説明

殻付き味付け茹卵の製造方法

【課題】 従来市販されている味付けゆで卵は塩味のものに限定されている。従来は、大きな容器に調味液(食塩水)を入れておき、ここにゆで卵を大量に浸漬するものであるため、醤油味やカレー味など酸性のものは、卵の殻からカルシウム分が溶出して苦味やえぐ味が付き、3回以上の浸漬はできずコストが高くて製品化は困難であった。また、バニラやイチゴなどの香料成分は、大量に使うと高コストになり、これらも製品化は試みられていない。
【解決手段】 本発明は、殻付きゆで卵と調味液とをプラスチック製の小袋に収納し、処理が終わったら調味液は廃棄するものである。これにより、茹卵1個当たりの調味液の量を少なくできるとともに、つねに新鮮な調味液にゆで卵を浸漬することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カレー味、醤油味などはもとより、バニラやイチゴ味など、自由自在にあらゆる味付け或いは栄養素の添加をすることができる殻付き茹卵の味付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、味付け茹卵として塩味をつけたものが市販されている。これは、例えば図4に示すような装置10に飽和食塩水を入れておき、これに茹卵を籠ごと浸漬して数日置いておいて製造する塩味付きの殻付き茹卵である。
【0003】
古くから、茹卵は食塩を付けて食することが行われており、駅の売店などでも数個の茹卵を網袋に入れ、この袋の中に食塩を包んだ小袋をいれて販売されていた。現在では、特にコンビニなどで1個づつプラスチックケースにこの塩味付き茹卵をいれて販売していることが特に東日本で多い。
【0004】
しかし、塩味だけでは味の変化に乏しく、また塩がきつすぎるなどの問題もあり、他の味例えば醤油味付きの茹卵の出現が望まれている。
【0005】
ところが、塩味付き茹卵以外に醤油など他の味を付けた茹卵は、現在製造が困難であり、市販されていない。これは、もっとも需要が大きいと思われる醤油やゾースが酸性であり、これに殻付き茹卵を浸漬すると、1回目2回目はよいが、3回目になると卵の殻のカルシウムが醤油などの中に溶けだして苦味やえぐ味を示し、この味が卵の中に浸透するので、苦味やえぐ味が卵について食べられたものではないことによる。
【0006】
即ち、卵の殻は95%以上の炭酸カルシウムと、僅かの燐酸カルシウムや燐酸マグネシウムなどからなる。炭酸カルシウムは水には殆ど溶けないが、酸性溶液の中では容易に溶出する。ボイルで加熱された卵を浸漬すれば液温が上がり、更に溶けやすくなる。そのため、カルシウムイオンやマグネシウムイオンが溶液中に蓄積される。醤油(キッコーマン濃口醤油)は概ねpH4.8を示す。炭酸カルシウムや燐酸カルシウム、燐酸マグネシウム等の強塩基物質が溶けだしていくと、溶液はアルカリ化していく。醤油の場合、下記の製造方の場合、概ねpH7 となる。即ち、醤油40Lの入った槽にボイルされた直後の卵240個を入れ、10〜14日間浸漬して味付けする。再び、その醤油の中に次の240個のボイルされた卵を入れて味付けすると、2度目の味付けが終了した醤油のpHは概ね7を示し、中性になっている。
【0007】
このことは、醤油の中に多量のカルシウムやマグネシウムのイオンが存在していることを示す。カルシウムやマグネシウムはアルカリ土類金属(アルカリの語源は、苦いもの、木灰を意味する)であり、これらが苦味やえぐ味の原因物質となる。これを除去するためにカルシウムの場合は炭酸ガスを吹き込むと炭酸カルシウムが沈殿するので、除去が可能である。しかし、炭酸ガス量を適切にしないと、過剰な場合は炭酸水素カルシウムとなって再度水に溶解するので、注意が必要である。しかも、この作業を少なくとも味付け2回ごとに行わなければならない。このように、原因物質の完全除去は難しいし、多少残ったとしても常に均一な味を保つための作業は困難を究める。ソース味やカレー味の場合も同様である。
【0008】
ところで、以上のようなことを避けるために、調味液(醤油、ソース等)を1回或いは2回だけ使用すれば、図5に示すように調味液(図5の調味液は飽和食塩水である)は大量に消費するので、とてもコストが引き合わない。即ち、図5のように大量の調味液を使用すると、卵1個当たり約83ccが必要になると言う計算もある。従って、この調味液を1〜2回で廃棄するのは、醤油などでは主原料の卵よりもコストが高くつき、商業生産には不向きである。
【0009】
また、バニラやイチゴなどの香料味も、従来の図5に示すような装置では液が大量に必要になるばかりでなく、開放された槽では蓋をしても香気成分が放散し、またボイル後の加熱された卵が調味液の中に入ると放散が加速される。また、香気成分が熱により効力を失うこともある。結局のところ、塩味以外の醤油やカレー味、ソース味或いは香料味の殻付き味付け茹卵は実現されていない。
【0010】
塩味付き殻付き味付け茹卵の製法としては、特許文献1〜特許文献3(40℃低い、加圧タンク、真空)その他複数ある。また、袋に入れた茹卵としては、特許文献4の調味液にメチオニンを添加する技術や特許文献5の袋中に入れた剥き卵と空気の比率に限定を加えたものなどがある。尚、特許文献1は、塩以外に醤油や味噌なども味付けできると記載されているが、前記した如く酸性物質故3回以上は液の使用ができず、この発明は2回以下しか実験していないものと推察される。実際に醤油味のものは全く市場に提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平06−34688号
【特許文献2】特許2851997号
【特許文献3】特開平10−136943
【特許文献4】特開2004−275073
【特許文献5】特開平07−99937
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、塩味は勿論、醤油味やカレー味、ソース味など酸性の調味料や、バニラ、イチゴその他の香料味の付いた殻付きの茹卵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
その手段として、茹でた卵を1個当たり2〜20ccの調味液とともに小袋中に収納して数日〜数十日置いておき、その後に袋から出して洗浄し殻付き味付け茹卵とするものである。或いは、1乃至複数個の生の殻付き卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で茹でたのち冷却して、数日乃至数十日間放置しておき、その後に袋から出して洗浄・乾燥して殻付き味付け茹卵とするものである。
【0014】
まず、前者について説明する。前者の場合、まず生卵に熱を加えて、固茹卵、半熟卵或いは温泉卵とする。大量に作る場合には、図3に示すような装置で製造する。
【0015】
次に、これらの湯掻いた卵を冷やしたのち1個ずつ或いは2〜3個程度ずつポリプロピレンやポリエチレンなどの小袋に入れ、次いで調味液を茹卵1個当たり2〜20cc程度ずつ入れて封をする。この際、空気は抜いておいても良いし、調味液に圧を加えて入れてもよい。
【0016】
この状態で、数〜数十日放置しておいて、茹卵殻から調味液が卵の中身に浸透・拡散するのを待つ。この放置(保管)は、冷蔵庫で5℃前後或いは10℃前後の温度に保っておくと、腐敗の心配がない。次いで、冷蔵庫から出して常温で1時間程度放置した後、殻付き茹卵を小袋からだして洗浄・乾燥して、殻付き味付け茹卵を得る。
【0017】
次に、後者について説明すると、後者では生卵を1個乃至2〜3個程度ずつポリプロピレンやポリエチレンなどの小袋に入れ、次いで調味液を生卵個当たり2〜20cc程度ずつ入れて封をする。次に、これら小袋に入れた卵と調味液を加熱して茹卵とする。香料など高い温度での処理が好ましくないものは避けた方がよい。
【0018】
湯掻きが終わったら、釜から出して数〜数十日放置しておいて、茹卵の殻から調味液が卵の中身に浸透するのを待つ。この放置(保管)は、冷蔵庫で5℃前後或いは10℃前後の温度に保っておくと、腐敗の心配がない。大量の場合には、容器ごと保管してもよい。次いで、殻付き茹卵を小袋からだして洗浄・乾燥して、殻付き味付け茹卵を得る。
【0019】
尚、後者の場合、小袋に圧力などが前者に比べてより強く加わる。そのため、プラスチックの種類を変えたり複合化するなどして熱や圧力に強いものを用いる必要がある。また、前者では簡単な封でもよいが、後者ではしっかり封をする必要がある。調味液が浸透する時間は、後者の方が短くてすむ感じがする。
【0020】
調味液の組成成分としては、目的や好みに応じて適宜選択使用されるが、例えば、塩味、醤油味、味噌味、カレー味、ガーリック味、生姜味、和風ダシ、かつお風味、おでん味、わさび味、とうがらし味、キムチ味、バター味、チーズ味、チキン味、ビーフ味、ロースト味、エビ味、カニ味、ホタテ味、エスニック風味・中華風味などのチリ添加風味などの呈味成分;抹茶味、コーヒー味、こぶ茶、バニラ・イチゴ・オレンジ・レモン・グレープ・シソ・ミント・チョコレート・メロン・バター味などの香料味(フレイバー)などの嗜好成分;或いはDHAやEPA、カルシウムやヨードなどのミネラル、各種ビタミン類、アミノ酸類などの栄養成分;ブランディ、ワイン、日本酒などのアルコール類など、何でも使用できる。但し、塩味に限っては、従来の装置10(図4)による大量生産の方が安価に得られる。
【0021】
これらは、例えば醤油味やだし味のようにそれ単独で使用されるものもあるが、バニラやイチゴなど香料成分は、アルコールや砂糖、ステビアなどの植物由来の甘味料、塩などに加えて使用する。また、コブ茶は塩味ベースであり、コーヒーやチョコレート、紅茶などには砂糖を加えて使用する。また、カレー味はパウダーを用い、それに水やアルコール、塩を加えて液体にしたものを使用することができるし、ガーリックは粉末でもよいがニンニクを潰してアルコールや水、塩と混ぜて使用してもよい。
【0022】
以上に説明した製造方法は、工業的に大量に製造するのに適しているが、家庭用に数個単位で殻付き味付け茹卵を作る場合は、好みの茹卵(固茹、半熟、温泉卵)を醤油などとともに小袋にいれて封をし、そのまま冷蔵個に10日前後放置しておくだけでよい。ただ、何時小袋に入れたわからなくなるので、小袋に入れた茹卵を専用の容器に入れ、その容器は入れた日時が表示できるようにしておくと、忘れなくで便利である。また、プラスチック製の小袋と封止具或いは封止具付き小袋と調味液(醤油やダシは手元にあることが多いが、バニラや苺、バターなどの香料は手元にないことが多いので、これに、砂糖やステビア、アルコール、塩などとともに予め混合して専用の容器に入れたもの)及び、前記の日付表示付き容器をセットにして販売するとよい。
【0023】
卵の殻は、95%が炭酸カルシウムで他にリン酸マグネシウムや有機物からなるが、鶏の場合その表面に10μ程度の微細孔が1万個前後も存在する。本発明は、この微細孔を通じて物質が卵の白身や黄身に浸透・拡散していく現象を利用するものであるが、この孔は、酸で殻表面を洗浄することによって幾分大きくすることができる。即ち、食酢を十数倍程度に希釈した液に数十分程度浸漬しておくと、殻自体も幾分とけるが孔も大きくなる。従って、調味液の浸透も数日は早く行われる。
【0024】
尚、卵は、鶏のものが殆どと思われるが、その他にも、鶉や鵞鳥、駝鳥など通常食することができる卵であれば、その種類は問わない。但し、上記した各種数字は鶏のものであり、鶉のように小さいものは時間を短く、鵞鳥などの大きいものは時間を長くする必要がある。
【発明の効果】
【0025】
以上詳述したように、本発明の殻付き味付け茹卵の製造方法は、殻付き茹卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、茹卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で数日乃至数十日間放置しておく、或いは生卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、生卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で茹でたのち冷却して、数日乃至数十日間放置しておくものである。
【0026】
従って、以下の様な効果を生じる。
(1)使用する調味液は、卵1個当たり2〜20ccと言う少量であり、例え高価な香料を使用したとしても、そのコストは微々たるものである。従って、殻付き味付け茹卵に使用する調味液のコストは従来の塩味付けの方法によるもの(大量な調味液へのどぶ漬け)に比べて非常に廉価で済む利点がある。
(2)調味液が、醤油味やカレー味、ソース味などの酸味成分のものであっても、1回ずつ使用して廃棄するので、調味液に卵殻のカルシウムが溶けて残留することがなく、卵に苦味やえぐ味が付くことは絶対にない。従って、酸味成分であれ何であれ、自在な味付けをすることができる。
(3)例え、大型の容器に多数の生卵を入れて加熱処理をしたとしても、小袋の中に入れる調味液の種類を変えることにより、様々な種類の味付けの殻付き茹卵を大量に且つ簡単に作ることができる。
(4)作るコストは、生卵から作る場合は、従来の大量な茹でる装置を使用すれば、あとは生卵を小袋に詰める手間と、小袋に詰める調味液のコストだけである。従って、そう大きなコストアップにはならない。茹卵を処理する場合は、そのまま食塩水に入れる場合に比べれば小袋に詰める手間が余分にかかるが、あとの保管などは同じ手間であり、そう大きなコストアップにはならない。
(5)本発明では、調味液を使い回ししないので、醤油の場合は最小限の醤油に溶けだしたカルシウムやマグネシウムが卵の殻の中に入るが、苦味やえぐ味まで至らず、かえって微量のミネラル分が入ることにより体にもよい結果となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明方法の一例を示すもので、小袋に茹卵と調味液を入れて封をしたものを示す正面図である。(実施例1)
【図2】本発明の殻付き味付け茹卵の断面した正面図である。(実施例1、実施例2)
【図3】本発明方法の一例を示すもので、小袋に生卵と調味液を入れて封をしたものたものを示す正面図である。(実施例2)
【図4】生卵を多数容器に詰めて釜に入れる状態を示す斜視図である。(実施例1、比較例1)
【図5】塩味調味液を入れた味付け処理槽に、湯掻いた卵を多数詰めた容器を入れた状態の斜視図である。(比較例1)
【発明を実施するための形態】
【0028】
1個の殻付き生卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、生卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で茹でたのち冷却して、数日乃至数十日間冷蔵しておく。
【実施例1】
【0029】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。まず生卵1に熱を加えて、固茹卵2、半熟卵或いは温泉卵とする。これらは、温度及び時間で任意に作ることができる。また、大量に作る場合には、従来通り、図4に示すような容器3に生卵1を数百個単位で入れておき、釜4で湯掻いて製造する。固茹卵の場合、92±2℃で6分間、半熟卵は92±2℃で3分間、温泉卵は65〜68℃で20分間湯掻いて得られる。尚、本発明で湯掻くことには、蒸気での加熱その他の加熱手段を用いることも含むものである。
【0030】
次に、図1に示すように、これらの湯掻いた卵2を、できうれば冷却(水で数分)したのち1個ずつポリプロピレンやポリエチレンなどの小袋5に入れ、次いで調味液6としてキッコーマン製濃口醤油を茹卵1個当たり5cc程度入れて手で捩じって封をする。この際、空気は抜いておいたほうが良いし、醤油6に圧を加えて入れると、卵への浸透が良好に行われる可能性がある。この場合は、開口部をシールする。尚、湯掻いた卵を冷却すると、小袋5に包まれた茹卵の放熱が妨げられて黄身が黒変するのを防ぐし、殻と卵膜の間に隙間ができて液が浸透し易くなる効果がある。
【0031】
この状態で、冷蔵庫(10℃前後)に7日〜10日〜14日程、或いは30日程入れておくと、図2に示すように茹卵2の殻2aから醤油液6が卵の中身に浸透・拡散する。符号2bは白身、2cは黄身である。次いで、冷蔵庫から出して常温で1時間程度放置した後、殻付き茹卵を小袋からだして洗浄・乾燥して、図2に示すような殻付き味付け茹卵7を得る。
【0032】
尚、図示は省略するが、やや大きめの1枚のポリプロピレンやポリエチレンなどの袋に、茹で卵を2〜3個と醤油約20ccを入れて封をしてもよい。調味液に醤油を用いると、卵の殻が幾分まだら模様に着色される。そこで、白醤油を用いれば、このような事はない。但し、白醤油は幾分甘い感じがする。
【実施例2】
【0033】
実施例1において、調味液として、昆布と花鰹から取ったダシ、濃口醤油を1対1で混合したものを5cc程度用い、他は実施例1と同様にして殻付き味付け茹卵7を得た。この卵7は、実施例1の卵に比べて味が円やかであった。
【実施例3】
【0034】
実施例1において、ニンニク100gを潰し、これにアルコールとして25度の焼酎100mL:水100mL、食塩40gを混ぜた液に混ぜて調味液6を得た。この調味液6を7cc程度用い、実施例1と同様にして殻付き味付け茹卵7を得た。同様に生姜をすりおろして同様な調味液6を得て、茹卵の味付けをした。
【実施例4】
【0035】
実施例1において、カレーパウダを100gに対して、水100mL、アルコールとして25度の焼酎100mL、食塩20gを混ぜてカレー調味液6を作る。カレーパウダは完全には溶けない。この調味液6の4ccを用い、実施例1と同様にして殻付き味付け茹卵7を得た。得られた卵はカレーの味がして美味しかった。
【実施例5】
【0036】
砂糖、ステビア、アルコール、食塩、水の混合液に、香料(バニラ)を、混合液の1/10〜1/20程度添加して調味液6を得た。この調味液6の3.5ccを用いて、実施例1と同様にして殻付き味付け茹卵7を得た。得られた卵は、ほんのりバニラの香りがした。
【実施例6】
【0037】
実施例5において、バニラの代わりにイチゴの香料を用いた。この場合、苺の香料が赤く着色されているつので、卵の殻が全体にほんのり赤く着色した。着色していない苺の香料を用いれば、色は付かない。
【実施例7】
【0038】
砂糖、ステビア、アルコール食塩、水の混合液に、コーヒー香料を、混合液の1/10〜1/20程度添加して調味液6を得た。この調味液6の5ccを用いて、実施例1と同様にして殻付き味付け茹卵7を得た。得られた卵は、コーヒーの香りがした。更に、抹茶やチョコレートの調味液6を用いたり、ビタミン、カルシウム等の栄養成分、ブトウ酒等のアルコールを調味液6に用いて殻付き味付け茹卵7を得た。
【実施例8】
【0039】
実施例5と同様にして、バニラ香料の代わりに、バター味の香料を用いて、殻付きのバター味付け茹卵7を得た。得られた卵は、バターの香りがした。
【実施例9】
【0040】
実施例9は、生卵1を1個ずつ或いは2〜3個程度ずつ(図3では1個ずつ)小袋5に入れ、次いで調味液6を生卵1個当たり2〜20cc程度ずつ入れて封をし、この状態で茹でるものである。小袋5は、例えばナイロンとポリエチレンの積層フイルムを用い、生卵1と調味液6を入れた後上をシール10し、その後にカット11する。尚、下側のシールは前段階でシール10しておく。調味液6は、濃口醤油を用いた。
【0041】
この際、空気は抜いておいても良いし、調味液6に圧を加えて入れてもよい。次に、これら小袋5に入れた卵1と調味液6を加熱して茹卵2とする。茹卵2は、実施例1の場合と同様、固茹卵の場合92±2℃で6分間、半熟卵は92±2℃で5分間、温泉卵は65〜68℃で20分間湯掻くことで得られる。尚、大量に作る場合には、図4に示すような容器3に数百個単位で小袋5に入れた生卵1を入れておき、釜4で湯掻いて製造する。調味液5を入れてから湯掻く場合には、香料など高い温度での処理が好ましくないものは避けた方がよい。
【0042】
湯掻きが終わったら、釜4から出して7日〜14日或いは30日程度の間放置して、図2に示すように、茹卵2の殻2aから調味液が卵の中身に浸透・拡散するのを待つ。この放置(保管)は、冷蔵庫で10℃前後の温度に保っておくと、腐敗の心配がない。大量の場合には、容器ごと保管してもよい。次いで、殻付き茹卵を小袋からだして洗浄・乾燥して、図2に示すような殻付き味付け茹卵7を得る。
【実施例10】
【0043】
調味液6としてソースを用い、実施例8と同様に処理して殻付き味付け茹卵7を得た。
【0044】
比較例1
まず、図4に示すようにして大量の生卵1を大型の容器3に数百個入れ、この容器を釜4に入れて湯掻く。釜4の中の水は低い温度から加熱して90℃程度まで上昇させる。又は、50〜60℃に加熱された釜で生卵を予熱させ、次いで90℃程度に加熱された釜に移して茹でる方法もある。次いで、次に図5に示すように調味液(醤油味8)を入れた装置9に容器3ごと浸漬し、このままの状態で冷蔵室に入れて数日間放置しておく。すると、醤油味が中身に浸透した茹卵が得られる。ただし、この方法では2回転しか処理できず、3回以上だと卵に苦みがついて食べられたものではない。
【産業上の利用可能性】
【0045】
1乃至複数個の殻付き茹卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、茹卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で数日乃至数十日間放置しておくことを特徴とする殻付き味付け茹卵の製造方法。
【符号の説明】
【0046】
1 生卵
2 固茹卵
3 容器
4 釜
5 小袋
6 調味液
7 本発明の殻付き味付け茹卵
8 調味液(塩味)
9 調味液(塩味)を入れた装置
10 シール
11 カット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1乃至複数個の殻付き茹卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、茹卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で数日乃至数十日間放置しておくことを特徴とする殻付き味付け茹卵の製造方法。
【請求項2】
茹卵は、固茹卵、半熟卵或いは温泉卵であり、茹でた後に冷却してから調味液に浸すものである、請求項1記載の殻付き味付け茹卵の製造方法。
【請求項3】
1乃至複数個の殻付き生卵をプラスチック製の小袋に収納するとともに、該袋の中に、生卵1個当たり2〜20ccの調味液を入れて封をし、その状態で茹でたのち冷却して、数日乃至数十日間放置しておくことを特徴とする殻付き味付け茹卵の製造方法。
【請求項4】
袋の中に、茹卵或いは生卵と調味液を入れた後に袋の中の空気を抜くか、或いは調味液を加圧して入れるものである、請求項1又は請求項3記載の殻付き味付け茹卵の製造方法。
【請求項5】
調味液は、塩味、醤油味、味噌味、カレー味、ガーリック味、生姜味、和風ダシ、かつお風味、おでん味、わさび味、とうがらし味、キムチ味、バター味、チーズ味、チキン味、ビーフ味、ロースト味、エビ味、カニ味、ホタテ味、エスニック風味・中華風味などのチリ添加風味などの呈味成分;抹茶味、コーヒー味、こぶ茶、バニラ・イチゴ・オレンジ・レモン・グレープ・シソ・ミント・チョコレート・メロンなどの香料味などの嗜好成分;或いはDHAやEPA、カルシウムやヨードなどのミネラル、各種ビタミン類、アミノ酸類などの栄養成分;ブランディ、ワイン、日本酒などのアルコール類を含んでなるものである、請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の殻付き味付け茹卵の製造方法。
【請求項6】
殻付き茹卵を1個ずつ収納するプラスチック製のチャック付き小袋を複数枚或いはプラスチック製小袋と封止具のセットを複数組と、醤油、ダシと醤油の混合液、砂糖にステビアとアルコール、塩それにバニラ、苺、バター味の香料などをそれぞれ加えた調味液を充填した複数の容器、及びプラスチック製小袋に茹卵と調味液をいれて封をしたものを複数個収納することができると共に茹卵を収納した日時を表示する手段を設けた容器からなることを特徴とする、殻付き味付け茹卵の製造装置セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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