説明

比熱測定方法及び熱伝導率測定方法

【課題】加熱と冷却とを繰り返すことなく、短い時間で広い温度範囲における試料の比熱または熱伝導率を連続的に測定する。
【解決手段】熱伝導率κが既知の熱結合体13を介して比熱cが未知の試料11を熱浴14に接続する。そして加熱ヒータ15を用いて所定の温度範囲の最高温度Tまで試料11を加熱した後加熱を停止する。その後試料11の温度が、熱浴14の温度Tになるまで、試料の温度Tを時間tに対して温度計12を用いて測定する。試料11の温度Tを時間tの関数として測定した結果から、温度Tの時間微分dT/dtを求める。熱結合体13の既知の熱伝導率κ(T)から、熱流Qの時間微分dQ/dtの演算をする。所定の温度範囲にわたって、C=(dQ/dt)/(dT/dt)の式に基づいて、試料の熱容量を計算し、物質量で割って比熱を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比熱の測定方法及び熱伝導率の測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物性物理学の分野では、固体の電気的、磁気的、熱的、その他の特性を測定し、これらの特性の相互関係を明らかにし、物質の性質を理解することが行われている。相転移現象もその一つで、超伝導転移や、磁気相転移、構造相転移などを観測するために比熱の測定実験が行われるのが一般的である。比熱の温度依存性を測定すると、相転移が1次であれば転移点で比熱が発散し、2次であれば転移点で比熱に不連続な跳びが生じる。このように、比熱の測定は相転移の証拠を確認すると共に転移温度の確定や転移の次数を判断する最も有力な手段である。しかし、基本的に比熱が熱量の温度微分であるため、比熱測定の実験は誤差が大きくなるという難しさがある。また、一般に熱測定は電気や磁気測定と比べて時間がかかるという特徴がある。
【0003】
比熱の測定法は、大きく断熱法と熱緩和法の2つに分類することができるが、本発明は熱緩和法の一種であるため、以下、熱緩和法について説明する。熱緩和法を用いた比熱の測定技術については、非特許文献1の92〜94頁および非特許文献2に解説がある。熱緩和法では、大きな熱容量を有する熱浴に、熱結合体を介して試料を緩く熱結合させた上で、試料に熱を加えて熱浴よりも温度を高くし、加熱を断った後の冷却速度と熱結合体の熱伝導率から比熱が測定できる。
【0004】
従来、熱緩和法の中で最も一般的に利用されている構成は図1に示すようなものである。この測定系では、試料(質量m、体積V)に温度計を設置し、熱伝導度K(定数)の熱結合体を介して試料を熱浴に緩く熱結合している。雰囲気は真空にして熱結合体以外の部分を通して熱の逃げがないようにしておく。熱浴の温度は、熱浴ヒータから熱浴に加える熱量をコントロールすることにより、低温熱源に逃げる熱量とバランスさせることによって温度Tに制御されている。そして図2に示すように、加熱ヒータによって試料に少量の熱を与えて、試料の温度を僅かにΔTだけ上げたのち加熱を断ち、温度上昇ΔTがTに向かって次の式によって緩和する間の緩和時間τを測定し、c=τK/mまたはc=τK/Vの関係式から温度Tにおける比熱cを求める。なおΔTの幅は、その温度範囲内で熱伝達度Kの温度依存性が無視できて一定とみなせるくらい狭い幅にとる。
【数1】

【0005】
次に熱浴ヒータによって熱浴の温度Tを少し上昇させ、同じ測定を行う。このようにして各温度で比熱を1点測定しては温度Tを少し上げ、同じ測定を繰り返して行き、所定の温度範囲に亘って測定を行う。
【0006】
この測定法における重要な問題は、従来の熱緩和法が上記式に基づいて比熱を求めるため、熱緩和中の熱結合体の熱伝導度を定数Kとして計算する必要がある点である。熱伝導度は一般に強い温度依存性があるため、Tからの温度上昇ΔTを僅か(例えば0.1K)に抑え、熱結合体全体の温度をほぼ一様と見なして測定が行われる。そのため、例えば4K〜40Kの比熱を測定するには、この測定を360回繰り返す必要がある。その結果測定のために、2〜3日もの長い時間がかかり、しかもデータは離散的となる。
【0007】
従来の定常法による熱伝導率の測定は、図3の構成で行われる。試料の一端を温度計と加熱ヒータを備えた高温熱浴に熱接触させ、他端を熱浴ヒータによって温度がT0に制御された低温熱浴に熱接触させる。もし、試料の両端と高温熱浴及び低温浴熱との熱接触部分に大きな熱抵抗がある場合には、二つの温度計を試料上の両端に近いところに設置することもある。次に、雰囲気を真空にして試料以外の部分を通して高温熱浴から熱が流出しないようにする。そして高温熱浴の温度を低温熱浴よりわずかにΔTだけ高くし、試料内に一定の熱流速度dQ/dtの熱流を生じさせる。このとき、その温度での熱伝導率κは次の式で計算できる。
【数2】

【0008】
ここで、Sは試料の熱流に垂直な断面の断面積、Lは試料の長さである。この式は非特許文献1の第55頁に記載されている。
【0009】
次に、熱浴ヒータにより低温熱浴の温度Tを少し高くし、次の測定温度に移り、上記と同じ測定を行う。これを繰り返して所定の温度範囲の熱伝導率κを測定する。
【0010】
この測定における重要な問題は、比熱測定と同じく、ΔTを小さくとり(例えば0.1K)、熱流速度dQ/dtを一定にし、熱伝導率κを一定とみなして測定されるため、4K〜40Kの温度範囲での測定に2〜3日もの長い時間がかかり、データは離散的になるという点である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】小林俊一、大塚洋一、低温技術(第2版)、東京大学出版会、1987年
【非特許文献2】長澤光晴、微小な有機導体単結晶の中低温領域における比熱精密測定、東京電機大学総合研究所年報、第28号(2008年)
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−201490号公報
【特許文献2】特開2006−64413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように従来の熱緩和法のように1回ずつ加熱ヒータで試料に熱を与えて広い温度範囲で比熱を測定すると、測定点が離散的であるため1つの測定点と次の測定点の間に相転移点が位置した場合、相転移に基づく比熱のピークや跳びを見逃す危険性があった。図4は、浜崎達一氏が2002年に九州産業大学国際文化学部紀要の第22行の153頁に発表した物理特性測定装置(PPMS)で測定した磁気比熱の測定結果の一例である。図4において、矢印のところに磁気相転移点があるように見えるが、データ密度が低いためあまり明瞭ではない。この測定結果からも、従来の緩和法を用いると時間がかかるため測定間隔が広く、データが離散的になることが判る。また従来の緩和法では、1点の比熱の測定に少なくとも20〜30分の時間がかかるため、図4に示されている2〜16Kの広い温度範囲で測定をするためには、20時間以上を要していた。
【0014】
本発明の目的は、加熱と冷却とを繰り返して1点ずつ測定するのではなく、短い時間で広い温度範囲に亘って試料の比熱を連続的に測定することができる比熱測定方法を提供することにある。
【0015】
また、本発明のもう一つの目的は、この比熱測定法とほぼ同じ構成で、従来の定常法のように1点ずつ測定することなく、短い時間で広い温度範囲における試料の熱伝導率を連続的に測定することができる熱伝導率測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の比熱測定方法では、熱伝導率κが既知の熱結合体を通して試料が熱緩和するときの温度の緩和速度から比熱を測定する。まず比熱cが未知の試料を、温度Tの熱浴に、熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知の熱結合体を介して熱結合する。そして所定の温度範囲の最高温度Tまで試料を加熱した後加熱を停止する。その後試料の温度が所定の温度範囲の最低温度Tになるまでの間、試料の温度Tを時間tの関数として測定する。また試料の温度T対時間tの測定結果から、温度Tの時間微分dT/dtを求める。そして最高温度Tから最低温度Tに至る過程における熱結合体を流れる熱流Qの時間微分dQ/dtを下記の式に基づいて求める。
【数3】

【0017】
但し、上記式においてLは熱結合体の長さであり、Sは熱結合体の熱流に垂直な方向の断面の断面積である。本発明では、試料の温度の時間微分dT/dtと熱流Qの時間微分dQ/dtの結果を用いて、試料の熱容量CをC=(dQ/dt)/(dT/dt)の式により求め、熱容量Cを試料の物質量(質量mまたは体積Vまたはモル数Mなど)で割ることによって比熱cを得る。
【0018】
本発明の比熱測定方法が従来の熱緩和法と本質的に異なるのは、従来の熱緩和法が熱結合体の熱伝導率を一定として前述の式に基づいて比熱を求めるのに対し、本発明では熱結合体の熱伝導率が温度依存するとして前述の式に基づいて熱流速度dQ/dtを求めた上で比熱を測定する点である。その結果、従来の熱緩和法に比べて格段に広い温度範囲を一度の熱緩和で測定でき、連続的なデータが得られるため比熱のピークや跳びを見逃すことがない。
【0019】
なお、温度Tの時間微分dT/dtに代えて温度Tの時間差分ΔT/Δtを求め、熱流Qの時間微分dQ/dtの結果を用いて、試料の熱容量CをC=(dQ/dt)/(ΔT/Δt)の式により求め、この熱容量Cを試料の物質量(質量mまたは体積Vまたはモル数Mなど)で割ることによって比熱cを得るようにしてもよい。
【0020】
なお前記式中の積分を、数値積分によって求めてもよく、解析的積分によって求めてもよい。また温度計とヒータは試料に直接設置するのが理想的であるが、試料が小さいなどの理由で直接設置するのが難しい場合は、試料を載せた試料ステージ上に設置してもよい。この場合、測定された熱容量から試料ステージ+温度計+ヒータの熱容量を差し引く必要がある。なおサーモグラフィ温度計のように間接的に試料の温度を測定するもので温度を測定するようにしてもよい。また試料の加熱は、光照射などの間接的な加熱であってもよい。更に、温度計とヒータを1つの抵抗体により構成してもよい。このようにすると、試料の熱容量に対する試料以外の部分の熱容量の割合が減少するため精度が向上する。
【0021】
また本発明の熱伝導率測定方法では、真空雰囲気中において、所定の温度範囲(T〜T)で試料の熱伝導率を測定する。まず熱容量Cの温度依存性が既知の材料を、温度Tの熱浴に、熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が未知の試料を介して熱結合する。そして所定の温度範囲の最高温度Tまで材料を加熱した後加熱を停止する。その後材料の温度が所定の温度範囲の最低温度Tになるまで材料の温度Tを時間tの関数として測定する。また材料の温度T対時間tの測定結果から、温度Tの時間微分dT/dtを求める。そして最高温度Tから熱浴の温度Tに至る過程で試料を流れる熱流Qの時間微分をdQ/dt=C(dT/dt)の式により求める。次に、求めた時間微分dQ/dtを下記の式に代入して試料の熱伝導率の温度依存性κ(T)を測定する。
【数4】

【0022】
但し、上記式においてLは熱結合体の長さであり、Sは熱結合体の熱流に垂直な断面の断面積である。
【0023】
なお、温度Tの時間微分dT/dtに代えて温度Tの時間差分ΔT/Δtを求め、熱流Qの時間微分dQ/dtに代えて試料を流れる熱流Qの時間差分ΔQ/Δt=C(ΔT/Δt)を求めて、この求めた時間差分ΔQ/Δtを下記式に代入して、試料の熱伝導率の温度依存性κ(T)を求めてもよい。
【数5】

【0024】
本発明の測定法によれば、連続的なデータとして熱伝達率を測定できるため、熱伝導率のわずかな変化や急激な変化を見逃すことがない。また測定に要す得る時間は、従来の定常法では数日の長時間を要するのに対し、本測定では例えば50分程度で測定を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の熱緩和法による比熱測定系を表す模式図である。
【図2】従来の熱緩和法による比熱測定原理を表す模式図である。
【図3】従来の定常法による熱伝導率測定法を表す模式図である。
【図4】従来の熱緩和法を用いて測定したNi0.71Mn0.29l2・2HOの比熱の温度変化である。
【図5】本発明の比熱測定方法を実施するための比熱測定系を表す模式図である。
【図6】本発明による比熱測定原理を表す模式図である。
【図7】本発明の比熱測定方法を実施するための測定系の構成の概略図である。
【図8】強磁性体ErNiを40Kから3.7Kまで冷却したときの冷却曲線である。10.5Kのところに比熱の大きな変化に基づく屈曲点が見られる。
【図9】図8から得られたErNiの比熱の温度依存性である。10.5Kのところに強磁性転移に基づく比熱のピークが見られる。
【図10】本発明に基づいて測定した鉛の比熱の絶対温度依存性である。7.2Kのところに超伝導転移に基づく比熱の小さな跳びが見られる。
【図11】比熱の跳びを見やすくするため、図9の鉛の比熱を絶対温度の2乗で割った値を絶対温度の2乗に対してプロットした図である。
【図12】本発明の熱伝導率測定方法を実施するための測定系の構成の概略図である。
【図13】ステンレス試料を通して材料21が冷却するときの温度変化を表す図である。
【図14】図13から得られたステンレス試料の熱伝導率の温度依存性である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照して、所定の温度範囲において比熱を測定する本発明の比熱測定方法及び熱伝導率測定方法の実施の形態を詳細に説明する。図5は、本発明の比熱測定方法を実施するための比熱測定系の構成の概略を示す図である。図5において、符号1で示した部材は、比熱cが未知の試料であり、符号2で示した部材は試料1の温度を測定する温度計である。符号3で示した部材は、熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知の熱結合体である。符号4で示した部材は、熱結合体3を介して試料1に熱結合された熱浴である。符号5で示した部材は、試料1を一様に加熱することができる抵抗体からなる加熱ヒータであり、符号6で示した部材は、熱浴4を加熱する熱浴ヒータである。なお熱浴4は低温熱源7に熱的に結合されている。低温熱源7としては、ヘリウムガスの圧縮と膨張を繰り返して冷凍を発生する極低温用の小型冷凍機(GM冷凍機)を使用することができる。
【0027】
まず温度Tの熱浴4を用意し、測定したい所定の温度範囲T〜T(ここで、T<T)を設定する。次に、図5に示すように、熱容量C(T)が未知の試料1を、熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知の熱結合体3(熱流に垂直な断面の面積が熱流方向に沿って一様である)を介して熱浴4に緩く熱結合する。そして、試料1の雰囲気を真空にして断熱した上で、所定の温度範囲の最高温度Tまで試料1を加熱した後加熱を停止し、その後試料1の温度が熱浴の温度Tになるまで冷却していく間、図6のように試料1の温度Tを温度計2により時間tに対して測定し記録する。次に試料1の温度T対時刻tの測定結果から、温度Tの時間微分dT/dtを求める。ただし、図6中の時間微分dT/dtは見やすいようにdTとdtの幅を大きく表現している。
【0028】
また熱結合体3の長さをL、熱結合体3の熱流に垂直な方向の断面の断面積をS、熱結合体の熱伝導率の温度依存関数をκ(T)とし、温度Tから温度Tに至る冷却過程で熱結合体3を流れる熱流Qの時間微分dQ/dtを下記の式(3)に基づいて求める。下記の式(3)は非特許文献1の第57頁に記載されている。この際、熱結合体の熱伝導率κ(T)の温度積分は、予め実験によって各温度で測定したκ(T)の値を用いて数値積分してもよい。あるいは、銅などの純金属の場合には低温での熱伝導率がAを定数としてκ(T)=ATで表されることが理論的に知られているので、予備実験によって定数Aを求めておき解析的に積分してもよい。
【0029】
下記式(3)は、本来、定常状態のときに成り立つものであって、試料が温度変化しているときは誤差が生じるが、試料の温度変化が緩やであれば定常状態としても誤差が無視できるほど小さいことが判っている。この演算は、比熱の計算よりも前に行っておくのは勿論である。
【数6】

【0030】
そして、測定した温度Tの時間微分dT/dtと、上記式(3)で計算したdQ/dtを、下記式(4)に代入し比熱c(T)を求める。
【数7】

【0031】
ここで、mは試料の質量である。上記式(4)中の質量mの代わりに体積Vまたはモル数Mなどが用いられることもある。
【0032】
本実施の形態の比熱測定方法が従来の熱緩和法と本質的に異なるのは、従来の熱緩和法が熱結合体の熱伝導率を一定として上記(1)式に基づいて比熱を求めるのに対し、本実施の形態では熱結合体の熱伝導率が温度依存することを前提として上記(3)式に基づいて熱流速度dQ/dtを求めた上で比熱を測定する点である。その結果、従来の熱緩和法に比べて格段に広い温度範囲を一度の熱緩和で測定できる。例えば、4K〜40Kの温度範囲を測定するのに要す得る時間は、従来の緩和法では2〜3日程度かかるのに対して、本発明によれば、30分程度で完了することができる。また、本実施の形態によれば、得られる比熱のデータは、離散的なデータではなく連続的なデータとなるため、相転移現象に伴う極めて小さな比熱のピークでも見逃すことなく極めて高い精度で検出ことが可能になる。
【0033】
測定データから比熱を計算する過程は、測定中にリアルタイムに行ってもよいし、全てのデータを採り終えた後でまとめて行ってもよい。所定の温度範囲は任意であるが、その温度範囲内で熱結合体の熱伝導率が温度依存性を持っていて一定とみなすことができないくらい広い範囲を温度範囲とすることができるのが本実施の形態の方法の特徴であり、従来の熱緩和法と本質的に異なる点である。例えば典型的な例として、熱浴4の温度Tが4Kで、最高温度Tが40K程度になるように温度範囲を定め、ステンレスの熱結合体3を用いたとすると、熱伝導率は温度4Kでの0.25W/m・Kから温度40Kでの4.5W/m・Kまで15倍変化するため、熱伝導率は一定とみなすことはできない。この温度範囲は、従来の熱緩和法の熱緩和範囲約0.1Kと比べてはるかに大きく設定されている。
【0034】
なお、温度Tの時間微分dT/dtに代えて温度Tの時間差分ΔT/Δtを求め、熱流Qの時間微分dQ/dtの結果を用いて、試料の熱容量CをC=(dQ/dt)/(ΔT/Δt)の式により求め、この熱容量Cを試料の物質量(質量mまたは体積Vまたはモル数Mなど)で割ることによって比熱cを得るようにしてもよい。
【0035】
図7は、本発明の比熱測定方法を実施するための比熱測定系の実際の構成の一例の概略を示す図である。図7において、図5に示した構成部材と同様の部材には、図5に示した構造部材に付した符号に10の数を加えた数の符号を付してある。符号11で示した部材は、比熱c(T)が未知の試料であり、試料11は、熱伝導率の高い銅製の試料ステージ18の上面上に少量のグリースにより熱接触させて載置されている。この例の試料ステージ18は、6×6×0.1mmの大きさを有している。試料ステージ18の下面上には、試料11の温度を試料ステージ18を介して間接的に測定する酸化ルテニウム抵抗温度計12と酸化ルテニウム抵抗からなる加熱ヒータ15とが固定されている。試料ステージ18は、熱伝導率の温度依存関数κ(T)が既知のステンレス製の熱結合体13によって、大きな銅製の熱浴14に結合されている。熱結合体13は、直径0.1mm及び長さ6mmの4本のステンレスロッドによって構成されている。熱浴14は、円筒状を有しており、試料ステージ18は熱浴14の開口部上に熱結合体13により架設された状態になっている。熱浴14の周囲には、マンガニン製の抵抗体からなる熱浴ヒータ16が巻装されている。熱浴14は、ヘリウムガスの圧縮と膨張を繰り返して冷凍を発生する極低温用の機械式小型冷凍機(GM冷凍機)のセカンドステージ17に接続されている。冷凍機のセカンドステージ17は、図5の低温熱源7を構成するものである。熱浴14の上には、周りからの熱輻射によって試料11の温度が上がるのを防止する銅製の輻射シールド19が試料を取り囲むように配置されている。なお図7においては、理解を容易にするために、輻射シールド19を透明なものとして描いてある。
【0036】
なお本実施の形態では、抵抗温度計12と加熱ヒータ15はどちらも酸化ルテニウム製の抵抗体である。抵抗温度計12は、温度の変化により抵抗値が変わる抵抗体を温度センサとして使用するものである。これらは同時に使う必要はないので、1個で温度計と加熱ヒータの用途を兼ねる1つの抵抗体だけを試料ステージ18の下面に配置するようにしてもよいのは勿論である。
【0037】
本実施の形態では、まず熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知の熱結合体13を介して比熱c(T)が未知の試料11を熱浴14に接続する。そして加熱ヒータ15を用いて所定の温度範囲の最高温度Tまで試料1を加熱した後加熱を停止する。その後試料11の温度が、熱浴14の温度Tまで冷却していく間、試料の温度Tを所定の時間間隔で温度計12を用いて測定する。また熱結合体13の長さをL、断面積をS、熱伝導率の温度依存関数をκ(T)とし、温度Tから温度Tに至る過程で熱結合体4を流れる熱流Qの時間微分dQ/dtを前記の(3)式に基づいて求める。熱結合体13については、すでに熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知であるため、熱流Qの時間微分dQ/dtの演算は、温度の測定よりも前に行うことができる。
【0038】
なお、各物質の熱伝導率の温度依存性κ(T)については、例えば非特許文献1の第56頁に掲載されている。
【0039】
そして本実施の形態では、所定の温度範囲に亘って、前記(4)式に基づいて、試料の比熱を連続的に測定する。その結果、転移現象に伴う極めて小さな比熱のピークでも極めて高い精度で検出ことが可能になる。また測定に要す得る時間は、従来の緩和法では1日程度かかるのに対して、本発明によれば、例えば30分程度で所定の温度範囲における比熱の測定を完了することができる。
【0040】
実際には、測定された熱容量の中には試料を載せる試料ステージやヒータや温度計など(アデンダと呼ぶ)の熱容量も含まれているので、試料を載せないアデンダだけの熱容量をあらかじめ別の実験から求めておき測定値から差し引く。
【0041】
なお本発明の測定で、温度T対時間tの記録をペンレコーダ等アナログ的に行う場合には連続測定となるが、デジタル的に記録する場合には、所定のサンプリング時間間隔で記録していくため前記微分dT/dtは温度変化ΔTを有限のサンプリング時間間隔Δtで割った差分ΔT/Δtで置き換えられる。
【0042】
所定の温度範囲は任意であるが、その温度範囲内で熱結合体の熱伝導率が温度依存性を持っていて一定と見なされないくらい広い範囲を採るのが本発明の特徴であり、従来の熱緩和法と本質的に異なる点である。例えば典型的な例として、熱浴の温度Tが4Kで、Tが40K程度になるように温度範囲を定め、ステンレスの熱結合体を用いたとすると、熱伝導率は温度4Kでの0.25W/m・Kから温度40Kでの4.5W/m・Kまで15倍変化し、一定と見なすことはできない。この温度範囲は、熱緩和法の典型的な熱緩和範囲約0.1Kと比べてはるかに大きく設定されている。
【0043】
次に本実施の形態の比熱測定方法を用いて実際に比熱の測定を行った結果について説明する。図8は、試料11として極低温用の磁性蓄冷材であるErNi合金37.2mgを用い、熱結合体13としてステンレス線を用い、熱浴の温度T=3.7Kとし、最高温度T=40Kまで試料11を加熱して熱緩和を行ったときの、温度Tの変化と時間tとの関係をデジタル的に時間間隔2秒で記録したものである。そして図9は、図8を基に式(3)と式(4)を用いて求めた比熱c(T)と温度Tとの関係を示している。ただし、温度の記録はデジタル的に行っているため、式(4)中の微分dT/dtの代わりに差分ΔT/Δtを用いた。図9から明らかなように、測定した比熱には、10.5Kに大きなピークとして強磁性の磁気相転移が明確に表れている。なお図9の測定結果を得るのにかかった時間は約30分である。このグラフの曲線は実際には点の集合であるが、測定点の間隔が密であるためほぼ連続曲線とみなせる。このようにグラフがほぼ連続的な曲線で表されるため、小さな比熱のピークや跳びを見逃すことがない。
【0044】
また図10は、試料11として鉛(Pb)73.0mgを用い、T=12KとT=3.7Kの間で、ErNiの場合と同じ方法で比熱を測定した結果(比熱cと絶対温度Tとの関係)を示している。図10中の矢印の位置に超伝導転移点がある。図10のデータを局部的に拡大し見やすくするために、比熱cを絶対温度Tの二乗で割ったもの(c/T)を絶対温度Tの二乗(T)に対してプロットし直したものを図11に表示する。図11からは、超伝導転移に基づく比熱の跳びが明確に判る。なお図10の測定結果を得るのに要した時間はわずか6分程度であった。
【0045】
以上の試験結果から、本発明の実施の形態によれば、短い時間で比熱を測定することができて、しかも従来の緩和法ではデータ点の間に埋もれて見えない極めて小さな比熱の跳びの存在を確認できるほど高い精度かつ緻密なデータ密度で比熱を測定することができることが判る。また、試料の量も数十mgという微量で測定できる。
【0046】
次に図12を用いて、本発明の熱伝導率測定方法の実施の形態について説明する。図12は、本発明の熱伝導率測定方法を実施するための熱伝導率測定系の構成の概略を示す図である。図12において、符号21で示した部材は熱容量の温度依存関数C(T)が既知の材料であり、本実施の形態では材料21として銅1.10gを用いた。なお材料21は任意であるが、例えば銅や銀のように所定の温度範囲内に相転移などの異常がなく、熱容量が温度に対して滑らかに変化している物質が望ましい。なぜなら、相転移があるとその転移点付近で温度の急激な変化があるため測定結果に少なからず影響を与えるためである。また、材料21全体の温度が均一になるように材料21の熱伝導率は大きいほうが望ましい。材料21の冷却速度があまり遅いと、試料23以外の部分を通って逃げる熱の割合が多くなり誤差が大きくなる。逆に材料21の冷却速度が速いと材料21内に温度勾配が生じるなど非平衡の度合いが大きくなって温度依存関数κ(T)を求める下記(5)または(6)式の誤差が大きくなる。材料21の熱容量と試料23の熱伝導率のバランスによって冷却速度が決まるため、適当な冷却速度になるように試料23の断面積Sと長さLを調整するのが好ましい。
【0047】
本実施の形態でも、材料21の温度を測定する温度計22として、酸化ルテニウムを用いた。ステージ28は、材料21を載せる銅製のステージである。このステージ28は、熱伝導率の温度依存性κ(T)が未知の試料(熱結合体)23によって、熱浴24の開口部に架設されている。試料23は、長さ6mm、断面積3.1×10-2 mm2(1本に換算時)のステンレスロッドである。熱浴24及びGM冷凍機のセカンドステージ(温度3.7K)27は、図7に示されたものと同様のものである。加熱ヒータ25は、材料21を一様に加熱することができる電気ヒータであり、酸化ルテニウム抵抗により構成されている。温度計22とヒータ26と材料21を載せるステージ28はいずれも材料11に比べて寸法が極めて小さいので熱容量は無視できる。符号26で示した部材は熱浴ヒータであり、符号29で示した部材は輻射シールドである。
【0048】
図12の構成を用いた具体的な熱伝導率測定方法では、まず熱浴24の温度を温度Tとし、測定したい所定の温度範囲T〜T(ここで、T<T)を設定する。熱伝導率を測定したい試料23は、断面積が一定の細長い形状に加工されている必要がある。この試料の一端を熱浴24に熱結合し、他端を加熱ヒータ25と温度計22が装着されたステージ28を介して熱伝導度の大きな材料21に熱結合する。この加熱ヒータ25と温度計22が装着されたステージ28上の材料21がもつ熱容量の温度依存関数C(T)を、あらかじめ別の実験から求めておく。そして試料23の雰囲気を真空として断熱した上で、材料21の温度が所定の温度範囲の最高温度Tになるまで加熱ヒータ25により加熱した後加熱を停止する。そしてその後材料21の温度が熱浴の温度Tになるまで材料21の温度Tを時間に対して測定する。そして材料21の温度T対時刻tの測定結果から、温度Tの時間微分dT/dtを求める。また最高温度Tから熱浴24の温度Tに至る過程で試料23を流れる熱流Qの時間微分dQ/dtをdQ/dt=C(T)(dT/dt)の式により求める。このdQ/dtを下記(5)式に代入することにより、試料の熱伝導率の温度依存性κ(T)を測定する。
【数8】

【0049】
ただし、ここでLは試料の長さ表し、Sは試料の断面積を表す。上記(5)式は、前述のdQ/dtを求める(3)式の両辺を温度Tで微分することによって得られる。
【0050】
なお比熱測定と同様、温度T対時間tの記録をペンレコーダ等アナログ的に行った場合には連続測定となるが、デジタル的に記録する場合には、所定のサンプリング時間間隔で記録していくため(5)式中の微分d(dQ/dt)/dTは差分Δ(ΔQ/Δt)/ΔTで置き換えられる。この場合には、温度Tの時間微分dT/dtに代えて温度Tの時間差分ΔT/Δtを求め、熱流Qの時間微分dQ/dtに代えて試料を流れる熱流Qの時間差分ΔQ/Δt=C(ΔT/Δt)を求めて、この求めた時間差分ΔQ/Δtを下記(6)式に代入して、試料の熱伝導率の温度依存性κ(T)を測定してもよい。
【数9】

【0051】
本実施の形態の熱伝導率測定方法は、試料(熱結合体)23を介して熱浴24に接続される材料21の熱容量が既知であるとの前提で熱伝導率を測定する。
【0052】
本実施の形態の熱伝導率測定方法が従来の定常法と本質的に異なるのは、従来の定常法では試料両端の温度差を小さく設定することで試料全体の熱伝導率を一定とみなして演算を行って測定するのに対し、本測定法では試料両端の温度差を大きく設定し試料の熱伝導率が温度依存性を有するものとして上記(5)または(6)式に基づいて熱伝導率を測定する点である。その結果、例えば4K〜40Kの温度範囲での測定では、従来の測定では0.1K刻みで測定したとして360点の離散的データとなるのに対し、本実施の形態の測定法では連続的なデータとして測定できる。また測定に要する時間は、従来の定常法では数日の長時間を要するのに対し、本測定では50分程度で完了することができる。
【0053】
なおこの場合においても、所定の温度範囲は任意であるが、試料の熱伝導率が一定とみなせないくらい広い温度範囲にとることができる。例えば試料23としてステンレスを用い、熱浴24の温度Tが4K、最高温度Tが40K程度になるように温度範囲を定めると、熱伝導率は温度4Kでの0.25W/m・Kから温度40Kでの4.5W/m・Kまで15倍変化する。しかしながら、上記(5)式または(6)式を用いた本実施の形態の測定方法では、このように熱伝導率が大幅に変化する場合であっても、熱伝導率の温度依存性を測定することができる。
【0054】
本実施の形態において、試料23としてステンレスを用い、それを通して材料21がT=36KからT=4Kまで冷却するときの温度の時間変化を2秒間隔で測定記録したものを図13に示す。図13から、dQ/dt=C(T)(dT/dt)の式によりΔQ/Δtを求め前記(6)式に代入して熱伝導率を求めた結果が図14であり、文献値と良い一致を示す。
【0055】
この測定結果から、本実施の形態によれば、ほぼ連続データとして測定結果を示すことできる。それに対し、従来の定常法を用いた測定では、離散的な測定データとなる。したがって本実施の形態によれば、熱伝導率の温度依存性グラフに小さな不連続点や屈曲点がある場合でも見逃すことがなく、従来の方法よりも高い精度で試料23の熱伝導率の温度依存性κ(T)を連続的に測定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、比熱と熱伝導率を離散的なデータではなく連続的なデータとして測定することができる。そのため転移現象に伴う極めて小さな比熱のピークでも見逃すことなく極めて高い精度で検出ことが可能になる。また測定に要す得る時間は、従来の熱緩和法による比熱測定や定常法による熱伝導率測定では1日〜数日程度かかるのに対して、本発明によれば、数十分以内で所定の温度範囲における比熱と熱伝導率の測定を完了することができる。
【符号の説明】
【0057】
11 試料
12,22 温度計
13 熱結合体
14,24 熱浴
15,25 加熱ヒータ
16,26 熱浴ヒータ
17,27 GM冷凍機のセカンドステージ
18 試料ステージ
19,29 輻射シールド
21 材料
23 試料(熱結合体)
28 ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空雰囲気中において、所定の温度範囲(T〜T)で試料の比熱を測定する比熱測定方法であって、
比熱cが未知の前記試料を、温度Tの熱浴に、熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知の熱結合体を介して熱結合し、
前記所定の温度範囲の最高温度Tまで前記試料を加熱した後加熱を停止し、
その後前記試料の温度が前記所定の温度範囲の最低温度Tになるまでの間、前記試料の温度Tを時間tの関数として測定し、
前記試料の温度T対時間tの測定結果から、前記温度Tの時間微分dT/dtを求め、
前記最高温度Tから前記最低温度Tに至る過程における前記熱結合体を流れる熱流Qの時間微分dQ/dtを下記の式に基づいて求め、
【数1】

但し、上記式においてLは前記熱結合体の長さであり、Sは前記熱結合体の熱流に垂直な方向の断面の断面積であり、
前記試料の温度の時間微分dT/dtと前記熱流Qの時間微分dQ/dtの結果を用いて、前記試料の熱容量C(T)をC(T)=(dQ/dt)/(dT/dt)の式により求め、前記熱容量C(T)を前記試料の物質量で割ることによって前記比熱c(T)を得ることを特徴とする比熱測定方法。
【請求項2】
真空雰囲気中において、所定の温度範囲(T〜T)で試料の比熱を測定する比熱測定方法であって、
比熱cが未知の前記試料を、温度Tの熱浴に、熱伝導率κの温度依存関数κ(T)が既知の熱結合体を介して熱結合し、
前記所定の温度範囲の最高温度Tまで前記試料を加熱した後加熱を停止し、
その後前記試料の温度が前記所定の温度範囲の最低温度Tになるまでの間、前記試料の温度Tを所定の時間間隔で測定し、
前記試料の温度T対時間tの測定結果から、前記温度Tの時間差分ΔT/Δtを求め、
前記試料の温度が前記最高温度Tから前記最低温度Tに至る過程における前記熱結合体を流れる熱流Qの時間微分dQ/dtを下記の式に基づいて求め、
【数2】

但し、上記式においてLは前記熱結合体の長さであり、Sは前記熱結合体の熱流に垂直な方向の断面の断面積であり、
前記試料の温度の時間差分ΔT/Δtと前記熱流Qの時間微分dQ/dtの結果を用いて、前記試料の熱容量C(T)をC(T)=(dQ/dt)/(ΔT/Δt)の式により求め、前記熱容量C(T)を前記試料の物質量で割ることによって前記比熱c(T)を得ることを特徴とする比熱測定方法。
【請求項3】
前記式中の積分を、数値積分によって求める請求項1または2に記載の比熱測定方法。
【請求項4】
前記式中の積分を、解析的積分によって求める請求項1または2に記載の比熱測定方法。
【請求項5】
前記試料の温度測定を、試料を載せた試料ステージに設置した温度計により行い、前記試料の加熱を前記試料ステージに設置したヒータにより行う請求項1または2に記載の比熱測定方法。
【請求項6】
前記温度計と前記ヒータが、1つの抵抗体により構成されている請求項5に記載の比熱測定方法。
【請求項7】
真空雰囲気中において、所定の温度範囲(T〜T)で試料の熱伝導率を測定する熱伝導率測定方法であって、
熱容量Cの温度依存関数C(T)が既知の材料を、温度Tの熱浴に、熱伝導率κの温度依存性κ(T)が未知の試料を介して熱結合し、
前記所定の温度範囲の最高温度Tまで前記材料を加熱した後加熱を停止し、
その後前記材料の温度が前記所定の温度範囲の最低温度Tになるまで前記材料の温度Tを時間tの関数として測定し、
前記材料の温度T対時間tの測定結果から、前記温度Tの時間微分dT/dtを求め、
前記最高温度Tから前記熱浴の温度Tに至る過程で前記試料を流れる熱流Qの時間微分をdQ/dt=C(T)(dT/dt)の式により求め、
求めた時間微分dQ/dtを下記の式に代入して前記試料の前記熱伝導率κの温度依存性κ(T)を求め、
【数3】

但し、上記式においてLは前記熱結合体の長さであり、Sは前記熱結合体の熱流に垂直な方向の断面の断面積である熱伝導率測定法。
【請求項8】
真空雰囲気中において、所定の温度範囲(T〜T)で試料の熱伝導率を測定する熱伝導率測定方法であって、
熱容量Cの温度依存関数C(T)が既知の材料を、温度Tの熱浴に、熱伝導率κの温度依存性κ(T)が未知の試料を介して熱結合し、
前記所定の温度範囲の最高温度Tまで前記材料を加熱した後加熱を停止し、
その後前記材料の温度が前記所定の温度範囲の最低温度Tになるまでの間、前記試料の温度Tを所定の時間間隔で測定し、
前記材料の温度T対時間tの測定結果から、前記温度Tの時間差分ΔT/Δtを求め、
前記最高温度Tから前記熱浴の温度Tに至る過程で前記試料を流れる熱流Qの時間差分をΔQ/Δt=C(T)(ΔT/Δt)の式により求め、
求めた時間差分ΔQ/Δtを下記式に代入して、前記試料の熱伝導率κの温度依存性κ(T)を求め、
【数4】

但し、上記式においてLは前記熱結合体の長さであり、Sは前記熱結合体の熱流に垂直な方向の断面の断面積である熱伝導率測定法。
【請求項9】
前記式中の積分を、数値積分によって求める請求項7または8に記載の熱伝導率測定方法。
【請求項10】
前記式中の積分を、解析的積分によって求める請求項7または8に記載の熱伝導率測定方法。
【請求項11】
前記試料の温度測定を、試料を載せた試料ステージに設置した温度計により行い、前記試料の加熱を前記試料ステージに設置したヒータにより行う請求項7または8に記載の熱伝導率測定方法。
【請求項12】
前記温度計と前記ヒータが、1つの抵抗体により構成されている請求項11に記載の熱伝導率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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