説明

気体分離装置および方法

【課題】本発明は、サイクルタイムのどの段階にあるかを考慮して圧縮機の運転台数を製品ガスの使用量に応じて制御することにより、製品ガス純度・圧力を維持しつつ、製品ガスの使用量に応じて圧縮機の運転台数を制御することにより省エネ運転を可能とする気体分離装置および方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、空気を圧縮する複数台の圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気の一部を吸着する吸着槽と、前記圧縮機の運転を制御し、前記吸着槽に圧縮空気を供給して一の気体を吸着する吸着工程と、前記吸着槽から他の気体を製品ガスとして取出す取出工程を行う制御部とを備え、前記制御部は、吸着工程開始時において、全台数の圧縮機を運転させ、製品ガスの使用量が減少した場合に前記圧縮機の運転台数を減らすことを特徴とする気体分離装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気体分離装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の気体分離装置は、圧縮機とPSAを含めた窒素ガス発生装置を複数台を設置し、製品ガス使用量の変動に応じて、窒素ガス発生装置の運転台数を制御することにより省エネを実施している。特許文献2の気体分離装置は、製品ガス使用量の変動に応じて、圧縮機のモータの回転数を制御することにより、省エネを実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4002852号公報
【特許文献2】特開2002−45635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の気体分離装置は、窒素ガス生成のサイクルタイムのどの段階にあるかに関係なく、製品ガスの使用量の変動に応じて窒素ガス発生装置の運転台数を制御するものである。また、特許文献2の気体分離装置も窒素ガス生成のサイクルタイムのどの段階にあるかに関係なく、製品ガスの使用量に応じてモータの回転数を制御するものである。しかし、製品ガスの純度・圧力を維持するためには、特にサイクルタイムの初めにおいて高い圧力が必要であるが、製品ガスの使用量が少ない場合に窒素ガス発生装置の運転台数を減らしたり、モータを減速させたりすると製品ガスの純度・圧力が低下する。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑み、サイクルタイムのどの段階にあるかを考慮して圧縮機の運転台数を製品ガスの使用量に応じて制御することにより、製品ガス純度・圧力を維持しつつ、製品ガスの使用量に応じて圧縮機の運転台数を制御することにより省エネ運転を可能とする気体分離装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、空気を圧縮する複数台の圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された空気の一部を吸着する吸着槽と、前記圧縮機の運転を制御し、前記吸着槽に圧縮空気を供給して一の気体を吸着する吸着工程と、前記吸着槽から他の気体を製品ガスとして取出す取出工程とを行う制御部とを備え、前記制御部は、吸着工程開始時において、全台数の圧縮機を運転させ、製品ガスの使用量が減少した場合に前記圧縮機の運転台数を減らすことを特徴とする気体分離装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、複数台の圧縮機により空気を圧縮する圧縮工程と、前記圧縮工程により圧縮された空気から前記圧縮機で圧縮された空気の一部を吸着槽に吸着させる吸着工程と、前記吸着槽から他の気体を製品ガスとして取出す取出工程とを行い、前記圧縮工程では、前記吸着工程開始時に全台数の圧縮機を運転させ、製品ガスの使用量が減少した場合に前記圧縮機の運転台数を減らすことを特徴とする気体分離方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、製品ガス濃度・圧力を維持しつつ、製品ガスの使用量に応じた省エネ運転を可能とする気体分離装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る気体分離装置の概略構成図
【図2】本発明の実施例1に係る気体分離装置の圧力変化を示すグラフ
【図3−1】本発明の実施例1に係る気体分離装置の制御フロー図(全体)
【図3−2】本発明の実施例1に係る気体分離装置の制御フロー図(判別処理)
【図4】本発明の実施例1に係る気体分離装置の省エネ効果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明について図1−4を用いて説明する。
【0012】
図1に示す気体分離装置1はPSA式の気体分離装置である。気体分離装置1は、空気を供給する空気供給ユニット2と、製品ガスを生成するPSAユニット3で構成される。この空気供給ユニット2は、空気を圧縮する圧縮機4と、圧縮空気を貯留させる空気槽(空気貯留タンク)5、圧縮空気を除湿するドライヤー6と、析出したドレン水を回収しながら不純物を除去するドレンフィルター7を有している。本実施例では、一例として、これら圧縮機4と、空気槽5と、ドライヤー6とドレンフィルター7とは筐体に格納されている。一方、PSAユニット3は、空気供給ユニット2から供給される圧縮空気から所定の気体を分離することにより、製品ガスを生成する吸着槽19と、製品ガス(窒素)を貯留する窒素槽(製品ガス貯留タンク)41を有している。
【0013】
空気槽5で貯留された圧縮空気は後述の吸着槽19に供給され、空気槽5で貯留された圧縮空気から所定の気体が分離される。本実施例では、吸着槽19で酸素を吸着することにより、窒素を分離する場合について説明するが、窒素を吸着することにより酸素を分離してもよいし、大気以外の圧縮空気から他の気体を分離するものであってもよい。
【0014】
圧縮機4として、往復動式、スクリュー式あるいはスクロール式等の圧縮機や、外部から1次圧を供給され再圧縮する所謂ブースタ圧縮機等が用いられており、それらは複数台搭載されている。本実施例としては、3台または4台搭載しているものとして説明する。
【0015】
空気槽5には、空気槽5からの圧縮空気を流す配管16が接続されており、この配管16の端末位置には2系列に分岐した配管17が接続されている。配管17には、それぞれ流路を開閉する供給弁18が途中に設けられており、端末には酸素分子を吸着して窒素ガスを製品ガスとして取り出すための吸着槽19がそれぞれ接続されている。この吸着槽は容積一定である。また、配管17には、それぞれ供給弁18と吸着槽19との間位置に配管21が接続されており、これら配管21には、途中に流路を開閉する排気弁22が、端末に消音用のフィルタ付きの排気サイレンサ23が設けられている。この排気サイレンサは各吸着槽19毎に設けられていてもよい。また、配管17には、互いの配管21と吸着槽19との間位置を結ぶように配管25が接続されており、この配管25には流路を開閉する下均圧弁26が設けられている。
【0016】
吸着槽19には、例えば、酸素分子を吸着する吸着手段である吸着剤が充填されている。吸着剤は、具体的には分子ふるいカーボンやゼオライト等を用いている。吸着槽19には、端末位置で互いに合流する配管31がそれぞれ接続されている。これら配管31には、互いの吸着槽19側同士を結ぶように配管32が接続されており、この配管32には絞り33が設けられている。また、配管31には、互いの配管32よりも吸着槽19とは反対側同士を結ぶように配管35が接続されており、この配管35には流路を開閉する上均圧弁36が設けられている。また、配管31には、それぞれの配管35よりも吸着槽19とは反対側に流路を開閉する取出弁38がそれぞれ設けられている。配管31の合流位置には配管40が接続されており、この配管40の端末位置には窒素ガスを貯留させる製品ガス貯留タンクとしての窒素槽41が接続されている。この窒素槽41には、端末位置が吐出口42とされた配管43が接続されており、この配管43の途中位置には窒素槽41側から順に、塵埃等を除去するとともにガスの流量を調整するフィルターレギュレーター44、流路を開閉する吐出弁45、ガスの流量を調整する流量調整弁46が設けられている。配管43のフィルターレギュレーター44と吐出弁45との間位置には配管48および配管49が接続されており、配管48には、配管43側から順に、流路を開閉する開閉弁50と、ガスの流量を調整する流量調整弁51と、サイレンサ52とが設けられている。配管49には、配管43側から順に、流路を開閉する開閉弁54と、ガスの流量を調整する流量調整弁55と、酸素濃度を検出する酸素センサー56とが設けられている。酸素センサー56は制御部60に通信可能に接続されており、検出信号を制御部60に出力する。また、製品ガス使用量Quを検出する流量センサー57は、吐出口42の手前に設置されており、検出信号を制御部60に通信可能に接続されている。さらに窒素ガスの圧力を検出する圧力センサー58は、窒素槽41に接続されており、検出信号を制御部60に通信可能に接続されている。
【0017】
供給弁18、排気弁22、下均圧弁26、上均圧弁36、取出弁38、吐出弁45、流量調整弁46、開閉弁50、流量調整弁51、および開閉弁54は、制御部60に通信可能に接続されており、制御部60からの指令で作動する。
【0018】
上記に記載の酸素センサー56、流量センサー57、圧力センサー58は、外部に設置したバッファタンク70および吐出口71に接続させていてもよい。
【0019】
ここまで、気体分離装置1の構成を説明してきたが、ここで気体分離装置において行われる気体分離方法について説明する。
【0020】
気体分離装置1では、圧縮機4によって空気を圧縮する圧縮工程、圧縮工程により圧縮された空気を空気槽5に貯留する貯蔵工程、圧縮空気をエアードライヤー6により除湿する除湿工程、除湿工程により除湿された空気から気体を分離する分離工程が行わる。
【0021】
気体分離装置1の分離工程では、以下の(a)〜(d)の工程が順次繰り返される。
【0022】
(a)吸着工程:圧縮機4により圧縮され空気槽5に貯留された圧縮空気を、供給弁18を開くことで、吸着剤が充填された吸着槽19に導入するとともに、窒素槽41内に残存する窒素ガスを、取出弁38を開くことで吸着槽19に還流して吸着槽19内を昇圧させ、圧力を利用して吸着剤に酸素分子を吸着させる工程。
【0023】
(b)取出工程:吸着工程から引き続いて、空気槽5から圧縮空気を吸着槽19に導入し続けると同時に、吸着剤により分離生成された窒素ガスを吸着槽19より取り出して窒素槽41に貯留させる工程。
【0024】
(c)均圧工程:上均圧弁36および下均圧弁26の開閉により取出工程終了後の一対の吸着槽19の均圧化を図り、次回の吸着工程の吸着効率を高めて、より高純度の窒素ガスを生成するための工程。なお、ここでは吸着槽19が複数ある場合について説明したが、吸着槽19は1つであってもよく、その場合は均圧工程は不要である。
【0025】
(d)再生工程:均圧工程終了後の吸着槽19内を、排気弁22を開くことにより配管21を介して、吸着剤に吸着された酸素分子を脱着することにより吸着剤を再生する工程。なお、この再生工程において、排気弁22以外の吸着槽19に関連する供給弁18、下均圧弁26、上均圧弁36および取出弁38は、閉状態とする。
【0026】
なお、吸着槽19が複数ある場合は、ある吸着槽19で吸着工程・取出工程(工程(a)(b))が行われている間に他の吸着槽19では、再生工程(工程(d))が行われる。その後、(c)均圧工程が同時に行われ、吸着槽19を入れ替えて吸着工程・取出工程(工程(a)(b))と再生工程(工程(d))が行われる。
【0027】
(c)均圧工程では、(d)再生工程で排気した吸着槽を吸着工程・取出工程(工程(a)(b))において昇圧した吸着槽と均圧化させるため、吸着槽19の圧力は吸着工程・取出工程(工程(a)(b))で酸素ガスを吸着させるために必要な圧力よりも低くなる。また、吸着槽19が1つの場合でも吸着工程・取出工程(工程(a)(b))の直前は再生工程(工程(d))であるため、吸着工程開始時の圧力は大気圧である。従って、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))開始時は、吸着槽19に酸素分子を吸着させるには圧力が低いため、窒素ガスの純度・圧力を維持するために本実施例では、吸着工程の開始時には、全台数の圧縮機4を運転させる。
【0028】
気体分離装置1は、制御部60によって複数台の圧縮機4が制御され、上記のように分離工程が行われる。複数台の圧縮機4を搭載した圧縮機ユニットを通常運転としては、吸着工程の開始時(サイクルタイムの開始時)には定格発生量Qmの性能を維持するため、複数台(n台)搭載されている圧縮機を全台数運転させて、あらかじめ選定された分離工程時間(工程(a)(b)(c)(d)):基本サイクルタイムTiにて、上記記載の気体分離方法の各工程を踏み、それを繰り返すことで製品ガスを発生させている。(そのときの吸着工程・取出工程(工程(a)(b))の合計時間はt秒で表す。)
ここで、製品ガスの使用量に応じて圧縮機4の運転台数を制御する方法について図2に示すグラフ、図3−1、図3−2のフローを用いて説明する。
【0029】
まず、図3−1に示すように。全台数(n台)の圧縮機4を運転させ、PSAユニット3を基本サイクルタイムTにて運転させる。
【0030】
次に、製品ガス使用量Quを流量センサー57により検出し、製品ガス使用量Quに応じて圧縮機4の台数、サイクルタイムTの制御を行う。この制御について以下説明する。
【0031】
本実施例において、複数の圧縮機4を全台数運転させた場合に供給される圧縮空気の量である定格発生量Qmに対する使用量の比率Rqは、使用量比率Rq=100・Qu/Qm、(0%<Rq<100%)で表される。この使用量比率Rqを定格発生量Qm、製品ガス使用量Quから求める。
【0032】
例えば、定格発生量Qm=500L/minに対して、実際に使用している製品ガスの使用量はQu=250L/minとすると、使用量比率Rq=100・Qu/Qm=50となる。つまり定格発生量に対して50%の量しか使用していないと判断できる。
【0033】
次に以下のようにして、使用量比率Rqの区分判別処理を行う。
【0034】
本装置の空気供給ユニットに搭載している圧縮機の台数をn台とする。
【0035】
台数制御にて停止させた台数をi台で表す。(基本的には1台づつ停止させるi=0,1,2,…n)
実際に運転している台数は、n-i台 (i=0,1,2,…n)で表される。
【0036】
例えば、搭載台数をn=3台とする。
i=0台のときは、実際の運転台数は、n-i=3台
i=1台のときは、実際の運転台数は、n-i=2台
i=2台のときは、実際の運転台数は、n-i=1台
i=3台のときは、実際の運転台数は、n-i=0台となる。
【0037】
そのときの製品ガス使用量Quが0%〜100%の間のどの区分にあるかで、性能を維持しながら、運転台数を減らすと同時にサイクルタイムを延長させて、省エネ運転を行う。サイクルタイムを延長することで、消費電力を低減しつつ供給される原料空気量が減っても窒素ガスの純度・圧力を維持することができる。
【0038】
圧縮機1台あたりが供給する原料空気量は多いため、一度に複数停止させると製品ガス濃度・圧力を維持することができなくなる。そこで、本実施例では定格性能を維持するため、圧縮機全台数での運転状態から、製品ガス使用量Quを見ながら、段階的に1台づつ停止させていく方法をとる。
【0039】
まず搭載台数nで等分して、定格発生量Qm に対するn-i台で運転した場合の空気の発生量の比率をRiとする。 Riは、定格発生量Qmを100%とすると、100・(n-i)/nとなる。
【0040】
例えば、搭載台数n=3(i=0,1,2,3)のとき、
i=0のとき、R0=100・(3-0)/3=100%
i=1のとき、R1=100・(3-1)/3=66%
i=2のとき、R2=100・(3-2)/3=33%
i=3のとき、R3=100・(3-3)/3=0% となる。
【0041】
例えば、搭載台数n=4(停止台数i=0,1,2,3,4)のとき、
i=0のとき、R0=100・(4-0)/4=100%
i=1のとき、R1=100・(4-1)/4=75%
i=2のとき、R2=100・(4-2)/4=50%
i=3のとき、R3=100・(4-3)/4=25%
i=4のとき、R4=100・(4-4)/4=0% となる。
【0042】
ここで、使用量比率Rq=100・Qu/Qmが上記Riに対するどの区分にあるかを判定(区分判別処理)した上で運転台数やサイクルタイムの増減を段階的に制御する。
【0043】
例えば、n=3の場合、Riに対応して、使用量比率Rq=100・Qu/Qmが[R0<Ri<R1]、[R1<Ri<R2]、[R2<Ri<R3]に3区分に区分し、どの区分にあるかで運転台数やサイクルタイムの増減を段階的に制御する。
【0044】
また、n=4の場合、Riに対応して、使用量比率Rq=100・Qu/Qmを[R0<Ri<R1]、[R1<Ri<R2]、[R2<Ri<R3]、[R3<Ri<R4]に4区分に区分し、どの区分にあるかで運転台数やサイクルタイムの増減を段階的に制御する。
【0045】
このときの段階的な動作をSTEPi(i=0,1,2・・・n)とし、図3−2に示す。また、このときの圧縮機4の運転台数、サイクルタイムTの変化に応じた気体分離装置1の各部位の圧力変化を図2のグラフに示す。
【0046】
空気供給ユニットの圧縮機の搭載台数はn台であり、吸着工程の開始(サイクルタイムの開始)時には、性能を維持するためn台の全台数にて運転を行っている(STEP0)。製品ガス使用量Quが定格発生量Qmより減少した場合、使用量比率Rqが、Riに対して範囲区分に該当するかを判別し、運転台数を1台ずつ段階毎に停止していく(STEPi)。1台停止した残りの運転台数で、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))時間Ti秒から延長して運転させる。
【0047】
定格発生量Qm発生させるために、圧縮機をn台運転して、あらかじめ選定された基本サイクルタイムの吸着工程・取出工程(工程(a)(b))時間をt秒とする。運転台数ごとに変化する吸着工程・取出工程(工程(a)(b))時間は、Ti=t・(n-i)/nとする。
【0048】
例えば、圧縮機の搭載台数n=3の場合について説明する。
【0049】
使用量比率Rqが、範囲[R0<Ri<R1]の場合(100%〜66%の範囲)、基本サイクルタイムで通常運転を行う。「STEP0」として圧縮機は3台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、工程(c)(d)を行い、これを繰り返す。
【0050】
使用量比率Rqが、範囲[R1<Ri<R2]の場合(66%〜33%の範囲)、通常運転と同じく「STEP0」として圧縮機を3台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、その後、「STEP1」として圧縮機を1台停止させ合計2台の圧縮機を運転させて、吸着工程・取出工程を2/3t秒間延長して行う。その後は、通常運転と同様に、工程(c)(d)を行い、圧縮機を3台運転させて、「STEP0」以降を繰り返す。
【0051】
使用量比率Rqが、範囲[R2<Ri<R3]の場合(33%〜0%の範囲)、通常運転と同じく「STEP0」として圧縮機を3台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、その後、「STEP1」として圧縮機を1台停止させ合計2台の圧縮機を運転させて、吸着工程・取出工程を2/3t秒間延長して行う。さらに「STEP2」として圧縮機を1台停止させ残り1台で運転させて、さらに吸着工程・取出工程を1/3t秒間延長して行う。その後は、通常運転と同様に、工程(c)(d)を行い、圧縮機を3台運転させて、「STEP0」以降を繰り返す。
【0052】
また、例えば、圧縮機の搭載台数n=4台の場合について説明する。
【0053】
使用量比率Rqが、範囲[R0<Ri<R1]の場合(100%〜75%の範囲)、基本サイクルタイムで通常運転を行う。「STEP0」として圧縮機は4台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、工程(c)(d)を行い、これを繰り返す。
【0054】
使用量比率Rqが、範囲[R1<Ri<R2]の場合(75%〜50%の範囲)、通常運転と同じく「STEP0」として圧縮機を4台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、その後、「STEP1」として圧縮機を1台停止させ合計3台の圧縮機を運転させて、吸着工程・取出工程を3/4t秒間延長して行う。その後は、通常運転と同様に、工程(c)(d)を行い、圧縮機を4台運転させて、「STEP0」以降を繰り返す。
【0055】
使用量比率Rqが、範囲[R2<Ri<R3]の場合(50%〜25%の範囲)、通常運転と同じく「STEP0」として圧縮機を4台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、その後、「STEP1」として圧縮機を1台停止させ合計3台の圧縮機を運転させて、吸着工程・取出工程を3/4t秒間延長して行う。さらに「STEP2」として圧縮機を1台停止させ合計2台で運転させて、吸着工程・取出工程を1/2t秒間延長して行う。その後は、通常運転と同様に、工程(c)(d)を行い、圧縮機を4台運転させて、「STEP0」以降を繰り返す。
【0056】
使用量比率Rqが、範囲[R3<Ri<R4]の場合(25%〜0%の範囲)、通常運転と同じく「STEP0」として圧縮機を4台運転させて、吸着工程・取出工程(工程(a)(b))をt秒間行い、その後、「STEP1」として圧縮機を1台停止させ合計3台の圧縮機を運転させて、吸着工程・取出工程を3/4t秒間延長して行う。さらに「STEP2」として圧縮機を1台停止させ合計2台で運転させて、吸着工程・取出工程を1/2t秒間延長して行う。さらに「STEP3」として圧縮機を1台停止させ残り1台で運転させる、吸着工程・取出工程を1/4t秒間延長して行う。その後は、通常運転と同様に、工程(c)(d)を行い、圧縮機を4台運転させて、「STEP0」以降を繰り返す。
【0057】
上記の省エネ運転の最中で、製品ガス使用量Quが急激に増加した場合や、窒素ガス純度が急激に悪くなった(酸素濃度が上がった)場合に、性能を維持するため、もしくは回復させるために、瞬時に吸着工程・取出工程(工程(a)(b))を停止し、均圧工程(c)を行い、次の吸着槽へ切替える動作を行う。全台数の圧縮機4を運転させ、基本サイクルタイムの通常運転に戻る。即ち、上記の省エネ運転の最中で、製品ガス使用量Quが規定値を超えた場合や、酸素濃度が規定値を上回った場合は、全台数の圧縮機4にて運転を開始することになる。なお、製品ガスの圧力を検出する圧力センサー58、または製品ガスの濃度を検出する酸素センサー56によって、圧力変化速度Rp=Pdt(傾き)または、残留酸素濃度変化速度Rd=Ddt(傾き)を割り出して、これらが規定値を上回った場合に上記制御を行ってもよい。
【0058】
本実施例における省エネの効果について図4を用いて説明する。図4に例えば、圧縮機4を3台搭載した気体分離装置において、本実施例の台数制御を適用した場合の消費電力を本実施例の台数制御を適用しない場合(比較例)の消費電力と比較して示す。図4に示すように、本実施例によれば、比較例に対して製品ガスの使用量が0〜33%の場合60%の消費電力とすることができ、33〜66%の場合、80%の消費電力とすることができ、図4のグラフの斜線部に示す面積の分の省エネ効果を得ることができる。
【0059】
本実施例によれば、サイクルタイムの開始時は全台数の圧縮機4を運転させるため、製品ガスの濃度・圧力を維持しつつ、省エネ運転をすることができる。
【実施例2】
【0060】
実施例1の気体分離装置において、圧縮機4が故障した場合に、装置を完全停止するか、他の故障していない圧縮機4により気体分離装置を作動し続けるかモードを選択可能にする。
【0061】
「通常モード」を選択すると、圧縮機が1台でも故障により停止した場合、気体分離装置を完全に停止する。「応急モード」を選択すると、他の正常な圧縮機により気体分離装置を作動し続け、製品ガスの性能(濃度、圧力、流量)が満たされていない状況でも、運転し続ける。
【0062】
本実施例によれば、圧縮機4が故障した場合に、製品ガスの性能(濃度、圧力、流量)が低下しても運転を継続するか、製品ガスの性能を維持するために運転を停止するかを使用者の要求に応じて選択することができる。
【0063】
ここで、実施例1、2において、一対の吸着槽1,2を有するPSA式窒素発生装置を用いて説明したが、本発明はこれに限ることはなく、単一および2つ以上の吸着槽を有していてもよい。
【0064】
また、実施例1、2では、気体分離装置として窒素ガスを発生させる窒素発生装置を例に挙げて説明したが、例えば酸素ガスを発生させる酸素発生装置に適用してもよいものである。
【0065】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0066】
1・・・気体分離装置
2・・・空気供給ユニット
3・・・PSAユニット
4・・・圧縮機
5・・・空気槽(空気貯留タンク)
6・・・エアードライヤー
7・・・ドレンフィルター
18・・・供給弁
19・・・吸着槽
22・・・排気弁
23・・・排気口
26・・・下均圧弁
33・・・オリフィス
36・・・上均圧弁
38・・・取出弁
41・・・窒素槽(製品ガス貯留タンク)
42・・・吐出口
44・・・フィルターレギュレーター
45・・・吐出弁
46・・・流量調整弁
50・・・開閉弁(排気用)
51・・・流量調整弁(排気用)
52・・・サイレンサ
54・・・開閉弁(センサー用)
55・・・流量調整弁(センサー用)
56・・・酸素センサー
57・・・流量センサー
58・・・圧力センサー
60・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を圧縮する複数台の圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された空気の一部を吸着する吸着槽と、
前記圧縮機の運転を制御し、前記吸着槽に圧縮空気を供給して一の気体を吸着する吸着工程と、前記吸着槽から他の気体を製品ガスとして取出す取出工程とを行う制御部とを備え、
前記制御部は、吸着工程開始時において、全台数の圧縮機を運転させ、製品ガスの使用量が減少した場合に前記圧縮機の運転台数を減らすことを特徴とする気体分離装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記圧縮機の運転台数を減らす場合に、吸着工程および取出工程の時間を延長することを特徴とする請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記圧縮機の運転台数を1台ずつ減らすことを特徴とする請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記圧縮機の運転台数を減らした後、製品ガスの使用量が増加した場合に全台数の前記圧縮機を運転させることを特徴とする請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項5】
複数台の前記圧縮機のうち、1台の前記圧縮機が故障した場合に、他の前記圧縮機を停止するか、他の前記圧縮機を作動し続けるかをあらかじめ選択可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の気体分離装置。
【請求項6】
複数台の圧縮機により空気を圧縮する圧縮工程と、
前記圧縮工程により圧縮された空気から前記圧縮機で圧縮された空気の一部を吸着槽に吸着させる吸着工程と、前記吸着槽から他の気体を製品ガスとして取出す取出工程とを行い、
前記圧縮工程では、前記吸着工程開始時に全台数の圧縮機を運転させ、製品ガスの使用量が減少した場合に前記圧縮機の運転台数を減らすことを特徴とする気体分離方法。
【請求項7】
前記圧縮機の運転台数を減らす場合に、吸着工程および取出工程の時間を延長することを特徴とする請求項6に記載の気体分離方法。
【請求項8】
前記圧縮工程では、前記圧縮機の運転台数を1台ずつ減らすことを特徴とする請求項6に記載の気体分離方法。
【請求項9】
前記圧縮工程では、前記圧縮機の運転台数を減らした後、製品ガスの使用量が増加した場合に全台数の前記圧縮機を運転させることを特徴とする請求項6に記載の気体分離方法。
【請求項10】
前記圧縮工程では、複数台の前記圧縮機のうち、1台の前記圧縮機が故障した場合に、他の前記圧縮機を停止するか、他の前記圧縮機を作動し続けるかをあらかじめ選択可能にしたことを特徴とする請求項6に記載の気体分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−78734(P2013−78734A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220622(P2011−220622)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】