説明

気体透過膜及び空気電池

【課題】電池内部から電解液が漏れ出ることを防止し、かつ電解液に対して化学的に安定であるフッ素樹脂を含有する気体透過膜、及び該気体透過膜を有する空気電池の提供。
【解決手段】下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する気体透過膜である。


ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環のいずれかを有する特定の基、並びに下記構造式(2)で表される基のいずれかを表す。p、q、r、及びsは、それぞれ独立に、0〜30の整数を表し、p、q、r、及びsのいずれもが同時に0にはならない。p、q、r、及びsを繰返し単位数とする各構造単位は、ランダムな配列を取っていてもよく、ブロック化した配列を取っていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体透過膜及び該気体透過膜を有する空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、モバイルパソコン、電気自動車等の蓄電池として、リチウムイオン二次電池が広く使用されている。
リチウムイオン二次電池等の従来の電池は、正極及び負極のそれぞれの電極に、酸化還元反応を行う活物質を有している。正極及び負極のそれぞれの活物質は化学反応を起こすことでエネルギーを放出する。放出したエネルギーを電気エネルギーとして取り出すことで、電池はその機能を発現している。
しかし、リチウムイオン二次電池などの従来の電池は、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を考慮した場合、エネルギー密度がまだまだ十分とはいえない。
【0003】
そこで、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を従来の電池よりも大きくすることが可能な電池として空気電池が注目されている。
空気電池は、負極には負極活物質として、例えば金属を用い、正極には正極活物質として電池の外部に存在する空気中の酸素を利用している。空気中の酸素を正極活物質として利用しているため、ほぼ無限に正極活物質が存在するにもかかわらず空気電池における正極活物質の重量はゼロである。そのため、空気電池は、リチウムイオン二次電池等の従来型の電池と比べて、重量エネルギー密度及び体積エネルギー密度を大幅に向上させることが可能となり、より軽量、かつ小型にすることが可能となる。
【0004】
空気電池は、空気中の酸素を正極活物質として利用しているため、電池の内部へ空気を取り込む必要がある。そのため、空気電池の正極における外部の空気に接している部分には、空気の取込み口として空気孔が設けられている。空気電池においては、その空気孔から、電池内部の電解液が漏れ出ることがあり、これを防ぐ必要がある。
【0005】
そこで、電池内部から電解液が漏れ出ることを防止するために、フッ素樹脂を空気電池の空気拡散多孔性膜に添加する手法が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、この提案に用いたフッ素樹脂は、分子内にエステル結合を有していることから電池内部からの電解液により、容易に加水分解されてしまい、電池機能を持続することが難しいという問題がある。
【0006】
したがって、電池内部から電解液が漏れ出ることを防止でき、かつ電解液に対して化学的に安定であるフッ素樹脂を含有する気体透過膜及び該気体透過膜を有する空気電池の提供が求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−198318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電池内部から電解液が漏れ出ることを防止でき、かつ電解液に対して化学的に安定であるフッ素樹脂を含有する気体透過膜及び該気体透過膜を有する空気電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の気体透過膜は、下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、(i)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環のいずれか、(ii)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含み、カルボニル基、エーテル基、及びカルボニル基とエーテル基のいずれかを含んでいてもよく、二重結合、三重結合、及び二重結合と三重結合のいずれかを含んでいてもよく、枝分かれしていてもよい一価の脂肪族炭化水素基、(iii)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含む一価の芳香族炭化水素基、(iv)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として1個以上含む一価の複素環式芳香族炭化水素基、並びに(v)下記構造式(2)で表される基、からなる群から選ばれた基を表す。p、q、r、及びsは、それぞれ独立に、0〜30の整数を表し、p、q、r、及びsのいずれもが同時に0にはならない。p、q、r、及びsを繰返し単位数とする各構造単位は、ランダムな配列を取っていてもよく、ブロック化した配列を取っていてもよい。
【化2】

開示の空気電池は、開示の気体透過膜を有する。
【発明の効果】
【0010】
開示の気体透過膜によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、電池内部から電解液が漏れ出ることを防止し、かつ電解液に対して化学的に安定であるフッ素樹脂を含有しており、電池機能を十分に持続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、コイン形の空気電池を表す断面模式図である。
【図2】図2は、超臨界精製前と超臨界精製後のフッ素樹脂の分子量分布を示すグラフである。
【図3】図3は、調製例1におけるフッ素樹脂1のFTIRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(気体透過膜)
本発明の気体透過膜は、フッ素樹脂を含有してなり、基材と、フッ素樹脂を含有する被膜とを有することが好ましく、更に必要に応じてその他の部材を有してなる。
【0013】
<フッ素樹脂を含有する被膜>
前記フッ素樹脂を含有する被膜は、フッ素樹脂を少なくとも含有し、更に必要に応じ、その他の成分を含有する。
【0014】
−フッ素樹脂−
前記フッ素樹脂は、下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂である。
【化3】

ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、(i)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環のいずれか、(ii)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含み、カルボニル基、エーテル基、及びカルボニル基とエーテル基のいずれかを含んでいてもよく、二重結合、三重結合、及び二重結合と三重結合のいずれかを含んでいてもよく、枝分かれしていてもよい一価の脂肪族炭化水素基、(iii)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含む一価の芳香族炭化水素基、(iv)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含む一価の複素環式芳香族炭化水素基、並びに(v)下記構造式(2)で表される基、からなる群から選ばれた基を表す。p、q、r、及びsは、それぞれ独立に、0〜30の整数を表し、p、q、r、及びsのいずれもが同時に0にはならない。p、q、r、及びsを繰返し単位数とする各構造単位は、ランダムな配列を取っていてもよく、ブロック化した配列を取っていてもよい。
【化4】

【0015】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の前記X及びYが、ヒドロキシル基を含む基、カルボキシル基を含む基、アミノ基を含む基、フォスファゼン環を含む基、及び前記構造式(2)で表される基のいずれかであることにより、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の末端部分において、分極(電荷の偏り)が生じるため、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂は、前記基材の表面に吸着しやすくなる。そのため、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂は、前記基材上で非常に薄い被膜を形成することが可能となる。また、前記被膜は、前記吸着による効果のため、溶剤などで洗浄しても前記基材から剥離することはない。
一方、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの、末端に前記基を有さないフッ素樹脂においては、その末端部分において分極がほとんど生じていないため、前記基材の表面への吸着がほとんど起こらない。そのため、PTFEの場合には、前記基材上に薄くかつ洗浄により剥離しない被膜を形成することはできない。
【0016】
前記一般式(1)中、前記X及びYは、末端の分極が大きく、吸着力が高い点から、それぞれ独立に、ヒドロキシル基を置換基として一個以上含み、エーテル基を含んでいてもよい一価の脂肪族炭化水素基が好ましく、ヒドロキシアルキル基がより好ましく、ヒドロキシメチル基が特に好ましい。
【0017】
前記一般式(1)中、前記p、q、r、及びsは、薄膜形成が可能な点から、p=0〜5、q=8〜30、r=8〜30、及びs=0〜5が好ましく、p=0、q=8〜25、r=8〜25、及びs=0がより好ましい。
前記一般式(1)中、qとrとの比は、合成の容易性の点から、q/r=0.8〜1.2が好ましく、0.9〜1.1がより好ましい。
【0018】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の平均分子量(AMU)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1,000〜6,000が好ましく、1,500〜5,000がより好ましく、2,000〜4,000が特に好ましい。前記平均分子量が、1,000未満であると、粘度が低く、被膜の形成が困難となることがあり、6,000を超えると、溶媒への溶解性が低下して、被膜の形成が困難となることがある。前記平均分子量が、前記特に好ましい範囲であると、被膜の形成が容易な点で有利である。
ここで、前記平均分子量(AMU)は、MAN PF30/17(H−NMRを用いる測定方法)の規定に従って測定される平均分子量である。
【0019】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の表面張力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30dyne/cm以下が好ましく、20dyne/cm〜25dyne/cmがより好ましい。前記表面張力が、30dyne/cmを超えると、電解液の漏液を防止する効果が低下することがある。前記表面張力が、前記より好ましい範囲であると、電解液の漏液の防止の点で有利である。
ここで、前記表面張力は、20℃においてASTM D1331に準拠して測定される表面張力である。
【0020】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の表面自由エネルギーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40mN/m以下が好ましく、10mN/m〜30mN/mがより好ましい。前記表面張力が、40mN/mを超えると、電解液の漏液を防止する効果が低下することがある。前記表面自由エネルギーが、前記より好ましい範囲であると、電解液の漏液の防止の点で有利である。
ここで、前記表面自由エネルギーは、例えば、水とジヨードメタンを用いて、接触角計により測定することができる。
【0021】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂は、合成したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の市販品としては、例えば、FOMBLINZDOL2000(平均分子量(AMU)2,000)、FOMBLINZDOL2500(平均分子量(AMU)2,500)、FOMBLINZDOL4000(平均分子量(AMU)4,000)、FOMBLINZDOLTX(平均分子量(AMU)2,200)、FOMBLINAM2001(平均分子量(AMU)2,400)、FOMBLINAM3001(平均分子量(AMU)3,200)(いずれも、ソルベイソレクシス社製、イタリア)などが挙げられる。
【0022】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂は、精製したものを用いることが好ましい。精製方法としては、例えば、溶媒精製、超臨界精製などが挙げられる。前記溶媒精製で用いる溶媒としては、例えば、ジオキサン、純水、などが挙げられる。
前記超臨界精製では、二酸化炭素超臨界抽出により、特定の分子量のフッ素樹脂を抽出することができる。この超臨界精製により、分子量分布がシャープになり、性能を向上させることができる。
【0023】
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm〜20nmが好ましく、7nm〜15nmがより好ましい。前記平均厚みが、5nm未満であると、被覆部位において被覆されていない箇所が生じ、電解液の漏液を防止する効果が低下することがあり、20nmを超えると、複数の分子が積層した箇所が生じ、導通性能が低下することがある。前記平均厚みが、前記より好ましい範囲であると、電解液の漏液の防止の点、及び導通の点で有利である。
ここで、前記平均厚みは、FTIR測定によるCF振動伸縮強度を検量線と対比することで求めることができる。
【0024】
−基材−
前記基材の形状、構造、大きさ、材質等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、膜状、シート状などが挙げられる。前記構造としては、単層構造、積層構造などが挙げられる。前記大きさとしては、用途等に応じて適宜選択することができる。
前記基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カーボンペーパー、ろ紙、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙、ガラス繊維濾紙等の紙、合成紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、合成樹脂製シート(フィルム)、などが挙げられる。
前記基材の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10μm〜500μmが好ましい。
【0025】
−一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜の形成方法−
前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜を前記基材上に形成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、浸漬塗装、スプレー塗装、スピンコート、ローラー塗装などが挙げられる。これらの中でも、薄い被膜を均一に形成可能な点で、浸漬塗装が好ましい。
【0026】
−−浸漬塗装−−
前記浸漬塗装の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を所定の濃度で含有する浸漬液に前記基材を浸漬させた後に、所定の引上げ速度で前記基材を前記浸漬液から引き上げる方法が挙げられる。
【0027】
前記浸漬液は、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂と、溶媒とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、その他の成分を含有する。
【0028】
前記溶媒としては、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を溶解する溶媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素系溶媒などが挙げられる。前記フッ素系溶媒としては、例えば、パーフルオロカーボン(PFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロエーテル(HFE)などが挙げられる。
前記フッ素系溶媒の市販品としては、例えば、PF−5060、PF−5080、HFE−7100、HFE−7200、HFE−7300(いずれも、住友スリーエム株式会社製)、バートレルXF(三井デュポンフロロケミカル株式会社製、CFCHFCHFCFCF)などが挙げられる。
【0029】
前記浸漬液における前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.005質量%〜3質量%が好ましく、0.01質量%〜1質量%がより好ましい。前記濃度が、0.005質量%未満であると、濃度が低いため前記浸漬塗装により得られる前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜が薄くなりすぎ、前記基材上に被膜が形成されない箇所ができるなど、前記被膜の厚みにむらが生じることがあり、3質量%を超えると、濃度が高いため前記浸漬塗装により得られる前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜が厚くなりすぎ、前記被膜の厚みにむらが生じることがある。前記濃度が、前記より好ましい範囲であると、均一な厚みの前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜が得られる点で有利である。
【0030】
前記浸漬塗装における前記基材の前記浸漬液からの引上げ速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50mm/s〜500mm/sが好ましく、100mm/s〜400mm/sがより好ましい。前記引上げ速度が、50mm/s未満であると、引上げ速度が低いため前記浸漬塗装により得られる前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜が薄くなりすぎ、前記基材上に被膜が形成されない箇所ができるなど、前記被膜の厚みにむらが生じることがあり、500mm/sを超えると、引上げ速度が高いため前記浸漬塗装により得られる前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜が厚くなりすぎ、前記被膜の厚みにむらが生じることがある。前記引上げ速度が、前記より好ましい範囲であると、均一な厚みの前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する被膜が得られる点で有利である。
【0031】
前記浸漬塗装においては、前記基材を前記浸漬液から引き上げた後、必要に応じて前記基材を乾燥させることができる。前記乾燥の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
前記気体透過膜は、電池内部から電解液が漏れ出ることを防止し、かつ電解液に対して化学的に安定であるフッ素樹脂を含有しているので、各種用途に用いることができるが、空気電池用の気体透過膜として空気電池に特に好適に用いることができる。
【0033】
(空気電池)
本発明の空気電池は、正極ケースと、正極触媒と、セパレータと、負極活物質と、負極ケースと、前記正極ケースと前記正極触媒の間に気体透過膜とを有し、電解液、集電体、ガスケット、更に必要に応じて、その他の部材を有する。
前記気体透過膜は、本発明の前記気体透過膜である。
前記空気電池においては、前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有する気体透過膜を用いているので、前記フッ素樹脂を正極ケースに塗布する場合よりも、比表面積を大きくでき、撥水性を顕著に向上させることができる。
【0034】
<正極ケース>
前記正極ケースは、空気が出入りする空気孔が形成された金属部材を有し、更に必要に応じて、その他の部材を有してなる。前記正極ケースは、正極端子を兼ねている。
【0035】
−金属部材−
前記金属部材は、空気が出入りする空気孔が形成された金属部材であれば、その材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属部材の材質としては、例えば、銅、ステンレス鋼、ステンレス鋼又は鉄にニッケルなどのめっきを施した金属などが挙げられる。
前記金属部材の形状としては、例えば、周囲が反り上がった底の浅い皿状、有底円筒形、有底角柱状などが挙げられる。
前記金属部材の大きさとしては、空気電池に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属部材の構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。前記積層構造としては、例えば、ニッケルとステンレス鋼と銅の3層構造などが挙げられる。
前記金属部材は、通常、底部に前記空気孔を有している。前記空気孔の数は、1つであってもよく、複数であってもよい。前記空気孔の開口部の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、菱形状などが挙げられる。前記空気孔の開口部の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金属部材における前記空気孔の作製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属部材を金型により打抜き加工して空気孔を作製する方法、金属線を織って網目状にすることで、所定の形状の金属部材と空気孔を同時に作製する方法などが挙げられる。
【0036】
<正極触媒>
前記正極触媒の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記正極触媒の材質としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、活性炭と二酸化マンガン等のマンガン酸化物との混合物などが挙げられる。
前記正極触媒の形状としては、例えば、シート状が挙げられる。前記正極触媒をシート状にする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭とマンガン酸化物との混合物を正極触媒とする場合には、活性炭と、マンガン酸化物と、導電性材料としての膨張化黒鉛と、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン粉末とを混合し、シート状に形成する方法が挙げられる。
【0037】
<電解液>
前記電解液としては、特に制限はなく、適宜目的に応じて選択することができ、例えば、有機溶媒及び電解質を含有する電解液、イオン液体などが挙げられる。
前記電解液としては、水を含まない非水電解液が好ましい。
【0038】
−有機溶媒−
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、環状カーボネート、鎖状カーボネート等のカーボネート系有機溶媒、環状エステル、鎖状エステル等のエステル系有機溶媒、環状エーテル、鎖状エーテル等のエーテル系有機溶媒などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、カーボネート系有機溶媒が、電解質の溶解力が高い点で好ましい。
前記環状カーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニレンカーボネート(VC)などが挙げられる。
前記鎖状カーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネートなどが挙げられる。
前記環状エステルとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(γBL)、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどが挙げられる。
前記鎖状エステルとしては、例えば、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルなどが挙げられる。
前記環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキソランなどが挙げられる。
前記鎖状エーテルとしては、例えば、1,2−ジメトシキエタン(DME)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、テトラエチレングリコールジアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0039】
−電解質−
前記電解質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イオンサイズが小さい点、及び負極活物質にリチウムを用いる場合に系が単純になる点でリチウム塩が好ましい。前記リチウム塩としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)、ホウ弗化リチウム(LiBF)、六弗化砒素リチウム(LiAsF)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビストリフルオロメチルスルホニルイミド(LiN(CSO)、リチウムビスファーフルオロエチルスルホニルイミド(LiN(CFSO)などが挙げられる。
前記電解質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記電解質の濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記有機溶媒中に、0.5mol/L〜3mol/Lであることがイオン伝導度の点で好ましい。
【0040】
−イオン液体−
前記イオン液体としては、常温(25℃)において溶融状態にあるイオン性物質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記イオン液体は、カチオンとアニオンとの塩である。
前記カチオンとしては、例えば、イミダゾリウム、アンモニウム、ピリジニウム、ピペリジニウムなどが挙げられる。前記イミダゾリウムとしては、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム(MOI)などが挙げられる。前記アンモニウムとしては、例えば、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。前記ピリジニウムとしては、例えば、1−ブチル−3−メチルピリジニウム、1−ブチルピリジニウムなどが挙げられる。前記ピペリジニウムとしては、例えば、1−エチル−1−メチルピペリジニウムなどが挙げられる。
前記アニオンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド(TFSI)、ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)イミド(BETI)等のイミドアニオン、テトラフルオロボレート、パークロレート、ハロゲンアニオン等の無機アニオンなどが挙げられる。
【0041】
<集電体>
前記集電体の材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記集電体の材質としては、導電性材料で形成されたものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。
前記集電体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酸素の拡散を速やかに行わせる点から、網状、メッシュ状などの多孔体が好ましい。
前記集電体の大きさとしては、前記空気電池に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記集電体の構造としては、酸化を抑制する点から、その表面に耐酸化性の金属及び合金のいずれかの被膜を被覆した構造が好ましい。
【0042】
<負極活物質>
前記負極活物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属元素を有するものが挙げられる。
前記アルカリ金属元素を有するものとしては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物、金属窒化物などが挙げられる。前記金属単体としては、例えば、リチウムなどが挙げられる。前記合金としては、例えば、リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等のリチウム元素を有する合金が挙げられる。前記金属酸化物としては、例えば、リチウムチタン酸化物等のリチウム元素を有する金属酸化物が挙げられる。前記金属窒化物としては、例えば、リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等のリチウム元素を含有する金属窒化物が挙げられる。
【0043】
前記負極活物質は、前記空気電池において、それ自体単独で用いてもよいし、結着剤と混合した混合物として用いてもよい。
前記結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ブタジエンゴム(EPBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
【0044】
<負極ケース>
前記負極ケースの材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極ケースの材質としては、例えば、銅、ステンレス鋼、ステンレス鋼、又は鉄にニッケル等のめっきを施した金属などが挙げられる。
前記負極ケースの形状としては、例えば、周囲が反り上がった底の浅い皿状、有底円筒形、有底角柱状などが挙げられる。
前記負極ケースの大きさとしては、前記空気電池に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記負極ケースの構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。前記積層構造としては、例えば、ニッケルとステンレス鋼と銅の3層構造などが挙げられる。
【0045】
<セパレータ>
前記セパレータの材質、形状、大きさ、構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記セパレータの材質としては、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布などが挙げられる。
前記セパレータの形状としては、例えば、シート状が挙げられる。
前記セパレータの大きさとしては、前記空気電池に使用可能な大きさであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記セパレータの構造は、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0046】
<ガスケット>
前記ガスケットとしては、前記正極ケースと前記負極ケースとの絶縁を保つことができる材質であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等の弗素樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0047】
ここで、図1は、コイン形の空気電池を表す断面模式図である。空気電池10は、空気孔4を有する正極ケース1に、気体透過膜5、正極触媒6、セパレータ7、負極活物質8、及び負極ケース3を重ね合わせ、前記正極ケース1と前記負極ケース3との間をガスケット2で封止した構造となっている。なお、前記正極触媒6、前記セパレータ7、及び前記負極活物質8は、電解液(不図示)に浸っている。
【0048】
−形状−
前記空気電池の形状は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コイン型空気電池、ボタン型空気電池、シート型空気電池、積層型空気電池、円筒型空気電池、偏平型空気電池、角型空気電池などが挙げられる。
【0049】
−用途−
前記空気電池は、例えば、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器用途、小型電子機器、補聴器、ハイブリッド自動車、電気自動車、分散型家庭用電源、分散型事業用電源、電力貯蔵用電池などに幅広く利用可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0051】
(調製例1)
<フッ素樹脂の調製>
実施例に用いた前記一般式(1)で表されるフッ素樹脂は表1に記載のとおりである。これらフッ素樹脂は、以下の溶媒精製及び超臨界精製により精製したものを用いた。
【0052】
【表1】

(*)フッ素樹脂5及びフッ素樹脂6におけるX及びYは、下記構造式(2)で表される基である。
【化5】

【0053】
−溶媒精製−
1L分液ロートに、フッ素樹脂100g、ジオキサン(関東化学株式会社製)375mL、及び純水125mLを加え、室温で5分攪拌した後、18時間放置した。その後、上層は廃棄し、下層を200mLナスフラスコへ移し、ロータリーエバポレーターを用いて、90℃以上、10mbar、及び4時間の条件で、溶媒を取り除き、精製した。
【0054】
−超臨界精製−
溶媒精製したフッ素樹脂を、二酸化炭素超臨界抽出により、分子量2,000のものを抽出した。抽出装置には日本分光株式会社製超臨界流体システム(SCF series)を用いて、抽出温度を80℃、抽出圧力を15MPa〜20MPaとした。
分子量の確認は、GPC(alliance2695、ウォーターズ社製)により抽出物の分子量を測定した。この時、検出器に、ELS2000(Polymer Laboratories社製)を用いた。また、分子量の公正は、Easical_PM−1/ポリメチルメタクリレート(Polymer Laboratories社製)で行った。図2に超臨界精製前と超臨界精製後のフッ素樹脂の分子量分布を示す。図2の結果から、超臨界精製により、分子量分布がシャープになることが分かった。
【0055】
【表2】

【0056】
(実施例1)
<気体透過膜の作製>
超臨界精製後のフッ素樹脂1をバートレルXF(三井デュポンフロロケミカル社製、CFCHFCHFCFCF)に溶解させ、前記フッ素樹脂1の濃度が0.1質量%の含浸液を作製した。作製した含浸液にカーボンペーパー(東レインターナショナル株式会社製、TGP−H−120、厚み350μm)を浸漬させた後、該カーボンペーパーを、ベーク炉を用い120℃で1時間加熱することにより、前記カーボンペーパー上に、前記フッ素樹脂1の被膜を形成し、気体透過膜を作製した。得られた気体透過膜をバートレルXF(三井デュポンフロロケミカル社製、CFCHFCHFCFCF)で10分間洗浄した。
作製した気体透過膜について、以下のようにして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0057】
<表面自由エネルギーの測定>
接触角計(協和界面科学株式会社製、CA−W150)を用いて、水(1μL、n=5)とジヨードメタン(関東化学株式会社製、1μL、n=5)をプローブ溶媒とし、表面と液滴との間の接触角を測定し、フォークスの式により表面自由エネルギーを算出した。
【0058】
<フッ素樹脂被膜の平均厚みの測定>
以下の方法によりフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定したところ、被膜の平均厚みは10nmであった。
−平均厚み−
赤外分光装置(Mattson社製、infinity)を用いて、被膜を100回測定して、FTIRによる波数1,300cm−1付近のCF振動伸縮強度の平均値を算出した。
算出したCF振動伸縮強度の平均値を、以下により求めた検量線と対比することで、被膜の平均厚みを求めた。
−−検量線−−
フッ素樹脂濃度が異なる3種の浸漬液(フッ素樹脂濃度0.01質量%、0.02質量%、0.03質量%)を調製し、それぞれの浸漬液について3種の引上げ速度(50mm/s、200mm/s、500mm/s)で浸漬塗装を行って基材としてのカーボンペーパー上にフッ素樹脂を形成し、気体透過膜を作製した。そして、作製した気体透過膜について、FTIRによるCF振動伸縮強度を測定し、更に厚みを分光エリプソメーター(ファイブラボ社製、MARY−102)により測定し、CF振動伸縮強度と厚みから検量線を作製した。
なお、表3にFTIRにより測定したフッ素樹脂被膜の厚みを示す。
例示として、フッ素樹脂1のFTIRチャートを図3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
(実施例2〜6)
実施例1において、フッ素樹脂1を、調製例1の表1の超臨界精製後のフッ素樹脂2〜6に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜6の気体透過膜を作製した。
作製した各気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0061】
(実施例7)
実施例1において、フッ素樹脂被膜の平均厚みを7nmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0062】
(実施例8)
実施例1において、フッ素樹脂被膜の平均厚みを4nmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例8の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0063】
(実施例9)
実施例1、フッ素樹脂被膜の平均厚みを15nmとした以外は、実施例1と同等にして、実施例9の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0064】
(実施例10)
実施例1において、フッ素樹脂被膜の平均厚みを21nmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例10の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0065】
(実施例11)
実施例1において、カーボンペーパーを、ガラス繊維濾紙(GF/C、ワットマン社製、厚さ:0.26mm)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例11の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0066】
(実施例12)
実施例1において、フッ素樹脂1を、超臨界精製を行っていないフッ素樹脂1に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例12の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0067】
(比較例1)
実施例1において、カーボンペーパーをフッ素樹脂1で浸漬せずフッ素樹脂被膜を設けない以外は、実施例1と同様にして、比較例1の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0068】
(比較例2)
実施例1において、フッ素樹脂1を、PTFE(三井デュポンフルオロケミカル株式会社製、31−JR)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の気体透過膜を作製した。
作製した気体透過膜について、実施例1と同様にして、表面自由エネルギー及びフッ素樹脂被膜の平均厚みを測定した。結果を表4に示す。
【0069】
【表4】

【0070】
(実施例13)
<空気電池の作製>
実施例1で作製した気体透過膜を用いて、2464のコイン電池(空気電池)を作製した。
前記コイン電池に用いた各種材料は以下の通りである。
・負極活物質:厚み0.1mmのリチウム箔
・セパレータ:ポリエチレン
・電解液:ヘキサフルオロリン酸リチウムのカーボネート溶液・・0.2mL
(キシダ化学社製、1M-LiPF/PC、電解質の濃度1mol/L)
・正極触媒:活性炭
・負極ケース:ステンレス
・正極ケース:(ステンレス製、目幅が0.1mmのメッシュによる碁盤目状の空気孔を有する)
・ガスケット:ポリエチレン
【0071】
作製した実施例13の空気電池について、以下のようにして、電解液の漏れ、及び導通性を評価した。結果を表5に示す。
【0072】
<電解液の漏れ>
作製した空気電池を正極側が重力方向(下側)になるようにして24時間放置した。
24時間放置後の空気電池を目視で確認し電解液の漏れの有無を確認した。また、試験前後の空気電池の重量を測定し、重量減少率を求めた。
【0073】
<導通性>
作製した空気電池の電圧をテスター(カスタム社製、CDM−2000D)を用いて測定した。なお、フッ素樹脂被膜を形成していない空気電池(2464のコイン電池)の電圧は、1.5Vであった。
【0074】
(実施例14)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例2で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例14の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0075】
(実施例15)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例3で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例15の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0076】
(実施例16)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例4で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例16の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0077】
(実施例17)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例5で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例17の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0078】
(実施例18)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例6で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例18の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0079】
(実施例19)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例7で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例19の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0080】
(実施例20)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例8で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例20の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0081】
(実施例21)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例9で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例21の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0082】
(実施例22)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例10で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例22の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0083】
(実施例23)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例11で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例23の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0084】
(実施例24)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、実施例12で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、実施例24の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0085】
(比較例3)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、比較例1で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、比較例3の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0086】
(比較例4)
<空気電池の作製>
実施例13において、気体透過膜を、比較例2で作製した気体透過膜に代えた以外は、実施例13と同様にして、比較例4の空気電池を作製した。
作製した空気電池について、実施例13と同様の評価を行った。結果を表5に示す。
【0087】
【表5】

【符号の説明】
【0088】
1 正極ケース
2 ガスケット
3 負極ケース
4 空気孔
5 気体透過膜
6 正極触媒
7 セパレータ
8 負極活物質
10 空気電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフッ素樹脂を含有することを特徴とする気体透過膜。
【化1】

ただし、前記一般式(1)中、X及びYは、それぞれ独立に、(i)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環のいずれか、(ii)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含み、カルボニル基、エーテル基、及びカルボニル基とエーテル基のいずれかを含んでいてもよく、二重結合、三重結合、及び二重結合と三重結合のいずれかを含んでいてもよく、枝分かれしていてもよい一価の脂肪族炭化水素基、(iii)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として一個以上含む一価の芳香族炭化水素基、(iv)ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、及びフォスファゼン環からなる群から選ばれた基を置換基として1個以上含む一価の複素環式芳香族炭化水素基、並びに(v)下記構造式(2)で表される基、からなる群から選ばれた基を表す。p、q、r、及びsは、それぞれ独立に、0〜30の整数を表し、p、q、r、及びsのいずれもが同時に0にはならない。p、q、r、及びsを繰返し単位数とする各構造単位は、ランダムな配列を取っていてもよく、ブロック化した配列を取っていてもよい。
【化2】

【請求項2】
一般式(1)中、X及びYが、それぞれ独立に、ヒドロキシル基を置換基として一個以上含み、エーテル基を含んでいてもよい一価の脂肪族炭化水素基である請求項1に記載の気体透過膜。
【請求項3】
一般式(1)中、p=0〜5、q=8〜30、r=8〜30、及びs=0〜5である請求項1から2のいずれかに記載の気体透過膜。
【請求項4】
超臨界精製処理したフッ素樹脂を含有する請求項1から3のいずれかに記載の気体透過膜。
【請求項5】
基材と、フッ素樹脂を含有する被膜とを有し、該被膜の平均厚みが、5nm〜20nmである請求項1から4のいずれかに記載の気体透過膜。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の気体透過膜を有することを特徴とする空気電池。
【請求項7】
正極ケースと、正極触媒と、セパレータと、負極活物質と、負極ケースとを有し、前記正極ケースと前記正極触媒との間に気体透過膜を有する請求項6に記載の空気電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171962(P2012−171962A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31644(P2011−31644)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】