説明

殺菌方法及び電解水噴出装置

【課題】 オゾン等の電解生成物を従来より高濃度で溶解する電解水の噴霧装置、特に得られた電解水を霧状に噴霧する小型スプレー装置を提供する。
【解決手段】 容器3に収容した原料水2を、少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成した陽極7を有する電解ユニット6で電解し、生成する電解水を噴霧ノズル12から殺菌対象に噴霧する。陽極材料として導電性ダイヤモンドを使用すると、オゾンや過酸化物などの電解種を高濃度で溶解した電解水を高効率で生成でき、この電解水を対象物に噴霧することにより高濃度電解種での殺菌が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌や洗浄、漂白等に用いられる、オゾン等の電解生成物を高濃度溶解した電解水を使用する殺菌方法、及びこの電解水を利用する電解水噴出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般細菌は、土壌や河川、湖沼など自然界に広く生息し、従って人体に対して安全にかつ確実にこれらの一般細菌を、殺菌しあるいは制菌できる対策技術に関心が集まっている。従来、広範な環境における殺菌消毒剤として、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム等の塩素系殺菌剤が広く用いられているが、塩素系殺菌剤の多量使用により弊害が発生している。例えば大量に食材を取り扱う工場、小売店では100ppmを越える次亜塩素酸ナトリウムによる洗浄を行っており、これが食材の味を損なうのみならず危険性(トリハロメタン(THM)増加)を増大させていることが問題視されている。
最近になって、農業、食品等の分野において、電気分解により生成される電解水が有用であることが知られてきている。電解水の優れた殺菌、消毒作用に着目し、医療現場や家庭での利用、例えば患部、切開部、留置カテーテルの経皮開口部等の殺菌、消毒、あるいはキッチン用品、ベビー用品、家具等の家庭用品、トイレ、浴槽等の住居まわりの殺菌、消毒に使用することが検討されている。
【0003】
食品添加物として認可されている電解水の種類には次の3種類がある。
1)弱アルカリ性の電解次亜水(添加物名:電解次亜塩素酸ナトリウム水、20〜200ppm、pH>7.5、0.2〜2%の食塩水を原料とし無隔膜で電解生成させる)
2)微酸性電解水(添加物名:微酸性次亜塩素酸水、10〜30ppm、pH=5〜6.5、2〜6%の塩酸を原料とし、無隔膜で電解生成させる)
3)強酸性電解水(添加物名:強酸性次亜塩素酸水、20〜60ppm、pH<2.7、0.2%の食塩水を原料とし、隔膜型セルの陽極水として生成させる)
【0004】
これらの電解水のうち酸性水のメリットは次の通りである。
1)THMは酸性では生成しにくいため安全性が優れている。
2)耐性菌が発生しにくく、オンサイトで管理がしやすい。
3)アルカリ性電解水との併用処理ができる。
4)水道水のような感覚で利用でき、手指に匂いが残らない。
5)直前での使用で十分(殺菌時間が短い)である。
従来の次亜塩素酸ナトリウム薬液処理では200ppmまで食品添加物として認可されているものの、その添加により味覚も悪くなり、残留性があるのに比較して、前記電解水は製造装置としての初期投資はかかるが、低濃度で殺菌効果が高く、有益である。
【0005】
このような電解水は、溶解によりイオンが生じる溶質、例えば塩化ナトリウム等を添加し、また必要に応じpH調整のための酸を添加した水(被電解水)を、電気分解することによって得られる。電気分解は、陽極および陰極よりなる電極対を有する電解槽、またはさらに陽極と陰極の間に隔膜を配置した構成の電解槽を用いて行われる。
このような電解水装置は大規模となり、例えば、医療現場や家庭でより簡易に殺菌、消毒等を行うには難がある。このような背景から、携帯可能な小型の電解水スプレー装置が提案されている(下記特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開2000−79393号公報
【特許文献2】特開2000−197889号公報
【特許文献3】特開2001−276826号公報
【0006】
これら以外にも、特開2004-129954号公報(電気分解に必要な電力を発生する手段を有する)、特開2004-130263号公報(ピストンの内容積とセル筒部分の体積、断面積などの比率の特定している)、特開2004-130264号公報(pH調整剤、界面活性剤、塩素化合物、水からなる電解原水を用い、pH3〜8.5の電解水を得る)、特開2004-130265号公報(特開2004-130264号公報の電解水を泡状にして使用する)、特開2004-130266号公報(電極への電圧の印加方向を交互に変える)、特開2004-148108号公報(電極への電圧の印加電圧を可変とする)、特開2004-148109号公報(吸引経路に電極を配置する)、特開2003-93479号公報、特開2003-266073号公報、特開2002-346564号公報(スプレー部に円筒形の電極を有する分離型)及び特開2001-47048号公報(ガン型、非噴射時に目詰まり防止、モーター使用)などが知られている。
【0007】
しかしながら次亜塩素酸塩を使用する殺菌では、長期にわたる次亜塩素酸塩の使用により、次亜塩素酸系薬剤に対する耐性菌が生じており、殺菌効果が十分でなく、その有効性に関し疑義が生じている。
一方、オゾン水は既に食品添加物リストに登載され、米国FDA(食品医薬品局)で食品貯蔵、製造工程での殺菌剤として認可(2001年)が得られている。既にオゾン水は食品工場内の殺菌、食品そのものの殺菌に多くの実績がある。最近では、皮膚科、眼科、歯科などの医療現場においても、これまでの殺菌水と同等以上の効果を発揮しつつ、生体への負荷を軽減できることが注目されている。
【0008】
オゾン水のメリットとして次の2点がある。
1)オゾン(OHラジカル)殺菌効果は細胞壁の酸化破壊であり無差別性のため耐性菌が存在しないといえる。
2)残留性がない。
オゾン水は、必要に応じて他の残留性を有する酸化剤(次亜塩素酸塩、過硫酸塩、過炭酸塩など)と併用すれば、より有効な殺菌処理が可能となる。
従って上記の問題を解決する手段の一つとして、オゾン水の利用が挙げられる。しかし、オゾン水の製造には大掛かりな装置が必要であり、かつ日持ちしないという欠点があり、一般家庭に普及させることは困難であった。
【0009】
オゾン水の従来製法
オゾン水は従来から放電型のオゾンガス発生器を用いて製造することが一般的であり、数ppmのオゾン水を容易に製造でき、浄水処理、食品洗浄分野で利用されている。しかしながら、瞬時応答性に優れたハンディかつ高濃度なオゾン水装置の発生器としては次の理由により不適当であった。
1)オゾンをいったんガスとして発生させ、その後、水に溶解させる2つの工程を必要とすること。
2)後述する電解法に比較して濃度が低いため高圧下で水中に注入し、溶解させ、製造する必要があること。
3)発生電源が高電圧・高周波のため、小型化しにくいこと。
4)放電によるオゾン水生成装置では、オゾンガス発生能力が安定するまで時間(数分間の待機時間)を要し、瞬時に一定濃度のオゾン水を調製することが困難であること。
【0010】
電解オゾン製造法
これに対し電解法は、放電法に比較して電力原単位は劣るが、高濃度のオゾンガス及びオゾン水が容易に得られ、電子部品洗浄などの特殊分野で汎用されている。原理的に直流低圧電源を用いるため、瞬時応答性、安全性に優れており、小型のオゾンガス、オゾン水発生器としての利用が期待されている。また、用途に応じて電池駆動、発電機駆動、交流直流変換駆動が選択できる。
オゾンガスを効率よく発生させるには、適切な触媒と電解質を選択することが不可欠である。電極材料として、白金などの貴金属、α-二酸化鉛、β-二酸化鉛、フルオロカーボンを含浸させたグラッシーカーボンが、電解質としては、硫酸、リン酸、フッ素基含有などの水溶液が利用されてきたが、取り扱いが不便であり普及が遅れている。
【0011】
一方、固体高分子電解質を隔膜として用い、純水を原料とする水電解セルは取扱いが容易で管理がしやすく、汎用されている[J. Electrochem. Soc., 132, 367(1985)]。この水電解セルでも従来からの触媒である二酸化鉛を使用すると、12重量%以上の高濃度なオゾンガスが得られるが、二酸化鉛は非常に不安定であり、電解性能、電流効率を維持するために保護電流を付加する必要がある。
直接電解方式と呼ばれるシステムでは、電極近傍の溶液に十分な流速を与え、オゾン水として取り出すようにしている(特開平8-134677号公報)。しかしながら触媒による対象水汚染がないように、触媒は安定な貴金属などに限定されるため、電流効率、濃度は小さかった。また、放置すると電極活性が低下する現象が発生し問題となっていた。バックアップの保護電流を常時与えることも可能であるが、そのために装置が複雑となり小型化の支障となる。
また、純水以外の原料水を電解系に供給する場合は、貴金属電極触媒自体の活性が水質の影響を受けるため、寿命や効率などの電解性能が変動することに注意を要する。
【0012】
ダイヤモンド電極と電解水・電解処理に関する公知技術
Journal of Electrochemical Society Vol.141, 3382- 、(1994)はダイヤモンドの酸性電解液中での安定性を報告し、米国特許第5399247号明細書は、ダイヤモンドを陽極材料に用いて有機廃水が分解できることを開示している。
特開1997-268395号公報は、ダイヤモンドが機能水(オゾン含む)製造用電極として有用であることを開示し、特開2000-254650号公報は、酸化剤と、ダイヤモンド陽極を利用して製造した過酸化水素水による水処理を開示し、特開2001-192874号公報は、ダイヤモンド電極が過硫酸合成用電極として有用であることを開示している。
更に特開2004-211182号公報はダイヤモンド電極が過炭酸合成用電極として有用であることを開示し、特開2005-046730号公報はオキシ酸イオン電解水での電解殺菌について開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように電解水を殺菌対象等に使用することは公知であるが、電解水であるオゾン水は不安定であり、貯蔵することが困難であり、使用直前に含有水として合成することが好ましい。しかし小型かつ安定なオゾン水発生装置は、前述したようなオゾン発生装置に由来する諸問題により、これまで開発されていない。殺菌・脱色力のあるオゾン水を初めとする各種電解水のオンサイト型の装置が提案されているが、これらはいずれも生成オゾン等が低濃度で、満足できる殺菌あるいは制菌機能がなく、実用化されていない。
【0014】
本発明は前述の従来技術の問題点を解消し、オゾン等の電解種を高濃度で電解製造し、対象物の殺菌あるいは制菌を満足できるレベルで実施できるようにした電解水噴出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明方法は、原料水を、陰極と少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成した陽極を有する電解ユニットで電解して電解水を生成させ、生成電解水を殺菌対象に噴出することを特徴とする電解水による殺菌方法であり、本発明装置は、原料水を収容した容器、陽極及び陰極を有する電解ユニット及び前記原料水を前記電解ユニットで電解して生成する電解水を噴出するヘッドとを含んで成る電解水噴出装置において、陽極の少なくとも一部を導電性ダイヤモンドで形成し;あるいは少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成した棒状陽極の周囲に、シート状の隔膜部材を設置し、その周囲に線状の陰極を配置した電解ユニットを使用することを特徴とする電解水噴出装置である。前記電解水は殺菌対象に霧状に噴霧することが望ましい。
【0016】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明方法では、少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成した陽極を使用して電解水を生成させる。この導電性ダイヤモンド電極を用いることにより、オゾンなどの活性種が効率良くかつ高濃度で合成され、殺菌・脱色力のある電解水が容易に製造できる。
本発明方法や電解水噴出装置は、室内、水回り、食器、衣類等の家庭用あるいは業務用の消臭、殺菌、漂白、又は人体、例えば手指等の殺菌、消毒等に広く使用することができる。このように本発明の殺菌方法における「殺菌」は、殺菌以外に、消臭、漂白、消毒などを含む。
【0017】
電解ユニットでの代表的な陽極反応を総括式として示す。
水は式(1)及び(2)の通り反応して酸素とオゾンを生成する。
2H2O = O2 + 4H+ + 4e (1)
3H2O = O3 + 6H+ + 6e (2)
塩化物イオンが存在する場合には、式(3)の通り反応して次亜塩素酸が生成する。
Cl-+ H2O = ClO-+ 2H++ 2e (3)
【0018】
硫酸を添加した場合には式(4)の通り反応して過硫酸が生成する。
2SO42- = S282-+ 2e (4)
炭酸イオンが存在する場合には、式(5)の通り反応して過炭酸が生成する。
2CO32- = C262-+ 2e (5)
【0019】
従来から使用されていた電極材料に代わって、導電性ダイヤモンドを用いることにより、式(1)〜(5)に示した反応が進行しやすくなり、これらの電解生成過酸化物が格段に効率良く製造される。更にダイヤモンド電極では前述の電解種以外に、OHラジカル、電解質の酸化体が生成し、これらと前記電解種による殺菌、漂白効果が相乗的に利用できる。
このように製造された高濃度電解種を含む電解水は、殺菌対象に向けて噴出、好ましくは霧状に噴霧される。この電解水の製造と噴出は連続的に行うことが望ましく、例えばトリガー(引き金)連動スイッチを作動させて電解ユニットに通電して高濃度電解種を含む電解水を生成させ、生成と同時に又は生成の直後に電解水を殺菌対象に噴出又は噴霧することにより、殺菌対象が高濃度電解種により殺菌されて、目的を達成できる。
【0020】
本発明では、電解質などの条件を適宜選定することにより、従来食品添加物として認可される酸性水のほかに、複数の電解種、例えば酸素、オゾン、次亜塩素酸及び過酸化物等を含有する電解水を効率よく製造できる。
また、殺菌力向上を目的としたpH調製のための有機酸・界面活性剤の添加、殺菌力や清涼感を向上させる等のためのアルコールなどの添加による新規な殺菌洗剤・効果を発現できる。
一方、純水を原料水として電解する場合は主にオゾン水のみが生成し、噴霧され、噴霧した際に塩などが残らない利点がある。
【0021】
更に本発明は次のような特徴を有する。
1)酸化鉛又は白金系触媒は不安定でバックアップが必須であるが、導電性ダイヤモンドを陽極材料として使用する本発明の電解水噴出装置は、電極の耐久性が向上する。
2)本発明の電解水噴出装置は安全で小型軽量であるが、これは放電によるオゾン水生成装置では不可能である。
3)本発明の電解水噴出装置は瞬時応答性に優れている、つまり電解水電解による電解水製造と電解水の噴出又は噴霧を実質的に同時に行える。放電によるオゾン水生成装置では放電により生成したオゾンガスを水に溶解させてオゾン水を製造するため、瞬時応答性はない。
4)電池駆動、発電機駆動、交流電源駆動(アダプター)等の幅広い駆動源が選択でき、スイッチを、トリガーとリンクさせることができる。
【0022】
5)条件設定により、次のような高活性な電解水を生成できる。
(1)アルカリ性電解水(電解質の選択による複数の過酸化物を含有する電解水、塩化物以外に硫酸塩、炭酸塩など)
(2)酸性電解水(電解質の選択による複数の過酸化物を含有する電解水、塩化物以外に硫酸塩、炭酸塩など)
(3)高濃度オゾン含有水(残留性がなく、殺菌力は次亜塩素酸系の10倍以上であり、漂白効果もある。共存物質によっては、オゾン半減期が延伸、効果の持続性が向上)
(4)新規な複合電解水(殺菌力向上を目的としたpH調製のための有機酸・界面活性剤の添加、殺菌力や清涼感を向上させる等のためのアルコールなどの添加による新規な殺菌効果の発現)
【0023】
本発明の電解水噴出装置は、小型の電解水スプレーとして最も好ましく使用できるが、上記具体的な特徴を有するため、特に小型、家庭用に限定するものではなく、食品工場、農業、医療などの大量連続製造が要求される分野でも、上記技術を基にして、装置規模を大きくすることにより、対応可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、陽極材料の少なくとも一部として導電性ダイヤモンドを使用すると、オゾンや過酸化物などの電解種を高濃度で溶解した電解水を電解により高効率で生成でき、この電解水を対象物に噴出又は噴霧することにより高濃度電解種での殺菌が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に本発明の電解水噴出装置の各構成要素に関し説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
陽極
本発明の電解ユニットは陽極と陰極及び必要な隔膜で構成される。
このうちの陽極材料の全部又は一部を導電性ダイヤモンドで構成し、この陽極材料を陽極基材に担持して陽極とする。
ダイヤモンドは熱伝導性、光学的透過性、高温かつ酸化に対しての耐久性に優れており、特にドーピングにより電気伝導性の制御も可能であることから、半導体デバイス、エネルギー変換素子として有望とされている。ダイヤモンド電極は水の分解反応に対しては不活性であり、前記文献に記載されているとおり、電解酸化では酸素以外にオゾン、過酸化水素の生成が報告されている。
ダイヤモンド触媒は陽極の一部に存在すればよく、前記基材の一部が露出していても支障はない。
基材としてはSi(単結晶,多結晶)のみならず、Nb、Ta、Zr、Tiや、Mo、W、黒鉛、各種カーバイドなどが使用可能であり、用途によって選択できる。メッシュやパイプ、棒、ビーズなど従来汎用されている任意形状の基材表面へ陽極材料を担持できる。
【0027】
代表的なダイヤモンドの製法である熱フィラメントCVD法による陽極の製造について説明する。
炭素源となるメタンCH4など炭化水素ガス、或いはアルコールなどの有機物を用い、CVDチャンバー内に水素ガスと共に送り込み、還元雰囲気に保ちながら、フィラメントを熱し、炭素ラジカルが生成する温度1800〜2400℃に加熱する。このときダイヤモンドが析出する温度(750〜950℃)領域に電極基材を設置する。水素に対する炭化水素ガス濃度は0.1〜10vol%、圧力は20hPa〜1013hPa(1気圧)が好ましい。
ダイヤモンドに良好な導電性を付与するために、原子価の異なる元素、例えばホウ素(B)やリン(P)を微量添加することは不可欠であり、その好ましい含有率は10〜10000ppmであり、更に好ましくは100〜3000ppmである。
ホウ素の原料化合物としてトリメチルボロン[(CH3)3B]を用いることができるが、毒性の少ない酸化ホウ素B23も使用でき、リンの原料化合物には5酸化2リンP25などが利用できる。
【0028】
陰極
陰極反応は主に水素発生であり、水素に対して脆化しない電極触媒の使用が好ましく、白金族金属、ニッケル、ステンレス、チタン、ジルコニウム、金、銀、カーボンなどが好ましい。陰極基材はステンレス、ジルコニウム、カーボン、ニッケル、チタン、ダイヤモンドなどの金属に限定される。本発明の電解水噴出装置では、陰極はオゾンや過酸化物の溶解した水と接触する配置となるため、酸化耐性に優れた材料の使用が好ましい。
【0029】
隔膜
電極反応で生成した活性な物質を対極と接触させずに安定に保つために中性隔膜やイオン交換膜成分を電極間に介在させ利用することが好ましい。
隔膜はフッ素樹脂系、炭化水素樹脂系のいずれでも良いが、オゾンや過酸化物耐食性の面で前者が好ましい。イオン交換膜は、前述の通り、陽極、陰極で生成した物質が反対の電極で消費されるのを防止するとともに、液の電導度の低い場合でも電解を速やかに進行させる機能を有するため、伝導性の乏しい純水などを原料として利用する場合には必須となる。
【0030】
電極・隔膜の形状
電解ユニットはチューブにより形成された、原料水の吸引搬送経路(搬送チューブ)に収納することが好ましい。
両電極と隔膜の形状や相互の位置関係は電解水生成に支障が生じない限り特に限定されない。
棒状の陽極を使用する場合には、水流を確保するため、イオン交換膜は幅1〜10mmの帯状とし、これを間隔1〜10mmに保ちつつ、前記棒状陽極に螺旋状に配置し巻きつけることが好ましい。この場合、陰極は線状とし、帯状の隔膜の陽極と反対側に接触させる。
【0031】
電極の形状は平板でもよいが、隔膜を使用する場合には原料水を流通させる開口を有することが好ましく、溝か孔加工を施す。また、電極が平行平板であれば、生成するガス成分の除去のため、及び、原料である電解液成分を供給するために、隔膜を多孔性にすることが好ましい。
固体のイオン交換能を有する多孔性材料(固体高分子電解質)を電極間に充填してもよい。多孔性材料の例としては、市販のイオン交換樹脂粒子があり、炭化水素系樹脂としてはスチレン系、アクリル酸系、芳香族重合体などがあるが、耐食性の面からはフッ素樹脂製が好ましい。また適当な多孔性支持部材にイオン交換能を有する成分を形成することも可能である。ウェブ状に繊維化した材料も利用しやすい。材料の空隙率としては液の均一な分散と抵抗率の考慮から20〜90%が好ましい。孔或いは材料粒子のサイズは0.1〜10mmが好ましい。
【0032】
電解条件
生成した過酸化物の安定性から電解温度は0℃から60℃が好ましく、電流密度は0.01〜1A/cm2が好ましい。電極間距離は抵抗損失を低下させるためになるべく小さくすべきであるが、水を供給する際の圧力損失を小さくし、流れ分布を均一に保つために0.1〜5mmにするのが好ましい。
後述するチューブにより形成された、電解ユニットを有する被電解水の搬送チューブの材料は、PP、PVC、PEなどの炭化水素系樹脂、フッ素系樹脂などが好ましい。原料水を貯留するタンクを設置する場合、タンク材質は原料水により侵されない材料から選択する。
【0033】
原料水と生成電解水
本発明では特に電解質を溶解させる必要はなく、純粋なオゾン水を得るために、イオン交換樹脂成分を有する電解ユニットを用いて、蒸留水、イオン交換水などを原料として使用できる。
容器に収容される溶液(原料水)が純水の場合、この純水の水質は通常のイオン交換樹脂を利用して得られる水質であることが好ましく、導電率として表わすと、0.1MΩcm以上が好ましく、特に1MΩcm以上がより好ましい。純水以外に次亜塩素酸や過酸化物を生成するために電解質溶液を用いることができる。このような塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩酸、硫酸、水酸化ナトリウム、アンモニア等から選ばれる一種又は二種以上をあげることができる。また、原料水における塩の濃度は0.1〜10重量%とすることが好ましい。
【0034】
生成する電解水は目的により組成・濃度を制御しうる。食品処理を目的とする場合には、厚生省指定のアルカリの電解次亜塩素酸水や微酸性電解水、あるいはオゾン水として製造するべきであり、殺菌・漂白用であれば、対象に従って適切な過酸化物を生成できるよう電解質を選択すればよい。得られる電解水中の次亜塩素酸濃度は1〜1000ppm、オゾン濃度は0.1〜100ppm、過硫酸濃度は1〜1000ppm、過炭酸濃度は1〜1000ppmであることが望ましい。これらの濃度より小さい場合、殺菌効果が現れないことがある。
【0035】
次亜塩素酸を電解により製造する場合、溶液が酸性であると、溶液の電気分解により次亜塩素酸塩よりも次亜塩素酸が多く存在し、溶液がアルカリ性であると、次亜塩素酸よりも次亜塩素酸塩が多く存在することになる。また、溶液の液性によって殺菌力が異なり、一般には、アルカリ性溶液よりも酸性溶液の方が殺菌力の高い場合が多く、特に芽胞菌等にはアルカリ性溶液よりも酸性溶液の殺菌力が高い。これに対し、カビに対する殺菌力は酸性溶液よりもアルカリ性溶液が高い。そこで、噴出又は噴霧対象物に応じて殺菌力を向上させるため、溶液の液性を酸性又はアルカリ性に適宜調整することが好ましい。
溶液を酸性に調整する場合、溶液に強酸を添加して酸性を過度に強くすると、次亜塩素酸が分解して塩素ガスが発生し、次亜塩素酸の殺菌力を担う酸化力が損なわれる。次亜塩素酸の酸化力を維持しつつ殺菌力を高めるためには、溶液を20℃でpHを3〜7に調整することが好ましい。また、このようなpHに溶液を調整するためには、解離度の低い弱酸の水溶性の有機酸を使用することが、pH制御の容易性の点から好ましい。ここで、水溶性の有機酸としては、コハク酸、乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸等をあげることができる。
【0036】
アルカリ性に調整するためには、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム塩などを添加することが好ましい。炭酸塩は電解により過炭酸に酸化される。
溶液には、さらに殺菌力を向上させるため、界面活性剤を添加してもよい。溶液に界面活性剤を添加すると、電気分解後の溶液の噴出又は噴霧対象物に対する濡れ性を向上させ、カビや菌の細胞膜との親和性も向上するので、殺菌効果がさらに向上する。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩等の陰イオン界面活性剤、塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤、アミンオキサイド(例えばアルキルジメチルアミンオキサイド)等の両性界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の非イオン界面活性剤等を使用することができる。界面活性剤の溶液における濃度は、0.01〜10重量%とすることが好ましい。
【0037】
溶液には、この他に、殺菌力や清涼感を向上させる等のためにアルコールを添加してもよく、また、必要に応じて香料、色素、界面活性剤以外の殺菌剤、増粘剤、酵素、漂白剤、キレート剤、塩素化合物以外の電解質、防錆剤、ビルダーおよびエタノールやパラペンなどの防腐剤等を添加してもよい。特に、保存安定性の面からは電解水が防腐剤を含有することが好ましい。
また、炭酸、酢酸、エタノールなどを溶解させておくと、オゾンの利用効率、安定性が向上することが知られている。これはそれらのオゾン溶解度が水の溶解度より大きくオゾンガスを有効にオゾン水として利用できること、または、オゾン分解を加速するOHラジカルをトラップする作用があり、オゾン水を安定化するためである。従って、これらの物質を原料水に適量溶解させておくことは好ましいことである。
【0038】
水道水、井戸水、海水などの金属イオンを多く含む原料水では、陰極表面に水酸化物或いは、炭酸化物が沈殿し反応が阻害される恐れがある。また陽極表面にはシリカなどの酸化物が析出する。これを防ぐために、逆電流を適当な時間(1分から1時間)ごとに与えることにより、陰極では酸性化し、陽極ではアルカリ化して、発生ガス及び供給水の流動により反応が加速され、析出物の脱離反応が容易に進行する。
電極への電圧の印加方向を反転する手段が一体的に形成されているものでも、分離して形成されているものでも、何れでもよい。
水道水などに含まれる硬度成分をそのまま容器に供給すると、長期間には膜、陰極に付着し通電を妨げ、また、スプレー内の目詰まりを発生する可能性がある。これを防ぐ目的で、チューブや、容器内にイオン交換樹脂或いはまた活性炭を付属することは好ましい。酸性であれば不要となる。間欠的に容器を酸洗浄することも好ましい。
【0039】
スプレー装置
本発明の電解水噴出装置あるいは電解水生成スプレー装置は、原料水を収容する容器内の搬送チューブ内部に電極と必要な隔膜を含む電解ユニットを有することが好ましい。前記容器の開口部にはヘッドが接続され、当該ヘッド内には、生成した電解水を噴出又は噴霧させるノズルが設置されている。
前記ヘッド内には、電池を収容しても良いが、電源として電池を用いずに、トリガー等の操作により電気分解のための電力を発電する手段を備えることもできる。該手段としては、例えば、トリガーと連動して作動するモーターが挙げられ、該モーターは通常トリガースプレー内に設けられ、人力によるトリガー駆動でモーターが回転してエネルギーを発生させ、このエネルギーを電解に利用する。
電池駆動の場合、電池は充電可能な二次電池でもよい。また、交流電源から直流電力を供給できるアダプターを利用して稼動させることも可能である。
更に本発明装置は、電気分解が実行されていることを表示する手段を持つことができる。該手段の例としては、トリガーの動作と連動して通電中に表示されるLEDランプが挙げられる。
前記搬送チューブの容器側先端は先細形状となっていることが好ましく、他端は前記ヘッドに接続される。
チューブ下部には逆止弁を設け、容器内の液が逆流し容器内の膜が乾燥することを防止することは好ましい。また、下部を長くし、折り返しをつけ、これを防止することも好ましい。
本発明装置は、トリガータイプとすることが望ましいが、トリガータイプ以外でも良い。
【0040】
本装置では、トリガー操作等によりスイッチがONとなり回路に電流が流れ、その結果、電解ユニットの電極間に電流が流れて電解が行われ、搬送チューブ内の原料水はほぼ瞬時に電気分解されて電解水に変換され、且つこの電解水はピストン・シリンダー機構によりヘッドのノズルから、必要に応じてポンプ等の動力を利用して、外部に霧状又は液状で放出される。すなわち、噴霧(噴出)操作(例えばトリガーの操作)と連動して電気分解が行われる。トリガーの操作開始から1秒以内で電気分解により生成した電解水を噴霧(噴出)することが好ましい。
【0041】
印加する電圧・電流の大きさは、噴霧(噴出)対象物、消臭あるいは殺菌等の噴霧(噴出)目的に応じて所定の殺菌力を得るために適した濃度、電気分解される溶液の容積等に応じて、適宜定める。1回のトリガー操作で0.1〜1ccの電解水を噴霧(噴出)し、電極間には3〜25V程度を印加することが望ましい。回路部に、電極に印加される電圧を可変にする手段を形成することもできる。
電極への電力の印加を入力・切断するスイッチは、使用時にのみ電圧が掛かるように、トリガーを引くと自動的にスイッチがONとなり、トリガーを離すとスイッチがオフとなるように、トリガースプレー内に設けられても良い。
【0042】
スプレー装置としてトリガースプレーを設けた本発明のオゾン生成スプレー装置は、種々の態様をとることができる。
さらに、トリガースプレーには種々の機構のものがあり、その機構に応じてトリガースプレー内の液流路やトリガーの支点の位置等が異なるが、本発明ではトリガーを使用する場合、任意のトリガースプレーとすることができる。
【0043】
以上説明した本発明の電解水生成スプレー装置の一例として次の装置がある。
原料水を収容する容器本体の口部に、トリガースプレー(ヘッド)が装着されてなり、該トリガースプレーは、互いに連通する水平管路及び垂直管路が設けられると共に該水平管路及び垂直管路に液状物を供給するピストン・シリンダー機構が配設されたスプレー本体と、該スプレー本体に回動自在に装着されたトリガーと、上記水平管路の前方部に装着されたスピンエレメントと、該スピンエレメントの前方部に装着されたノズル部材と、上記垂直管路に装着されたインテイク(取水部材)と、該インテイクに装着されたチューブとを備え、且つ上記スプレー本体及び上記インテイクが、上記容器本体内に外気を導入する外気導入孔を有し、上記チューブ内に前記原料水を電気分解する電極を有する電解ユニットを備え、且つ噴霧操作毎に電気分解により生成したオゾン、過酸化物などの電解生成物含有溶液を噴霧する。
【0044】
次に本発明の電解水噴出装置(電解水スプレー装置)を図示の例に基づいて説明する。
図1は本発明の電解水スプレー装置の第1の例を示す概略縦断面図、図2は図1の装置の隔膜及び電極を示す拡大図、図3は本発明の電解水スプレー装置の第2の例を示す概略縦断面図、図4は図3の装置の電極を示す斜視図である。
【0045】
図1及び図2に示す電解水スプレー装置1は、原料水2を収容する容器3とこの容器3の上部開口に連結されたヘッド4とから成っている。前記容器3は、硬質なものでも、軟質なものでも良いが、各種硬質樹脂、金属、ガラス、セラミックス等の硬質材料で形成することが好ましい。容器3の容量は、100〜1000ml程度が好ましく、200〜500mlが更に好ましい。原料水2は、純水でも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の電解質が溶解されていても良い。
【0046】
前記容器3内には、下端が原料水2内に開放され、上端が縮径して前記ヘッド4内に達する搬送チューブ5が設置されている。この搬送チューブ5内には、陽極、陰極及び隔膜からなる電解ユニット6が収容されている。この電解ユニット6は図2に示すように、 導電性ダイヤモンド触媒を担持した金属棒である陽極7の周囲に、イオン交換膜から成る隔膜8の帯を巻き、この隔膜8の周囲に金属線から成る陰極9を巻き付けて構成されている。図2では陽極7の周囲に巻き付けた隔膜8の間隔が一定になっていないが等間隔にしても良い。
搬送チューブ5の上部の縮径部は垂直管路10として機能し、その上端はヘッド4内の水平管路11に連通している。
【0047】
水平管路11の他端側には、噴霧ノズル12が配置され、当該噴霧ノズル12のやや内方にはトリガーアーム13の支点14が設けられ、この支点14を中心にトリガーアーム13が回動するようになっている。当該トリガーアーム13には内向きにピストン杆15が接続され、トリガーアーム13の動きに応じてシリンダー16内を移動するようになっている。
17はトリガーアーム13に接触するよう設置されたトリガー連動スイッチ、18はヘッド4内に設置された電源用電池、19は電気分解の進行時にのみ点灯するLEDである。
【0048】
このような構成から成る電解水スプレー装置1を手で保持しながら、トリガーアーム13に人差し指と中指で内向きに力を加えると、トリガーアーム13が支点14を中心に移動して、トリガー連動スイッチ17がONになって電解ユニット6に通電される。それと同時にシリンダー16内のピストンが動いて、容器3内の原料水2を搬送チューブ5内の電解ユニット6に導いてこの原料水2を電気分解して電解水を生成する。この電解ユニット6の陽極7表面には導電性ダイヤモンド層が形成されており、この導電性ダイヤモンドにより高濃度オゾン等が溶解した電解水が得られる。
生成した電解水は瞬時に垂直管路10及び水平管路11を通って噴霧ノズル12から殺菌対象に噴霧される。
【0049】
図3の電解水スプレー装置は図1の装置の変形例であり、図1の装置と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。また図4aは、図3の陽極の拡大図、図4bは他の陽極の拡大図である。
この電解水スプレー装置21の容器3には、下端が先細状になって原料水2内に開放され、上端が縮径して前記ヘッド4内に達する搬送チューブ22が設置されている。この搬送チューブ22内には、多数の開口を有し導電性ダイヤモンド層を形成した陽極24と平板状の陰極26、及び当該陽極24及び陰極26を区画する多孔性の隔膜27から成る電解ユニット28が収容されている。
この電解水スプレー装置21でも、トリガーアーム13に力を加えると、トリガー連動スイッチ17がONになって電解ユニット28に通電される。それと同時に、容器3内の原料水2を搬送チューブ22内の電解ユニット28に導いてこの原料水2を電気分解して電解水を生成する。生成した電解水は瞬時に垂直管路10及び水平管路11を通って噴霧ノズル12から殺菌対象に噴霧される。
なお前記陽極24の替わりに、平板を折り曲げて溝25が形成された陽極24’を使用しても良い。
【0050】
次に本発明の電解水スプレー装置による電解水生成及び電解水による殺菌に関する実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
[実施例1]
陽極として導電性ダイヤモンド触媒(ダイヤモンドの厚さ3μm、ホウ素ドープ濃度500ppm)を形成したニオブ製の棒(直径2mm、長さ10cm)を用い、隔膜としてイオン交換膜(デュポン製Nafion350、厚さ0.4mm、幅1mm)の帯を前記陽極に巻き、陰極として、市販の白金線(直径0.5mm)を前記隔膜の上から巻き、図1及び2に示すように、トリガー式のスプレー装置内で、PE樹脂製搬送チューブ内に、陽極−膜−陰極を一体化した接合体(電解ユニット、有効電極面積は6cm)を固定した。
トリガー式スプレー装置のヘッド内には9Vの角型電池を搭載し、回路部内で電極端子と可変抵抗、スイッチを配線で接合し、容器内に純水500ccを満たした。トリガーを引くと、スイッチが接続し電池と前記電解ユニット間に電流が流れ、同時に純水(電解水)が噴霧された。噴霧量は約0.5ccであり、この間に流れた電気量は0.15C(0.5s×0.3A)であった。電解ユニットの端子間電圧は7Vであった。
【0052】
10回操作を繰り返し、噴霧した電解水約5cc中のオゾン濃度は2.5ppmであった(電流効率は10%に相当)。トリガー操作を2000回繰り返した後の、オゾン水濃度も2.5ppmであった。1個の電池容量0.1Ahr(360C)で、2400回分の操作が可能であった。オゾン水をガラス容器に密閉し室温保管したところ、2時間後にオゾン濃度は0.2ppm以下まで減少した。
なお各実施例及び各比較例におけるオゾン濃度および次亜塩素酸濃度は紫外分光光度計を用いて定量した。
【0053】
[実施例2]
容器内に、0.1g/lの酢酸を含む純水を満たしたこと以外は実施例1と同様に試験したところ、生成した溶液中のオゾン濃度は3.5ppmであった。電解ユニット端子間電圧は7V、電流は0.3Aであった。オゾン水をガラス容器に密閉し室温保管したが、2時間後も初期濃度を維持した。2000回トリガー操作を繰り返したところ、それぞれの電流効率は初期とほぼ等しかった。
【0054】
[実施例3]
容器内に、2g/lの食塩を含む水道水を満たしたこと以外は実施例1と同様に試験したところ、生成した溶液中のオゾン濃度は0.8ppm、次亜塩素酸濃度は20ppmであった。電解ユニット端子間電圧は6.5V、電流は0.35Aであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、それぞれの電流効率は初期とほぼ等しく、電解ユニットの陰極上にはCa、Mgの化合物の析出が観察された。
【0055】
[実施例4]
容器内に、2g/lの食塩と0.1g/lの酢酸を含む水道水を満たしたこと以外は実施例1と同様に試験したところ、生成した溶液中のオゾン濃度は1ppm、次亜塩素酸濃度は20ppmであった。電解ユニット端子間電圧は6.5V、電流は0.35Aであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、それぞれの電流効率は初期とほぼ等しく、電解ユニットの陰極上にはCa、Mgの化合物の析出は観察されなかった。
【0056】
[実施例5]
容器内に、0.5g/lの硫酸ナトリウムを含む純水を満たしたこと以外は実施例1と同様の試験を実施したところ、生成した溶液中のオゾン濃度は1.6ppm、過硫酸濃度は20ppmであった。過硫酸は酸性下で硫酸チタンと反応し生成した着色溶液の吸光度を計測することにより定量した。電解ユニット端子間電圧は6V、電流は0.4Aであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、それぞれの電流効率は初期とほぼ等しかった。
【0057】
[実施例6]
容器内に、0.5g/lの炭酸ナトリウムを含む純水を満たしたこと以外は実施例1と同様に試験したところ、生成した溶液中のオゾン濃度は1.6ppm、過炭酸濃度は15ppmであった。過炭酸は酸性下で硫酸チタンと反応し生成した着色溶液の吸光度を計測することにより定量した。電解ユニット端子間電圧は6V、電流は0.4Aであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、それぞれの電流効率は初期とほぼ等しかった。
【0058】
[実施例7]
容器内に、コハク酸を50ppm、界面活性剤ラウリルジメチルアミンオキサイド〔アンヒトール20N、花王(株)製〕を50ppm添加したこと以外は実施例1と同様に試験した。電解ユニット子間電圧は7V、電流は0.3Aであった。生成した溶液中のオゾン濃度は3ppmであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、それぞれの電流効率は初期とほぼ等しかった。
【0059】
[比較例1]
陽極として酸化イリジウム(5g/m)触媒を形成したチタン製の棒を用いたこと以外は、実施例1と同様に純水を原料として試験したところ、電解ユニット端子間電圧は6V、電流は0.4Aであった。溶液中のオゾン濃度は0.1ppm以下であった。各実施例に比較してオゾン濃度は格段に小さかった。
【0060】
[比較例2]
酸化イリジウム(5g/m)触媒を形成したチタン製の棒を陽極として用い、0.1g/lの食塩を含む水道水を原料水として使用したこと以外は実施例3と同様に試験したところ、電解ユニット端子間電圧は5.5V、電流は0.45Aであった。生成した溶液中の次亜塩素酸濃度は24ppm、オゾン濃度は0.1ppm以下であった。実施例に比較して次亜塩素酸の生成効率は大きいが、オゾン濃度は格段に小さかった。
【0061】
[比較例3]
陽極として白金(20g/m)触媒を形成したチタン製の棒を用いたこと以外は、実施例1と同様に試験したところ、電解ユニット端子間電圧は6V、電流は0.4Aであった。溶液中のオゾン濃度は0.8ppmであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、オゾン濃度は0.4ppmに減少した。実施例に比較してオゾン濃度は格段に小さく、安定性に乏しかった。
【0062】
[比較例4]
陽極として白金(20g/m)触媒を形成したチタン製の棒を用い、0.1g/lの食塩を含む水道水を原料水として使用したこと以外は実施例3と同様に試験したところ、電解ユニット端子間電圧は5.5V、電流は0.45Aであった。生成した溶液中の次亜塩素酸濃度は3ppm、オゾン濃度は1ppmであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、オゾン濃度は0.4ppmに減少した。実施例に比較して次亜塩素酸の生成効率、オゾン濃度は小さかった。
【0063】
[比較例5]
電極として白金(20g/m)触媒を形成したチタン製の棒を用いたこと以外は実施例5と同様に電解したところ、電解ユニット端子間電圧は5.5V、電流は0.45Aであった。生成した溶液中のオゾン濃度は0.8ppm、過硫酸イオン濃度は1ppm以下であった。実施例に比較してオゾン濃度、過硫酸濃度とも小さかった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、オゾン濃度は0.4ppmに減少した。
【0064】
[比較例6]
電極として白金(20g/ m)触媒を形成したチタン製の棒を用いたこと以外は実施例6と同様に電解したところ、電解ユニット端子間電圧は5.5V、電流は0.45Aであった。生成した溶液中のオゾン濃度は0.6ppm、過炭酸濃度は2ppmであった。実施例に比較してオゾン濃度、過炭酸濃度とも小さかった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、オゾン濃度は0.3ppmに減少した。
【0065】
[実施例8]
陽極基材としてチタン製の棒(直径3mm、長さ10cm)を用い、導電性ダイヤモンド触媒(ダイヤモンドの厚さ3μm、ホウ素ドープ濃度1300ppm)を形成させ陽極とした。隔膜として親水性隔膜(住友電工製ポアフロン、厚さ0.2mm、幅1mm)の帯を前記陽極に巻き、陰極として、ステンレス線(直径0.5mm)を前記隔膜の上から巻き、実施例1と同様に、トリガー式のスプレー装置内で、PE樹脂製搬送チューブ内に固定し、容器内に0.5g/lの食塩を含む水道水を満たした。トリガーを引き、電解したときの電解ユニット端子間電圧5V、電流は0.5Aであった。次亜塩素酸の濃度は40ppmであった。2000回トリガー操作を繰り返したところ、電流効率は初期とほぼ等しかった。電解ユニットの陰極上にはCa、Mgの化合物の析出が観察された。
【0066】
[実施例9]
厚さ3μmの導電性ダイヤモンドを被覆した長さ10cm、幅5mm、厚さ1mmの導電性Si板陽極、陽極と同寸法のステンレス製板を陰極として用い、電極間には多孔性を有するイオン交換樹脂部材を隔膜として設け、これらの接合体を実施例1と同様にトリガースプレー装置の搬送チューブ内に配置した。電極間の距離は1mmとした。原料水は純水とした。噴霧量を約0.1ccに変更したこと以外は実施例1と同様のスプレーで、50回操作を繰り返し噴霧した。噴霧された溶液約5cc中のオゾン濃度は10ppmであった。
【0067】
[殺菌試験]
被験菌として大腸菌(E.coli IFO3972)又はセレウス菌(Bacillus cereus IFO13494)を用い、定法により処理を行い、得られた菌を試験に供した。大腸菌は、前培養した菌を一白金耳かきとり、SCD培地(日本製薬(株)製)に接種し、37
℃で24時間振トウ培養したものを遠心分離し、10cells/mlに調整したものを試験に用いた。また、セレウス菌は、SCD寒天培地(日本製薬(株)製)に前培養した菌を一白金耳かきとり、1mlの滅菌水に懸濁し、65℃、30分間の熱処理後、2回遠心分離洗浄を行ったものを試験に用いた。この試験用芽胞菌液を10cells/mlに調整した。
それぞれの菌を0.1ml採取し、それぞれ50mm×50mmのステンレス板(SUS304)の上に塗布した。実施例1のスプレー装置を使用し、実施例1〜7及び比較例1〜6の電解水を噴霧し、セレウス菌の場合は5分間、大腸菌の場合は1分間接触させた後、滅菌した綿棒で表面をふきとった。該綿棒を、チオ硫酸ナトリウム3.3%水溶液を添加したSCDLP培地(日本製薬(株)製)に浸漬し、付着物を十分に分散させた。37℃で48時間培養後、菌の生育の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:完全に滅菌されている(菌の生育が全く見られなかった)
×:滅菌が不完全である(菌の生育が見られた)。
実施例1〜7及び比較例1〜6の電解水のオゾン濃度と殺菌試験の結果を表1に纏めた。
【0068】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の電解水スプレー装置の第1の例を示す概略縦断面図。
【図2】図1の装置の隔膜及び電極を示す拡大図。
【図3】本発明の電解水スプレー装置の第2の例を示す概略縦断面図。
【図4】図4aは図3の装置の陽極の拡大図、図4bは他の陽極を例示する拡大図である。
【符号の説明】
【0070】
1、21 電解水スプレー装置
2 原料水
3 容器
4 ヘッド
5、22 搬送チューブ
6、28 電解ユニット
7、24、24’ 陽極
8、27 隔膜
9、26 陰極
12 噴霧ノズル
13 トリガーアーム
17 トリガー連動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料水を、陰極と少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成した陽極を有する電解ユニットで電解して電解水を生成させ、生成電解水を殺菌対象に噴出することを特徴とする電解水による殺菌方法。
【請求項2】
原料水として純水を用い、電解ユニットへの通電により電解水としてオゾン水を生成させる請求項1記載の殺菌方法。
【請求項3】
オゾン水のオゾン濃度が0.1ppm以上である請求項2記載の殺菌方法。
【請求項4】
印加する電圧を可変する手段を備え、電解水生成量を制御できるようにした請求項1記載の殺菌方法。
【請求項5】
原料水がpH調整剤と界面活性剤の少なくとも一方を含有する請求項1記載の殺菌方法。
【請求項6】
原料水を収容した容器と、陽極及び陰極を有する電解ユニットと、前記原料水を前記電解ユニットで電解して生成する電解水を噴出するヘッドとを含んで成る電解水噴出装置において、陽極の少なくとも一部を導電性ダイヤモンドで形成したことを特徴とする電解水噴出装置。
【請求項7】
原料水を収容した容器と、陽極及び陰極を有する電解ユニットと、前記原料水を前記電解ユニットで電解して生成する電解水を噴出するヘッドとを含んで成る電解水噴出装置において、少なくともその一部を導電性ダイヤモンドで形成した棒状陽極の周囲に、シート状の隔膜部材を設置し、その周囲に線状の陰極を配置した電解ユニットを使用することを特徴とする電解水噴出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−346203(P2006−346203A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176801(P2005−176801)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(390014579)ペルメレック電極株式会社 (62)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】