説明

気体吸着部材付きフィルム及びこのフィルムを用いた電子機器の製造方法

【課題】フィルム上に粘着された気体吸着部材の剥離性を向上し、気体吸着部材の自動ピックアップに対応できる気体吸着部材付きフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】電子機器に内包される気体吸着部材2を有し、複数の該気体吸着部材2がフィルム1上に一定の間隔をおいて粘着剤3により粘着され、前記フィルム1から前記気体吸着部材2を順次剥離し供給できる気体吸着部材2付きフィルム1であって、前記粘着剤3は部分的に塗布されている状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明らは、気体吸着部材付きフィルム及びこのフィルムを用いた電子機器の製造方法に関するものである。気体吸着部材が用いられる電子機器としては、例えば、有機EL表示装置やハードディスクドライブなどが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子を用いた有機EL表示装置やハードディスクドライブなど、湿度や酸性ガス、有機ガスによって劣化する虞のある電子機器類の内部には、水蒸気や有害ガス等を吸着する機能を有する気体吸着部材が使用されている。例えば、特許文献1には、有機EL素子の水分等による経時劣化を回避すべく、有機EL素子を収納した密閉容器内に、吸着剤を配置することにより、該容器内の水分やその他有機EL素子の劣化を引き起こすガスを吸着除去する気体吸着部材が記載されている。
【0003】
このような気体吸着部材を有機EL素子の製造ラインに供給する場合、気体吸着部材は、生産性向上のため、基材がテープ状のPETフィルムで構成される剥離ライナーの上に、剥離ライナーの長さ方向に多数連続的に粘着(仮着)された状態で供給される。両面テープにより剥離ライナーに粘着された各気体吸着部材は、エア吸引装置により剥離ライナーからピックアップされ、順次、有機EL素子に組み込まれていく。
【0004】
特許文献2には、気体吸着部材の供給例ではないが、剥離シートSからラベルLをピックアップし、被着体Wに装着する方法について記載されている。特許文献2の図4には、鋭角のエッジ部を有するピールプレート60を剥離シートSの裏面から押し当てながら剥離シートSを走行させることにより、ラベルLの先端を剥離シートSから浮き上がらせ、浮き上がった部分を契機として吸引装置61によりラベルLをピックアップする様子が示されている。有機EL素子の製造ラインにおいても、同様の構成により、気体吸着部材をピックアップする。
【特許文献1】特開2002−280166号公報(図1等)
【特許文献2】特開2006−82812号公報(図4等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記製造ラインにおいて、気体吸着部材がピールプレート60のエッジ部を通過しても気体吸着部材の先端部が浮き上がらず、剥離シートSが剥離ライナーに粘着したままの状態となってしまう(特許文献2の図5参照)。このような状態では、ピックアップの成功確率が落ちてしまい、生産タクトが低下したり、歩留まりが低下する原因となってしまう。
【0006】
ピックアップ装置の例ではないが、剥離性を高めるために、粘着剤の粘着性を小さくする技術も知られている(例えば、特開2004−91546号公報や、特開2005−146080号公報参照)。しかしながら、本発明者らの検討によると、粘着剤の粘着性を単に小さくするだけでは、剥離ライナー上に整然と配列させていた気体吸着部材が梱包時などに位置ずれを起こしてしまい、自動ピックアップには適応できない状態になってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、剥離ライナー上では一定の粘着力を発揮して気体吸着部材を適切な位置に確実に粘着させつつも、ピールプレート通過時には、気体吸着部材の先端を確実に浮き上がらせる状態とし、気体吸着部材を良好にピックアップすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、現状の気体吸着部材の成形方法は、刃物による打ち抜き法であるため、刃物が気体吸着部材を貫通し、剥離ライナー表面に刃物の打痕が形成され、この際、剥離ライナーと気体吸着部材との間にある粘着剤が刃物に巻き込まれることにより、剥離ライナーの打痕内にくい込み、そのため、気体吸着部材の外周部で剥離ライナーとの固着が特に高くなっていることを見出した。そして、気体吸着部材の面積に対して粘着剤の塗布面積を小さくすることにより、すなわち、粘着剤の塗布を部分的とすることにより、剥離ライナーの打痕内に侵入する粘着剤の量を減らし、気体吸着部材外周部の剥離性を従来よりも高くする(剥がれやすくする)ことができるのではないかと考え、本発明を完成した。
【0009】
上記目的を達成し得た本発明の気体吸着部材付きフィルムは、
電子機器に内包される気体吸着部材を有し、複数の該気体吸着部材がフィルム上に一定の間隔をおいて粘着剤により粘着され、前記フィルムから前記気体吸着部材を順次剥離し供給できる気体吸着部材付きフィルムであって、前記粘着剤は部分的に塗布されているものである。
【0010】
上記気体吸着部材付きフィルムにおいて、
気体吸着部材と前記フィルムとの間に、粘着基材シートを更に有し、該粘着基材シートの第一の表面に前記粘着剤が部分的に塗布されており、前記第一の表面とは反対側である第二の表面に、より広い領域または全面において粘着剤が塗布されていることが推奨される。
【0011】
上記気体吸着部材付きフィルムにおいて、
前記粘着基材シートの第一の表面側が前記フィルム側に粘着し、第二の表面側が前記気体吸着部材側に粘着していることが推奨される。
【0012】
上記気体吸着部材付きフィルムにおいて、
部分的に塗布された前記粘着剤がアクリル系粘着剤であることが推奨される。
【0013】
上記気体吸着部材付きフィルムにおいて、
部分的に塗布された前記粘着剤がドット状に塗布されていてもよい。
【0014】
上記気体吸着部材付きフィルムにおいて、
部分的に塗布された前記粘着剤がストライプ状に塗布されていてもよい。
【0015】
上記目的を達成し得た本発明の電子機器の製造方法は、
上記の気体吸着部材付きフィルムから気体吸着部材を剥がし取り、該気体吸着部材を電子機器の内部に装着するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、フィルムである剥離ライナー上では一定の粘着力を発揮して気体吸着部材を適切な位置に確実に粘着させつつも、ピールプレート等の通過時には、気体吸着部材の先端を確実に浮き上がらせる状態とし、気体吸着部材を良好にピックアップすることが可能となり、ピックアップの成功確率が向上する。その結果、電子装置の生産タクトの向上や歩留まりの向上を実現することができる。
【0017】
また、本発明に斯かる気体吸着部材付きフィルムを用いて気体吸着部材を電子機器内部に装着した場合、気体吸着部材とその被粘着物との間に噛み込む空気の量は少ないため、気体吸着部材を薄型化することができる。厚みの膨らみは薄型化が求められる有機EL素子においては貼付後の厚さ許容値を満たさず、有機EL素子との接触による素子破壊にもつながる恐れがあり、本発明はこの点においても有機EL素子の生産タクトの向上、生産歩留りの向上に寄与するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態における気体吸着部材付きフィルムについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(1)気体吸着部材付きフィルムの構成
図1は、本実施の形態における気体吸着部材付きフィルムの一例の断面を示すものである。図1において、PET(ポリエチレンテレフタレート)基材から構成されるフィルム(以下、剥離ライナーともいう)1上に複数の気体吸着部材2が粘着剤3を介して粘着されている。気体吸着部材2は、大きなシート状物の気体吸着部材を剥離ライナー1上に形成した後に、刃物を押打し、不要な部分を剥がし取ることによって必要な部分のみを残す方法により形成される。粘着剤3は、粘着基材シート4の第一の表面に塗布されたものであり、第一の表面とは反対側である粘着基材シート4の第二の表面に粘着剤5が塗布されている。粘着剤3、粘着基材シート4、粘着剤5は、両面テープ6を構成している。
【0020】
剥離ライナー1の表面であって、気体吸着部材2の外周部には、気体吸着部材を刃物で打ち抜く際の打痕7が残っている場合が多い。打痕7の深さは調整することは可能であるが、刃物が剥離ライナー1の表面に到達しない場合には、打ち抜き不良となってしまう。
【0021】
図2は、剥離ライナー1側から見た平面図であり、粘着剤3は、粘着基材シート4の第一の表面にドット状に塗布されていることを示すものである。
【0022】
図3は、他の実施の形態における粘着基材シート4の平面図であり、粘着剤3がストライプ状に塗布されている場合の例を示すものである。
【0023】
(2)気体吸着部材
気体吸着部材2としては、水分又は電子機器に有害なガスを吸着する機能を有する限り種々の吸着部材を使用でき、好ましくは気体吸着剤をバインダーで結合したものが使用できる。バインダーを用いれば、気体吸着剤粉の発生を簡便に低減でき、電子機器を汚染する虞がない。
【0024】
バインダーとしては、樹脂(特に熱可塑性樹脂)などの固体バインダーを使用するのが好ましく、特に電気絶縁性に優れた樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライドなどのフッ素系樹脂;エチレン系不飽和単量体の単独又は共重合体(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等)などのポリオレフィン系樹脂の粉末材料が好適に使用できる。中でもポリテトラフルオロエチレン樹脂が好ましい。ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、耐熱性、耐薬品性に優れており、さらにはこの樹脂のファインパウダーを気体吸着剤と混合してシート化すると、シートが多孔質化するために気体吸着剤の吸着特性が阻害されない。
【0025】
気体吸着剤とは、化学的、物理的、あるいは化学物理的な作用で雰囲気中の気体を除去するもののことを意味する。気体吸着剤には、空気中の水蒸気及び/又は酸性ガス(SOx、NOx、HCl等))を除去するものが含まれる。また気体吸着剤は、多孔質体であることが好ましい。
【0026】
気体吸着剤のうち好ましく用いる化学吸着剤としては、アルカリ金属酸化物(NaO、KO等)、アルカリ土類金属酸化物(CaO、MgO、SrO、BaO等)、金属ハロゲン化物(CaCl、MgCl、CrCl、FeCl、NiCl等)、金属硫酸塩(CaSO、MgSO、FeSO、NiSO、等)、過塩素酸塩(KClO、NaClO、Fe(ClO、Co(ClO、Ca(ClO、Mg(ClO、Ba(ClO、Mn(ClO等)等が挙げられる。前記化学吸着剤を単独で用いても、1種または2種以上の混合物を用いても良い。アルカリ土類金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩などは水分除去に好適に使用できる。
【0027】
特に、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム及び硫酸カルシウムの中から選ばれる少なくとも1種を含む化学吸着剤の使用が好ましい。これらの吸着剤は、特に吸湿速度が速い。また、化学反応による吸着であるため分解温度以下の温度では吸着質を脱着しないという特徴を有する。
【0028】
吸湿性吸着剤のうち物理吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、アルミナ、ボリア、チタニア、シリカゲル、セピオライト、活性白土等を例示できる。物理吸着剤は、加熱や減圧等により比較的容易に吸着質を脱着させることができ、再生利用しやすい点で優れている。
【0029】
本実施の形態においては、好ましくは化学吸着剤と物理吸着剤との混合物を用いる。数種の化学吸着剤と物理吸着剤を組み合わせることで、数種の吸着質に対する吸着性能を持たせることができる。また、反応速度や吸湿容量の異なる化学吸着剤と物理吸着剤を組み合わせることで吸着性能の即効性と持続性を発揮できる。また物理吸着剤として、例えば活性炭を用いることで気体吸着剤に黒色系の着色を施すことができ、ピックアップの際のセンサー検知に有効であるという利点がある。化学吸着剤と物理吸着剤(特に活性炭)を混合する場合、活性炭の割合は、化学吸着剤100質量部に対して、例えば、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部である。
【0030】
本実施の形態で用いる気体吸着剤は、酸素吸着剤であってもよい。酸素吸着剤としては、従来公知の各種のもの、例えば、金属や金属酸化物の粉末、特に、鉄粉や酸化鉄(FeO)の粉末を用いることができる。酸素吸着剤は、単独で使用してもよく、前記吸湿性吸着剤(特に化学吸着剤)と組み合わせて使用してもよい。酸素吸着剤と化学吸着剤とを組み合わせる場合、酸素吸着剤量は、化学吸着剤100質量部に対して、例えば、0.1〜50質量部、好ましくは1〜30質量部程度である。
【0031】
本実施の形態において用いる気体吸着剤は、通常、粉体である。気体吸着剤の平均粒径は、気体吸着部材2の厚さを考慮して決定するのが推奨される。平均粒径は、レーザー回折式の粒度分布測定装置(島津製作所製のSALD−2000)を用いて測定した。この場合、吸着剤の平均粒径は、気体吸着部材2の厚さに対して、例えば、3/4以下、好ましくは2/3以下である。気体吸着部材2の厚さに対して粒径が大きすぎる場合は気体吸着部材2の表面の平滑性を失い、厚さばらつきに大きく影響してしまうからである。
【0032】
気体吸着剤の平均粒径の下限値は、特に制約されないが、通常10μm程度である。本発明で好適に使用する気体吸着剤(酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム等の化学吸着剤)の平均粒径は、前記範囲と異なっていてよく、例えば、0.1〜500μm、好ましくは1〜300μmである。
【0033】
バインダーと気体吸着剤の混合比は、これらの種類に応じて適宜設定できる。例えば、バインダー樹脂と気体吸着剤の混合質量比(バインダー樹脂:気体吸着剤)は、2:98〜90:10、好ましくは4:96〜80:20の範囲とすることが好ましい。2:98よりもバインダー樹脂の配合比が小さいと気体吸着部材2をシート化することができず、また、90:10よりもバインダー樹脂の配合比が大きいと気体吸着部材2の吸着性能が不十分となる。
【0034】
気体吸着部材2の厚さは、例えば、0.02〜2mm、好ましくは0.05〜0.5mmである。気体吸着部材2の厚さが0.02mmよりも薄いと、気体吸着剤の充填量が不足するようになり、又、製造上の取扱いが困難となる。一方、気体吸着部材2の厚さが2mmよりも厚いと、材料コストが高くなる。又、気体吸着部材2を有機EL素子に装着する場合には、素子全体を厚くする必要があるため、携帯電話やモバイル端末、ポータブルオーディオプレーヤーなど小型化が要求される用途に適さない。
【0035】
気体吸着部材2の平面的形状は、特に限定されず、気体吸着部材2を装着する場所(例えば、有機EL素子の封止部材の内側表面)の形状や大きさに合わせて適宜決定すればよい。気体吸着部材(気体吸着シート)2の装着には、接着剤を用いた接着、熱可塑性樹脂を用いた融着、粘着材を用いた粘着等、適宜の方法を用いることができるが、粘着材を用いる方法が、簡便で作業性に優れるため好ましい。
【0036】
なお、吸湿性吸着剤とバインダー樹脂を混合してシート状に成形する方法の一例としては、特開2003−320215号公報記載の製法が適用できる。ただし、特に左記方法に限定される訳ではなく、要するに吸着性能を確保した上でシート状に成形できればよく、従来公知の方法が適宜用いられる。
【0037】
(3)粘着剤
本実施の形態における粘着剤3としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等、従来公知のものが適宜使用できるが、アクリル系粘着剤が耐熱性に優れており好ましく用いられる。粘着剤3の耐熱温度(被着体に対して粘着性を保持できる温度)は、例えば、80℃以上、好ましくは120℃以上である。耐熱温度が80℃未満では、使用時の熱負荷によって気体吸着部材2が剥れてしまう場合がある。
【0038】
粘着剤3を形成する層の厚さは500μm以下とすることが好ましい。厚さが500μmを超えると、材料コストが高くなる。又、有機EL素子に使用する場合には、素子全体の厚さが厚くなるため、携帯電話やモバイル端末、ポータブルオーディオプレーヤーなど小型化が要求される用途に適さない。
【0039】
(4)粘着剤の塗布領域
本発明の粘着剤3は部分的に塗布(パターン塗布)されている。部分的な塗布であれば、図2に示すドット形状、図3に示すストライプ形状などの形状に限定されず、種々のパターン(好ましくは規則的な繰り返しパターン)で塗布される。ドット形状に塗布する場合、各ドットの形状は、丸型、四角形、多角形状、文字形状、幾何学形状のいずれであってもよく、各形状の配列は任意であってよい。ドットの形状や各形状の配列は、インクジェットやスクリーン印刷やグラビア印刷などの各種の印刷手法を用いることができる。ストライプ形状に塗布する場合、ストライプを構成する各線は、直線、平面内で蛇行する波型等から適宜選択し使用すればよい。塗布面積の割合は、製造環境、使用環境における温度領域全般で、気体吸着部材2を支持できる粘着力を有する範囲で設定すればよいが、好ましくは、粘着基材シート4の面積の0.5%以上、80%以下、さらに好ましくは、粘着基材シート4の面積の5%以上、70%以下とする。
【0040】
(5)両面テープ
両面テープ6には、ポリエステルやポリイミド等により構成される粘着基材シート4、その表裏に、部分的に塗布された粘着剤3、全面的に塗布された粘着剤5で構成される3層構造のものを用いても良い。粘着剤3と粘着剤5には、基本的には同じ材料のものを使用してもよいし、異なる材料のものを使用してもよい。粘着基材シート4を用いることにより適度な腰が出るため、製造時の取扱い性が向上する。両面テープ6は、部分的に塗布された粘着剤3を剥離ライナー1側に貼り付けて使用するのがよい。
【0041】
(6)剥離ライナー
本実施の形態における剥離ライナー1は、薄い気体吸着部材2を保管、運搬する役割を担うものである。剥離ライナー1の基材としては少なくとも片面あるいは両面がシリコーン系離型剤で処理されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが好ましい。PET以外に選択し得る材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリカーボネート等の樹脂フィルム、グラシン紙、上質紙、コート紙、含浸紙、合成紙などの紙、アルミニウム、ステンレススチール等の金属箔などが挙げられる。
【0042】
剥離ライナー1の厚さは、例えば、10〜100μm、好ましくは25〜50μmである。なお、基材の表面には、離型剤や粘着剤との接着性を向上させるため、コロナ放電処理、プラズマ処理、フレームプラズマ処理などを施してもよく、プライマー層などを設けてもよい。プライマー層としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン系共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、これらの変性物などの高分子材料(所謂アンカーコート剤)を使用することが出来る。
【0043】
(7)気体吸着部材付きフィルムの使用例
図4〜図9は、本実施の形態における気体吸着部材付きフィルムである剥離ライナー1から気体吸着部材2をピックアップする工程を示すものであるが、ここで説明する使用例は、あくまで例示であってこれに限定されるものではなく、本発明の主旨に沿う範囲で種々変更を加えて実施することができる。以下、気体吸着部材付きフィルムの使用例、乃至は電子装置の製造方法について図4〜図9に従い順を追って説明する。
【0044】
図4に示すように、複数の気体吸着部材2が剥離ライナー1に粘着(仮着)された状態で図面の左側に向かって順次送給されてくる。剥離ライナー1には、常に張力が加えられており、緩みはない。剥離ライナー1は、鋭角に形成されたナイフエッジ8で図面右下方向に折り返される。本実施の形態において、ナイフエッジ8の鋭角部は、60度以下であることが好ましい。
【0045】
このとき、気体吸着部材2に塗布された接着剤3(図1参照)は、全面的ではなく部分的に塗布されているために、剥離ライナー1の打痕7内にくい込んでいる接着剤3の量は少ない。そのため、気体吸着部材2の先頭部分は剥離ライナー1の折り返しに伴って剥離ライナー1から剥がれ易い。剥がれた先頭部分を以後、「ピックアップ先端部」と記載する。
【0046】
このような剥がれ作用を考慮すると、接着剤3の塗布を部分的(本実施の形態では、ドット状)とする必要があるのは、必ずしも気体吸着部材2の全面ではなく、気体吸着部材2の外周領域、或いは、先頭領域において部分的(ドット状等)であれば足りることが分かる。
【0047】
また、気体吸着部材2の先頭端がナイフエッジ8の端部に達してから気体吸着部材2を更に1〜1.5mm程度進ませた状態で剥離ライナー1の送給を一時停止すると、気体吸着部材2が持つ弾性力により、先端部が剥離ライナー1から剥がれ、より確実にピックアップ先端部を形成すことができる。
【0048】
次に、図5に示すように、空気の吸引により目的物を吸着し他の場所へ移動させることのできる吸着ヘッド9により、気体吸着部材2を吸着する。ここで、少なくともピックアップ先端部を吸着するようにする。気体吸着部材2の残りの部分の吸着及び引き剥がしを容易にするためである。
【0049】
次に、図6に示すように、吸着ヘッド9の位置はそのままで、ナイフエッジ8を図面右側に移動(後退)させる。この動作により、気体吸着部材2の残りの部分が引き剥がされ、粘着基材シート4や粘着剤3とともに、気体吸着部材2は、剥離ライナー1から吸着ヘッド9へ完全に移行する。
【0050】
次に、図7に示すように、吸着ヘッド9は、気体吸着部材2を吸着したままで気体吸着部材2を装着すべき電子機器の構成部材(図示せず:例えば有機EL素子)まで搬送し、気体吸着部材2を所定の場所に装着する。
【0051】
最後に、図8に示すように、図面右側に後退させていたナイフエッジ8を再び図面左側方向へ移動(前進)させ、かつ張力を作用させつつ剥離ライナー1を送給することによって、図9に示すように、図4と同じ状態に戻る。これにより、1枚の気体吸着部材2を剥がし、吸着ヘッド9により気体吸着部材2を所定の場所に装着する一連の作業が完結する。
【0052】
気体吸着部材2が内部に装着された電子機器構成部材からは、その後、公知の方法によって有機EL表示装置やその他の電子機器が製造される。
【0053】
以上説明したように、本発明にかかる気体吸着部材付きフィルムは、粘着剤3が部分的に塗布されているため、気体吸着部材2の外周部がフィルム1から剥がれやすい構造となっている。
【0054】
また、気体吸着部材2とフィルム1との間に粘着基材シート4を用い、粘着基材シート4の第一の表面に前記粘着剤3を部分的に塗布し、第一の表面とは反対側である第二の表面に、より広い領域または全面において粘着剤5を塗布する構成とすれば、粘着剤3の取り扱い性が向上すると共に、第一の表面と第二の表面の粘着力の差から、剥離作業を安定的に行なうことができる。
【0055】
この場合、粘着基材シート4の第一の表面側をフィルム1側とし、第二の表面側を気体吸着部材2側とするのが好ましい。フィルム1を折り曲げることにより気体吸着部材2を剥離する場合に有利である。
【0056】
次に、本実施の形態にかかる粘着剤の剥離不良率等に関して行った試験の内容、およびその結果について説明する。
【0057】
(i)粘着強度
試験に用いた各種の粘着剤の接着力の違いを確認するため、図10に示す試験機を用いて引張試験を行った。図10において、引張治具10上に固定用両面テープ11を介して、被着面の材料として想定される金属板12が固定されている。金属板12に、厚さ12μmのPETフィルムで芯材が構成される粘着テープ14をロールで加圧しながら貼り付け、その後、この粘着テープ14を引張治具15により鉛直方向に剥がす際の引張強度を測定した。詳細な試験条件は、下記の通りであり、試験結果は他の試験結果と共に、後掲の表1に記載する。なお、表1中「粘着強度」の欄の単位「N/mm」は、粘着テープ14の幅1mm当たりの粘着強度を示すものである。本試験では、幅20mmの粘着テープ14を使用したので、図10の試験において実際に計測された引張強度の値を20で除した値が粘着強度として算出される。
【0058】
粘着テープ:
粘着テープα:感圧型粘着剤(商品名:SKダイン、綜研化学(株)製をドット状に塗布(塗布厚18μm))
粘着テープβ:感圧型粘着剤(商品名:コーポニール(登録商標)、日本合成化学工業(株)製)を全面的に塗布(塗布厚9μm))
粘着テープγ:感圧型粘着剤(商品名:SKダイン、綜研化学(株)製を全面的に塗布(塗布厚18μm))
粘着条件:金属板12に粘着テープ14を貼り、恒温恒湿室で、23℃、湿度50%の条件で24時間保管
剥離環境温度:25℃
引張試験機:東洋精機製作所製(STROGRAPH VE5D)
サンプル数:6
加圧:テスター産業のJIS規格適合ロール
剥離速度:50mm/分
【0059】
(ii)剥離不良率
各種粘着剤の剥離不良率の違いを確認するため、図4に示す機構の装置を用いて剥離試験を行った。図4において、本実施の形態にかかる気体吸着部材2付きの剥離ライナー1が繰り出され、ナイフエッジ8(エッジ角60度)を経て、剥離ライナー1は矢印方向に搬送される。剥離ライナー1に与えられる張力は0.8kg重である。その他の詳細な試験条件は、下記の通りである。試験結果は、表1に示す。
【0060】
剥離ライナーの厚さ:50μm
気体吸着部材の厚さ:125μm
サンプル数:10000
【0061】
【表1】

【0062】
表1から分かるように、粘着テープβは、粘着テープγよりも粘着強度を落としたものであるが、剥離不良率は殆ど改善していない(剥離不良率が下がっていない)。一方、粘着剤の塗布領域がドット状である粘着テープαを用いた場合は、粘着剤の塗布領域が全面である粘着テープβ、粘着テープγの場合よりも剥離不良率が顕著に改善されている。
【0063】
(iii)気泡発生率
気体吸着部材2が粘着された粘着テープ(α〜γ)を、被着面の材料の一つとして想定されるガラス板13(図示せず)に粘着させ、ガラス板13と粘着テープ(α〜γ)との間に噛み込まれている気泡の有無をガラス板13越しに確認したところ、表1に示すように、粘着テープβ、粘着テープγの場合は気泡が確認されたが、粘着テープαの場合には気泡は確認されなかった。参考のため、図11(a)に、ガラス板13に粘着した粘着テープαをガラス板13側から撮影した写真、図11(b)に、ガラス板13に粘着した粘着テープβをガラス板13側から撮影した写真をそれぞれ示す。粘着テープαは、ガラス板13と隙間なく粘着されていることが分かるが、粘着テープβは、ガラス板13との間に気泡が存在することが確認される。以上のことから、本実施の形態にかかる粘着テープにより、被着体との間に発生しやすい気泡を防止できることが確認された。
【0064】
(iv)打痕内の状態確認
本実施の形態にかかる剥離ライナー1の表面状態、特に打痕7付近の状態を反射型電子顕微鏡で観察した。図12は、粘着剤3が粘着基材シート4の全面に塗布された従来のものを用い、剥離ライナー1上に打ち抜き前の気体吸着部材2を粘着させ、気体吸着部材2を打ち抜いた後、剥離ライナー1上の打痕7の状態を反射型電子顕微鏡にて観察したものである。但し、剥離ライナー1の最表面は、シリコーン系離型剤で処理されている。図12から、打痕7に粘着剤が侵入していることが分かる。
【0065】
これに対して、図13及び図14は、粘着剤3が粘着基材シート4にドット状に塗布されたものを用い、剥離ライナー1上に打ち抜き前の気体吸着部材2を粘着させ、気体吸着部材2を打ち抜いた後、剥離ライナー1上の打痕7の状態を反射型電子顕微鏡にて観察したものである。図13及び図14では、打痕7には、粘着剤が侵入していない。
【0066】
以上のことから、剥離ライナー1と気体吸着部材2との間に用いる粘着剤3の塗布領域を部分的とすることにより、打痕7内への粘着剤3の侵入が防止でき、これにより気体吸着部材2の剥離不良率を低減することができたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材付きフィルムの概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材付きフィルムの概略平面図である。
【図3】図3は、本発明の他の実施の形態にかかる気体吸着部材付きフィルムの概略平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材を剥がす工程を説明する工程断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材を剥がす工程を説明する工程断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材を剥がす工程を説明する工程断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材を剥がす工程を説明する工程断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材を剥がす工程を説明する工程断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態にかかる気体吸着部材を剥がす工程を説明する工程断面図である。
【図10】図10は、引張強度を測定するための試験機構を示すものである。
【図11】(a)は、粘着テープαをガラス板13側から撮影した写真、(b)は、粘着テープβをガラス板13側から撮影した写真である。
【図12】図12は、剥離ライナー表面の反射型電子顕微鏡写真である。
【図13】図13は、剥離ライナー表面の反射型電子顕微鏡写真である。
【図14】図14は、剥離ライナー表面の反射型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0068】
1 フィルム(剥離ライナー)
2 気体吸着部材(気体吸着シート)
3 粘着剤
4 粘着基材シート
5 粘着剤
6 両面テープ
7 打痕
8 ナイフエッジ
9 吸着ヘッド
10 引張治具
11 固定用両面テープ
12 金属板
13 ガラス板
14 粘着テープ
15 引張治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に内包される気体吸着部材を有し、複数の該気体吸着部材がフィルム上に一定の間隔をおいて粘着剤により粘着され、前記フィルムから前記気体吸着部材を順次剥離し供給できる気体吸着部材付きフィルムであって、前記粘着剤は部分的に塗布されていることを特徴とする気体吸着部材付きフィルム。
【請求項2】
前記気体吸着部材と前記フィルムとの間に、粘着基材シートを更に有し、該粘着基材シートの第一の表面に前記粘着剤が部分的に塗布されており、前記第一の表面とは反対側である第二の表面に、より広い領域または全面において粘着剤が塗布されている請求項1に記載の気体吸着部材付きフィルム。
【請求項3】
前記粘着基材シートの第一の表面側が前記フィルム側に粘着し、第二の表面側が前記気体吸着部材側に粘着している請求項2に記載の気体吸着部材付きフィルム。
【請求項4】
部分的に塗布された前記粘着剤がアクリル系粘着剤である請求項1〜3のいずれかに記載の気体吸着部材付きフィルム。
【請求項5】
部分的に塗布された前記粘着剤がドット状に塗布されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の気体吸着部材付きフィルム。
【請求項6】
部分的に塗布された前記粘着剤がストライプ状に塗布されたものである請求項1〜4のいずれかに記載の気体吸着部材付きフィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の気体吸着部材付きフィルムから気体吸着部材を剥がし取り、該気体吸着部材を電子機器の内部に装着することを特徴とする電子機器の製造方法。



【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2009−39603(P2009−39603A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204787(P2007−204787)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】