説明

殺虫組成物及び昆虫駆除方法

天然植物油ゲラニオール及びセダー油を含んだ、環境的に安全で、直物毒素のない殺虫組成物、並びに昆虫駆除方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物精油を含有する殺虫組成物と、精油を用いる昆虫駆除方法とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
害虫は、植物及び植物製品に重大な損害をもたらす他、人間及び動物を襲い、困らせる。家庭のシナリオでは、害虫が、疾患及びアレルギー問題の媒介物として働く。数年に亘り、合成ピレスロイド、塩素化炭化水素、有機ホスフェイト、カルバメート等の合成化学殺虫剤が、害虫駆除の有効手段を提供してきた。
【0003】
しかしながら、公衆は、合成化学殺虫剤の広範囲に及ぶ使用が、人間及び他の動物に有害である有害環境効果を招き得ると次第に考えるようになってきている。例えば、公衆は、食物、地下水及び環境に留まる残留化学物質の量、並びに人間、家庭用動物及び/又は魚に対して毒性があり、発癌性があり、或いは不適合である可能性のある残留化合物の量について、考えるようになってきている。更に、一部の標的害虫には、一般に使用される多くの合成化学殺虫剤に対して耐性を発達させる能力を示すものさえいる。最近では、規制ガイドラインが、特定の合成殺虫剤の使用に関し、厳重な制限によって、潜在的に危険度の低い殺虫組成物の探索を働きかけている。
【0004】
従って、合成ピレスロイド、塩素化炭化水素、有機ホスフェイト、カルバメート等を含有せず、害虫に対して使用し得る環境的に安全で且つ殺虫に効果的な組成物の必要性が大きい。また、使い易く安価な組成物と、これら害虫を駆除するためのこれら組成物の使用方法であって、害虫の迅速なノックダウン及び最終的な死亡率の利益を提供するものを提供することは、有益である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一目的は、昆虫に対して農業又は家庭で用いるための、環境的に安全で、植物毒素がなく、殺虫に効果的な組成物を提供することにある。特に、本発明は、環境に害を及ぼさない天然植物油を含有する殺虫組成物を提供する。本発明の他の態様もまた明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、天然植物油を含み、環境に安全で、植物毒素のない殺虫組成物を提供する。特に、本発明は、適当なキャリヤー、界面活性剤及び任意にはエアゾール噴射剤との混合物としての活性化合物ゲラニオール及びセダー油の殺虫剤濃縮物、エアゾール配合物又はすぐ使用できる(RTU)液体スプレー組成物を提供する。
【0007】
本発明の殺虫組成物の使用は、一般に、個々の成分単独のものと比較した場合、迅速なノックダウン及び100%の死亡率をもたらす。そのようなものとして、それらは、制限されないが、家庭、農業、有機農業、専門害虫駆除、ペット用寝具、茎葉散布、苗木箱処理、植え付け処理及び観葉植物等の用途における殺虫剤として有利に用いられる。
【0008】
本発明の特定の実施態様は、
a)ゲラニオール及びセダー油を含有する有効成分、
b)適当な液体キャリヤー、
c)少なくとも1つの界面活性剤、並びに
d)任意には、エアゾール噴射剤
を含む殺虫組成物である。
【0009】
本発明の他の実施態様は、昆虫駆除が必要とされるか又は必要であると期待される場所に、
a)ゲラニオール及びセダー油を含有する有効成分、
b)適当な液体キャリヤー、並びに
c)少なくとも1つの界面活性剤
を含む殺虫組成物を殺虫に有効な量適用することを含む昆虫駆除方法である。
【0010】
ゲラニオールは、トランス−3,7−ジメチル−2,6−オクタジエン−1−オール,CAS番号106−24−1を指す。
【0011】
セダー油は、セダーウッド油としても知られており、主にジュニペルス・バージニアーナ又はジュニペルス・アシェイの心材から得られる揮発性の加工していないオイル抽出物を指す。セダー油のCAS番号は、8000−27−9である。
【0012】
「殺虫剤濃縮物」の語は、適当な液体キャリヤー及び界面活性剤中における有効成分ゲラニオール及びセダー油の混合物を指し、それは、RTUスプレー又はエアゾールとしての使用に先立って、追加の希釈を必要とする。
【0013】
ここで使用される「すぐ使用できる液体スプレー」の語は、適当な液体キャリヤー及び界面活性剤中におけるゲラニオール及びセダー油の組成物を意味し、更に希釈することなく、例えば、手に持てるスプレーボトル、携帯用スプレータンク、加圧エアゾールスプレー缶等によって供給されるスプレーとして使用できる。
【0014】
有効成分ゲラニオールは、全RTU組成物中における全成分に対して約0.1重量%〜約1.0重量%の量でRTU組成物中に存在することが好ましく、全RTU組成物中における全成分に対して約0.4重量%〜約0.5重量%の量が最も好ましい。
【0015】
有効成分セダー油は、全RTU組成物中における全成分に対して約0.01重量%〜約0.05重量%の量でRTU組成物中に存在することが好ましく、全RTU組成物中における全成分に対して約0.02重量%の量が最も好ましい。
【0016】
ここで使用される「キャリヤー」の語は、無機でも有機でもよく、合成でも天然由来でもよい液体物質を意味しており、昆虫駆除を必要する場所への有効成分の適用を容易にするため、活性化合物は、該液体物質と共に混合又は配合される。一般に、殺虫剤、除草剤又は殺菌剤の配合の際に習慣的に用いられる物質のいずれかが、本発明での使用に適している。好ましいキャリヤーとしては、制限されるものではないが、イソパラフィン系炭化水素、C〜C12直鎖又は枝分れ鎖アルコール及び水が挙げられる。最も好ましいキャリヤーは、水である。上記キャリヤーは、RTU組成物中、有効成分の正確な希釈を提供する量で存在する。
【0017】
好ましい界面活性剤は、ラウレス硫酸ナトリウムである。上記界面活性剤は、全RTU組成物中における全成分に対して約0.1重量%〜約1.0重量%の量で、RTU組成物中に存在することが好ましい。
【0018】
加圧エアゾールスプレー缶を用いてRTU組成物を供給する場合、二酸化炭素、液化石油ガス、ヒドロフルオロカーボン及び既知のヒドロフルオロカーボン代替品等のエアゾール噴射剤が、特に有用である。二酸化炭素が、最も好ましい噴射剤である。
【0019】
本発明の殺虫組成物及び方法は、様々な種の農業害虫及び家庭害虫に対して効果的であり、ここでの実施例において実証及び評価された昆虫は、このように幅広い種類を代表するものであると理解される。
【0020】
以下に示す例は、本発明を更に説明するものの、当然ながら、その範囲を何らかの形で限定するものと解釈されるべきではない。その例は、本発明の組成物の有効性の向上を実証する特定のデータを示す。
【実施例】
【0021】
(例1)
ゲラニオール、セダー油及びその混合物の殺虫効果
ゲラニオール、セダー油及びその混合物の配合物を、ケアリ(トビイロケアリ)、テントウムシ(ナミテントウ)、茶色カメムシ(クサギカメムシ)、モモアカアブラムシ[green peach aphid(Myzus persicae)]、イエコオロギ[house cricket(Acheta domesticus)]及びナガオコナカイガラムシ[longtail mealy bug(Pseudococcus longispinus)]に対する接触毒性について評価した。ラウレス硫酸ナトリウム0.5重量%を含有する脱イオン水中に適当量の1つ又は複数の植物油を溶解することによって植物油試験溶液を調製した。例えば、ラウレス硫酸ナトリウム5グラムを含有する脱イオン水1リットルにゲラニオール4.4グラムを溶解し、ゲラニオールの0.44%試験溶液を調製した。各試験溶液を16オンススプレー缶中に注ぎ、バルブを取り付け、該缶に二酸化炭素を噴射剤として装填した。試験物質を昆虫に直接吹き付けて、各試験溶液の有効性を以下の通り決定した:
【0022】
ケアリ及びテントウムシ試験−個別の試験において、それぞれの種の昆虫10匹をアスファルトスラブ上に置き、適切な試験溶液を用いて2秒間直接吹き付けた。パーセントノックダウン100%(昆虫が自力で動くのを止める)までの時間、死亡率100%(昆虫が調査に応答しない)の時間、及びノックダウンからの回復を記録し、以下、表1に集約する。
【0023】
茶色カメムシ及びイエコオロギ試験−個別の試験において、それぞれの種の昆虫10匹をコンクリートスラブ上に置き、適切な試験溶液を用いて2秒間直接吹き付けた。パーセントノックダウン100%(昆虫が動くのを止める)までの時間、死亡率100%(昆虫が調査に応答しない)の時間、及びノックダウンからの回復を記録し、以下、表1に集約する。
【0024】
モモアカアブラムシ試験−個別の試験において、モモアカアブラムシがついているピーマン植物に適切な試験溶液を流れ去るまで吹き付けた。パーセントノックダウン100%(昆虫が自力で動くのを止める)までの時間、死亡率100%(昆虫が調査に応答しない)の時間、及びノックダウンからの回復を記録し、以下、表1に集約する。
【0025】
ナガオコナカイガラムシ試験−個別の試験において、10匹のナガオコナカイガラムシを斑入りニシキギ植物の数枚の葉に定着させ、それがついている葉に適切な試験溶液を流れ去るまで吹き付けた。24時間後にパーセント死亡率を評価し、以下、表1に集約する。
【0026】
表1(表1−1〜表1−2)
【表1−1】

【0027】
【表1−2】


【0028】
これらデータは、セダー油をゲラニオールに加えたものが、相乗作用の組成物を提供し、個々の成分と比較して、ノックダウンまでの時間及び昆虫の死亡率100%までの速さを大幅に向上させることを示し、全体的に、ゲラニオール及びセダー油混合物が、家庭害虫駆除用の安全で且つ効果的な代替殺虫剤として使用できることを示す。
【0029】
当業者は、本発明の変化を使用し得ること、また、ここで具体的に記載したもの以外に本発明を実施し得ることを意図していることを十分に理解する。従って、本発明には、特許請求の範囲によって規定された発明の精神と範囲の中に包含される全ての変更が含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ゲラニオール及びセダー油を含有する有効成分、
b)適当な液体キャリヤー、並びに
c)少なくとも1つの界面活性剤
を含む、殺虫組成物。
【請求項2】
前記適当な液体キャリヤーが水である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤がラウレス硫酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ゲラニオールが、全組成物中における全成分に対して約0.1重量%〜約1.0重量%の量で存在し、前記セダー油が、全組成物中における全成分に対して約0.01重量%〜約0.05重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ゲラニオールが、全組成物中における全成分に対して約0.44重量%の量で存在し、前記セダー油が、全組成物中における全成分に対して約0.02重量%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
エアゾール噴射剤を前記組成物に加える、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
昆虫駆除が必要とされるか又は必要であると期待される場所に、
a)ゲラニオール及びセダー油を含有する有効成分、
b)適当な液体キャリヤー、並びに
c)少なくとも1つの界面活性剤
を含む組成物を殺虫に有効な量適用することを含む、昆虫駆除方法。
【請求項8】
前記適当な液体キャリヤーが水である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤がラウレス硫酸ナトリウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲラニオールが、全組成物中における全成分に対して約0.1重量%〜約1.0重量%の量で存在し、前記セダー油が、全組成物中における全成分に対して約0.01重量%〜約0.05重量%の量で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲラニオールが、全組成物中における全成分に対して約0.44重量%の量で存在し、前記セダー油が、全組成物中における全成分に対して約0.02重量%の量で存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エアゾール噴射剤を前記組成物に加える、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2013−520510(P2013−520510A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555096(P2012−555096)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2011/025849
【国際公開番号】WO2011/106367
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(391022452)エフ エム シー コーポレーション (74)
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
【Fターム(参考)】