許文献36】国際公開第01/30304号パンフレット
【特許文献37】国際公開第01/30305号パンフレット
【特許文献38】国際公開第01/30306号パンフレット
【特許文献39】国際公開第01/30307号パンフレット
【特許文献40】米国特許第6,306,926号明細書
【特許文献41】米国特許第4,719,149号明細書
【特許文献42】米国特許第5,256,447号明細書
【特許文献43】米国特許第5,525,648号明細書
【特許文献44】米国特許第5,980,253号明細書
【特許文献45】米国特許第6,030,606号明細書
【非特許文献1】マティス(Mathis)ら、「新規グラスアイオノマー/コンポジットレジンハイブリッド修復材(Properties of a New Glass Ionomer/Composite Resin Hybrid Restorative)」要約51番、J.Dent Res.、66:113(1987年)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、組成物を一般に逐次的に硬化させることを必要とする、硬化性組成物を硬化する(例えば、重合、架橋、イオン反応、又は他の化学反応によりキュアする)方法を提供する。このような方法は、例えば、歯科用シーラント、歯科用接着剤、歯科用セメント、歯科用コンポジット、歯科用修復材および歯科用補綴物などの歯科用途に特に有用である。本発明の方法により、典型的には、材料の硬化中および/又は硬化後に歯科用材料および周囲環境に加わる応力の量が低減する。
【0006】
一般に、本発明の方法には、放射線源を用い、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位、異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位、又はその両方を含む硬化性歯科用コンポジットに照射することが必要である。好ましくは、放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始される。これらの部位は、層の形態とすることができるが、必ずしも層の形態である必要はない。
【0007】
歯科用コンポジットは、歯科表面(例えば、歯の表面又は骨)と接触している歯科用接着剤によって表面に接着される。ある実施形態では、歯科用コンポジットが硬化(例えば、重合)する間、又は実質的に完全に硬化した後、本方法には、歯科用コンポジットおよび表面と接触している硬化性歯科用接着剤の硬化を開始させることが必要である。ある実施形態では、歯科用接着剤は、硬化性歯科用コンポジットをそれに塗布する前に、部分硬化または実質的に完全に硬化できる。典型的には、歯科用接着剤の硬化は、例えば、化学キュア機構又は光重合機構により実施することができる。
【0008】
一実施形態では、本発明は、表面に接着される歯科用材料を形成する方法を提供し、この方法は、表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ;表面上の硬化性歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、硬化性歯科用コンポジットが光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ;放射線源を用いて、硬化性歯科用コンポジットに照射するステップであって、放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始されるステップ;および、硬化性歯科用接着剤を硬化させ、歯科用コンポジットを接着剤で表面に接着させるステップを含む。ある実施形態では、光開始剤はホスフィンオキシドであり、他の実施形態では、光開始剤はモノケトン、ジケトン、又はこれらの組合せである。
【0009】
別の実施形態では、口腔表面に接着される歯科用材料を形成する方法は、表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ;硬化性歯科用接着剤を少なくとも部分的に硬化させるステップ;表面上の少なくとも部分的に硬化した歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、硬化性歯科用コンポジットが、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ;および、放射線源を用いて、硬化性歯科用コンポジットに照射し、それを接着剤で表面に接着させるステップであって、放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始されるステップを含む。
【0010】
更に別の実施形態では、口腔表面に接着される歯科用材料を形成する方法は、表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ;表面上の硬化性歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、硬化性歯科用コンポジットが異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ;放射線源を用いて、硬化性歯科用コンポジットに照射するステップ;および、硬化性歯科用接着剤を硬化させ、歯科用コンポジットを接着剤で表面に接着させるステップを含む。任意に、硬化性歯科用コンポジットは、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を更に含むことができる。好ましくは、放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始される。
【0011】
更に別の実施形態では、口腔表面に接着される歯科用材料を形成する方法は、表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ;硬化性歯科用接着剤を少なくとも部分的に硬化させるステップ;表面上の少なくとも部分的に硬化した歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、硬化性歯科用コンポジットが、異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ;および、放射線源を用いて、硬化性歯科用コンポジットに照射し、それを接着剤で表面に接着させるステップを含む。任意に、硬化性歯科用コンポジットは、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を更に含むことができる。好ましくは、放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始される。
【0012】
前記各実施形態は、少なくとも1種類の光開始剤を含む硬化性歯科用コンポジットを含む。対照的に、硬化性歯科用接着剤は、少なくとも1種類の光開始剤を含むことができるか、又はできない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、表面に接着される歯科用材料を形成する方法を提供する。表面は、典型的には、歯又は骨の表面などの口腔表面であるが、他の表面(例えば、補綴装置の調製に使用される固定具の表面など)も包含される。
【0014】
歯科用材料は、例えば、歯科用接着剤、人工歯冠、前方又は後方充填材、鋳造材料、キャビティーライナー、セメント、コーティング組成物、ミルブランク、修復材、コンポジット、補綴物、およびシーラントとして使用できる。好ましい態様では、歯科用材料は、歯科用修復材である。本発明の修復材は、口内に直接付けられ、その場でキュア(硬化)できる。
【0015】
本方法には、放射線源を用い、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位、異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位、又はその両方を含む硬化性歯科用コンポジットに照射することが必要である。好ましくは、放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始される。
【0016】
歯科用コンポジットが硬化(例えば、重合)する間、又は歯科用コンポジットが実質的に完全に硬化した後、又は硬化性歯科用コンポジットが歯科用接着剤に塗布される前であっても、硬化性歯科用接着剤を硬化させることができる。典型的には、歯科用接着剤の硬化は、例えば、化学キュア機構又は光重合機構により実施することができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「実質的に完全に硬化した」組成物は、典型的には歯科環境中で加えられる荷重を支持するのに十分に硬いものである。
【0018】
ある実施形態では、硬化性接着剤組成物と硬化性コンポジット組成物は両方とも、光重合性材料を含む。他の実施形態では、接着剤組成物は化学硬化性である。また、光重合性材料と化学硬化性材料を、必要に応じて1つの組成物中に合わせることができるということも想到される。
【0019】
本発明の硬化性組成物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー、又はそれらの組合せである化合物を含む。このような材料は、光重合性歯科用組成物並びに化学硬化性歯科用組成物の両方が周知である。また、典型的な重合性組成物は、フッ素供給源、抗微生物剤、促進剤、安定剤、吸収剤、顔料、染料、粘度調整剤、表面張力降下剤および湿潤助剤、酸化防止剤、フィラー、並びに当業者に周知の他の成分などの好適な添加剤を含有してもよい。重合の前後に所望の物理的特性および取扱い特性を提供するように、各成分の量および種類を調節しなければならない。
【0020】
一般に、歯科用組成物は本明細書に後述される種類のフィラーを含む。組成物中の樹脂系の種類(例えば、カチオンキュア性樹脂)に応じて、異なる種類のフィラーが使用される。組成物の種類(例えば、接着剤)に応じて、異なる量のフィラーが使用される。このような情報は、一般に、当業者に既知である。例えば、接着剤およびシーラントは、一般に、軽く(例えば、組成物の総重量を基準にして、フィラーを最大約25重量%まで)充填されるか、又は充填されない。セメントは、更に多量のフィラー(例えば、フィラーの総重量を基準にして、約25重量%〜約60重量%のフィラー)を含有することが多く、充填材は、更により多量のフィラー(例えば、組成物の総重量を基準にして、約50重量%〜約90重量%のフィラー)を含有することができる。
光重合性組成物
本発明の方法で使用される硬化性組成物は、ある実施形態では光重合性である、即ち、組成物は、化学線を照射すると組成物の重合(又は、硬化)を開始する光開始剤(即ち、光開始剤系)を含有する。このような光重合性組成物は、フリーラジカル重合性又はカチオン重合性とすることができる。好ましくは、照射は約380nm〜約520nmの機能波長範囲を有する。
【0021】
好適な光重合性組成物は、(カチオン活性エポキシ基を含有する)エポキシ樹脂、(カチオン活性ビニルエーテル基を含有する)ビニルエーテル樹脂、および(フリーラジカル活性不飽和基を含有する)エチレン性不飽和化合物を含んでもよい。有用なエチレン性不飽和化合物の例には、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、およびこれらの組合せが挙げられる。カチオン活性官能基とフリーラジカル活性官能基の両方を単一の化合物中に含有する重合性材料も好適である。例には、エポキシ官能性アクリレート、エポキシ官能性メタクリレート、およびこれらの組合せが挙げられる。
フリーラジカル光重合性組成物
光重合性組成物は、フリーラジカル活性官能基を有する化合物を含んでもよく、これらの化合物には1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、オリゴマー、およびポリマーを含んでもよい。好適な化合物は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を経ることができる。このようなフリーラジカル重合性化合物には、モノ−、ジ−、又はポリ−アクリレートおよびメタクリレート(メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、およびトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートなど);分子量200〜500のポリエチレングリコールのビスアクリレートおよびビスメタクリレート、アクリル化モノマーの共重合性混合物(特許文献1(ボエッチャー(Boettcher)ら)中のものなど)、およびアクリル化オリゴマー(特許文献2(ザドー(Zador)ら)のものなど)、およびビニル化合物(スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、およびジビニルフタレートなど)が挙げられる。必要に応じて、2種類以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することができる。
カチオン光重合性組成物
光重合性組成物は、カチオン重合性エポキシ樹脂などのカチオン活性官能基を有する化合物を含んでもよい。このような材料には、開環重合性のオキシラン環を有する有機化合物が挙げられる。これらの材料にはモノマーエポキシ化合物、およびポリマー型のエポキシドが挙げられ、これらは脂肪族、脂環式、芳香族、又は複素環式とすることができる。これらの化合物は、一般に、平均で、1分子当たり少なくとも1個の重合性エポキシ基、好ましくは1分子当たり少なくとも約1.5個の重合性エポキシ基、更に好ましくは1分子当たり少なくとも約2個の重合性エポキシ基を有する。ポリマーエポキシドには、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマー(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格オキシラン単位を有するポリマー(例えば、ポリブタジエンポリエポキシド)、およびペンダントのエポキシ基を有するポリマー(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)などが挙げられる。エポキシドは、純粋な化合物であっても、又は1分子当たり1つ、2つ又はそれより多くのエポキシ基を含有する化合物の混合物であってもよい。1分子当たりのエポキシ基の「平均」数は、エポキシ含有材料中のエポキシ基の総数を、存在するエポキシ含有分子の総数で除することによって決定される。
【0022】
これらのエポキシ含有材料は、低分子量モノマー材料から高分子量ポリマーまで様々であってよく、その主鎖および置換基の性質が非常に様々であってよい。許容される置換基の例には、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホン酸基、シロキサン基、ニトロ基、およびリン酸基などが挙げられる。エポキシ含有材料の分子量は、約58〜約100,000以上まで様々であってよい。
【0023】
本発明で有用な好適なエポキシ含有材料は、特許文献3(オックスマン(Oxman)ら)および特許文献4(ワインマン(Weinmann)ら)に列記されている。
【0024】
また、様々なエポキシ含有材料のブレンドも想到される。このようなブレンドの例は、低分子量(200未満)、中程度の分子量(約200〜10,000)、および高分子量(約10,000超)など、エポキシ含有化合物の2つ以上の重量平均分子量分布を含む。代替で、又は追加で、エポキシ樹脂は、異なる化学的性質(脂肪族および芳香族など)又は異なる官能性(極性および非極性など)を有するエポキシ含有材料のブレンドを含有してもよい。
【0025】
カチオン活性官能基を有する他の種類の有用な材料には、ビニルエーテル、オキセタン、スピロ−オルトカーボネート、およびスピロ−オルトエステルなどが挙げられる。
【0026】
必要に応じて、カチオン活性官能基とフリーラジカル活性官能基の両方が単一の分子中に含有されてもよい。このような分子は、例えば、ジエポキシド又はポリエポキシドと、エチレン性不飽和カルボン酸1当量以上を反応させることによって得られてもよい。このような材料の一例は、UVR−6105(ユニオン・カーバイド(Union Carbide)から入手可能)とメタクリル酸1当量との反応生成物である。エポキシ官能基およびフリーラジカル活性官能基を有する市販の材料には、日本の、ダイセル化学工業(株)(Daicel Chemical,Japan)から入手可能なサイクロマー(CYCLOMER)M−100、M−101、又はA−200などのサイクロマー(CYCLOMER)シリーズ、並びに、ジョージア州アトランタの、UCBケミカルズ、ラドキュア・スペシャルティーズ(Radcure Specialties,UCB Chemicals,Atlanta,GA)から入手可能なエベクリル(EBECRYL)−3605が挙げられる。
【0027】
カチオンキュア性組成物は、更にヒドロキシル含有有機材料を含んでもよい。好適なヒドロキシル含有材料は、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有するいずれかの有機材料であってよい。好ましくは、ヒドロキシル含有材料は、2つ以上の第一級又は第二級脂肪族ヒドロキシル基を含有する(即ち、ヒドロキシル基は非芳香族炭素原子に直接結合している)。ヒドロキシル基は、末端に位置するか、又はポリマー若しくはコポリマーからのペンダントとすることができる。ヒドロキシル含有有機材料は、分子量が非常に低いもの(例えば、32)から非常に高いもの(例えば、百万以上)まで様々とすることができる。好適なヒドロキシル含有材料は、低分子量(即ち、約32〜約200)、中程度の分子量(即ち、約200〜約10,000)又は高分子量(即ち、約10,000超)を有することができる。本明細書で使用される場合、分子量は全て重量平均分子量である。
【0028】
ヒドロキシル含有材料は、性質が非芳香族であってもよく、又は芳香族官能基を含有してもよい。ヒドロキシル含有材料は、任意に、分子の主鎖中に窒素、酸素、およびイオウなどのヘテロ原子を含有してもよい。ヒドロキシル含有材料は、例えば、天然の又は合成で調製されるセルロース材料から選択されてもよい。ヒドロキシル含有材料は、熱的に又は光分解に対して不安定な場合がある基を実質的に含んではならない、即ち、材料は、約100℃より低温で、又は重合組成物に望ましい光重合条件で受ける場合がある化学線の存在下で、揮発性成分を分解したり、又は遊離してはならない。
【0029】
本発明に有用な好適なヒドロキシル含有材料は、特許文献3(オックスマン(Oxman)ら)に列記されている。
【0030】
重合性組成物に使用されるヒドロキシル含有有機材料の量は、ヒドロキシル含有材料と、カチオン重合性成分および/又はフリーラジカル重合性成分との相溶性、ヒドロキシル含有材料の当量および官能性、最終組成物に所望される物理的特性、および所望の重合速度などの要因に応じて、広範囲にわたり様々であってよい。
【0031】
様々なヒドロキシル含有材料のブレンドを使用してもよい。このようなブレンドの例は、低分子量(約200未満)、中程度の分子量(即ち、約200〜約10,000)および高分子量(約10,000超)など、ヒドロキシル含有化合物の2つ以上の分子量分布を含む。代替で、又は追加で、ヒドロキシル含有材料は、異なる化学的性質(脂肪族および芳香族など)又は異なる官能性(極性および非極性など)を有するヒドロキシル含有材料のブレンドを含有してもよい。追加の例として、2種類以上の多官能性ヒドロキシ材料、又は1種類以上の一官能性ヒドロキシ材料と、多官能性ヒドロキシ材料との混合物を使用してもよい。
【0032】
また、重合性材料は、単一の分子中にヒドロキシル基およびフリーラジカル活性官能基を含有してもよい。このような材料の例には、ヒドロキシアルキルアクリレートおよびヒドロキシアルキルメタクリレート(ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートなど);グリセロールモノ(メタ)アクリレート又はグリセロールジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート又はトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、およびペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、又はソルビトールペンタ(メタ)アクリレート;および、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパンなどが挙げられる。
【0033】
また、重合性材料は、単一の分子中にヒドロキシル基およびカチオン活性官能基を含有してもよい。一例は、ヒドロキシル基およびエポキシ基の両方を含む単一の分子である。
光開始剤
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるのに好適な光開始剤(即ち、1種類以上の化合物を含む光開始剤系)には、二元系および三元系が挙げられる。典型的な三元系光開始剤は、特許文献5(パラツォット(Palazzotto)ら)に記載のヨードニウム塩、光増感剤、および電子供与化合物を含む。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、およびジフェニルヨードニウムテトラフルオロボアレート)である。好ましい光増感剤は、約450nm〜約520nm(好ましくは約450nm〜約500nm)の範囲内の光を幾らか吸収するモノケトンおよびジケトンである。更に好ましい化合物は、約450nm〜約520nm(更により好ましくは約450nm〜約500nm)の範囲内の光を幾らか吸収するα−ジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、および他の環状α−ジケトンである。最も好ましいのは、カンファーキノンである。好ましい電子供与化合物には、置換アミン(例えば、エチルジメチルアミノベンゾエート)が挙げられる。
【0034】
カチオン光重合性組成物を重合させるのに好適な光開始剤には、二元系および三元系が挙げられる。典型的な三元系光開始剤は、特許文献6(カイサキ(Kaisaki)ら)、特許文献4(ワインマン(Weinmann)ら)、特許文献7(オックスマン(Oxman)ら)、および特許文献3(オックスマン(Oxman)ら)、並びに特許文献8(デデ(Dede)ら、2002年1月15日出願)に記載のヨードニウム塩、光増感剤、および電子供与化合物を含む。好ましいヨードニウム塩、光増感剤、および電子供与化合物は、フリーラジカル光重合性組成物を重合させる光開始剤系に関して本明細書に列記される通りである。
【0035】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させる他の好適な光開始剤には、典型的には約380nm〜約1200nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキシドの部類が挙げられる。約380nm〜約450nmの機能波長範囲を有する、好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤は、特許文献9(レヒトケン(Lechtken)ら)、特許文献10(レヒトケン(Lechtken)ら)、特許文献11(レヒトケン(Lechtken)ら)、特許文献12(レヒトケン(Lechtken)ら)、および特許文献13(エルリッチ(Ellrich)ら)、特許文献14(コーラー(Kohler)ら)、および特許文献15(イン(Ying))に記載されるものなどの、アシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドである。
【0036】
好適なアシルホスフィンオキシドは、一般式:
(R12P(=O)C(=O)R2
(式中、各R1は個々にヒドロカルビル基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキルであり、これらはいずれも、ハロ基、アルキル基、又はアルコキシ基で置換されているものとすることができる)であり、任意に2つのR1基は結合してリン原子と共に環を形成することができ、各R2は独立してヒドロカルビル基、S−、O−、若しくはN−を含有する5員環若しくは6員環の複素環基(芳香族又は脂環式)、又は−Z−C(=O)P(=O)(R12基(式中、Zは炭素数2〜6のアルキレン又はフェニレンなどの2価のヒドロカルビル基を表す)である)
を有する。
【0037】
好適なビスアシルホスフィンオキシドは、一般式:
1P(=O)(C(=O)R22
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、各R2は独立してヒドロカルビル基(例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、およびアラルキルであり、これらはいずれも、ハロ基、アルキル基、又はアルコキシ基で置換されているものとすることができる)、S−、O−、又はN−を含有する5員環又は6員環の複素環基(芳香族又は脂環式)である)
を有する。
【0038】
約380nm〜約450nmより長波長の波長範囲で照射されるとき、フリーラジカル開始できる市販のホスフィンオキシド光開始剤には、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819、ニューヨーク州タリータウン、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(イルガキュア(IRGACURE)1700、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))との重量比25:75の混合物、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(ダロキュア(DAROCURE)4265、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))との重量比1:1の混合物、および、エチル2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(ルシリン(LUCIRIN)LR8893X、ノースカロライナ州シャーロット、BASF社(BASF Corp.,Charlotte,NC))が挙げられる。
【0039】
本発明に有用な、好ましいアシルホスフィンオキシドは、R1基およびR2基がフェニル、C1〜C4アルキル、又はC1〜C4アルコキシ置換フェニルのものである。最も好ましくは、アシルホスフィンオキシドは、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(IRGACURE)819、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals))である。
【0040】
典型的には、ホスフィンオキシド開始剤は、光重合性組成物中に、触媒として有効な量(組成物の総重量を基準にして、約0.1重量%〜約5.0重量%など)で存在する。
【0041】
第三級アミン還元剤をアシルホスフィンオキシドと組合せて使用してもよい。本発明に有用な例示的な第三級アミンには、エチル4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエート、およびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。アミン還元剤は、存在する場合、光重合性組成物中に、組成物の総重量を基準にして約0.1重量%〜約5.0重量%の量で存在する。
光重合手順
光重合性組成物は、典型的には、「安全な光」条件(即ち、組成物の尚早な硬化を引き起こさない条件)下で、組成物の様々な成分を混和することによって調製される。混合物を調製するとき、必要に応じて、好適な不活性溶媒を使用してもよい。好適な溶媒の例には、アセトンおよびジクロロメタンが挙げられる。
【0042】
硬化は、組成物を放射線源、好ましくは可視光線源に暴露することによって実施される。380nm〜800nmの可視光線(特に、380nm〜520nmの波長を有する青色光線)を放射する光源(石英ハロゲンランプ、タングステンハロゲンランプ、水銀アーク、カーボンアーク、低圧、中圧、および高圧水銀ランプ、プラズマアーク、発光ダイオード、並びにレーザーなど)を使用することが好都合である。更に好ましい光源には、タングステンハロゲンランプ、プラズマアーク、および発光ダイオードが挙げられる。
【0043】
一般に、有用な光源は、200〜1200mW/cm2の範囲の強度を有する。歯科用途に特に有用な例の1つは、ミネソタ州セントポールの3M社(3M Company of St.Paul,Minnesota)から市販されているXL−3000歯科用キュアリングライト(XL−3000 dental curing light)である。このようなライトは、400nm〜500nmの波長領域内で約400〜800mW/cm2の強度を有する。
【0044】
暴露は、幾つかの方法で実施されてもよい。例えば、重合性組成物は、硬化プロセス全体を通して(例えば、約2秒〜約60秒)放射線に連続的に暴露されてもよい。また、組成物を1回の線量の放射線に暴露させた後、放射線源を取除き、それによって重合を起させることも可能である。幾つかの場合、材料を低強度から高強度まで増強する光源に当てることができる。
【0045】
2つの暴露を使用する場合、各線量の強度は同じであっても、又は異なってもよい。同様に、各暴露の総エネルギーは同じであっても、又は異なってもよい。
【0046】
このような組成物を硬化させる様々な慣用的なライトを使用することができる。あるいは、 に出願された、本出願人の譲受人の同時係属中の特許文献16(代理人整理番号57180US002)に記載のライトも使用することができる。
化学重合性組成物
本発明の硬化性組成物は、ある実施形態(例えば、歯科用接着剤組成物)では、化学硬化性である、即ち、組成物は、化学線を用いる照射に依存することなく、組成物を重合、キュア、又はその他硬化できる化学開始剤(即ち、開始剤系)を含有する。このような化学硬化性(例えば、重合性又はキュア性)組成物は、「自己キュア」組成物と称されることがあり、グラスアイオノマーセメント、樹脂変性グラスアイオノマーセメント、レドックスキュア系、およびこれらの組合せを含んでもよい。
グラスアイオノマーセメント
化学硬化性組成物は、典型的には、主成分としてエチレン性不飽和カルボン酸のホモポリマー又はコポリマー(例えば、ポリアクリル酸、および、コポリ(アクリル、イタコン酸)など)、フルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラス、水、およびキレート剤(酒石酸など)を使用する慣用的なグラスアイオノマーを含んでもよい。慣用的なグラスアイオノマーは、典型的には、使用直前に混合される粉末/液体配合物中に供給される。混合物は、ポリカルボン酸の酸性繰返し単位と、ガラスから浸出するカチオンとのイオン反応のため、暗中で自己硬化する。
樹脂変性グラスアイオノマーセメント
化学硬化性組成物は、樹脂変性グラスアイオノマー(「RMGI」)セメントを含んでもよい。慣用的なグラスアイオノマーのように、RMGIセメントは、FASガラスを使用する。しかし、RMGIの有機部分が異なる。ある種のRMGIでは、ポリカルボン酸は、酸性繰返し単位の幾つかを硬化性のペンダント基で置換する又はエンドキャップするように変性され、例えば、特許文献17(ミトラ(Mitra))に記載のような第2のキュア機構を提供するように光開始剤が添加される。アクリレート基又はメタクリレート基は、通常、硬化性のペンダント基として使用される。別の種類のRMGIでは、セメントは、例えば非特許文献1、並びに、特許文献18(アカハネ(Akahane)ら)、特許文献19(カトウ(Kato)ら)、特許文献20(チェン(Qian)ら)、特許文献21(ミトラ(Mitra)ら)、および特許文献22(アカハネ(Akahane)ら)におけるようなポリカルボン酸、アクリレート、又はメタクリレート官能性モノマー、および光開始剤を含む。別の種類のRMGIでは、セメントは、例えば、特許文献23(ミトラ(Mitra)ら)、特許文献19(カトウ(Kato)ら)、特許文献24(カトウ(Kato))に記載されるポリカルボン酸、アクリレート又はメタクリレート官能性モノマー、およびレドックス又は他の化学キュア系を含んでもよい。別の種類のRMGIでは、セメントは、特許文献25(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))、特許文献26(ミトラ(Mitra))、特許文献27(ホアン(Huang)ら)、および特許文献28(オルロースキー(Orlowski))に記載される、様々なモノマー含有成分又は樹脂含有成分を含んでもよい。RMGIセメントは、好ましくは、粉末/液体系、又はペースト/ペースト系として配合され、混合および塗布される時、水を含有する。組成物は、ポリカルボン酸の酸性繰返し単位とガラスから浸出したカチオンとのイオン反応のため、暗中で硬化することができ、また、市販のRMGI製品は、典型的には、セメントに歯科用キュアリングランプからの光を暴露してもキュアする。レドックスキュア系を含有し、化学線を使用することなく暗中でキュアできるRMGIセメントが、特許文献29(ミトラ(Mitra)、2001年7月27日出願)に記載されている。
レドックスキュア系
化学硬化性組成物は、重合性成分(例えば、エチレン性不飽和重合性成分)と、レドックス剤(酸化剤と還元剤を含む)とを含むレドックスキュア系を含んでもよい。好適な重合性成分、レドックス剤、任意の酸官能性成分、および本発明で有用な任意のフィラーは、特許文献30(ミトラ(Mitra)ら、2002年4月12日出願)、特許文献31(ミトラ(Mitra)ら、2002年4月12日出願)に記載されている。
【0047】
還元剤および酸化剤は、互いに反応、又はさもなければ協働し、樹脂系(例えば、エチレン性不飽和成分)の重合を開始できるフリーラジカルを生成しなければならない。この種のキュアは暗反応である、即ち、光の存在に依存せず、光がなくても進行できる。還元剤および酸化剤は、好ましくは、十分な貯蔵性があり、望ましくない着色がないため、典型的な歯科条件下での貯蔵および使用が可能である。それらは、重合性組成物の他の成分中に容易に溶解できるように(および、重合性組成物の他の成分から分離しないように)するため、樹脂系と十分な混和性がなければならない(および、好ましくは水溶性でなければならない)。
【0048】
有用な還元剤には、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、および金属錯化アスコルビン酸化合物(特許文献32(ワン(Wang)ら)に記載);アミン、特に第三級アミン(4−tert−ブチルジメチルアニリンなど);芳香族スルフィン酸塩(p−トルエンスルフィン酸塩およびベンゼンスルフィン酸塩など);チオ尿素(1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、および1,3−ジブチルチオ尿素など);およびこれらの混合物が挙げられる。他の二次的な還元剤には、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に依存)、亜ジチオン酸アニオンの塩又は亜硫酸アニオンの塩、およびこれらの混合物を挙げてもよい。好ましくは、還元剤はアミンである。
【0049】
また、好適な酸化剤も当業者に周知であり、過硫酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、セシウム塩、およびアルキルアンモニウム塩など)が挙げられるが、これらに限定されない。追加の酸化剤には、過酸化物(ベンゾイルパーオキシドなど)、ハイドロパーオキシド(クミルハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、およびアミルハイドロパーオキシドなど)、並びに、遷移金属塩(塩化コバルト(III)および塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)、過ホウ酸およびその塩、過マンガン酸およびその塩、過リン酸およびその塩、並びにこれらの混合物)が挙げられる。
【0050】
2種類以上の酸化剤又は2種類以上の還元剤を使用することが望ましい場合がある。少量の遷移金属化合物を添加してレドックスキュアの速度を加速してもよい。幾つかの実施形態では、特許文献31(ミトラ(Mitra)ら、2002年4月12日出願)に記載のように重合性組成物の安定性を向上させるため、二次的なイオン性塩を含むことが好ましい場合がある。
【0051】
還元剤および酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。これは、任意のフィラーを除く重合性組成物の全成分を合わせ、硬化した塊が得られるか否かを観察することによって評価できる。
【0052】
好ましくは、還元剤は、重合性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約0.01重量%、更に好ましくは少なくとも約0.10重量%の量で存在する。好ましくは、還元剤は、重合性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、約10重量%以下、更に好ましくは約5重量%以下の量で存在する。
【0053】
好ましくは、酸化剤は、重合性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも約0.01重量%、および更に好ましくは少なくとも約0.1重量%の量で存在する。好ましくは、酸化剤は、重合性組成物の成分の総重量(水を含む)を基準にして、約10重量%以下、更に好ましくは約5重量%以下の量で存在する。
【0054】
特許文献23(ミトラ(Mitra)ら)に記載のように、還元剤または酸化剤をマイクロカプセル化することができる。これによって、一般に、重合性組成物の貯蔵性が向上し、必要に応じて、還元剤と酸化剤を一緒に包装することができる。例えば、封入剤の適切な選択によって、酸化剤および還元剤を酸官能性成分および任意のフィラーと合わせ、貯蔵安定な状態に保持することができる。同様に、非水溶性封入剤の適切な選択によって、還元剤および酸化剤をFASガラスおよび水と合わせ、貯蔵安定な状態に維持することができる。
【0055】
レドックスキュア系を他のキュア系と(例えば、グラスアイオノマーセメントと、および、特許文献23(ミトラ(Mitra)ら)に記載されるものなどの光重合性組成物と)合わせることができる。
【0056】
レドックスキュア系を使用する硬化性組成物は、2部式の粉末/液体系、ペースト/液体系、およびペースト/ペースト系を含む様々な形態で供給できる。各部が粉末、液体、ゲル、又はペーストの形態である、複数部分の組合せ(即ち、2部以上の組合せ)を使用する他の形態も可能である。複数部分からなる系では、一部分が典型的には還元剤を含有し、別の部分が典型的には酸化剤を含有する。従って、系の一部分に還元剤が存在する場合、酸化剤は典型的には系の別の部分に存在する。しかし、マイクロカプセル化技術を使用して、系の同じ部分で還元剤と酸化剤を組み合わせることができる。
【0057】
また、硬化性組成物は、レドックス開始剤と光開始剤との組合せを含有してもよい。
フィラー
また、本発明の硬化性組成物は、フィラーを含有することもできる。フィラーは、歯科用修復組成物に現在使用されているフィラーなどの、歯科用途に使用される組成物に組込むのに好適な、1種類以上の様々な材料から選択されてもよい。
【0058】
フィラーは、好ましくは微粉砕されている。フィラーは、単峰性(unimodial)又は多峰性(polymodial)(例えば、二峰性(bimodal))がある粒度分布を有することができる。好ましくは、フィラーの最大粒度(粒子の最大寸法、典型的には直径)は、約10マイクロメートル未満、更に好ましくは約2.0マイクロメートル未満である。好ましくは、フィラーの平均粒度は、約3.0マイクロメートル未満、更に好ましくは約0.6マイクロメートル未満である。
【0059】
フィラーは、無機材料とすることができる。また、フィラーは、樹脂系に不溶性の架橋有機材料とすることもでき、任意に、無機フィラーで充填される。フィラーは、いかなる場合も非毒性で、口内で使用するのに好適でなければならない。フィラーは、放射線不透過性又は放射線半透過性とすることができる。また、フィラーは実質的に非水溶性である。
【0060】
好適な無機フィラーの例には、天然材料又は合成材料があり、石英;窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えば、Ce、Sb、Sn、Ba、Zn、およびAlに由来するガラス;長石;ホウケイ酸ガラス;カオリン;タルク;チタニア;特許文献33(ランドクレブ(Randklev))に記載されるものなどの低モース硬度フィラー;および、サブミクロンシリカ粒子(例えば、オハイオ州アクロン、デグサ社(Degussa Corp.,Akron,OH)からエアロシル(AEROSIL)の商品名で入手可能なもの(「OX50」、「130」、「150」および「200」シリカを含む)、およびイリノイ州タスコラ、カボット社(Cabot Corp.,Tuscola,IL)製のCAB−O−SIL M5シリカなどの熱分解法シリカ)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な有機フィラー粒子の例には、充填又は非充填微粉状ポリカーボネート、およびポリエポキシドなどが挙げられる。
【0061】
好ましい非酸反応性フィラー粒子は、石英、サブミクロンシリカ、および、特許文献34(ランドクレブ(Randklev))に記載される種類の非ガラス質微粒子である。これらの非酸反応性フィラーの混合物、並びに、有機材料と無機材料から製造されるコンビネーションフィラーも想定される。
【0062】
また、フィラーと樹脂との間の結合を向上させるため、フィラー粒子の表面をカップリング剤で処理することもできる。好適なカップリング剤の使用には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびγ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが含まれる。
【0063】
また、フィラーは、酸反応性フィラーとすることもできる。酸反応性フィラーは、典型的には、酸官能性樹脂成分と組み合わせて使用され、非反応性フィラーと組み合わせて使用されても、又は組み合わせて使用されなくてもよい。酸反応性フィラーは、必要に応じて、フッ化物放出特性を有することができる。好適な酸反応性フィラーには、金属酸化物、ガラス、および金属塩が挙げられる。好ましい金属酸化物には、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および酸化亜鉛が挙げられる。好ましいガラスには、ホウ酸ガラス、リン酸ガラス、およびフルオロアルミノシリケート(「FAS」)ガラスが挙げられる。FASガラスが特に好ましい。FASガラスは、好ましくは、十分な溶離性カチオンを含有し、ガラスを硬化性組成物の成分と混合すると、硬化した歯科用組成物が形成される。また、ガラスは、好ましくは、硬化した組成物が抗う食性を有するように、十分な溶離性フッ化物イオンを含有する。ガラスは、FASガラス製造分野の当業者に周知の技術を使用して、フッ化物、アルミナ、および他のガラス生成成分を含有する溶融物から製造できる。FASガラスは、他のセメント成分と好都合に混合でき、得られる混合物が口内で使用されるとき良好に機能するように、好ましくは、十分に微粉砕された粒子の形態である。
【0064】
好ましくは、FASガラスの平均粒度(典型的には直径)は、例えば、沈降分析器を使用して測定する場合、約10マイクロメートル以下、更に好ましくは約5マイクロメートル以下である。好適なFASガラスは、当業者に周知であり、様々な供給元から市販されており、多くのものは、ビトレマー(VITREMER)、ビトレボンド(VITREBOND)、リライXルーティングセメント(RELY X LUTING CEMENT)、およびケタック−フィル(KETAC−FIL)(ミネソタ州セントポール、3M ESPEデンタルプロダクツ(3M ESPE Dental Products,St.Paul,MN))、フジ(FUJI)II、GCフジ(FUJI)LC、およびフジ(FUJI)IX(日本、東京、ジーシー歯科工業株式会社(G−C Dental Industrial Corp.,Tokyo,Japan))、およびケムフィル・スーペリア(CHEMFIL Superior)(ペンシルバニア州ヨーク、デンツプライ・インターナショナル(Dentsply International,York,PA))の商品名で市販されているものなどの現在入手可能なグラスアイオノマーセメント中に見出される。必要に応じて、フィラーの混合物を使用することができる。
【0065】
FASガラスを任意に表面処理することができる。好適な表面処理には、酸洗浄(例えば、リン酸を用いる処理)、リン酸塩を用いる処理、酒石酸などのキレート剤を用いる処理、シラン、又は、酸性若しくは塩基性シラノール溶液を用いる処理が挙げられるが、これらに限定されない。望ましくは、処理溶液又は処理されたガラスのpHは、中性又は中性付近に調節されるが、それは、これによって硬化性組成物の貯蔵安定性を増大できるからである。
【0066】
ある組成物では、同じ部分に又は異なる部分に、酸反応性フィラーと非酸反応性フィラーとの混合物を使用することができる。
【0067】
他の好適なフィラーは、特許文献35(チャン(Zhang)ら)、並びに、特許文献36(ウー(Wu)ら)、特許文献37(チャン(Zhang)ら)、特許文献38(ウィンディッシュ(Windisch)ら)、および特許文献39(チャン(Zhang)ら)に開示されている。
【0068】
特許文献40(ブレッチャー(Bretscher)ら)は、フリーラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、および、フリーラジカル重合性成分とカチオン重合性成分の両方を特徴とするハイブリッド組成物に使用できる多数の放射線不透過性フィラーを開示している。それらは、カチオン重合組成物に使用するのに、特に好都合である。このようなフィラーの1つは、酸化アルミニウム5〜25重量%、酸化ホウ素10〜35重量%、酸化ランタン15〜50重量%、酸化ケイ素20〜50重量%を含む、溶融物由来のフィラーである。別のフィラーは、酸化アルミニウム10〜30重量%、酸化ホウ素10〜40重量%、酸化ケイ素20〜50重量%、酸化タンタル15〜40重量%を含む、溶融物由来のフィラーである。第3のフィラーは、酸化アルミニウム5〜30重量%、酸化ホウ素5〜40重量%、酸化ランタン0〜15重量%、酸化ケイ素25〜55重量%、酸化亜鉛10〜40重量%を含む、溶融物由来のフィラーである。第4のフィラーは、酸化アルミニウム15〜30重量%、酸化ホウ素15〜30重量%、酸化ケイ素20〜50重量%、および酸化イッテルビウム15〜40重量%を含む、溶融物由来のフィラーである。第5のフィラーは、ゾルゲル法によって調製される非ガラス質微粒子の形態であり、ゾルゲル法では、無定形酸化ケイ素の水性又は有機分散体又はゾルを、放射線不透過性金属酸化物又は前駆体有機化合物若しくは化合物の、水性又は有機分散体、ゾル、又は溶液と混合する。第6のフィラーは、ゾルゲル法によって調製される非ガラス質微粒子の形態であり、ゾルゲル法では、無定形酸化ケイ素の水性又は有機分散体又はゾルを、放射線不透過性金属酸化物又は前駆体有機若しくは無機化合物の水性又は有機分散体、ゾル、又は溶液と混合する。
歯科用接着剤
多数の硬組織接着剤の例が開示されてきた。例えば、特許文献41(アーセン(Aasen)ら)およびその中の参考文献は、メタクリレートベースのコンポジットを硬組織に接着させる様々な材料と方法を含んでいる。歯に結合する様々な好ましい材料およびプロトコルを記載する他の多くの特許(例えば、特許文献42(オックスマン(Oxman)ら))、および特許文献43(アーセン(Aasen)ら)など)がある。特許文献44(オックスマン(Oxman)ら)は、カチオンキュア性組成物を硬組織に結合させる材料と方法を記載している。
【0069】
歯科用接着剤のある実施形態は、少なくとも1種類のフリーラジカル阻害剤を含む。阻害剤の量は、境界間の(cross−boundary)重合の量を低減するのに十分な量である。例には、BHT(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、MEHQ(メチルエチルヒドロキノン)、およびビスフェノールAが挙げられる。典型的には、阻害剤は、樹脂(例えば、フィラーを含まない接着剤組成物)の重量を基準にして、約0.05重量%〜約1.0重量%の量で使用される。
【0070】
このような既知の材料を本発明の方法に使用することができる。一般に、これらの材料は、最初に接着剤、次いでコンポジット材料を硬化させる方法に使用されてきた。即ち、慣用的な方法は、次のステップ、即ち、歯の表面を処理(例えば、エッチング、プライマー処理)するステップ、歯の表面に硬化性接着剤を塗布するステップ、接着剤をキュアさせるステップ、硬化した接着剤上にコンポジット材料(例えば、修復材)を付けるステップ、およびコンポジット材料をキュアするステップの1つ以上を使用する。
歯科用コンポジット
本発明のコンポジットは、一般に、高充填組成物であると考えられ、典型的には、フリーラジカル光開始剤系および又はカチオン光開始剤系(例えば、本明細書に記載の三元系光開始剤系)を使用して、硬化(例えば、重合又はキュア)される。キュアされたコンポジットは、穴、裂溝、又は窩洞(例えば、歯の中の窩洞)に充填する充填材又は修復材として有効である。
【0071】
好ましいコンポジット材料には、メタクリレート組成物およびエポキシ組成物、並びにポリアクリル酸、水、FASガラス、および任意にフリーラジカル重合性樹脂、および重合触媒を含むグラスアイオノマー(特許文献40(ブレッチャー(Bretscher)ら)、および特許文献45(ホームズ(Holmes)ら)に記載のものなど)が挙げられる。
【0072】
本発明の目的および利点を以下の実施例で更に説明するが、これらの実施例に列挙される特定の材料およびその量、並びに、他の条件および詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。別途表示されない限り、部およびパーセンテージは全て重量を基準にしており、水は全て脱イオン水であり、分子量は全て重量平均分子量である。
実施例
【0073】
【表1】

【実施例1】
【0074】
異なる光開始剤を有する積層組成物の選択的キュア
本実施例の目的は、異なる層に異なる光開始剤系を有し選択的にキュアされる積層組成物の、異なる有効波長範囲で逐次的に照射した後の物理的差異を例証することであった。
【0075】
ビス−GMA/TEGDMAの50/50重量%ブレンドと次の光開始剤系、
樹脂1: 0.5%CPQ、0.5%DPI HFP、0.5%EDMAB
樹脂2: 0.5%イルガキュア(IRGACURE)819
樹脂3: 樹脂1と樹脂2の50/50重量%ブレンド
を合わせることによって、3種類の樹脂を調製した。前記樹脂は、それぞれ、10%エアロジル(AEROSIL)R202ヒュームドシリカを充填され、それぞれ、組成物A、組成物B、および組成物Cと称される非常に低粘度の組成物を形成した。
【0076】
次いで、円筒状の空洞(深さ8mm×直径6mm)を有する3つの異なるテフロン(登録商標)(Teflon)型内に、次のように3種類の組成物を積層し、キュアした。
【0077】
型A 組成物A(CPQ増感剤)だけを充填し、アクキュア(ACCUCURE)3000レーザー(ユタ州ソルトレークシティ、レーザーメッド(Lasermed,Salt Lake City,UT)、有効波長約460〜500nm)で30秒間照射し、組成物をキュアした。
【0078】
型B 空洞の底部4mmに組成物A(CPQ増感剤)を、上部4mmに組成物B(イルガキュア(IRGACURE)819開始剤)を充填した。型をアクキュア(ACCUCURE)3000レーザーで30秒間照射し、(キュアされていないままである組成物B層を通して)組成物A層をキュアさせた。次いで、型をビジルクス(VISILUX)2ハロゲンライト(ミネソタ州セントポール、3M社(3M Company,St.Paul,MN)、有効波長範囲約400〜500nm)で30秒間照射し、組成物B層をキュアさせた。
【0079】
型C 空洞の底部2 2/3mmに組成物A(CPQ増感剤)を、中央部2 2/3mmに組成物C(CPQおよびイルガキュア(IRGACURE)819)を、上部2 2/3mmに組成物B(イルガキュア(IRGACURE)819開始剤)を充填した。充填された型をアクキュア(ACCUCURE)3000レーザーで30秒間照射した後、ビジルクス(VISILUX)2ハロゲンライトで30秒間照射し、型Bにおけるように、底部から上部まで組成物層を逐次的にキュアさせた。組成物は全て、ハロゲンライトで照射後にキュアされた。
【0080】
型A〜Cの照射後、キュアされた組成物(それぞれ、キュアされたサンプルA〜Cと称される)は型から取外され、次の観察がなされた。
1.型A中の組成物Aは、単一の照射ステップで上部から下へキュアされ、キュア後、上部表面に僅かな窪みと、底部表面に顕著な窪みを示すサンプルAが得られた。
2.型Bおよび型C中の組成物層は、前述のように底部層から上部層まで逐次的にキュアされた。キュア後、サンプルAとは対照的に、サンプルBおよびサンプルCは底部表面に僅かな窪みと、上部表面に顕著な窪みを示した。
【0081】
この実施例では、テフロン(登録商標)(TEFLON)型中でキュアした組成物層は、界面への接着により、どの寸法においても束縛されなかった、従って、異なる波長範囲の光で選択的にキュアさせた後、上部から下へ、又は底部から上へキュアさせることに関連する方向性収縮を観察し、評価することが可能であった。これは、臨床用途(例えば、歯科修復処置)において、非常に重要となり得る。これらの観察から、組成物の慣用的な「上部から下への」キュアでは、底部層は最初に束縛され、収縮して歯の表面から離れる傾向があり、それによって修復物中に応力が蓄積することが結論付けられる。対照的に、「底部から上への」キュアを使用すると、硬化する下層と依然として流体の上層との界面で、最初にキュアされる下層の収縮が可能になり、続いて、束縛されていない上部表面で2番目にキュアされる上層の収縮が可能になる。この後者のキュア順序によって束縛された収縮が最小限になり、そのため、修復物中の応力の蓄積が最小限になる。
【0082】
本明細書に引用される特許、特許文献、および出版物の完全な開示は、それぞれが個々に援用されるかの如く、その内容全体が参照により援用される。本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく、本発明に関する様々な修正および変更が当業者には明らかである。本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態および実施例によって不当に限定されるべきではなく、このような実施例および実施形態は、前述の特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする本発明の範囲に関する例示としてのみ表される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ、
前記表面上の前記硬化性歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、前記硬化性歯科用コンポジットが光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ、
放射線源を用いて、前記硬化性歯科用コンポジットに照射するステップであって、前記放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始されるステップ、および、
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させ、前記歯科用コンポジットを前記接着剤で前記表面に接着させるステップ、
を含む、表面に接着される歯科用材料を形成する方法。
【請求項2】
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させるステップが、前記硬化性歯科用接着剤に照射することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硬化性コンポジットが実質的に完全に硬化した後、前記硬化性歯科用接着剤の硬化が開始される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化性歯科用接着剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する光開始剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化性歯科用接着剤の光開始剤がホスフィンオキシドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光開始剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光開始剤がホスフィンオキシドである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ホスフィンオキシドが、一般式:
1P(=O)(C(=O)R22
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、各R2は独立してヒドロカルビル基、S−、O−、又はN−を含有する5員環又は6員環の複素環基である)
のビスアシルホスフィンオキシドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記光開始剤が、モノケトン、ジケトン、又はこれらの組合せを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記光開始剤が、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
放射線源を用いて前記硬化性歯科用コンポジットに照射するステップが、前記硬化性歯科用接着剤を硬化させ、前記歯科用コンポジットを前記表面に接着させるステップの前に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させるステップが、放射線源を用いて前記硬化性歯科用コンポジットに照射するステップの前に起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記表面が口腔表面である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化性歯科用コンポジットが、前記光開始剤の濃度勾配を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化性組成物が、フリーラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記硬化性組成物の少なくとも1つがフィラーを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ、
前記硬化性歯科用接着剤を少なくとも部分的に硬化させるステップ、
前記表面上の前記少なくとも部分的に硬化させた歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、前記硬化性歯科用コンポジットが光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ、および
放射線源を用いて、前記硬化性歯科用コンポジットに照射し、それを前記接着剤で前記表面に接着させるステップであって、前記放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始されるステップ、
を含む、表面に接着される歯科用材料を形成する方法。
【請求項18】
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させるステップが、前記硬化性歯科用接着剤に照射することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記硬化性歯科用接着剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する光開始剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記硬化性歯科用接着剤の光開始剤がホスフィンオキシドである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記光開始剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記光開始剤がホスフィンオキシドである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ホスフィンオキシドが、一般式:
1P(=O)(C(=O)R22
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、各R2は独立してヒドロカルビル基、S−、O−、又はN−を含有する5員環又は6員環の複素環基である)
のビスアシルホスフィンオキシドである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光開始剤が、モノケトン、ジケトン、又はこれらの組合せを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記光開始剤が、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記硬化性歯科用コンポジットを塗布する前に、前記歯科用接着剤が実質的に完全に硬化される、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
前記表面が口腔表面である、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記硬化性歯科用コンポジットが、前記光開始剤の濃度勾配を有する、請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記硬化性組成物が、フリーラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、又はこれらの組合せを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記硬化性組成物の少なくとも1つがフィラーを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ、
前記表面上の前記硬化性歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、前記硬化性歯科用コンポジットが異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ、
放射線源を用いて、硬化性歯科用コンポジットに照射するステップ、および
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させ、前記歯科用コンポジットを前記接着剤で前記表面に接着させるステップ、
を含む、表面に接着される歯科用材料を形成する方法。
【請求項32】
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させるステップが、前記硬化性歯科用接着剤に照射することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記硬化性コンポジットが実質的に完全に硬化した後、前記硬化性歯科用接着剤の硬化が開始される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記硬化性歯科用接着剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する光開始剤を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記硬化性歯科用接着剤の光開始剤がホスフィンオキシドである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記硬化性歯科用コンポジットの前記少なくとも2種類の異なる光開始剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類が、ホスフィンオキシドである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ホスフィンオキシドが、一般式:
1P(=O)(C(=O)R22
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、各R2は独立してヒドロカルビル基、S−、O−、又はN−を含有する5員環又は6員環の複素環基である)
のビスアシルホスフィンオキシドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類が、モノケトン、ジケトン、又はこれらの組合せである、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類が、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
放射線源を用いて前記硬化性歯科用コンポジットに照射するステップが、前記硬化性歯科用接着剤を硬化させ、前記歯科用コンポジットを前記表面に接着させるステップの前に起こる、請求項31に記載の方法。
【請求項42】
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させるステップが、放射線源を用いて前記硬化性歯科用コンポジットに照射するステップの前に起こる、請求項31に記載の方法。
【請求項43】
前記表面が口腔表面である、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
前記硬化性歯科用コンポジットが、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項45】
前記硬化性組成物が、フリーラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、又はこれらの組合せを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項46】
前記硬化性組成物の少なくとも1つがフィラーを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項47】
前記放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始される、請求項31に記載の方法。
【請求項48】
表面に硬化性歯科用接着剤を塗布するステップ、
前記硬化性歯科用接着剤を少なくとも部分的に硬化させるステップ、
前記表面上の前記少なくとも部分的に硬化させた歯科用接着剤に硬化性歯科用コンポジットを塗布するステップであって、前記硬化性歯科用コンポジットが異なる光開始剤を有する少なくとも2つの隣接する部位を含むステップ、および
放射線源を用いて、前記硬化性歯科用コンポジットに照射し、それを前記接着剤で前記表面に接着させるステップ、
を含む、表面に接着される歯科用材料を形成する方法。
【請求項49】
前記硬化性歯科用接着剤を硬化させるステップが、前記硬化性歯科用接着剤に照射することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記硬化性歯科用接着剤が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する光開始剤を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記硬化性歯科用接着剤の光開始剤がホスフィンオキシドである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類が、約380nm〜約520nmの範囲内の放射線を吸収する、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類がホスフィンオキシドである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記ホスフィンオキシドが、一般式:
1P(=O)(C(=O)R22
(式中、R1はヒドロカルビル基であり、各R2は独立してヒドロカルビル基、S−、O−、又はN−を含有する5員環又は6員環の複素環基である)
のビスアシルホスフィンオキシドである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類が、モノケトン、ジケトン、又はこれらの組合せを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
前記硬化性歯科用コンポジットの光開始剤の少なくとも1種類が、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記硬化性歯科コンポジットを塗布する前に、前記歯科用接着剤が実質的に完全に硬化される、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記表面が口腔表面である、請求項48に記載の方法。
【請求項59】
前記硬化性歯科用コンポジットが、光開始剤の濃度の異なる少なくとも2つの隣接する部位を更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記硬化性組成物が、フリーラジカル重合性組成物、カチオン重合性組成物、又はこれらの組合せを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項61】
前記硬化性組成物の少なくとも1つがフィラーを更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項62】
前記放射線源から最も離れた部位の硬化が最初に開始される、請求項48に記載の方法。

【公表番号】特表2006−502750(P2006−502750A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−517584(P2004−517584)
【出願日】平成15年5月22日(2003.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2003/016267
【国際公開番号】WO2004/002434
【国際公開日】平成16年1月8日(2004.1.8)
【出願人】(504387838)スリーエム イノベイティブ プロパティーズ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】