説明

気体流路結合部の遮熱構造

【課題】クラックの発生を防止して耐久性の向上を図ることができる気体流路結合部の遮熱構造を提供することにある。
【解決手段】エンジンのシリンダに流通する気体の流路を備え、エンジンのシリンダヘッド61にフランジ部22を介して締結される排気マニホールドと、エンジンと排気マニホールドの間に配置され、フランジ部22と共にエンジンに締結される接合部11と、接合部11と一体に形成されフランジ部22の外縁部23より外側に突出する傾斜部16及び立脚部17とから形成される遮熱板10と、を備えた気体流路結合部の遮熱構造であって、フランジ部22が、傾斜部16及び立脚部17側に位置する外縁部23が傾斜部16及び立脚部17側に突出する上側突出部24d,24eを備えた形状であり、接合部11が、上側突出部24d,24eの外縁部に対向する位置にスリット14を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体流路結合部の遮熱構造に関し、詳細には、車両に搭載されるエンジンのシリンダヘッドと排気マニホールドもしくは吸気マニホールドとの結合部に用いて好適な気体流路結合部の遮熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
排気マニホールドは、その入側がエンジンのシリンダヘッドに接続される一方、その出側が触媒装置などを備えた排気通路に接続されており、エンジンにおける各燃焼室から排気された排気ガスを排気通路に流下させている。また、排気ガスは高温で且つ多くのエネルギを含むだけでなく、シリンダ内で膨張されて圧力も高くなっていることから、排気マニホールドは高温に晒される。
【0003】
そのため、排気マニホールドは高温になることがあり、排気マニホールド周辺に設けられる各種部品に対し熱的影響が及ぶおそれがある。特に、シリンダヘッド上方に設けられるヘッドカバーは、鋼などと比べて耐熱性に劣る樹脂部材で形成されており、熱劣化しやすい傾向にある。したがって、高温に晒される排気マニホールドからの熱気による影響を低減するために、排気マニホールドとエンジンとの結合部には気体流路結合部の遮熱構造が従来から設けられている。
【0004】
上述の気体流路結合部の遮熱構造は、例えば、図6に示すように、シリンダヘッド(図示せず)と排気マニホールド(図示せず)との間に設けられたエキゾーストマニホールドガスケット100を備える。このエキゾーストマニホールドガスケット100は、遮熱板110と、遮熱板110の両側のそれぞれに設けられたガスケット120とを具備し、これらがボルトにより排気マニホールドと共にそのフランジ部130を介してシリンダヘッド101に締結されている。この遮熱板100は、シリンダヘッド101と排気マニホールドとの接合部よりも上方に延設すると共に、排気マニホールド上方へ延設した形状となっている。これにより、排気マニホールド側からシリンダヘッド101側への熱遮断を行っている。フランジ部130には、外側に向けて突出する突出部132a〜132eが形成されると共に、突出部132a〜132e近傍にボルト穴131a〜131eが形成されている。
【0005】
上述したような、従来の気体流路結合部の遮熱構造は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0006】
他方、吸気マニホールドは種々開発されており、吸気マニホールドとして、例えば、エンジンの軽量化の観点から、鋳鉄や鋼やアルミニウム合金などの金属の代わりに樹脂を用いて形成されたものがある。樹脂製吸気マニホールドの出側は、ガスケットを介してエンジンのシリンダヘッドに接続されている。樹脂製吸気マニホールドとエンジンのシリンダヘッドとは、フランジ部において上述のガスケットを挟んでボルトにより締結されている。ところで、樹脂製吸気マニホールドは、従来の金属製吸気マニホールドよりも耐熱性が劣るため、例えば、樹脂製吸気マニホールドとエンジンのシリンダヘッドとの結合部には遮熱板を備えた気体流路結合部の遮熱構造が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−291833号公報(例えば、明細書の段落[0029]〜[0038]、[図2]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年の車両においては、燃費などの向上を図るために、各種部材の薄板化や部品点数の削減などによる軽量化が進められている。しかしながら、例えば、車両の軽量化を図ろうとして、部材の薄板化を排気マニホールド側における従来の気体流路結合部の遮熱構造に適用しようとした場合、遮熱板にて強度不足を招くおそれがある。例えば、上述の遮熱板は、シリンダヘッドに片持ち支持される構成であり、エンジンの振動に伴って振動すると、遮熱板における所定の箇所、特に、排気マニホールドが、外縁部の一部が外側に向かって突出しているフランジ部を備える場合、その部分に対向する箇所に応力が集中することによりクラックが生じてしまう可能性があった。すなわち、従来の排気マニホールド側における気体流路結合部の遮熱構造では耐久性の向上を図ることは困難である。
【0009】
上述した吸気マニホールド側における気体流路結合部の遮熱構造においても、軽量化の観点から遮熱板の薄板化を適用しようとした場合、排気マニホールド側と同様、吸気マニホールドのフランジ部の外縁部に対向する所定の箇所に応力が集中することにより、クラックが生じてしまう可能性があった。すなわち、従来の吸気マニホールド側における気体流路結合部の遮熱構造においても耐久性の向上を図ることは困難である。
【0010】
以上のことから、本発明は上述したような問題を解決するために為されたものであって、クラックの発生を防止して耐久性の向上を図ることができる気体流路結合部の遮熱構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する本発明に係る気体流路結合部の遮熱構造は、
内燃機関のシリンダに流通する気体の流路を備え、前記内燃機関のシリンダヘッドにフランジ部を介して締結される管状部材と、
前記内燃機関と前記管状部材の間に配置され、前記フランジ部と共に前記内燃機関に締結される接合部と、前記接合部と一体に形成され前記フランジ部の外縁部より外側に突出する遮熱部とから形成される遮熱板と、を備えた気体流路結合部の遮熱構造であって、
前記フランジ部が、前記遮熱部側に位置する前記外縁部が前記遮熱部側に突出する突出部を備えた形状であり、
前記接合部が、前記突出部の外縁部に対向する位置に脆弱部を備える
ことを特徴とする。
【0012】
前述した課題を解決する本発明に係る気体流路結合部の遮熱構造は、
上述した発明に係る気体流路結合部の遮熱構造であって、
前記脆弱部が、前記突出部の前記外縁部に沿って形成される
ことを特徴とする。
【0013】
前述した課題を解決する本発明に係る気体流路結合部の遮熱構造は、
上述した発明に係る気体流路結合部の遮熱構造であって、
前記内燃機関と前記管状部材の間に配置され、前記フランジ部及び前記遮熱板と共に前記内燃機関に締結されるガスケットを具備し、
前記管状部材の流路は複数あり、
前記ガスケットが、前記複数の流路に対向して形成された複数の開口部と、それぞれの前記開口部の縁部に沿って環状に形成されたビードとを備え、
前記脆弱部の端部が、隣り合う前記ビードで挟まれた領域に配置される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る気体流路結合部の遮熱構造によれば、接合部が突出部の外縁部に対向する位置に脆弱部を備えることにより、内燃機関の振動に伴ってフランジ部の前記外縁部、特に前記外縁部の一部が前記遮熱部側に突出する場合にはその部分を起点に前記遮熱部側が振動しても、前記脆弱部があることで、前記遮熱部側が変形し易く、前記部分への応力集中が緩和される。よって、前記応力集中に起因するクラックの発生を防止することができる。その結果、遮熱板の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造の平面図である。
【図2】図1におけるII−II線矢視断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線矢視断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造の説明図であって、図4(a)にそれが具備する遮熱板の平面を示し、図4(b)にそれが具備するガスケットの平面を示し、図4(c)にそれが具備する排気マニホールドのフランジ部の平面を示す。
【図5】本発明の第2の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造の平面図である。
【図6】従来の排気マニホールドの遮熱構造の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る気体流路結合部の遮熱構造を実施するための形態について、実施例にて説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明の第1の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造について、図1〜図4に基づいて具体的に説明する。本実施例は、気体流路結合部をエンジン(内燃機関)のシリンダヘッドと排気マニホールドとの結合部に適用している。
【0018】
車両のエンジンルームにはエンジンが設けられている。エンジンには、クランク軸やピストンやシリンダなどを内装するシリンダブロックと、シリンダブロックの上部に設けられると共に吸排気弁などを内装するシリンダヘッドと、シリンダヘッドの上部を覆うシリンダヘッドカバーと、タイミングチェーンなどを内装するケースとが設けられている。図1〜図4に示すように、シリンダヘッド61の背面には、エキゾーストマニホールドガスケット1を介して、排気マニホールド20が取付ボルト(図示せず)により取り付けられている。
【0019】
排気マニホールド20は、内燃機関のシリンダに流通する気体の流路を備える管状部材をなしている。排気マニホールド20は、シリンダヘッド61の排気ポート62に対向して形成された排気ポート孔21a〜21dと、フランジ部22とを備える。排気ポート孔21a〜21dは、角部が円弧をなし左右方向で長辺をなす略長方形状に形成されている。
【0020】
フランジ部22の外縁部23は左右方向にて略対称となっている。フランジ部22の外縁部23における上部側は、上側凹部24aと上側直線部24b,24cと上側突出部24d,24eと上側直線部24f,24gとを備え、これらが左右方向中央からその両側部に向けて順番に配置して構成されている。上側凹部24aは内側へ向けて円弧状に凹む形状をなしている。上側直線部24f,24b,24c,24gは、それぞれ直線形状をなしている。上側突出部24d,24eは、それぞれ外側へ向けて円弧状に突出しており、組付け時にあっては、後述する遮熱板10の傾斜部16および立脚部17(遮熱部)側へ突出する形状をなしている。上側突出部24d,24e近傍に上側ボルト穴26a,26bがそれぞれ形成される。フランジ部22の外縁部23における下部側は、下側突出部25aと下側凹部25b,25cと下側突出部25d,25eとを備え、これらが左右方向中央からその両側部に向けて順番に配置して構成されている。下側凹部25b,25cは、それぞれ内側へ向けて円弧状に凹む形状をなしている。下側突出部25a,25d,25eは、それぞれ外側へ向けて円弧状に突出する形状をなしている。下側突出部25a,25d,25e近傍にて下側ボルト穴27a,27b,27cがそれぞれ形成される。これにより、ボルト締結強度が確保される。
【0021】
エキゾーストマニホールドガスケット1は、遮熱板10と、遮熱板10の両側のそれぞれに配置されるガスケット30,30とを備える。つまり、ガスケット30は、遮熱板10とシリンダヘッド61との間に配置されると共に、遮熱板10と排気マニホールド20との間に配置される。
【0022】
ガスケット30には、排気ポート62および排気ポート孔21a〜21dに対向する排気ポート孔(開口部)34a〜34dが形成されると共に、排気ポート孔34a〜34dの周りにビード35がそれぞれ形成される。つまり、ビード35は、左右方向で長辺をなす略長方形状をなし、上辺部35aおよび下辺部35bと、これら端部を接続する側辺部35c,35dとで構成される。これにより、気体流路結合部からの気体の漏れが防止され、気体流路結合部の気密性が保持される。ガスケット30の外縁部(外周部)31は左右方向および上下方向にて略対称となっている。ガスケット30の外縁部31における上部側は、上側突出部32aと上側直線部32b,32cと上側突出部32d,32eと上側直線部32f,32gと上側突出部32h,32iとを備え、これらが左右方向中央からその両側部に向けて順番に配置して構成されている。上側突出部32h,32d,32a,32e,32iは、それぞれ外側へ向けて円弧状に突出しており、組付け時にあっては、後述する遮熱板10の傾斜部16および立脚部17(遮熱部)側へ突出する形状をなしている。上側突出部32aは上側突出部32d,32eよりも外側に突出している。上側突出部32d,32eは、フランジ部22の上側突出部24d,24eに対向する位置にそれぞれ形成される。上側直線部32f,32b,32c,32gはそれぞれ直線形状をなしている。上側突出部32d,32e近傍には、フランジ部22の上側ボルト穴26a,26bに対向して上側ボルト穴36a,36bがそれぞれ設けられる。ガスケット30の外縁部31における下部側は、下側突出部33aと下側直線部33b,33cと下側突出部33d,33eと下側直線部33f,33gと下側突出部33h,33iとを備え、これらが左右方向中央からその両側部に向けて順番に配置して構成されている。下側直線部33f,33b,33c,33gは、それぞれ直線形状をなしている。下側突出部33h,33d,33a,33e,33iは、それぞれ外側へ向けて円弧状に突出する形状をなしている。下側突出部33a,33h,33i近傍には、フランジ部22の下側ボルト穴27a〜27cに対向して下側ボルト穴37a,37b,37cがそれぞれ形成される。これにより、ボルト締結強度が確保される。つまり、ガスケット30の外縁部31は、排気マニホールド20のフランジ部22と同様、凹凸形状をなしている。
【0023】
遮熱板10は、防錆機能を有した薄板鋼板である。遮熱板10は、ガスケット30が接合する接合部11、接合部11の上端部に接続し、排気マニホールド20側へ屈曲し当該排気マニホールド20上方へ傾斜して延在する傾斜部16、傾斜部16の上端部に接続し、略上方へ屈曲して延在する立脚部17を備える。つまり、傾斜部16および立脚部17は、接合部11と一体に形成されフランジ部22の外縁部23より外側に突出する遮熱部をなしている。傾斜部16および立脚部17は、ビード加工が施されており、微小な凹凸形状をなしている。
【0024】
遮熱板10の接合部11には、排気ポート62および排気マニホールド20の排気ポート孔21a〜21dならびにガスケット30の排気ポート孔34a〜34dに対向する排気ポート孔11a〜11dが形成される。遮熱板10の接合部11の外縁部における下部側は、ガスケット30と同様、左右方向にて略対称となっている。遮熱板10の接合部11の外縁部における下部側は、下側突出部18aと下側直線部18b,18cと下側突出部18d,18eと下側直線部18f,18gと下側突出部18h,18iとを備え、これらが左右方向中央からその両側部に向けて順番に配置して構成されている。下側直線部18f,18b,18c,18gは、それぞれ直線形状をなしている。下側突出部18h,18d,18a,18e,18iは、それぞれ外側へ向けて円弧状に突出する形状をなしている。遮熱板10の接合部11には、フランジ部22のボルト穴25a,25b,26a〜26cおよびガスケット30のボルト穴36a,36b,37a〜37cに対向してボルト穴12a,12b,13a〜13cがそれぞれ形成される。これにより、ガスケット30、遮熱板10、ガスケット30を介して排気マニホールド20をシリンダヘッド61にボルト(図示せず)で締結することができる。
【0025】
さらに、遮熱板10の接合部11には、組付け時に排気マニホールド20のフランジ部22の外縁部23における上側突出部24d,24eに対向する所定の箇所にスリット(脆弱部)14,14がそれぞれ形成される。これにより、エンジンの振動に伴って排気マニホールド20のフランジ部22の外縁部23、特に上側突出部24d,24eにおける外縁部23を起点に遮熱板10の傾斜部16および立脚部17側が振動しようとするが、上側突出部24d,24eに対向する位置にスリット14,14があるため、遮熱板10が上側突出部24d,24eにおける外縁部23とは接触せずにフランジ部22の上側直線部24f,24b,24c,24gにおける外縁部23にて接触することになる。なお、組付け時には、ガスケット30の上側突出部32d,32eも遮熱板10のスリット14,14に対向する位置に配置される。
【0026】
スリット14は、上側突出部24d,24eの外縁部23に沿う形状であって、上側ボルト穴12a,12b近傍から当該上側ボルト穴12a,12b近傍の排気ポート孔11a〜11dへ直線状で延在する2つの直線部14a,14bと、これら直線部14a,14bを逆V字形状で接続する接続部14cとを備える。つまり、スリット14は、フランジ部22の上側突出部24d,24eの頂点を中心として両端部が前記中心よりも下方に延在する逆V字形状をなし、排気マニホールド20のフランジ部22の上側突出部24d,24eにおける外縁部23に対向する位置に形成される。これにより、エンジンの振動に伴って遮熱板10が振動しても、上側突出部24d,24eの外縁部23に沿う形状をなすスリット14があるため、上側突出部24d,24eと遮熱板10との接触をより確実に防ぐことができる。その結果、応力集中によるクラックの発生をより確実に防止することができる。
【0027】
遮熱板10の接合部11には、組付け時にガスケット30の上側突出部32aに対向する所定の箇所にスリット(脆弱部)15がさらに形成される。これにより、エンジンの振動に伴ってガスケット30の外縁部31、特に上側突出部32aにおける外縁部31を起点に遮熱板10の傾斜部16および立脚部17側が振動しようとするが、上側突出部32aに対向する位置にスリット15があるため、遮熱板10はガスケット30の上側突出部32aとは接触しなくなる。また、上述した通り、ガスケット30の上側突出部32d,32eに対向する位置にもスリット14,14があり、遮熱板10はガスケット30の上側突出部32d,32eとも接触しなくなる。このとき、遮熱板10は、ガスケット30の上側直線部32f,32b,32c,32gにおける外縁部31にて接触し、これら上側直線部32f,32b,32c,32gの外縁部31を起点に遮熱板10の傾斜部16および立脚部17側が振動することになる。よって、ガスケット30の上側突出部32aの外縁部31を起点とする場合と比べて、接触箇所が大きいため応力が分散されることになる。その結果、エンジンの振動に伴う遮熱板10の振動に起因するクラックの発生を防止することができ、遮熱板10の耐久性の向上をより確実に図ることができる。スリット15は、ガスケット30の上側突出部32aの外縁部31に沿う形状であって、左右方向中央にて傾斜部17近傍から排気ポート孔11b,11c近傍へ直線状で延在する2つの直線部15a,15bと、これら直線部15a,15bを逆V字形状で接続する接続部15cとを備える。
【0028】
したがって、本実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造によれば、遮熱板10における上側突出部24d,24eに対向する位置にスリット14,14がそれぞれ設けられることにより、エンジンの振動に伴ってフランジ部22の外縁部23、特に上側突出部24d,24eの外縁部23を起点に遮熱板10の傾斜部16および立脚部17側が振動しようとするが、スリット14,14があるため、遮熱板10が上側突出部24d,24eにおける外縁部23とは接触せずにフランジ部22の上側直線部24f,24b,24c,24gにおける外縁部23にて接触することになる。上側直線部24f,24b,24c,24gの外縁部23との接触箇所は、上側突出部24d,24eの外縁部23との接触箇所より大きく、応力を分散することができる。また、スリット14があることで、遮熱板10の傾斜部16および立脚部17(遮熱部)側が変形し易く、上側突出部24d,24e近傍への応力の集中が緩和される。その結果、前記応力集中に起因するクラックの発生を防止して、遮熱板10の耐久性の向上を図ることができる。
【実施例2】
【0029】
本発明の第2の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造について、図5に基づいて具体的に説明する。本実施例は、気体流路結合部をエンジンのシリンダヘッドと排気マニホールドとの結合部に適用している。
本実施例は、スリット形状を変更した遮熱板を具備するものであって、それ以外は上述の第1の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造と同一部材を具備する。本実施例では、上述した第1の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造と同一部材および同一形状には同一符号を付記している。
【0030】
本実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造は、図5に示すように、シリンダヘッド61の背面にて、排気マニホールドのフランジ部22との間に設けられたエキゾーストマニホールドガスケット2を備える。エキゾーストマニホールドガスケット2は、遮熱板40と、遮熱板40の両側のそれぞれに配置されるガスケット30,30とを備える。
【0031】
遮熱板40は、上述した第1の実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造が具備する遮熱板10と同様、防錆機能を有した薄板鋼板であって、接合部11、傾斜部16、立脚部17を備える。傾斜部16および立脚部17は、接合部11と一体に形成されフランジ部22の外縁部23より外側に突出する遮熱部をなしている。傾斜部16および立脚部17はビード加工が施されており、微小な凹凸形状をなしている。
【0032】
遮熱板40の接合部11には、組付け時に排気マニホールド20のフランジ部22の外縁部23における上側突出部24d,24eに対向する所定の箇所にスリット(脆弱部)41,41がそれぞれ形成される。これにより、エンジンの振動に伴って排気マニホールド20のフランジ部22の外縁部23、特に上側突出部24d,24eにおける外縁部23を起点に遮熱板40の傾斜部16および立脚部17側が振動しようとするが、上側突出部24d,24eに対向する位置にスリット41,41があるため、遮熱板40が上側突出部24d,24eにおける外縁部23とは接触せずにフランジ部22の上側直線部24f,24b,24c,24gにおける外縁部23にて接触することになる。その結果、上側突出部24d,24eの外縁部23を起点として遮熱板40の傾斜部16および立脚部17側が振動していたときと比べて起点となる接触箇所が大きく応力が分散されることになるため、遮熱板40の耐久性の向上を図ることができる。
【0033】
スリット41は、上側突出部24d,24eの外縁部23に沿う形状であって、上側ボルト穴12a,12b近傍に設けられ、略上下方向に直線状で延在する2つの直線部41a,41bと、これら直線部41a,41bを逆U字形状で接続する接続部41cとを備える。つまり、スリット41は、フランジ部22の上側突出部24d,24eの頂点を中心として両端部が前記中心よりも下方に延在する逆U字形状をなし、排気マニホールド20のフランジ部22の上側突出部24d,24eにおける外縁部23に対向する位置に形成される。これにより、エンジンの振動に伴って遮熱板40が振動しても、上側突出部24d,24eの外縁部23に沿う形状をなすスリット41があるため、上側突出部24d,24eと遮熱板40との接触をより確実に防ぐことができる。その結果、応力集中によるクラックの発生をより確実に防止することができる。
【0034】
遮熱板40の接合部11には、組付け時にガスケット30の上側突出部32aに対向する所定の箇所にスリット(脆弱部)42がさらに形成される。これにより、エンジンの振動に伴ってガスケット30の外縁部31、特に上側突出部32aにおける外縁部31を起点に遮熱板40の傾斜部16および立脚部17側が振動しようとするが、上側突出部32aに対向する位置にスリット42があるため、遮熱板40はガスケット30の上側突出部32aとは接触しなくなる。また、上述した通り、ガスケット30の上側突出部32d,32eに対向する位置にもスリット41,41があり、遮熱板40はガスケット30の上側突出部32d,32eとも接触しなくなる。このとき、遮熱板40は、ガスケット30の上側直線部32f,32b,32c,32gにおける外縁部31にて接触し、これら上側直線部32f,32b,32c,32gの外縁部31を起点に遮熱板40の傾斜部16および立脚部17側が振動することになる。よって、ガスケット30の上側突出部32aの外縁部31を起点とする場合と比べて、接触箇所が大きいため応力が分散されることになる。その結果、エンジンの振動に伴う遮熱板40の振動に起因するクラックの発生を防止することができ、遮熱板40の耐久性の向上をより確実に図ることができる。スリット42は、ガスケット30の上側突出部32aの外縁部31に沿う形状であって、左右方向中央における傾斜部17近傍に設けられ、略上下方向に直線状で延在する2つの直線部42a,42bと、これら直線部42a,42bを逆U字形状で接続する接続部42cとを備える。つまり、スリット42は、ガスケット30の上側突出部32aの頂点を中心として両端部が前記中心よりも下方に延在する逆U字形状をなしている。これにより、エンジンの振動に伴って遮熱板40が振動をしても、上側突出部32aの外縁部31に沿う形状をなすスリット42があるため、遮熱板40とガスケット30の上側突出部32aとの接触をより確実に防ぐことができる。
【0035】
上述したスリット41の直線部41a,41b、およびスリット42の直線部42a,42bは、ガスケット30のビード35の上辺部35aよりも下方の位置まで延在している。つまり、スリット41の両端部41d,41e、およびスリット42の両端部42d,42eは、隣り合うビード35,35に挟まれた領域に配置されることになる。これにより、傾斜部16および立脚部17(遮熱部)に最も近いビード35の上辺部35a(外周部)に沿ってクラックが発生する虞があるが、スリット41,42の端部41d,41e,42d,42eがビード35の上辺部35aの延在方向上にないため、スリット41,42が応力集中によるクラックの発生起点となりにくくなる。その結果、ビード35の外周部に沿ったクラックの発生を防止することができ、気体流路結合部の気密性を向上させつつ、遮熱板の耐久性を保持することができる。
【0036】
したがって、本実施例に係る気体流路結合部の遮熱構造によれば、第1の実施例と同様、遮熱板40における上側突出部24d,24eに対向する位置にスリット41,41がそれぞれ設けられることにより、エンジンの振動に伴ってフランジ部22の外縁部23、特に上側突出部24d,24eの外縁部23を起点に遮熱板40の傾斜部16および立脚部17側が振動しようとするが、スリット41,41があるため、遮熱板40が上側突出部24d,24eにおける外縁部23とは接触せずにフランジ部22の上側直線部24f,24b,24c,24gにおける外縁部23にて接触することになる。上側直線部24f,24b,24c,24gの外縁部23との接触箇所は、上側突出部24d,24eの外縁部23との接触箇所より大きく、応力を分散することができる。また、スリット41があることで、遮熱板40の傾斜部16および立脚部17(遮熱部)側が変形し易く、上側突出部24d,24e近傍への応力の集中が緩和される。その結果、前記応力集中に起因するクラックの発生を防止して、遮熱板40の耐久性の向上を図ることができる。
【0037】
なお、上記では、気体流路結合部の遮熱構造を排気マニホールド側に適用したものについて説明したが、吸気マニホールド側に適用することも可能である。この吸気マニホールド側に適用した気体流路結合部の遮熱構造であっても、上記の排気マニホールド側に適用した気体流路結合部の遮熱構造と同じ作用効果を奏する。
【0038】
上記では、4つの排気ポートを備えたエンジンに接続される排気マニホールドに適用した気体流路結合部の遮熱構造について説明したが、4つに限らず複数個の排気ポートを備えたエンジンに接続される排気マニホールドに適用した気体流路結合部の遮熱構造とすることも可能である。
【0039】
上記では、遮熱板の両側のそれぞれにガスケットを配置した気体流路結合部の遮熱構造について説明したが、遮熱板とガスケットとを一体にした気体流路結合部の遮熱構造とすることも可能である。遮熱板の一方にのみガスケットを配置した気体流路結合部の遮熱構造とすることも可能である。
【0040】
上記では、逆V字形状や逆U字形状のスリットが形成された遮熱板を備えた気体流路結合部の遮熱構造について説明したが、スリットの形成箇所にスリットの代わりに例えば薄肉など他の箇所と比べて強度が弱められた脆弱部が形成された遮熱板を備えた気体流路結合部の遮熱構造とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る気体流路結合部の遮熱構造は、クラックの発生を防止して耐久性の向上を図ることができるので、自動車産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1,2 エキゾーストマニホールドガスケット
10 遮熱板
11a 排気ポート孔(開口部)
12a,12b 上側ボルト穴
13a,13b,13c 下側ボルト穴
14 スリット
14a,14b 直線部
14c 接続部
15 スリット
15a,15b 直線部
15c 接続部
20 排気マニホールド(管状部材)
21a〜21d 排気ポート孔
22 フランジ部
23 外縁部
24a 上側凹部
24b,24c,24f,24g 上側直線部
24d,24e 上側突出部
26a,26b 上側ボルト穴
27a〜27c 下側ボルト穴
30 ガスケット
31 外縁部
32a 上側突出部
32b,32c,32f,32g 上側直線部
32d,32e,32h,32i 上側突出部
34a〜34d 排気ポート孔
35 ビード
35a 上辺部
36a,36b 上側ボルト穴
37a〜37c 下側ボルト穴
40 遮熱板
41 スリット
41a,41b 直線部
41c 接続部
42 スリット
42a,42b 直線部
42c 接続部
61 シリンダヘッド
62 排気ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダに流通する気体の流路を備え、前記内燃機関のシリンダヘッドにフランジ部を介して締結される管状部材と、
前記内燃機関と前記管状部材の間に配置され、前記フランジ部と共に前記内燃機関に締結される接合部と、前記接合部と一体に形成され前記フランジ部の外縁部より外側に突出する遮熱部とから形成される遮熱板と、を備えた気体流路結合部の遮熱構造であって、
前記フランジ部は、前記遮熱部側に位置する前記外縁部が前記遮熱部側に突出する突出部を備えた形状であり、
前記接合部は、前記突出部の外縁部に対向する位置に脆弱部を備える
ことを特徴とする気体流路結合部の遮熱構造。
【請求項2】
請求項1に記載された気体流路結合部の遮熱構造であって、
前記脆弱部は、前記突出部の前記外縁部に沿って形成される
ことを特徴とする気体流路結合部の遮熱構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された気体流路結合部の遮熱構造であって、
前記内燃機関と前記管状部材の間に配置され、前記フランジ部及び前記遮熱板と共に前記内燃機関に締結されるガスケットを具備し、
前記管状部材の流路は複数あり、
前記ガスケットは、前記複数の流路に対向して形成された複数の開口部と、それぞれの前記開口部の縁部に沿って環状に形成されたビードとを備え、
前記脆弱部の端部は、隣り合う前記ビードで挟まれた領域に配置される
ことを特徴とする気体流路結合部の遮熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−76352(P2013−76352A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216036(P2011−216036)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】