説明

比重及び成分濃度が変動する系の成分濃度分析方法、成分濃度分析装置及び成分濃度管理装置

【課題】経時的に比重及び成分濃度が変動する系における簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置を提供する。
【解決手段】分析部10は、分析セル11、ロードセル12、光学センサ13、白色撹拌部材支持手段14を具備する。分析セル11には、被検物供給ラインLs、滴定試薬供給ラインLtn、指示薬供給ラインLIn、希釈水供給ラインLw及び排出ラインLdがそれぞれ接続されている。分析セル11内の被検物の重量及び光学センサ13により検出した滴定終点から成分の重量濃度を測定し、系の比重を演算して、成分の容量濃度を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系の成分濃度分析方法及び成分濃度分析装置に関する。
また、本発明は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系の成分濃度管理に適する成分濃度分析方法及び成分濃度分析装置に関する。特に、多成分系中の各成分の濃度管理に適する成分濃度分析方法及び成分濃度分析装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系の成分濃度管理装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば湿式表面処理に用いられる表面処理液は、経時的に成分濃度及び比重が変動することが知られている。しかし、被処理物の品質を維持するためには表面処理液の組成を常に一定に維持する必要がある。このため、一定間隔で表面処理液の分析を行い、不足成分を補給することが行われている(特公平3−65489号公報)。
【0004】
現在、市販されている自動分析装置においては、シリンジ及びチューブポンプ等を用いて、滴定分析により成分の容量濃度を求めている。しかし、シリンジ及びチューブポンプを用いる場合には、分析試料又は滴定試薬中に気泡が発生し、正確な測定値が得られないという問題がある。また、シリンジの老朽化により、外部から気体が流入してしまって気泡が発生し、正確な測定値が得られないという問題もある。
【0005】
そこで、シリンジによる容量分析に代えて、ロードセルを用いる重量濃度分析方法が提案されている(特開平7−134112号公報)。しかし、工業的な湿式表面処理など多量の表面処理液を使用する場合には、成分濃度の調整を重量ではなく容量で行うことが一般的である。そこで、ロードセルを用いて測定した重量濃度を容量濃度に変換することが必要になるが、重量から容量への変換は、被検物の比重が一定でなければ正確な濃度は得られない。すなわち、湿式表面処理液など、成分濃度及び比重が経時的に変動する系においては、比重の経時的な変動を入力しなければ精密な成分濃度の測定ができないことになる。ところが、工業的に連続湿式表面処理を行う場合には、経時的に変動する比重を実測して湿式表面処理液の濃度制御を行うことは煩雑であり、実質上不可能である。そこで、経時的に比重及び成分濃度が変動する系の成分濃度を簡易且つ精密に、好ましくは自動的に制御する方法及び装置が必要とされている。
【0006】
一方、重量濃度分析に際しては、一般的に、被検物に試薬を滴下して被検物に生じる変化を検出する滴定分析方法が用いられている。被検物に生じる変化としては、pH変化、酸化還元電位変化、伝導度変化、色変化などがあり、それぞれ、pH計、酸化還元電極、伝導度測定電極、比色センサなどを用いて計測している。しかし、pH計、酸化還元電極及び伝導度測定電極などは、常に被検物液中に浸漬させておく必要があり、被検物成分や汚染物の付着などによる感度低下のため、頻繁に交換する必要がある。また、pH計はガラス電極であるから壊れやすく、KCl溶液を毎日注入しなければならず、メンテナンスが煩雑である。比色センサは、検量線を必要とし、また、単色光を対象としているので成分ごとにフィルタを交換する必要があり煩雑である。そこで、メンテナンスが不要で、簡単に滴定終点を検出することができる滴定分析方法及び装置が求められている。
【特許文献1】特公平3−65489
【特許文献2】特開平7−134112
【特許文献3】特開2001−296305
【特許文献4】特開平6−273368
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系における簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置を提供することにある。
また、本発明の目的は、メンテナンスが不要で、簡単に滴定終点を検出する方法及び装置を組み入れた経時的に比重及び成分濃度が変動する系の簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の目的は、例えば湿式表面処理装置などにおける処理槽中の表面処理液の成分濃度を一定に維持するための成分濃度管理方法及び装置に適用できる、簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置を提供することにある。
【0009】
さらにまた、本発明の目的は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系における成分濃度を正確に一定範囲の成分濃度に維持する、成分濃度管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、経時的に比重及び成分濃度が変動する系の比重を演算により求めて、成分重量濃度を成分容量濃度に変換する成分濃度分析方法が提供される。本分析方法は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系であれば、いかなる系にも適用可能であるが、湿式表面処理など、常に正確な成分濃度を維持することが求められる系、例えば工業的に湿式表面処理を行う半導体製造工程などの成分濃度の連続精密制御が必要とされる系に最適である。具体的には、例えば、プリント基板などの電気回路基板から特定量の銅を溶解除去するためのエッチング液の濃度管理に適用することができる。
【0011】
本発明において、経時的に変動する系の比重の演算は、経時的に変動する系の比重と成分重量濃度との関係式を予め作成しておき、成分重量濃度の測定値を関係式に代入して、比重を求めることにより行うことができる。
【0012】
例えば、水を溶媒とし、過酸化水素、硫酸及び銅からなる三成分系を溶質とした系の比重と各成分重量濃度との関係式を求める場合を例にして説明する。
試料調製用試薬として、過酸化水素=5%(50g/kg)、硫酸=40%(400g/kg)及び銅=2%(20g/kg)の組合せを用い、下記表1に示す8点の試料を調製し、ウォーターバス等を用い全て同一の温度(20℃〜40℃)にする。
【0013】
【表1】

【0014】
調製した試料8点それぞれについて、比重測定用機器として、ピクノメータ(50ml)及び電子天秤を用いて、以下の手順により比重を測定する。
(1)ピクノメータの乾燥重量を電子天秤で測定し、風袋重量とする。
(2)各試料をピクノメータに充填し、電子天秤で風袋込重量を測定する。
(3)比重(20℃における)は、下記式1
【0015】
【数1】

【0016】
により計算して求める。
各試料の成分濃度(重量%)および比重実測値を下記表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
水を溶媒とする過酸化水素、硫酸及び銅の三成分系における系の比重dは、下記関係式2により求めることができる。
【0019】
【数2】

【0020】
一定濃度以下では、成分の増加と比重の増加とは一次式(直線)で表すことができるので、各成分が単独で比重に与える影響は、次式のようになる。
【0021】
【数3】

【0022】
しかし、二成分以上を組み合わせた場合には、下記表3に示すように、ある成分の濃度を変化させると他の成分の比重に対する一次式の傾きが変化する。
【0023】
【表3】

【0024】
本発明者らは、各成分が相互に影響を及ぼし合い、比重を変化させるものであると推測し、各成分の相互影響の係数を求め、比重演算式に導入することで解決できることを知見した。各成分が相互に比重に与える影響は、次式のようになる。
【0025】
【数4】

【0026】
【数5】

【0027】
【数6】

【0028】
【数7】

【0029】
以上の計算に基づき、式2の過酸化水素/硫酸/銅系溶液の比重演算式(各濃度は重量%)は、下記のように表すことができる。
【0030】
【数8】

【0031】
次に、各成分、過酸化水素、硫酸及び銅の重量濃度を計測して、各成分の重量濃度測定値を上記比重演算式に代入して、系の比重を求めることができる。次いで、系の比重と各成分の重量濃度測定値とから各成分の容量濃度を演算により求めることができる。
【0032】
なお、上記比重演算式は、過酸化水素、硫酸及び銅の三成分系について求めたものであるが、系の成分が異なれば係数が異なることは容易に理解されよう。測定対象である系の各成分の重量濃度と系の比重とを予め測定して、演算式を求めることにより、本方法を種々の成分系に適用することができる。また、比重演算式を求めるにおいて、上記以外にも回帰分析等により比重演算式を求めることも可能である。
【0033】
本発明において、被検物重量の測定は、採取した被検物の重量を重量センサ、例えばロードセルを用いて測定することにより行うことができる。ロードセルを用いて重量を測定する場合には、被検物及び滴定試薬などの供給を精密に制御しなくても正確な重量測定を行うことができ、液面センサなどを必要とせずに残液を検知したり、オーバーフローを防止することができるので、好ましい。
【0034】
本発明において、成分濃度の測定は、滴定分析法により行うことが好ましい。滴定終点の検出は、滴定方法により酸化還元電極電位の測定、伝導度の測定、pHの測定、比色センサによる光の透過率の測定などにより行うこともできる。しかし、酸化還元電極、伝導度測定電極、pH計及び比色センサのメンテナンスの必要性や取り扱い上の問題点を考慮すれば、成分に応じた滴定指示薬を用いる滴定分析により行い、滴定分析の終点検出は成分に応じた色彩の変化を検出することにより行うことが好ましい。例えば、測定対象成分が過酸化水素の場合には、過マンガン酸カリウムを滴定試薬として用い、被検液の色彩が無色から紫色に変化した時点を滴定終点とする酸化還元滴定分析により行うことができる。測定対象成分が硫酸の場合には、水酸化ナトリウムを滴定試薬として用い、メチルオレンジを指示薬として用い、被検液の色彩が赤色から黄色に変化した時点を滴定終点とする中和滴定分析により行うことができる。また、測定対象成分が銅の場合には、アンモニアを錯化剤として用い、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を滴定試薬として用い、5−Br−PAPS(2-(5-Bromo-2-pyridylazo)-5-[N-n-propyl-N(3-sulfopropyl)amino]-phenol, disodium salt, dihydrate;分子式C17H19BrN4Na2O4S・H2O)を指示薬として用い、被検液の色彩が紫色から緑色に変化した時点を滴定終点とするキレート滴定分析により行うことができる。当業者には明らかなように、滴定方法、滴定試薬及び指示薬は、測定対象成分に応じて適宜選択することができる。
【0035】
これらの被検液の色彩の変化は、光学センサを用いて検出することが好ましい。光学センサは、被検物及び被検物に添加した指示薬の色彩の変化を検出することができるものであれば、特に限定されず、任意の光学センサを用いることができる。例えば、投光した光が物体により反射してくる反射光、あるいは物体を透過してくる透過光を、例えば、赤色、緑色、青色の異なる波長の光ごとに受光し、受光した光ごとの各受光量に基づいて物体の色彩を検出する色識別センサなどの光学センサを好ましく用いることができる。このような光学センサは、センサ部分を被検液中に浸漬させる必要がないので、センサ部分の汚れや破損などの問題もなく、メンテナンスが不要で、簡単に滴定終点を検出することができるので好ましい。
【0036】
また、本発明によれば、経時的に比重及び成分濃度が変動する系から採取した被検物の成分重量濃度を測定する分析部と、被検物の成分重量濃度測定値から該系の比重及び被検物の成分容量濃度を演算する演算部と、を具備する濃度分析装置が提供される。
【0037】
分析部は、被検物を受け入れる分析セルと、該分析セル外部に設けられた被検物の滴定終点の色彩を検出する光学センサと、該分析セル外部に設けられたロードセルと、を具備することが好ましい。
【0038】
光学センサは任意の光学センサでよい。分析セル内部には、光学センサからの照射光の焦点位置に、反射部としても作用する白色撹拌部材支持手段が設けられていることが好ましい。この白色撹拌部材支持手段は、通常の撹拌羽根支持回転軸を白色のテフロン(登録商標)で製作したものなどでもよく、光学センサからの光を反射することができるものであればよい。光学センサを分析セル外部に設けることで、センサの汚れや破損などの問題もなく、被検物への影響もなく、メンテナンスも不要とすることができる。
【0039】
ロードセルは、採取した被検物の重量及び滴下した滴定試薬及び指示薬の重量を随時測定することができる。
このように、分析セル外部に、被検物滴定終点を検出するための光学センサ及び被検物の重量を測定するためのロードセルを設けることで、センサの汚れや破損及びメンテナンスの問題を解決し、簡単に成分の重量濃度を測定することができる。そして、経時的に変動する系の比重を、被検物の成分重量濃度測定値から演算により求めて、容量濃度に変換することにより、正確な成分濃度を求めることができる。
【0040】
また、本発明によれば、経時的に比重及び成分濃度が変動する系を含む処理槽と、該系から採取した被検物の成分重量濃度を測定する分析部と、得られた被検物の成分重量濃度から該系の比重及び被検物の成分容量濃度を演算する演算部と、成分容量濃度測定値と成分容量濃度設定値との差に応じた成分供給信号を出力する制御部と、該制御部からの成分供給信号を受けて該処理槽に成分を供給する成分供給部と、を具備する成分濃度管理装置が提供される。
【発明の実施の形態】
【0041】
図を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、経時的に比重及び成分濃度が変動する系として、銅基板を過酸化水素−硫酸系エッチング液(H/HSO)によりエッチング処理する場合のエッチング処理槽中の系に適用した場合の本発明の成分濃度分析装置の分析部を示す概略説明図である。
【0042】
分析部10には、被検物並びに滴定試薬及び指示薬を受け入れるための分析セル11が載置されていて被検物並びに滴定試薬及び指示薬の重量を測定するためのロードセル12と、被検物の滴定終点を検知するための光学センサ13と、光学センサ13の反射部としても作用する白色撹拌部材支持手段14と、が設けられている。白色撹拌部材支持手段14には、撹拌羽根14aが取り付けられており、被検物を撹拌するようになされている。光学センサ13の反射部は、撹拌羽根14aの撹拌時に撹拌の影響により、実際とは異なる終点検知がなされることを防止するよう、可能な限り下方の部分に位置している。分析セル11には、分析セル11に被検物を供給するための被検物供給ラインLs、分析セル11に各種滴定試薬を供給するための1以上の滴定試薬供給ラインLtn(nは1以上の整数)、分析セル11に各種指示薬を供給するための1以上の指示薬供給ラインLIn(nは1以上の整数)、分析セル11に希釈水を供給するための希釈水供給ラインLw及び分析セル11から測定終了後の被検物などを排出するための排出ラインLdがそれぞれ接続されている。
【0043】
演算部(図示せず)は、分析セル11にて測定された各成分の重量より各成分の重量濃度を演算し、重量濃度の演算結果から予め入力しておいた関係式に基づいて系の比重を演算し、得られた系の比重及び各成分の重量濃度測定値から各成分の容量濃度を算出するように構成されている。演算部としては、通常のマイクロプロセッサを使用した演算処理装置、例えば、パソコン、シーケンサ、専用の制御基板等を適宜用いることができる。なお、図2に示す実施形態においては、演算部にて演算した計測値を電気信号として外部へ出力する出力部として外部モニタを具備し、計測値をモニタできるように構成してある。外部モニタに出力する計測値としては、成分重量濃度、系の比重、成分容量濃度の他、処理槽3中の処理液の任意の物理的性状又は化学的性状などを挙げることができる。
【0044】
次に、本発明の成分濃度分析方法の手順を説明する。
表4に、硫酸−過酸化水素系エッチング液(H/HSO/Cu)について、本発明の成分濃度分析方法を適用する場合の手順を示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表5に、ドライフィルム剥離液(NaOH/NaCO)について、本発明の成分濃度分析方法を適用する場合の手順を示す。
【0047】
【表5】

【0048】
なお、表5に示す手順においてNaOHの分析工程を省略すれば、ドライフィルム現像液(NaCO)の分析も可能である。また、KOH/KCO系のドライフィルム剥離液、あるいはKCO系ドライフィルム現像液も対応可能である。
【0049】
表6に、銅黒化処理液(NaClO/NaOH/NaCO)について、本発明の成分濃度分析方法を適用する場合の手順を示す。
【0050】
【表6】

【0051】
なお、表4〜6に示すいずれの成分濃度分析手順においても、分析後処理として過マンガン酸カリウムによる洗浄を行うことにより、分析セル内の有機物などの残留物を除去することができ、後続の分析への影響を排除することができる。
【0052】
次に、本発明の成分濃度分析装置を組み入れた成分濃度管理装置の一実施形態について説明する。図2は、本発明の成分濃度管理装置の一実施形態を示す概略説明図である。
図2に示す成分濃度管理装置は、図1に示す分析部10を具備する成分濃度分析装置1、処理槽3及び成分供給制御部4を具備する。この時、成分供給制御部4を介さずに、成分濃度分析装置1より直接補給ポンプを制御してもよい。処理槽3には、第1成分供給ラインL1、第2成分供給ラインL2が接続されている。処理槽3から分析セル11に、被検物供給ラインLsが敷設されていて、処理槽3から採取した被検物を分析セル11に供給するようになされている。成分濃度分析装置1は、分析部10にて測定された被検物の重量及び滴定量に基づいて、演算部(図示せず)において求めた系の比重により各成分の重量濃度測定値を容量濃度に変換した成分容量濃度と、処理槽3の成分濃度設定値と、を比較して不足成分の不足容量を算出し、不足成分の不足容量を追加する制御信号を出力し、成分供給制御部を介して、または直接第1成分供給ラインL1及び第2成分供給ラインL2に設けられているポンプの作動を制御することによって、第1成分及び/又は第2成分を不足容量分だけ補給して、処理槽3中の第1成分及び第2成分の容量濃度を設定濃度に管理する。
【実施例】
【0053】
実施例1
表2に示す8種類の試料について、本方法により比重演算値を求め、比重実測値と比較した。
【0054】
【表7】

【0055】
表7より、誤差率はいずれの試料も0%であり、誤差が認められないことがわかる。よって、本発明の方法により比重及び成分濃度が変動する系の比重値を正確に且つ簡易に求めることができることが確認できた。
実施例2
任意の濃度の硫酸−過酸化水素系エッチング液(H/HSO/Cu)試料2種(H:HSO:Cu=39.0g/L:94.9g/L:39.0g/L、系の比重=1.16865及びH:HSO:Cu=30.0g/L:192.7g/L:29.1g/L、系の比重=1.19870)を調製して、本発明の成分濃度分析方法(手順は表4に示す通り)を適用し、各成分の重量濃度を測定し、演算により系の比重及び各成分の容量濃度を求めた。同一試料について比重及び容量濃度を手分析によっても求めた。各5回の分析の平均値を比較し、実測値に対する演算値の誤差率を求めた。結果を下記表8及び表9に示す。
【0056】
【表8】

【0057】
【表9】

【0058】
本発明によれば、経時的に比重及び成分濃度が変動する系における簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置が提供される。
また、本発明によれば、メンテナンスが不要で、簡単に滴定終点を検出する方法及び装置を組み入れた、経時的に比重及び成分濃度が変動する系の簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置が提供される。
【0059】
さらに、本発明によれば、例えば湿式表面処理装置などにおける処理槽中の表面処理液の成分濃度を一定に維持するための成分濃度管理方法及び装置に適用できる、簡易で正確な成分濃度分析方法及び装置が提供される。
【0060】
さらに、本発明によれば、経時的に比重及び成分濃度が変動する系における成分濃度を正確に一定範囲の成分濃度に維持する、成分濃度管理装置が提供される。
本発明の成分濃度分析方法及び装置並びに成分濃度管理装置は、経時的に系の比重及び成分濃度が変動する、例えば湿式表面処理などの処理液の成分濃度の正確で簡易な制御を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、本発明の成分濃度分析装置を示す概略説明図である。
【図2】図2は、本発明の成分濃度管理装置の一実施形態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1:成分濃度分析装置
3:処理槽
4:成分供給制御部
10:分析部
11:分析セル
12:ロードセル
13:光学セル
14:反射部(白色撹拌部材支持手段)
Ls:被検物供給ライン
Ltn:滴定試薬供給ライン
LIn:指示薬供給ライン
Lw:希釈水供給ライン
Ld:排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重及び成分濃度が変動する系から被検物を採取し、該被検物の重量を測定し且つ当該被検物の各成分に応じた滴定指示薬を用いて色彩の変化を光の波長ごとに受光して光の波長ごとの受光量に基づいて検出する終点検出を行う滴定分析を行うことで、該被検物の成分重量濃度を測定して、得られた成分重量濃度測定値から系の比重を演算により求めて、該成分重量濃度測定値と該比重の演算値から成分容量濃度を求めることを特徴とする成分濃度分析方法。
【請求項2】
前記系の比重の演算は、予め前記系の比重及び成分重量濃度との関係式を作成し、該関係式に前記成分重量濃度測定値を代入することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記比重及び成分濃度が変動する系が三成分系である場合の系の比重は下記式:
【数1】

により求めることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
比重及び成分濃度が変動する系から採取した被検物を受け入れる分析セルと、該分析セル外部に設けられた被検物の各成分の滴定終点の色彩の変化を光の波長ごとに受光して光の波長ごとの受光量に基づいて検出する光学センサと、該分析セルの外部に設けられた該被検物の重量を測定するロードセルと、を具備し、該被検物の成分重量濃度を測定する分析部と、被検物の成分重量濃度測定値から該系の比重及び被検物の成分容量濃度を演算する演算部と、を具備する成分濃度分析装置。
【請求項5】
前記分析セル内部に、光学センサの反射部としても作用する白色撹拌部材支持手段が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記演算部にて演算した計測値を電気信号として外部へ出力する出力部を具備する請求項4記載の装置。
【請求項7】
比重及び成分濃度が変動する系を含む処理槽と、
該処理槽中の系から採取した被検物を受け入れる分析セルと、該分析セル外部に設けられた被検物の各成分の滴定終点の色彩の変化を光の波長ごとに受光して光の波長ごとの受光量に基づいて検出する光学センサと、該分析セルの外部に設けられた該被検物の重量を測定するロードセルと、を具備し、該被検物の成分重量濃度を測定する分析部と、
得られた被検物の成分重量濃度から該系の比重及び被検物の成分容量濃度を演算する演算部と、
成分容量濃度計測値と成分容量濃度設定値との差に応じた成分供給信号を出力する制御部と、
該制御部からの成分供給制御信号を受けて該処理槽に成分を供給する成分供給部と、
を具備する成分濃度管理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−191159(P2008−191159A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28466(P2008−28466)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【分割の表示】特願2003−158357(P2003−158357)の分割
【原出願日】平成15年6月3日(2003.6.3)
【出願人】(000140111)株式会社荏原電産 (51)
【Fターム(参考)】