説明

気体を内包する袋体およびその製造方法

【課題】 複数の中空部が形成された本体部に、それぞれの中空部に連通する弁体部が取り付けられた気体を内包する袋体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂シートを主体とした本体部10に細長い形状の複数の中空部10Aが連結されて形成されており、それぞれの中空部10Aは、同じ向きに開口する開口部10Dを有している。注入部20は樹脂シートで形成されており、X方向に連続する通気路20Aと、通気路20AからY2方向へ突出する複数の弁体部20Bとが一体に形成されている。それぞれの弁体部20Bを開口部10Dから中空部10A内に挿入して、本体部10と注入部20が一緒にヒートシールされる。その結果、それぞれの中空部10Aに弁体部20Bを個別に連結させることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に気体を内包する独立した複数の中空部を有する袋体に係り、製造が容易であり且つ従来よりも大型の中空部を形成することが可能な袋体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンテナや箱体の内部に、機械部品や自動車部品または電子部品やその他の製品を梱包する際に、緩衝構造を構成するための空気を内包した袋体が使用される。この袋体は厚いシート材で形成された大容量のものから、薄い樹脂シートで形成された小容量のものまで、梱包する内容物の大きさに応じて選択されて使用される。
【0003】
従来のこの種の袋体は、内部に1つの中空部が形成されているもの、または内部に複数の中空部が形成されて中空部どうしが互いに連通されているものが主であった。しかし、この袋体は一部が破損すると内部の空気が破損部から全て流出してしまい全体がしぼんでしまうために、緩衝機能を発揮できなくなる。
【0004】
以下の特許文献1に記載されたエアバッグ用のチューブは、2枚の樹脂フィルムが合わせられてヒートシールされて、複数の独立したエアバッグが形成されている。また、それぞれのエアバッグに空気を吹き込むための吹き込みチューブが、エアバッグを構成する2枚の前記樹脂フィルムの間に挟まれて、前記樹脂フィルムと共にヒートシールされている。吹き込みチューブは、複数のエアバッグにわたって連続する主幹通路と、前記主幹通路とエアバッグの内部とを個別に連通する蛇行状の通路とを有している。
【0005】
吹き込みチューブの主幹通路に空気を吹き込むと、空気がそれぞれの蛇行状の通路を通って複数のエアバッグのそれぞれの内部に与えられて、エアバッグが膨らむ。前記蛇行状の通路はそれぞれのエアバッグに対応する逆止弁として機能しており、ひとつのエアバッグが破損して内部の空気が抜け出ても、他のエアバッグに影響を与えない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−215978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたエアバッグの製造工程は、2枚の帯状の樹脂フィルムが繰り出されるとともに、吹き込みチューブが、エアバッグを構成する前記樹脂フィルムの間に供給されながら樹脂フィルムと同じ方向へ繰り出される。そして、ヒートシールによって2枚の帯状の樹脂フィルムに縦シール部が形成され、この縦シール部によって2枚の樹脂フィルムの間に吹き込みチューブが接合される。さらに樹脂フィルムに対して、繰り出し方向と直交する向きの横シール部が形成されて、互いに独立するエアバッグが形成される。
【0008】
上記の製造方法では、エアバッグを構成する樹脂フィルムと吹き込みチューブが同じ方向へ繰り出されて、エアバッグと吹き込みチューブとが接合されるため、それぞれのエアバッグの大きさが樹脂フィルムの幅寸法に依存することになる。大型のエアバックを製造するには、製造時の流れ方向と直交する幅寸法の大きいフィルムを使用することが必要になり、そのために素材の流れ方向と直交する方向の寸法が大きい製袋機が必要となって、大型でコストの高い製造設備が必要になる。例えば、細長い中空部が平行に並んで互いに連結され、個々の中空部が十分に長い寸法のエアバッグを、特許文献1に記載されたのと同じ構造および方法で製造しようとすると、製造コストが非常に高くなってしまう。
【0009】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、従来よりも大型の中空部が連結した構造とすることが可能な空気を内包した袋体を提供することを目的としている。
【0010】
また、本発明は、大掛かりな製造設備を必要とせずに、前記構造の袋体を容易に製造できる空気を内包した袋体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、内部空間が独立している複数の中空部を有する本体部と、それぞれの中空部に気体を供給する注入部とが連結している袋体において、
前記本体部と前記注入部は少なくとも一部が樹脂シートで形成され、前記本体部に、それぞれの中空部から同じ方向に向けて開口する開口部が形成され、前記注入部は、通気路と、前記通気路から突出する複数の弁体部とが一体に形成され、それぞれの弁体部の内部に逆止弁として機能する逆止通路が前記通気路と連通して形成されており、
それぞれの弁体部が前記開口部から前記中空部に挿入された状態で、前記本体部と前記弁体部とが、前記開口部またはその近傍で互いに接合されていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明は、本体部に接合されている注入部が、通気路とこの通気路から突出する複数の弁体部とで構成されている。それぞれの弁体部が通気路から突出しているため、予め複数の中空部が連結されて形成された本体部のそれぞれの挿入口に弁体部を挿入し、本体部と注入部とを接合することで、通気路を個々の中空部に連通させることができる。
【0013】
そのため、中空部を樹脂シートの繰り出し方向に細長く延びるものとして構成でき、大型で広い面積であり且つ複数の中空部が独立した構造の袋体を形成することが可能になる。
【0014】
なお、本発明の空気を内包した袋体とは、中空部に空気が注入されてそれぞれの中空部が膨らんだ物を対象とするのみならず、中空部に空気が注入される前の段階で本体部と注入部が扁平状態のものも対象となる。
【0015】
本発明は、前記弁体部の内面には、前記逆止通路の少なくとも一部に溶接抑制剤が塗布されており、前記弁体部と前記本体部がヒートシール部によって互いに接合され、前記溶接抑制剤が塗布された部分で前記弁体部を構成する樹脂シートの内面どうしが接合されていないものとして構成できる。
【0016】
本発明は、前記本体部は、対面する樹脂シートが平行に延びる複数の帯状接合部で接合されて、細長い複数の前記中空部が前記帯状接合部で分離されて形成されており、前記帯状接合部は、前記本体部を構成する樹脂シートが、溶融押出しされた樹脂接着層を介してラミネートされているものとして構成できる。
【0017】
上記構成の本体部は、中空部を樹脂シートの繰り出し方向に向けて長く延びるものとして構成することができる。
【0018】
本発明の前記注入部は、対面する樹脂シートがヒートシールされて、前記通気路と前記弁体部および前記逆止通路が形成されているものである。
【0019】
本発明の気体を内包した袋体の製造方法は、樹脂シートを接合して、開口部が同じ方向に向けられた複数の独立した中空部を有する本体部を形成する工程と、
樹脂シートを接合して、通気路と、前記通気路から突出する複数の弁体部、およびそれぞれの弁体部の内部で前記通気路に連通する逆止弁として機能する逆止通路を形成する工程と、
それぞれの弁体部を前記開口部から前記中空部に挿入して、前記本体部と複数の前記弁体部とを、前記開口部またはその近傍で互いに接合する工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明の袋体の製造方法は、前記弁体部を形成する樹脂シートの内面で且つ前記逆止通路の少なくとも一部に溶接抑制剤を塗布し、
前記弁体部と前記本体部とをヒートシール部によって互いに接合するときに、前記溶接抑制剤が塗布された部分で前記弁体部の内面どうしの接合を抑制するものとして構成できる。
【0021】
本発明の袋体の製造方法は、前記本体部は、樹脂シートの間に溶融押出しされた樹脂接着層を供給して、平行な複数の帯状接合部で樹脂シートどうしを接合し、前記帯状接合部で分割された前記中空部を形成するものである。
【0022】
また、本発明の袋体の製造方法は、対面する樹脂シートをヒートシールして、前記通気路と前記弁体部および前記逆止通路を形成するものである。
【0023】
さらに、樹脂シートの一部を溶断して、前記通気路から突出する複数の前記弁体部を形成するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の袋体は、樹脂シートの繰り出し方向に依存することなく複数の中空部を形成して、それぞれの中空部に弁体部を取り付けることが可能である。よって、例えば、樹脂シートを繰り出す方向に長い寸法で延びる中空部を形成し、それぞれの中空部に弁体部を取り付けることが可能である。
【0025】
本発明の袋体の製造方法は、複数の中空部の開口部のそれぞれに弁体部を容易に取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態の空気を内包する袋体を示す分解斜視図、
【図2】本体部の構造を示す斜視図、
【図3】注入部を構成する樹脂シートが重ねられる工程を示す斜視図、
【図4】注入部を構成する際の第1の組のヒートシールパターンを示す平面図、
【図5】注入部を構成する際の第2の組のヒートシールパターンを示す平面図、
【図6】注入部を構成する樹脂シートに第1の組のヒートシールパターンと第2の組のヒートシールパターンとが形成された平面図、
【図7】弁体部の間を溶断して完成した注入部の平面図、
【図8】本体部に弁体部が挿入されて、本体部と注入部とが接合された状態を示す平面図、
【図9】中空部が膨らんだ状態を示す図8をIX−IX線で切断した断面図、
【図10】本発明の第2の実施の形態の袋体の注入部を示す平面図、
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態の袋体1は、本体部10と注入部20とから構成されている。
【0028】
図2に示すように、本体部10は、第1のシート11と第2のシート12とが接合されて構成されている。第1のシート11と第2のシート12は単層の樹脂シートであり、または複数種類の樹脂シートが積層された多層樹脂シートである。あるいは、樹脂シートに、紙材や布材などの樹脂シート以外の素材がラミネートシートされた複合シートである。
【0029】
例えば、第1のシート11と第2のシート12は、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などの細い帯状または紐状の樹脂シートを織った織布の対向面に、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのヒートシールが可能な樹脂層が積層されたものである。
【0030】
本体部10の製造方法は、X方向の幅寸法が所定幅でY方向に連続する帯状の第1のシート11および第2のシート12とがY方向へ連続的に繰り出される。第1のシート11と第2のシート12の接合面において、X方向に間隔を空けてY方向へ互いに平行に延びる複数の帯状の領域に、低密度PEなどの樹脂接着層がTダイから溶融されて押出されて供給される。この積層体がローラ間で加圧されて、本体部10が完成する。
【0031】
図1に示すように、完成した本体部10は、第1のシート11と第2のシート12とが樹脂接着層を介して接着された領域が帯状接合部10Bとなり、隣り合う帯状接合部10Bで挟まれた領域が中空部10Aとなる。
【0032】
図1に示すように、本体部10は、X方向に延びる切断線で切断されて使用される。切断後は、中空部10Aの縁部10Cと帯状接合部10Bの縁部10EとがX方向に向けて直線状に延びて形成される。そして、それぞれの中空部10Aの端部には縁部10Cで囲まれた開口部10Dが形成される。全ての中空部10Aの開口部10Dは同じ方向(Y1方向)に向けて開口している。縁部10C,10EからY2方向に所定距離だけ離れた位置でX方向に延びる切断線によって本体部10が切断され、この切断部では、ヒートシールによって全ての中空部10AのY2側の縁部が閉じられる。その結果、本体部10のそれぞれの中空部10AはY1方向に向く開口部10Dにおいてのみ開放され、それ以外が閉じられたものとなる。
【0033】
本体部10はY方向での切断長さを選択することにより、中空部10AのY方向の長さ寸法を任意に設定できる。そのため、Y方向に細長い中空部10Aを有する本体部10を容易に得ることができる。
【0034】
図1に示す注入部20は、X方向に延びる通気路20Aと、通気路20Aに連続してY2方向へ向けて突出する複数の弁体部20Bとを有している。弁体部20Bは、X方向へ一定の間隔を空けて、通気路20AからY2方向へ四角片として一体に延びている。弁体部20BのX方向の配列ピッチは、平坦に潰されたときの本体部10における中空部10AのX方向の配列ピッチに一致している。
【0035】
注入部20は、以下の工程で製造される。
図3に示すように、注入部20は、第3のシート21と第4のシート22を積層して製造される。第3のシート21と第4のシート22は、PE樹脂フィルムまたはPP樹脂フィルムを主体として構成されたものであり、第3のシート21と第4のシート22の対面側である内面は、低密度PEのようにヒートシール可能なシーラント層で構成されている。また、第3のシート21と第4のシート22の対面側と逆側に向く外面もヒートシール可能なシーラント層で構成されている。
【0036】
第3のシート21と第4のシート22は、Y方向の幅寸法が一定で、繰り出し方向であるX方向に連続する帯状シートである。または、第3のシート21と第4のシート22がY方向に連続する1枚のフィルムであって、X方向に延びる折り線で2つ折りに畳まれて使用されるものであってもよい。
【0037】
一方のシートの内面、図3では第3のシート21の対向側内面に、溶接抑制剤層23が形成されている。溶接抑制剤層23は、第3のシート21と第4のシート22とがヒートシールされるのを部分的に抑制するためのものである。溶接抑制剤層23は、耐熱性インクなどを塗布することで形成されている。例えば、耐熱性インクを使用してスクリーン印刷することで、第3のシート21の対向側内面に、溶接抑制剤層23を所望のパターンで形成することができる。
【0038】
図3に示すように、溶接抑制剤層23は、Y1側において、X方向に帯状に延びる第1の抑制領域23aと、第1の抑制領域23aから連続してY2方向へ延びる複数の第2の抑制領域23bを有している。第2の抑制領域23bのX方向での配列ピッチは、図1に示す弁体部20BのX方向の配列ピッチに一致している。
【0039】
図3に示すように、溶接抑制剤層23が形成された第3のシート21がX1方向に繰り出され、その上に第4のシート22がX1方向へ繰り出されて、第3のシート21と第4のシート22とが重ねられる。
【0040】
X1方向に繰り出される第3のシート21と第4のシート22に対し、図4に示す第1の組のヒートシールパターンと、図5に示す第2の組のヒートシールパターンとなるヒートシール部が形成される。
【0041】
図4に示す第1の組のヒートシールパターンは、Y方向に間隔を空けて、X方向へ直線的に連続して平行に延びる縦シール部24,25を有している。縦シール部24,25は、重ねられた第3のシート21と第4のシート22のY1方向の端部に形成される。第1の組のヒートシールパターンは、逆止通路用シール部群26を有している。逆止通路用シール部群26は、Y方向に間隔を空けてX方向に延びる複数のヒートシール部を有している。逆止通路用シール部群26は、X方向に間隔を空けて複数組形成されており、それぞれの組の逆止通路用シール部群26のX方向の配置ピッチは、図1に示す弁体部20BのX方向の配列ピッチに一致している。
【0042】
図5に示す第2の組のヒートシールパターンは、弁体区分シール部28を有している。弁体区分シール部28は、複数の弁体部20Bを互いに区分するものであり、2つの横シール部28a,28bが1つの組を構成している。横シール部28a,28bはY方向に直線的に延びており、Y方向の長さ寸法は、図3に示す第3のシート21および第4のシート22のY方向の幅寸法とほぼ一致している。
【0043】
2つの横シール部28a,28bで構成される弁体区分シール部28のX方向の配置ピッチは、図1に示す弁体部20BのX方向の配列ピッチに一致している。
【0044】
図6は、重ねられた第3のシート21と第4のシート22に対して、図4に示す第1の組のヒートシールパターンと図5に示す第2の組のヒートシールパターンのヒートシール部が形成されたシール接合体20Cを示す平面図である。
【0045】
第3のシート21と第4のシート22のいずれか一方には位置決めマーク29が印刷などの手段で形成されている。この位置決めマーク29のX方向での配列ピッチは、図1に示す弁体部20BのX方向の配列ピッチに一致している。第3のシート21と第4のシート22はX方向に間欠的に送られるが、前記位置決めマーク29が光電管センサーなどで検知されて、両シートが位置決めされ、図4に示す第1の組のヒートシールパターンと図5に示す第2の組のヒートシールパターンのヒートシール部が形成される。
【0046】
図6に示すシール接合体20Cでは、第3のシート21のY1側の縁部21aと第4のシート22のY1側の縁部21bが重ねられて一致し、第3のシート21のY2側の縁部21bと第4のシート22のY2側の縁部22bが重ねられて一致している。
【0047】
図6に示すように、シール接合体20Cに、図4に示した縦シール部24,25が形成されている。縦シール部24は、図3に示した溶接抑制剤層23の第1の抑制領域23aと縁部21a,22aとの間に形成され、縦シール部25は、第1の抑制領域23aのY2側に隣接する部分に形成されて、縦シール部24と縦シール部25で挟まれた部分にX方向に連続する通気路20Aが形成されている。
【0048】
縦シール部24と縦シール部25との間に、第1の抑制領域23aが設けられているため、通気路20Aで、第3のシート21と第4のシート22が接合されることがなく、通気路20Aが、X方向の全長に渡って空気を通過させることができる連続通路となっている。
【0049】
図6に示すように、縦シール部25のパターンはX方向に連続して形成され、その一部が溶接抑制剤層23の第2の抑制領域23bを横断している。第2の抑制領域23bでは第3のシート21と第4のシート22が接合されないため、この部分で縦シール部25が部分的に途切れている。そのため、通気路20Aは、第2の抑制領域23bの部分でY2方向へ開放されている。
【0050】
図6に示すシール接合体20Cに、弁体区分シール部28の横シール部28a,28bが形成される。図5に示すように、横シール部28a,28bを形成するシールパターンのY方向の長さは、第3のシート21と第4のシート22の幅寸法とほぼ一致しており、横シール部28a,28bのシールパターンの一部が、溶接抑制剤層23の第1の抑制領域23aを横断している。第1の抑制領域23aでは、第3のシート21と第4のシート22とが接合されず、図5に示すシールパターンによって通気路20Aが塞がれることはない。
【0051】
図6に示すように、横シール部28a,28bは、第1の抑制領域23aが存在していない領域において、縦シール部25を横断してY2方向へ延び、第3のシート21および第4のシート22の縁部21b,22bまで延びている。そして、横シール部28aと横シール部28bとの間で、且つ縦シール部25よりもY2側の部分に個々の弁体部20Bが形成されている。
【0052】
それぞれの弁体部20Bの内部に、図4に示す逆止通路用シール部群26のシール部が形成される。弁体部20Bの内部は、第2の抑制領域23bにおいて通気路20Aと通じており、弁体部20Bの内部に蛇行状で迷路状の逆止通路20Dが形成され、逆止通路20Dが逆止弁として機能する。そして、それぞれの弁体部20Bは、Y2方向の端部が開口端20Eとなっている。
【0053】
図6に示すシール接合体20Cが形成された後に、図7に示すように、隣り合う弁体部20Bの間に切断部31が形成されて、第3のシート21と第4のシート22が部分的に除去され、注入部20が完成する。切断部31は、端部切断線31aが、縦シール部25よりもY2側に位置し、側部切断線31bが横シール部28aよりもX1側で、側部切断線31cが横シール部28bよりもX2側に形成される。
【0054】
切断工程は、切断部31の形状のヒートシールヘッドを使用し、第3のシート21と第4のシート22を同時に溶断することで行われる。ヒートシールヘッドを使用した溶断工程では、端部切断線31aと側部切断線31b,31cを正確な位置に形成でき、且つ図4および図5に示すヒートシール工程と連続する工程で、第3のシート21と第4のシート22の切断を行うことが可能になる。
【0055】
図7に示すように、注入部20は、第3のシート21と第4のシート22が切断部31で分離されることで、弁体部20Bが互いに分離され、それぞれの弁体部20Bが通気路20AからY2方向へ突出した形状となる。
【0056】
図1に示すように、完成した注入部20は本体部10に取り付けられる。
この作業では、自動機のエアー吸着部などで本体部10の中空部10Aの上下の縁部10Cが吸着されて上下に引かれ、中空部10Aの開口部10Dが開放される。そして、注入部20に形成された弁体部20Bが、それぞれの開口部10Dから中空部10Aの内部に挿入される。
【0057】
図8に示すように、それぞれの弁体部20Bが中空部10Aに挿入され、注入部20において弁体部20Bを分離している切断部31の端部切断線31aが、本体部10の帯状接合部10Bの縁部10Eに突き当てられた状態で、縁部10EよりもY2側に連結シール部35が形成される。
【0058】
連結シール部35はヒートシールにより形成される。連結シール部35によって、本体部10の中空部10Aと、その内部に挿入されている弁体部20Bとが接合される。連結シール部35のヒートシールパターンはX方向に連続し、その一部は、注入部20に形成されている溶接抑制剤層23の第2の抑制領域23bを横断する。図8では、連結シール部35が第2の抑制領域23bを横断する横断部が符号35aで示されている。
【0059】
連結シール部35によって、本体部10の中空部10Aを形成している第1のシート11と第2のシート12のそれぞれの内面と、弁体部20Bの外面とが溶接されるのみならず、弁体部20Bを構成している第3のシート21と第4のシート22の内面どうしも溶接される。ただし、横断部35aでは、第1のシート11と第2のシート12のそれぞれの内面と、弁体部20Bとが溶接されるが、弁体部20Bを構成している第3のシート21と第4のシート22の内面どうしが溶接されることがなく、第2の抑制領域23bにおいて、通気路20Aと弁体部20Bの逆止通路20Dとが連通する状態を維持することができる。
【0060】
上記のように、注入部20は通気路20Aから複数の弁体部20Bが突出した形状であるため、それぞれの弁体部20Bを中空部10Aに挿入することで、本体部10に通気路20Aと弁体部20Bとを簡単に取り付けることができる。よって、本体部10と注入部20とで、製造時の繰り出し方向が異なっているものであっても、本体部10と注入部20とを別工程で完成させた後に、互いに連結することが可能である。
【0061】
完成した袋体1では、注入部20の通気路20Aが、本体部10よりも外方に位置している。通気路20Aは複数の中空部10Aの前方でX方向に連続して延びているが、袋体1の完成後に、通気路20AのX方向のいずれかの端部がヒートシールで閉じられ、他方の端部に気体(空気)の注入口が形成される。この注入口から空気が注入されると、空気は通気路20Aの内部を通り、縦シール部25の欠損部および連結シール部35の横断部35aを通過して弁体部20Bの内部に与えられる。弁体部20Bでは、蛇行状で迷路状の逆止通路20Dを通って、それぞれの中空部10Aに空気が注入される。
【0062】
図9に示すように、中空部10Aに空気が注入されて内部圧力が高まると、弁体部20Bが圧力により押し潰され、逆止通路20Dが閉じられて、それぞれの中空部10Aが互いに独立した状態で密閉される。
【0063】
中空部10Aが膨らんだ袋体1は、各種部品や機械類を運搬するときの緩衝材として使用され、さらには介護用ベッドや簡易ベッドなど、さらには他のクッションとしての様々な用途に使用することができる。複数の中空部10Aは互いに独立しているため、いずれかの中空部10Aが破損して内部の空気が抜け出ても、他の中空部10Aに破損が波及することがない。
【0064】
本発明では、弁体部の内部に形成される逆止通路はどのような形状であってもよい。例えば、図10に示す注入部120のように、連通路120Aから突出する弁体部120Bに、比較的通路断面積が限られた逆止通路120Dが形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 袋体
10 本体部
10A 中空部
10B 帯状接合部
10C 縁部
10D 開口部
10E 縁部
11 第1のシート
12 第2のシート
20 注入部
20A 通気路
20B 弁体部
20C シール接合体
20D 逆止通路
20E 開口端
21 第3のシート
22 第4のシート
23 溶接抑制剤層
23a 第1の抑制領域
23b 第2の抑制領域
24,25 縦シール部
26 逆止通路用シール部群
28 弁体区分シール
28a,28b 横シール部
31 切断部
35 連結シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間が独立している複数の中空部を有する本体部と、それぞれの中空部に気体を供給する注入部とが連結している袋体において、
前記本体部と前記注入部は少なくとも一部が樹脂シートで形成され、前記本体部に、それぞれの中空部から同じ方向に向けて開口する開口部が形成され、前記注入部は、通気路と、前記通気路から突出する複数の弁体部とが一体に形成され、それぞれの弁体部の内部に逆止弁として機能する逆止通路が前記通気路と連通して形成されており、
それぞれの弁体部が前記開口部から前記中空部に挿入された状態で、前記本体部と前記弁体部とが、前記開口部またはその近傍で互いに接合されていることを特徴とする袋体。
【請求項2】
前記弁体部の内面には、前記逆止通路の少なくとも一部に溶接抑制剤が塗布されており、前記弁体部と前記本体部がヒートシール部によって互いに接合され、前記溶接抑制剤が塗布された部分で前記弁体部を構成する樹脂シートの内面どうしが接合されていない請求項1記載の袋体。
【請求項3】
前記本体部は、対面する樹脂シートが平行に延びる複数の帯状接合部で接合されて、細長い複数の前記中空部が前記帯状接合部で分離されて形成されており、前記帯状接合部は、前記本体部を構成する樹脂シートが、溶融押出しされた樹脂接着層を介してラミネートされている請求項1または2記載の袋体。
【請求項4】
前記注入部は、対面する樹脂シートがヒートシールされて、前記通気路と前記弁体部および前記逆止通路が形成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の袋体。
【請求項5】
樹脂シートを接合して、開口部が同じ方向に向けられた複数の独立した中空部を有する本体部を形成する工程と、
樹脂シートを接合して、通気路と、前記通気路から突出する複数の弁体部、およびそれぞれの弁体部の内部で前記通気路に連通する逆止弁として機能する逆止通路を形成する工程と、
それぞれの弁体部を前記開口部から前記中空部に挿入して、前記本体部と複数の前記弁体部とを、前記開口部またはその近傍で互いに接合する工程と、
を有することを特徴とする袋体の製造方法。
【請求項6】
前記弁体部を形成する樹脂シートの内面で且つ前記逆止通路の少なくとも一部に溶接抑制剤を塗布し、
前記弁体部と前記本体部とをヒートシール部によって互いに接合するときに、前記溶接抑制剤が塗布された部分で前記弁体部の内面どうしの接合を抑制する請求項5記載の袋体の製造方法。
【請求項7】
前記本体部は、樹脂シートの間に溶融押出しされた樹脂接着層を供給して、平行な複数の帯状接合部で樹脂シートどうしを接合し、前記帯状接合部で分割された前記中空部を形成する請求項5または6記載の袋体の製造方法。
【請求項8】
対面する樹脂シートをヒートシールして、前記通気路と前記弁体部および前記逆止通路を形成する請求項5ないし7のいずれかに記載の袋体の製造方法。
【請求項9】
樹脂シートの一部を溶断して、前記通気路から突出する複数の前記弁体部を形成する請求項8記載の袋体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−144265(P2012−144265A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2899(P2011−2899)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 2010東京国際包装展(東京パック2010)、社団法人日本包装技術協会主催、2010年10月5日から同年10月8日まで公開
【出願人】(593232402)親和パッケージ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】