説明

歯車装置、およびこれを備えた記録装置

【課題】動力伝達歯車が被伝達歯車から離間しようとする際に、被伝達歯車がその回転により動力伝達歯車を引き留めてしまうことを防止する。
【解決手段】歯車装置8は、駆動歯車94の周囲を遊星運動する第1遊星歯車95を備え、第1遊星歯車95の遊星運動により、被伝達歯車75bへの動力伝達のオンオフ切り換えを行う。歯車装置8は、被伝達歯車75bの周囲を遊星運動する補助歯車98を備えている。補助歯車98は、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bと噛合して動力を伝達する場合には第1遊星歯車95から離間しており、回転方向切り換えに伴い第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離間しようとするとき、第1遊星歯車95と噛合し、第1遊星歯車95に対し被伝達歯車75bから離間する方向の力を付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力が伝達される被伝達歯車と、駆動歯車の周囲を遊星運動することにより前記被伝達歯車と噛合及び噛合解除可能な動力伝達歯車と、を備えた歯車装置に関する。また本発明は、当該歯車装置を備えた、ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星運動することにより被伝達歯車に対して噛合及び噛合解除可能な動力伝達歯車(遊星歯車)を備え、当該動力伝達歯車の遊星運動を介して、前記被伝達歯車への動力伝達のオンオフ切り換えを行う歯車装置は、従来から広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2008−74582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら動力伝達歯車と被伝達歯車との位置関係によって、動力伝達歯車が被伝達歯車から離間しようとする際の被伝達歯車の回転方向が、動力伝達歯車の前記離間を阻害する方向となる場合があり、その結果動力伝達歯車の歯が被伝達歯車の歯に噛み込んでしまい、動力伝達歯車が被伝達歯車から離間できない場合がある。特に、動力伝達歯車が被伝達歯車から離間しようとするとき、被伝達歯車が動力伝達歯車から受ける回転作用とは別の理由によって更に回されてしまうと、より一層動力伝達歯車が被伝達歯車から離間できなくなる。
【0004】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、動力伝達歯車が被伝達歯車から離間しようとする際に、被伝達歯車がその回転により動力伝達歯車を引き留めてしまうことを防止することにあり、特に被伝達歯車が前記引き留めを助長する回転方向に回された場合であっても、動力伝達歯車を被伝達歯車から確実に離間させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る歯車装置は、動力が伝達される被伝達歯車と、駆動歯車と噛合するとともに当該駆動歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記駆動歯車の第1方向回転時に前記被伝達歯車と噛合し、前記駆動歯車の第2方向回転時に前記被伝達歯車から離間する動力伝達歯車と、前記被伝達歯車と噛合するとともに当該被伝達歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記動力伝達歯車が前記被伝達歯車と噛合する前記駆動歯車の第1方向回転時には前記動力伝達歯車から離間しており、前記駆動歯車の第1方向回転から第2方向回転への切り換えに伴い前記動力伝達歯車と噛合し、その回転により前記動力伝達歯車に前記被伝達歯車から離間する方向の力を付与する補助歯車とを備えたことを特徴とする。
【0006】
本態様によれば、駆動歯車の第1方向回転から第2方向回転への切り換えに伴い動力伝達歯車(遊星歯車)と噛合して当該動力伝達歯車に被伝達歯車から離間する方向の力を付与する補助歯車を備えているので、動力伝達歯車が被伝達歯車から離間しようとする際に、被伝達歯車がその回転により動力伝達歯車を引き留めてしまうことを防止することができ、特に被伝達歯車が前記引き留めを助長する回転方向に回された場合であっても、動力伝達歯車を被伝達歯車から確実に離間させることができる。
【0007】
本発明の第2の態様に係る歯車装置は、第1の態様において、前記補助歯車に対し、その変位方向に抵抗力を発生させる手段を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様に係る歯車装置は、補助歯車の変位方向に抵抗力を発生させる手段を備えているので、補助歯車が不用意に動いてしまうことを防止できる。具体的には、例えば駆動歯車が第1方向に回転しており、動力伝達歯車が被伝達歯車を駆動している状態において補助歯車が動力伝達歯車と係合してしまい、当該動力伝達歯車の回転を阻害してしまうことを防止できる。
【0008】
本発明の第3の態様に係る歯車装置は、第2の態様において、前記抵抗力を発生させる手段が、前記補助歯車の回転中心と、前記被伝達歯車の回転中心と、結ぶ直線の方向において、前記補助歯車の回転中心に対して前記被伝達歯車から遠い側で前記補助歯車に前記抵抗力を付与することを特徴とする。
【0009】
本態様によれば、前記抵抗力を付与する位置を中心とした回転作用によって、補助歯車が意図しない方向、即ち駆動歯車が第1方向に回転しており、動力伝達歯車が被伝達歯車を駆動している状態において、補助歯車が動力伝達歯車と係合する方向に動いてしまうことを防止できる。
【0010】
本発明の第4の態様に係る歯車装置は、第1から第3の態様において、前記被伝達歯車が前記動力伝達歯車から回転トルクを受けると、これに応じて前記被伝達歯車から動力を受ける回転軸に回転トルクを伝達し、前記動力伝達歯車からの回転トルクの伝達が切断されると、これに応じて前記回転軸をロックするロック手段を備えていることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、前記動力伝達歯車が前記被伝達歯車に動力を伝達しない状態において被伝達歯車により駆動される回転軸をロックするロック手段を備えているので、前記動力伝達歯車が前記被伝達歯車に動力を伝達しない状態において、前記被伝達歯車により駆動される駆動対象から前記被伝達歯車が回されてしまうことを防止することができる。
【0012】
本発明の第5の態様に係る歯車装置は、第4の態様において、前記ロック手段が、前記回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の軸線方向に変位可能に設けられるクラッチ部材と、前記クラッチ部材と係合して前記クラッチ部材の回転を規制する、固定状態に設けられるロック部材と、前記クラッチ部材を前記ロック部材に向けて付勢する付勢部材と、前記被伝達歯車を一体的に備えるとともに前記クラッチ部材の外周部に設けられたカム溝内に遊挿されるボスを備え、当該ボスを介して前記クラッチ部材に回転トルクを伝達するトルク伝達部材と、を備えて構成され、前記トルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴って前記カム溝内で前記ボスが変位することにより、前記ボスが前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記ロック部材から離間させるロック解除状態と、前記ボスが前記クラッチ部材の変位を許容して前記クラッチ部材を前記ロック部材に係合させるロック状態と、が切り換わるように構成されていることを特徴とする。本態様によれば、前記ロック手段を構造簡単にして低コストに構成することができる。
【0013】
本発明の第6の態様に係る歯車装置は、第5の態様において、前記駆動歯車と噛合するとともに当該駆動歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記駆動歯車の前記第2方向回転時に前記被伝達歯車と噛合して前記被伝達歯車を前記動力伝達歯車による回転駆動方向とは逆方向に回転駆動し、前記駆動歯車の前記第1方向回転時に前記被伝達歯車から離間する第2動力伝達歯車を備え、前記駆動歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、前記被伝達歯車が前記動力伝達歯車及び前記第2動力伝達歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、前記ロック手段により前記回転軸をロックすることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、駆動歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、被伝達歯車が動力伝達歯車及び第2動力伝達歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、ロック手段により回転軸をロックするので、回転軸の正/逆双方向の回転駆動を可能としつつ、回転方向切り換え時には回転軸をロックすることができる。
【0015】
本発明の第7の態様に係る記録装置は、被記録媒体に記録を行う記録手段と、被記録媒体の搬送経路において前記記録手段の上流側に設けられ、被記録媒体を前記記録手段の側へと搬送する第1送りローラと、被記録媒体の搬送経路において前記第1送りローラの上流側に設けられ、被記録媒体を前記第1送りローラの側へと搬送する第2送りローラと、を備えた記録装置であって、前記第1送りローラ及び前記第2送りローラは、共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成され、前記第1送りローラから前記第2送りローラへの回転トルクの伝達経路に、第4から第6の態様のいずれかに係る歯車装置を備え、当該歯車装置が備える前記ロック手段により前記第2送りローラの回転軸をロック可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、第4から第6の態様のいずれかに係る歯車装置により、第1送りローラと第2送りローラとを利用した食い付き吐き出し方式スキュー取りが実行可能となるとともに、第2送りローラの回転軸がロック手段によりロックされるので、厚紙などコシの強い被記録媒体を第1送りローラと第2送りローラとの間で撓ませる際に、第2送りローラが被記録媒体に容易に回されてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1乃至図10を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。図1は記録装置の一実施形態であるインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の用紙搬送経路を示す側断面図、図2〜図4は本発明の一実施形態に係る歯車装置8の正面図、図5及び図6(A)は第1遊星歯車95周辺の部分拡大図、図6(B)は補助歯車98の取付構造を示す図である。また、図7はロック手段70の分解斜視図、図8はロック手段70の要部拡大斜視図(一部断面図)、図9(A)、(B)及び図10(A)、(B)はロック手段70を回転軸71aの軸線方向に平行な面で切断した断面図である。
【0018】
<<1.記録装置の構成>>
以下、図1を参照しつつプリンタ1の全体構成について概説する。尚、図1はプリンタ1の用紙搬送経路上に配置されるローラを図示する為に、ほぼ全てのローラを同一面上に描いているが、その奥行き方向(図1の紙面表裏方向)の位置は必ずしも一致しているとは限らない(一致している場合もある)。
【0019】
プリンタ1は、装置底部に給送装置2を備え、当該給送装置2から被記録媒体としての記録用紙Pを1枚ずつ給送し、記録手段4においてインクジェット記録を行い、装置前方側(図1において右側)に設けられた図示しない排紙スタッカへ向けて排出する構成を備えている。またプリンタ1は装置後部に両面ユニット7を着脱自在に備えており、最初に記録の行われた用紙Pの第1面に対し反対側の第2面が記録ヘッド42と対向するよう湾曲反転させ、これにより用紙Pの両面に記録が実行可能となっている。
【0020】
以下、各構成要素について更に説明する。給送装置2は、用紙カセット11と、ピックアップローラ16と、ガイドローラ20と、分離手段21と、を備えている。複数枚の用紙Pを積層状態で収容可能な用紙カセット11は、給送装置2の装置本体に対し、装置前方側から装着及び取り外し可能に構成されており、図示しないモータによって回転駆動されるピックアップローラ16は、揺動軸18を中心に揺動する揺動部材17に設けられ、用紙カセット11に収容された用紙と接して回転することにより、当該最上位の用紙Pを用紙カセット11から送り出す。
【0021】
用紙カセット11に収容された用紙先端と対向する位置には分離部材12が設けられており、給送されるべき最上位の用紙Pの先端が分離部材12に摺接しつつ下流側に進むことで、次位以降の用紙Pとの第1段階分離が行われる。分離部材12の下流側には自由回転可能なガイドローラ20が設けられ、更にその下流側には、分離ローラ22と駆動ローラ23とを備えて構成された、用紙Pの第2段階分離を行う分離手段21が設けられている。
【0022】
分離手段21の下流側には、図示を省略するモータにより回転駆動される駆動ローラ26と、駆動ローラ26との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ27と、を備えて構成された第1中間送り部25が設けられており、この第1中間送り部25により、用紙Pが更に下流側へと送られる。尚、符号29は、用紙Pが湾曲反転経路を通過する際の(特に用紙後端が通過する際の)通紙負荷を軽減する従動ローラを示している。
【0023】
従動ローラ29の下流側には図示を省略するモータにより回転駆動される駆動ローラ32と、駆動ローラ32との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストローラ33と、を備えて構成された第2中間送り部31が設けられており、この第2中間送り部31により、用紙Pが更に下流側へと送られる。
【0024】
第2中間送り部31の下流側には、記録手段4が配置されている。記録手段4は、搬送手段5と、記録ヘッド42と、紙案内前39と、排出手段6と、を備えている。搬送手段5は、図示を省略するモータによって回転駆動される搬送駆動ローラ35と、該搬送駆動ローラ35に圧接して従動回転するよう紙案内上37に軸支される搬送従動ローラ36とを備えて構成され、この搬送手段5により用紙Pが記録ヘッド42と対向する位置に向けて精密送りされる。
【0025】
尚、給送装置2から給送された記録用紙Pのスキューは、第1送りローラと、その上流側の第2送りローラとを利用した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御により除去される。
【0026】
具体的には、記録用紙Pの先端を搬送駆動ローラ35(第1送りローラ)と搬送従動ローラ36との間に食い付かせて所定量下流側に送り出した後(図2)、上流側の駆動ローラ32(第2送りローラ)を停止させた状態で搬送駆動ローラ35を逆転させ(図2→図3)、用紙先端を搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出す(図3→図4)。これにより用紙Pは駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で撓んで、用紙P先端が搬送駆動ローラ35と搬送従動ローラ36とのニップ点に倣い、スキューが矯正される(図4)。
【0027】
続いて記録ヘッド42はキャリッジ40の底部に設けられ、当該キャリッジ40は主走査方向(図1の紙面表裏方向)に延びるキャリッジガイド軸41にガイドされながら、図示を省略するモータによって主走査方向に往復動する様に駆動される。記録ヘッド42と対向する位置には紙案内前39が設けられ、当該紙案内前39によって、用紙Pと記録ヘッド42との距離が規定されるようになっている。
【0028】
紙案内前39の下流側に設けられた排出手段6は、図示を省略するモータによって回転駆動される排出駆動ローラ44と、当該排出駆動ローラ44に接して従動回転する排出従動ローラ45とを備えて構成され、記録手段4によって記録の行われた用紙Pは、排出手段6により、装置前方側に設けられた図示を省略するスタッカへと排出される。
【0029】
両面ユニット7は、大径の反転ローラ46と、当該反転ローラ46との間で用紙Pをニップして従動回転するアシストーラ47、48を備えている。用紙カセット11から繰り出されて第1面に記録の行われた用紙Pは、第2中間送り部31、搬送手段5、排出手段6、のこれらによる逆送り動作によって、第1面に記録が実行された際に用紙後端となっていた側が先端となって、反転ローラ46とアシストローラ48との間に誘い込まれる。
【0030】
反転ローラ46は図示を省略するモータにより図1の反時計回り方向に回転駆動されており、反転ローラ46とアシストローラ48との間に誘い込まれた用紙は、反転ローラ46とアシストローラ47との間を通って再び第2中間送り部31に到達し、記録手段4に導かれ、以降同様に記録が実行される。
【0031】
尚、以上説明した用紙搬送経路中に設けられるピックアップローラ16、駆動ローラ23、26、32、搬送駆動ローラ35、排出駆動ローラ44、反転ローラ46、のこれら回転駆動されるローラは、全て共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成されている。この中で第2中間送り部31を構成する駆動ローラ32と駆動モータとの間に、本発明に係る歯車装置8が設けられる。
【0032】
<<2.歯車装置の全体構成>>
以下、図2乃至図10を参照しながら本発明の一実施形態に係る歯車装置8について説明する。図2において符号61は用紙搬送方向に平行な面を形成するサイドフレーム(プリンタ1の基体を構成する)を示しており、歯車装置8はこのサイドフレーム61に設けられる。尚、図2に示す歯車は、全て本発明の一実施形態に係る歯車装置8を構成する。
【0033】
図2において符号90は搬送駆動ローラ35の軸端に設けられる歯車を示しており、この歯車90から駆動歯車94へと回転トルクが伝達され、そしてロック手段70から、歯車97へと回転トルクが伝達される。この歯車97は、上述した駆動ローラ32の回転軸32aの軸端に取り付けられており、歯車装置8を構成するロック手段70は、この回転軸32aの回転を許容するロック解除状態と、回転を規制するロック状態と、を切り換える。
【0034】
尚、図2の歯車97から更に左側には、更に図示を省略する歯車輪列が設けられており、歯車97を介して搬送駆動ローラ35(駆動モータ)の回転トルクが反転装置7(反転ローラ46)へと更に伝達されるようになっている。
【0035】
以下、歯車装置8の構成について更に詳説する。歯車装置8は、図2乃至図4に示すように駆動歯車94と、「動力伝達歯車(第1動力伝達歯車)」としての第1遊星歯車95と、第1遊星レバー77と、「第2動力伝達歯車」としての第2遊星歯車96と、第2遊星レバー78と、ロック手段70と、を備えている。またロック手段70は、歯車71と、クラッチ部材72と、ロック部材73と、付勢部材としてのコイルばね74と、トルク伝達部材75と、を備えている。
【0036】
第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96は、駆動歯車94の回転中心を中心にして揺動可能な第1遊星レバー77及び第2遊星レバー78にそれぞれ回転可能に軸支されており、それぞれ駆動歯車94と噛合している。そして駆動歯車94の回転に伴って第1遊星レバー77及び第2遊星レバー78が揺動動作を行うことにより、駆動歯車94の周囲を遊星運動するように設けられている。
【0037】
そしてこの遊星運動によって、それぞれが被伝達歯車75bと噛合する噛合位置と、被伝達歯車75bから離間する離間位置との間を変位可能となっている。図2及び図3は第1遊星歯車95が噛合位置にあり、第2遊星歯車96が離間位置にある様子を示しており、図4は第1遊星歯車95と第2遊星歯車96の双方が離間位置にある様子を示している。尚、第2遊星歯車96が噛合位置にある様子は、図示を省略する。
【0038】
尚、本実施形態においては便宜上、搬送駆動ローラ35(歯車90)は、図2の時計回り方向に回転するとき(用紙Pを下流側へ搬送するとき)を正転とし、図2の反時計回り方向に回転するとき(用紙Pを上流側へ搬送するとき)を逆転とする。
【0039】
そして第1遊星歯車95は、搬送駆動ローラ35の正転(駆動歯車94の第1方向回転)に伴い図2に示すように噛合位置に変位し、被伝達歯車75bを図2の反時計回り方向に回転駆動する。また搬送駆動ローラ35の逆転(駆動歯車94の第2方向回転)に伴い図4に示すように離間位置に変位する。
【0040】
その逆に第2遊星歯車96は、搬送駆動ローラ35の逆転(駆動歯車94の第2方向回転)に伴い噛合位置に変位して被伝達歯車75bを図2の時計回り方向に回転駆動する(図示せず)。また搬送駆動ローラ35の正転(駆動歯車94の第1方向回転)に伴い図2に示すように離間位置に変位する。
【0041】
尚、図2〜図4において歯車71及び被伝達歯車75bは外径が同じであるとともに同じ回転中心を中心に回転する為、重なって描かれているが、実際には図7に示すように歯車71は図2〜図4の手前側に位置しており、被伝達歯車75bは図2〜図4の奥側に位置している。即ち、図2〜図4において歯車71は歯車97とのみ噛合し、後述する第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96とは噛合していない。また被伝達歯車75bは第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96とのみ噛合しており、歯車97とは噛合していない。
【0042】
<<3.ロック手段の構成>>
続いて、ロック手段70について詳説する。このロック手段70の機能は、大略的には被伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクを受けると、これに応じて歯車71(回転軸71a)の回転を許容するとともに歯車71を回転させ、第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96からの回転トルクの伝達が切断されると(被伝達歯車75bが第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない状態になると)、これに応じて歯車71(回転軸71a)をロックするものである。
【0043】
クラッチ部材72は、図7に示すように歯車71と一体的に形成された回転軸71aを挿通させる穴部72eを備えている。回転軸71aは断面視十字型の形状を成しており、これを挿通させる穴部72eは、この断面形状に沿うように回転軸71aと同様に十字型の形状をなすように形成されている。従ってクラッチ部材72が回転すると、歯車71はクラッチ部材72から回転トルクを受け、クラッチ部材72とともに一体的に回転するようになっている。
【0044】
尚、回転軸71aと穴部72eは、回転軸71aの軸線方向には互いに非拘束の関係となっており、即ちクラッチ部材72が回転軸71aの軸線方向にスライド変位可能に設けられている。
【0045】
このクラッチ部材72には、その外周部にカム溝72bが形成されており、また歯車装置8の組み立て状態においてロック部材73と対向する位置には噛み合い歯72aが形成されている(図8〜図10も参照)。
【0046】
回転軸71aは、先端部に至る途中までは断面十字形状を成しているが、その先端部は円柱形状に形成されており、ロック部材73には、この回転軸71aの先端部を回転自在に受け入れる穴部73bが形成されている。そして歯車装置8の組み立て状態においてクラッチ部材72に形成された噛み合い歯72aと対向する位置には、噛み合い歯73aが形成されている。尚このロック部材73は、サイドフレーム61に固定状態に設けられる。
【0047】
コイルばね74は歯車71とクラッチ部材72との間に介在し、クラッチ部材72をロック部材73に向けて付勢する。
トルク伝達部材75は、歯車装置8の組み立て状態において内部にクラッチ部材72を収容する円環形状を成すとともに、その外周部に被伝達歯車75bを一体的に備えており、被伝達歯車75bが第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96と噛合することにより、駆動モータからの回転トルクが伝達されて回転するようになっている。
【0048】
尚、上述したようにクラッチ部材72は回転軸71a(歯車71)と一体的に回転するよう設けられるが、トルク伝達部材75は、クラッチ部材72及び回転軸71a(歯車71)に対しては相対的に一定の回転角度だけ回転可能となっている(後に詳述)。
【0049】
トルク伝達部材75の内周面にはボス75aが2箇所、配置間隔が180°の位相を成すように内周において対向する位置に形成されており、歯車装置8の組み立て状態においてボス75aが、図8において仮想線で示すように、また図9及び図10に示すようにクラッチ部材72に形成されたカム溝72b(ボス75aと同様に2箇所形成されている)に遊挿されるようになっている。
【0050】
カム溝72bは、カム溝内におけるボス75aの周方向への一定量の移動(トルク伝達部材75の一定量の回転)を許容するとともに、ボス75aの、回転軸71aの軸線方向(図8上下方向)への移動を許容する形状を成している。より具体的には、回転軸71aの軸線方向にほぼ垂直な面を成す側壁72c、72cと、これに対して傾斜する斜面72d、72dとを有している。
【0051】
以上のように構成されたロック手段70の動作について以下図9及び図10を参照しながら説明する。図9(A)及び図10(A)はトルク伝達部材75(被伝達歯車75b)に第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクが伝達されていない状態(例えば、第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96のいずれもが被伝達歯車75bに噛合していない状態)を示している。
【0052】
この状態では、コイルばね74の付勢力によりクラッチ部材72がロック部材73と係合し、即ちクラッチ部材72の噛み合い歯72aとロック部材73の噛み合い歯73aとが噛合する(図8も参照)。
【0053】
従ってクラッチ部材72はその回転が規制されたロック状態となり、回転軸71a(歯車71)に外力を加えて回転させようとしても、噛み合い歯72aと噛み合い歯73aとの噛合によって回転軸71a(歯車71)は回転しない。尚このとき、トルク伝達部材75に形成されたボス75aは、図8、図9(A)、図10(A)に示すように斜面72d、72dの交差場所に位置している。
【0054】
この状態から、トルク伝達部材75(被伝達歯車75b)に第1遊星歯車95或いは第2遊星歯車96から回転トルクが伝達されると、ボス75aがカム溝72bの斜面72dに押し当たり、コイルばね74の付勢力に抗してカム溝72b(即ちクラッチ部材72)を上方に押し上げる。
【0055】
これにより、図9(B)及び図10(B)に示すようにクラッチ部材72の噛み合い歯72aとロック部材73の噛み合い歯73aとの噛合が解除され、即ちクラッチ部材72はその回転が許容されたロック解除状態となる。そして引き続きトルク伝達部材75が回転すると、ボス75aがカム溝72bの斜面72dとの当接位置から側壁72cとの当接位置に移動しているので、当該側壁72cを押すことで、トルク伝達部材75、クラッチ部材72、回転軸71a(歯車71)、のこれらが一体的に回転する。
【0056】
以上説明したロック手段70の動作は、カム溝72bが左右対称に形成されているので、被伝達歯車75b(トルク伝達部材75)がいずれの方向に回転しても、図9(A)及び図10(A)のロック状態から図9(B)及び図10(B)のロック解除状態に切り換わり、そしてまた被伝達歯車75bが停止すれば、図9(B)及び図10(B)のロック解除状態から図9(A)及び図10(A)のロック状態に切り換わる。
【0057】
以上のようにロック手段70は、トルク伝達部材75の回転/停止の切り換えに伴って、カム溝72b内でボス75aが変位することにより、クラッチ部材72(回転軸71a、歯車71)の回転が許容されるロック解除状態と、前記回転がロックされるロック状態と、を切り換えるようになっている。
【0058】
<<4.歯車装置の動作>>
続いて第1遊星歯車95及び第2遊星歯車96を含めた歯車装置8の全体的な動作について説明する。図2において、第1遊星レバー77はサイドフレーム61と対向する側にボス77aを有しており、このボス77aがサイドフレーム61に形成された円弧状のガイド溝62に遊挿されることにより、第1遊星レバー77の揺動可能範囲がガイド溝62によって規制されるようになっている。
【0059】
また同様に、第2遊星レバー78はサイドフレーム61と対向する側にボス78aを有しており、このボス78aがサイドフレーム61に形成された円弧状のガイド溝63に遊挿されることにより、第2遊星レバー78の揺動可能範囲がガイド溝63によって規制されるようになっている。
【0060】
ここで符号γ1は第1遊星レバー77の揺動可能角度を示しており、同様に符号γ2は第2遊星レバー78の揺動可能角度を示している。図から明かなように、本実施形態においてはγ1<γ2に設定されており、これにより第1遊星歯車95が噛合位置と離間位置との間を変位する際の変位量が、第2遊星歯車96が噛合位置と離間位置との間を変位する際の変位量よりも小さくなっている。
【0061】
図2は搬送駆動ローラ35(歯車90)の正転状態を示しており、この状態では第1遊星歯車95がロック手段70の被伝達歯車75bを同図矢印方向に回転駆動し、ロック手段70の歯車71が、歯車97すなわち駆動ローラ32を同図矢印方向に回転駆動している。即ちこの状態では、記録用紙Pが上流側から下流側に向かって搬送され得る状態となっている。
【0062】
この状態から、上述した食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為に搬送駆動ローラ35(歯車90)が逆転駆動されると、図4に示すように第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離れ、伝達歯車75が第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれとも噛合しない動力切断状態となる。
【0063】
従ってこれによりロック手段70は、回転軸71a(歯車71)が回転しないようロックするロック状態となる。このとき、駆動ローラ32はロック手段70によりその回転がロックされているが、下流側の搬送駆動ローラ35はひきつづき逆転駆動されるので、記録用紙Pは駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で撓み、用紙先端が搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出され、スキューが除去される。
【0064】
以上のように第1遊星歯車95と第2遊星歯車96のいずれもが被伝達歯車75bと噛合しない動力切断時間を利用して、ロック手段70による回転軸71b(歯車71、ひいては駆動ローラ32)のロックが行われる。
【0065】
尚、図4に示す状態から再び搬送駆動ローラ35(歯車90)が正転駆動に切り換えられたとき、第1遊星歯車95が噛合位置に戻るまでの変位量は小さく設定されているので、搬送駆動ローラ35の逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに駆動ローラ32の正転駆動を開始することができる。
【0066】
従って駆動ローラ32が停止した状態のまま搬送駆動ローラ35が正転する時間を短縮できるので、記録用紙Pが駆動ローラ32と搬送駆動ローラ35との間で引っ張られ、駆動ローラ32と記録用紙Pとの間でスリップが生じて記録面にダメージを与えることを防止できる。
【0067】
以下、上記のように構成された歯車装置8の作用効果について説明すると、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う際には、搬送駆動ローラ35の逆転駆動により用紙先端が搬送駆動ローラ35の上流側に吐き出される。このとき、吐き出された用紙が上流側の駆動ローラ32を逆転させようとしても、駆動ローラ32は確実にロックされている。従って用紙が搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32との間で確実に撓むことになり、スキューが確実に解消される。
【0068】
即ち駆動ローラ32は、正転駆動、逆転駆動いずれも可能であるとともに、必要時において確実に逆転防止(ロック)されることになり、つまり歯車装置8は単に回転軸の一方向回転のみ許容するワンウェイクラッチとは異なり、正/逆双方向の回転駆動と、必要時における確実な逆転防止(回転のロック)と、のいずれをも満たすことが可能となる。
【0069】
しかも搬送駆動ローラ35と駆動ローラ32とで共通の駆動源を利用する構成において、両ローラにより食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う場合には、下流側の搬送駆動ローラ35を所定量逆転させる間において上流側の駆動ローラ32が逆転しないようロックされている必要があるが、その様な要請にも応えることができる。
【0070】
また第1遊星歯車95と第2遊星歯車96の変位量が異なるように設定されており、第1遊星歯車95は速やかに離間位置から噛合位置に変位することができるので、上述の通り搬送駆動ローラ35の逆転駆動から正転駆動への切り換え後、大きなタイムラグが生じることなく、速やかに駆動ローラ32の正転駆動を開始することができ、記録用紙Pにダメージを与えることを防止できる。
【0071】
<<5.補助歯車の動作及び作用効果>>
以下、図2乃至図6、及び適宜その他の図をも参照しながら、歯車装置8が備える補助歯車98について詳述する。
歯車装置8は、被伝達歯車75bと噛合するとともに当該被伝達歯車75bの周囲を遊星運動可能な補助歯車98を備えている。より詳しくは、サイドフレーム61にはサブフレーム66(図2〜図5及び図6(A)では図示を省略:図6(B)に図示)が設けられており、このサブフレーム66には、被伝達歯車75bの回転中心を中心とする円弧状のガイド溝65が形成されている。そしてこのガイド溝65に、補助歯車98の回転軸98aが遊挿され、これにより補助歯車98が被伝達歯車75bの周囲を遊星運動可能に支持されている。
【0072】
補助歯車98は、駆動歯車94が第1方向に回転するとき(図2の反時計回り方向:搬送駆動ローラ35が正転駆動されるとき)、図2に示すように被伝達歯車75bが同図反時計回り方向に回転するため、同図反時計回り方向に移動した位置において被伝達歯車75bとともに回転する。
【0073】
この状態から、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為に、駆動歯車94の回転方向が切り換えられて第2方向に回転すると(図3の時計回り方向:搬送駆動ローラ35が逆転駆動されるとき)、図3に示すように補助歯車98は同図時計回り方向に移動し、第1遊星歯車95と係合する。
【0074】
ここで、第1遊星歯車95が正転駆動から逆転駆動に切り換えられると、図5に示すように第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離れる前に被伝達歯車75bを若干逆転させる(同図時計回り方向)。
【0075】
このとき、被伝達歯車75bは同図符号Faで示す方向に第1遊星歯車95を動かそうとするが、この方向は第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離間しようとする方向とは反対方向の成分を含んでいる。従ってこの結果、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離れようとしても(同図右上方向)、第1遊星歯車95の歯が被伝達歯車75bの歯に噛み込んで、被伝達歯車75bが第1遊星歯車95を引き留めるような状態となり、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離間できない場合が生じる。
【0076】
しかしながら歯車装置8においては上記の通り、駆動歯車94の回転方向切り換えに伴い補助歯車98が第1遊星歯車95と係合し、図5の反時計回り方向に回転するので、補助歯車98が同図符号Fbで示す方向に第1遊星歯車95を動かそうとする。即ち、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離間しようとする動作を補助するので、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離間することができる。
【0077】
また、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bから離間しようとするとき、被伝達歯車75bが、第1遊星歯車95から受ける力以外の理由により上記引き留めを助長する方向(図5の時計回り方向)に回されてしまうと、第1遊星歯車95はより一層離間し難くなる。しかし、補助歯車98による離間作用が第1遊星歯車95に働くので、仮に被伝達歯車75bが上記引き留めを助長する方向に回されても、第1遊星歯車95を被伝達歯車75bから確実に離間させることができる。
【0078】
なお、被伝達歯車75bが第1遊星歯車95から受ける力以外の理由により図5の時計回り方向に回されてしまう場合とは、例えばロック手段70が設けられておらず、図2乃至図4に示す歯車71と被伝達歯車75bとが一体構成された、単なる複合歯車である場合が考えられる。
【0079】
即ち、食い付き吐き出し方式のスキュー取り制御を行う為に、搬送駆動ローラ35を正転駆動から逆転駆動に切り換えた際(図2→図3)、用紙Pが厚紙などのコシの強いものであると、搬送駆動ローラ35の逆転駆動によっても用紙Pが上流側の駆動ローラ32との間で直ちに撓まず、そのまま上流側に戻されてしまい、その結果駆動ローラ32が回されてしまう場合がある。
【0080】
すると、図3に示すように歯車97が同図反時計回り方向に回されてしまい、これにより歯車97と噛合する歯車71が同図時計回り方向に回され、そして被伝達歯車75bも同図時計回り方向に回されてしまう。故に、被伝達歯車75bが第1遊星歯車95を引き留める作用を助長させることになる。
【0081】
尚、本実施形態ではロック手段70が設けられている為、本来ならば搬送駆動ローラ35の正転から逆転への切り換えに伴い、ロック手段70が歯車71をロックするが、第1遊星歯車95が被伝達歯車75bを回す作用により、歯車71の回転が許容される。以下、これを詳説する。
【0082】
搬送駆動ローラ35が正転駆動されているとき、図10(B)に示したようにトルク伝達部材75のボス75aがクラッチ部材72に形成されたカム溝72bの側壁に押し当たり、クラッチ部材72を上方に押し上げている。
【0083】
この状態から搬送駆動ローラ35が逆転駆動されると、一時的にボス75aが図10(B)の左方向に動くが、駆動ローラ32が用紙Pによって回される結果、歯車97を介して歯車71が回され、これによりカム溝72bもボス75bと同様に図10(B)の左方向に動いてしまう。その結果、クラッチ部材72が同図下方向に押し下げられず、図10(B)に示す状態が維持されて、ロック状態に切り換わらない現象が生じる。
【0084】
以上により、搬送駆動ローラ35が正転から逆転へ切り換えられても、用紙Pにより歯車71が回され、且つ第1遊星歯車95により被伝達歯車75bが回される結果、ロック手段70がロック状態に切り換わらず、歯車71の回転が許容される。
【0085】
しかしながら歯車装置8は上記の通り補助歯車98を備えているので、被伝達歯車75bから離間しようとする第1遊星歯車95を被伝達歯車75bが引き留めても、第1遊星歯車95を被伝達歯車75bから確実に離間させることができる。
【0086】
尚、本実施形態では、補助歯車98は変位方向に抵抗力を発生させる手段により、その変位に際し或る程度の規制が加えられている。図6(A)、(B)において符号99は、補助歯車98を軸支するサブフレーム66と補助歯車98の円盤面との間に設けられる摩擦部材を示しており、この摩擦部材99により、補助歯車98が不用意に動かないように規制されている。
【0087】
これは、以下の理由による。即ち、図6(A)に示すように補助歯車98の回転軸98aを案内するガイド溝65が同図右下がり方向に傾斜しているので、何らの規制が無い場合には、補助歯車98はその重力によって第1遊星歯車95の側に移動してしまい、意図しない第1遊星歯車95との係合を招き、不要な歯同士の衝突音が生じる虞がある。
【0088】
しかしながら上記の通り、摩擦部材99が、補助歯車98が不用意に動かないように当該補助歯車98に抵抗力を発生させるので、意図しない第1遊星歯車95との係合を招くことがない。
【0089】
尚、この摩擦部材99は、補助歯車98の回転中心と、被伝達歯車75bの回転中心と、結ぶ直線の方向において、補助歯車98の回転中心に対して被伝達歯車75bから遠い側で補助歯車98に抵抗力を付与する。これにより、第1遊星歯車95と補助歯車98との係合が回避されるべき回転方向のとき、補助歯車98に抵抗力を付与する位置(図6(A))において符号Cpで示す)を中心とする回転モーメントが、図6(A)において白矢印で示すように回転軸98aを第1遊星歯車95から遠ざける方向に作用するので、補助歯車98が第1遊星歯車95に接近することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明に係るプリンタの用紙搬送経路を示す側断面図。
【図2】本発明に係るロック装置の正面図。
【図3】本発明に係るロック装置の正面図。
【図4】本発明に係るロック装置の正面図。
【図5】第1遊星歯車周辺の部分拡大図。
【図6】(A)は第1遊星歯車周辺の部分拡大図、(B)は補助歯車98の取付構造を示す図。
【図7】ロック手段の分解斜視図。
【図8】ロック手段の要部拡大斜視図。
【図9】(A)、(B)はロック手段の断面図。
【図10】(A)、(B)はロック手段の断面図。
【符号の説明】
【0091】
1 インクジェットプリンタ、3 給送装置、4 記録手段、5 搬送手段、6 排出手段、8 歯車装置、11 用紙カセット、12 分離部材、16 ピックアップローラ、17 揺動部材、18 揺動軸、20 従動ローラ、21 分離手段、22 分離ローラ、23 駆動ローラ、25 第1中間送り部、26 駆動ローラ、27 アシストローラ、29 従動ローラ、31 第2中間送り部、32 駆動ローラ、33 アシストローラ、35 搬送駆動ローラ、36 搬送従動ローラ、37 紙案内上、39 紙案内前、40 キャリッジ、41 キャリッジガイド軸、42 記録ヘッド、44 排出駆動ローラ、45 排出従動ローラ、46 反転ローラ47、48 アシストローラ、
61 サイドフレーム、62、63 ガイド溝、65 ガイド溝、66 サブフレーム、70 ロック手段、71 歯車、71a 回転軸、72 クラッチ部材、72a 噛み合い歯、72b カム溝、72c 側壁、72d 斜面、73 ロック部材、73a 噛み合い歯、73b 穴部、74 コイルばね、75 トルク伝達部材、75a ボス、75b 伝達歯車、77 第1遊星レバー、77a ボス、78 第2遊星レバー、78a ボス、90 歯車、94 太陽歯車、95 第1遊星歯車、96 第2遊星歯車、97 歯車、98 補助歯車、99 摩擦部材、P 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力が伝達される被伝達歯車と、
駆動歯車と噛合するとともに当該駆動歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記駆動歯車の第1方向回転時に前記被伝達歯車と噛合し、前記駆動歯車の第2方向回転時に前記被伝達歯車から離間する動力伝達歯車と、
前記被伝達歯車と噛合するとともに当該被伝達歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記動力伝達歯車が前記被伝達歯車と噛合する前記駆動歯車の第1方向回転時には前記動力伝達歯車から離間しており、前記駆動歯車の第1方向回転から第2方向回転への切り換えに伴い前記動力伝達歯車と噛合し、その回転により前記動力伝達歯車に前記被伝達歯車から離間する方向の力を付与する補助歯車と、
を備えたことを特徴とする歯車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の歯車装置において、前記補助歯車に、その変位方向に抵抗力を発生させる手段を備えている、
ことを特徴とする歯車装置。
【請求項3】
請求項2に記載の歯車装置において、前記抵抗力を発生させる手段が、前記補助歯車の回転中心と、前記被伝達歯車の回転中心と、結ぶ直線の方向において、前記補助歯車の回転中心に対して前記被伝達歯車から遠い側で前記補助歯車に前記抵抗力を付与する、
ことを特徴とする歯車装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の歯車装置において、前記被伝達歯車が前記動力伝達歯車から回転トルクを受けると、これに応じて前記被伝達歯車から動力を受ける回転軸に回転トルクを伝達し、前記動力伝達歯車からの回転トルクの伝達が切断されると、これに応じて前記回転軸をロックするロック手段を備えている、
ことを特徴とする歯車装置。
【請求項5】
請求項4に記載の歯車装置において、前記ロック手段が、前記回転軸と一体的に回転するとともに前記回転軸の軸線方向に変位可能に設けられるクラッチ部材と、
前記クラッチ部材と係合して前記クラッチ部材の回転を規制する、固定状態に設けられるロック部材と、
前記クラッチ部材を前記ロック部材に向けて付勢する付勢部材と、
前記被伝達歯車を一体的に備えるとともに前記クラッチ部材の外周部に設けられたカム溝内に遊挿されるボスを備え、当該ボスを介して前記クラッチ部材に回転トルクを伝達するトルク伝達部材と、を備えて構成され、
前記トルク伝達部材の回転/停止の切り換えに伴って前記カム溝内で前記ボスが変位することにより、前記ボスが前記付勢部材の付勢力に抗して前記クラッチ部材を前記ロック部材から離間させるロック解除状態と、前記ボスが前記クラッチ部材の変位を許容して前記クラッチ部材を前記ロック部材に係合させるロック状態と、が切り換わるように構成されている、
ことを特徴とする歯車装置。
【請求項6】
請求項5に記載の歯車装置において、前記駆動歯車と噛合するとともに当該駆動歯車の周囲を遊星運動可能に設けられ、前記駆動歯車の前記第2方向回転時に前記被伝達歯車と噛合して前記被伝達歯車を前記動力伝達歯車による回転駆動方向とは逆方向に回転駆動し、前記駆動歯車の前記第1方向回転時に前記被伝達歯車から離間する第2動力伝達歯車を備え、
前記駆動歯車の回転方向切り換えに伴って発生する、前記被伝達歯車が前記動力伝達歯車及び前記第2動力伝達歯車のいずれとも噛合しない動力切断時間を利用して、前記ロック手段により前記回転軸をロックする、
ことを特徴とする歯車装置。
【請求項7】
被記録媒体に記録を行う記録手段と、
被記録媒体の搬送経路において前記記録手段の上流側に設けられ、被記録媒体を前記記録手段の側へと搬送する第1送りローラと、
被記録媒体の搬送経路において前記第1送りローラの上流側に設けられ、被記録媒体を前記第1送りローラの側へと搬送する第2送りローラと、を備えた記録装置であって、
前記第1送りローラ及び前記第2送りローラは、共通の駆動モータにより回転駆動されるよう構成され、
前記第1送りローラから前記第2送りローラへの回転トルクの伝達経路に、請求項4から6のいずれか1項に記載の歯車装置を備え、当該歯車装置が備える前記ロック手段により前記第2送りローラの回転軸をロック可能に構成されている、
ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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