説明

段ボール組立式緩衝材

【課題】折り返し後に薄肉ヒンジ部のスプリングバック現象に伴って重合部が立ち上がろうとしても、薄肉ヒンジ部よりも外方に突出した舌片部によってその立ち上がりを抑制することができる段ボール組立式緩衝材を提供する。
【解決手段】本発明は、梱包容器の内本発明の段ボール組立式緩衝材にあっては、側面パネル部44の自由端部よりも内方に、半切加工によって自由端部の端縁に沿う薄肉ヒンジ部44kと、薄肉ヒンジ部44kの半切加工線から内方側に向けて突出しかつ薄肉ヒンジ部44kを残して略コ字形状に全切加工された舌片部44j,45mと、薄肉ヒンジ部44kよりも自由端部側に位置する重合部としての上側底上げパネル部44g、を備え、薄肉ヒンジ部44kを介して上側底上げパネル部44gを内側に折り返すことにより舌片部44jを薄肉ヒンジ部44kよりも外方にオーバーハング状態で突出させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、段ボールを組み立てて矩形の梱包容器を構成するとともに、その梱包容器の一部又は別途の段ボールを折り曲げて被梱包物の突起部分を保護するようにした段ボール組立式緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、底面に突起部分が存在する被梱包物を段ボール製の梱包容器に収納する際、その梱包容器そのもの又は別途の段ボールを折り曲げて被梱包物の突起部分を浮かせることにより、その突起部分を保護するようにした包装用緩衝材、すなわち、段ボール組立式緩衝材が周知である。
【0003】
この際、突起部分を保護するために被梱包物の底面を浮かせる手段として、梱包容器の底面側に存在するとともに外壁部分を構成していない内側板部を折り曲げて製品全体を浮かせている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−024322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した段ボール組立式緩衝材にあっては、単に立ち上げるように折り曲げただけでは、2重・3重といった繰り返しによる強度の確保が困難となるうえ、被梱包物を梱包容器の内部に収納しようとすると、その立ち上げ部分が引っ掛かる等の作業性の問題が発生していた。
【0006】
また、このような問題は、例えば、段ボール板の半切加工によって折り返した場合においても同様の問題が生じていた。
【0007】
この半切加工とは、段ボール板を構成する表裏紙のうち、裏側紙と、表裏紙にサンドイッチされた波打ちの中芯と、を切り離し、表側紙は切らないで残すことにより、この残した表側紙を薄肉ヒンジ部として折り返す加工である。
【0008】
しかしながら、このような半切加工によって梱包容器の底面部分に厚肉部分を構成しても、薄肉ヒンジ部のスプリングバック現象によって折り返した部分が立ち上がってしまい、結果的に上述した立ち上げ部分と同様に引っ掛かり等が発生してしまうという問題が依然として残っていた。
【0009】
そこで、本発明は、折り返し部分のスプリングバック現象に伴う立ち上がりを抑制することができ、作業性を向上することができる段ボール組立式緩衝材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の段ボール組立式緩衝材は、梱包容器の内部底面に配置されて折り返しによって底上げ状態とした段ボール組立式緩衝材であって、段ボール板の自由端部よりも内方に、半切加工によって前記自由端部の端縁に沿う薄肉ヒンジ部と、該薄肉ヒンジ部の半切加工線から内方側に向けて突出しかつ前記薄肉ヒンジ部を残して略コ字形状に全切加工された舌片部と、前記薄肉ヒンジ部よりも自由端部側に位置する重合部と、を備え、前記薄肉ヒンジ部を介して前記重合部を内側に折り返すことにより前記舌片部を前記薄肉ヒンジ部よりも外方に突出させたことを特徴とする。
【0011】
本発明の段ボール組立式緩衝材によれば、折り返し後に薄肉ヒンジ部のスプリングバック現象に伴って重合部が立ち上がろうとしても、薄肉ヒンジ部よりも外方に突出した舌片部によってその立ち上がりを抑制することができる。
【0012】
前記舌片部は、段ボールの肉厚以上の長さで前記薄肉ヒンジ部よりも外方に突出していることを特徴とする。
【0013】
本発明の段ボール組立式緩衝材によれば、舌片部の薄肉ヒンジ部からの突出量によって重合部の立ち上がり量を調整することができ、梱包容器に収納される被梱包物の挿入作業を考慮して汎用性を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の段ボール組立式緩衝材は、折り返し後に薄肉ヒンジ部のスプリングバック現象に伴って重合部が立ち上がろうとしても、薄肉ヒンジ部よりも外方に突出した舌片部によってその立ち上がりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る段ボール組立式緩衝材を適用した梱包容器と緩衝材及び被収納との関係を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態の段ボール組立式緩衝材を示し、(A)は被梱包物装着前の緩衝材との関係を示す断面図、(B)は被梱包物装着後の緩衝材との関係を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施形態の段ボール組立式緩衝材を示し、下側緩衝材の展開図である。
【図4】本発明の一実施形態の段ボール組立式緩衝材の要部の組立手順を示し、(A)は折り返し前の要部の断面図、(B)は折り返し前の要部の平面図、(C)は折り返し後の要部の断面図、(D)は折り返し後の要部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係る段ボール組立式緩衝材について、図面を参照して説明する。尚、以下に示す実施例は本発明の段ボール組立式緩衝材における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係る段ボール組立式緩衝材を適用した梱包容器と緩衝材及び被収納との関係を示す斜視図、図2は本発明の一実施形態の段ボール組立式緩衝材を示し、図2(A)は被梱包物装着前の緩衝材との関係を示す断面図、図2(B)は被梱包物装着後の緩衝材との関係を示す断面図、図3は本発明の一実施形態の段ボール組立式緩衝材を示し、下側緩衝材の展開図、図4は本発明の一実施形態の段ボール組立式緩衝材の要部の組立手順を示し、図4(A)は折り返し前の要部の断面図、図4(B)は折り返し前の要部の平面図、図4(C)は折り返し後の要部の断面図、図4(D)は折り返し後の要部の平面図である。
【0018】
図1及び図2において、1は被梱包物(例えば、IHヒータ)、2は被梱包物1を収納する段ボール製の梱包容器、3は被梱包物1の上面を覆う(保護する)ように被梱包物1と係合する上側緩衝材、4は被梱包物1の上面を除く略全面を覆う(保護する)ように被梱包物1と係合する下側緩衝材である。
【0019】
被梱包物1は、その対象としての商品等は、特に限定されるものではない。本実施の形態においては、例えば、図2(A)に示すように、被梱包物1の底面11からは、突起部分としての配線コード12と、そのカバー13とが突出している。
【0020】
梱包容器2は、被梱包物1の上下に上側緩衝材3と下側緩衝材4とを係合した状態(図2(B)参照)でこれらを収納する。また、本実施の形態において、梱包容器2は、単なる筐体であって、特別な構造等は採用していないが、後述する下側緩衝材4の構成の一部を兼用しても良い。
【0021】
上側緩衝材3は、本実施の形態においては、段ボール製の折り曲げにより構成されており、例えば、被梱包物1の上面及び四辺を取り巻くように構成されている。なお、上側緩衝材3は、公知の構成であり、段ボール製に代えて発泡ポリスチレン製等を採用することができる。
【0022】
下側緩衝材4は、その組み立て状態において、被梱包物1の底面に位置する底面パネル部41と、被梱包物1の前後(正面・背面)に位置する前面パネル42及び背面パネル43と、被梱包物1の側面(左右面)に位置する左側面パネル部44及び右側面パネル部45と、を備えている。本実施の形態においては、これら各部41〜45は、図3に示すように、1枚の段ボール板から立体状に組み立てられている。
【0023】
底面パネル部41には、カバー13が上面側から下面側へと臨む開口部41aと、底面パネル部41aと、配線コード12の先端側を屈曲させた際の屈曲部分を案内するガイド部41bと、が形成されている。
【0024】
前面パネル42及び背面パネル43には、左側面パネル部44及び右側面パネル部45の中途部に形成されたスリット部44a,45aと係合するスリット部42a,42b,43a,43bが形成されている。
【0025】
左側面パネル部44は、底面パネル部41の縁部から一部を除いて順次谷折り(図示二点鎖線)に折り返されるもので、その縁部側から順に、外側縦パネル部44b、天面パネル部44c、内側縦パネル部44d、地面パネル部44e、下側底上げパネル部44f、一対の上側底上げパネル部44gを備えている。
【0026】
外側縦パネル部44bの中央付近には、底面パネル部41に食い込むように切り起しによって立ち上げられる脚部44hが一体に形成されている。
【0027】
内側縦パネル部44dには、上述したスリット部44aが形成されており、順次内側に折り込んだ際にスリット部42a,43aと係合して折り込みによる矩形の閉断面形状を維持している。
【0028】
地面パネル部44eと下側底上げパネル部44fとの境界には上面側紙と中芯とを切り離し、下面側紙は切らないで残すことにより、この残した下面側紙を薄肉ヒンジ部44iとして山折り(図示一点鎖線)に下側底上げパネル部44fが折り返えされる。これによって下側底上げパネル部44fは、外側縦パネル部44bの内面から折り返された後に、底面パネル部41と地面パネル部44eとに挟まれたまま、内側縦パネル部44dよりも底面パネル部41の内方に突出した部分が底上げ状態で底面パネル部41に重ね合わされる。
【0029】
上側底上げパネル部44gの中央付近には、下側底上げパネル部44fに食い込むように舌片部44jが一体に形成されている。また、上側底上げパネル部44gと下側底上げパネル部44fとの境界には、図4(A),(B)に示すように、下面側紙と中芯とを切り離し、上面側紙は切らないで残すことにより、図4(C),(D)に示すように、この残した上面側紙を薄肉ヒンジ部44kとして谷折り(図示破線)に上側底上げパネル部44gが折り返えされる。これによって上側底上げパネル部44gは、下側底上げパネル部44gの内端から折り返される。したがって、下側底上げパネル部44fと上側底上げパネル部44gとは、内側縦パネル部44dよりも底面パネル部41の内方で二重に重なり合った底上げ状態としている。本実施の形態においては、この下側底上げパネル部44fと重合部としての上側底上げパネル部44gとを二重に重ね合わせることによって底面パネル部41と被梱包物1の底面11との間で配線ケーブル12を配索する空間部46を形成する。
【0030】
右側面パネル部45は、左側面パネル部44と同様に、底面パネル部41の縁部から一部を除いて順次谷折り(図示二点鎖線)に折り返されるもので、その縁部側から順に、外側縦パネル部45b、天面パネル部45c、内側縦パネル部45d、地面パネル部45e、下側底上げパネル部45f、一対の上側底上げパネル部45gを備えている。
【0031】
外側縦パネル部45bの両端付近には、底面パネル部41に食い込むように切り起しによって立ち上げられる脚部45hが一体に形成されている。
【0032】
天面パネル部45cには、内側縦パネル部45d及び地面パネル部45eに跨る配線コード導出開口45iと、配線コード12の先端(コンセント部)を収納するための挿入開口45jと、が形成されている。
【0033】
内側縦パネル部45dには、上述したスリット部45aが形成されており、順次内側に折り込んだ際にスリット部42b,43bと係合して折り込みによる矩形の閉断面形状を維持している。
【0034】
地面パネル部45eと下側底上げパネル部45fとの境界には上面側紙と中芯とを切り離し、下面側紙は切らないで残すことにより、この残した下面側紙を薄肉ヒンジ部45kとして山折り(図示一点鎖線)に下側底上げパネル部45fが折り返えされる。これによって下側底上げパネル部45fは、外側縦パネル部45bの内面から折り返された後に、底面パネル部41と地面パネル部45eとに挟まれたまま、内側縦パネル部45dよりも底面パネル部41の内方に突出した部分が底上げ状態で底面パネル部41に重ね合わされる。
【0035】
上側底上げパネル部45gの中央付近には、下側底上げパネル部45fに食い込むように舌片部45mが一体に形成されている。また、上側底上げパネル部45gと下側底上げパネル部45fとの境界には、下面側紙と中芯とを切り離し、上面側紙は切らないで残すことにより、この残した上面側紙を薄肉ヒンジ部45nとして谷折り(図示破線)に上側底上げパネル部45gが折り返えされる。これによって上側底上げパネル部45gは、下側底上げパネル部45gの内端から折り返される。したがって、下側底上げパネル部45fと上側底上げパネル部45gとは、内側縦パネル部45dよりも底面パネル部41の内方で二重に重なり合った底上げ状態としている。本実施の形態においては、この下側底上げパネル部45fと重合部としての上側底上げパネル部45gとを二重に重ね合わせることによって底面パネル部41と被梱包物1の底面11との間で配線ケーブル12を配索する空間部46を形成する。
【0036】
上記の構成において、図3に示す展開形状の段ボール板を組み立てて下側緩衝材4を構成すれば、底面パネル部41と被梱包物1の底面11との間で配線ケーブル12を配索する空間部46を形成することができる。
【0037】
この際、上側底上げパネル部44g,45gには、舌片部44j,45mが一体に形成されている。また、舌片部44j,45mは、上側底上げパネル部44g,45gの基端側からオーバーハング状態で突出していることから、薄肉ヒンジ部44k,45nのスプリングバック現象によって自由端側が浮き上がろうとしても、その浮き上がりを抑制することができる。
【0038】
したがって、被梱包物1を下側緩衝材4に収納する際、上側底上げパネル部44g,45gが立ち上がって収納を阻害するといった不具合を解消することがでる。
【0039】
このように、本発明の段ボール組立式緩衝材にあっては、段ボール板(側面パネル部44,45)の自由端部よりも内方に、半切加工によって自由端部の端縁に沿う薄肉ヒンジ部44k,45hと、薄肉ヒンジ部44k,45hの半切加工線から内方側に向けて突出しかつ薄肉ヒンジ部44k,45hを残して略コ字形状に全切加工された舌片部44j,45mと、薄肉ヒンジ部44k,45hよりも自由端部側に位置する重合部としての上側底上げパネル部44g,45m、を備え、薄肉ヒンジ部44k,45hを介して上側底上げパネル部44g,45mを内側に折り返すことにより舌片部44j,45mを薄肉ヒンジ部44k,45hよりも外方にオーバーハング状態で突出させたことにより、上側底上げパネル部44g,45mの浮き上がりを抑制して被収納物1の収納作業の容易化を図ることができる。
【0040】
ところで、本発明の段ボール組立式緩衝材は、下側緩衝材4ではなく、梱包容器1に直接形成して緩衝材とすることも可能である。
【符号の説明】
【0041】
44…側面パネル部(段ボール板)
44f…下側底上げパネル部
44k…薄肉ヒンジ部
44j…舌片部
44g…上側底上げパネル部(重合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梱包容器の内部底面に配置されて折り返しによって底上げ状態とした段ボール組立式緩衝材であって、段ボール板の自由端部よりも内方に、半切加工によって前記自由端部の端縁に沿う薄肉ヒンジ部と、該薄肉ヒンジ部の半切加工線から内方側に向けて突出しかつ前記薄肉ヒンジ部を残して略コ字形状に全切加工された舌片部と、前記薄肉ヒンジ部よりも自由端部側に位置する重合部と、を備え、前記薄肉ヒンジ部を介して前記重合部を内側に折り返すことにより前記舌片部を前記薄肉ヒンジ部よりも外方に突出させたことを特徴とする段ボール組立式緩衝材。
【請求項2】
前記舌片部は、段ボールの肉厚以上の長さで前記薄肉ヒンジ部よりも外方に突出していることを特徴とする請求項1に記載の段ボール組立式緩衝材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71769(P2013−71769A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213761(P2011−213761)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(302071092)三洋テクノソリューションズ鳥取株式会社 (244)
【Fターム(参考)】