説明

気体流の壁面摩擦抵抗低減装置、その使用方法、および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法

【課題】気体流の壁面摩擦抵抗を低減する気体流の壁面摩擦抵抗低減装置および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法を提供し、さらには空気流の壁面摩擦抵抗を簡便に低減しうる装置、その使用方法、および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法を提供する。
【手段】酸素ガスまたは酸素ガスを含む気体の気体流と接する壁面近傍で、該壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該壁面に向かう方向の磁気引力を作用させる磁気引力発生手段を備え、壁面摩擦抵抗を減少させる気体流の壁面摩擦抵抗低減装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気流などの気体流の壁面摩擦抵抗低減装置およびその使用方法に関する。さらに詳しくは、常磁性の酸素ガスに作用する磁気引力を利用して、パイプなどの気体流通管内壁面、飛行機や新幹線、自動車などの移動体外壁面など高速の空気流に接する領域の摩擦抵抗を低減する気体流の壁面摩擦抵抗低減装置、その使用方法、および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乱流の制御は人類の夢であるが、目下、簡便で効率的な制御方法が存在しないのが現状である。受動的な乱流制御法として、NASAが開発したリブレット(流れ方向に沿った細かい横溝を数多く形成した壁面)模様があげられる。航空業界が興味をもって実機テストを行なって全抵抗の約2%が低減することが判明したが、メインテナンスのコストを考えると経済的な効果は小さく、実用化には至っていない(非特許文献1)。同文献においては、センサーによって乱流場の状態情報を読み取りアクチュエーターを作動させて制御入力を加えるなどといった、能動的な乱流制御もいくつか提案されているが、いずれも構造や制御機構が複雑で実用化には至ってない。
【0003】
一方、水に対する壁面摩擦抵抗の低減を試みた事例がある。例えば、壁面が親水性の場合、そうでない場合に比べ、水との引力が増加し、水の摩擦抵抗が低減する現象が報告されている。具体的には、酸化チタン光触媒に光を照射し壁面に超親水性が発現した場合、水の摩擦係数が減少することが報告されている(非特許文献2)。さらに、親水性の塗料を塗布した場合、通常の塗料にくらべ乱流での水の摩擦抵抗が低減することを実験で示したものがある(非特許文献3)。これらの事例において、結果として摩擦抵抗の低減がみられたとしても、そのメカニズムについては未だ不明な点もある。また、いずれも磁気引力に関して記載がない。
【0004】
空気吸入管の空気の流れを磁場の力で促進した例もあるが(特許文献1、2参照)、前記管の管内の空気流のすべてに、その流れる方向の磁気力を加えるものであり、空気流と壁面の摩擦抵抗の関係については開示がない。
【0005】
【非特許文献1】笠木伸英、鈴木雄二、深潟康二、パリテイ、Vol.18,No.2,20−26(2003)
【非特許文献2】岩井智昭、内山吉隆、桑山健太「酸化チタンの光触媒の超親水性発現時の摩擦特性」日本トライポロジー学会トライポロジー会議、宇都宮、2001年11月、予稿集p.247
【非特許文献3】北英紀「撥水性セラミクス材料の開発」日本財団補助研究、(株)いすずセラミクス研究所、平成10年4月1日〜平成13年3月31(http://nippon.zaidan.info/library/seikabutsu_print_view.do?uri)
【特許文献1】特開平5−44585号公報
【特許文献2】特開2002−89378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車のエンジン、ボイラー、高速の乗り物、飛行機、新幹線などの性能を向上させるためには、パイプ内や乗り物の壁面で発生する気体流の摩擦抵抗を可能な限り減少させることが極めて重要であり、その問題の解決が切望されている。
そこで、本発明は酸素ガスを含む気体流の壁面摩擦抵抗を低減する気体流の壁面摩擦抵抗低減装置および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法の提供を目的とし、さらには空気流の壁面摩擦抵抗を簡便に低減しうる装置、その使用方法、および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意研究した結果、壁乱流における摩擦抵抗は同じレイノルズ数の層流の摩擦抵抗に比べて格段に大きく、その摩擦抵抗は壁面の状態に大きく依存することに着目し、酸素ガスを含む気体流の壁面での境界条件を磁気力により制御することにより、乱流による壁面抵抗の減少に寄与するということを見出し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は、
(1)酸素ガスまたは酸素ガスを含む気体の気体流と接する壁面近傍で、該壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該壁面に向かう方向の磁気引力を作用させる磁気引力発生手段を備え、壁面摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減装置。
(2)前記磁気引力発生手段が磁石であることを特徴とする(1)記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置。
(3)(1)または(2)に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を直管、曲がり管、及び異径管よりなる群から選ばれた少なくとも1種の管の外側に取り付け、該管内の壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該管内壁面に向かう方向の磁気引力を作用させ、前記管内壁面の摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
(4)前記直管、曲がり管、及び異径管よりなる群から選ばれた少なくとも1種の管が強磁性体からなる管であり、該管の外側に単数または複数個の前記壁面摩擦抵抗低減装置を取り付けることを特徴とする(3)記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
(5)(1)または(2)に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を動体外壁に適用して、該動体外壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該動体外壁面に向かう方向の磁気引力を作用させ、前記動体外壁面の摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
(6)前記動体外壁が強磁性体からなる外壁であり、該外壁の内側に単数または複数個の前記壁面摩擦抵抗低減装置を取り付けることを特徴とする(5)記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
(7)酸素ガスまたは酸素ガスを含む気体の気体流と接する壁面の近傍で、該壁面に垂直に該壁面に向かう方向の磁気引力を該壁面に接する気体流に作用させ、壁面摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減方法。
(8)前記壁面と接する気体流が乱流であることを特徴とする(7)に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法。
(9)前記壁が強磁性体からなり、該壁の片側に単数または複数個の磁石を取り付け、前記壁の反対側の気体流に磁気引力を作用させることを特徴とする(7)または(8)に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置、その使用方法、および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法は、自動車のエンジンの吸気管内壁に適用すれば、吸気管内の壁面摩擦抵抗を低減した状態で空気を供給しうるため、燃焼に必要な十分な量の空気が供給され、燃焼効率を高めて燃費を向上させることができる。さらに、ボイラーの通気系に用いれば、小さい動力のポンプで十分な量の空気の供給ができ、燃焼効率を改善しうる。さらにまた、飛行機や新幹線、自動車など高速の乗り物に用いることもでき、それらの壁面における気体流の摩擦抵抗を減少させ、高速化、燃費の向上につなげることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
壁乱流における摩擦抵抗は、前述のとおり層流の摩擦抵抗に比べて格段に大きく、壁面の状態に大きく依存する。
本発明は、このような乱流の性質に着目し、壁面近傍で壁面に垂直に壁面に向かう方向の磁気引力を壁面近傍の気体流に作用させて壁面摩擦抵抗を減少させるものであり、例えば壁面近傍の流れを層流化するもしくは層流に近づけることにより、壁面の摩擦抵抗を低減させる気体流の壁面摩擦抵抗低減装置であり、その使用方法、および気体流の壁面摩擦抵抗低減方法である。以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を図面に基づき説明する。
図1は本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置における壁面近傍の気体の状態を概略的に示す説明図である。図では左から右に向かう方向11に酸素ガスまたは酸素ガスを含む気体(以下、この気体を具体的に「空気」として説明することもある。)が流れる状態を示している。壁15は下部に水平方向に存在し、その水平方向の位置座標をxとし、壁面に垂直方向の位置座標をyとして壁面近傍をx−y座標で示している。空気と接する壁面ではy=0である。本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置においては、壁面近傍に位置する空気13に、磁気力発生手段により磁気力(F)12を壁面に向かって加えることで(図中の矢印12で示すように壁面に垂直方向に加えることで)、壁面近傍の気体の流れを制御して壁面摩擦抵抗を減少させる。図では磁気引力12は壁面の右側の一部に作用させるように描かれているが、壁面全体に作用させることが好ましい。
【0011】
酸素ガスは常磁性のため、磁性流体のように容易に磁石にひきつけられる性質がある。酸素ガスや空気に作用する磁気引力は体積に比例する体積力であり、気体の流れを発生させたり、燃焼に影響を及ぼしたりする(北澤宏一 監修、「磁気科学−磁場が拓く物質・機能および生命科学のフロンテイア」、アイピーシー出版社、6−1−6、若山信子著、磁場を利用した空気流および燃焼反応の制御−磁気空気力学−、pp.315−324、;若山信子、「流れのコントロール」、1−(3)「磁場を利用した空気流および燃焼反応の制御−磁気空気力学−」、日本機械学会web雑誌 http://www.jsme.or.jp/fed/newsletters/2003_1/1−3.htm、「流れ」2003年1月号特集など参照)。この酸素ガスに作用する磁気引力を利用した技術として、磁気酸素計(酸素ガスの濃度計測装置、L.Pauling, R.E.Wood, J.H.Sturdivant, J.Am.Chem.Soc. 68,795(1946))が挙げられ、工場などで長年にわたり使用されてきた。
【0012】
酸素ガスに作用する磁気引力Fは単位体積あたりのものとして一次元の磁場勾配では下記式(1)で表される。
【0013】
【数1】

ここでμは真空透磁率(4π×10−7Hm−1)、χO2は酸素ガスの体積磁化率(1.91×10−6)、Bは磁束密度、yは壁面垂直方向の位置座標である。そして酸素ガスを約20%(体積%)含む空気も磁気力によって引きつけられる。空気に作用する壁面に垂直方向の磁気引力は下記式(2)で表される。
【0014】
【数2】

【0015】
空気に作用する垂直方向の磁気引力はB(dB/dy)=10T/mの場合、3N/mであり、これは空気に作用する重力の約20%に相当する。式(1)、(2)で示されるように、磁気引力は磁場が強くなる方向に作用する。
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置は、上述のような酸素ガス(酸素ガスを含む気体においてはそこに含まれる酸素ガス)が磁気引力により引き付けられる性質を利用するものである。したがって、本発明において気体には酸素ガスが含まれることが必要である。気体中の酸素ガス濃度(体積%)は高いほど好ましい。具体的には、気体流のレイノルズ数、温度、圧力、B(dB/dy)の大きさ、壁面の粗度などにもよるが、酸素ガス濃度10〜100%(体積%)のものが適用可能であり、一般的な条件を考慮すると約20%(体積%)の酸素ガスを含む空気も実際的に適用可能である。
【0016】
次に、本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置における磁気引力について詳しく説明する。
図2は、図1で示した磁気力について、磁束密度BとB(dB/dy)のy座標依存性を示すものである。気体流に接する壁面の位置座標はy=0である。図2に示すように、壁面または壁面の背後など壁面近傍に配置した磁石から離れるにつれyが増加し、磁束密度B(図中の一点鎖線21)は減少するのが一般的である。この場合、B(dB/dy)(図中の破線22)も同様に減少し、B(dB/dy)に比例する空気に作用する磁気引力(式2参照)もyが増加すると減少する。図2に示すような磁石によるB(dB/dy)を発生させることで、壁面近傍の気体流(気体流を気体の連続した流れとしてみればその一部)に壁面に垂直に壁面に向かう磁気力を作用させることができる。
【0017】
このように本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置においては、パイプ等の内壁面およびその近傍で気体流に磁気力を作用させるものである。壁面の近傍で磁気力を作用させる範囲および加えるB(dB/dy)の大きさは、制御する気体流のレイノルズ数や酸素濃度、温度、圧力、内壁面の粗度などにより適宜定める。一般的な条件としては、気体流のレイノルズ数にもよるが、管流の場合でいうと壁面から管内径の1〜2%の範囲の気体流に磁気力を作用させることが好ましい。上述のように気体流に作用させる磁気力の大きさや及ぶ範囲は目的とする本発明の壁面摩擦抵抗低減効果が得られれば特に限定されず適宜に調節する。一般的には例えば磁気力発生手段の発生磁気力の大きさ、永久磁石を用いる場合は磁石の種類、形状や大きさ、壁面との距離、配設状態の調整、強磁性か非磁性などの管の材質などにより調節することができる。
【0018】
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置において制御する気体流については、気体の酸素ガス濃度、温度、圧力、B(dB/dy)の大きさなどに依存し、例えば、レイノルズ数10〜1010の気体流体に適用でき、摩擦レイノルズ数でいえば10以下の気体流に適用できる。
【0019】
本発明の気体流の壁面摩擦低減装置は、上述のように、壁面近傍の気体流中の酸素ガスに作用する磁気引力を利用して壁面摩擦抵抗を効果的に低減しうるものであり、さらには壁面近傍で生じる壁乱流の乱流構造を変化させて壁面摩擦抵抗を低減しうるものである。
非特許文献2及び3に示されたように、壁面が親水性で、壁面と水流の間に適切な引力が作用する場合、摩擦抵抗の低減がみられることがある。これらの摩擦抵抗低減のメカニズムについては未だ不明な点もあるが、乱流の壁面での境界条件を引力により制御することにより、乱流による壁面抵抗が減少したとみられる。また(i)乱流の場合には粗度が壁面付近の粘性底層によっておおわれる結果、壁面が流体力学的になめらかであるか、あるいは(ii)粗度が粘性底層から突き出ているために乱れた流れ全体に本質的な変化を与えるかが圧力損失係数の値に決定的な影響をあたえるとされる(ユーリゲン・ツイ−レップ著、中川武夫訳、「流れの理」、四聖文庫、p.197)。さらに、壁面近傍で乱流が層流になった場合、高レイノルズ数の乱流の摩擦抵抗が大きく減少することが理論と計算で示されている(岩本薫、深潟康二、笠木伸英、鈴木雄二“Friction drag reduction achievable by near−wall turbulence manipulation at high Reynolds number” Phys. Fluids 17, 011702(2005)参照)。
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法およびその装置では、壁面近傍の乱流境界層に適切な大きさの磁気引力を作用させて、乱流による壁面摩擦抵抗を効果的に低減するものである。
【0020】
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置は、磁気引力発生手段を備え、それにより発生させた磁気引力を用いて優れた壁面摩擦抵抗低減効果を実現しうるものである。ここで磁気引力発生手段は磁気引力を効果的に発生しうるものであれば特に限定されず、電磁石でも永久磁石でもよく、なかでもエネルギー源が不要な強力な永久磁石、例えばNd−B−Fe磁石などが好ましい。また本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の取り付け態様に関しては、効果的な磁気引力が得られれば特に限定されず、例えば永久磁石を備えた装置を取り付ける場合、流体の抵抗が生じないようにすれば摩擦抵抗を低減させる壁面を構成する壁部材の表側(気体流と接する側)に装着固定しても、壁部材の背後に装着固定してもよい。そのほか永久磁石粒子を壁部材に混入させた部材を有する装置、永久磁石粒子を表面に塗布した装置を用いてもよい。そして本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置は、該装置を直管(断面形状の長手方向における変化がなく、屈曲部もない管。)、曲がり管(長手方向において屈曲部を有する管。)、異径管(長手方向において断面形状が変化する管、つまり断面形状変化部(円でいえばその直径の変化する部分)を有する管。)などの管状構造体(パイプ)や動体等に取り付けて使用することができる。なお管状構造体において、その断面形状は特に限定されず、円筒管や多角形の管であってもよい。
【0021】
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法においては、上述のような壁面摩擦抵抗低減装置を構造体に取り付けてその壁面摩擦抵抗を低減させることができる。ただしそれに限られず上述のような管状構造体(パイプ)や動体等に磁気力発生手段(好ましく用いられるものの範囲については上記と同様であり、すなわち磁気引力を効果的に発生するものであれば特に限定されず、電磁石でも永久磁石でもよく、なかでもエネルギー源が不要な永久磁石、例えばNd−B−Fe磁石などが好ましい。)を、装置を介さずに取り付ける、または粒子状の永久磁石などを管状構造体や動体中に混入させたり、それらの表面に塗布して磁化したりしてもよい。
【0022】
このように、本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置または気体流の壁面摩擦抵抗低減方法はミクロアクチュエータのような複雑な構造を必要とせず、工業的な規模での生産や利用にも適し、メンテナンスコストや材料コストを抑えることができ、広い応用範囲で実用的な装置もしくは方法として利用することができる。また本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置または気体流の壁面摩擦抵抗低減方法においては、流通する気体流の全体に対して流れ方向に磁気力を作用させるのではなく、壁面近傍の気体流にのみ壁面と垂直方向に(流れに対し垂直方向に)磁気力を作用させることで壁面の摩擦抵抗を効果的に低減しうるものである。したがって、管状構造体に適用したときにもその管直径に制限はなく例えば直径1mの管でも適用可能で、実用的であり、大きな動体の外壁に適用したときにもその効果を発揮することができる。
さらに、局所的に壁面摩擦抵抗が増大する領域(例えば、動体又は管内の壁面形状が変化する部分、曲がり管における屈曲部、異径管における断面形状もしくは断面径の変化する部分)に本発明の装置を設けることが好ましく、そのような場面でより効果的に本発明の目的の効果を発揮させることができる。
【0023】
上述した管や動体の壁の材質は特に限定されないが、磁気引力発生手段を一方の壁面に取り付け、その反対側の壁面に磁気引力を作用させる態様を考慮したとき、管の材質がプラスチックや銅、アルミなどの反磁性の場合、磁場が発散しやすく、しかも多くの磁石を必要とする。壁面がなめらかで粗度が小さい場合、壁面近傍の狭い範囲に磁気力を発生さればよい。限られた磁石で効率よく磁気引力を発生させるためには、管の壁もしくは内壁は強磁性体からなるものであることが好ましい。ここで、強磁性体として例えば、鉄、ニッケル、コバルト、これらの合金、磁性をおびるステンレスなどが挙げられ、なかでも安価な鉄を用いることが好ましい。このような材料を壁に用いることで、限られた永久磁石で磁気引力を壁面近傍の狭い領域に一層効果的に発生させ、気体流に作用させることができる。
【0024】
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置、その使用方法または気体流の壁面摩擦抵抗低減方法を管状構造体に適用すれば、その管内壁面の摩擦抵抗を低減させることができ、例えば気体の管内流通において吸引動力を必要とするものに広く適用することができる。具体的には、吸気管などのパイプ、ボイラーの通気系、自動車のエンジンの吸気系、コジェネレーションシステムの配管系などの管内壁面の摩擦抵抗を低減することが可能である。また、本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置、その使用方法または気体流の壁面摩擦抵抗低減方法を動体に適用して、その動体壁面の摩擦抵抗を低減させることもでき、例えば高速の乗り物、飛行機、新幹線などの外壁面の摩擦抵抗を低減させることも可能である。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
次に、好ましい実施態様として、本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を管状構造体に取り付け管内壁面摩擦抵抗を低減させる態様について、実施例に基づき詳細に説明する。
例えば、エンジンの空気吸入管など、パイプ内の壁面の場合は360度、壁が存在する。この場合は、上述した磁気引力を、壁面近傍で、径方向に、円の中心から離れる方向に作用させることで本発明の目的とする壁面摩擦抵抗低減効果を得ることができる。図3はそのような効果を得ることができるアルミ、プラスチックなど非磁性の材質で構成される管状構造体に取り付けた壁面摩擦抵抗低減装置の一実施態様を模式的に示した側面図である。また、図4(a)は図3で示した壁面摩擦抵抗低減装置を取り付けた管状構造体のIV−IV線断面図である(図4中の「N」および「S」はそれぞれN極およびS極を示し、流体流通方向37は紙面手前から奥へと気体流が流れることを示している。なお本発明においては、所望の磁気力が壁面近傍に得られればよく、N,S極の向きに特に制限はない。)。そして図4(b)は同断面内で壁面近傍の磁気引力(F)36が壁面に向かう方向に作用していることを模式的に示したものである。
【0026】
図3および図4で示した態様においては、パイプ35のまわりに棒状の永久磁石34a、34b、34c、および34d(強力な永久磁石、例えばNd−B−Feなどが好ましい)が4個、パイプの外周上に均等に、適宜の固定手段(図示していないが、例えばプラスチックや鉄などの固定具)により固定配置され本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を構成している。なお本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置においては、管状構造体の形状にあわせた装置形状としてもよく、適宜の装着・脱着が可能な機構としてもよい。ただし、本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置において、永久磁石の本数は特に限定されるものではなく、例えば1つ以上の複数の磁石を周上の所望の位置に任意に配置してもよく、特にパイプの径が大きい場合、例えば直径1mの場合、パイプに接する磁石の磁極が交互にN,S,N,Sとなるよう、パイプの外周上に数多く配置するようにする。この場合、パイプの厚さは薄いほどパイプの内壁のB(dB/dy)は大きくなる。パイプに接するように配置した磁石の磁極は必ずしも交互でなくともよい。
本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法の実施態様においては、粒子状の永久磁石をパイプの外面および/または内面に塗布し磁化したものであってもよい。本発明においては、所望の磁気力が壁面近傍に効率よく得られればよいのであり、磁場発生手段については特に制限はない。
【0027】
図3および図4に示したような構造を有する、管内に磁気引力を生じさせた円筒管を以下のように作製した。パイプ(ステンレス SUS304製、厚さ1mm、直径40mm、長さ100mm)を用意し、そのまわりに棒状の永久磁石(Nd−Fe−B製、幅7mm、厚さ5mm、長さ60mm)を4個、周上均等に図示した構成となるよう連結して(固定手段は図示せず)配置して取り付けた。この円筒管の内側壁面の磁束の状態をF.W.Bell社製ガウス・テスラメータを用いて測定した。その結果、パイプ内壁面近傍に、図5に示すような磁束密度分布が得られた。図5からわかるとおり磁束密度Bがピーク値0.28Tをとるのは永久磁石に接する部分の裏側になる壁面であった。そして磁場強度が径方向に壁面から離れるにつれ急激に減少するので、壁面近傍で、空気や酸素ガスに、壁面に実質的に垂直に、壁面方向に磁気引力を作用させることが可能であり、その中を流通する空気の壁面摩擦抵抗を効果的に低減するものであることがわかる。
【0028】
本実施例では4本の永久磁石を使用したが、非磁性の材質のパイプの外周上、隣り合う磁石の磁極がN、S、N、Sと交互になるように数多く配置すれば、磁束と磁束密度の勾配の積、そして磁気力の円周方向の分布を滑らかにすることができる。従来のエンジンの空気吸入管は磁石が吸着しない素材のものが多い。このような場合で、既に設置されている吸気管の周辺に永久磁石が位置するように適宜に配置すれば、磁石から吸気管内壁面までの距離が大きくなり効率はかなり落ちるが、壁面摩擦抵抗低減効果を得ることができる。
【0029】
(実施例2)
前述の直管にくらべてエルボなど曲がり管では、屈曲部61aでの管摩擦抵抗が大きくなり、気体流の圧力損失が大きくなる。図6はそのような曲がり管に本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を適用した態様を模式的に示す断面図である。ここでは90°の曲がり管61の曲がる部分61aに、永久磁石62a・62bを固定手段(図示せず)により固定した装置が設置されている。空気は流れの方向63の方向に流通している。このとき曲がり管61のうち屈曲部61a付近においては、管内壁面と接する気体流に壁面に向かう方向の磁気引力が作用し、管内壁面抵抗が低減される。
【0030】
これとは別の態様として、管径が変化する箇所でも、乱流による摩擦抵抗が発生しやすい。このような乱流による摩擦抵抗が発生しやすい領域に、永久磁石を備えた本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を設置する、ないしは本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法を適用すれば、管壁面全体に磁石を設置するのに対して使用する磁石の量を減らすことができ、設置のための工数および材料コストの効果的な低減につなげることができる。
【0031】
また、本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法においては、図3、図4、および図6に示したものとは別の態様として、パイプの内側に永久磁石を貼り付けたり、永久磁石微粒子を塗布し磁化したりしてもよく、このようにすればパイプ素材の特性によらず効果的な磁場効果を得ることも可能である。その他、パイプを永久磁石材料で構成してもよい。本発明においては所望の磁気力が壁面近傍で効率よく得られればよく、その手段について特に制限はない。さらには、乱流による摩擦抵抗が発生しやすい領域に磁石を設ければ、使用する磁石の量を減らすことができ、設置のための工数および材料コストの効果的な低減につなげることができる。
【0032】
(実施例3)
次に、本発明の別の好ましい実施態様である、動体外壁面の気体流の壁面摩擦抵抗を低減する態様について説明する。
例えば、高速の乗り物、飛行機、列車などの高速移動動体においては、空気流と接する壁面の摩擦抵抗の低減は重要な課題である。このような場合、動体外壁面に薄い磁石の層を設けたり、壁面の背後に永久磁石を設置したりすることにより壁面摩擦抵抗低減効果を得ることができる。図7は、そのような効果の得られる壁面摩擦抵抗が低減された動体の外壁面近傍における気体の状態を説明する説明図である(図7では、図1のときと同様に壁面近傍をx−y座標を用いて示している。)。この態様においては、動体(74,75)が移動方向76に移動しており、相対的に空気の流れ71が生じている。そして図からも明らかなように、この壁面摩擦抵抗が低減された動体においては、図1と同様に、磁石層壁74の近傍の空気73に対し、該壁面側に向かう磁気力72が作用する。図では力が右側の空気にのみ作用するように描かれているが、壁面近くの空気全体に作用するものとする。これにより磁気力による壁面摩擦抵抗低減の効果が得られる。
薄い磁石層を形成する方法としては、微粒子状の強力な永久磁石を塗料などと混合して塗布する方法などが挙げられる。このとき磁石の磁化は壁面界面に急峻なB(dB/dy)が発生するように行なうことが好ましい。また外壁面を鉄など強磁性の材料でつくり、壁の反対側に磁石を設置すると、壁面のごく近傍に効率よく磁場を発生させ、使用する永久磁石の量を減らすることができる。動体外壁面の全体に磁石を設置するのが困難な場合には、特に空気抵抗が大きい部分や、その壁面の背後に永久磁石もしくはそれを備えた装置を設置して気体流の壁面摩擦抵抗低減効果を得ることができる。
【0033】
(実施例4)
次にエンジンの空気吸入管に本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を適用したものについて述べる。
図8は本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を適用した気体吸入エンジンの部材配置を模式的に示した配置図である。エンジン81は草刈り用2サイクルSIエンジン(田中工業株式会社製、TBC−4501型、排気容量20mL)で、空気は矢印82の方向に流れる。内径8mmの空気吸入管83(ステンレスSUS304)の外側に適宜の固定手段(図示せず)により設置したU字形の鉄片84の内側(空気吸入管に向かう側)に、一対の永久磁石(Nd−Fe−B)85aおよび85bをそれぞれ磁気力により固定して本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置とした。永久磁石の寸法は2×2×3cmであり、吸入管に平行な寸法は3cmである。
管の中心軸をx軸86、x軸に垂直で一対の磁石の中心を結ぶ方向をy軸87としたとき、図9に示すようなy軸に沿った磁束密度Bの分布91が得られた。壁面近傍ではB(dB/dy)=30T/mになり、空気に作用する重力の60%に相当する磁気引力が壁面に垂直方向に作用することが分かる。壁面近傍で壁面に向かうこの磁気力が空気に作用し、その大きさは9N/mである。空気の流速を熱線流速計(カノマックス社製、IHW−100型)を用いて測定し、流速計のセンサーは測定点88の位置に設置した。
比較実験では磁石の代わりに同じ形状のプラスチックブロックを配置し、同様な計測を行なった。図10は空気の流速の時間変化の測定結果を示したグラフであり、図10(a)が磁石を設置した場合の結果、図10(b)が磁石を設置しなかった場合の結果である。約10msecの周期の連続したパルスが観察され、各々がエンジンに吸入される脈流に対応する。磁石を設置した場合としない場合とを比べると、磁石を設置した場合は流速のピ−ク値が高く、かつバラつきが少なくなり、吸入管内壁の壁面摩擦抵抗低減効果がみられた。
【0034】
(実施例5)
実施例1のようにパイプの材質が非磁性で永久磁石を外壁面に設置した場合、磁場がひろがりやすく、壁面のごく近傍に発生させるのは困難である。内壁面がなめらかで粗度が小さい場合、壁面近傍のごく限られた範囲に磁気引力を発生させるほうが効率がよい。図11はその本発明を説明するための断面図である。強磁性体である鉄からなる直管111の外側に5個の永久磁石112(Nd−Fe−B)を磁気吸引力により取り付けた。このとき直管111の表面を処理しないで用いたが、例えばメッキ等により処理して用いてもよい。使用する磁石の量は増えるが、内壁のみ強磁性体でもよい。また、本実施例においては、全部の磁石のN極及びS極の方向をそろえ、一定の間隔をおいて、管の上部に配置した(図11では1つの磁石を除きN極のみを示した。)。管の外壁に接する複数個の磁石の磁極は同じにしたほうが、効率よく磁場が内壁に達して勾配磁場を発生する傾向がみられた。
電流が銅線内を流れるように、磁力線は鉄などの強磁性体内を通過する性質があり、容易に管内壁に伝わる。しかし気体中は磁場が殆んど通過しないので、管の内壁近傍の気体においては磁束密度Bが大きく変化し、大きなB(dB/dr)が発生する。すなわち管が非磁性の物質でできているものを用いたときに比べ、本実施例のように強磁性体(鉄)を用いることで少ない量の磁石でB(dB/dr)が管の内壁のごく近傍に効率よく発生させることが出来る。
なお、磁石の大きさ、N,S極の方向、数や配置などを調節することにより、内壁近傍に適切な範囲に適切な大きさのB(dB/dr)、すなわち適切な磁気力が生じ、摩擦抵抗低減効果が大きくなるように調節する。
本実施例における鉄の内壁近傍の磁場勾配は測定できないので、算出した。鉄管111の外径が12mm、内径が10mm、長さ200mmであり、5×5×40mmのNd−Fe−Bの永久磁石を磁石と管との長手方向が一致するように中央に1個設置した場合、磁石の背後の内壁360°で平均100T/m、磁石の背後の200mmの長手方向では平均44T/mの勾配磁場が発生すると見積もられた。すなわち、本実施例においては、少量の永久磁石で管の内壁の近傍に効率よく磁気力を発生させることができることが分かる。
【0035】
(実施例6)
本発明の装置を取り付けた直管を用い、壁面摩擦抵抗低減率を測定した。図12はそのときの実験装置の配置を示す正面図である。鉄管121(外径12mm、内径10mm、長さ120cm)おいて、終点131から4cmの点122及び55cmの点123に、ステンレス管124及び125(いずれも内径0.8mm、外径1.1mm)を内壁面まで貫通させて設置した。そしてシリコンチューブ126及び127を差圧計(Testo社製、商品名:Testo406)128に接続し、気流中の点123と点122との間の壁面の圧力減少を測定した。
壁面の摩擦による圧力の減少は円管では以下の式(3)で表される(ユーリゲン・ツイ−レップ著、中川武夫訳、「流れの理」、四聖文庫、p.191参照)。
【数3】

ここで、本実施例の条件を上記式(3)にあてはめると、τは壁面せん断応力(まさつ)、Dは内壁の直径、l(エル)は点122と123との距離、p及びpは点123及び122におけるそれぞれの圧力に相当する。
気体流はコンプレッサーを用い、毎分70リットルの空気を始点132の側から矢印129の方向にそって鉄管内に流した。このときの空気流のレイノルズ数は約9900である。
5×5×40mmのNd−Fe−Bの永久磁石133を8個、磁石の長手方向と管の長手方向が一致するように、点122と123との間に2cmの間隔をあけて設置した。このとき、磁石のN極及びS極の向きは図11に示したように、すべてS極を壁面に向けて設置した。
磁石がない場合の点122と点123との間の圧力差は1.88hPaであった。これに対し、磁石を設置したとき、同区間の圧力差は1.84hPaとなった。すなわち、磁石を設置したことにより約2%の圧力の減少がみられた。この実験結果を式(3)に導入すると、永久磁石を設置した場合、摩擦抵抗が約2%減少することが明らかになった。この結果から、壁面近傍に磁気引力が作用する場合、管内の気体流の壁面摩擦抵抗が低減したことが分かる。
【0036】
(実施例7)
酸素ガス流を用いて乱流制御の実験を行った。酸素ガスはガスボンベを利用し、マスフローコントローラー(堀場エステック社製、商品名:SEC−E70)を用い、流量100リットル/分を実施例6で使用した鉄管内に矢印129の方向に流した。このときの酸素ガス流のレイノルズ数は約14000である。
実施例6と同じように5×5×40mmのNd−Fe−Bの永久磁石133を8個設置したとき、磁石の設置による摩擦抵抗の減少幅は小さく検出されなかった。酸素ガスは空気にくらべ約5倍の酸素ガスをふくむので、単位体積あたりの酸素ガスに作用する磁気引力は式(1)、(2)からも明らかなように、空気の約5倍である。そこで管内壁近傍の磁気力、すなわち磁場勾配を小さくするため磁石の数を減らし、点122と点123との間に同じ永久磁石を4個、6cmの間隔をあけて設置した。4個、磁石を設置した場合としない場合とについて圧力差を測定した。磁石がない場合は3.63hPa、磁石を設置した場合は3.605hPaであった。すなわち、磁石を設置した場合には気体流の壁面摩擦抵抗が約0.7%減少した。
このように、本実施例においては、気体摩擦抵抗を減少させるに当り、気体流の酸素濃度、レイノルズ数、管内壁の粗度などを考慮し、永久磁石の数、配置などを適宜設定して、適切な磁場勾配、すなわち磁気力を与えることにより、効果的に気体流の摩擦抵抗を低減しえたことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置における壁面近傍の気体の状態を概略的に説明する説明図である。
【図2】図1の説明において示した磁気力について、磁束密度(B)およびB(dB/dy)のy座標依存性を概略的に示すグラフである。
【図3】本発明の一実施態様として、気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を取り付けた管状構造体を模式的に示す側面図である。
【図4】図4(a)は図3に示した気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を備えた管状構造体のIV−IV線断面図であり、図4(b)は同断面内での磁気引力(F)の作用する方向を模式的に示した説明図である。
【図5】図3に示した気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を備えた管状構造体における管内壁面近傍の磁束密度分布を概略的に示すグラフである。
【図6】本発明の一実施態様である気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を曲がり管に適用した態様を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の一実施態様である動体外壁面における気体流の摩擦抵抗を低減する態様を概略的に説明する説明図である。
【図8】本発明の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を適用した空気吸入エンジンの部材配置を模式的に示す断面図である。
【図9】図8に示した装置における、空気吸入管内のy軸に沿った磁束密度分布を示すグラフである。
【図10】実施例4の結果を示すグラフであり、図10(a)は磁石を設置したときの結果を示し、図10(b)は磁石を設置しないときの結果を示す。
【図11】実施例5における強磁性体からなる管に永久磁石を取り付けた本発明の好ましい態様を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明における壁面摩擦抵抗低減効果を測定するための実験装置の配置を模式的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0038】
11 気体の流れる方向
12 磁気力Fの作用する方向(壁面方向に向かう磁気引力)
13 壁面近傍の気体(磁気力を作用させる気体)
15 壁
21 磁束密度Bのy座標依存性を示す曲線
22 B(dB/dy)のy座標依存性を示す曲線
31 気体の流れる方向
34a、34b、34c、34d 永久磁石(棒磁石)
35 管状構造体(パイプ)
36 磁気引力F
37 気体の流れる方向
61 90°の屈曲部を有する曲がり管
61a 屈曲部
62a、62b 永久磁石
63 気体の流れる方向
71 気体の流れる方向(動体の移動に対し相対的にみたときの気体の流れの方向)
72 磁気力Fを作用させる方向(壁面方向に向かう磁気引力)
73 壁面近傍の気体(磁気力の作用する気体)
74 永久磁石の層、永久磁石粒を含む層(磁石層壁)
75 壁
76 動体の移動方向
81 エンジン
82 空気の流れる方向
83 空気吸入管
84 U字形の鉄片
85a、85b 永久磁石
86 管の中心軸(x軸)
87 x軸に垂直で、磁石中央を通り2つの磁石を結ぶ線(y軸)
88 熱線流速計のセンサー設置点
91 磁束密度Bのy軸に沿った分布
111 鉄の直管
112 永久磁石
121 鉄管
122、123 圧力測定点
124、125 ステンレス管
126、127 シリコンチューブ
128 差圧計
129 気体の供給方向
131 気体流の出口
132 気体流の入り口
133 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ガスまたは酸素ガスを含む気体の気体流と接する壁面近傍で、該壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該壁面に向かう方向の磁気引力を作用させる磁気引力発生手段を備え、壁面摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減装置。
【請求項2】
前記磁気引力発生手段が磁石であることを特徴とする請求項1記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を直管、曲がり管、及び異径管よりなる群から選ばれた少なくとも1種の管の外側に取り付け、該管内の壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該管内壁面に向かう方向の磁気引力を作用させ、前記管内壁面の摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
【請求項4】
前記直管、曲がり管、及び異径管よりなる群から選ばれた少なくとも1種の管が強磁性体からなる管であり、該管の外側に単数または複数個の前記壁面摩擦抵抗低減装置を取り付けることを特徴とする請求項3記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置を動体外壁に適用して、該動体外壁面と接する気体流に該壁面に垂直に該動体外壁面に向かう方向の磁気引力を作用させ、前記動体外壁面の摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
【請求項6】
前記動体外壁が強磁性体からなる外壁であり、該外壁の内側に単数または複数個の前記壁面摩擦抵抗低減装置を取り付けることを特徴とする請求項5記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減装置の使用方法。
【請求項7】
酸素ガスまたは酸素ガスを含む気体の気体流と接する壁面の近傍で、該壁面に垂直に該壁面に向かう方向の磁気引力を該壁面に接する気体流に作用させ、壁面摩擦抵抗を減少させることを特徴とする気体流の壁面摩擦抵抗低減方法。
【請求項8】
前記壁面と接する気体流が乱流であることを特徴とする請求項7に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法。
【請求項9】
前記壁が強磁性体からなり、該壁の片側に単数または複数個の磁石を取り付け、前記壁の反対側の気体流に磁気引力を作用させることを特徴とする請求項7または8に記載の気体流の壁面摩擦抵抗低減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−170663(P2007−170663A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319321(P2006−319321)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(505440066)
【Fターム(参考)】