説明

毛髪化粧料

【課題】練ることにより粘度が高くなり、整髪力の向上が十分に実感可能な、いわゆる2ウェイ使用が可能な毛髪化粧料を提供すること。
【解決手段】単糖類を化粧料の2.0〜20.0質量%、及び、高級脂肪酸を同0.1〜5.0質量%含有する水中油型乳化毛髪化粧料であって、かつ、練ることにより粘度が増加することを特徴とする毛髪化粧料を提供することにより、当該毛髪化粧料を、練られる前の比較的低粘度の状態と、練られることにより提供される高粘度の状態と、使用者の好みに応じて使用することが可能となり、これにより、上記の課題を解決することが可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪化粧料に関する発明である。より具体的には、使用時に練ることにより粘度が高くなる性質を有する毛髪化粧料に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、整髪料として汎用されているヘアワックスの、ソフトからハードまでの整髪力の調整は、配合する固形油分や樹脂の配合量を調節することにより行われている。また、使用時に練ることによって整髪力を変化させることが可能な毛髪化粧料も提供されているが、現状では、当該毛髪化粧料の練り行為の前後の整髪力の違いに十分な実感が得られるには至っていないことが指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、練ることにより粘度が高くなり、整髪力の向上が十分に実感可能な毛髪化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、毛髪化粧料が、単糖類と高級脂肪酸を含有する水中油型の乳化組成物である場合、驚くべきことに、練ることによって粘度が上昇し、明らかに整髪力が向上することに想到して本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明は、単糖類を化粧料の2.0〜20.0質量%、及び、高級脂肪酸を同0.1〜5.0質量%含有する水中油型乳化毛髪化粧料であって、かつ、練ることにより粘度が増加することを特徴とする毛髪化粧料(以下、本毛髪化粧料ともいう)を提供する発明である。
【0006】
また、本発明は、使用時に本毛髪化粧料を練ることにより粘度を向上させ、粘度が向上した当該毛髪化粧料を毛髪に塗布することにより整髪を行うことを特徴とする、本毛髪化粧料を用いた整髪方法を、当該練り行為を行わない態様との選択的な態様にて提供する発明である。
【0007】
上述のように、本毛髪化粧料は、使用前に練ることにより粘度を上昇させることが可能な毛髪化粧料であるが、必ず、練り行為により粘度を向上させなければならないものではなく、使用者の嗜好によって、練らずに本毛髪化粧料を使用することも可能である。すなわち、本毛髪化粧料は、練る前の比較的低い粘度における使用と、練った後の比較的高い粘度における使用を使い分けることができる、いわゆる2ウェイ使用が可能な毛髪化粧料である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、練ることにより粘度が高くなり、整髪力の向上が十分に実感可能な毛髪化粧料と、これを用いた整髪方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本毛髪化粧料に配合し得る単糖類としては、例えば、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース等の還元糖類、また、テトリット、ペンチット、へキシット、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール等の糖アルコール類が挙げられ、それらを単独で、または2種類以上を任意に選択して使用することができる。中でも、糖アルコール、特に、ソルビトールとキシリトールが、練ることで整髪力を上昇させる効果が高く、好ましい。
ソルビトールの市販品としては、ソルビトールF(日研化学社製)等、キシリトールの市販品としては、キシリトール−C(カルター・フードサイエンス社製)等が挙げられる。
【0010】
本毛髪化粧料において、前記単糖類は、化粧料の2.0〜20.0質量%配合することが好ましく、より好ましくは4.0〜12.0質量%である。当該配合量が化粧料の2.0質量%未満では、練り後に十分な整髪力が得られず、また、20.0質量%を超えて配合すると、乾燥後のべたつきが激しくなり使用性に問題を生ずる傾向が強くなる。
【0011】
本毛髪化粧料に配合し得る高級脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、べヘニン酸、ラウリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸が好適であり、それらを単独で、または2種類以上を任意に選択して使用することができる。中でも、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸が、練り後の粘度上昇具合と基剤の安定性上好ましい。イソステアリン酸の市販品としては、イソステアリン酸SX(高級アルコール工業株式会社)等が;ステアリン酸の市販品としては、ステアリン酸(日本精化株式会社製)等が;ラウリン酸の市販品としては、ラウリン酸S(日本精化株式会社製)、ラウリン酸SN−12L(日本油脂株式会社製)等が;パルミチン酸の市販品としては、パルミチン酸(日本精化株式会社製)等が;ミリスチン酸の市販品としては、ミリスチン酸(日本精化株式会社製)、ミリスチン酸SN−14M(日本油脂株式会社製)等が;オレイン酸の市販品としては、PALMAC 760(アシッドケミカル社製)等が挙げられる。
【0012】
本毛髪化粧料において、前記高級脂肪酸は、化粧料の0.1〜5.0質量%配合することが好ましく、より好ましくは0.3〜3.0質量%である。当該配合量が化粧料の0.1質量%未満では、練ることで基剤粘度を十分に上げることが困難であり、また、3.0質量%を超えて配合すると、使用に際して、べたつき・重さ等が顕れる傾向が強くなる。
【0013】
本毛髪化粧料は、上記の単糖類と脂肪酸を必須配合成分とする水中油型の乳化組成物であり、界面活性剤等の乳化剤を用いて、水中乳化剤法、油中乳化剤法、石鹸生成法、交互添加法等の常法に従い製造することができる。
【0014】
本毛髪化粧料には、本発明の効果を損なわない範囲において、他の添加成分を任意に配合し得る。このような成分としては、例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、エステル油、シリコーン油、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、紫外線吸収剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、単糖類以外の糖類、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、水等を必要に応じて用いることができる。
【0015】
本毛髪化粧料は、頭髪用化粧料、睫毛用化粧料等として用いることが可能であり、特に、ヘアスタイリング剤として用いることで、本発明の特徴を十分に活かすことができる。
【0016】
前述したように、本毛髪化粧料は、使用時に練ることで粘度を高めてから毛髪に塗布して整髪することができる、いわゆる2ウェイ使用を行うことが可能な毛髪化粧料である。
すなわち、本発明は、下記の態様(1)及び(2)の整髪を選択的に行うことを特徴とする、本毛髪化粧料を用いた整髪方法を提供する発明である。
【0017】
(1)使用時に前記毛髪化粧料を練ることにより粘度を向上させ、粘度が向上した当該毛髪化粧料を毛髪に塗布することにより整髪を行う。
(2)練られていない前記毛髪化粧料を毛髪に塗布することにより整髪を行う。
【0018】
上記(1)における毛髪化粧料の粘度を高めるための練り行為は、毛髪化粧料を手にとって揉み込むことにより行うことが可能であり、容器にとって、へら等でかき混ぜることにより行うことも可能である。
【0019】
本毛髪化粧料における練り行為前の粘度は、25℃で10000〜40000mPa・sの範囲であることが好適である。また、練ることによる粘度の増加は、25℃で5000mPa・s[500rpmで1分間の攪拌を、かき混ぜ機(スリーワンモーター)を用いて攪拌を行った場合]以上であることが好適である。この程度の粘度の増加が認められなければ、実用上、使用者において十分に粘度が増加した実感を与えることが難しい傾向がある。なお、上記の「25℃、500rpmで1分間のかき混ぜ機による攪拌」に対する5000mPa・s以上の粘度の増加は、本毛髪化粧料の粘度の好適な増加度合いを、条件を固定することで明確に定義づけたものであり、条件が異なれば、この粘度の増加度合いも異なる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、この具体的説明は本発明を限定することを目的とするものではない。配合量は、特に断らない限り、配合対象に対する質量%である。
【0021】
攪拌時間による粘度変化の検討
下記の処方の本発明品(実施例1)を調製して、その90gを100ml容のポリプロピレン容器に入れ、HENDEM社製スリーワンモーターBL1200を用いて、25℃・500rpmで攪拌した場合の経時的な粘度変化を、単一円筒型回転粘度計ビスメトロンVS-H1(芝浦システム株式会社)を用いて粘度を測定した。結果を下記表1にて示す。
【0022】
[実施例1]
配合成分 配合量(質量%)
カルナウバロウ 3.0
ステアリン酸 1.0
パルミチン酸 2.0
流動パラフィン 10.0
ステアリルアルコール 1.0
ジメチルポリシロキサン 1.0
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 3.0
トリエタノールアミン 2.0
ヒドロキシエチルセルロース 1.5
ソルビトール 5.0
精製水 残 余
香料 適 量
<製造方法>
上記の配合成分のうち水性成分とヒドロキシエチルセルロースを混合・加温(70℃)して、ヒドロキシエチルセルロースを溶解させ(水相)、また、油性成分を混合しつつ70℃に加温して相溶させ油相を調製した後、この油相にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を溶解して、水相中に油相を添加して2層を混合・攪拌し、冷却して、実施例1の水中油型乳化組成物を得た。
【0023】
[経時的粘度変化]
【0024】
【表1】

【0025】
この結果より、実施例1の本発明品は、上記条件下の1分間の攪拌によって、粘度が5000mPa・s以上増加することが明らかになった。なお、攪拌開始後1分経過以降の粘度増加の度合いは徐々に緩慢になることも明らかになった。
【0026】
攪拌による粘度増加の整髪力への影響の検討
下記表2にて示した処方の試験品(本発明品:実施例2、比較品:比較例1〜6)を、上述した実施例1の製造方法に準じて製造した。これらの試験品について、上記の経時的粘度変化試験と同条件の攪拌を1分間行い、当該攪拌前後の整髪力を下記の毛束法にて行い検討した。なお、比較例1〜6は、実施例2のソルビトールに代えて、皮膜形成能を有する水溶性カチオンポリマーであるポリジメチルアミノエチルメタクリレート(比較例1)、同水溶性ノニオンポリマーである(ポリビニルピロリドン/VA)コポリマー(比較例2)、ソルビトールと同様に、一般的には保湿糖として用いられるデキストリン(比較例3)、曳糸性を付与する性質を有するポリアクリル酸ナトリウム(比較例4)、同ポリエチレングリコール(比較例5)、粉末成分であるシリカ(比較例6)、を配合した例である。
【0027】
[毛束法による試験]
人毛約4gからなる毛髪ストランドの下半分に、各試験品0.4gを塗布し、当該ストランドを10回捩って戻したときの、毛髪の巻き数によって整髪力を判定した(当該巻き数が多いほど整髪力に優れている)。判定は下記の要領で行った。
【0028】
整髪力判定基準
○:攪拌後のストランドの巻き数が攪拌前の巻き数よりも1.5以上増加している。
○△:攪拌後のストランド巻き数が攪拌前の巻き数よりも1.0〜1.5未満増加している。
△:攪拌後のストランド巻き数が攪拌前の巻き数よりも0〜1.0未満増加している。
×:攪拌後のストランド巻き数が攪拌前の巻き数よりも減少している。
【0029】
[試験結果]
【0030】
【表2】

【0031】
この結果により、本来の性質として練り行為による増粘により整髪力の向上が期待される成分を、ソルビトールに代えて配合した比較例(比較例1〜2、比較例4〜6)においては、練ることによる整髪力の向上は認められず(増粘していない)、さらに、単糖類以外の糖類であるデキストリンを用いた例(比較例3)においても全く整髪力の向上は認められなかった。
【0032】
よって、本発明にかかる練り行為による整髪力向上効果(増粘効果)は、ソルビトール等の単糖類と、脂肪酸、特に、高級脂肪酸を組み合わせて配合することによりはじめて認められる特異的な効果であることが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糖類を化粧料の2.0〜20.0質量%、及び、高級脂肪酸を同0.1〜5.0質量%含有する水中油型乳化毛髪化粧料であって、かつ、練ることにより粘度が増加することを特徴とする毛髪化粧料。
【請求項2】
前記毛髪化粧料において、単糖類の配合量が化粧料の4.0〜12.0質量%であることを特徴とする、請求項1記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
前記毛髪化粧料において、高級脂肪酸の配合量が化粧料の0.3〜3.0質量%であることを特徴とする、請求項1又は2記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
前記毛髪化粧料において、単糖類がソルビトールであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項5】
前記毛髪化粧料において、高級脂肪酸が、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びベヘニン酸からなる群から選ばれる1種以上の高級脂肪酸であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項6】
前記毛髪化粧料の粘度が25℃で10000〜40000mPa・sであり、かつ、500rpmで1分間のかき混ぜ機による攪拌による粘度の増加が25℃で5000mPa・s以上であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【請求項7】
下記の態様(1)及び(2)の整髪を選択的に行うことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の水中油型乳化毛髪化粧料を用いた整髪方法。
(1)使用時に前記毛髪化粧料を練ることにより粘度を向上させ、粘度が向上した当該毛髪化粧料を毛髪に塗布することにより整髪を行う。
(2)練られていない前記毛髪化粧料を毛髪に塗布することにより整髪を行う。

【公開番号】特開2007−51095(P2007−51095A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237431(P2005−237431)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】