説明

気体発生装置

【課題】簡便な構成で電解槽内の電解浴の液面を安定して一定の範囲内に制御することが可能な気体発生装置を提供する。
【解決手段】圧力計25,26により陰極室3内の圧力および陽極室4内の圧力の両方が大気圧以上であるかまたは少なくとも一方が大気圧よりも低いかが検出される。第1の液面検知装置50Aにより陰極室3内の液面がHレベルおよびLレベルのいずれにあるかが検出され、第2の液面検知装置50Bにより陽極室4内の液面がHレベルにあるかLレベルにあるかが検出される。圧力計25,26の検出結果および第1の液面検知装置50Aおよび第2の液面検知装置50Bの検出結果に基づいて水素ガス排出管7の自動弁11、フッ素ガス排出管8の自動弁15およびHF供給管20の自動弁21の開閉が制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気分解により気体を発生する気体発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体の製造工程等において、材料の洗浄および表面改質等の種々の用途でフッ素ガスが用いられている。その場合、フッ素ガス自体を用いる場合もあるが、フッ素ガスを基に合成されたNF(三フッ化窒素)ガス、NeF(フッ化ネオン)ガス、およびArF(フッ化アルゴン)ガス等の種々のフッ素系ガスを用いる場合もある。
【0003】
このような現場において、フッ素ガスを安定に供給するために、例えばHF(フッ化水素)を電気分解してフッ素ガスを発生するフッ素ガス発生装置が用いられる。
【0004】
特許文献1に示されるフッ素ガス発生装置は、電解槽を備える。電解槽内は、隔壁により陰極室および陽極室に区画されている。電解槽内にはKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴が形成されている。陰極室内に陰極が設けられ、陽極室内に陽極が設けられている。HF供給ラインを通して電解槽内の電解浴にHFが供給され、HFの電気分解が行われる。それにより、電解槽の陰極から水素ガスが発生し、陽極からフッ素ガスが発生する。
【0005】
陰極室の上部には、水素ガスの出口が設けられている。陰極室内で発生した水素ガスは、出口から陰極側の水素ガスラインを通して排出される。水素ガスラインには、自動弁およびHF吸着塔が介挿されている。また、陰極室には、パージガスがパージガスラインを通して供給される。
【0006】
陽極室の上部には、フッ素ガスの出口が設けられている。陽極室内で発生したフッ素ガスは、出口からフッ素ガスラインを通して排出される。フッ素ガスラインには、HF吸着塔および自動弁が介挿されている。また、陽極室には、パージガスがパージガスラインを通して供給される。
【0007】
陰極室には、電解浴の液面高さを検知する第1の液面検知手段が設けられ、陽極室には、電解浴の液面高さを検知する第2の液面検知手段が設けられている。また、陰極室には、陰極室内の圧力を測定する圧力計が設けられ、陽極室には、陽極室内の圧力を測定する圧力計が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−52105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなフッ素ガス発生装置では、電気分解(電解)が正常に行われている場合には、電解槽内は大気圧付近に維持されており、陰極室内の液面高さと陽極室内の液面高さとはほぼ同じになっている。
【0010】
電解中には、陽極室内がフッ素ガスの発生により加圧状態になると、例えば減圧器により陽極室内が排気され、または自動弁が開閉されることにより、陽極室内の圧力が大気圧付近に制御される。陰極室内が例えば水素ガスの発生と窒素ガスの導入とにより加圧状態になると、例えばエジェクタ等の減圧器と自動弁との組み合わせにより、陰極室内の圧力が陽極室内の圧力に追従するように大気圧付近に調整される。
【0011】
このようにして、従来のフッ素ガス発生装置では、電解槽内の圧力が大気圧付近を維持するように、陽極室内の圧力および陰極室内の圧力を細かく測定し、陽極室内の圧力および陰極室内の圧力を同程度に保つことにより陽極室の液面および陰極室の液面を調整していた。
【0012】
しかしながら、上記のような圧力追従型の制御を行うためには、圧力を高い精度で測定することが可能な高性能で高価な圧力センサを設ける必要があり、また微細な圧力制御を行うために、複雑な圧力調整系も必要となっていた。
【0013】
また、例えば電解槽が小型である場合には、液面の高さが制御可能な許容範囲も小さくなり、電解槽が小型であればあるほど、圧力制御に必要な圧力調整系は複雑になる傾向にある。
【0014】
本発明の目的は、簡便な構成で電解槽内の電解浴の液面を安定して一定の範囲内に制御することが可能な気体発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明に係る気体発生装置は、電気分解により第1の気体および第2の気体を発生させる気体発生装置であって、第1室および第2室に区画され、電気分解される化合物を含む電解浴を収容する電解槽と、第1室において発生された第1の気体を排出する第1の排出経路と、第2室において発生された第2の気体を排出する第2の排出経路と、第1の排出径路を開閉する第1の開閉手段と、第2の排出径路を開閉する第2の開閉手段と、第1室内の圧力を検出する第1の圧力検出手段と、第2室内の圧力を検出する第2の圧力検出手段と、第1室内の液面である第1液面の高さが基準液面高さを挟んで上方の第1の許容範囲および下方の第2の許容範囲のいずれにあるかを検出する第1の液面検出手段と、第2室内の液面である第2液面の高さが第1の許容範囲および第2の許容範囲のいずれにあるかを検出する第2の液面検出手段と、第1の液面検出手段および第2の液面検出手段ならびに第1の圧力検出手段および第2の圧力検出手段の検出結果に基づいて第1および第2の開閉手段を制御する制御手段とを備えるものである。
【0016】
本発明に係る気体発生装置においては、電解槽内に収容された電解浴中の化合物が電気分解され、第1室において第1の気体が発生し、第2室において第2の気体が発生する。第1室において発生された第1の気体は第1の排出径路を通して排出され、第2室において発生された第2の気体は第2の排出径路を通して排出される。第1の液面検出手段および第2の液面検出手段ならびに第1の圧力検出手段および第2の圧力検出手段の検出結果に基づいて制御手段により第1および第2の開閉手段が制御されることにより、第1の排出径路および第2の排出径路が開閉される。それにより、電解槽の第1室内の液面である第1液面の高さおよび第2室内の液面である第2液面の高さが制御される。
【0017】
したがって、簡便な構成で電解槽内の電解浴の液面を安定して一定の範囲内に制御することが可能となる。
【0018】
(2)制御手段は、第1の圧力検出手段により検出される圧力および第2の圧力検出手段により検出される圧力が設定圧以上であり、第1の液面検出手段により第1液面の高さが第1の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面の高さが第2の許容範囲にあることが検出された場合に、第1の開閉手段が第1の排出径路を閉じ、第2の開閉手段が第2の排出径路を開くように、第1および第2の開閉手段を制御し、第1の圧力検出手段により検出される圧力および第2の圧力検出手段により検出される圧力が設定圧以上であり、第1の液面検出手段により第1液面の高さが第2の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面の高さが第1の許容範囲にあることが検出された場合に、第1の開閉手段が第1の排出径路を開き、第2の開閉手段が第2の排出径路を閉じるように、第1および第2の開閉手段を制御してもよい。
【0019】
この場合、第1および第2の圧力検出手段は、第1室内および第2室内の圧力がおよそ設定圧以上であるか否かを検出するために用いられるので、第1および第2の圧力検出手段として高性能で高価な圧力計を設ける必要がない。
【0020】
第1室内の圧力および第2室内の圧力が設定圧以上であり、第1液面の高さが第1の許容範囲にあり、第2液面の高さが第2の許容範囲にある場合には、第1の開閉手段により第1の排出径路が閉じられ、第2の開閉手段により第2の排出径路が開かれる。
【0021】
それにより、第1室において発生される第1の気体が第1室内に留められ、第2室において発生される第2の気体は第2の排出径路を通して排出されることにより、第1室と第2室との圧力差が縮小され、第1液面が低下するとともに第2液面が上昇する。その結果、第1液面および第2液面を基準液面高さに近づけることができる。
【0022】
第1室内の圧力および第2室内の圧力が設定圧以上であり、第1液面の高さが第2の許容範囲にあり、第2液面の高さが第1の許容範囲にある場合には、第1の開閉手段により第1の排出径路が開かれ、第2の開閉手段により第2の排出径路が閉じられる。
【0023】
それにより、第2室において発生される第2の気体が第2室内に留められ、第1室において発生される第1の気体は第1の排出径路を通して排出されることにより、第1室と第2室との圧力差が縮小され、第2液面が低下するとともに第1液面が上昇する。また、第1室内の圧力および第2室内の圧力が低下する。その結果、第1液面および第2液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽内の圧力を設定圧に近づけることができる。
【0024】
(3)第1室の容積は第2室の容積よりも大きく、制御手段は、第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1の液面検出手段により第1液面の高さが第2の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面の高さが第1の許容範囲にあることが検出された場合に、第1の開閉手段が第1の排出径路を閉じ、第2の開閉手段が第2の排出径路を閉じるように、第1および第2の開閉手段を制御してもよい。
【0025】
この場合、第1および第2の圧力検出手段は、第1室内および第2室内の圧力がおよそ設定圧よりも低いか否かを検出するために用いられるので、第1および第2の圧力検出手段として高性能で高価な圧力計を設ける必要がない。
【0026】
第1室内の圧力および第2室内の圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1液面の高さが第2の許容範囲にあり、第2液面の高さが第1の許容範囲にある場合には、第1および第2の開閉手段により第1および第2の排出径路の両方が閉じられる。
【0027】
それにより、第1室および第2室においてそれぞれ発生される第1の気体および第2の気体により第1室内および第2室内の圧力が上昇する。この場合、第2室の容積は第1室の容積よりも小さいため、第2室内の圧力と第1室内の圧力との圧力差が縮小される。それにより、第2液面が徐々に低下し、第1液面が徐々に上昇する。
【0028】
したがって、第1室内と第2室内との圧力差を徐々に縮小させて、第1液面および第2液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽内の圧力を設定圧に近づけることができる。このようにして、電解槽内の第1室内と第2室内との圧力差が拡大する方向に進むことを抑止して、電解槽内の圧力および液面を安定して一定の範囲内に制御することができる。
【0029】
(4)第1室の容積は第2室の容積より大きく、制御手段は、第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1の液面検出手段により第1液面の高さが第1の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面の高さが第2の許容範囲にあることが検出された場合に、第1の開閉手段が第1の排出径路を閉じ、第2の開閉手段が第2の排出径路を開くように、第1および第2の開閉手段を制御してもよい。
【0030】
この場合、第1および第2の圧力検出手段は、第1室内および第2室内の圧力がおよそ設定圧よりも低いか否かを検出するために用いられるので、第1および第2の圧力検出手段として高性能で高価な圧力計を設ける必要がない。
【0031】
第1室内の圧力および第2室内の圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1液面の高さが第1の許容範囲にあり、第2液面の高さが第2の許容範囲にある場合に、第1の開閉手段により第1の排出径路が閉じられ、第2の開閉手段により第2の排出径路が開かれる。
【0032】
それにより、第1室において発生される第1の気体が第1室内に留められ、第2室において発生される第2の気体は第2の排出径路を通して排出されることにより、第1室と第2室との圧力差が縮小され、第1液面が低下し、第2液面が上昇する。したがって、第1液面および第2液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽内の圧力を設定圧に近づけることができる。
【0033】
(5)第1室の容積は第2室の容積より大きく、制御手段は、第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1の液面検出手段により第1液面の高さが第1の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面の高さが第1の許容範囲にあることが検出された場合に、第1の開閉手段が第1の排出径路を閉じ、第2の開閉手段が第2の排出径路を閉じるように、第1および第2の開閉手段を制御してもよい。
【0034】
この場合、第1および第2の圧力検出手段は、第1室内および第2室内の圧力がおよそ設定圧よりも低いか否かを検出するために用いられるので、第1および第2の圧力検出手段として高性能で高価な圧力計を設ける必要がない。
【0035】
第1室内の圧力および第2室内の圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1液面の高さが第1の許容範囲にあり、第2液面の高さが第1の許容範囲にある場合には、第1および第2の開閉手段により第1および第2の排出径路の両方が閉じられる。
【0036】
それにより、第1室および第2室においてそれぞれ発生される第1の気体および第2の気体により第1室内および第2室内の圧力が上昇する。したがって、電解槽内の圧力を設定圧に近づけることができる。
【0037】
(6)第1の排出径路に第1の室内を減圧する減圧手段がさらに備えられ、第1室の容積は第2室の容積と同じであり、制御手段は、第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1の液面検出手段により第1液面が第1の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面が第2の許容範囲にあることが検出された場合に、第1の開閉手段が第1の排出径路を閉じ、第2の開閉手段が第2の排出径路を閉じるように、第1および第2の開閉手段を制御してもよい。
【0038】
この場合、第1および第2の圧力検出手段は、第1室内および第2室内の圧力がおよそ設定圧よりも低いか否かを検出するために用いられるので、第1および第2の圧力検出手段として高性能で高価な圧力計を設ける必要がない。
【0039】
第1の排出径路に減圧手段が備えられるので、第1室の容積と第2室の容積とが同じであっても、第1室内の圧力および第2室内の圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低くなる場合がある。第1室内の圧力および第2室内の圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、第1液面が第1の許容範囲にあり、第2液面が第2の許容範囲にある場合には、第1および第2の開閉手段により第1および第2の排出径路の両方が閉じられる。
【0040】
それにより、第1室および第2室においてそれぞれ発生される第1の気体および第2の気体により第1室内および第2室内の圧力が上昇する。この場合、第1液面の高さが第2液面の高さよりも高いので、第1室内の圧力と第2室内の圧力との圧力差が縮小される。また、第2の排出径路に減圧手段が設けられていなくても、第2室への外気等の逆流を防ぐことができる。
【0041】
したがって、第1液面が低下することと、第2室への外気等の逆流とを防止しつつ、電解槽内の圧力を設定圧に近づけることができる。このようにして、電解槽内の液面の高さの変動を防止しつつ電解槽内の圧力を安定して一定の範囲内に制御し、かつ第2室への外気等の逆流を防止することができる。
【0042】
(7)気体発生装置は、電解槽内に化合物を供給する供給経路をさらに備え、制御手段は、第1の液面検出手段により第1液面が第2の許容範囲にあることが検出されかつ第2の液面検出手段により第2液面が第2の許容範囲にあることが検出された場合に、電解槽内に化合物を供給するように供給径路を制御してもよい。
【0043】
第1液面が第2の許容範囲にあり、第2液面が第2の許容範囲にある場合には、供給径路により電解槽内に化合物が供給される。それにより、第1液面および第2液面が上昇する。その結果、第1液面および第2液面を基準液面高さに近づけることができる。
【0044】
(8)第1の液面検出手段は、第1室内で下端が基準液面高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第1のプローブと、第1室内で下端が第1の許容範囲の上限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第2のプローブと、第1室内で下端が第2の許容範囲の下限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第3のプローブとを含み、第1、第2および第3のプローブによる液体の検出の有無に基づいて第1液面が第1の許容範囲および第2の許容範囲のいずれにあるかを検出し、第2の液面検出手段は、第2室内で下端が基準液面高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第4のプローブと、第2室内で下端が第1の許容範囲の上限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第5のプローブと、第2室内で下端が第2の許容範囲の下限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第6のプローブとを含み、第4、第5および第6のプローブによる液体の検出の有無に基づいて第2液面が第1の許容範囲および第2の許容範囲のいずれにあるかを検出してもよい。
【0045】
この場合、第1、第2および第3のプローブにより第1液面が第1の許容範囲にあるか第2の許容範囲にあるかを検出することができ、第4、第5および第6のプローブにより第2液面が第1の許容範囲にあるか第2許容範囲にあるかを検出することができる。したがって、第1および第2の液面検出手段の構成が簡単になる。
【0046】
(9)第1および第2の気体の一方は水素であり、第1および第2の気体の他方はフッ素であってもよい。
【0047】
この場合、簡便な構成で水素およびフッ素を発生する電解槽内の電解浴の液面を安定して一定の範囲内に制御することが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
本発明よれば、簡便な構成で電解槽内の電解浴の液面を安定して一定の範囲内に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】フッ素ガス発生装置の構成を示す模式図である。
【図2】(a)は減圧器の一例を示す模式図である。(b)は減圧器の他の例を示す模式図である。(c)は水素ガス排気装置の構成を示す模式図である。
【図3】(a)は減圧器の一例を示す模式図である。(b)は減圧器の他の例を示す模式図である。(c)は減圧器のさらに他の例を示す模式図である。
【図4】陰極室内の容積が陽極室内の容積よりも大きい場合における正圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。
【図5】陰極室内の容積が陽極室内の容積よりも大きい場合における負圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。
【図6】負圧運転状態で陰極室内の液面がLレベルとなりかつ陽極室内の液面がHレベルになったときに一方の自動弁を開きかつ他方の自動弁を閉じた場合に発生する現象を説明するための模式図である。
【図7】制御装置による制御動作を示すフローチャートである。
【図8】制御装置による正圧運転制御を示すフローチャートである。
【図9】制御装置による負圧運転制御を示すフローチャートである。
【図10】陰極室内の容積が陽極室内の容積よりも小さい場合における正圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。
【図11】陰極室内の容積が陽極室内の容積より小さい場合における負圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。
【図12】負圧運転状態での液面制御動作の要約を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の一実施の形態に係る気体発生装置について図面を参照しながら説明する。本実施の形態においては、気体発生装置の一例としてフッ素ガスを発生するフッ素ガス発生装置について説明する。
【0051】
(1)フッ素ガス発生装置の全体の構成
図1は本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置の構成を示す模式図である。
【0052】
図1に示すように、フッ素ガス発生装置は、電解槽1を備える。電解槽1は、例えばNi(ニッケル)、モネル、純鉄もしくはステンレス鋼等の金属または合金により形成されている。電解槽1内は、隔壁2により陰極室3および陽極室4に区画されている。隔壁2は、例えばNi、モネル、純鉄もしくはステンレス鋼等の金属または合金により形成されている。
【0053】
電解槽1内にはKF−HF系混合溶融塩からなる電解浴30が形成されている。陰極室3内に例えばNi(ニッケル)からなる陰極5が設けられ、陽極室4内に例えば低分極性炭素からなる陽極6が設けられている。HF供給管20を通して電解槽1内の電解浴30にHFが供給され、HFの電気分解が行われる。それにより、電解槽1の陰極5から主として水素ガスが発生し、陽極6から主としてフッ素ガスが発生する。
【0054】
陰極室3の上部には、陰極出口7aが設けられている。陰極室3内で発生した水素ガスは、陰極出口7aから水素ガス排出管7を通して排出される。水素ガス排出管7には、HF吸着塔9、流量調整弁10および自動弁11が介挿されている。水素ガス排出管7の先端には、コンプレッサ等の減圧手段12が接続されている。HF吸着塔9には、NaF等が充填される。このHF吸着塔9は、陰極室3から排出された水素ガスおよびHFの混合ガス中からHFを吸着する。
【0055】
陽極室4の上部には、陽極出口8aが設けられている。陽極室4内で発生したフッ素ガスは、陽極出口8aからフッ素ガス排出管8を通して排出される。フッ素ガス排出管8には、HF吸着塔13、流量調整弁14および自動弁15が介挿されている。本実施の形態では、フッ素ガス排出管8の先端には、コンプレッサ等の減圧手段16が接続されている。HF吸着塔13には、NaF等が充填される。このHF吸着塔13は、陽極室4から排出されたフッ素ガスおよびHFの混合ガス中からHFを吸着する。
【0056】
陰極室3には、陰極室3内の圧力を測定する圧力計25が設けられ、陽極室4には、陽極室4内の圧力を測定する圧力計26が設けられている。
【0057】
HF供給管20には、自動弁21およびオリフィス22が介挿されている。電解浴30がHF供給管20に吸い込まれることを防止するために、オリフィス22の下流のHF供給管20と水素ガス排出管7との間にバイパス弁23が接続されている。HF供給管20には圧力計27が設けられている。
【0058】
また、陰極室3には、電解浴30の液面高さを検知する第1の液面検知装置50Aが設けられ、陽極室4には、電解浴30の液面高さを検知する第2の液面検知装置50Bが設けられている。
【0059】
第1の液面検知装置50Aは、3本の液面センサ(プローブ)51,52,53を有する。液面センサ52は、その先端が陰極室3内の基準液面高さに位置するように配置される。液面センサ51は、その先端が陰極室3内の基準液面高さよりも低い下限高さに位置にするように配置される。液面センサ53は、その先端が陰極室3内の基準液面高さよりも高い上限高さに位置するように配置される。
【0060】
同様に、第2の液面検知装置50Bは、3本の液面センサ(プローブ)54,55,56を有する。液面センサ55は、その先端が陽極室4内の基準液面高さに位置するように配置される。液面センサ54は、その先端が陽極室4内の基準液面高さよりも低い下限高さに位置にするように配置される。液面センサ56は、その先端が陽極室4内の基準液面高さよりも高い上限高さに位置するように配置される。
【0061】
上限高さは、電解浴30中のHFの濃度が上限に達する場合の高さであり、下限高さは、電解浴30中のHFの濃度が下限に達する場合の高さである。
【0062】
以下、基準液面高さと上限高さとの間の領域をHレベルと呼び、基準液面高さと下限高さとの間の領域をLレベルと呼ぶ。また、上限高さよりも高い領域をHHレベルと呼び、下限高さよりも低い領域をLLレベルと呼ぶ。HレベルおよびLレベルの範囲が許容範囲(正常な範囲)である。電解浴30の液面高さがHHレベルまたはLLレベルになると、自動的にフッ素ガス発生装置の運転(電気分解)が停止される。
【0063】
液面センサ51〜56の対極50は、その先端が電解浴30内に浸漬するように配置されている。対極50としては、本実施の形態のように独立した対極50を設けることが好ましいが、対極50は電解浴30と接触していればよく、例えば陰極5が対極50を兼ねるようにしてもよい。
【0064】
制御装置100は、陰極5と陽極6との間に電気分解のための電圧を印加する。また、圧力計25,26,27の出力信号、第1の液面検知装置50Aの出力信号および第2の液面検知装置50Bの出力信号は、制御装置100に与えられる。制御装置100は、圧力計25,26,27の出力信号、第1の液面検知装置50Aの出力信号および第2の液面検知装置50Bの出力信号に基づいて、自動弁11,15,21およびバイパス弁23の開閉を制御する。フッ素ガス発生装置は、緊急停止用のボタンを有する。
【0065】
本実施の形態では、Niからなる陰極5と炭素からなる陽極6との間に電位差があるため、陰極5および陽極6を電解浴30中に並存させた場合に陰極5のNiが電解浴30中に溶出する。そこで、電気分解停止後に電解浴30中に陰極5が溶出することを防止するために、電気分解停止中に上記の電位差分以上の電圧(1.8V程度)を陰極5と陽極6との間に印加する。
【0066】
なお、流量調整弁10,14としては、手動のニードルバルブを用いる。これらの流量調整弁10,14は、任意の一定の開度に設定して用いられる。ニードルバルブの他にダイヤフラムバルブ等も用いることができ、またこれらの代わりにオリフィスを用いてもよく、さらにまたこれらの代わりにマスフローコントローラ(MFC:質量流量制御装置)を用いるとともに、マスフローコントローラを制御装置100により制御することにより流量調整を可能としてもよい。
【0067】
図2(a)は減圧手段12の一例を示す模式図であり、図2(b)は減圧手段12の他の例を示す模式図である。また、図2(c)は水素ガス排気装置の構成を示す模式図である。
【0068】
陰極室3において発生される水素ガスをガスボンベに貯蔵する場合または工場の製造ライン等に供給する場合には、図2(a)に示すように、図1の自動弁11の下流の水素ガス排出管7に減圧手段12として加圧ポンプ121を接続する。この場合、自動弁11が開かれると、加圧ポンプ121の作動により陰極室3内で発生される水素ガスが吸引され、陰極室3内が減圧される。
【0069】
また、図2(b)に示すように、図1の自動弁11の下流の水素ガス排出管7に減圧手段12としてバキュームジェネレータ122を接続してもよい。この場合、自動弁11が開かれると、駆動用Nガスによるエジェクタ効果により陰極室3内で発生される水素ガスが吸引され、陰極室3内が減圧される。
【0070】
陰極室3において発生される水素ガスを大気中に排気する場合には、図2(c)に示すように、図1の自動弁11の下流の水素ガス排出管7に水素ガス排気装置130を接続する。それにより、自動弁11が開かれると、水素ガス排気装置130において希釈用Nガスで水素ガスが希釈され、大気中に排気される。この場合、陰極室3内は大気圧に開放される。なお、上記の図2(a)〜(c)のいずれの場合であっても、水素ガス排出管7のHF吸着塔9の下流側に、さらにソーダライム粒等により水素ガスに含まれる微量のフッ化水素ガスを除去する除害塔(図示せず)を設けておくことが好ましい。さらに、水素ガス濃度の問題がない環境下の場合は、フッ化水素ガスを除去した水素ガスをそのまま大気中に放出するようにしてもよい。
【0071】
図3(a)は減圧手段16の一例を示す模式図であり、図3(b)は減圧手段16の他の例を示す模式図であり、図3(c)は減圧手段16のさらに他の例を示す模式図である。
【0072】
陽極室4において発生されるフッ素ガスをガスボンベに貯蔵する場合または工場の製造ライン等に供給する場合には、図3(a)に示すように、図1の自動弁15の下流のフッ素ガス排出管8に減圧手段16として加圧ポンプ161を接続する。この場合、自動弁15が開かれると、加圧ポンプ161の作動により陽極室4内で発生されるフッ素ガスが吸引され、陽極室4内が減圧される。
【0073】
また、図3(b)に示すように、図1の自動弁15の下流のフッ素ガス排出管8に容器(反応器等)162および開閉弁163を介して真空ポンプ164を接続してもよい。この場合、例えば、容器162内にフッ素ガスと反応させる対象物(図示せず)を入れておき、開閉弁163を開いて真空ポンプ164を動作させることにより容器162内を真空状態にする。ここで、開閉弁163を閉じて自動弁15を開くと、陽極室4内で発生されるフッ素ガスが真空状態にある容器162内に吸引され、陽極室4内が減圧される。それにより、容器162内にフッ素ガスが導入され、導入されたフッ素ガスと対象物とが反応する。また、真空ポンプ164の作動により容器162内を真空状態にすることにより容器162内に導入された高純度のフッ素ガスをガスボンベまたは工場の製造ライン等に供給するようにしてもよい。なお、使用が複数回に亘る場合、フッ素ガス排出管8または容器162内に残存するフッ素ガスまたはフッ化水素ガスを真空ポンプ164が吸引することによる故障の防止および安全の確保のため、真空ポンプ164の上流側近傍にアルミナ粒またはソーダライム粒等を充填した除害塔(図示せず)を設けることが好ましい。
【0074】
さらに、図3(c)に示すように、図1の自動弁15の下流のフッ素ガス排出管8に減圧手段16としてバキュームジェネレータ165を接続してもよい。この場合、自動弁15が開かれると、駆動用Nガスによるエジェクタ効果により陽極室4内で発生されるフッ素ガスが吸引され、陽極室4内が減圧される。
【0075】
(2)フッ素ガス発生装置の動作
次に、図1のフッ素ガス発生装置の電解槽1内の電解浴30の液面制御動作について説明する。図1のフッ素ガス発生装置では、電解槽1内の圧力が予め設定された圧力(設定圧)になるように制御が行われる。本実施の形態では、設定圧は大気圧である。
【0076】
以下、電解槽1内の陰極室3および陽極室4の両方の圧力が大気圧以上となる状態を正圧運転状態と呼び、電解槽1内の陰極室3および陽極室4の少なくとも一方の圧力が大気圧よりも低い状態を負圧運転状態と呼ぶ。
【0077】
図1のフッ素ガス発生装置では、陰極室3内の容積と陽極室4内の容積との大小関係、陰極出口7a側および陽極出口側8aにおける減圧器の有無、および運転状態により液面制御動作が異なる。なお、陰極室3内の容積とは、実質的には陰極室3から自動弁11までの全ての空間の容積を示し、陽極室4内の容積とは、実質的には陽極室4から自動弁15までの全ての空間の容積を示すものである。
【0078】
まず、図4〜図9を用いて陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも大きい場合の液面制御動作を説明し、図10および図11を用いて陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも小さい場合の液面制御動作を説明する。図12に負圧運転状態での液面制御動作を要約する。
【0079】
図4〜図6および図10〜図12において、自動弁11,15,21が開いている状態を白丸印で表し、閉じている状態を黒丸印で表す。また、図12において、「陰H」、「陰L」、「陽H」および「陽L」は、それぞれ陰極室3内の液面がHレベルにある場合、陰極室3内の液面がLレベルにある場合、陽極室4内の液面がHレベルにある場合、および陽極室4内の液面がLレベルにある場合を示す。また、自動弁11,15が開いている状態を「○」で表し、閉じている状態を「×」で表す。なお、「△」は、自動弁11,15を開いても閉じても正常な制御が困難であることを示す。
【0080】
(2−1)陰極室3内の容積>陽極室4内の容積
まず、陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも大きい液面制御動作を説明する。
【0081】
図4は陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも大きい場合における正圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。また、図5は陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも大きい場合における負圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。図4および図5の例では、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続され、陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている。
【0082】
(a)正圧運転状態での動作
まず、図4を参照しながら正圧運転状態での液面制御動作を説明する。
【0083】
図4(a)に示すように、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面がHレベルになると、自動弁11および自動弁15の両方が開かれる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陰極室3内で発生される水素ガスが陰極室3から水素ガス排出管7を通して排出され、陽極室4内で発生されるフッ素ガスが陽極室4からフッ素ガス排出管8を通して排出される。また、減圧手段12,16により陰極室3内および陽極室4内がそれぞれ減圧される。この場合、電解槽1内に新たなHFは供給されない。したがって、電解槽1内の圧力が低下するとともに、電解槽1内の圧力が大気圧に近づく。
【0084】
図4(b)に示すように、陰極室3内の液面がHレベルになり、陽極室4内の液面がLレベルになると、自動弁11が閉じられ、自動弁15が開かれる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陰極室3内で発生される水素ガスが陰極室3内に留められる。一方、陽極室4内で発生されるフッ素ガスは陽極室4からフッ素ガス排出管8を通して排出される。また、減圧手段16により陽極室4内が減圧される。したがって、陰極室3内の液面が低下するとともに、陰極室3内の圧力が低下する。また、陽極室4内の圧力が低下し、陽極室4内の液面が上昇する。
【0085】
図4(c)に示すように、陰極室3内の液面がLレベルになり、陽極室4内の液面がHレベルになると、自動弁11が開かれ、自動弁15が閉じられる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陽極室4内で発生されるフッ素ガスが陽極室4内に留められる。一方、陰極室3内で発生される水素ガスは陰極室3から水素ガス排出管7を通して排出される。また、減圧手段12により陰極室3内が減圧される。したがって、陽極室4内の液面が低下するとともに、陽極室4内の圧力が低下する。また、陰極室3内の圧力が低下し、陰極室3内の液面が上昇する。
【0086】
この場合、電解槽1が正圧運転状態であるため、減圧手段12により陰極室3内の水素ガスが吸引されることにより陰極室3内が大気圧付近まで戻るだけである。
【0087】
図4(d)に示すように、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面がLレベルになると、自動弁11および自動弁15の両方が開かれる。また、自動弁21が開かれる。それにより、陰極室3内で発生される水素ガスが陰極室3から水素ガス排出管7を通して排出され、陽極室4内で発生されるフッ素ガスが陽極室4からフッ素ガス排出管8を通して排出される。また、減圧手段12,16により陰極室3内および陽極室4内がそれぞれ減圧される。さらに、電解槽1内にHF供給管20を通してHFが供給される。したがって、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が上昇するとともに、電解槽1内の圧力が低下する。その結果、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が基準液面高さに近づくとともに、電解槽1内の圧力が大気圧に近づく。
【0088】
なお、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されていない場合に、正圧運転状態で陰極室3内の液面がLレベルとなりかつ陽極室4内の液面がHレベルとなったときには、陰極室3内の水素ガスが水素ガス排出管7を通して大気中に放出されることにより陰極室3内が大気圧に戻るだけである。
【0089】
(b)負圧運転状態での動作
次に、図5を参照しながら、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている場合における負圧運転状態での液面制御動作を説明する(図12の制御パターンP1参照)。
【0090】
図5(a)に示すように、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面がHレベルになると、自動弁11および自動弁15の両方が閉じられる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陰極室3内および陽極室4内でそれぞれ発生される水素ガスおよびフッ素ガスにより陰極室3内および陽極室4内の圧力が上昇する。この場合、電解槽1内に新たなHFは供給されない。したがって、電解槽1内の圧力が上昇するとともに、電解槽1内の圧力が大気圧に近づく。
【0091】
図5(b)に示すように、陰極室3内の液面がHレベルになり、陽極室4内の液面がLレベルになると、自動弁11が閉じられ、自動弁15が開かれる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陰極室3内で発生される水素ガスが陰極室3内に留められる。一方、陽極室4内で発生されるフッ素ガスは減圧手段12により吸引され、フッ素ガス排出管8を通して排出される。それにより、陰極室3内の液面が低下し、陽極室4内の液面が上昇する。
【0092】
この場合、陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されているので、フッ素ガス排出管8を通して陽極室4内にフッ素ガスまたはその他のガスが逆流することはない。
【0093】
図5(c)に示すように、陰極室3内の液面がLレベルになり、陽極室4内の液面がHレベルになると、自動弁11および自動弁15の両方が閉じられる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陰極室3内および陽極室4内でそれぞれ発生される水素ガスおよびフッ素ガスにより陰極室3内および陽極室4内の圧力が上昇する。この場合、陽極室4の容積が陰極室3の容積よりも小さい。そのため、陽極室4内の圧力と陰極室3内の圧力との圧力差が縮小される。それにより、陽極室4内の液面が低下し、陰極室3内の液面が上昇する。このとき、陽極室4内の液面が瞬時にLLレベルまで低下することはない。詳細については後述する。
【0094】
図5(d)に示すように、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面がLレベルになると、自動弁11および自動弁15の両方が閉じられる。また、自動弁21が開かれる。それにより、陰極室3内および陽極室4内でそれぞれ発生される水素ガスおよびフッ素ガスにより陰極室3内および陽極室4内の圧力が上昇する。また、電解槽1内にHF供給管20を通してHFが供給される。それにより、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が上昇する。
【0095】
このようにして、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が基準液面高さ付近に制御されるとともに、電解槽1内の圧力が大気圧付近に制御される。
【0096】
なお、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されておらずかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている場合の液面制御動作は、図5の液面制御動作と同様である(図12の制御パターンP4参照)。
【0097】
(c)図5(c)の液面制御動作の理由
ここで、図5(c)に示したように、負圧運転状態で陰極室3内の液面がLレベルとなりかつ陽極室4内の液面がHレベルになったときに自動弁11,15の両方を閉じる理由について説明する。
【0098】
図6は負圧運転状態で陰極室3内の液面がLレベルとなりかつ陽極室4内の液面がHレベルになったときに自動弁11を開きかつ自動弁15を閉じた場合に発生する現象を説明するための模式図である。図6(a)は陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されている場合を示し、図6(b)は陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されていない場合を示す。
【0099】
図6(a)の場合、自動弁11が開かれると、陰極室3内で発生される水素ガスが、減圧手段12により吸引されることにより水素ガス排出管7を通して排出される。また、自動弁15が閉じられると、陽極室4内で発生されるフッ素ガスが陽極室4内に留められる。それにより、陰極室3内の液面が上昇し、陽極室4内の液面が低下する。この場合、陽極室4の容積が陰極室3の容積よりも小さいので、陽極室4内の液面が急激に低下する。それにより、陽極室4内の液面が瞬時にLLレベルまで低下する可能性がある。また、減圧運転状態は好ましくなく、加圧運転状態に戻すことが望まれる。
【0100】
また、図6(b)の場合、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が設けられておらず、かつ陰極室3内が負圧状態であるので、自動弁11が開かれると、水素ガスおよび大気が陰極室3内に水素ガス排出管7を通して逆流する。それにより、陰極室3内の圧力が大気圧まで上昇するとともに、水素ガスおよび大気が陰極室3内に逆流して電解槽1内部の腐食等を招くおそれがある。一方、自動弁15が閉じられると、陽極室4内の圧力はフッ素ガスの発生により上昇する。この場合、陽極室4の容積が陰極室3の容積よりも小さいので、陽極室4内の液面が上昇する。それにより、陽極室4内の液面がHHレベルまで上昇する可能性がある。また、減圧運転状態は好ましくなく、加圧運転状態に戻すことが望まれる。
【0101】
そこで、本実施の形態では、負圧運転状態で陰極室3内の液面がLレベルとなりかつ陽極室4内の液面がHレベルになったときには、図5(c)に示したように、自動弁11および自動弁15の両方が閉じられる。それにより、容積の小さな陽極室4内の液面が急激に変化することを防止しつつ、加圧運転状態に近づけることができる。
【0102】
このように、陰極室3の容積が陽極室4の容積よりも大きい場合には、図5に示したように、陰極室3側の自動弁11は常に閉じられる。
【0103】
なお、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されていない場合には、図12の制御パターンP7のようになる。この場合、陰極室3内の液面がHレベルになりかつ陽極室4内の液面のレベルがLレベルとなったときに、正常な液面制御動作が難しい。すなわち、陽極室4側の自動弁15を閉じると、図6(a)の場合と同様に、陽極室4内の液面がLLレベルまで低下する可能性がある。一方、陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が設けられていない場合に、陽極室4側の自動弁15を開くと、フッ素ガスまたはその他のガスが陽極室4内にフッ素ガス排出管8を通して逆流する。この場合、逆流したフッ素ガスまたはその他のガスにより電解浴5およびフッ素ガスの汚染が生じるおそれがある。
【0104】
したがって、少なくとも陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16を接続し、制御パターンP1,P4の動作を行うことが望ましい。
【0105】
(d)制御装置100による制御動作
次に、図1の制御装置100による制御動作を説明する。図7は図1の制御装置100による制御動作を示すフローチャートである。
【0106】
ここで、正圧運転状態における制御装置100による自動弁11,15,21の開閉制御を正圧運転制御と呼び、負圧運転状態における制御装置100による自動弁11,15,21の開閉制御を負圧運転制御と呼ぶ。
【0107】
図7に示すように、まず、制御装置100は、圧力計25,26の出力信号に基づいて電解槽1の陰極室3内の圧力および陽極室4内の圧力の両方が大気圧よりも高いか否かを判別する(ステップS1)。
【0108】
電解槽1の陰極室3内の圧力および陽極室4内の圧力の両方が大気圧以上の場合には、制御装置100は、図4に示した正圧運転制御を行う(ステップS2)。その後、制御装置100は、ステップS1の処理に戻る。
【0109】
一方、電解槽1の陰極室3内の圧力および陽極室4内の圧力の少なくとも一方が大気圧よりも低い場合には、制御装置100は、図5に示した負圧運転制御を行う(ステップS3)。その後、制御装置100は、ステップS1の処理に戻る。
【0110】
図8は図1の制御装置100による正圧運転制御を示すフローチャートである。ここで、図4(a)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御4aと呼び、図4(b)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御4bと呼び、図4(c)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御4cと呼び、図4(d)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御4dと呼ぶ。
【0111】
制御装置100は、第1の液面検知装置50Aの出力信号に基づいて陰極室3内の液面高さがHレベルにあるかLレベルにあるかを判別し、第2の液面検知装置50Bの出力信号に基づいて陽極室4内の液面高さがHレベルにあるかLレベルにあるかを判別する。
【0112】
まず、制御装置100は、陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がHレベルにあるか否かを判別する(ステップS11)。陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がHレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御4a(図4(a)の制御)を行う(ステップS12)。陰極室3内および陽極室4内の液面の少なくとも一方がHレベルにない場合には、制御装置100はステップS13の処理に進む。
【0113】
次に、制御装置100は、陰極室3内の液面がHレベルにありかつ陽極室4内の液面がLレベルにあるか否かを判別する(ステップS13)。陰極室3内の液面がHレベルにありかつ陽極室4内の液面がLレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御4b(図4(b)の制御)を行う(ステップS14)。陰極室3内の液面がHレベルにないかまたは陽極室4内の液面高さがLレベルにない場合には、制御装置100はステップS15の処理に進む。
【0114】
次に、制御装置100は、陰極室3内の液面がLレベルにありかつ陽極室4内の液面がHレベルにあるか否かを判別する(ステップS15)。陰極室3内の液面がLレベルにありかつ陽極室4内の液面がHレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御4c(図4(c)の制御)を行う(ステップS16)。陰極室3内の液面がLレベルにないかまたは陽極室4内の液面高さがHレベルにない場合には、制御装置100はステップS17の処理に進む。
【0115】
さらに、制御装置100は、陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がLレベルにあるか否かを判別する(ステップS17)。陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がLレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御4d(図4(d)の制御)を行う(ステップS18)。陰極室3内および陽極室4内の液面の少なくとも一方がLレベルにない場合には、制御装置100は図7のステップS1の処理に戻る。
【0116】
図9は図1の制御装置100による負圧運転制御を示すフローチャートである。ここで、図5(a)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御5aと呼び、図5(b)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御5bと呼び、図5(c)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御5cと呼び、図5(d)に示した自動弁11,15,21の開閉制御を開閉制御5dと呼ぶ。
【0117】
制御装置100は、第1の液面検知装置50Aの出力信号に基づいて陰極室3内の液面がHレベルにあるかLレベルにあるかを判別し、第2の液面検知装置50Bの出力信号に基づいて陽極室4内の液面がHレベルにあるかLレベルにあるかを判別する。
【0118】
まず、制御装置100は、陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がHレベルにあるか否かを判別する(ステップS21)。陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がHレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御5a(図5(a)の制御)を行う(ステップS22)。陰極室3内および陽極室4内の液面の少なくとも一方がHレベルにない場合には、制御装置100はステップS23の処理に進む。
【0119】
次に、制御装置100は、陰極室3内の液面がHレベルにありかつ陽極室4内の液面がLレベルにあるか否かを判別する(ステップS23)。陰極室3内の液面がHレベルにありかつ陽極室4内の液面がLレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御5b(図5(b)の制御)を行う(ステップS24)。陰極室3内の液面がHレベルにないかまたは陽極室4内の液面がLレベルにない場合には、制御装置100はステップS25の処理に進む。
【0120】
次に、制御装置100は、陰極室3内の液面がLレベルにありかつ陽極室4内の液面がHレベルにあるか否かを判別する(ステップS25)。陰極室3内の液面がLレベルにありかつ陽極室4内の液面がHレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御5c(図5(c)の制御)を行う(ステップS26)。陰極室3内の液面がLレベルにないかまたは陽極室4内の液面がHレベルにない場合には、制御装置100はステップS27の処理に進む。
【0121】
さらに、制御装置100は、陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がLレベルにあるか否かを判別する(ステップS27)。陰極室3内および陽極室4内の液面の両方がLレベルにある場合には、制御装置100は、開閉制御5d(図5(d)の制御)を行う(ステップS28)。陰極室3内および陽極室4内の液面の少なくとも一方がLレベルにない場合には、制御装置100は図7のステップS1の処理に戻る。
【0122】
(e)上記の液面制御動作の効果
図5(c)に示したように、容積の大きい陰極室3内の液面がLレベルにありかつ容積の小さい陽極室4内の液面がHレベルにある場合には、陰極室3側の自動弁11および陽極室4側の自動弁15の両方を閉じることにより、陽極室4内の液面が急激に低下することを防止しつつ、陰極室3内および陽極室4内の液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽1内の圧力を大気圧に近づけることができる。
【0123】
また、図5(b)に示したように、容積の大きい陰極室3内の液面がHレベルにありかつ容積の小さい陽極室4内の液面がLレベルにある場合には、陰極室3側の自動弁11を閉じかつ陽極室4側の自動弁15を開くことにより、フッ素ガスまたはその他のガスがフッ素ガス排出管8を通して陽極室4内に逆流することなく、陰極室3内および陽極室4内の液面を基準液面高さに近づけることができる。
【0124】
(2−2)陰極室3内の容積<陽極室4内の容積
次に、陰極室3内の容積が陽極室4内の容積より小さい場合の液面制御動作を説明する。
【0125】
図10は陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも小さい場合における正圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。また、図11は陰極室3内の容積が陽極室4内の容積より小さい場合における負圧運転状態での液面制御動作を説明するための模式図である。図10および図11の例では、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続され、陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている。
【0126】
(a)正圧運転状態での動作
図10に示すように、陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも小さい場合における正圧運転状態での液面制御動作は、図4に示したように、陰極室3内の容積が陽極室4内の容積よりも大きい場合における正圧運転状態での液面制御動作と同様である。
【0127】
(b)負圧運転状態での動作
次に、図11を参照しながら、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている場合における負圧運転状態での液面制御動作を説明する(図12の制御パターンP3参照)。
【0128】
図11(a)に示すように、負圧運転状態で陰極室3内の液面および陽極室4内の液面がHレベルになったときの液面制御動作は、図5(a)に示した液面制御動作と同様である。
【0129】
図11(b)に示すように、陰極室3内の液面がHレベルになり、陽極室4内の液面がLレベルになると、自動弁11および自動弁15の両方が閉じられる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陰極室3内および陽極室4内でそれぞれ発生される水素ガスおよびフッ素ガスにより陰極室3内および陽極室4内の圧力が上昇する。この場合、陰極室3の容積が陽極室4の容積よりも小さい。そのため、陰極室3内の圧力と陽極室4内の圧力との圧力差が縮小される。それにより、陰極室3内の液面が低下し、陽極室4内の液面が上昇する。このとき、図5(c)の場合と同様の理由により、陰極室3内の液面がLLレベルまで低下することはない。
【0130】
図11(c)に示すように、陰極室3内の液面がLレベルになり、陽極室4内の液面がHレベルになると、自動弁11が開かれ、自動弁15が閉じられる。また、自動弁21が閉じられる。それにより、陽極室4内で発生されるフッ素ガスが陽極室4内に留められる。一方、陰極室3内で発生される水素ガスは減圧手段12により吸引され、水素ガス排出管7を通して排出される。それにより、陰極室3内の液面が上昇し、陽極室4内の液面が低下する。
【0131】
この場合、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されているので、水素ガス排出管7を通して陰極室3内に水素ガスまたはその他のガスが逆流することはない。
【0132】
図11(d)に示すように、負圧運転状態で陰極室3内の液面および陽極室4内の液面がLレベルになったときの液面制御動作は、図5(d)に示した液面制御動作と同様である。
【0133】
このようにして、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が基準液面高さ付近に制御されるとともに、電解槽1内の圧力が大気圧付近に制御される。
【0134】
なお、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されておりかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されていない場合の液面制御動作は、図11の液面制御動作と同様である(図12の制御パターンP9参照)。
【0135】
なお、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されておらずかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている場合には、図12の制御パターンP6のようになる。この場合、陰極室3内の液面がLレベルになりかつ陽極室4内の液面のレベルがHレベルとなったときに、正常な液面制御動作が難しい。すなわち、陰極室3側の自動弁11を閉じると、陰極室3内の液面がLLレベルまで低下する可能性がある。一方、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が設けられていない場合、陰極室3側の自動弁11を開くと、水素ガスおよび大気が陰極室3内に水素ガス排出管7を通して逆流する。この場合、逆流した大気中の水分により電解槽1の内部の腐食が促進される。また、水分が電解浴5中に溶解し、発生されるフッ素ガスの純度が低下する。
【0136】
したがって、少なくとも陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12を接続し、制御パターンP3,P9の動作を行うことが望ましい。
【0137】
(c)上記の液面制御動作の効果
図11(b)に示したように、容積の小さい陰極室3内の液面がHレベルにありかつ容積の大きい陽極室4内の液面がLレベルにある場合には、陰極室3側の自動弁11および陽極室4側の自動弁15の両方を閉じることにより、陰極室3内の液面が急激に低下することを防止しつつ、陰極室3内および陽極室4内の液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽1内の圧力を大気圧に近づけることができる。
【0138】
また、図11(c)に示したように、容積の小さい陰極室3内の液面がLレベルにありかつ容積の大きい陽極室4内の液面がHレベルにある場合には、陰極室3側の自動弁11を開きかつ陽極室4側の自動弁15を閉じることにより、水素ガスまたはその他のガスが水素ガス排出管7を通して陰極室3内に逆流することなく、陰極室3内および陽極室4内の液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽1内の圧力を大気圧に近づけることができる。
【0139】
(2−3)陰極室3内の容積=陽極室4内の容積
次に、陰極室3内の容積と陽極室4内の容積とが等しい場合の液面制御動作を説明する。
【0140】
(a)正圧運転状態での動作
正圧運転状態での液面制御動作は、図4に示した正圧運転状態での液面制御動作と同様である。
【0141】
(b)負圧運転状態での動作
次に、図12を参照しながら、負圧運転状態での液面制御動作を説明する。
【0142】
図12に示すように、陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている場合には、制御パターンP2−1の液面制御動作または制御パターンP2−2の液面制御動作が行われる。
【0143】
制御パターンP2−1の液面制御動作では、陰極室3内の液面がHレベルにありかつ陽極室4内の液面がLレベルにある場合に、制御パターンP1と同様に、自動弁11,15が開閉される。また、陰極室3内の液面がLレベルにありかつ陽極室4内の液面がHレベルにある場合に、制御パターンP3と同様に、自動弁11,15が開閉される。
【0144】
制御パターンP2−2の液面制御動作では、全ての場合に両方の自動弁11,15が閉じられる。この場合には、陰極室3内および陽極室4内の液面は変化しない。したがって、水素ガスおよびフッ素ガスの発生により陰極室3内および陽極室4内の圧力が上昇し、正圧運転状態に移行する。それにより、図4で説明した正圧運転状態での動作が行われる。
【0145】
陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されておらずかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されている場合には、制御パターンP5−1の液面制御動作または制御パターンP5−2の液面制御動作が行われる。制御パターンP5−1の液面制御動作は、制御パターンP4内の液面制御動作と同様である。また、制御パターンP5−2の液面制御動作は、制御パターンP2−2の制御動作と同様である。
【0146】
陰極室3側の水素ガス排出管7に減圧手段12が接続されておりかつ陽極室4側のフッ素ガス排出管8に減圧手段16が接続されていない場合には、制御パターンP8−1の液面制御動作または制御パターンP8−2の液面制御動作が行われる。制御パターンP8−1の液面制御動作は、制御パターンP9の液面制御動作と同様である。また、制御パターンP8−2の液面制御動作は、制御パターンP2−2の制御動作と同様である。
【0147】
このようにして、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が基準液面高さ付近に制御されるとともに、電解槽1内の圧力が大気圧付近に制御される。
【0148】
(3)実施の形態の効果
本実施の形態に係るフッ素ガス発生装置においては、圧力計25,26により陰極室3内の圧力および陽極室4内の圧力が大気圧以上であるか否かが検出されるとともに、第1の液面検知装置50Aにより陰極室3内の液面がHレベルおよびLレベルのいずれにあるかが検出され、第2の液面検知装置50Bにより陽極室4内の液面がHレベルおよびLレベルのいずれにあるかが検出される。そして、これらの検出結果に基づいて自動弁11,15,21の開閉が制御される。それにより、陰極室3内の液面および陽極室4内の液面が基準液面高さ付近に制御されるとともに、電解槽1内の圧力が大気圧付近に制御される。
【0149】
この場合、圧力計25,26はそれぞれ陰極室3内の圧力および陽極室4内の圧力がおよそ大気圧以上であるか否かを検出するために用いられるので、圧力計25,26として高い精度で圧力を検出することが可能な高性能で高価な圧力計を設ける必要はない。また、複雑な圧力制御系も不要となる。
【0150】
さらに、第1の液面検知装置50Aは3本の液面センサ51,52,53からなる簡単な構成を有し、第2の液面検知装置50Bは3本の液面センサ54,55,56からなる簡単な構成を有する。
【0151】
これらの結果、簡便な構成で陰極室3内の液面および陽極室4内の液面を基準液面高さに近づけることができるとともに、電解槽1内の圧力を大気圧に近づけることができる。
【0152】
(4)他の実施の形態
上記実施の形態では、設定圧が大気圧であるが、これに限らず、設定圧が他の圧力であってもよい。なお、設定圧が大気圧であることが好ましい。
【0153】
上記実施の形態では、気体発生装置の例としてフッ素ガス発生装置について説明したが、本発明は酸素ガス、三フッ化窒素ガス、四フッ化炭素ガス等の他の気体を発生する気体発生装置にも同様に適用することができる。
【0154】
(5)請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各要素との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0155】
上記実施の形態では、陰極室3および陽極室4の一方が第1室の例であり、陰極室3および陽極室4の他方が第2室の例であり、電解槽1が電解槽の例であり、水素ガス排出管7およびフッ素ガス排出管8の一方が第1の排出径路の例であり、水素ガス排出管7およびフッ素ガス排出管8の他方が第2の排出径路の例であり、HF供給管20が供給径路の例であり、自動弁11および自動弁15の一方が第1の開閉手段の例であり、自動弁11および自動弁15の他方が第2の開閉手段の例であり、自動弁21が第3の開閉手段の例である。
【0156】
また、圧力計25および圧力計26の一方が第1の圧力検出手段の例であり、圧力計25および圧力計26の他方が第2の圧力検出手段の例であり、第1の液面検知装置50Aおよび第2の液面検知装置50Bの一方が第1の液面検出手段の例であり、第1の液面検知装置50Aおよび第2の液面検知装置50Bの他方が第2の液面検出手段の例であり、制御装置100が制御手段の例である。
【0157】
さらに、大気圧が設定圧の例であり、水素ガスおよびフッ素ガスの一方が第1の気体の例であり、水素ガスおよびフッ素ガスの他方が第2の気体の例であり、
液面センサ52,55の一方が第1のプローブの例であり、液面センサ52,55の他方が第4のプローブの例であり、液面センサ53,56の一方が第2のプローブの例であり、液面センサ53,56の他方が第5のプローブの例であり、液面センサ51,54の一方が第3のプローブの例であり、液面センサ51,54の他方が第6のプローブの例である。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明は、電気分解によりフッ素ガス、水素ガス等の気体を発生するために利用することができる。
【符号の説明】
【0159】
1 電解槽
2 隔壁
3 陰極室
4 陽極室
5 陰極
6 陽極
7 水素ガス排出管
8 フッ素ガス排出管
7a 陰極出口
8a 陽極出口
9 HF吸着塔
10,14 流量調整弁
11,15,21 自動弁
12 減圧手段
13 HF吸着塔
16 減圧手段
20 HF供給管
22 オリフィス
23 バイパス弁
25,26,27 圧力計
30 電解浴
50 対極
50A,50B 液面検知装置
51,52,53 液面センサ(プローブ)
54,55,56 液面センサ(プローブ)
100 制御装置
121,161 加圧ポンプ
122,165 バキュームジェネレータ
130 水素ガス排気装置
162 容器(バッファタンク)
163 開閉弁
164 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解により第1の気体および第2の気体を発生させる気体発生装置であって、
第1室および第2室に区画され、電気分解される化合物を含む電解浴を収容する電解槽と、
前記第1室において発生された第1の気体を排出する第1の排出経路と、
前記第2室において発生された第2の気体を排出する第2の排出経路と、
前記第1の排出径路を開閉する第1の開閉手段と、
前記第2の排出径路を開閉する第2の開閉手段と、
前記第1室内の圧力を検出する第1の圧力検出手段と、
前記第2室内の圧力を検出する第2の圧力検出手段と、
前記第1室内の液面である第1液面の高さが基準液面高さを挟んで上方の第1の許容範囲および下方の第2の許容範囲のいずれにあるかを検出する第1の液面検出手段と、
前記第2室内の液面である第2液面の高さが前記第1の許容範囲および前記第2の許容範囲のいずれにあるかを検出する第2の液面検出手段と、
前記第1の液面検出手段および前記第2の液面検出手段ならびに前記第1の圧力検出手段および前記第2の圧力検出手段の検出結果に基づいて前記第1および第2の開閉手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする気体発生装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記第1の圧力検出手段により検出される圧力および前記第2の圧力検出手段により検出される圧力が設定圧以上であり、前記第1の液面検出手段により前記第1液面の高さが前記第1の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面の高さが前記第2の許容範囲にあることが検出された場合に、前記第1の開閉手段が前記第1の排出径路を閉じ、前記第2の開閉手段が前記第2の排出径路を開くように、前記第1および第2の開閉手段を制御し、
前記第1の圧力検出手段により検出される圧力および前記第2の圧力検出手段により検出される圧力が設定圧以上であり、前記第1の液面検出手段により前記第1液面の高さが前記第2の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面の高さが前記第1の許容範囲にあることが検出された場合に、前記第1の開閉手段が前記第1の排出径路を開き、前記第2の開閉手段が前記第2の排出径路を閉じるように、前記第1および第2の開閉手段を制御することを特徴とする請求項1記載の気体発生装置。
【請求項3】
前記第1室の容積は前記第2室の容積より大きく、
前記制御手段は、前記第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、前記第1の液面検出手段により前記第1液面の高さが前記第2の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面の高さが前記第1の許容範囲にあることが検出された場合に、前記第1の開閉手段が前記第1の排出径路を閉じ、前記第2の開閉手段が前記第2の排出径路を閉じるように、前記第1および第2の開閉手段を制御することを特徴とする請求項1または2記載の気体発生装置。
【請求項4】
前記第1室の容積は前記第2室の容積より大きく、
前記制御手段は、前記第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、前記第1の液面検出手段により前記第1液面の高さが前記第1の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面の高さが前記第2の許容範囲にあることが検出された場合に、前記第1の開閉手段が前記第1の排出径路を閉じ、前記第2の開閉手段が前記第2の排出径路を開くように、前記第1および第2の開閉手段を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の気体発生装置。
【請求項5】
前記第1室の容積は前記第2室の容積より大きく、
前記制御手段は、前記第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、前記第1の液面検出手段により前記第1液面の高さが前記第1の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面の高さが前記第1の許容範囲にあることが検出された場合に、前記第1の開閉手段が前記第1の排出径路を閉じ、前記第2の開閉手段が前記第2の排出径路を閉じるように、前記第1および第2の開閉手段を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の気体発生装置。
【請求項6】
前記第1の排出径路に前記第1の室内を減圧する減圧手段がさらに備えられ、
前記第1室の容積は前記第2室の容積と同じであり、
前記制御手段は、前記第1および第2の圧力検出手段により検出される圧力の少なくとも一方が設定圧よりも低く、前記第1の液面検出手段により前記第1液面が前記第1の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面が前記第2の許容範囲にあることが検出された場合に、前記第1の開閉手段が前記第1の排出径路を閉じ、前記第2の開閉手段が前記第2の排出径路を閉じるように、前記第1および第2の開閉手段を制御することを特徴とする請求項1または2記載の気体発生装置。
【請求項7】
前記電解槽内に前記化合物を供給する供給経路をさらに備え、
前記制御手段は、前記第1の液面検出手段により前記第1液面が前記第2の許容範囲にあることが検出されかつ前記第2の液面検出手段により前記第2液面が前記第2の許容範囲にあることが検出された場合に、前記電解槽内に化合物を供給するように前記供給径路を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の気体発生装置。
【請求項8】
前記第1の液面検出手段は、前記第1室内で下端が前記基準液面高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第1のプローブと、前記第1室内で下端が前記第1の許容範囲の上限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第2のプローブと、前記第1室内で下端が前記第2の許容範囲の下限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第3のプローブとを含み、前記第1、第2および第3のプローブによる液体の検出の有無に基づいて前記第1液面が前記第1の許容範囲および前記第2の許容範囲のいずれにあるかを検出し、
前記第2の液面検出手段は、前記第2室内で下端が前記基準液面高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第4のプローブと、前記第2室内で下端が前記第1の許容範囲の上限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第5のプローブと、前記第2室内で下端が前記第2の許容範囲の下限高さに位置するように設けられて液体の有無を検出する第6のプローブとを含み、前記第4、第5および第6のプローブによる液体の検出の有無に基づいて前記第2液面が前記第1の許容範囲および前記第2の許容範囲のいずれにあるかを検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の気体発生装置。
【請求項9】
前記第1および第2の気体の一方は水素であり、前記第1および第2の気体の他方はフッ素であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の気体発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−215932(P2010−215932A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60849(P2009−60849)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】