説明

歯車式の座席角度の無段調節構造

【課題】コンパクトで、小隙間及び高強度であって、汎用性を持ち、座席の背もたれ角度の手動、電動調節及び無段調節が簡単に実現できる歯車式の座席角度の無段調節構造を提供する。
【解決手段】歯車式の座席角度の無段調節構造であって、歯車伝動機構の外歯プレートは偏心ピッチを持って内歯プレートに取り付けられており、隙間消去機構は、その外カムが内歯プレートの中心ハブと外歯プレートの内孔との間に、その内カムが外カムの内孔と内歯プレートの中心ハブとの間に取り付けられ、スプリングは隙間消去機構の中に取り付けられ、偏心カム機構を形成し、駆動機構の中心軸は内歯プレートの中心ハブの孔内に取り付けられ、駆動機構の駆動ブロックは内カムと外カムの間に設置されている。スプリングのフリー状態において、内、外カムは押し込み状態にあり、座席の隙間を消去する役割を果たすことができ、駆動機構の駆動ブロックは、トルクの作用によってスプリングの力を克服して隙間消去機構の押し込み作用を解除し、そして歯車伝動機構は駆動され伝動、回転することによって、座席角度を調節する目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意形式の背もたれ取り付け板とチェアシート取り付け板に連結すれば、車用座席又はその他の座席の背もたれ角度の無段調節ができる歯車式の座席角度の無段調節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、座席角度の調節機構は大体、爪車機構の原理を利用した板バネ式調節機構と遊星歯車伝動原理を利用した歯車式調節機構との二種類に分けられる。公開番号がCN2358759、CN2494632、CN257768とCN2590784である中国実用新案特許の明細書に公開された座席角度の調節機構は、爪車機構の原理を利用した板バネ式調節機構であり、それらのコア伝動装置は、構造上の制限で、無段調節や電動調節を実現することはできない。
【0003】
現在、国内外において、座席角度の無段調節を図る歯車式調節構造は、主に2連歯車の内接噛合伝動による調節機構と、一段内接噛合伝動による調節機構とがある。
【0004】
公開番号がCN2193087とCN2696412である中国実用新案特許の明細書に公開された座席角度の調節機構は歯車式調節構造であり、2連歯車の内接噛合による伝動を採用したが、不可避な製造上の誤差が存在しているため、2連歯車の隙間を共に消去することは実現できず、座席の背もたれの隙間は比較的大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする技術課題は、従来技術の欠点を克服して手動調節及び電動調節ができ、製造コストが低く、座席背もたれの隙間がより小さい歯車式の座席角度の無段調節構造を提供することである。
【0006】
本発明は下記の技術解決案を提供する。当該技術案は、歯車伝動機構と、隙間消去機構と、スプリングと、駆動機構とを備えている。歯車伝動機構の外歯プレートは偏心ピッチを持って内歯プレートの中に取り付けられ、内歯プレートの内歯は外歯プレートの外歯と噛合している。隙間消去機構は、その外カムが内歯プレートの中心ハブと外歯プレートの内孔との間に、その内カムが外カムの内孔と内歯プレートの中心ハブとの間に取り付けられており、両端がそれぞれ内カム及び外カムとに当接しているスプリングは外カムの中に取り付けられ、偏心カム機構を形成している。駆動機構の中心軸は内歯プレートの中心ハブの孔内に取り付けられ、駆動機構の駆動ブロックは内カムと外カムの中に設置されている
【0007】
本発明はまた、前記隙間消去機構は、その内カムがn(n≧2)段ウェッジ面を有し、その外カムが内カムのn段のウェッジ面に対応しかつそれらと係合可能なn段のウェッジ面を有することを特徴とする。内、外カムはn段ウェッジ面の相互作用を利用して隙間を消去している。
【0008】
本発明はまた、スプリングは、ポリウレタン又はスプリングワイヤ、プレート等の弾性材料からなることを特徴とする。これにより、本発明の構造の体積を減少し、コンパクト化することができる。
【0009】
本発明はまた、駆動機構の周囲全体に、密封及び騒音消去の役割を果たすプラスチックリングが嵌め込まれていることを特徴とする。
【0010】
本発明は、歯車伝動機構と、隙間消去機構と、スプリングと、駆動機構とを備え、座席角度を無段調節する一段内接噛合伝動歯車式調節構造を採用している。歯車伝動機構は内、外歯車を利用して一段内接噛合遊星伝動を実現している。隙間消去機構は内、外歯車の中心に取り付けられている内、外二つのカムを採用し、スプリングは内、外カムの中に取り付けられ、フリー状態において、内、外カムはスプリングの作用によって押し込み状態になるので、座席の隙間を消去する役割を果たすことができる。駆動機構の駆動ブロックは内、外カムの中に取り付けられ、トルクの作用によってスプリングの力を克服して隙間消去機構の押し込み作用を解除し、そして歯車伝動機構は回転駆動することによって、内、外歯車の相互回転を実現し、座席角度を調節する目的を達成する。また、駆動機構は、伝動を実現すると同時に、密封の役割を果たしているため、よりよい防塵性と、より長い使用寿命を有する。本発明はユーザの要望に応じて、異なる車型に適した異なる連結板の設計が簡単にでき、よい汎用性を有する。
【0011】
本発明は、一段内接噛合伝動歯車式調節構造を採用し、手動調節も電動調節も可能な、座席角度の無段調節ができる座席角度調節機構を提供しているので、その応用範囲がより広くなっている。本発明の隙間消去機構は、座席背もたれの隙間をさらに小さくすることができ、かつ操作トルクが小さく、強度が高い。また、本発明の隙間消去機構は、よい製造プロセス性と、中国における製造条件に適している長所を持っているので、製造コストがより低く、量産に非常に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1、図2において、本発明は、歯車伝動機構と、隙間消去機構と、スプリングと駆動機構とを備えている。歯車伝動機構は、少歯数差の一段歯車内接噛合遊星伝動機構を採用し、内歯プレート14と外歯プレート3を含み、外歯プレート3は一定の偏心ピッチで内歯プレート14の中に取り付けられることによって、内歯7と外歯21との間は相互に噛合し、内、外歯車の一段内接噛合伝動を実現する。操作トルクが駆動機構に作用する際に、内歯プレート14と外歯プレート3は相互に噛合し、遊星運動を生じることによって、相互間の角度を変化させ、座席角度を調節する目的を実現する。
【0013】
相互に噛合し、かつ伝動する内、外歯車の間に、一定の隙間が避けられなく存在するので、座席の背もたれには相応する隙間を生じ、座席の背もたれが揺れてしまい、座席の快適性を損なってしまう。隙間消去機構は、前記の隙間を消去し、座席の快適性をより高める。本発明の隙間消去機構は、その外カム13が内歯プレート14の中心ハブ15と外歯プレート3の内孔4の間に取り付けられ、その内カム12が外カム13の内孔と内歯プレート14の中心ハブ15の間に取り付けられ、スプリング11のばね力で、内カム12の三段外ウェッジ面5と外カム13の三段内ウェッジ面6とは相互作用し、内歯プレート14と外歯プレート3の偏心ピッチを増加させる作用力を生じることによって、内、外歯プレート14、3の歯7、12間の隙間を消去し、そして座席の背もたれの隙間を消去する。当該実施例の内外ウェッジ面は前記の三段に限らず、二段、四段等であってもよい。
【0014】
外カム13は外歯プレート3の内孔4と摺動係合し、外カム13及び内カム12は内歯プレート14の中心ハブ15と摺動係合する。
【0015】
スプリング11は内、外カム12、13の間に取り付けられ、初期状態において、スプリング11は圧縮状態にあり、スプリング11のばね力で内、外カム12、13のウェッジ面5、6を内、外歯プレート14、3に押し込みさせる。スプリング11はポリウレタン又はスプリングワイヤ、プレート等の弾性材料を用いて製作されることができる。
【0016】
駆動機構1における、異形孔9を有する中心軸10は、内歯プレート14の中心ハブ15の孔内に取り付けられ、駆動ブロック18は内カム12と外カム13の間に取り付けられている。駆動機構1の中心軸10に円形溝19が設けられており、その円形溝19にリテーナーリング17は取り付けられている。装置全体を一体に組み立てるように、リテーナーリング17を円形溝19内に係止させている。製造上の誤差による軸方向の隙間をなくすように、リテーナーリング17と内歯プレート14の間にスプリングワッシャ16は取り付けられている。駆動機構1の周囲全体にプラスチックリング2は嵌め込まれており、装置全体に対して密封作用を働かせ、かつ使用する際に消音作用を働かせることができる。座席に連結される取り付け板を溶接するために、内歯プレート14に2つのボス8が、外歯プレート3に2つのボス20がある。
【0017】
図3において、外カム13は、偏心カムであり、内歯プレート14の中心ハブ15と外歯プレート3の内孔4との間に取り付けられている。内カム12は、外カム13の内孔と内歯プレート14の中心ハブ15との間に取り付けられている。スプリング11は外カム13に取り付けられ、その両端がそれぞれ内カム12及び外カム13に当接している。スプリング11のばね力の作用により、内カム12の三段ウェッジ面と外カム13の三段ウェッジ面は相互に作用し、内歯プレート14と外歯プレート3との偏心ピッチを増加させる作用力を生じさせる。操作トルクが駆動機構の中心軸の角形孔に作用する際に、駆動機構は回転運動する。駆動機構は、逆時計周りに回転する場合に、内カム12を押し、押し込み作用を消去することで、内、外歯プレート14、3を遊星運動させ、角度を調節する目的を実現する。駆動機構は、時計周りに回転する場合に、外カム13を押し、押し込み作用を消去し、角度の調節を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る組み立て関係の構造を示す図である。
【図2】図1のA方向から見た図である。
【図3】本発明に係る組み立て完了後の内部構造を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車伝動機構と駆動機構とを含む歯車式の座席角度の無段調節構造であって、歯車伝動機構の外歯プレート(3)は偏心ピッチをもって内歯プレート(14)に取り付けられ、内歯プレート(14)の内歯(7)と外歯プレート(3)の外歯(21)とは噛合し、隙間消去機構は、その外カム(13)が内歯プレート(14)の中心ハブ(15)と外歯プレート(3)の内孔(4)との間に、その内カム(12)が外カム(13)の内孔と内歯プレート(14)の中心ハブ(15)との間に取り付けられ、スプリング(11)は外カム(13)の中に取り付けられ、かつその両端がそれぞれ内カム(12)及び外カム(13)と当接して偏心カム機構を形成し、駆動機構(1)の中心軸(10)は内歯プレート(14)の中心ハブ(15)の孔内に取り付けられ、駆動機構(1)の駆動ブロック(18)は内カム(12)と外カム(13)の中に設置されていることを特徴とする歯車式の座席角度の無段調節構造。
【請求項2】
前記歯車伝動機構は少歯数差で一段歯車内接噛合遊星伝動機構であることを特徴とする請求項1に記載の歯車式の座席角度の無段調節構造。
【請求項3】
スプリング(11)はポリウレタン又はスプリングワイヤ、プレート等の弾性材料であることを特徴とする請求項1に記載の歯車式の座席角度の無段調節構造。
【請求項4】
前記隙間消去機構は、その内カム(12)がn(n≧2)段のウェッジ面(5)を有し、その外カム(13)が内カム(12)のn段のウェッジ面に対応しかつそれらと係合可能なn段のウェッジ面(6)を有することを特徴とする請求項1に記載の歯車式の座席角度の無段調節構造。
【請求項5】
外カム(13)は外歯プレート(3)の内孔(4)と摺動係合し、外カム(13)及び内カム(12)は内歯プレート(14)の中心ハブ(15)と摺動係合することを特徴とする請求項1に記載の歯車式の座席角度の無段調節構造。
【請求項6】
駆動機構(1)の中心軸(10)に円形溝(19)が設けられており、この円形溝(19)に装置全体を一体に組み合わせる際に固定用のリテーナーリング(17)が取り付けられており、リテーナーリング(17)と内歯プレート(14)の間にスプリングワッシャ(16)が取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の歯車式の座席角度の無段調節構造。
【請求項7】
駆動機構(1)の周囲全体に、装置全体を密封するためのプラスチックリングを嵌め込んでいることを特徴とする請求項1に記載の歯車式の座席角度の無段調節構造。

【公表番号】特表2008−523845(P2008−523845A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521738(P2007−521738)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/CN2006/002398
【国際公開番号】WO2007/131394
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(506413960)湖北中航精机科技股▲分▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】