説明

殺菌灯付きパスボックス

【課題】 本発明は、複数の物品の受け渡しを行う場合であっても、それぞれの物品の表面に十分紫外線が照射されるようにすることで、十分な殺菌処理を行うことができる殺菌灯付きパスボックスを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の殺菌灯付きパスボックスは、所定雰囲気に設定された室内側と室外側に面してそれぞれ扉を有する箱体と、この箱体内面に設置した複数の殺菌灯からなり、この箱体を介して室内外間の物品の受け渡しを行うための殺菌灯付きパスボックスであって、前記箱体の内部に透光性を有する載置部材を上下方向に複数段設け、それぞれの載置部材上に載置される物品に対して上下方向およびこの物品の受け渡し方向に対する箱体側面の略水平方向から紫外線が照射されるように殺菌灯を設置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定雰囲気に設定された室内側と室外側に面してそれぞれ扉を有する箱体からなり、この箱体を介して室内外間の物品の受け渡しを行うパスボックスに関し、特に、複数の物品に対する殺菌効果を向上するようにした殺菌灯付きパスボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品関係の製剤工場、研究所等のクリーンルーム、または、バイオハザード施設等では、室内外間の物品の受け渡しを行う場合に、雑菌や微生物等の出入を阻止するためにパスボックスを用いている。例えば、特許文献1には、室内側と室外側に面してそれぞれ扉を有する箱体と、箱体の内面に設置した複数本の殺菌灯によって構成されたパスボックスが記載されている。図7に示すように、パスボックス14の箱体15の内面には、その上部の略中央部に1本の直管状の殺菌灯19aが設置され、物品の受け渡し方向に対する両側部の略中央部にそれぞれ1本ずつ直管状の殺菌灯19b,19cが設置され、その下部には等間隔で2本の直管状の殺菌灯19d,19eが設置されている。更に、このパスボックス14には、両扉18,20の内面の略中央部にもそれぞれ1本ずつ殺菌灯19f,19gが設置されている。このようなパスボックス14を介して物品の受け渡しを行う場合は、例えば、先ず、室外側の扉を開けて箱体15内の載置部材16上に物品を載置し、この扉を閉めて物品に紫外線を照射した後、室内側の扉を開けて物品を取り出し、室内に搬入するようにしている。
【特許文献1】特開2003−284763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、例えば、特許文献1に記載されたようなパスボックスを介して複数の物品の受け渡しを行う場合、次のように、各物品の殺菌処理が不十分になる問題があった。
例えば、図7に示すように、パスボックス14の箱体内に4つの物品A,B,C,Dをそれぞれ2個ずつ積み重ねて受け渡しを行った場合は、物品の重なり合う面には紫外線が照射されないので、殺菌処理が不十分になるという問題があった。また、積み重ねられた下段の物品A,Cの互いに隣り合う側面は、上部の殺菌灯19aから離れているために上方向からの紫外線が届きにくく、また、物品の受け渡し方向に対する両側部に設置された殺菌灯19b,19cから照射される紫外線も、隣り合う上段の物品B,Dに遮られて届きにくいので、殺菌処理が不十分になるという問題があった。
そこで、本発明は、複数の物品の受け渡しを行う場合であっても、それぞれの物品の表面に十分紫外線が照射されるようにすることで、十分な殺菌処理を行うことができる殺菌灯付きパスボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1記載の通り、所定雰囲気に設定された室内側と室外側に面してそれぞれ扉を有する箱体と、この箱体内面に設置した複数の殺菌灯からなり、この箱体を介して室内外間の物品の受け渡しを行うための殺菌灯付きパスボックスであって、前記箱体の内部に透光性を有する載置部材を上下方向に複数段設け、それぞれの載置部材上に載置される物品に対して上下方向およびこの物品の受け渡し方向に対する箱体側面の略水平方向から紫外線が照射されるように殺菌灯を設置したことを特徴とする。
また、請求項2記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、上段の載置部材に、その上に載置される物品に対して下方向から、かつ、その下段の載置部材上に載置される物品に対して上方向から紫外線が照射されるように殺菌灯を設置したことを特徴とする。
また、請求項3記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1または2記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、前記殺菌灯を物品の受け渡し方向に沿ってトンネル状に紫外線を照射できるように設置したことを特徴とする。
また、請求項4記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1乃至3のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、載置部材上に載置される物品に対して上下方向から紫外線を照射するための殺菌灯を物品の受け渡し方向と直交するように設置したことを特徴とする。
また、請求項5記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1乃至4のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、更に、前記両扉の内面にそれぞれ殺菌灯を設置したことを特徴とする
また、請求項6記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1乃至5のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、前記殺菌灯を両扉が閉状態のときにのみ点灯するようにしたことを特徴とする。
また、請求項7記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項5または6記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、扉の内面に設置した殺菌灯は、扉が閉状態となったときに接続される、扉と箱体との間に設けた接点を介して電流が供給されることで点灯するようにしたことを特徴とする。
また、請求項8記載の殺菌灯付きパスボックスは、請求項1乃至7のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックスにおいて、前記箱体の天井部および/または側部に設けられた吹出口にファンフィルタを設置し、清浄化した空気を前記吹出口から、前記箱体内に循環供給するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の殺菌灯付きパスボックスは、箱体の内部に透光性を有する載置部材を上下方向に複数段設け、それぞれの載置部材上に載置される物品に対して上下方向およびこの物品の受け渡し方向に対する箱体側面の略水平方向から紫外線が照射されるように殺菌灯を設置したことによって、複数の物品の受け渡しを行う場合であっても、それぞれの物品の上下面および物品の受け渡し方向に対する箱体側面に対向する側面、更に、物品の互いに隣り合う側面にも紫外線が届くので、十分な殺菌処理を行うことができる。
また、上段の載置部材に殺菌灯を設置したことによって、その上に載置される物品に対しては下方向から紫外線を照射することができ、その下段の載置部材上に載置される物品に対しては上方向から紫外線を照射することができ、どの載置部材上に載置される物品に対しても上下方向から紫外線が届くので、十分な殺菌処理を行うことができる。
また、殺菌灯を物品の受け渡し方向に沿ってトンネル状に紫外線を照射できるように設置した場合は、物品を取り囲むように効率的に紫外線が届くので、殺菌処理時間を短縮することができる。
また、載置部材上に載置される物品に対して上下方向から紫外線を照射するための殺菌灯を物品の受け渡し方向と直交するように設置することで、例えば載置部材上に受け渡し方向に沿って直列に複数の物品を載置する場合でも、効率的に物品の互いに隣り合う側面に紫外線が届くので、十分な殺菌処理を行うことができる。
更に、箱体の両扉の内面にそれぞれ殺菌灯を設置した場合は、物品の受け渡し方向からも紫外線が照射されるようにすることができるので、殺菌効果を向上することができる。
殺菌灯を両扉が閉状態のときにのみ点灯するようにした場合は、紫外線を箱体の外部に照射することがないので、安全な殺菌処理を行うことができる。
また、扉の内面に設置した殺菌灯を、扉が閉状態となったときに接続される、扉と箱体との間に設けた接点を介して電流が供給されることで点灯するようにした場合は、安全性をより向上することができる。
また、前記箱体の天井部および/または側部に設けられた吹出口にファンフィルタを設置し、清浄化した空気を前記吹出口から、前記箱体内に循環供給するようにした場合は、箱体内においてバクテリア等が生存し易い粉塵を少なくして、汚染を低減することができ、殺菌効果を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の実施の形態を図1〜図6に基づき説明する。図1は、本発明のパスボックスを示す斜視図であり、図2は、扉を開けた状態のパスボックス1の正面図である。
図1に示すように、パスボックス1は、室内側と室外側に面してそれぞれ扉3,4を有する箱体2を備え、この箱体2の内部に透光性を有する載置部材を上下方向に2段設け、25本の直管状の殺菌灯(8a〜8k,8m〜8z)を設置した構成となっている。即ち、箱体2内の下段には載置部材5を設け、上段には載置部材7を設けている。下段の載置部材5は、枠体内に丸棒を並列に配置させたスリット台である。また、上段の載置部材7は、枠体に金網を上下に2枚張ったスリット台である。この載置部材7は、箱体2の受け渡し方向に対する側面の両面の略中央部のそれぞれに2本ずつ設けたレール6で支持されるようにしている。パスボックス1の箱体2の内面の上部には、上段の載置部材7上に載置される物品に対して上方向から紫外線が照射されるように3本の殺菌灯8a,8b,8cを物品の受け渡し方向と直交するように設置し、両側部には物品の受け渡し方向に対する箱体側面の略水平方向(載置部材7上に載置される物品に対して物品の受け渡し方向に対する箱体側面の水平方向よりもやや上方向)から紫外線が照射されるように直列にそれぞれ2本ずつ殺菌灯8d,8e,8f,8gを設置している。また、載置部材7にはその上に載置される物品に対して下方向から紫外線が照射されるように5本の殺菌灯8h,8i,8j,8k,8mを物品の受け渡し方向と直交するように設置している。この5本の殺菌灯8h,8i,8j,8k,8mによって、下段の載置部材5上に載置される物品に対しては上方向から紫外線が照射される。更に、パスボックス1の箱体2の内面の下部には、下段の載置部材5上に載置される物品に対して下方向から紫外線が照射されるように5本の殺菌灯8n,8o,8p,8q,8rを物品の受け渡し方向と直交するように設置し、両側部には物品の受け渡し方向に対する箱体側面の略水平方向(載置部材5上に載置される物品に対して物品の受け渡し方向に対する箱体側面の水平方向よりもやや上方向)から紫外線が照射されるように直列にそれぞれ2本ずつ殺菌灯8s,8t,8u,8vを設置している。このように、パスボックス1の箱体2の内面の上下部と載置部材7には、殺菌灯を物品の受け渡し方向と直交するように設置しているため、例えば上下段の載置部材5,7上に受け渡し方向に沿って直列に複数の物品を載置する場合でも、効率的に物品の互いに隣り合う側面に紫外線が届くので、十分な殺菌処理を行うことができる。
従って、図2と図3に示すように上下段の載置部材5,7上に物品A,B,C,Dを物品の受け渡し方向に沿って直列に載置した場合であっても(物品Cは物品Aの奥かつ物品Dの下に位置するため図略)、上段の載置部材7上に直列に載置された物品B,Dには、殺菌灯8a,8b,8cによって上方向からそれぞれの上面に十分な紫外線が照射され、更に、両者の互いに隣り合う側面にも両者の間に位置する殺菌灯8bによって上方向から十分な紫外線が照射される。また、殺菌灯8d,8e,8f,8gによって物品の受け渡し方向に対する箱体側面の水平方向よりもやや上方向から物品B,Dの箱体側面に対向する側面に十分な紫外線が照射され、更に、両者の互いに隣り合う側面の少なくとも一部にも水平方向よりもやや上方向から紫外線が照射される。また、殺菌灯8h,8i,8j,8k,8mによって下方向から物品B,Dの下面に十分な紫外線が照射され、更に、両者の互いに隣り合う側面にも両者の間に位置する殺菌灯8jによって下方向から十分な紫外線が照射される。また、この殺菌灯8h,8i,8j,8k,8mによって下段の載置部材5上に直列に載置された物品A,Cの上面に十分な紫外線が照射され、更に、両者の互いに隣り合う側面にも両者の間に位置する殺菌灯8jによって上方向から十分な紫外線が照射される。また、殺菌灯8s,8t,8u,8vによって物品の受け渡し方向に対する箱体側面の水平方向よりもやや上方向から両者の箱体側面に対向する側面に十分な紫外線が照射され、更に、両者の互いに隣り合う側面の少なくとも一部にも水平方向よりもやや上方向から紫外線が照射される。また、殺菌灯8n,8o,8p,8q,8rによって下方向から物品A,Cの下面に十分な紫外線が照射され、更に、両者の互いに隣り合う側面にも両者の間に位置する殺菌灯8pによって下方向から十分な紫外線が照射される。よって、載置部材5,7上に載置された物品A,B,C,Dのそれぞれの上下面および物品の受け渡し方向に対する箱体側面に対向する側面に十分な紫外線が照射され、更に、物品の互いに隣り合う側面にも効率的に紫外線が照射されて、十分な殺菌処理を行うことができる。なお、載置部材上に載置する物品は、箱体の内面と扉の内面と他の物品のそれぞれから、例えば、100mm好ましくは150mm以上離間するようにして載置することが好ましい。
【0007】
図1に示したパスボックス1においては、箱体2に上下方向に2段の載置部材5,7を設けたが、載置部材の段数は3段以上であってもよい。
また、本実施の形態におけるパスボックス1は、載置部材7と箱体2の内面の下部に5本ずつ殺菌灯を設置したが、殺菌灯の本数は5本を超えてもよく、また、5本未満であってもよい。本実施の形態のように、複数本の殺菌灯を設置する場合は、物品の表面に均等に紫外線が照射されるように、殺菌灯を等間隔で設置することが好ましい。
【0008】
透光性を有する載置部材としては、例えば、図1や図2に示すような、枠体内に丸棒を並列に配置させたスリット台や、枠体にクランプ金網等を上下に2枚張ったスリット台を用いることができる。その他、例えば、物品を載置する部分としてパンチング板に凸部または凹部を形成した載置台や丸網棒製棚(ワイヤーラック)等を用いてもよい。
【0009】
殺菌灯は、箱体の内面に物品の受け渡し方向に沿ってトンネル状に紫外線を照射できるように設置することが好ましい。物品を取り囲むように効率的に紫外線が届くので、殺菌処理時間を短縮することができる。
また、載置部材上に載置される物品に対して上下方向から紫外線を照射するための殺菌灯は、物品の受け渡し方向と直交するように設置することが好ましい。載置部材と箱体の内面の上下部に設置される殺菌灯として直管状の殺菌灯を物品の受け渡し方向と直交するように設置した場合は、受け渡し方向に沿って直列に複数の物品を載置する場合でも、物品の互いに隣り合う側面に紫外線を届きやすくすることができるので殺菌処理時間を短縮することができる。
殺菌灯としては、波長253.7nmの紫外線を豊富に発生するものを用いることが好ましいが、この波長を発生するものに限定されるものではない。また、図1に示す実施の形態において、箱体の内面に設置した殺菌灯は、安定器の上にソケットを設けて蛍光管を固定したものである。また、載置部材に設置した殺菌灯は、安定器を別置きにしてソケットに蛍光管を固定し、この蛍光管から360°方向に紫外線を照射することができるようにしたものである。これにより、載置部材上に載置される物品に対しては下方向から十分な紫外線を照射することができ、その下段の載置部材上に載置される物品に対しては上方向から十分な紫外線を照射することができる。
なお、殺菌効果は紫外線照度と紫外線照射時間に比例することが知られている。微生物を死滅させるのに必要な紫外線量は、紫外線照度と紫外線照射時間の積で求められる。紫外線照度は殺菌灯の寿命と共に少なくなるので、照射時間が長くなれば殺菌効果は徐々に低下する。従って、安定した殺菌効果を得るには、例えば、殺菌時間を任意に設定できる紫外線照射タイマーと運転時間を積算する殺菌灯寿命管理計(積算タイマー)を組み合わせて使用し、殺菌灯の運転時間を管理して、紫外線照度が低下しているようであれば、照射時間を長くするといった操作を行うことが好ましい。
【0010】
殺菌灯は、更に、パスボックスの両扉の内面にもそれぞれ設置することが好ましい。例えば、図1に示したパスボックス1においては、上下段の載置部材5,7上に載置される物品に対して、物品の受け渡し方向から紫外線を照射することができるように、扉3の内面の上方に殺菌灯8wを、下方に殺菌灯8xを設置している。また、反対側の扉4の内面にも、扉3の内面に設置した殺菌灯8w,8xに対向する位置に殺菌灯8y,8zを設置している。
【0011】
パスボックス1の箱体の内面に設置した殺菌灯は、両扉が閉状態のときにのみ電流が供給されるようにすることで、両扉が閉状態のときにのみ点灯するようにすることが好ましい。両扉が閉状態のときにのみに殺菌灯が点灯するようにした場合は、紫外線がパスボックスの外部に照射されないので、安全性を向上することができる。
扉の内面に設置した殺菌灯は、扉が閉状態となったときに接続される、扉と箱体との間に設けた接点を介して電流が供給されることで点灯するようにすることが好ましい。例えば、図1に示したパスボックス1においては、扉3の内面に扉側接点aを設け、箱体2の端面に箱体側接点bを設け、扉3が閉状態のときにのみ、扉側接点aと箱体側接点bを介して扉3の内面に設置した殺菌灯8w,8xに電流が供給されることでこれらが点灯するようにしている。従って、これらの殺菌灯は、扉が閉状態のときにのみ点灯するので、外部に紫外線が照射されないことから、安全性をより向上することができる。
図4は殺菌灯に電流を供給する電気回路を示す図であり、図4に示すように、両扉の内面に設置した殺菌灯8w,8xと殺菌灯8y,8zは、両扉の内面のそれぞれに設けた扉側接点a,aと、箱体の両端面にそれぞれ設けた箱体側接点b,bが2つとも接続されたときにのみ、これらの接点を介して電流が供給されるようにしている。扉と箱体との間に設ける接点としては、例えば、蝶番状のドアコネクター等を用いることができる。また、箱体の内面に設置した殺菌灯8a〜8k,8m〜8zは、例えば、箱体の内面に設けたリミットスイッチcを介して両扉が閉状態となったときに電流が供給されるようにすることで、両扉が閉状態となったときにのみ点灯するようにすることが好ましい。
【0012】
また、箱体2の天井部に図示を省略した吹出口を設け、この吹出口にファンフィルタ10を設置し、清浄化した空気をこの吹出口から、箱体2内に循環供給するようにすることが好ましい。このように清浄化した空気を箱体2内に循環供給するようにしたことによって、箱体内においてバクテリア等が生存し易い粉塵を少なくすることができ、物品の汚染を低減して、殺菌効果を向上することができる。なお、吹出口は、箱体2の天井部に限らず、箱体2の側部に設けてもよく、天井部と側部の両方に設けてもよい。
【0013】
図5に示すように、パスボックス1は、例えば、箱体2の一端側がクリーンルーム21の外壁21aに形成した空間部に嵌め込まれ、箱体2の他端側の下部に脚部材9が設けられて、クリーンルーム21と一般室22の間に設置される。なお、パスボックス1は、クリーンルームと一般室の間に限らず、例えば、所定ガス雰囲気に設定された部室と一般室の間や、所定圧力雰囲気に設定された部室と一般室の間に設置することも可能である。
パスボックス1を介して室内外間の物品の受け渡しを行う場合、例えば、先ず、一般室22側の扉3を開放して、箱体2内の載置部材5,7上に物品を載置する。扉3が開放している状態のときは、殺菌灯は消灯状態となっている。扉3を閉めると、殺菌灯が点灯し、物品の表面全体に均一に紫外線が照射される。十分に殺菌処理を行った後、クリーンルーム21側の扉4を開放すると、殺菌灯が消灯する。そして、箱体2の中から殺菌処理された物品を取り出し、クリーンルーム21内に搬入する。
なお、パスボックスは、複数台を並べて設置してもよい。例えば、図6に示したように、右方向(図6では下方向)に開放する扉3と左方向(図6では下方向)に開放する扉4を有するパスボックス1と、左方向(図6では上方向)に開放する扉3’と右方向(図6では上方向)に開放する扉4’を有するパスボックス1’を並べて設置し、2台のパスボックス1,1’のそれぞれの扉が互いに観音開きに開くようにしてもよい。
【0014】
なお、パスボックスには、両扉を同時に開錠できないロック機構を設けることが好ましい。このようなロック機構を設けることによって、両扉を同時に開放することができないようにすれば、一般室の雑菌がクリーンルーム内に不用意に入り込むことを防止することができる。更に、パスボックスの扉や箱体には、パスボックスの内部を見ることができるように透明または半透明の部材からなる窓を設けてもよい。
【実施例】
【0015】
本発明のパスボックスと公知のパスボックスについてそれぞれ実施例と比較例として殺菌処理の効果を比較した。
【0016】
(本発明のパスボックスを用いた殺菌処理の方法)
実施例のパスボックスとして、図1に示したパスボックスを用い、図2と図3に示したように、物品A,B,C,Dを物品の受け渡し方向に沿って直列に2個ずつ載置部材上に載置して、殺菌処理を行った(物品Cは物品Aの奥かつ物品Dの下に位置するため図略)。実施例のパスボックスは、箱体の内部の大きさが上下(高さ)寸法950mm×横(幅)寸法650mm×奥行き寸法1250mmのものを用いた。物品A,B,C,Dは、大きさが上下(高さ)寸法120mm×横(幅)寸法350mm×奥行き寸法400mmのものとした。この物品A,B,C,Dを物品の受け渡し方向に対する箱体側面から150mm以上の間隔をおいて、載置部材の横(幅)方向の中央にそれぞれ載置した。また、物品A,B,C,Dは、それぞれの扉の内面から150mmの間隔をおき、物品B,Dと物品A,Cの間も150mmの間隔をおいて載置した。
【0017】
(比較例のパスボックスを用いた殺菌処理の方法)
比較例のパスボックスとして、図8に示したパスボックスを用い、図8と図9に示したように、物品A,B,C,Dを2個ずつ積み重ねて載置部材上に載置して、殺菌処理を行った。比較例のパスボックスは、箱体の内部に上段の載置部材を設けていないことと、箱体の内面と扉の内面に設置した殺菌灯の位置と本数が異なっていること以外は、実施例と同様のものを用いた。図9に示したように、比較例のパスボックス1’’の箱体2’’の内面の上部には、載置部材5’’上に載置される物品に対して上方向から紫外線が照射されるように3本の殺菌灯8a’’,8b’’,8c’’を物品の受け渡し方向と直交するように設置し、パスボックス1’’の箱体2’’の内面の下部には、載置部材5’’上に載置される物品に対して下方向から紫外線が照射されるように5本の殺菌灯8n’’,8o’’,8p’’,8q’’,8r’’を物品の受け渡し方向と直交するように設置している。また、パスボックス1’’の箱体2’’の内面の両側部には、物品の受け渡し方向に対する箱体側面の上下方向の略中央部に直列にそれぞれ2本ずつ殺菌灯8d’’,8e’’,8f’’,8g’’を設置している。また、パスボックス1’’の扉3’’の内面には、上下方向の略中央部に殺菌灯8w’’を設置している。また、反対側の扉4’’の内面にも、扉3’’の内面に設置した殺菌灯8w’’に対向する位置に殺菌灯8y’’を設置している。受け渡す物品の大きさは実施例の物品と同じ大きさのものとし、物品の載置部材上への載置位置は実施例と同様とした。
【0018】
(結果)
実施例のパスボックスでは、それぞれの物品の上下面および物品の受け渡し方向に対する箱体側面に対向する側面、更に、物品の互いに隣り合う側面にも十分な紫外線が届いたことから、十分な殺菌処理を行うことができた。また、物品の受け渡し方向からも紫外線が照射されるので殺菌効果が向上した。従って、実施例のパスボックスでは、短い処理時間で効率的に殺菌処理を行うことができた。
比較例のパスボックスでは、積み重なり合う物品A,Bと物品C,Dの互いに重なり合う面には紫外線が照射されない。また、積み重ねられた下段の物品A,Cの箱体側面に対向する側面は、物品の受け渡し方向に対する箱体側面に設置された殺菌灯8d’’,8e’’,8f’’,8g’’から離れているために物品の受け渡し方向に対する箱体側面からの紫外線が届きにくかったので、殺菌処理が不十分であった。更に、物品A,Cの扉3’’,4’’に対向する側面は、扉3’’,4’’の内面に設置された殺菌灯8w’’,8y’’から離れているために物品の受け渡し方向からの紫外線が届きにくかった。
従って、比較例のパスボックスに載置された一つの物品に照射された紫外線量は、実施例のパスボックスに載置された一つの物品に照射された紫外線量よりも少なくなるので、実施例のパスボックスに載置された物品と同量の紫外線量を比較例のパスボックスに載置された物品に照射するためには、実施例の照射時間の4倍の照射時間が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、複数の物品の受け渡しを行う場合であっても、それぞれの物品の表面に十分紫外線が照射されるようにすることで、十分な殺菌処理を行うことができる殺菌灯付きパスボックスを提供することができる点において、産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のパスボックスを示す斜視図
【図2】図1のパスボックスの扉を開けた状態を示す正面図
【図3】図1のパスボックスの平面図(一部透視図)
【図4】殺菌灯に電流を供給する電気回路を示す図
【図5】図1のパスボックスの側面図(一部透視図)
【図6】2つのパスボックスを並べた状態を示す平面図
【図7】従来のパスボックスの扉を開けた状態を示す正面図
【図8】比較例のパスボックスの扉を開けた状態を示す正面図
【図9】図8のパスボックスの側面図(一部透視図)
【符号の説明】
【0021】
1,1’,1’’ パスボックス
2,2’,2’’ 箱体
3,3’,3’’ 一般室側の扉
4,4’,4’’ クリーンルーム側の扉
5,5’’ 下段の載置部材
6 レール
7 上段の載置部材
8a〜8k,8m〜8z 殺菌灯
8a’’〜8g’’ 殺菌灯
8n’’〜8r’’,8w’’,8y’’ 殺菌灯
9,9’’ 脚部材
10,10’,10’’ ファンフィルタ
14 パスボックス
15 箱体
16 載置部材
18 扉
19a〜19g 殺菌灯
20 扉
21 クリーンルーム
21a クリーンルームの外壁
22 一般室
a,a’’ 扉側接点
b,b’’ 箱体側接点
c スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定雰囲気に設定された室内側と室外側に面してそれぞれ扉を有する箱体と、この箱体内面に設置した複数の殺菌灯からなり、この箱体を介して室内外間の物品の受け渡しを行うための殺菌灯付きパスボックスであって、前記箱体の内部に透光性を有する載置部材を上下方向に複数段設け、それぞれの載置部材上に載置される物品に対して上下方向およびこの物品の受け渡し方向に対する箱体側面の略水平方向から紫外線が照射されるように殺菌灯を設置したことを特徴とする殺菌灯付きパスボックス。
【請求項2】
上段の載置部材に、その上に載置される物品に対して下方向から、かつ、その下段の載置部材上に載置される物品に対して上方向から紫外線が照射されるように殺菌灯を設置したことを特徴とする請求項1記載の殺菌灯付きパスボックス。
【請求項3】
前記殺菌灯を物品の受け渡し方向に沿ってトンネル状に紫外線を照射できるように設置したことを特徴とする請求項1または2記載の殺菌灯付きパスボックス。
【請求項4】
載置部材上に載置される物品に対して上下方向から紫外線を照射するための殺菌灯を物品の受け渡し方向と直交するように設置したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックス。
【請求項5】
更に、前記両扉の内面にそれぞれ殺菌灯を設置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックス。
【請求項6】
前記殺菌灯を両扉が閉状態のときにのみ点灯するようにしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックス。
【請求項7】
扉の内面に設置した殺菌灯は、扉が閉状態となったときに接続される、扉と箱体との間に設けた接点を介して電流が供給されることで点灯するようにしたことを特徴とする請求項5または6記載の殺菌灯付きパスボックス。
【請求項8】
前記箱体の天井部および/または側部に設けられた吹出口にファンフィルタを設置し、清浄化した空気を前記吹出口から、前記箱体内に循環供給するようにしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の殺菌灯付きパスボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−82722(P2007−82722A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274683(P2005−274683)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(000232760)日本無機株式会社 (104)
【Fターム(参考)】