説明

気密検査方法、プログラム、媒体、制御装置及び検査機

【課題】気体燃料用内燃機関において特には低圧側のシールの気密検査をより適切に実行することができる気密検査方法を提供すること。
【解決手段】本発明による気密検査方法は、配管内の気体を排出可能なインジェクタ4を含む気体燃料用内燃機関1の気密検査方法であって、配管2内の気体をインジェクタ4により排出し配管2内の圧力を所定圧力Ppまで低下させる低下ステップを含む、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にCNG(Compressed Natural Gas:圧縮天然ガス)等のガスを用いる気体燃料用内燃機関における気密検査方法、プログラム、媒体、検査機、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、天然ガスを圧縮したCNGを車両のエンジンの燃料として用いることが提案されている。このようなエンジンにおいては、CNGを貯蔵するタンクと、タンクから遮断弁を介して高圧のCNGが供給される高圧経路と、高圧経路からレギュレータ及び遮断弁を介して低圧のCNGが供給される低圧経路と、低圧経路からエンジンの燃焼室に低圧のCNGを噴射するインジェクタが用いられ、ECUによりこれらを統括的に制御することが行われる。
【0003】
このエンジンの製造後出荷前の検査工程内においては、タンクからエンジンに至る経路において出荷後にCNGの漏洩の発生を防止する目的で気密検査が行われる。この気密検査においては、専用の気密検査用外部設備が用いられる。この気密検査用外部設備を用いて気密検査は、前述したエンジンまでの経路に検査用の気体を充填することで、充填元の圧力により定まる高圧経路と、レギュレータの調整圧により定まる低圧経路のそれぞれにおいて、例えば特許文献1に記載されるように、圧力の経時変化を点検することに基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−41106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような気密検査の方法においては、特には低圧経路における圧力は車両が具備するレギュレータの調整圧により定まるため、低圧経路において用いられる気密用のシールの気密性を点検するにあたって適切な圧力領域を選択することが難しく、低圧経路用のシールの気密検査をより適切に行うことができていないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、上述した気体燃料用内燃機関において特には低圧側のシールの気密検査をより適切に実行することが可能な、気密検査方法、気密検査方法を実行するプログラム、プログラムを記憶した媒体、検査機、制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の問題を解決するため、本発明による気密検査方法は、配管内の気体を燃焼室へ排出可能なインジェクタを含む気体燃料用内燃機関の気密検査方法であって、前記配管内の前記気体を前記インジェクタにより排出し前記配管内の圧力を所定圧力まで低下させる低下ステップを含む、ことを特徴とする。
【0008】
なお、前記低下ステップの後に前記配管内の前記気体の漏れを検査する検査ステップを含むこととしてもよい。この場合に、前記検査ステップにおいて、前記圧力の所定時間内の変化量に基づいて前記漏れの有無を判定する。なお、前記配管の外面に石鹸水を塗布して前記漏れの有無を判定することとしてもよい。
【0009】
本発明のプログラムは上述した気密検査方法を実行するプログラムであり、本発明の媒体は上述したプログラムを格納した媒体である。
【0010】
本発明の制御装置又は検査機は、気体燃料用内燃機関の配管内の気体を燃焼室へ排出可能なインジェクタを、前記配管内の圧力に基づいて制御する制御手段を含み、前記制御手段は検査モードにおいて前記配管内の前記気体を前記インジェクタにより排出し前記圧力を所定圧力まで低下させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低圧側のシールの検査に適した圧力領域の選択を容易にして、低圧側のシールの検査をより適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施例の気密検査方法が適用される気体燃料用内燃機関1の一実施形態を示す模式図である。
【図2】実施例の気体燃料用内燃機関1のENGECU15(制御装置)と対応する検査機16との通信態様を示す模式図である。
【図3】実施例の気体燃料用内燃機関1の低圧経路2の低圧側におけるデリバリパイプ3との連結態様の詳細を示す模式図である。
【図4】実施例の気体燃料用内燃機関1の低圧経路2の低圧側におけるデリバリパイプ3とのシール態様の詳細を示す模式図である。
【図5】実施例の気体燃料用内燃機関1の低圧経路2における検査用最適圧力Pp(所定圧力)の検査時間T及び変形量δに基づく定め方の一例を示す模式図である。
【図6】実施例の気密検査方法が適用される気体燃料用内燃機関1の気密検査前のそれぞれの弁の制御態様を示す模式図である。
【図7】実施例の気密検査方法が適用される気体燃料用内燃機関1の気密検査中のそれぞれの弁の制御態様を示す模式図である。
【図8】実施例のENGECU15(制御装置)の実行する低下ステップの詳細を示すフローチャートである。
【図9】実施例の気密検査方法が適用される気体燃料用内燃機関1の気密検査後のそれぞれの弁の制御態様を示す模式図である。
【図10】実施例の気密検査方法により得られる効果を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0014】
本発明に係る気密検査方法が用いられる気体燃料用内燃機関1は、図1に示すようなハード構成を有している。すなわち、気体燃料用内燃機関1は、低圧経路2、デリバリパイプ3、インジェクタ4、レギュレータ5、レギュレータ遮断弁6、高圧経路7、緊急遮断弁8、手動弁9、CNGシリンダ10、逆止弁11、充填口12、低圧経路2のいずれかの箇所に設けられる低圧センサ13と、高圧経路7のいずれかの箇所に設けられる高圧センサ14と、を含んで構成される。
【0015】
また、気体燃料内燃機関1の含む低圧センサ13と高圧センサ14の検出結果は、図2に示すENGECU15(Electronic Control Unit)に入力され、ENGECU15の制御に基づいて、インジェクタ4の開閉、レギュレータ遮断弁6の開閉、緊急遮断弁8の開閉がそれぞれ動作される。
【0016】
ENGECU15は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うものであり、以下に述べる処理を行う制御手段を構成するものである。
【0017】
ENGECU15は気体燃料用内燃機関1の適用される車両内のCAN(Controller Area Network)等の通信規格に接続されており、このCANは図示しない外部接続プラグを介して検査機16に接続されている。
【0018】
検査機16は、例えばCPU、ROM、RAMおよびそれらを接続するデータバスと入出力インターフェースから構成され、ROMに格納されたプログラムに従い、CPUが所定の処理を行うワークステーション又はそれに準ずるコンピュータでありディスプレイとスピーカ及び確認用のボタンを含むものである。ENGECU15と検査機16は、図2に示すように、気密検査を実行するにあたって必要な要求をENGECU15に送信し、ENGECU15から必要なデータを受信する。
【0019】
気体燃料用内燃機関1は、図1に示すように、上述したCNGを燃料とする内燃機関であり、ここでは詳細は図示しないが、ガソリン用インジェクタも備えており、ガソリン用としても使用可能なものであって、所謂CNGバイフューエル車に適用されるものである。
【0020】
気体燃料用内燃機関1は、図示しない燃焼室を有しており、この燃焼室内に上述したインジェクタ4の噴出口は複数個並列されて配置される。デリバリパイプ3はこれらのインジェクタ4の吸入口にCNGを供給するとともに、複数のインジェクタ4の吸入口を、低圧経路2を構成する一の低圧配管(配管)の端部に気密に接続するアダプタを構成している。
【0021】
低圧経路2の高圧側の端部にはレギュレータ5が気密に連結され、レギュレータ5のさらに高圧側にはレギュレータ遮断弁6が気密に連結され、レギュレータ遮断弁6よりもさらに高圧側には高圧経路7を構成する一の高圧配管の低圧側が気密に連結される。レギュレータ5の低圧側の調整圧は例えば0.8MPaに設定されている。
【0022】
この一の高圧配管の高圧側は二股状に分岐されており、分岐された一方の高圧側の高圧配管には緊急遮断弁8、手動弁9がこの順に設けられており、一方の高圧側の高圧配管の端部にはCNGシリンダ10が気密に連結されている。分岐された他方の高圧側の高圧配管には逆止弁11が設けられており端部には充填口12が設けられている。高圧配管内の圧力はここでは20MPaに設定されている。この20MPaは車両の販売国の規格により異なる値である。
【0023】
低圧経路2を構成する低圧配管の低圧側の端部には、図3に示すように雄ネジ部2a及びその根元に対して外周側に位置する円環状の当接部2bが形成され、デリバリパイプ3にはこの雄ネジ部2aに対応する雌ネジ部3aと、当接部2bに対応する被当接部3bが形成されており、被当接部3bにはOリング17及びOリング17を保持する環状溝3bcが形成されている。図3において上側に位置するOリング17の近傍部分について、雄ネジ部2aを雌ネジ部3aにねじ込んだ締結後の状態を拡大して時計回りに90度回転して示すのが図4である。
【0024】
図4中左側の図4(a)に示すように、当接部2bと、被当接部3bは相互に対向する形態をなし、Oリング17を図中上下方向に挟み込む。Oリング17は図4(a)中左右方向寸法よりも、上下方向寸法が若干小さくなる楕円状に圧縮されて、Oリング17の当接部2bとの間が密着され、Oリング17の環状溝3bcとの間も密着される。これにより、図4(a)中左方の低圧配管内側と右方の低圧配管外側との間の気密が確保される。
【0025】
なお、図4(a)に示す状態は、低圧配管内部の圧力が上述した0.8MPaよりも十分小さい値である場合を示し、0.8MPa相当の圧力が低圧配管内部に作用している場合には、図3で示した雄ネジ部2aと雌ネジ部3aとの間の隙間に、低圧配管内部の気体は浸入して、図4(b)に示すように、Oリング17の左側の面に気体の圧力が作用する。
【0026】
これに伴い、図4(b)においては、Oリング17は、環状溝3bc内を左方から右方に移動されて、環状溝3bcの右側の側壁面と角部に押し付けられて、右側かつ下側の部分に角部が食い込む形態にてOリング17が変形される。この状態では、図4(a)に示した状態に比べて、Oリング17は当接部2b及び環状溝3bcの側壁面及び角部に密着させられるため、図4(b)中左方の低圧配管内側と右方の低圧配管外側との間の気密性はより高めに確保され、シール効果がより高められた状態となる。
【0027】
ここで気密検査の趣旨を考慮すると、レギュレータ5の調整圧である0.8MPa相当の加圧がなされた状態の図4(b)に示した状態においてよりも、実質的に未加圧である図4(a)に示した状態において検査を行った方が、より配管内部の気体の微小な漏れを検知することが可能となり、より安全側を考慮した検査を行うことができることとなる。つまり、気体燃料用内燃機関1の気密検査においては、レギュレータ5の調整圧よりも十分小さい値の気体の検査用最適圧力Pp(所定圧力)を実現した上で検査を行うことが好ましい。
【0028】
ここで検査用最適圧力Ppについては以下のように定められる。検査用最適圧力Ppを大きくすればするほど、図5に示すようにOリング17の変形量δが大きくなるため、この変形量δが過大となりOリング17の破損や劣化を招きやすい。このため検査用最適圧力Ppの上限値は変形量δが過大とならない範囲とすることが要求される。なお、検査用最適圧力Ppの上限値はOリング17の材質や形態、大きさを含む種別に基づいて定められる。
【0029】
また、検査用最適圧力Ppを小さくすればするほど、図4(a)に示したように、より微小な漏れを検知できるようにはなるものの、圧力の低下に伴い単位時間の漏れ量も低下するので、漏れ検知に必要な時間、つまり検査時間Tが図5に示すように増加することを招く。
【0030】
検査の実情を考慮すると例えば検査時間Tは数十分以内であることが要求され、この検査時間Tの上限に基づいて、検査用最適圧力Ppの下限値が定められる。これらに加えて、上述した気体燃料用内燃機関1に用いられるインジェクタ4の最小分解能は0.01MPaよりも小さい値であるので調整単位を0.01MPaとし、本実施例では検査用最適圧力Ppは例えば0.05MPaに設定している。すなわち、この検査用最適圧力PpはOリング17の種別や検査時間Tに基づいて定まるので、車種毎に適宜変更される値である。
【0031】
つまり、本実施例における気密検査方法は、低圧経路2(配管)内の気体を燃焼室へ排出可能なインジェクタ4を含む気体燃料用内燃機関1において、低圧経路2内の気体をインジェクタ4により排出し、低圧経路2内の圧力を検査用最適圧力Pp(所定圧力)まで低下させる低下ステップを含むものとしている。
【0032】
また、本実施例における気密検査方法は、低下ステップの後に低圧経路2内の気体の漏れを検査する検査ステップを含むものとしている。なお、検査ステップにおいて、低圧センサ13により検出される気体の圧力の所定時間内の変化量に基づいて漏れの有無を判定するものとしている。また、検査ステップにおいて上述した変化量を確保する時間が取れない場合には、低圧経路2の外面に石鹸水を塗布して漏れの有無を判定することとしてもよい。
【0033】
以下に本実施例の気密検査方法を含む気密検査工程の全体について、図6〜9を用いて説明する。まず気密検査前の検査工程について説明する。図6に示すように手動弁9については初期状態として閉状態としている。製造終了後、CNGが充填されていない状態の車両のイグニッションスイッチIGをONとすると、ENGECU15の通常動作としての制御に基づいて、レギュレータ遮断弁6と緊急遮断弁8は図6(a)に示すように一時的に開いた後、図6(b)に示すように閉じられる。
【0034】
図6(b)に示す状態において、充填口12に窒素Nを20MPaに加圧した供給源からのカプラを連結して、窒素Nを充填口12から逆止弁11を介して高圧経路7内に充填する。この状態で、検査機16からENGECU15に対して、図2中の要求の内最上段の「レギュレータ遮断弁開要求C1」を送信する。ENGECU15の制御手段は、この検査機16からの「レギュレータ遮断弁開要求C1」を受信すると、レギュレータ遮断弁6を黒塗りで上向きの矢印で示される「閉状態」から、図6(c)において白塗りで右向きの矢印で示される「開状態」に移行させる。
【0035】
図6(c)においては、レギュレータ5の入力側に20MPaの窒素Nが入力され、レギュレータ5は調整圧として0.8MPaの圧力を低圧経路2に出力し、低圧経路2内に、0.8MPaの窒素Nが充填される。この段階で、ENGECU15の制御手段は、高圧センサ14と低圧センサ13のそれぞれの検出結果を、高圧経路圧力値D1、低圧経路圧力値D2として検査機16に送信する。
【0036】
検査機16は、これらの高圧経路圧力値D1と低圧経路圧力値D2をそれぞれ読み込み、高圧経路圧力値D1が20MPaに対して公差内であり、低圧経路圧力値D2が0.8MPaに対して公差内であるか否かを判定し、肯定であればディスプレイにより検査許可の旨を表示し、否定であればディスプレイにより検査不可の旨を表示して、スピーカによりウォーニングを出力する。検査不可であれば上述した工程を再度やり直し、上記判定を再度やり直す。検査許可であれば、高圧経路7及び低圧経路2の双方に石鹸水を塗布して、漏れの有無を目視にて確認する。以上にて気密検査前の工程は終了する。
【0037】
続いて気密検査の本工程について図7を用いて説明する。図6(c)に示した状態において、図2中一段目の要求である「レギュレータ遮断弁開要求C1」の「解除指令」を検査機16はENGECU15に対して送信すると、図7(a)に示すように、「解除指令」に基づいてENGECU15の制御手段はレギュレータ遮断弁6を黒塗りで上向きの矢印で示される「閉状態」に移行させる。この後、窒素Nを20MPaに加圧した供給源からのカプラを充填口12から取り外す。
【0038】
ここで、検査機16からENGECU15に対して、図2中上から二段目の要求である「低圧経路50kPa制御要求C2」を送信する。ENGECU15の制御手段はこの要求を受けて「検査モード」に移行して、低圧センサ13の検出結果を監視しながら、インジェクタ4の含むバルブを開として低圧経路2内の0.8MPaの窒素Nを50kPaすなわち0.05MPaまで減圧して、図7(c)の状態に移行させる。
【0039】
このENGECU15の「低下ステップ」における制御内容の詳細について図8を用いて説明する。図8中ステップS1に示すようにENGECU15の制御手段は、検査機16から検査モード入力としての「低圧経路50kPa制御要求C2」を受信して検出し、ステップS2において検査モード入力があったか否かを判定し、肯定であればステップS3にすすみ、否定であればステップS1の手前に戻る。
【0040】
ステップS3において、ENGECU15の制御手段は「検査モード」に移行し、ステップS4において、低圧経路2内の低圧経路圧力値D2(圧力)を検出し、ステップS5にすすんで、インジェクタ4のバルブを開とする。
【0041】
ステップS6において、ENGECU15の制御手段は、低圧経路圧力値D2(圧力)が検査用最適圧力Pp(所定圧力)と一致しているか否かを判定し、肯定であればステップS7にすすんで、インジェクタ4のバルブを閉とし、否定であればステップS4の手前に戻り、ステップS4、S5の処理を継続する。
【0042】
図7(c)に示した状態において、ENGECU15は、検査機16に対して、高圧経路圧力値D1と低圧経路圧力値D2をそれぞれ検査機16に送信する。検査機16は、これらの高圧経路圧力値D1と低圧経路圧力値D2をそれぞれ読み込み、高圧経路圧力値D1が20MPaに対して公差内であり、低圧経路圧力値D2が50kPaに対して公差内であるか否かを判定し、肯定であればディスプレイにより気密検査許可の旨を表示し、否定であればディスプレイにより気密検査不可の旨を表示して、スピーカによりウォーニングを出力する。気密検査不可である場合には、図6及び図7に示した工程をやり直すか、適宜の修繕処置を行い、再度上記判定を行い、気密検査許可となれば次の工程にすすむ。
【0043】
気密検査許可の旨が表示された後、確認用のボタンが作業員により押圧されると、検査機16は気密検査モードに移行して、ENGECU15から高圧経路圧力値D1と低圧経路圧力値D2を所定時間内継続してそれぞれ読み込み、それぞれの値の変化量が基準値以内であるか否かを判定し、肯定であれば「OK」の旨をディスプレイ上に表示し、否定であれば「NG」の旨をディスプレイ上に表示するとともにスピーカによりウォーニングを出力する。これに加えて、高圧経路7及び低圧経路2の双方に石鹸水を塗布して、漏れの有無を目視にて確認する。以上にて気密検査の本工程は終了する。
【0044】
続いて気密検査の後工程について図9を用いて説明する。図7(c)に示した状態において、図2中一段目の要求である「レギュレータ遮断弁開要求C1」と三段目の要求である「N抜き指令C3」を検査機16はENGECU15に対して送信すると、図9(a)に示すように、ENGECU15の制御手段はレギュレータ遮断弁6を黒塗りで上向きの矢印で示される「閉状態」から、白塗りで右向きの矢印で示される「開状態」に移行させるとともに、インジェクタ4のバルブを開として、低圧経路2内の窒素Nを50kPaから大気圧まで減圧し、高圧経路7内の窒素Nを20MPaから大気圧まで減圧する。
【0045】
ここで、図9(b)に示すように、手動弁9を黒塗りで上向きの矢印で示される「閉状態」から、白塗りで右向きの矢印で示される「開状態」に移行させて、ENGECU15の制御に基づいてレギュレータ遮断弁6を「閉状態」として、充填口12にCNG充填用の供給源からのカプラを連結して、遮断弁8については、CNGの充填圧により受動的に開状態とされて、CNGをCNGシリンダ10及び高圧経路7の内部に充填するとともに、高圧経路7内の窒素Nは低圧経路2側に排出される。なお、この段階において、低圧経路2内は大気圧の窒素Nが残留している。
【0046】
ここで検査機16からENGECU15に対して、図2中上から四段目の要求である「CNG始動要求C4」を送信する。ENGECU15の制御手段はこの要求を受けて「検査モード」から「CNG始動モード」に移行して、イグニッションキーIGのON操作により、レギュレータ遮断弁6及び遮断弁9がともに開状態に移行されて、燃焼室内のシリンダのクランキングの開始に伴うインジェクタ4の開状態に伴って、低圧経路2内の窒素Nについても燃焼室を介して図示しないインテークマニホールドを介して外部に排出される。ここで気体燃料用内燃機関1すなわちエンジンがイグニッションキーIGのOFF操作により停止されると、「CNG始動要求」が解除され、レギュレータ遮断弁6及び遮断弁9はともに閉状態とされて、車両は出荷待ち状態とされ得る。以上にて気密検査の後工程は終了する。
【0047】
上述した本実施例の気密検査方法及び関連する検査機及び制御装置によれば、以下のような作用効果を得ることができる。すなわち、図7(c)に示した気密検査の本工程において、特には低圧経路2内の圧力をOリング17の気密検査に適した圧力である検査用最適圧力Pp(所定圧力)=0.05MPaとすることを、より容易に行うことができる。
【0048】
つまり、図10(a)に示すように、Oリング17が環状溝3bcの中央に位置して、低圧経路2内の気体の圧力により上下方向の圧縮以外の変形が生じていない状態において、気密検査を実行することができるので、より安全側を考慮した漏れの有無を検査することができる。
【0049】
このことは特に図10(a)に示すように、当接部2bと被当接部3bとの間に異物18が存在している場合により効果的である。本実施例において例示した検査用最適圧力Pp=0.05MPaにおけるOリング17の変形態様を図10(b)に、0.15MPaにおけるOリング17の変形態様を図10(c)に、低圧経路2内の通常時の圧力である0.8MPaにおけるOリング17の変形態様を図10(d)に示す。
【0050】
つまり、図10(d)に示すように0.8MPaにおいては、図10(d)に示すように、Oリング17が環状溝3bcの側壁面と角部に押し付けられ過ぎて大きく変形しているため、異物18が存在していても、漏れがあることは検出できない。0.15MPaである図10(c)においても、図10(d)ほどにはOリング17は変形しないものの、当接部2b及び環状溝3bcの側壁面に比較的大きな力で押し付けられてシール性を確保してしまうので、これも異物18が存在しているにも係わらず、漏れがあることは検出できない。
【0051】
これに対して、図10(b)に示すように、検査用最適圧力Pp=0.05MPaとすることにより、Oリング17は、環状溝3bcの左右中央に位置することが確保され、側壁面や角部、当接部2bに大きな力で押し付けられることはなく、異物18が存在していれば、シール性を確保することができないため、異物18による漏れをより正確に検知することができる。これにより、出荷検査時において異物18の噛み込みが発生した場合に、これを速やかに検知して、該当箇所の異物18の除去を速やかに行うことができる。
【0052】
さらに、本実施例で示したような気体燃料用内燃機関1においては、充填口12近傍の逆止弁11は必須の構成である。このため、例えば検査用最適圧力Ppを有する外部の供給源から窒素Nを始めとした検査用の気体を充填することとした場合には、検査用最適圧力Ppを上述したように0.05MPa程度の低圧領域とすると、一般的に逆止弁11の最低動作圧力が0.15MPa程度必要であることから、充填作業自体が困難となる。本実施例の気密検査方法においては逆止弁11を介しての工程を含まないため、このような不都合を招かない。
【0053】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形および置換を加えることができる。
【0054】
例えば上述した気体燃料用内燃機関1はCNGバイフューエル車用のものとしているがCNG専用車用のものであってももちろんよい。また、上述して実施例においては低下ステップを実行する主体はENGECU15(制御装置)であるが、この主体を検査機16としてももちろんよい。さらに、低下ステップを経た後の検査ステップにおける判定の主体は実施例では検査機16としているがこれもENGECU15側で行うこととしてもよい。
【0055】
なお上述した実施例において、低圧経路2内のシール箇所として、デリバリパイプ3と低圧経路2との連結箇所におけるOリング17を例示したが、レギュレータ5と低圧経路2との連結箇所のOリングを検査用最適圧力Ppの適用対象とすることもできる。一般的には高圧系路側の連結箇所においてはゴム状のOリングではなく金属シールが用いられるが、高圧側においてもゴム状のOリングを用いる場合においては、これについても検査用最適圧力Ppの適用対象とすることもできる。
【0056】
また、検査用の気体として上述した実施例においては窒素Nを例示したが、CNG以外の気体で難燃性のものであれば、他の気体を使用することももちろん可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、気体燃料用内燃機関における気密検査方法、それに関連するプログラム、媒体、検査機、制御装置に関するものであり、適切な圧力範囲を選択した上で気密検査をより効果的に実施することができ、車両側のコスト増大を招くこともないので、通常の乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して有益なものである。
【符号の説明】
【0058】
1 気体燃料用内燃機関
2 低圧経路(配管)
2a 雄ネジ部
2b 当接部
3 デリバリパイプ
3a 雌ネジ部
3b 被当接部
3bc 環状溝
4 インジェクタ
5 レギュレータ
6 レギュレータ遮断弁
7 高圧経路
8 緊急遮断弁
9 手動弁
10 CNGシリンダ
11 逆止弁
12 充填口
13 低圧センサ
14 高圧センサ
15 ENGECU(制御装置)
16 検査機
17 Oリング
18 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内の気体を燃焼室へ排出可能なインジェクタを含む気体燃料用内燃機関の気密検査方法であって、前記配管内の前記気体を前記インジェクタにより排出し前記配管内の圧力を所定圧力まで低下させる低下ステップを含む、ことを特徴とする気密検査方法。
【請求項2】
前記低下ステップの後に前記配管内の前記気体の漏れを検査する検査ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の気密検査方法。
【請求項3】
前記検査ステップにおいて、前記圧力の所定時間内の変化量に基づいて前記漏れの有無を判定することを特徴とする請求項2に記載の気密検査方法。
【請求項4】
前記検査ステップにおいて、前記配管の外面に石鹸水を塗布して前記漏れの有無を判定することを特徴とする請求項2に記載の気密検査方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の気密検査方法を実行するプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のプログラムを格納した媒体。
【請求項7】
気体燃料用内燃機関の配管内の気体を燃焼室へ排出可能なインジェクタを、前記配管内の圧力に基づいて制御する制御手段を含み、前記制御手段は検査モードにおいて前記配管内の前記気体を前記インジェクタにより排出し前記圧力を所定圧力まで低下させることを特徴とする制御装置。
【請求項8】
気体燃料用内燃機関の配管内の気体を燃焼室へ排出可能なインジェクタを、前記配管内の圧力に基づいて制御する制御手段を含み、前記制御手段は検査モードにおいて前記配管内の前記気体を前記インジェクタにより排出し前記圧力を所定圧力まで低下させることを特徴とする検査機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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