説明

段ロールユニット及びその搬送方法

【課題】段ロールユニットのシングルフェーサへの挿入又は抜き出しを容易にすると共に、シングルフェーサ周辺で広いスペースを不要とする。
【解決手段】一対の段ロール3,4を走行車輪12,14を有する台車2に載置固定してなりシングルフェーサsの稼動部に着脱される段ロールユニット1において、後輪14の近傍に走行方向が台車2の横方向に向けて装着されかつ取付位置が後輪14より上方又は下方に変更可能な2個の予備輪24を設け、段ロールユニット1の旋回時又は横方向eへの移動時に予備輪24を後輪14より下方に下降させて段ロールユニット1を前輪12と予備輪24とで走行させ、段ロールユニット1の旋回時には、予備輪24を前輪12と逆方向に走行させ、前輪12と予備輪24間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより段ロールユニット1の旋回中心cを前輪12と後輪14間の任意の位置に設定可能に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面に夫々波形の段部を形成した一対の段ロール間に通紙されて段成形された中芯紙にライナ紙を貼り合わせて片面段ボール紙を製造するシングルフェーサに適用される段ロールユニットの構成及び該段ロールユニットの搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シングルフェーサにおいては、複数種類の波形段部(フルート)を生産するために、生産するフルートの種類に応じてシングルフェーサに組み込まれている上下段ロールを交換する必要がある。あるいは、フルートの経時的な摩耗により上下段ロールを定期的に交換する必要がある。上下段ロールは、上下段ロール間の間隔を高精度に調整する必要があるため、通常予め該間隔を調整された状態でフレームに一体に取り付けられた段ロールユニットとして構成されている。そして、該段ロールユニットをシングルフェーサに組み込むようにしている。
【0003】
特許文献1(特公平4−59135号公報)に、上下段ロールの交換装置が開示されている。この交換装置は、上下段ロールがフレームに組み込まれ一体化した形態の新ユニットをクレーン等の吊下げ装置でシングルフェーサまで運搬し、既に組み込まれている上下段ロールをフレームに組み込まれ一体化された形態でシングルフェーサから切り離し、別な吊下げ装置で吊り下げる。そして、新ユニットをシングルフェーサに組み込むと共に、旧ユニットをシングルフェーサの近傍に置いた台車に乗せて搬送するようにしている。
【0004】
特許文献2(特開2000−33658号公報)には、上下段ロールの別な交換手段が開示されている。この交換手段は、車輪付き台車に立設したフレームに上下段ロールを回転自在に載置固定してユニット化し、交換時にはこの段ロールユニットをシングルフェーサ本体の稼動部から機外に移動し、機外で上下段ロールを交換し、新段ロールに交換した段ロールユニットを稼動部に向けて搬入し組み込むようにしている。
【0005】
【特許文献1】特公平4−59135号公報
【特許文献2】特開2000−33658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された上下段ロールの交換手段は、上下段ロールがフレームに組み込まれたユニットを吊り下げるためのクレーン等の大掛かりな吊下げ装置を必要とし、設備費が高価になるという問題がある。また、該ユニットを吊り下げた状態でシングルフェーサの稼動部に組み込む際の位置決めが容易でなく、交換作業に長時間を要するという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に開示された交換手段では、台車に立設したフレームに上下段ロールを回転自在に配設してなる段ロールユニットをシングルフェーサの稼動部に組み込むか、あるいはシングルフェーサ本体から取り外すようにしている。該段ロールユニットは、上下段ロールの長さが2〜3mになるため、前輪と後輪との間隔は約3.5〜4.5mにもなり、重量は7〜8tに達する。
【0008】
該段ロールユニットは自走式であり、シングルフェーサでは上下段ロールの加熱用に高温状態が使用される高温多湿環境であるため、段ロールユニットに取り付けられる車輪の駆動装置は、電動モータよりエアモータが用いられる。そして、エアモータで前輪を駆動することで前進又は後進し、前輪の向きをハンドル(手動)で操作し、方向転換するようにしている。
【0009】
しかし、この段ロールユニットをシングルフェーサ本体から完全に抜き出した後、方向転換する場合、回転中心は後輪となるため、旋回半径が段ロールユニットの全長になり、旋回するためにシングルフェーサの周囲に広いスペースを必要となる。従って、図5に示すように、従来の段ロールユニットでは、シングルフェーサsから抜き出した段ロールユニット1aを矢印dに示すように大きな旋回半径で方向転換し、新しい段ロールユニット1bをシングルフェーサsに組み込む場合でも、矢印d’に示すように大きく方向転換してシングルフェーサsの稼動部に移動させる必要がある。
【0010】
段ロールユニットをシングルフェーサに挿入する場合、挿入位置を合わせて直角方向から真っ直ぐ挿入する必要がある。従来の段ロールユニットでは、旋回半径が大きく、操作性に難があるため、何度も切替えしながら位置又は方向を合わせる必要がある。そのため、シングルフェーサへの挿入に熟練を要し、段ロールユニットの交換に長時間を要する。
【0011】
また、段ロールユニットを搬送するための別な手段として、エアスケータで段ロールユニットを浮かべて床面との摩擦を微小とし、人力で走行させる方式もある。
しかし、エアスケータ方式は、段ロールユニットが走行する床面をある程度の平滑面とする必要があると共に、走行中の重心変位等によりバウンシングが発生しやすく、挙動が安定しない問題がある。また、段ロールユニットの移動を人力で行なう必要があり、床面との摩擦が低く、慣性により惰性走行するため、精度の高い取り回しや回転走行には最低二人以上のオペレータを必要とするという問題がある。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、段ロールユニットの操作性を改善することにより、段ロールユニットのシングルフェーサへの挿入又は抜き出しを容易にすると共に、シングルフェーサ周辺で上下段ロールの交換のための広いスペースを不要としたことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明の段ロールユニットは、
一対の段ロールを、走行輪を有する台車に載置固定してなりシングルフェーサの稼動部に着脱される段ロールユニットにおいて、
後輪の近傍に走行方向を台車の横方向に向けて装着されかつ取付位置が後輪より上方又は下方に変更可能に取り付けられた2個の予備輪を備え、
段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に該予備輪を後輪より下方に下降させて段ロールユニットを前輪と予備輪とで走行させると共に、
段ロールユニットの旋回時には、予備輪を前輪と逆方向に走行させ、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより該段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の任意の位置に設定可能に構成したものである。
【0014】
本発明の段ロールユニットでは、前記2個の予備輪を設け、旋回時又は横方向への移動時に前輪と該予備輪とで走行させるようにする。そのため、横方向への移動が可能になり、段ロールユニットを前後方向から横方向に移動させる場合に、段ロールユニットを旋回させる必要がない。
【0015】
また、段ロールユニットを旋回させる場合には、予備輪を前輪と逆方向に走行させるようにし、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより該段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の任意の位置に設定することができる。
これによって、段ロールユニットの旋回半径を段ロールユニットの中心付近に設定可能になる。そのため、従来のように段ロールユニットを後輪を中心に旋回させる場合と比べて、旋回半径を略半分近くにすることができる。従って、旋回に要するスペースを狭くすることができると共に、段ロールユニットの操作を容易にすることができる。
【0016】
本発明装置の段ロールユニットにおいて、前記2個の予備輪を台車に対する長手軸方向取付位置を変更可能に装着し、前輪と予備輪間の間隔及びこれらの走行速度を調整することにより段ロールユニットの旋回中心位置を調整するように構成することができる。
かかる構成とすれば、段ロールユニットの旋回中心の設定が容易になり、前輪と後輪間の任意の位置に精度良く設定することができる。
【0017】
一方、前記2個の予備輪の台車に対する長手軸方向の取付位置を固定させ、前輪と該予備輪との走行速度差により段ロールユニットの旋回中心位置を調整するように構成すれば、予備輪の取付構造を簡素化でき、前記構成と比べて、予備輪の取付コストを低減することができる。
【0018】
また、本発明の段ロールユニットにおいて、
前輪の近傍に走行方向を台車の横方向に向けて固定されかつ取付位置が前輪より上方又は下方に変更可能となるように取り付けられた1個又は2個の第2の予備輪を設け、
段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に前記予備輪と該第2の予備輪とで走行させると共に、
段ロールユニットの旋回時には、該予備輪と第2の予備輪とを互いに逆方向に走行させ、該予備輪と該第2の予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより該段ロールユニットの旋回中心を予備輪と第2の予備輪間の任意の位置に設定可能に構成してもよい。
【0019】
この場合、予備輪及び第2の予備輪は、台車に対する長手軸方向の取付位置を固定とするか、又は移動可能となるように構成してもよい。かかる構成とすることによって、旋回時の段ロールユニットの旋回中心の設定が更に容易になる。
【0020】
また、本発明の段ロールユニットにおいて、予備輪を上下方向に可変となるように台車に取り付ける手段として、予備輪を可撓性容器からなる空気ばねを介して台車に装着し、該空気ばねに圧縮空気を給排することによって該予備輪を上下方向に移動可能に構成し、台車に予備輪の下限位置を規制するストッパを設けるようにするとよい。
【0021】
かかる構成とすれば、床面から受ける振動や衝撃を該空気ばねで吸入することができる。また、該ストッパによって予備輪の下限位置を規制できるため、予備輪を該下限位置に保持することで、後輪の間で上下方向位置に常に一定の差を持たせることができる。
【0022】
また、本発明の段ロールユニットにおいて、段ロールユニットの前方に前輪に連結されたハンドルを設け、該ハンドルと前輪の向きが連動するように構成し、該ハンドルに操作パネルを設け、該操作パネルに、運転条件入力部と、入力された旋回時の運転条件から算出される段ロールユニットの旋回中心を表示する旋回中心表示部とを設けるとよい。
【0023】
かかる構成において、前輪に駆動装置を連結し、オペレータがハンドルの向きを手動で操作することにより、段ロールユニットを走行させる。この場合、ハンドルに操作パネルを設け、オペレータが該操作パネルに運転条件を入力すると、該運転条件に応じた段ロールユニットの旋回中心が算出され、この旋回中心が旋回中心表示部に表示される。
これによって、段ロールユニットを搬送中のオペレータによって段ロールユニットの旋回中心が明確に把握されるため、段ロールユニットの搬送をより精度良く行なうことができる。
【0024】
また、本発明の段ロールユニットの搬送方法は、前記本発明の段ロールユニットを用いた搬送方法であり、
段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に該予備輪を後輪より下方に下降させて段ロールユニットを前輪と予備輪とで走行させ、
段ロールユニットの横方向への移動時は、前輪を横方向に向けて該前輪と予備輪とで走行させ、
段ロールユニットの旋回時には、前輪と予備輪を互いに逆方向に走行させると共に、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の設定位置に設定するようにしたものである。
【0025】
さらに、本発明方法において、シングルフェーサでの使用の後交換される段ロールユニット(旧段ロールユニット)と新たにシングルフェーサに装着される段ロールユニット(新段ロールユニット)とを交換する場合に、
シングルフェーサの稼動部に組み込まれた旧段ロールユニットを長手軸方向に移動させてシングルフェーサの稼動部から引き出した後、旧段ロールユニットに対して新段ロールユニットを隣接位置に並列に並べて連結し、
新旧両段ロールユニットの前輪を横方向に向けて前輪及び予備輪で新旧両段ロールユニットを一体的に横方向に移動させて、新段ロールユニットをシングルフェーサの稼動部に面した位置に移動させ、
その後、新旧両段ロールユニットの連結を解除して、新段ロールユニットを該稼動部に挿入するようにするとよい。
【0026】
これによって、旧段ロールユニットと新段ロールユニットとを同時に移動させることができるので、交換作業を容易にし、交換時間を短縮することができる。
この場合、旧段ロールユニット及び新段ロールユニットの前輪及び予備輪をエアモータで駆動し、少なくとも新旧両段ロールユニットの連結時に新旧両段ロールユニットのエアモータに供給する圧縮空気を同一供給源から供給するようにするとよい。これによって、圧縮空気供給源の構成を簡素化できると共に、両段ロールユニットに供給する圧縮空気圧の調整が容易になる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の段ロールユニットによれば、一対の段ロールを走行輪を有する台車に載置固定してなりシングルフェーサの稼動部に着脱される段ロールユニットにおいて、後輪の近傍に走行方向を台車の横方向に向けて装着されかつ取付位置が後輪より上方又は下方に変更可能に取り付けられた2個の予備輪を備え、段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に該予備輪を後輪より下方に下降させて段ロールユニットを前輪と予備輪とで走行させると共に、段ロールユニットの旋回時には、予備輪を前輪と逆方向に走行させ、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより該段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の任意の位置に設定可能に構成したことにより、段ロールユニットの横方向への移動が可能になると共に、段ロールユニットの旋回半径を縮小できるので、段ロールユニットの操作性が容易になると共に、シングルフェーサ周辺のスペースを縮小することができる。
【0028】
また、本発明の段ロールユニットの搬送方法によれば、本発明の段ロールユニットを用い、段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に該予備輪を後輪より下方に下降させて段ロールユニットを前輪と予備輪とで走行させ、段ロールユニットの横方向への移動時は、前輪を横方向に向けて該前輪と予備輪とで走行させ、段ロールユニットの旋回時には、前輪と予備輪を互いに逆方向に走行させると共に、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の設定位置に設定するようにしたことにより、段ロールユニットの横方向への移動が可能になると共に、段ロールユニットの旋回半径を縮小できるので、段ロールユニットの操作性が容易になると共に、シングルフェーサ周辺のスペースを縮小することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0030】
(実施形態1)
本発明の段ロールユニットに係る第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、該搬送装置の正面図、図2は同じく平面図、図3は、図1のA−A線に沿う側面図である。図1及び図2において、段ロールユニット1は、台車2に上段ロール3及び下段ロール4を載置固定してなるものである。台車2の前部及び後部には、上段ロール3及び下段ロール4を回転自在に支持する前部支持フレーム5及び後部支持フレーム6が立設されている。
【0031】
台車2の前端部には、軸受7に回転軸8が回動自在に支持され、回転軸8の上端にはハンドル9が左右方向(図2の矢印a方向)に回動可能に固着されている。ハンドル9は、オペレータがハンドル9の把持部9aを把持して段ロールユニット1を移動方向に向けるためのものである。把持部9aには後述する操作パネル10が取り付けられている。回転軸8の下端には、カバー11付きの1個の前輪12が設けられている。前輪12は、図示しないエアモータからなる駆動装置により走行する。そのため、ハンドル9の向きに連動して前輪12がハンドル9と同一方向を向くようになっている。
【0032】
後部支持フレーム6の台車幅方向両端に、後部支持フレーム6から後方に2個の支持フレーム13が突設され、該支持フレーム13に夫々後輪14が回動可能に装着されている。後輪14は駆動装置がなく、前輪12によって走行する段ロールユニット1に従動する。
【0033】
台車2には、後述する予備輪24を取り付けるための凹部21が形成されている。該凹部21には、後輪14寄りの位置に、伸縮性容器からなる2個の空気ばね22が台車幅方向に取り付けられ、空気ばね22の下部には、フレーム23を介して予備輪24が回動可能に装着されている。本実施形態において予備輪24は一定位置に固定される。
【0034】
空気ばね22には、図示しない圧縮空気供給源から圧縮空気が給排され、圧縮空気の給排によって空気ばね22が伸縮する。そして、空気ばね22の伸縮によって予備輪24の位置が上下に微小移動する。なお、空気ばね22は、伸縮性容器の上位概念である可撓性容器で構成されてもよい。
【0035】
予備輪24の回転軸28は台車前後方向に配置されており、予備輪24は台車幅方向に走行可能に構成されている。凹部21内で予備輪24に隣接した位置に支持ブラケット25が下方に突設され、支持ブラケット25にエアモータ26が固定されている。エアモータ26の出力軸には歯車27が装着され、歯車27は予備輪24の回転軸28に装着された歯車29と噛み合うように配置されている。こうして、エアモータ26を駆動することにより、予備輪24を回転駆動することができる。予備輪24の少なくとも1個は、かかる駆動機構によって駆動される。
【0036】
また、フレーム23の後輪14寄りにはストッパ機構31が設けられている。ストッパ機構31は、台車2の凹部21に植設されたボルト32及びボルト32に螺合したナット33と、後輪14側に向かって水平方向に位置してフレーム23に固定された係止部材34とからなる。係止部材34はボルト32に遊嵌しており、ナット33に係止してその下降位置を規制される。なお、ナット33のボルト32に対する螺合位置を調節することによって、予備輪24の下限位置を調整することができる。
【0037】
また、前部支持フレーム5の下端には、台車幅方向両端に、段ロールユニット1が横方向に所定以上傾いたときに、それ以上の傾きを止めるためのストッパ15が取り付けられている。
【0038】
かかる構成の本実施形態において、図5に基づいて本実施形態の段ロールユニット1の搬送方法を説明する。図5において、シングルフェーサsに組み込まれて今まで運転に供された旧段ロールユニット1aを新段ロールユニット1bに交換する場合には、まず旧段ロールユニット1aを矢印b方向に搬送してシングルフェーサsから引き抜く。その後、空気ばね22に図示しない圧縮空気供給源から圧縮空気を供給して、予備輪24を下降させる。
【0039】
そして、図1に示すように、予備輪24で段ロールユニット1の後側を支持させ、後輪14を床面fから浮かせるようにする。後輪14の浮き量tは例えば10〜20mmほどでよい。これによって、段ロールユニット1は、1個の前輪12と2個の予備輪24で支持されるようになる。その後、オペレータがハンドル9を操作して、前輪12を台車幅方向に向けることによって、段ロールユニット1を横方向(図5中の矢印e方向)に向けて搬送する。
【0040】
このように操作することによって、段ロールユニット1aを旋回させずに横方向に搬送できるので、シングルフェーサsの周辺に旋回用のスペースを取る必要がなくなる。
【0041】
次に、本実施形態において、段ロールユニット1を小さい旋回半径で旋回させる搬送方法を説明する。図4はハンドル9の把持部9aに装着された操作パネル10を示す。図4において、操作パネル10には、前輪12や予備輪24の速度、シングルフェーサs周辺のスペース、又はシングルフェーサs周辺の床面fの凹凸状態等、種々の運転条件を入力する運転条件入力部100と、入力された運転条件に基づいて自動的に算出された段ロールユニット1の旋回中心cが表示される旋回中心表示部101が配置されている。
【0042】
旋回中心cは、互いに逆方向に走行する前輪12と予備輪24の走行速度及び前輪12と予備輪24の位置に基づいて決定される。即ち、前輪12から旋回中心cまでの距離l及び予備輪24から旋回中心cまでの距離lは、前輪12及び予備輪24の走行速度から算出できる。
【0043】
こうして、算出された旋回中心cの位置が自動的に旋回中心表示部101に表示されるようになっている。旋回中心表示部101では、段ロールユニット1の輪郭が図示され、該輪郭中の算出された位置に旋回中心c表示される。旋回中心cがちょうど段ロールユニット1の中心位置に位置したときに、段ロールユニット1の旋回半径を最小とすることができる。
【0044】
図5において、段ロールユニット1aをシングルフェーサsから引き出した位置で、オペレータが操作パネル10を操作して段ロールユニット1aを旋回させる。これによって、段ロールユニット1aを運転条件に応じて設定された旋回中心cを軸として、1a’に示す位置まで旋回させる。その後、段ロールユニット1を矢印e方向に搬送させる。
【0045】
また、新たな段ロールユニット1bをシングルフェーサsに組み込む場合、図示のように、前輪12及び後輪14を走行させて、新段ロールユニット1bをシングルフェーサsへの組み込み位置まで搬送する。次に、予備輪24を後輪14より下方に位置させて、新シングルフェーサ1bを前輪12及び予備輪24によって床面fに支持させる。その後、前記と同様の操作で段ロールユニット1bを最小の旋回半径で90度旋回させてシングルフェーサs側に向かせる。そして、段ロールユニット1bをシングルフェーサsに組み込むようにする。
【0046】
このように、本実施形態によれば、段ロールユニット1を前後方向の移動から旋回動作なしで横移動可能にすると共に、最小の旋回半径で旋回させることができるので、段ロールユニット1の交換時に、段ロールユニット1の姿勢制御が容易になる。従って、段ロールユニット1の操作性が容易になり、一人のオペレータで段ロールユニット1を搬送できると共に、段ロールユニット1の搬送のためにシングルフェーサsの周辺に大きなスペースを必要としない。
【0047】
また、予備輪24の下限位置をストッパ機構31で規制できると共に、床面fから受ける衝撃を空気ばね22で受けて吸収し、段ロールユニット1の本体まで伝達させないようにすることができる。また、ナット33のボルト32に対する螺合位置を調整することにより、予備輪24の下限位置を調整することができる。
また、操作パネル10に運転条件を入力することにより、自動的に旋回中心cが算出され、算出された旋回中心cが旋回中心表示部101に表示されるので、オペレータによる段ロールユニット1の搬送を容易かつ精度良く行なうことができる。
【0048】
また、台車2に凹部21を設けて、該凹部21に予備輪24やエアモータ26、及びストッパ機構31を装着したので、これらの機器類をコンパクトに該凹部21にまとめて配置できる。従って、段ロールユニット1を大型化することなく、シングルフェーサsの稼動部に組み込むことができる。
さらに、段ロールユニット1の横方向への傾きをストッパ15で止めるようにしているので、段ロールユニット1の倒れを未然に防止できる。
【0049】
なお、本実施形態では、後輪14寄りの台車2に予備輪24を固定したが、本実施形態の変形例として、予備輪24を台車2に対して台車前後方向に移動可能に装着してもよい。このようにすれば、予備輪24の位置と前輪12及び予備輪24の速度の2つのパラメータで旋回中心cを決定できるので、旋回中心cの位置をさらに精度良く設定することができる。
【0050】
さらに、予備輪24に加えて、1個又は2個の第2の予備輪を前輪12寄りに設け、段ロールユニット1の横方向移動時や旋回時に予備輪24と第2の予備輪で段ロールユニット1を走行させるようにしてもよい。図6はこの変形例を模式的に示す説明図である。図6において、後輪14寄りに設けられた予備輪24に加えて、前輪12寄りの位置でかつ台車幅方向両側端に2個の第2の予備輪35が設けられている。
【0051】
第2の予備輪35は、予備輪24と同一構成をなして、上下方向位置を可変にでき、かつその走行方向は台車幅方向に向けられている。そして、段ロールユニット1を横移動又は旋回させるときには、予備輪24及び第2の予備輪35を前輪12及び後輪14より下降させ、予備輪24と第2の予備輪35とで段ロールユニット1を支持するようにする。かかる構成によれば、横方向移動時又は旋回時に、段ロールユニット1を2個の予備輪24と2個の第2の予備輪35とで支持できるので、段ロールユニット1を安定して走行させることができる。
【0052】
なお、第2の予備輪35を2個設ける代わりに、図6に示すように、1個の第2予備輪35’を前輪12寄りの中央位置に1個だけ装着するようにしてもよい。
【0053】
(実施形態2)
次に、本発明の第2実施形態を図7に基づいて説明する。図7において、本実施形態では、前記第1実施形態と同一構造の段ロールユニット1を用いる。シングルフェーサsに組み込んで運転に供した旧段ロールユニット1aを交換する場合に、まず、旧段ロールユニット1aをシングルフェーサsの稼動部から矢印b方向に引き抜く。
次に、新段ロールユニット1bを横方向(矢印e方向)に搬送して旧シングルフェーサ1aに接近させ、旧シングルフェーサ1aに隣接して旧シングルフェーサ1aに対して並列に並べる。
【0054】
次に、機械的連結具42で新旧両段ロールユニットを連結する。そして、新旧両段ロールユニットで、前輪12や予備輪24のエアモータ及び空気ばね22と単一の圧縮空気供給源40とをホース41で接続する。新旧両段ロールユニットのこれら圧縮空気を必要とする機器類に単一の圧縮空気供給源40から圧縮空気を供給するようにする。
【0055】
本実施形態においては、新旧両段ロールユニット1a及び1bを並列にした状態で機械的に連結し、矢印e方向に搬送する。そして、新段ロールユニット1bがシングルフェーサsの組み込み位置に到達したとき、搬送を止める。その後、両段ロールユニットの結合を解除して、旧段ロールユニット1aのみ搬出する。本実施形態では、新旧両段ロールユニットを一体で同時に搬送できるので、搬送時間を短縮することができる。
【0056】
また、新旧両段ロールユニットに単一の圧縮空気供給源40から圧縮空気を供給するようにしているので、操作が容易になると共に、設備費を低コストとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、シングルフェーサの上下段ロールを仕様替え又は修理等の理由により交換する場合に、段ロールユニットのシングルフェーサへの挿入又は抜き出しを容易にすると共に、シングルフェーサ周辺で広いスペースを不要とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態に係る段ロールユニットの正面図である。
【図2】前記第1実施形態に係る段ロールユニットの平面図である。
【図3】図1中のA−A線に沿う側面図である。
【図4】前記第1実施形態に係る操作パネル10の正面図である。
【図5】前記第1実施形態に係る段ロールユニット1の搬送方向の説明図である。
【図6】前記第1実施形態の変形例を模式的に示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る段ロールユニット1の搬送方法の説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b 段ロールユニット
2 台車
3 上段ロール
4 下段ロール
9 ハンドル
10 操作パネル
12 前輪
14 後輪
22 空気ばね
24 予備輪
26 エアモータ
31 ストッパ機構
35 第2の予備輪
40 圧縮空気供給源
42 機械的連結具
100 運転条件入力部
101 旋回中心表示部
c 旋回中心
s シングルフェーサ
t 浮き量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の段ロールを、走行輪を有する台車に載置固定してなりシングルフェーサの稼動部に着脱される段ロールユニットにおいて、
後輪の近傍に走行方向を台車の横方向に向けて装着されかつ取付位置が後輪より上方又は下方に変更可能に取り付けられた2個の予備輪を備え、
段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に該予備輪を後輪より下方に下降させて段ロールユニットを前輪と予備輪とで走行させると共に、
段ロールユニットの旋回時には、予備輪を前輪と逆方向に走行させ、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより該段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の任意の位置に設定可能に構成したことを特徴とする段ロールユニット。
【請求項2】
前記2個の予備輪を台車に対する長手軸方向取付位置を変更可能に装着し、前輪と予備輪間の間隔及びこれらの走行速度を調整することにより段ロールユニットの旋回中心位置を調整するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の段ロールユニット。
【請求項3】
前記2個の予備輪の台車に対する長手軸方向の取付位置を固定させ、前輪と該予備輪との走行速度差により段ロールユニットの旋回中心位置を調整するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の段ロールユニット。
【請求項4】
前輪の近傍に走行方向を台車の横方向に向けて固定されかつ取付位置が前輪より上方又は下方に変更可能となるように取り付けられた1個又は2個の第2の予備輪を設け、
段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に前記予備輪と該第2の予備輪とで走行させると共に、
段ロールユニットの旋回時には、該予備輪と第2の予備輪とを互いに逆方向に走行させ、該予備輪と該第2の予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより該段ロールユニットの旋回中心を予備輪と第2の予備輪間の任意の位置に設定可能に構成したことを特徴とする請求項1に記載の段ロールユニット。
【請求項5】
前記予備輪を可撓性容器からなる空気ばねを介して台車に装着し、該空気ばねに圧縮空気を給排することによって該予備輪を上下方向に移動可能に構成し、台車に予備輪の下限位置を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1に記載の段ロールユニット。
【請求項6】
段ロールユニットの前方に前輪に連結されたハンドルを設け、該ハンドルと前輪の向きが連動するように構成し、
該ハンドルに操作パネルを設け、該操作パネルに、運転条件入力部と、入力された旋回時の運転条件から算出される段ロールユニットの旋回中心を表示する旋回中心表示部とを設けたことを特徴とする請求項1〜5に記載の段ロールユニット。
【請求項7】
請求項1に記載した段ロールユニットの搬送方法において、
段ロールユニットの旋回時又は横方向への移動時に該予備輪を後輪より下方に下降させて段ロールユニットを前輪と予備輪とで走行させ、
段ロールユニットの横方向への移動時は、前輪を横方向に向けて該前輪と予備輪とで走行させ、
段ロールユニットの旋回時には、前輪と予備輪を互いに逆方向に走行させると共に、前輪と予備輪間の間隔又はこれらの走行速度を調整することにより段ロールユニットの旋回中心を前輪と後輪間の設定位置に設定するようにしたことを特徴とする段ロールユニットの搬送方法。
【請求項8】
シングルフェーサの稼動部に組み込まれた旧段ロールユニットを長手軸方向に移動させてシングルフェーサの稼動部から引き出した後、旧段ロールユニットに対して新段ロールユニットを隣接位置に並列に並べて連結し、
新旧両段ロールユニットの前輪を横方向に向けて前輪及び予備輪で新旧両段ロールユニットを一体的に横方向に移動させて、新段ロールユニットをシングルフェーサの稼動部に面した位置に移動させ、
その後新旧両段ロールユニットの連結を解除して、新段ロールユニットを該稼動部に挿入するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の段ロールユニットの搬送方法。
【請求項9】
新旧両段ロールユニットの前輪及び予備輪をエアモータで駆動し、少なくとも新旧両段ロールユニットの連結時に新旧両段ロールユニットのエアモータに供給する圧縮空気を同一供給源から供給するようにしたことを特徴とする請求項8に記載の段ロールユニットの搬送方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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