説明

気密シート及びその施工方法

【課題】従来と変わらない、あるいは、それよりも簡便な方法にて、天井と外壁との取り合い部における気密性を十分に確保することができる、気密シート及びその施工方法を提供すること。
【解決手段】幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされていることを特徴とする気密シート1であり、二つ折りして成る一半部の中間部に二つ折り線と平行な折れ癖線3が設けられる。また、、幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされている気密シートの折り返し部を上にして、天井下地施工前に折り返し部4を天井設置部より上に位置する桁に固定すると共に断熱材に面する後側シート8の中間部を下地材12に固定し、フリーに垂れ下がっている前側シート7の下半部を持ち上げて野縁16に固定した後、野縁16に固定された前側シート7の下半部を挟んで野縁16に天井下地を打ち付けることを特徴とする気密シートの施工方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気密シート及びその施工方法、より詳細には、高気密住宅仕様にするために、天井と外壁との取り合い部に張設される樹脂製の気密シート及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年住宅の建築手法において省エネ効果、温熱環境及び空気環境の向上を目的として高気密・高断熱が行なわれるケースが増えてきている。この手法においては、住宅の床・壁・天井(いわゆる住宅の外皮部)の気密・断熱化を図ることが必要となり、そのために、屋根又は天井と壁との取り合い部や壁と床との取り合い部、あるいは、壁の隅角部等に、通例ポリエチレン製の気密シート(フィルム)が張設される。
【0003】
この気密シートの張設作業は、特に天井と外壁との取り合い部について行う場合の気密性処理に手間がかかる。即ち、その作業は一般に、図4に示すように、気密シート31を、その上端部を天井設置部より上に位置する桁32に固定することにより、断熱材33を覆うように先張りし、次いで、外周部分が垂れ下がるようにして気密シート34を、各野縁36の下面に打ち付けることによって張設する。
【0004】
その際、気密シート34の外周垂れ下がり部35を、下地材37のある部分で少なくとも100mm、先張りした気密シート31に重ね合わせて留め付ける。そして、天井と外壁との取り合い部における気密性確保のために、気密シート34の外周垂れ下がり部35端部を隈なくテープ止めする。
【0005】
従来の気密シートの張設作業は、このようにして行われることが多いが、この方法によった場合は、先張り気密シート31と気密シート34の外周垂れ下がり部35との重合留め付け部分における気密性確保のためのテープ止め作業に手間がかかり、このテープ止めにミスがあると、気密性に支障をきたすという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平7−286418号公報
【特許文献2】特開平8−135033号公報
【特許文献3】特開平11−336240号公報
【特許文献4】特開2004−225420号公報
【特許文献5】特開2007−71009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の気密シートの施工方法の場合には、特に天井と外壁との取り合い部における気密性確保、即ち、既設気密シートと天井下地から垂れ下がる気密シートの重合部分における気密性の確保が難しく、また、そのための作業に手間がかかるという問題があったので、本発明はそのような問題のない、即ち、従来と変わらない、あるいは、それよりも簡便な方法にて、天井と外壁との取り合い部における気密性を十分に確保することができる、気密シート及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされていることを特徴とする気密シートであり、好ましい実施形態においては、二つ折りして成る一半部の中間部に、二つ折り線と平行な折れ癖線が設けられる。二つ折り状態における幅は、例えば約500mmとなるように形成される。
【0009】
好ましくは気密シートは、ポリエチレン等の樹脂製長尺袋状体の成形時に、その長さ方向に切れ目を入れることで二つ折り状態にした後、ロール巻きして製造される。
【0010】
上記課題を解決するための請求項5に記載の発明は、幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされている気密シートの折り返し部を上にして、天井下地施工前に、前記折り返し部を天井設置部より上に位置する桁に固定すると共に、断熱材に面する後側シートの中間部を下地材に固定し、フリーに垂れ下がっている前側シートの下半部を持ち上げて野縁に固定した後、前記野縁に固定された前側シートの下半部を挟んで前記野縁に天井下地を打ち付けることを特徴とする気密シートの施工方法である。
【0011】
前記気密シートとして、二つ折りされて成る一半部である前記前側シートの中間部に、二つ折り線と平行な折れ癖線を設けたものを用い、前記前側シートの下半部の持ち上げを前記折れ癖線に沿って行うこととすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のとおりであって、気密シートは幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされているので、その折り返し部を上にして、天井下地施工前に前記折り返し部を天井設置部より上に位置する桁に固定すると共に、後側シートの中間部を下地材に留め付けておき、天井下地施工時に、フリーに垂れ下がっている前側シートの下半部を持ち上げて野縁に固定した後、野縁に固定された前側シートの下半部を挟んで野縁に天井下地を打ち付ける、という簡単な作業で施工でき、しかも、後側シートを断熱材に被装される気密シートに重合させることと、天井と外壁との取り合い部に折り返し部が存在することとにより、天井と外壁との取り合い部における気密保持が確実なものとなる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態につき、図面に依拠して説明する。本発明に係る気密シート1は、幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされていることを特徴とするものであり、例えば、二つ折り状態における幅が約500mmとなるように形成される。そして、好ましくは、二つ折りされて成る一半部の中間部に、折り返し線2と平行な折れ癖線3が形成される。
【0014】
気密シート1は、好ましくは図1に示されるように、ポリエチレン等の樹脂製長尺袋状体5(図1(A))の成形時に、その長さ方向に切れ目6を入れる(図1(B))ことにより、二つ折り状態に形成することができる。このようにして切れ目6を入れて二つ折り状態にし、好ましくは、その後一半部の中間部に折り返し線2と平行な折れ癖線3を設けたもの(図1(C))をロール巻に形成し、そのまま現場に持ち込んで、所望長さに切断して使用する。
【0015】
次に、このようにして製造された気密シート1の張設施工方法につき、図2乃至4を参照しつつ説明する。断熱材15を被装するように張設される気密シート11の張設作業は、この気密シート1の張設作業に先立って行ってもよいし(その場合は気密シート1が上側になる)、その後に行うこととしてもよい(その場合は気密シート11が上側になる)。
【0016】
気密シート1は、天井下地14の施工前に、その折り返し部4を上にし、先張りの気密シート11がある場合はその上に重ねて、折り返し部4を天井設置部より上に位置する桁13に留め付ける(図2)。その留め付けは、通例、折り返し部4における前後両側のシート7、8を重ね、その上からタッカー止めしたり、押さえ材を打ち付けたりして行われる。
【0017】
次いで、垂れ下がっている後側シート8の中間部を下地材12に、上記同様の方法によって留め付ける。その場合、先張りの気密シート11があるときは、その上から下地材12に固定することになる。断熱材15の気密シート11を後から張設する場合は、気密シート11は気密シート1の後側シート8の上に張設することになる。なお、必要に応じ、気密シート1と気密シート11の端部合わせ目を、適宜テープ止めする。
【0018】
そして、天井下地14の施工時には、垂れ下がっている前側シート7の下半部を持ち上げて各野縁16の下面に当て、タッカー止め等によって固定していく。次いで、天井下地14上にくる気密シート17を野縁16に留め付けた後、天井下地14を、前側シート7の下半部及び気密シート17を挟んで野縁16に打ち付けることで、天井下地14の施工完了となる(図3)。なお、気密シート17は、予め天井下地14上に被装しておいてもよい。
【0019】
このように、本発明に係る施工方法によれば、天井下地14の施工前に、気密シート1の折り返し部4を天井設置部より上に位置する桁13に固定すると共に、後側シート8の中間部を、下地材12に留め付けるだけで先張りしておくことができる。そして、その後の天井下地14を野縁16に打ち付ける作業(及び気密シート17の留め付け作業)は、垂れ下がっている前側シート7の下半部を持ち上げて野縁16に留め付けた状態で行うことができるので、当該作業は容易且つ迅速に行うことが可能となる。前側シート7に折れ癖線3を設けてあるときは、野縁16への留め付けに際してその下半部を持ち上げる作業が容易となる。
【0020】
この施工方法の場合は、後側シート8が先張りの気密シート11の上に重なり、あるいは、その上に後張りの気密シート11が重なり、且つ、天井と外壁との取り合い部上方に折り返し部4が存在することとなるために、その後何らの付加的作業を伴うことなく、その部分の気密性を確実に保持することが可能となるという、優れた効果を奏する。
【0021】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る気密シート及びその製造方法の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る気密シートの施工方法の第1工程を示す図である。
【図3】本発明に係る気密シートの施工方法の第2工程を示す図である。
【図4】従来の気密シートの施工方法を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 気密シート
2 折り返し線
3 折れ癖線
4 折り返し部
5 長尺袋状体
6 切れ目
7 前側シート
8 後側シート
11 気密シート
12 下地材
13 桁
14 天井下地
15 断熱材
16 野縁
17 気密シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされていることを特徴とする気密シート。
【請求項2】
二つ折りされて成る一半部の中間部に二つ折り線と平行な折れ癖線を設けた、請求項1に記載の気密シート。
【請求項3】
二つ折り状態における幅が約500mmである、請求項1又は2に記載の気密シート。
【請求項4】
ポリエチレン等の樹脂製長尺袋状体を、その成形時にその長さ方向に切れ目を入れることで二つ折り状態にした後、ロール巻きして製造される、請求項1乃至3のいずれかに記載の気密シート。
【請求項5】
幅方向のほぼ中央部から二つ折り状態にされている気密シートの折り返し部を上にして、天井下地施工前に、前記折り返し部を天井設置部より上に位置する桁に固定すると共に、断熱材に面する後側シートの中間部を下地材に留め付け、フリーに垂れ下がっている前側シートの下半部を持ち上げて野縁に固定した後、前記野縁に固定された前側シートの下半部を挟んで前記野縁に天井下地を打ち付けることを特徴とする気密シートの施工方法。
【請求項6】
前記気密シートは、二つ折りされて成る一半部である前記前側シートの中間部に、二つ折り線と平行な折れ癖線を設けたものであって、前記前側シートの下半部の持ち上げを前記折れ癖線に沿って行う、請求項5に記載の気密シートの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−84492(P2010−84492A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−257695(P2008−257695)
【出願日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【出願人】(397025107)日本住環境株式会社 (43)
【Fターム(参考)】