説明

歯車伝達装置用物理量測定装置

【課題】歯車伝達装置を構成する歯車4aの変位方向及び変位量を測定して、この歯車伝達装置が伝達するトルクの方向及び大きさを測定可能な構造を実現する。
【解決手段】1対のセンサ7a、7bの検出部を、はすば歯車であって他の歯車と噛合した前記歯車4aの外径側端部に形成した歯5aに対し、径方向及び軸方向に、それぞれ対向させる。この歯車4aは、トルク伝達に伴って軸方向に変位する。そして、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差が、前記歯車伝達機構が伝達するトルクの方向及び大きさにより変化する。そこで、この位相差に基づいて、このトルクを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車用変速機等に組み込まれている歯車伝達装置を構成する歯車に関する物理量、具体的には、前記歯車伝達装置が伝達するトルクに応じて変化する前記歯車の変位、乃至は、この変位と相関関係のあるこのトルクの値を測定する為の測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用変速機には、有段式であるか無段式であるかに拘らず、歯車伝達機構が組み込まれている。自動車用の無段式変速機としては、ベルト式、トロイダル式のものが実用化されているが、何れの型式のものでも、動力伝達部(トラクション部)で過大な滑りが発生するのを防止すべく、この動力伝達部の面圧を確保する為の押圧装置を備えている。又、前記無段変速機の伝達効率を良好にする為には、この押圧装置が発生する押圧力を、この無段変速機が伝達するトルクの大きさに応じて調節する事が好ましい。即ち、このトルクが低い場合には、前記押圧力を低く抑えて、前記動力伝達部に作用する抵抗(動力伝達に寄与しない摩擦抵抗、転がり抵抗等)を低く抑えるのに対し、前記トルクが高い場合には、前記押圧力を高くして、前記動力伝達部に於ける過大な滑りの発生を防止する事が好ましい。
【0003】
この為に、押圧装置として油圧式のものを使用すると共に、無段変速機に入力されるトルクを測定し、このトルクの測定値に応じて、前記押圧装置が発生する押圧力を調節する事が考えられるが、この様な機構は既に一部で実施されている。この場合のトルク測定は、エンジンを制御する為の制御コンピュータの信号に基づいて行われている。但し、この様な構成では、エンジンの出力を駆動輪に伝達する状態では、前記無段変速機の動力伝達部の面圧を適正にできるが、この駆動輪側からこの無段変速機にトルクが入力される場合には、この面圧を適正にできない可能性がある。即ち、この無段変速機の減速比を大きくした状態で下り坂を走行する場合の如く、大きなエンジンブレーキが作用している状態では、前記無段変速機に、出力側から大きなトルクが、加速時等とは逆方向に入力される。この状態では、前記エンジンの出力トルク(前段側からの無段変速機の入力トルク)は、零乃至は僅少である。この様な場合に、前記押圧力の調節を、前記エンジン側からの入力トルクのみに基づいて行うと、前記無段変速機の動力伝達部の面圧が不足し、この動力伝達部で過大な滑りが発生して、この動力伝達部を構成する各面の磨耗が進む等、前記無段変速機の耐久性が損なわれる可能性がある。
【0004】
この様な原因での無段変速機の耐久性低下を防止する為には、この無段変速機を通過する(無段変速機により伝達される)トルクを、通過する方向に拘らず測定し、この測定値に基づいて押圧装置が発生する押圧力を調節する事が効果的である。この様なトルク測定を可能とする装置としては、特許文献1に記載されている様なトルク測定装置が、広く知られている。図15は、この様なトルク測定装置の原理を示している。このトルク測定装置は、回転軸1の外周面に1対のエンコーダ2a、2bを軸方向に離隔した状態で固定し、これらのエンコーダ2a、2bの被検出面(外周面)に、それぞれセンサ3a、3bの検出部を対向させている。これらのセンサ3a、3bの出力信号同士の関係は、前記回転軸1がトルクを伝達せず、従ってこの回転軸1が弾性変形していない状態では、所定の位相差を初期値として有する。これに対して、前記回転軸1がトルクを伝達し、この回転軸1が捩り方向に弾性変形した状態では、前記センサ3a、3bの出力信号同士の間の位相差が初期値からずれる。この位相差の初期値からのずれの大きさは、前記回転軸1が伝達するトルクの大きさに応じて、ほぼ比例する事になるので、前記位相差に基づいて、このトルクを求める事ができる。
【0005】
一方、特許文献2には、はすば歯車を組み込んだ歯車伝達装置で、この歯車伝達装置が伝達するトルクの方向と大きさとを求める装置が記載されている。特許文献2に記載された従来構造は、はすば歯車を固定した回転軸が、軸方向に関して、前記歯車伝達装置が伝達するトルクの方向に応じた方向に、このトルクの大きさに応じた量だけ変位する事を利用する。この為、この構造では、前記回転軸を圧縮コイルばねにより、軸方向の変位を可能に弾性支持すると共に、この回転軸の軸方向変位量を、変位測定器により測定可能としている。
【0006】
上述した何れの構造の場合も、自動車用の無段変速機に組み込んで、この無段変速機を通過するトルクを、通過する方向に拘らず測定可能な構造を実現できる可能性はある。但し、何れの構造も、無段変速機に組み込まれる事を前提としておらず、トルク測定装置を構成する為に、センサ以外にも、専用の部品を組み込んでいる。この為、部品製作、部品管理、組立作業が何れも面倒になり、コスト上昇の原因となるだけでなく、設置スペースが嵩み、無段変速機の構成部品を収納したケーシング内の限られた空間に設置する事が難しい。よって、これらの構造を自動車用の無段変速機の様に設置スペースが限られた用途に適用する事は困難である。
【0007】
一方、無段変速機の場合、変速機構自体(所謂バリエータ部)には歯車伝達機構は組み込まれていないが、この変速機構の出力部から、無段変速機全体としての出力軸にトルクを伝達する部分等に、歯車伝達機構を組み込んでいる。そして、この歯車伝達機構を構成する歯車は、伝達するトルクの方向及び大きさに応じて、このトルクの作用方向に応じた方向に、このトルクの大きさに応じた量だけ微小変位する。従って、前記歯車伝達機構部分に組み込んだセンサにより、前記歯車の変位方向及び変位量を測定すれば、エンコーダの如く、トルク測定の為の専用の部品を使用しなくても、前記歯車が伝達しているトルクを求める事ができる。
【0008】
尚、回転軸の一部にエンコーダを、この回転軸と同心に固定すると共に、このエンコーダの被検出面に複数個のセンサの検出部を対向させ、これら各センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、前記回転軸の各方向に関する変位量、更には、この回転軸と静止部材との間に加わる各方向の荷重又は力(モーメント)を測定する装置が、特許文献3に記載されている。この特許文献3に記載された測定装置は、複数のセンサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて物理量を測定するものであるが、この構造でも変位量、荷重、力等の物理量を測定する為に専用のエンコーダを設けており、この構造を無段変速機に組み込まれた歯車伝達装置が伝達するトルクを測定する為に利用しようとした場合に、図15に示した従来構造と同様の問題を生じる。又、この構造の場合には、例えば自動車用ハブユニットを構成するハブに加わるラジアル荷重及びスラスト荷重やモーメントを求める事はできても、このハブに加わるトルクを求める事はできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−350251号公報
【特許文献2】特開平9−250958号公報
【特許文献3】特開2008−64731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、センサ以外に物理量を測定する為の要素を歯車伝達装置部分に設置する事なく、歯車伝達装置を構成する歯車の変位方向及び変位量を測定可能とする事により、該歯車伝達装置が伝達するトルクの方向及び大きさを測定可能な構造の測定装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の歯車伝達装置用物理量測定装置は、1対の回転軸と、歯車伝達装置と、少なくとも1対のセンサと、演算器とを備える。
【0012】
前記歯車伝達装置は、少なくとも1対の歯車により構成される。これら各歯車は、前記1対の回転軸のそれぞれの一部に固定されて、それぞれの外径側端部に形成した歯を互いに噛合させる事により、これらの回転軸同士の間でのトルクの伝達を可能としている。
【0013】
又、前記1対のセンサのそれぞれのセンサは、それぞれの検出部を前記1対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車の前記外径側端部に設けた歯に対向させる事により、当該歯車の回転に伴って出力信号を変化させる。尚、本発明の解釈に於いては、「歯」の用語は、個々の歯だけでなく、円周方向に連続する多数の歯の集合も意味するものとする。
【0014】
更に、前記演算器は、前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、これらのセンサの検出部を対向させた歯車に関する物理量を算出する。
【0015】
上述の様な本発明の歯車伝達装置用物理量測定装置を実施するに関して、具体的には、請求項2、3に記載した発明の様に、前記歯車をはすば歯車とする。
【0016】
そして、このうちの請求項2に記載した発明を実施する場合には、前記1対のセンサのうちの一方のセンサの検出部を前記1対の歯車のうちの一方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して径方向に、他方のセンサの検出部をこの一方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して軸方向に、それぞれ対向させる。即ち、両方のセンサの検出部を同じ歯車の外径側端部に形成した歯に対して径方向及び軸方向のそれぞれに対向させる。
【0017】
更に、前記演算器に、これらのセンサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記一方の歯車の軸方向変位量とこの歯車が伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する機能を持たせる。
【0018】
これに対して、請求項3に記載した発明を実施する場合には、前記1対のセンサのうちの一方のセンサの検出部を、前記1対の歯車のうちの一方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して、他方のセンサの検出部を、他方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して、それぞれ径方向に対向させる。
【0019】
更に、前記演算器に、前記1対の歯車同士の軸方向に関する相対変位に伴って発生する、前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記歯車同士の軸方向に関する相対変位量とこれらの歯車同士の間で伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する機能を持たせる。
【0020】
この様な請求項3に記載した発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した発明の様に、前記1対のセンサを前記1対の歯車の噛合部から円周方向に関して90°の位置よりもこの噛合部に近い位置に配置して、これらのセンサを単一のホルダに保持する。
【0021】
前述の様な本発明の歯車伝達装置用物理量測定装置を実施するに関して、具体的には、請求項5に記載した発明の様に、前記1対のセンサのそれぞれの検出部を、前記1対の歯車のそれぞれの前記外径側端部に形成した歯に、それぞれ径方向に対向させる。
【0022】
更に、前記演算器に、前記1対の歯車の中心軸同士の相対位置変化に伴って発生する、前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記歯車同士の相対変位量とこれらの歯車同士の間で伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出させる。
【0023】
上述の様な請求項5に記載した発明を実施するのに、より具体的には、請求項6に記載した発明の様に、前記1対のセンサのそれぞれの検出部を、前記1対の歯車の噛合部を挟んで180°反対側位置(別々の歯車の径方向反対側部分)に対向させる。そして、これらのセンサにより、これらの歯車の回転中心が前記噛合部の接線方向に相対変位する事に伴って、互いの出力信号同士の間の位相差を変化させる。
【0024】
代替的に、請求項7に記載した発明の様に、前記センサを構成する各センサの検出部を、前記歯車の噛合部を挟んで180°反対側位置から、これらの歯車の圧力角(各歯車の歯面の基準円上の1点に於ける、当該歯車の半径線と歯面の接線との成す角度)分だけ周方向にそれぞれ移動した位置に配置させる。そして、これら各センサにより、これらの歯車の回転中心が前記噛合部の接線方向に相対変位する事に伴って、互いの出力信号同士の間の位相差を変化させる。
【0025】
或いは、上述の様な請求項5に記載した発明を実施するのに、より具体的には、請求項8に記載した発明の様に、前記1対のセンサの検出部を、前記1対の歯車のうち一方の歯車の外周面に対向させる。又、これらのセンサの両方の検出部がこの一方の歯車に対向している位置を、前記歯車同士の噛合部から円周方向にそれぞれ90°ずれた部分とする。そして、これらのセンサは、前記一方の歯車が他方の歯車から離れる方向に変位する事に伴って、互いの出力信号同士の間の位相差を変化させる。尚、この構成では、1対のセンサを1対の歯車を構成する両方の歯車のそれぞれに配置して、2対のセンサにより、これらの歯車の両方の変位量をそれぞれ求める事もできる。
【0026】
前述の様な本発明の歯車伝達装置用物理量測定装置を実施するに関して、具体的には、請求項9に記載した発明の様に、前記1対の歯車をはすば歯車とする。そして、前記1対のセンサのうちの一方のセンサの検出部をこれら1対の歯車のうちの一方の歯車の前記外径側端部に形成した歯に径方向に対向させ、他方のセンサの検出部をこの一方の歯車に隣接してこの一方の歯車と同じ回転軸に固定された平歯車の外径側端部に形成した歯に径方向に対向させる。
【0027】
更に、前記演算器に、前記1対のセンサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記一方又は他方の何れかの歯車の軸方向変位量とこの歯車が伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する機能を持たせる。尚、この構成でも、別の1対のセンサを、もう1つの回転軸に固定された他方のはすば歯車と、この他方の歯車に隣接してこの他方の歯車と同じ回転軸に固定された平歯車との組合せにも適用して、2対のセンサにより、異なる回転軸に固定された2組の歯車の両方の変位量をそれぞれ求める事もできる。
【0028】
又、上述した歯車伝達装置用物理量測定装置を実施するにあたって、請求項10に記載した様に、前記1対の歯車のうち、前記1対のセンサの前記検出部が対向する歯車の前記外径側端部に設けた歯の歯先面の一部に、センサ検知用の溝を設ける事ができる。
【0029】
更に、上述した歯車伝達装置用物理量測定装置を実施するにあたって、請求項11に記載した様に、前記1対の歯車のうち、前記1対のセンサの前記検出部が対向する歯車を外嵌固定した回転軸に、この回転軸を軸方向に所定の力で押圧する弾力を付与する事もできる。
【発明の効果】
【0030】
上述の様に構成する本発明の歯車伝達装置用物理量測定装置によれば、歯車伝達装置を構成する歯車の変位方向及び変位量を測定できる。従って、センサ以外に、トルク測定の為の専用の部品を前記歯車伝達装置部分に設置しなくても、この歯車伝達装置が伝達するトルクの方向及び大きさを測定する事が可能となる。この結果、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、歯車伝達装置に物理量測定装置を組み込む事に伴うコスト上昇を低く抑えられる。しかも、設置スペースを小さく抑えて、例えば無段変速機の構成部品を収納したケーシング内の限られた空間にも設置する事が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の第1例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及び1対のセンサを、これらのはすば歯車の軸方向から見た状態で示す正面図である。
【図2】図2は、前記1対のはすば歯車のうち一方のはすば歯車と前記1対のセンサとの組み合わせ状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、互いに噛合した1対のはすば歯車に加わる力を説明する為の模式図である。
【図4】図4は、前記1対のセンサの出力信号の位相差に基づいて前記1対のはすば歯車により伝達されるトルクを求める手順を示すフローチャートである。
【図5】図5は、前記1対のはすば歯車の軸方向変位に伴って前記1対のセンサの出力信号の位相が変化する状態を示す線図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態の第2例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及び1対のセンサを、これらのはすば歯車の径方向から見た状態で示す略側面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の第3例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及び1対のセンサを、これらのはすば歯車の軸方向から見た状態で示す略正面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態の第4例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及び1対のセンサを、これらのはすば歯車の軸方向から見た状態で示す略正面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態の第5例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及び1対のセンサを、これらのはすば歯車の軸方向から見た状態で示す略正面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態の第6例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及び1対のセンサを、これらのはすば歯車の軸方向から見た状態で示す略正面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態の第7例を説明する為、互いに噛合した1対のはすば歯車及びこれら両はすば歯車に隣接して設けた1対の平歯車と2対のセンサとを、これらの歯車の径方向から見た状態で示す略側面図である。
【図12】図12(a)、(b)はいずれも、本発明の実施の形態の第8例を説明する為、一方の平歯車及び1対のセンサのうちの一方のセンサを、該平歯車の径方向から見た状態で示す略側面図と略側面斜視図である。
【図13】図13(a)、(b)はいずれも、本発明の実施の形態の第8例の変形例を説明する為の、図12(a)と同様の図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態の第9例を説明する為、一方の平歯車及び1対のセンサのうちの一方のセンサを、該平歯車の径方向から見た状態で示す略側面図である。
【図15】図15は、従来から知られているトルク測定装置の1例を示す、略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[実施の形態の第1例]
請求項1、2に対応する、本発明の実施の形態の第1例に就いて、図1〜5により説明する。本例の構造の場合、互いに平行に配置された1対の回転軸1a、1bの中間部に、1対の歯車4a、4bを、それぞれこれらの回転軸1a、1bと共に回転する様に支持固定し、更に、これらの歯車4a、4b同士を互いに噛合させている。前記回転軸1a、1bは、例えば無段変速機の構成部品を収納したケーシング内に、径方向及び軸方向に関するがたつきを抑えた状態で、回転自在に支持している。この為に前記回転軸1a、1bを前記ケーシングの端壁或いは中間支持壁に、アンギュラ型玉軸受、円すいころ軸受等の、予圧を付与した転がり軸受により支持している。又、前記歯車4a、4bは、何れも、工具鋼等の磁性金属製のはすば歯車で、それぞれの外径側端部に、それぞれ軸方向に対し傾斜した歯5a、5bを形成している。そして、これらの歯5a、5b同士を、互いに隙間なく(バックラッシを零とした状態で)噛合させている。この構成により、前記回転軸1a、1b同士の間でトルクを、バックラッシに基づくタイムラグを生じる事なく伝達可能な、歯車伝達装置6を構成している。
【0033】
前記歯車4a、4bのうちの一方(例えば、後述する基準円直径dが小さく、噛合に加わる力が大きくなる小径側)の歯車4aの外径側端部に、1対のセンサ7a、7bの検出部を近接対向させている。これらのセンサ7a、7bは何れも、ホール素子、磁気抵抗素子等の磁気検出素子と永久磁石とを組み合わせた磁気検出式のもので、前記検出部が対向する部分の磁気特性の変化に応じて出力信号を変化させる。本例の場合には、前記センサ7a、7bに、波形整形回路を有するICを組み込んでいる。従って、これらのセンサ7a、7bは、それぞれの検出部の近傍(微小隙間を介して対向する直前部分)を、前記一方の歯車4aの外径側端部に形成した歯5aが通過すると、この歯5aの凹凸に基づいて、後述する図5に示す様な矩形波(パルス信号)を出力する。
【0034】
それぞれがこの様な特性を有する前記センサ7a、7bのうち、一方のセンサ7aの検出部は、前記一方の歯車4aの外周面(前記歯5aの先端縁)に、径方向に対向させている。これに対して他方のセンサ7bは、前記一方の歯車4aの外径側端部の軸方向片端面(前記歯5aの軸方向端面)に、軸方向に対向させている。尚、前記一方の歯車4aの円周方向に関する、前記センサ7a、7bの検出部の位置は、互いにほぼ同じとして、これらのセンサ7a、7bを近接配置している。この理由は、前記センサ7a、7bを単一の合成樹脂製ホルダ(図示せず)内に包埋支持して一体型のセンサユニットとし、これらのセンサ7a、7bの位置決め精度及び組み付け作業性を良好にする為である。尚、この合成樹脂製ホルダについては、形状は異なるが、図7に示す合成樹脂製ホルダ9を参照できる。
【0035】
前記センサ7a、7bの出力信号は、図示しない演算器に入力する。すると、この演算器は、これらのセンサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差に関する情報に基づいて、前記一方の歯車4aのうちで、前記センサ7a、7bを設置した部分の軸方向に関する変位量を算出する。又、この変位量に基づいて、前記歯車伝達装置6により伝達されるトルクを算出する。以下、この変位量並びにトルクTを求める手順に就いて、図3〜5を参照しつつ説明する。
【0036】
それぞれがはすば歯車である1対の歯車4a、4b同士の噛合部には、図3に矢印で示す様な方向の力が加わる。即ち、歯車伝達の分野で広く知られている様に、前記歯車4a、4bのそれぞれの歯5a、5b同士の噛合に基づいて、これらの歯5a、5b同士の噛合部の接線方向に接線方向力Ft(Ft1、Ft2)が、これらの歯5a、5bの円周方向側面同士の押し付け合いに基づいて、前記トルクTの伝達方向に応じた方向に加わる。又、前記歯車4a、4bの回転中心同士を離す方向に半径方向力Fr(Fr1、Fr2)が、前記歯5a、5bの円周方向側面の傾斜に基づいて加わる。更に、前記歯車4a、4b同士を軸方向に相対変位させる方向に軸方向力Fx(Fx1、Fx2)が、これらの歯車4a、4bの中心軸の方向に対する前記歯5a、5bの傾斜(捩れ角の存在)に基づいて、前記トルクTの伝達方向に応じた方向に加わる。
【0037】
又、前記各力Ft、Fr、Fxの大きさは、次式で表す様に、前記歯車4a、4b同士の間で伝達するトルクTに比例する。
Ft∝2000T/d −−−(1)
Fr∝Ft・(tanα/cosβ) −−−(2)
Fx∝Ft・tanβ −−−(3)
【0038】
尚、これら各式中、Tはトルク[N・m]を、dは基準円直径[mm]を、αは圧力角[deg]を、βは捩れ角[deg]を、それぞれ表している。この捩れ角βは、一般的には20°程度であるが、本例の場合、例えば15°〜30°程度の範囲で設定する。
【0039】
そして、前記歯車4a、4bは、前記噛合部から入力される、前記各力Ft、Fr、Fxに基づいて、各方向に押される。
【0040】
尚、本例の場合には関係ない(後述する実施の形態の実施の形態の第4〜5例の場合には関係する)が、平歯車の場合には、捩れ角β=0であり、cosβ=1、tanβ=0であるから、
Fr∝Ft・tanα −−−(4)
Fx=0 −−−(5)
となる。
【0041】
一方、前記歯車4a、4bは前記回転軸1a、1bにそれぞれ固定されており、これらの回転軸1a、1bは、前述した様にケーシング内に、予圧を付与された転がり軸受により、回転自在に支持されている。そして、前記歯車伝達装置6により前記トルクTを伝達する際には、前記各転がり軸受、更には、これら各転がり軸受を設置した、前記ケーシングの端壁或いは中間支持壁は、前記各力Ft、Fr、Fxに基づいて弾性変形する。そして、この弾性変形に基づいて、前記回転軸1a、1b、及び、これらの回転軸1a、1bに支持固定された、前記歯車4a、4bが変位する。この様にして生じる変位の量は、前記トルクTに応じて前記各力Ft、Fr、Fxが大きくなる程大きくなり、前記歯車4a、4bの支持剛性が高くなると小さくなる(支持剛性が低い程大きくなる)。本例の場合には、前記小径側の歯車4aの歯5aにそれぞれの検出面を近接対向させた、前記センサ7a、7bの出力信号の位相差に基づいて、前記小径側の歯車4aの、前記軸方向力Fxに基づく軸方向に関する変位量を測定する。更に、この変位量に基づいて、前記歯車伝達装置6が伝達するトルクTを算出する。この手順に就いて、図4〜図5により説明する。
【0042】
図4のフローチャートに示したS(ステップ)1で、前記歯車伝達装置6がトルクTを伝達している場合には、S2で、前記歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部に、前記各力Ft、Fr、Fxが加わる。本例の場合には、このうちの軸方向力Fxに基づき、S3で、前記小径側の歯車4aが軸方向に(例えば数十μm程度)微小変位する。この微小変位に基づいて、前記センサ7a、7bの出力信号同士の位相差が変化する。即ち、これらのセンサ7a、7bのうち、前記歯5aの軸方向端面に検出部を対向させたセンサ7bの出力信号に関しては、前記変位に基づいて位相が変化する事はない。これに対して、前記歯5aの外周面(先端縁)に検出部を対向させたセンサ7aの出力信号に関しては、この歯5aの捩れ角の存在により、前記変位に基づいて位相が変化する。
【0043】
例えば、前記歯車伝達装置6がトルクTを伝達しない状態(初期状態)では、前記センサ7a、7bの出力信号同士の位相差(初期位相差)δが、図5の(A)(B)の上段の破線及び下段の実線で示す様に、1周期Lの1/2(δ=L/2)であると仮定する。尚、この様な初期位相差δの設定は、前記トルクTの伝達方向に拘らず、常に所定方向の位相差を存在させ(トルクTの作用方向が逆転する過程で、位相差がゼロにならない様にし)、この位相差に基づいて、前記トルクTの作用方向及びその大きさを容易に求められる様にする為に重要である。
【0044】
上述の様な中立状態から、前記歯車4aが軸方向に変位した場合に、前記センサ7bの被検出面(歯5bの軸方向端面で、このセンサ7bの検出部が対向している部分)は、図4のS4の様に、前記歯車4aの周方向には移動しないので、前記センサ7bの出力信号の位相は変化しない。これに対して、前記外周面側のセンサ7aの被検出面(歯5bの先端面で、このセンサ7aの検出部が対向している部分)は、前記捩れ角βの存在に基づいて、図4のS5に示す様に周方向に移動するので、前記センサ7aの出力信号の位相が変化する。例えば、前記歯車4aが図2の矢印A方向に回転する場合、この歯車4aが同図の矢印B方向に変位すると、前記外周面側のセンサ7aの出力信号の位相が進み、このセンサ7aと前記軸方向端面側のセンサ7bとの位相差が、図5(A)のδ1(0<δ1<L/2)程度に短くなる。これに対して、前記歯車4aが同図の矢印C方向に変位すると、前記外周面側のセンサ7aの出力信号の位相が遅れ、このセンサ7aと前記軸方向端面側のセンサ7bとの位相差が、図5(B)のδ2(L>δ2>L/2)程度に長くなる。
【0045】
要するに、図4のS6の様に、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差が変化する。この様に、この位相差δ(δ1、δ2)が前記初期状態の位相差{δ(L/2)}に対して変化する方向は、前記トルクTの伝達方向に応じて決まり、変化の大きさはこのトルクTの大きさに応じて決まる。即ち、前記図5(A)に示すδ1なる位相差が存在する場合には、前記歯車4aに、図2の矢印B方向に、「δ−δ1」なる大きさの位相差に見合う軸方向力Fxが加わっている事になる。これに対して、前記図5(B)に示すδ2なる位相差が存在する場合には、前記歯車4aに、図2の矢印C方向に、「δ2−δ」なる大きさの位相差に見合う軸方向力Fxが加わっている事になる。
【0046】
尚、前記位相差δ(δ1、δ2)の大きさの絶対値は、前記歯車4aの回転速度に応じて変化する。従って、この絶対値からでは、この回転速度が既知の一定値である場合にしか前記トルクTを求められないのに対して、前記無段変速機内の歯車4aの回転速度は、大きく変化する。そこで、S7で、この回転速度の影響を排除すべく、前記位相差δ(δ1、δ2)を前記1周期Lにより除して、この1周期Lに対するこの位相差の比、即ち、位相差比δ(δ1、δ2)/Lを求める。そして、S8で、この位相差比δ(δ1、δ2)/Lに所定の定数(変位変換定数)を乗じる(積を求める)事により、S9で、前記歯車4aの、軸方向に関する変位量を求める。尚、前記変位変換定数とは、前記歯5aの歯数、捩れ角β等に基づいて、数学的に、容易に求められる。
【0047】
この様にして、前記歯車4aの軸方向に関する変位量を求めたならば、S10で、この変位量に、この変位量と前記軸方向力Fxとの関係を示す定数(荷重変換定数)を乗じる。尚、この荷重定数は、S11に示す様に、前記歯車4aの支持剛性を勘案しつつ、S12に示す様に、実験或いは計算により、予め求めて、前記変位量に基づいて前記軸方向力Fxを求める為のソフトウェア中に組み込んでおく。そして、このソフトウェアを使用した計算により、S13に示す様に、前記軸方向力Fxを算出する。前述した通り、この軸方向力Fxと前記トルクTとの間には、前記(1)(3)式で表される様な関係があるので、S14に示す様に、前記噛合部に存在する摩擦の影響(フリクションロス)等の影響を補正しつつ、前記(1)(3)式を組み込んだソフトウェアにより、図4のS15で、前記軸方向力Fxから前記トルクTを求める。
【0048】
上述の様に本例の歯車伝達装置用物理量測定装置によれば、無段変速機のケーシング内に、1対のセンサ7a、7bを単一のホルダ内に包埋支持した単一のセンサユニット、及び、これらのセンサ7a、7bの出力信号を取り出す為のハーネスを設置するのみで、前記無段変速機内に設けた歯車伝達装置6部分で伝達されるトルクTを求められる。即ち、前記センサユニット及び前記ハーネス以外に、トルク測定の為の専用の部品を前記歯車伝達装置6部分に設置しなくても、この歯車伝達装置6が伝達するトルクの方向及び大きさを測定可能となる。この結果、部品製作、部品管理、組立作業が何れも容易になり、前記無段変速装置を構成する歯車伝達装置6に物理量測定装置を組み込む事に伴うコスト上昇を低く抑えられる。しかも、設置スペースを小さく抑えて、前記ケーシング内の限られた空間に設置する事が容易になる。
【0049】
尚、前記無段変速機に複数組の歯車伝達装置が設けられている場合、前記センサユニットを、より後段(出力側)の歯車伝達装置に設置する事が、トルクの測定精度を高くする面から有利である。この理由は、自動車用自動変速機として利用される一般的な無段変速機の場合、後段程、伝達するトルクが大きくなり、歯車の変位量も多くなる為である。
【0050】
又、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差比δ(δ1、δ2)/Lに基づいて前記トルクTを求める場合、必ずしも前記歯車4aの軸方向の変位量を求める必要はない。例えば、位相差比δ(δ1、δ2)/LとトルクTとの関係を表した式を組み込んだソフトウェアを、前記演算器中にインストールしておく事により、位相差比δ(δ1、δ2)/Lから直接前記トルクTを求める事もできる。尚、この様な位相差比δ(δ1、δ2)/LとトルクTとの関係を表した式は、前記歯車伝達装置6に既知のトルクを入力しつつ、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差比δ(δ1、δ2)/Lを測定する事により求める事ができる。
【0051】
更に、前記演算器に、既知のトルクに応じて、前記位相差比δ(δ1、δ2)/Lから前記トルクTを求める式を補正する機能を持たせる事もできる。即ち、前記歯車4a、4b同士の噛合部の摩擦係数が変われば、前記位相差比δ(δ1、δ2)/Lから前記トルクTを求める式が変わるし、この摩擦係数は、無段変速機の使用に伴う、前記歯5a、5bの馴染みの進行や摩耗、更にはミッションオイルの温度、劣化度合い等により変化する。一方、前記無段変速機に入力されるトルクは、エンジンの制御コンピュータの情報等により知る事ができ、前記歯車伝達装置6部分を通過するトルクに関しても、前記入力トルクと、前記無段変速機の入力部からこの歯車伝達装置6部分までの間に存在する伝達機構の変速比とに基づいて、十分な精度で求められる。
【0052】
そこで、前記入力トルクに基づいて求めたトルクと、当該トルクが前記歯車伝達装置6で伝達されている状態での、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差比δ(δ1、δ2)/Lとを比較して、前記式のゲインや零点を修正すれば、長期間使用後であっても、この位相差比δ(δ1、δ2)/Lから前記トルクTを精度良く求められる。尚、先の説明から明らかな通り、この様な式の補正は、前記エンジンの側から前記無段変速機にトルクが入力される状態で行う。エンジンブレーキの作動時の様に、駆動輪側からこの無段変速機にトルクが入力される状態で行う事は不可である。駆動輪側からこの無段変速機にトルクが入力される状態でのトルク測定は、上述の様にして補正された式により、前記位相差比δ(δ1、δ2)/Lに基づいて行う。
【0053】
尚、本例では、1対のセンサ7a、7bを1対の歯車4a、4bのうちの一方の歯車4aにのみ設置したが、もう1対のセンサを他方の歯車4bにも設置しても良い。この場合には、これらの歯車4a、4bの両方の変位量をそれぞれ求める事により、前記トルクTの測定値に関する信頼性を向上させる事ができる。又、本例に就いて、歯車伝達装置として1対の歯車を備えた装置を用いて説明したが、複数組の歯車を備えた歯車伝達装置にも本発明は適用できる。この場合、これらのうちの1対の歯車の何れか一方の歯車に、1対のセンサを設置すれば十分であるが、複数組のセンサを設置する事も可能である。
【0054】
[実施の形態の第2例]
図6は、請求項1、3に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、1対のセンサ7a、7bのうちの一方のセンサ7aの検出部を、一方の歯車4aの外径側端部に形成した歯5aに対して、他方のセンサ7bの検出部を、他方の歯車4bの外径側端部に形成した歯5bに対して、それぞれ径方向に対向させている。本例の場合には、前記センサ7a、7bの検出部を、それぞれ前記歯車4a、4bの外周面のうちで、前記歯5a、5bの噛合部から、円周方向に90°外れた位置に対向させている。
【0055】
この様な本例の構造は、それぞれがはすば歯車である前記歯車4a、4bにより構成する、歯車伝達装置6によるトルクの伝達時に、これらの歯車4a、4bが軸方向に相対変位する事を利用して、このトルクを求めるものである。即ち、前記歯車伝達装置6によるトルクの伝達時に前記歯車4a、4bには、前述した軸方向力Fx(Fx1、Fx2)が、このトルクの伝達方向に応じて、互いに反対方向に加わる。この結果、前記歯車4a、4b同士が、軸方向に関して相対変位する。そして、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差が、前記トルクの伝達方向に応じた方向に、初期値からずれる。
【0056】
そこで、前記センサ7a、7bの出力信号を処理する演算器により、これらのセンサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、前記歯車伝達装置6が伝達するトルクを算出する。
【0057】
本例の場合、一方のセンサ7aの位相が進む(又は遅れる)場合に、他方のセンサ7bの位相が遅れる(又は進む)。従って、前記歯車伝達装置6により伝達するトルクTの大きさが同じであると仮定した場合に、前述した実施の形態の第1例の場合に比べて、前記センサ7a、7bの位相差δを2倍程度に大きくできる。この為、この位相差δから前記トルクTを求める場合のゲインを2倍程度大きくできて、このトルクTの測定精度向上を図れる。
【0058】
前記位相差δに基づいて求めた変位量(或いはこの位相差δそのもの)から前記トルクTを求める為の式に関しては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様、予め実験等により求めておく。
【0059】
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0060】
[実施の形態の第3例]
図7は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合には、1対のセンサ7a、7bを、上述した実施の形態の第2例の場合よりも、歯車伝達装置6を構成する1対の歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部に近い位置に配置している。そして、前記センサ7a、7bを単一のホルダ9に保持する様にしている。
【0061】
この様な本例の構造によれば、前記センサ7a、7bの設置を容易にでき、且つ、これらのセンサ7a、7b同士の位置関係を精度良く規制できる。更に、前記歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部に働く軸方向力Fxに基づく、これらの歯車4a、4bの傾斜が、前記センサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差δを大きくする方向に寄与する。この為、上述した実施の形態の第2例よりも更に、この位相差δから前記歯車伝達装置6が伝達するトルクTを求める場合のゲインを大きくできて、このトルクTの測定精度向上を図れる。
【0062】
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第2例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0063】
[実施の形態の第4例]
図8は、請求項1、5、6に対応する、本発明の実施の形態の第4例を示している。先に述べた実施の形態の第1例〜第3例は、何れも、前述の図3により説明した各方向の力のうち、軸方向力Fxに基づく歯車の変位を測定する事により、歯車伝達装置6が伝達するトルクTを算出する様にしている。これに対して本例の構造の場合には、接線方向力Ft(Ft1、Ft2)に基づく1対の歯車4a、4bの相対変位を測定する事により、歯車伝達装置6が伝達するトルクTを算出する様にしている。この為に本例の場合には、1対のセンサ7a、7bの検出部を、前記歯車4a、4bの外周面のうちで、これらの歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部を挟んで180°反対側位置に対向させている。
【0064】
前記歯車伝達装置6によりトルクTを伝達する際には、前記歯車4a、4bが、前記接線方向力Ft(Ft1、Ft2)に基づいて、前記噛合部の接線方向に、且つ、互いに逆方向に変位する。この結果、一方のセンサ7aの出力信号の位相が進む(又は遅れる)と同時に、他方のセンサ7bの出力信号の位相が遅れ(又は進み)、これらのセンサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差が変化する。そこで、この位相差が変化する方向により前記トルクTの伝達方向を、同じくこの位相差δの変化量によりこのトルクTの大きさを、それぞれ求める。
【0065】
尚、本例の様に、前記接線方向力Ft(Ft1、Ft2)に基づいて前記トルクTを求める構造を実施する場合には、前記歯車4a、4bは、はすば歯車に限らず、平歯車であっても良い。これらの歯車4a、4bがはすば歯車である場合には、前記接線方向力Ft(Ft1、Ft2)に基づく変位と、軸方向力Fx(Fx1、Fx2)による変位とが合成された変位に基づいて、前記トルクTを求める事になる。平歯車である場合には、前記接線方向力Ft(Ft1、Ft2)による変位のみに基づき、前記トルクTを求める。
【0066】
何れにしても、前記位相差δに基づいて求めた変位量(或いはこの位相差δそのもの)から前記トルクTを求める為の式に関しては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様、予め実験等により求めておく。
【0067】
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0068】
[実施の形態の第5例]
図9は、請求項1、5、7に対応する、本発明の実施の形態の第5例を示している。本例は、上述した実施の形態の第4例と同様に、接線方向力Ft(Ft1、Ft2)に基づく1対の歯車4a、4bの相対変位を測定する事により、歯車伝達装置6が伝達するトルクTを算出する様にしている。
【0069】
但し、本例では、1対のセンサ7a、7bの検出部を、前記歯車4a、4bの外周面のうちで、これらの歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部を挟んで180°反対側位置に対向させる代わりに、この位置から、当該歯車4a、4bの圧力角(各歯車の歯面の基準円上の1点に於ける、当該歯車の半径線と歯面の接線との成す角度)分だけ周方向にそれぞれ更に移動した位置に於いて、これらの歯車に対向させている。この圧力角は、14.5°〜22.5°の範囲内の所定値に設定されるが、通常は20°である。
【0070】
より具体的には、図9に示す通り、歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部を挟んで180°反対側位置から、これらの歯車4a、4bの噛合部に於ける基準円上の歯面の共通法線αに対し直角であって、これらの歯車4a、4bの回転中心を通る線上β、γまでずらした位置にセンサ7a、7bを配置する。歯車4aが歯車4bを押す場合、このときの押す力は、これらの歯の歯面の共通法線α上の方向に働く事になる。この為、これらの歯車4a、4bの相対変位量は、前記共通法線α方向で、これらの歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部の接線方向よりも大きくなる。従って、センサ7a、7bの設置位置を、歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部を挟んで180°反対側位置から圧力角分だけずらす事により、トルク変動に伴うこれらの歯車4a、4bの相対変位量の最大値を検出する事が可能となり、この検出ゲインの増加により、これらの歯車4a、4bの接線方向に於ける変位量の検出精度を実質的に向上させる事ができる。
【0071】
尚、本例では、歯車4aから歯車4bへとトルクが伝達する場合の圧力角の向きを考慮して、これらの歯車4a、4bの回転方向に対応した移動方向に1対のセンサ7a、7bをずらして設置しているが、これらの歯車4a、4bの回転方向が逆転する場合をも考慮する必要がある場合には、これらの歯車4a、4bの移動方向が逆となり、かつ、圧力角の向きも逆になるので、その方向に於ける変位の測定の精度を向上させる為には、歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部を挟んで180°反対側位置から、その圧力角分だけ図9に示した場合とは逆側にずらして1対のセンサを配置する事も可能である。又、両方向の変位の測定精度を向上させる為には、歯車4a、4bの歯5a、5b同士の噛合部を挟んで180°反対側位置から、それぞれ圧力角分だけ周方向に移動した位置に2対のセンサを設置しても良い。
【0072】
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第4例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0073】
[実施の形態の第6例]
図10は、請求項1、5、8に対応する、本発明の実施の形態の第6例を示している。本例の場合には、前述の図3により説明した各方向の力のうち、径方向力Fr(Fr1、Fr2)に基づく1対の歯車4a、4bの変位を測定する事により、歯車伝達装置6が伝達するトルクTを算出する様にしている。この為に本例の場合には、2対のセンサ7a〜7dを設け、これら各センサ7a〜7dの検出部を、前記歯車伝達装置6を構成する1対の歯車4a、4bの外周面に、これらの歯車4a、4b毎に、それぞれ1対ずつ対向させている。前記各センサ7a〜7dの検出部が対向している位置は、それぞれ前記歯車4a、4bの噛合部から円周方向に90°ずれた部分としている。即ち、1対のセンサ7a、7bの検出部を、一方の歯車4aの外周面のうちで、前記噛合部の接線方向反対側2箇所位置に対向させている。これに対して、別の1対のセンサ7c、7dの検出部を、他方の歯車4bの外周面のうちで、前記噛合部の接線方向反対側2箇所位置に対向させている。
【0074】
本例の場合には、前記噛合部で発生する前記径方向力Fr(Fr1、Fr2)に基づいて前記歯車4a、4bが互いに離れる方向に関する変位量を求め、前記トルクTを算出する様にしている。先ず、前記一方の歯車4aの変位量は、前記1対のセンサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差の変化量により求められる。即ち、前記一方の歯車4aが前記離れる方向に変位すると、前記センサ7a、7bのうちの一方のセンサ7a(又は7b)の出力信号の位相が進み、他方のセンサ7b(又は7a)の出力信号の位相が遅れる。そして、これらのセンサ7a、7bの出力信号同士の間に存在する位相差δの変化に基づいて、前記一方の歯車4aの変位量を求められる。同様に、前記他方の歯車4bの変位量に関しても、前記別の1対のセンサ7c、7dの出力信号同士の間に存在する位相差δの変化量に基づいて求められる。そして、前記歯車4a、4bの変位量の合計、即ち、トルク伝達時に前記歯車4a、4bの回転中心同士が離れる量から、前記トルクTを算出する。この変位量からトルクTを求める式に関しても、実験等により予め求めておく。
【0075】
尚、本例の場合には、前記歯車伝達装置6が伝達するトルクTの方向は知る事はできないが、このトルクTの大きさは求められる。無段変速機の押圧装置の押圧力は、トルクTの大きさが分かれば制御できる為、この押圧力制御に関する限り、前記方向を知る事ができない事は、特に問題とはならない。
【0076】
又、本例の場合には、前記トルクTの測定精度を確保する為に、前記歯車4a、4bの変位量をそれぞれ求め、これらを合計した値に基づいて前記トルクTを求める様にしている。これに対して、あまり測定精度を要求しない場合には、何れか一方の歯車4a(又は4b)の変位量のみから、前記トルクTを算出する事もできる。
【0077】
前記位相差δに基づいて求めた変位量(或いはこの位相差δそのもの)から前記トルクTを求める為の式に関しては、前述した実施の形態の第1例の場合と同様、予め実験等により求めておく。
【0078】
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第4例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0079】
[実施の形態の第7例]
図11は、請求項1、9に対応する、本発明の実施の形態の第7例を示している。本例の場合には、歯車伝達装置6を構成する1対の歯車4a、4bをはすば歯車としている。特に、本例の場合には、これらの歯車4a、4bにそれぞれ隣接する状態で1対の平歯車8a、8bを、それぞれ設けている。一方の歯車4aの歯数と一方の平歯車8aの歯数とは同じとし、他方の歯車4bの歯数と他方の平歯車8bの歯数とは同じとしている。又、2対のセンサ7a〜7dを設け、1対のセンサ7a、7bの検出部を、一方の歯車4aの外周面と一方の平歯車8aの外周面とに、それぞれ対向させている。これに対して、別の1対のセンサ7c、7dの検出部を、他方の歯車4bの外周面と他方の平歯車8bの外周面とに、それぞれ対向させている。本例の場合、それぞれの検出部を平歯車8a、8bの外周面に対向させたセンサ7b、7dが、前述の実施の形態の第1例で、歯5aの軸方向端面に検出部を対向させたセンサ7bの役目を持つ。
【0080】
この様な本例の構造は、それぞれがはすば歯車であって互いに噛合した1対の歯車4a、4bに隣接する部分に、それぞれこれらの歯車4a、4bと歯数が同じである(又は整数倍の関係がある)平歯車8a、8bが設けられている場合に有効である。1対のセンサ7a、7b(又は7c、7d)の出力信号同士の間に存在する位相差の変化に応じて前記歯車4a(又は4b)の軸方向に関する変位量を求め、この変位量から前記歯車伝達装置6が伝達するトルクTを算出する手順に関しては、前述の実施の形態の第1例の場合と同様である。従って、このトルクTは、前記各センサ7a〜7dのうちの一方の組7a、7b(又は7c、7d)のみ設ければ足りるし、その場合には、一方の平歯車8a(又は8b)のみ存在すれば良い。
【0081】
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。
【0082】
[実施の形態の第8例]
図12及び図13は、請求項1、10に対応する、本発明の実施の形態の第8例を示している。本例は、1対の歯車のうち、1対のセンサ7a、7bの検出部が対向する一方又は両方の歯車の外径側端部に設けた歯の歯先面の一部に、センサ検知用の溝10を設けた点に特徴がある。本例では、センサの位置決めを当該センサ検知用の溝10に応じて行う必要があるが、以下の様な利点を有する。
【0083】
図12に示した例では、平歯車4cの歯5cの各歯先面にセンサ検知用の溝10を形成している。平歯車の場合、それ自体の噛合によって、歯車同士が軸方向に相対変位する事はないが、隣接するはすば歯車同士の噛合によって、その回転軸が軸方向に移動する事に伴い、平歯車が軸方向に変位する場合がある。平歯車の歯自体は捩れ角を持たないので、平歯車4cに軸方向力Fx(Fx1、Fx2)が掛かっても、その軸方向変位に基づいて、センサ7aの出力信号に関して位相が変化する事はない。しかしながら、本例では、センサ検知用の溝10をその傾き角を自由に設定した状態で設けている。従って、このセンサ検知用の溝10の傾きに基づいて、この平歯車4cの軸方向変位を検知する事が可能と成る。この様な構成は、隣接するはすば歯車自体の周囲にセンサを対向させるスペースがない場合に好適である。
【0084】
図13(a)、(b)に示した例では、はすば歯車4dの歯5dの各歯先面に対して、センサ検知用の溝10a又は10bを形成している。図面から明らかな通り、センサ検知用の溝10a、10bの傾き角は任意に設定でき、且つ、その傾き方向も任意とする事ができる。これらの例では、第1に、はすば歯車4dの歯5d自体の傾きと関係なく、測定すべき変位に応じて適切な傾きのセンサ検知用の溝10a、10bを別途設ける事で、歯5d自体の傾きに制限される事なく、歯車4dの変位を測定する事が可能となる。従って、動力伝達に適する様に設定されたはすば歯車の捩れ角に依存されることなく、検出ゲインを高める事が可能となる。又、歯車4dの歯5d自体の設計精度が十分でなかったり、経年による精度の劣化等が生じたりした場合でも、歯精度に依存する事なく、溝形状の精度に応じた測定が可能となる為、より精度の高い変位検出が可能となる。
【0085】
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。尚、本例は、実施の形態の第1例のみならず、第2例〜第7例と組み合わせても実施する事ができる。
【0086】
[実施の形態の第9例]
図14は、請求項11に対応する、本発明の実施の形態の第9例を示している。本例は、それぞれがはすば歯車である1対の歯車のうち、1対のセンサの検出部が対向する一方又は両方の歯車を外嵌固定した回転軸に、この回転軸を軸方向に所定の力で押圧する弾力を付与している点に特徴がある。
【0087】
図14に示す例では、はすば歯車4aが固定された回転軸1aの端部に外嵌固定され、この回転軸1aを回転可能にケーシング13に支持する軸受12と、このケーシング13との間に、弾性部材として皿バネ11を設けて、この回転軸1aに対して、軸方向に押圧する弾力を付与している。この為、前記ケーシング13の一部に、前記軸受12の外輪を、軸方向の移動を可能に内嵌固定している。弾性部材としては、皿バネ11の他、コイルバネ、樹脂製の環状部材等、回転軸1aを軸方向に押圧可能な部材であれば、任意に採用できる。
【0088】
この様に弾性部材を設ける事により、この回転軸1a及びこの回転軸1aに固定されたはすば歯車4aには、トルクTの作用に拘わらず、軸方向の弾力が付与される。そして、はすば歯車4aにトルクTに応じた軸方向力Fx(Fx1、Fx2)が加わった場合には、この軸方向力Fx(Fx1、Fx2)とこの弾性部材による軸方向の弾力との和又は差が歯車4aに作用する。この様にして、本例では、弾性部材により前記歯車4aを支持した前記回転軸1aのアキシアル剛性を安定させて、この回転軸1aの軸方向変位とトルクTとの関係を安定化させる事ができる為、より安定したトルク検出を実現する事ができる。又、前記歯車4aを支持した前記回転軸1aのアキシアル剛性を弾性部材で管理する事で、歯車4aの計画的な軸方向変位を実現できる為、より精度の高いトルク検出を実現する事ができる。
【0089】
その他の部分の構成及び作用は、前述した実施の形態の第1例と同様であるから、同等部分に関する図示並びに説明は省略する。尚、本例は、実施の形態の第1例のみならず、第2例〜第8例と組み合わせても実施する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の歯車伝達装置用物理量測定装置は、自動車用の自動変速機として使用する無段変速機を通過するトルクを測定する場合に限らず、工作機械等、歯車伝達装置を組み込んだ各種機械装置で伝達されるトルクを測定する為に利用できる。又、互いに交差する方向に配置された1対の回転軸の端部にそれぞれ固定した、傘歯車同士を噛合させる歯車伝達装置に関して、本発明を実施する事もできる。
【符号の説明】
【0091】
1、1a、1b 回転軸
2a、2b エンコーダ
3a、3b センサ
4a、4b 歯車
5a、5b 歯
6 歯車伝達装置
7a、7b、7c、7d センサ
8a、8b 平歯車
9 ホルダ
10、10a、10b センサ検知用の溝
11 皿ばね
12 軸受
13 ケーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の回転軸と、これらの回転軸のそれぞれの一部に固定されて、それぞれの外径側端部に形成した歯を互いに噛合させる事により、これらの回転軸同士の間でのトルクの伝達を可能とした1対の歯車とを少なくとも備える歯車伝達装置と、
それぞれの検出部を、前記1対の歯車のうちの少なくとも一方の歯車の前記外径側端部に設けた歯に対向させる事により、当該歯車の回転に伴って出力信号を変化させる、1対のセンサと、
前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、これらの各センサの検出部を対向させた歯車に関する物理量を算出する演算器と、
を備えた歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項2】
前記1対の歯車がはすば歯車であり、前記1対のセンサのうちの一方のセンサの検出部が前記1対の歯車のうちの一方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して径方向に、他方のセンサの検出部がこの一方の歯車の前記外径側端部に形成した歯に対して軸方向に、それぞれ対向しており、前記演算器は、前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記一方の歯車の軸方向変位量とこの歯車が伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する、請求項1に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項3】
前記1対の歯車がはすば歯車であり、前記1対のセンサのうちの一方のセンサの検出部が何れか一方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して、他方のセンサの検出部が他方の歯車の外径側端部に形成した歯に対して、それぞれ径方向に対向しており、前記演算器は、前記歯車同士の軸方向に関する相対変位に伴って発生する、前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記歯車同士の軸方向に関する相対変位量とこれらの歯車同士の間で伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する、請求項1に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項4】
前記1対のセンサを前記1対の歯車の噛合部から円周方向に関して90°の位置よりもこの噛合部に近い位置に配置して、これらのセンサを単一のホルダに保持している、請求項3に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項5】
前記1対のセンサのそれぞれが、前記1対の歯車のそれぞれの前記外径側端部に形成した歯に、それぞれ径方向に対向しており、前記演算器は、前記歯車の中心軸同士の相対位置変化に伴って発生する、前記センサの出力信号同士の間に存在する位相差の変化に基づいて、前記歯車同士の相対変位量とこれらの歯車同士の間で伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する、請求項1に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項6】
前記1対のセンサのそれぞれの検出部が、前記1対の歯車の噛合部を挟んで180°反対側位置に存在しており、これらのセンサは、これらの歯車の回転中心が前記噛合部の接線方向に相対変位する事に伴って互いの出力信号同士の間の位相差を変化させる、請求項5に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項7】
前記1対のセンサを構成する各センサの検出部が、前記1対の歯車の噛合部を挟んで180°反対側位置から、該1対の歯車の圧力角分だけ周方向にそれぞれ移動した位置に存在しており、該1対のセンサは、前記1対の歯車の回転中心が前記噛合部の接線方向に相対変位する事に伴って互いの出力信号同士の間の位相差を変化させる、請求項5に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項8】
前記1対のセンサの検出部が、前記1対の歯車のうち一方の歯車の外周面に対向しており、これらのセンサの検出部がこの一方の歯車に対向している位置は、前記歯車同士の噛合部から円周方向にそれぞれ90°ずれた部分であり、前記1対のセンサは、前記一方の歯車が他方の歯車から離れる方向に変位する事に伴って、互いの出力信号同士の間の位相差を変化させる、請求項5に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項9】
前記1対の歯車がはすば歯車であり、前記1対のセンサのうちの一方のセンサの検出部が、これらの歯車のうちの一方の歯車の前記外径側端部に形成した歯に径方向に対向し、他方のセンサの検出部がこの一方の歯車に隣接してこの一方の歯車と同じ回転軸に固定された平歯車の外径側端部に形成した歯に径方向に対向しており、前記演算器は、前記1対のセンサの出力信号同士の間に存在する位相差に基づいて、前記一方の歯車の軸方向変位量とこの歯車が伝達するトルクとのうちの少なくとも一方を算出する、請求項1に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項10】
前記1対の歯車のうち、前記1対のセンサの前記検出部が対向する歯車の前記外径側端部に設けた歯の歯先面の一部に、センサ検知用の溝が設けられている、請求項1に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。
【請求項11】
前記1対の歯車のうち、前記1対のセンサの前記検出部が対向する歯車を外嵌固定した回転軸に、この回転軸を軸方向に所定の力で押圧する弾力を付与する、請求項1に記載した歯車伝達装置用物理量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−98268(P2012−98268A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92389(P2011−92389)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】