説明

歯車変速装置

【課題】 ギヤの二重噛み合いやギヤ抜けを防止するインターロック機能を備えたツインクラッチ式の歯車変速装置を提供する。
【解決手段】 ツインクラッチ式の歯車変速装置の各変速段を選択する複数のシフトフォーク25A〜25Dに連結される複数のフォークヘッド21A〜21Dは、各先端部21aを重ね合わせるとともに切欠き21cを形成し、この各切欠きの内側に沿って延びてそのシフト方向の移動を制限するとともに先端部の通過を許容するギャップ17を形成したインターロック部材15,15A,15Bを備えている。フォークヘッドの先端部の外幅H1 と、切欠きの内幅H2 と、拘束部の外幅P1 及び内幅P2 と、シフトアンドセレクト部材18A,18Bの先端部の幅Iと、フォークヘッドのシフトストロークSの各寸法を、H2 −P1 ≧0、P2 −H1 +2S≧0、H2 −2S−I≧0となるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤの二重噛み合いやギヤ抜けを防止するインターロック機能を備えたダブルクラッチ式の歯車変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両用の自動変速装置としては流体トルクコンバータを使用したものが一般的であるが、流体トルクコンバータは動力伝達に滑りを伴うので伝達効率が低下するという問題がある。このような問題を解決するために、歯車式手動変速装置をベースにした変速装置の自動化が提案されており、その1つとして特許文献1に示すようなダブルクラッチ式の歯車変速装置がある。図8〜図11はその概要を示すものである。
【0003】
先ず、このダブルクラッチ式の歯車変速装置の歯車変速機構を図8及び図9により説明する。この歯車変速機構では、エンジンの出力軸などの駆動軸31からの入力は、ツインクラッチ(ダブルクラッチ)32の第1クラッチ32aを介して第1入力軸33に伝達され、また第2クラッチ32bを介して第1クラッチ32aの外周に同軸的に設けられた筒状の第2入力軸34に伝達される。ツインクラッチ32の第1及び第2クラッチ32a,32bは、図9に示すように、一方の伝達トルクAと他方の伝達トルクBが互いに逆向きに増減し、通常は何れか一方が所定の値T0 となり他方が0となるように制御されるものである。この歯車変速機構は、両入力軸33,34と平行に設けられた第1及び第2中間軸35,36を有しており、第1入力軸33と第1及び第2中間軸35,36の間には第1速、第3速、第5速及び第7速の4つの変速段を有する第1歯車変速機構30Aが設けられ、第2入力軸34と第1及び第2中間軸35,36の間には第2速、第4速及び第6速の3つの変速段を有する第2歯車変速機構30Bが設けられている。また第1入力軸33と第2中間軸36の間には後進歯車列47が設けられている。第1及び第2中間軸35,36は、それぞれに設けた歯車48a,48bが出力軸38に設けた歯車48cに噛合されて、出力軸38に連結されている。
【0004】
第1歯車変速機構30Aの第1速歯車列40は第1入力軸33に固定した歯車40aと第1中間軸35に回転自在に設けた歯車40bよりなり、第3速歯車列42は第1入力軸33に固定した歯車42aと第1中間軸35に回転自在に設けた歯車42bよりなり、第1中間軸35には歯車40b側と係合する第1速位置と歯車42b側と係合する第3速位置と何れにも係合しない中立位置とに切換可能な第1切換クラッチ50が設けられている。また第1歯車変速機構30Aの第5速歯車列46は第1入力軸33に固定した歯車42a(第3速歯車列42と共用)と第2中間軸36に回転自在に設けた歯車46bよりなり、第7速歯車列44は第1入力軸33に固定した歯車44aと第2中間軸36に回転自在に設けた歯車44bよりなり、第2中間軸36には歯車46b側と係合する第5速位置と歯車44b側と係合する第7速位置と何れにも係合しない中立位置とに切換可能な第3切換クラッチ52が設けられている。
【0005】
第2歯車変速機構30Bの第2速歯車列41は、第2入力軸34に固定した歯車41aと第1中間軸35に回転自在に設けた歯車41bよりなり、第4速歯車列43は第2入力軸34に固定した歯車43aと第1中間軸35に回転自在に設けた歯車43bよりなり、第1中間軸35には歯車41b側と係合する第2速位置と歯車43b側と係合する第4速位置と何れにも係合しない中立位置とに切換可能な第2切換クラッチ51が設けられている。また第2歯車変速機構30Bの第6速歯車列45は、第2入力軸34に固定した歯車45aと第2中間軸36に回転自在に設けた歯車45bよりなり、後進歯車列47は第1入力軸33に固定した歯車40a(第1速歯車列40と共用)と各軸33〜36と平行に設けたリバース軸37に固定した歯車47a,47bと第2中間軸36に回転自在に設けた歯車47cよりなり、第2中間軸36には歯車45b側と係合する第6速位置と歯車47c側と係合する後進位置と何れにも係合しない中立位置とに切換可能な第4切換クラッチ53が設けられている。
【0006】
第1及び第2クラッチ32a,32b並びに第1〜第4シフトフォーク61A〜61Dを介して切り換えられる第1〜第4切換クラッチ50〜53は、制御装置(図示省略)により自動的に切り換えられるものであり、制御装置は、センサにより検出されるアクセル開度や車速やエンジン回転数などの車両の作動状態に基づいて適切な変速段を演算し、演算された変速段が得られるように各クラッチ32a,32b,50〜53を制御するものである。第1及び第2クラッチ32a,32bは、通常の作動状態では前述のようにそれぞれの伝達トルクが互いに逆向きに増減され、エンジンの停止状態及び停車状態では両方とも解除されるように制御される。
【0007】
次にこの従来技術の第1及び第2歯車変速機構30A,30Bの作動の説明をする。不作動状態ではツインクラッチ32は第1及び第2クラッチ32a,32bがともに解除されており、各切換クラッチ50〜53は中立位置にある。停車状態において駆動軸31に連結されるエンジンを起動させれば、制御装置は第1切換クラッチ50を第1シフトフォーク61Aを介して第1速位置にシフトし、スロットル開度が増大してエンジンが所定の回転速度に達すれば、ツインクラッチ32の第1クラッチ32aを係合させ、これにより駆動軸31の駆動トルクは第1クラッチ32aから第1入力軸33、第1歯車変速機構30Aの第1速歯車列40、第1切換クラッチ50、第1中間軸35、歯車48a,48cを介して出力軸38に伝達され、車両は第1速で走行し始める。制御装置は、この状態で第2速への切り換えに備えて第2歯車変速機構30Bの第2切換クラッチ51を第2シフトフォーク61Bを介して第2速位置にシフトする。アクセル開度や車速やエンジン回転数などの車両の作動状態が第2速走行に適した状態となれば、制御装置はツインクラッチ32の係合側を第2クラッチ32b側に切り換える。これにより駆動軸31の駆動トルクは第2クラッチ32bから第2入力軸34、第2歯車変速機構30Bの第2速歯車列41、第2切換クラッチ51、第1中間軸35、歯車48a,48cを介して出力軸38に伝達され、車両は第2速走行に切り換えられる。制御装置は、車両の走行状態が引き続き変速段上昇に適した状態であれば、第1切換クラッチ50を第1シフトフォーク61Aを介して第1速位置から離脱させて第3速位置にシフトし、車両の走行状態が第3速走行に適した状態となれば、ツインクラッチ32の係合側を第1クラッチ32a側に切り換えて、第1歯車変速機構30Aによる第3速走行に切り換える。
【0008】
以下同様に、車両の走行状態が引き続き変速段上昇に適した状態であれば、制御装置は所定の切換クラッチ50〜53をシフトして、その時に使用されている変速段の1つ下の変速段の歯車列を離脱するとともに1つ上の変速段の歯車列を係合し、この1つ上の変速段の走行に適した状態となればツインクラッチ32を切り換え、これを繰り返して変速段を上昇させる。また、車両の走行状態が変速段の下降に適した状態であれば、制御装置は所定の切換クラッチ50〜53をシフトして、その時に使用されている変速段の1つ上の変速段の歯車列を離脱するとともに1つ下の変速段の歯車列を係合し、この1つ下の変速段の走行に適した状態となればツインクラッチ32を切り換え、これを繰り返して変速段を下降させる。変速段がそのときの走行状態に適したものであれば、制御装置は切換クラッチ50〜53及びツインクラッチ32の各クラッチ32a,32bの切り換えは行わず、そのときの状態を維持する。
【0009】
停車状態において手動により後進操作をすれば、制御装置はそれを検出して必要ならば第1切換クラッチ50を中立位置に戻すとともに第4切換クラッチ53を後進位置にシフトし、スロットル開度が増大してエンジンが所定の回転速度に達すれば、ツインクラッチ32の第1クラッチ32aを係合させ、これにより駆動軸31の駆動トルクは第1クラッチ32aから第1入力軸33、後進歯車列47、第4切換クラッチ53、第2中間軸36、歯車48b,48cを介して出力軸38に伝達され、車両は後進し始める。
【0010】
次に、図8に示す第1及び第2歯車変速機構30A,30Bの切り換えを行う作動機構の説明をする。第1〜第4切換クラッチ50〜53の外周の円周溝に係合された第1〜第4シフトフォーク61A〜61Dには、各軸33〜36と平行に延びる各フォークシャフト(何れも図示省略)を介してそれぞれ第1〜第4フォークヘッド60A〜60Dが連結されており、このフォークヘッド60A〜60Dの各先端部は、図10及び図11に示すように、第1及び第2入力軸33,34と直交方向に重ね合わされるように配置されて、それぞれコ字状の切欠き60aが形成されている。第1〜第4フォークヘッド60A〜60Dは、それぞれ両側のストッパS1,S2により移動が制限される範囲内で、両入力軸33,34と平行なシフト方向に移動することにより、フォークシャフトを介して第1〜第4シフトフォーク61A〜61Dを作動させて、第1〜第4切換クラッチ50〜53をそれぞれ、その一側の歯車と係合する位置と他側の歯車と係合する位置と何れにも係合しない中立位置とに切り換えるものである。シフトアンドセレクト部材62は、先端部が各切欠き60a内を両入力軸33,34と直交するセレクト方向に移動して、複数のフォークヘッド60A〜60Dの1つをセレクトし、その状態で両入力軸33,34と平行なシフト方向に移動することによりセレクトしたフォークヘッドをシフト方向に移動させ、それと対応するシフトフォークをシフトさせて、それと対応する歯車を切り換えるものである。
【0011】
図8に示す歯車変速機構は、前述のように、一方の歯車変速機構30A(または30B)の切換クラッチ50または52(または51または53)により歯車を切り換えて1つの変速段を選択した状態で、次の変速に備えて、他方の歯車変速機構30B(または30A)の切換クラッチ50または52(または51または53)により歯車を切り換えて次の変速段を選択するようにしている。従って、各切換クラッチ50〜53を作動させる各シフトフォーク61A〜61Dに連結された各フォークヘッド60A〜60Dがどの位置にあっても、中立位置にあるシフトアンドセレクト部材62はセレクト方向に移動可能でなければならない。このために図11(b) に示すように、切欠き60aは、各フォークヘッド60A〜60Dがその中央と両側の3位置の何れの位置にあっても、中立位置にあるシフトアンドセレクト部材62をセレクト方向に通すことができる寸法形状としている。すなわち図10に示すように、中立位置(中央位置)にあるシフトアンドセレクト部材62の両側と、中立位置(中央位置)にある各フォークヘッド60A〜60Dの切欠き60aの両内側の間には、フォークヘッド60A〜60Dの片側のシフトストロークと同じまたはそれより広い寸法の遊びDを設けている。
【0012】
図8〜図11に示す従来技術によるツインクラッチ式の歯車変速装置と、その作動機構の構造は以上の通りである。
【特許文献1】特表2003−532040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した従来技術では、各フォークヘッド60A〜60D及び各シフトフォーク61A〜61Dは、中立位置または各シフト位置では、各フォークシャフト(図示省略)などと変速機ケースの間に設けたスプリングにより付勢されたボールとこれと弾性的に係合する複数のノッチよりなるデテント装置等により、その位置に弾性的に保持されている。しかし各シフトフォーク61A〜61Dを中立位置または各シフト位置に積極的に拘束する部材は設けられていないので、強い外力が各シフトフォーク61A〜61D等に加わると、中立位置から何れかのシフト位置へ、あるいは各シフト位置から中立位置へ移動するおそれがあり、そのような事態が生じると本来形成されているべき変速段が形成されなくなるギヤ抜け、あるいは本来形成されていないはずの変速段が形成されることによるギヤの二重噛み合いという問題を生じる。本発明はこのような問題を防止するインターロック装置を備えたツインクラッチ式の歯車変速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このために、請求項1の発明による歯車変速装置は、駆動軸と、出力軸と、ツインクラッチの第1及び第2クラッチを介して駆動軸に選択的に連結される第1及び第2入力軸と、第1入力軸と出力軸の間に設けられて複数の変速段を有する第1歯車変速機構と、第2入力軸と出力軸の間に設けられて第1歯車変速機構とは異なる複数の変速段を有する第2歯車変速機構と、両入力軸と平行方向に移動し各歯車を切り換えて各変速段を選択する複数のシフトフォークと、この各シフトフォークに連結されコ字状の切欠きが形成された先端部が両入力軸と直交方向に重ね合わされるように配置された複数のフォークヘッドと、先端部が各切欠き内を直交方向に移動して複数のフォークヘッドの一つを選択した状態で平行方向に移動することにより選択したフォークヘッドを移動して各歯車変速機構の変速段を選択するシフトアンドセレクト部材を備えてなり、一方の歯車変速機構の任意の変速段を選択した状態で他方の歯車変速機構の歯車の切り換えを行うようにしてなる歯車変速装置において、シフトアンドセレクト部材とともに直交方向に移動するように設けられ重ね合わされる各フォークヘッドが直交方向における中立位置にある状態ではその先端部の切欠きの両内側に沿ってそれぞれ直交方向に延びて同先端部の移動を拘束する拘束部を有するとともに同拘束部にはシフトアンドセレクト部材の先端部と対応する直交方向の位置にフォークヘッドの先端部の通過を許容するギャップを形成したインターロック部材をさらに備えるとともに、フォークヘッドの先端部の外幅H1 と、切欠きの内幅H2 と、拘束部の外幅P1 及び内幅P2 と、シフトアンドセレクト部材の先端部の幅Iと、フォークヘッドのシフトストロークSの各寸法を、
H2 −P1 ≧0
P2 −H1 +2S≧0
H2 −2S−I≧0
となるように設定したことを特徴とするものである。
【0015】
請求項1に記載の歯車変速装置は、H2 −P1 及びP2 −H1 +2Sの各値が何れも0またはそれより僅かに大となるように設定することが好ましい。
【0016】
請求項1または請求項2に記載の歯車変速装置は、直交方向に沿って回動及び軸線方向移動可能に設けられたシフトアンドセレクトシャフトをさらに備えたものとし、シフトアンドセレクト部材はシフトアンドセレクトシャフトに固定されて半径方向に突出するインナレバーを有するものとし、シフトアンドセレクト部材の先端部はインナレバーの先端部とし、インターロック部材はインナレバーを間に挟む両側板を介してシフトアンドセレクトシャフトに回転自在かつ軸線方向移動不能となるように設けられたインターロックプレートとし、拘束部は両側板の両側部から中立位置における複数のフォークヘッドの先端部の切欠きの両内側に沿って互いに近づく向きに延びる2対の細長いフィンガとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、ツインクラッチを備えた歯車変速装置において、
シフトアンドセレクト部材とともに直交方向に移動するように設けられ重ね合わされる各フォークヘッドが直交方向における中立位置にある状態ではその先端部の切欠きの両内側に沿ってそれぞれ直交方向に延びて同先端部の移動を拘束する拘束部を有するとともに同拘束部にはシフトアンドセレクト部材の先端部と対応する直交方向の位置にフォークヘッドの先端部の通過を許容するギャップを形成したインターロック部材をさらに備えたものとし、フォークヘッドの先端部の外幅H1 と、切欠きの内幅H2 と、拘束部の外幅P1 及び内幅P2 と、シフトアンドセレクト部材の先端部の幅Iと、フォークヘッドのシフトストロークSの各寸法を、
H2 −P1 ≧0
P2 −H1 +2S≧0
H2 −2S−I≧0
となるように設定したので、シフトアンドセレクト部材は各フォークヘッドがどの位置にある状態でも切欠き内を両入力軸と直交方向に移動して所定のフォークヘッドを選択してそのフォークヘッドを中立位置からシフトしあるいは中立位置に戻すことができ、またシフトアンドセレクト部材により選択されている場合を除き、中立位置にある各フォークヘッドはその切欠きの各内側にインターロック部材の拘束部の各外側が当接されてシフト方向への移動が拘束され、また何れか一方のシフト位置にある各フォークヘッドはその一方の外端がインターロック部材の拘束部の内側に当接されて戻りが拘束される。従って、強い外力が各シフトフォーク等に加わっても、予想外の位置に移動することはないので、本来形成されているべき変速段が形成されず、あるいは本来形成されているべきでない変速段が形成されるという問題が生じることはない。
【0018】
H2 −P1 及びP2 −H1 +2Sの各値が何れも0またはそれより僅かに大となるように設定した請求項2の発明によれば、中立位置及びシフト位置において拘束されている各フォークヘッドのシフト方向における動きは僅かとなるので、各切換クラッチの各位置は正確に保持され、各歯車は確実に切り換えられる。
【0019】
直交方向に沿って回動及び軸線方向移動可能に設けられたシフトアンドセレクトシャフトをさらに備えたものとし、シフトアンドセレクト部材はシフトアンドセレクトシャフトに固定されて半径方向に突出するインナレバーを有するものとし、シフトアンドセレクト部材の先端部はインナレバーの先端部とし、インターロック部材はインナレバーを間に挟む両側板を介してシフトアンドセレクトシャフトに回転自在かつ軸線方向移動不能に設けられたインターロックプレートとし、拘束部は両側板の両側部から中立位置における複数のフォークヘッドの先端部の切欠きの両内側に沿って互いに近づく向きに延びる2対の細長いフィンガとした請求項3の発明によれば、歯車変速機構の作動機構の構造が簡略化され部品点数も少なくなるので、作動が確実で製造コストも低廉な歯車変速装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、図1〜図9により、本発明による歯車変速装置の実施形態の説明をする。図8及び図9に示すツインクラッチ式の歯車変速機構の説明図はこの実施形態の一部を構成するものであるが、その内容は前述した従来技術で説明したものと同一であるので詳細な説明は省略し、以下においては図1〜図7により、この歯車変速機構30A,30Bを作動させるインターロック機能を有する作動機構及び全体的作動の説明を主として行う。
【0021】
このインターロック機能を有する作動機構は、主として図1〜図3に示すように、シフトアンドセレクトシャフト12と、このシフトアンドセレクトシャフト12に取り付けられる各2個のシフトアンドセレクト部材18A,18B及びインターロック部材15A,15Bと、第1〜第4フォークシャフト20A〜20Dと、この各フォークシャフト20A〜20Dにそれぞれ固定されるフォークヘッド21A〜21D及びシフトフォーク25A〜25Dよりなるものである。
【0022】
図1及び図2に示すように、シフトアンドセレクトシャフト12は、図8に示す歯車変速機構の各入力軸33,34及び各中間軸35,36と直交方向に延びて両端部がカラー11及びブッシュ11aを介して変速機ケース10に回動及び軸線方向移動自在に案内支持され、第1〜第4フォークシャフト20A〜20Dは、各軸33〜36と平行に延びて両端部が変速機ケース10に軸線方向移動自在に案内支持されている。
【0023】
各フォークシャフト20A〜20Dには、両歯車変速機構30A,30Bの各切換クラッチ50〜53の外周の円周溝にそれぞれ係合される第1〜第4シフトフォーク25A〜25Dがボス部25aを介して固定され、また各先端部21aがシフトアンドセレクトシャフト12の一側に接近するように配置された第1〜第4フォークヘッド21A〜21Dがボス部21dを介して固定されている。各フォークヘッド21A〜21Dの先端部21aには両側に1対の脚部21bが突出されてそれらの間にコ字状の切欠き21cが形成されている。また第1及び第2フォークヘッド21A,21Bの各先端部21aは互いに接近するように重ね合わせて配置され、第3及び第4フォークヘッド21C,21Dの各先端部21aも同様に重ね合わせて配置されている。
【0024】
シフトアンドセレクトシャフト12には、第1及び第2フォークヘッド21A,21Bの各先端部21aと、第3及び第4フォークヘッド21C,21Dの各先端部21aと接近する位置に、それぞれ第1及び第2シフトアンドセレクト部材18A,18Bの円筒状のボス部18aが押しねじまたはノックピンなどにより固定され、このボス部18aの外側から半径方向外向きに突出するインナレバー18bの先端部18cは、対応するフォークヘッド21A〜21Dの各先端部21aの切欠き21c内に係合可能となっている。
【0025】
図1〜図3に示すように、板材を折曲成形してなる第1及び第2インターロックプレート(インターロック部材)15A,15Bは互いに同一形状で、互いに平行に折曲されて各シフトアンドセレクト部材18A,18Bのボス部18aを隙間なく間に挟む1対の側板15aを有し、この両側板15aを介してシフトアンドセレクトシャフト12に回転自在かつ軸線方向移動不能に支持されている。これにより各インターロック部材15A,15Bは、各シフトアンドセレクト部材18A,18Bとともに、シフトアンドセレクトシャフト12の軸線方向に移動される。両側板15aの先端部両側には、シフトアンドセレクトシャフト12と平行にかつ互いに近づく向きに延びる細長い各1対の第1フィンガ16a及び第2フィンガ16bが折曲形成され、長手方向に向かい合う第1フィンガ16aと第2フィンガ16bの各先端部の間にはギャップ17が形成されている。この各フィンガ16a,16bは、各フォークヘッド21A〜21Dがその移動方向の中立位置にある状態では、多少の隙間をおいて、それぞれ対をなして重ね合わされるフォークヘッド21A,21B及びフォークヘッド21C,21Dの各先端部21aの切欠き21cを通り抜け可能にその両内側に沿って延び、各ギャップ17は、各シフトアンドセレクト部材18A,18Bのインナレバー18bと対応する位置に形成されて、各インナレバー18bの各先端部18c及び各フォークヘッド21A〜21Dの各先端部21aの通過を許容する寸法を有している。この各1対の第1及び第2フィンガ16a,16bとギャップ17は、各フォークヘッド21A〜21Dがインナレバー18bによりセレクト(選択)されてシフトされる場合を除き、その各先端部21aが各入力軸33,34及び各中間軸35,36と平行方向に移動することを拘束する拘束部16を構成している。
【0026】
図1に示すように、シフトアンドセレクトシャフト12には、第1インターロックプレート15Aの一側となる位置にシフト用セクタギヤ13が押しねじまたはノックピンなどにより固定され、また第2インターロック部材15Bの一側に接する位置にラック部材14がスナップリング12aを介して回動のみ自在に取り付けられ、ラック部材14には長手方向に沿ってラック部14aが形成されている。この歯車変速装置は、車両の作動状態に基づいて適切な変速段を演算する制御装置(図示省略)により制御され、シフトアンドセレクトシャフト12は、ラック部14aと噛合するピニオン14bをこの制御装置により回動することにより軸線方向に移動され、これにより各シフトアンドセレクト部材18A,18Bのインナレバー18bの先端部18cは各フォークヘッド21A〜21Dの先端部21の切欠き21c内を移動して、各フォークヘッド21A〜21Dを順次セレクトする。図1〜図3に示す実施形態では、先ず図1に示すように第1インターロック部材15Aのインナレバー18bが第1フォークヘッド21Aをセレクトし、次いで第2フォークヘッド21Bをセレクトし、これに引き続き第2インターロック部材15Bのインナレバー18bが第3フォークヘッド21C及び第4フォークヘッド21Dをセレクトするようになっている。またシフトアンドセレクトシャフト12は、シフト用セクタギヤ13と噛合するピニオン(図示省略)を制御装置により回動することにより回動され、これによりインナレバー18bによりセレクトされたフォークヘッド21A〜21Dの切欠き21cの内側面にインナレバー18bの先端部18cが当接して、そのフォークヘッドを図2の実線で示す中立位置から各入力軸33,34及び各中間軸35,36と平行な左右両方向にシフトし(図2の二点鎖線18X,18Y及び二点鎖線21X,21Y参照)、対応するシフトフォークを介して対応する切換クラッチをシフトして、その一側の歯車と係合する位置と他側の歯車と係合する位置と何れにも係合しない中立位置とに切り換えるようになっている。
【0027】
次に図4及び図5により、ギヤの二重噛み合いやギヤ抜けを防止してこの歯車変速装置を作動させるために必要な、フォークヘッド21の先端部21aの外幅H1 と、切欠き21cの内幅H2 と、拘束部16の外幅P1 及び内幅P2 と、インナレバー18bの先端部18cの幅Iと、各フォークヘッド21A〜21DのシフトストロークSの寸法関係の説明をする。なお、シフトストロークSは、中立位置にある各フォークヘッド21A〜21Dがインナレバー18bの先端部18cによりシフトされてストッパに当接して停止されるまでの移動距離である。図5では各フォークヘッド21A〜21Dが両側のストッパS1,S2に直接当接して停止されるように図示したが、実際は各フォークヘッド21A〜21Dは、例えば図2に示すように、各フォークシャフト20A〜20Dに固定されたボス部21d,25aあるいはスナップリング、段部などの部材が変速機ケース10に当接して停止されるようになっている。また前述した従来技術の場合と同様な理由により、中立位置(中央位置)にあるインナレバー18bの先端部18cの両側と、中立位置(中央位置)にある各フォークヘッド21A〜21Dの先端部21aの切欠き21cの両内側の間には、相当広い遊びCが設けられている。
【0028】
上述のような作動機構において、ギヤの二重噛み合いやギヤ抜けを防止してこの歯車変速装置を作動させるためには、先ず図5(a) に示すように、任意のフォークヘッドが中立位置にある状態では、そのフォークヘッドはインナレバー18bによりセレクトされている場合を除き拘束部16によりシフト方向の移動が拘束され、また各インナレバー18bが中立位置にある場合には、シフトアンドセレクト部材18A及びインターロック部材15Aはセレクト方向に移動可能である必要がある。このためには、図5(a) に記入した各寸法から明らかなように、H2 ≧P1 、すなわち
H2 −P1 ≧0
となるように設定すればよい。このようにすれば、第1シフトアンドセレクト部材18Aのインナレバー18bによりセレクトされていない第1フォークヘッド21Aは、その切欠き21cの各内側に第1インターロック部材15Aの各第1フィンガ16aの外側が当接されてシフト方向への移動が拘束される。またこの状態では図5(a) から明らかなように、シフトアンドセレクト部材18A及びインターロック部材15Aはセレクト方向に移動可能であるので、第1シフトアンドセレクト部材18A及び第1インターロック部材15Aをセレクト方向に移動させてインナレバー18bにより第1フォークヘッド21Aをセレクトし、第2フォークヘッド21Bのセレクトを解除すれば、第2フォークヘッド21Bの切欠き21cの各内側に第1インターロック部材15Aの各第2フィンガ16bの外側が当接されてシフト方向への移動が拘束されるようになる。
【0029】
また図5(b) に示すように、任意のフォークヘッドが何れか一方にシフトされストッパに当接して停止された状態では、そのフォークヘッドはインナレバー18bによりセレクトされている場合を除き拘束部16により中立位置への戻りが拘束され、また各インナレバー18bが中立位置にある場合には、シフトアンドセレクト部材18A及びインターロック部材15Aはセレクト方向に移動可能である必要がある。このためには、図5(b) に記入した各寸法から明らかなように、先ずH1 ≦S+(H1 +P2 )/2、すなわち
P2 −H1 +2S≧0
となるように設定すればよい。このようにすれば、インナレバー18bによりセレクトされていない第2フォークヘッド21Bは、ストッパS2と反対側の外端が第1インターロック部材15Aの第2フィンガ16bの一方の内側に当接されて戻りが拘束される。また中立位置にあるシフトアンドセレクト部材18A及びインターロック部材15Aがセレクト方向に移動可能であるためには、図5(b) に記入した各寸法から明らかなように、I≦(H1 +H2 )/2−(H1 −H2 )/2−2S、すなわち
H2 −2S−I≧0
となるように設定すればよい。このようにすれば、シフトアンドセレクト部材18Aは両フォークヘッド21A,21Bの切欠き21c内を通ってセレクト方向に移動可能になり、これとともにインターロック部材15Aもセレクト方向に移動可能になる。そして、第1シフトアンドセレクト部材18A及び第1インターロック部材15Aをセレクト方向に移動させてインナレバー18bにより第2フォークヘッド21Bをセレクトし、第1フォークヘッド21Aのセレクトを解除すれば、第1フォークヘッド21Aは、ストッパS1と反対側の外端が第1インターロック部材15Aの第1フィンガ16aの一方の内側に当接されて戻りが拘束されるようになる。
【0030】
以上は第1シフトアンドセレクト部材18A及びインターロック部材15Aの場合の作動につき説明したが、第2シフトアンドセレクト部材18B及び第2インターロック部材15Bの場合の作動も同様である。また上述した実施形態では、各フォークヘッド21A〜21Dのシフト方向における動きを少なくして各切換クラッチ50〜53の各位置を正確に保持するために、H2 −P1 及びP2 −H1 +2Sの値をなるべく0に近い値としている。なおこの値を0にしても、各部が弾性変形するので、各インターロック部材15A,15B及び各シフトアンドセレクト部材18A,18Bのセレクト方向の移動に支障が生じることはない。
【0031】
次に図6により上述した実施形態による歯車変速装置を自動車に適用した場合の全体的作動を説明する。不作動状態では図6(a) に示すように、各フォークヘッド21A〜21Dは中立位置にあり、第1フォークヘッド21Aが第1シフトアンドセレクト部材18Aのインナレバー18bによりセレクトされており、ツインクラッチ32は第1及び第2クラッチ32a,32bがともに解除されている。駆動軸31に連結されるエンジンを起動すれば、制御装置は図6(b) に示すように、第1シフトアンドセレクト部材18Aのインナレバー18bを作動させて第1フォークヘッド21Aを第1速側にシフトし、第1歯車変速機構30Aの第1切換クラッチ50を介して第1速歯車列40による動力伝達を可能とする。この状態でスロットル開度が増大してエンジンが所定の回転速度に達すれば、ツインクラッチ32の係合側を第1クラッチ32a側に切り換え、これにより車両は第1歯車変速機構30Aによる第1速で走行し始める。
【0032】
制御装置は、この状態で第2速への切り換えに備えてシフトアンドセレクトシャフト12を作動させ、図6(c) に示すように、インナレバー18bにより第2フォークヘッド21Bをセレクトして第2速側にシフトし、第2歯車変速機構30Bの第2切換クラッチ51を介して第2速歯車列41による動力伝達を可能とする。この状態で車両の作動状態が第2速走行に適した状態となれば、制御装置はツインクラッチ32の係合側を第2クラッチ32b側に切り換え、これにより車両は第2歯車変速機構30Bによる第2速走行に切り換えられる。
【0033】
制御装置は、車両の走行状態が引き続き変速段上昇に適した状態であれば、図6(d) に示すようにシフトアンドセレクトシャフト12を作動させ、インナレバー18bにより第1フォークヘッド21Aをセレクトして第1速側から第3速側にシフトし、第1歯車変速機構30Aの第1切換クラッチ50を介して第3速歯車列42による動力伝達を可能とする。この状態で車両の作動状態が第3速走行に適した状態となれば、制御装置はツインクラッチ32の係合側を第1クラッチ32aに切り換え、これにより車両は第1歯車変速機構30Aによる第3速走行に切り換えられる。
【0034】
以下同様に、車両の走行状態が引き続き変速段上昇に適した状態であれば、制御装置は図6(e) 〜図6(h) に示すように、シフトアンドセレクト部材18Aまたは18Bにより所定のフォークヘッド21A〜21Dをセレクトしてシフトすることにより所定の切換クラッチ50〜53を作動させて、その時に使用されている変速段の1つ下の変速段の歯車列を離脱するとともに1つ上の変速段の歯車列を係合し、この1つ上の変速段の走行に適した状態となればツインクラッチ32を切り換え、これを繰り返して変速段を上昇させる。なお各インナレバー18bは、シフトアンドセレクト部材18Aまたは18Bにより所定のフォークヘッド21A〜21Dをセレクトしてシフトする前の適当な時期に、制御装置からの指令により中立位置に戻される。
【0035】
変速段がそのときの走行状態に適したものであれば、制御装置はフォークヘッド21A〜21Dのセレクト及びシフトによる切換クラッチ50〜53の作動及びツインクラッチ32の各クラッチ32a,32bの切り換えは行わず、そのときの状態を維持する。また、車両の走行状態が変速段の下降に適した状態となれば、制御装置はシフトアンドセレクト部材18Aまたは18Bにより所定のフォークヘッド21A〜21Dをセレクトしてシフトすることにより所定の切換クラッチ50〜53を作動させて、その時に使用されている変速段の1つ上の変速段の歯車列を離脱するとともに1つ下の変速段の歯車列を係合し、この1つ下の変速段の走行に適した状態となればツインクラッチ32を切り換え、これを繰り返して変速段を下降させる。
【0036】
この実施形態によれば、上述したようにそのときの走行状態に応じた変速段が制御装置により自動的に選択される。また前述したように、各シフトアンドセレクト部材18A,18Bのインナレバー18bは各フォークヘッド21A〜21Dの先端部21aが中立位置及びシフト位置の何れにある状態でも、それらの切欠き21c内を両入力軸33,34と直交方向に移動して所定のフォークヘッド21A〜21Dをセレクトしてそのフォークヘッド21A〜21Dを中立位置からシフトしあるいは中立位置に戻すことができる。また中立位置にある各フォークヘッド21A〜21Dは、シフトアンドセレクト部材18A,18Bにより選択されている場合を除き、その切欠き21cの各内側にインターロック部材15A,15Bの各フィンガ16a,16bの各外側が当接されてシフト方向への移動が拘束される。また何れか一方のシフト位置にある各フォークヘッド21も、シフトアンドセレクト部材18A,18Bにより選択されている場合を除き、その一方の外端がインターロック部材15A,15Bのフィンガ16a,16bの内側に当接されて戻りが拘束される。従って、強い外力が各シフトフォーク61A〜61D等に加わっても、予想外の位置に移動することはないので、本来形成されているべき変速段が形成されず、あるいは本来形成されているべきでない変速段が形成されるという問題が生じることはない。
【0037】
またこの実施形態では、H2 −P1 及びP2 −H1 +2Sの値をなるべく0に近い値としており、このようにすれば、中立位置及びシフト位置において拘束されている各フォークヘッド21のシフト方向における動きは僅かとなるので、各切換クラッチ50〜53の各位置は正確に保持され、各歯車は確実に切り換えられる。
【0038】
上述した実施形態では、第1及び第2フォークヘッド21A,21Bの各先端部21aと、第3及び第4フォークヘッド21C,21Dの各先端部21aは別々に重ね合わせて配置して、シフト方向の移動を拘束するインターロック部材15A,15Bはそれぞれに設けているが、本発明はこれに限られるものではなく、図7に示すように、4つのフォークヘッド21A〜21Dを全て重ね合わせて配置し、各フォークヘッド21A〜21Dのシフト方向の移動を拘束するインターロック部材15は1個として実施することも可能である。また上述した実施形態では、フォークヘッド21A〜21Dが4個の場合につき説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、フォークヘッド21A〜21Dの数は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による歯車変速装置の一実施形態の歯車変速機構を作動させる作動機構の側面図である。
【図2】図1の2−2断面図である。
【図3】図1の3−3断面図である。
【図4】図1に示す実施形態のインターロック機構部の寸法を示す図面である。
【図5】図1に示す実施形態のインターロック機構部の作動を説明する図面である。
【図6】図1に示す実施形態の全体的作動を説明する図面である。
【図7】本発明による歯車変速装置の作動機構の変形例の図3に相当する図面である。
【図8】図1に示す実施形態に使用する歯車変速機構の説明図である。
【図9】図8に示す歯車変速機構に使用するツインクラッチの作動を説明する図面である。
【図10】従来技術による歯車変速装置の作動機構の一例の図4に相当する図面である。
【図11】図10に示す作動機構の一例の図5に相当する図面である。
【符号の説明】
【0040】
12…シフトアンドセレクトシャフト、15,15A,15B…インターロック部材(インターロックプレート)、15a…側板、16…拘束部、16a,16b…フィンガ、17…ギャップ、18,18A,18B…シフトアンドセレクト部材、18b…インナレバー、18c…先端部、21A〜21D…フォークヘッド、21a…先端部、21c…切欠き、25A〜25D…シフトフォーク、30A…第1歯車変速機構、30B…第2歯車変速機構、31…駆動軸、32…ツインクラッチ、32a…第1クラッチ、32b…第2クラッチ、33…第1入力軸、34…第2入力軸、38…出力軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸と、出力軸と、ツインクラッチの第1及び第2クラッチを介して前記駆動軸に選択的に連結される第1及び第2入力軸と、前記第1入力軸と出力軸の間に設けられて複数の変速段を有する第1歯車変速機構と、前記第2入力軸と出力軸の間に設けられて第1歯車変速機構とは異なる複数の変速段を有する第2歯車変速機構と、前記両入力軸と平行方向に移動し各歯車を切り換えて前記各変速段を選択する複数のシフトフォークと、この各シフトフォークに連結されコ字状の切欠きが形成された先端部が前記両入力軸と直交方向に重ね合わされるように配置された複数のフォークヘッドと、先端部が前記各切欠き内を前記直交方向に移動して複数のフォークヘッドの一つを選択した状態で前記平行方向に移動することにより選択したフォークヘッドを移動して前記各歯車変速機構の変速段を選択するシフトアンドセレクト部材を備えてなり、一方の前記歯車変速機構の任意の変速段を選択した状態で他方の前記歯車変速機構の歯車の切り換えを行うようにしてなる歯車変速装置において、前記シフトアンドセレクト部材とともに前記直交方向に移動するように設けられ前記重ね合わされる各フォークヘッドが前記直交方向における中立位置にある状態ではその先端部の切欠きの両内側に沿ってそれぞれ前記直交方向に延びて同先端部の移動を拘束する拘束部を有するとともに同拘束部には前記シフトアンドセレクト部材の先端部と対応する前記直交方向の位置に前記フォークヘッドの先端部の通過を許容するギャップを形成したインターロック部材をさらに備えるとともに、前記フォークヘッドの先端部の外幅H1 と、前記切欠きの内幅H2 と、前記拘束部の外幅P1 及び内幅P2 と、前記シフトアンドセレクト部材の先端部の幅Iと、前記フォークヘッドのシフトストロークSの各寸法を、
H2 −P1 ≧0
P2 −H1 +2S≧0
H2 −2S−I≧0
となるように設定したことを特徴とする歯車変速装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯車変速装置において、前記H2 −P1 及びP2 −H1 +2Sの各値が何れも0またはそれより僅かに大となるように設定したことを特徴とする歯車変速装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の歯車変速装置において、前記直交方向に沿って回動及び軸線方向移動可能に設けられたシフトアンドセレクトシャフトをさらに備え、前記シフトアンドセレクト部材は前記シフトアンドセレクトシャフトに固定されて半径方向に突出するインナレバーを有し、前記シフトアンドセレクト部材の先端部は前記インナレバーの先端部とし、前記インターロック部材は前記インナレバーを間に挟む両側板を介して前記シフトアンドセレクトシャフトに回転自在かつ軸線方向移動不能となるように設けられたインターロックプレートとし、前記拘束部は前記両側板の両側部から前記中立位置にある複数のフォークヘッドの先端部の切欠きの両内側に沿って互いに近づく向きに延びる2対の細長いフィンガとしたことを特徴とする歯車変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−2789(P2006−2789A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176587(P2004−176587)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(592058315)アイシン・エーアイ株式会社 (490)
【Fターム(参考)】