説明

気密確保用金具と該金具を用いたケーブル終端接続部

【課題】ケーブルに気密性を確保するための気密確保用金具と、該気密確保用金具を用いることにより、絶縁媒体として絶縁ガスを使用することを可能にしたケーブル終端接続部を提供する。
【解決手段】ケーブル端末部10を碍管11内に挿着してなるケーブル終端接続部において、ケーブル端末部10の外周に環状空間33を形成する金具本体32と,前記環状空間33に収容され、流体が充填可能で弾性を有する中空環状物34とを備えた気密確保用金具31が、前記碍管11端部に気密に接続され、前記中空環状物34に流体が加圧充填されて、前記中空環状物34が膨らみ、前記ケーブル端末部10の外周に気密に圧接し、前記碍管11内に絶縁ガス23が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密確保用金具と該金具を用いたケーブル終端接続部に関し、特に、絶縁油を使用しないケーブル終端接続部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電力ケーブル終端接続部は、電力ケーブルの終端部外周に碍子、高分子複合碍管、エポキシ套管などの碍管を設け、該碍管内にシリコーン油、鉱油、合成油等の電気絶縁油を充填して密閉し、碍管内空間の電気絶縁性能を確保している。
【0003】
従来の電力ケーブル終端接続部の構造の一例を図3を用いて説明する。
図3は、ガス絶縁型開閉装置に直結するCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ケーブル)用ガス中終端接続部の部分断面図である。図3において、符号1は段剥ぎされたCVケーブルの導体を示し、その端部には導体引出棒2が常法により接続されている。そして、ケーブル端末部10がエポキシ碍管11内に挿入され、その上端部に導体引出棒2が導体固定金具12により固定されている。なお、符号3はケーブル絶縁体、符号4は補強絶縁体、符号5はベルマウス、符号6は遮蔽層である。
エポキシ碍管11には、その下端面に固着されたアダプタ13を介して、下部銅管14a、絶縁筒16および下部銅管14bが順次取り付けられている。また、下部銅管14bの下端にはリザーバ18およびケーブル保護金具19が順次取り付けられており、ケーブル保護金具19の下端部は、ケーブルの防食層7に鉛工20により油密に接続されている。なお、符号17は下部シールドである。
上述のCVケーブル用ガス中終端接続部は、全体が油密に構成され、エポキシ碍管11内には絶縁媒体として絶縁油21が充填されており、エポキシ碍管11下端に取り付けられたアダプタ13を介して機器底板15に固定される。
【特許文献1】特開2004−015945号公報
【非特許文献1】飯塚喜八郎監修、「電力ケーブル技術ハンドブック」、電気書院、1989年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のCVケーブル用ガス中終端接続部には、以下のような問題があった。即ち、
1)絶縁媒体として絶縁油21を用いているため、万一この絶縁油が漏れた場合には、環境を汚染する恐れがある。また、大量の絶縁油を使用する場合には、費用がかかり、使用済の絶縁油は再利用ができないため、廃棄処理のコストもかかる。
2)上記ガス中終端接続部の組立作業では、ケーブル保護金具19の下端部をケーブル端末部10の防食層7に鉛工20により油密に接続するが、この組立作業に多大な作業時間を要する。また、絶縁媒体として絶縁油21をエポキシ碍管11内に充填するが、その際に絶縁油21中に気泡が発生するのを防ぐために、絶縁油21の注入前にエポキシ碍管11内部の空気を排気する必要があり、その排気作業に多大な作業時間を要する。
本発明は、上述した問題に鑑み、ケーブルに気密性を確保するための気密確保用金具と、該金具を用いることにより、絶縁媒体として絶縁油の代わりに絶縁ガスを使用することを可能にしたケーブル終端接続部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたもので、請求項1記載の発明は、気密に圧接される被圧接体の外周に環状空間を形成する金具本体と,前記環状空間に収容され、流体が充填可能で弾性を有する中空環状物を備え、前記金具本体により形成された前記環状空間に収容された前記中空環状物に流体を加圧充填し、前記中空環状物を膨らませて、前記被圧接体の外周に気密に圧接させることを特徴とする気密確保用金具である。
【0006】
また、請求項2記載の発明は、ケーブル端末部を碍管内に挿着してなるケーブル終端接続部において、前記碍管端部に前記金具本体を気密に接続して、ケーブル端末部の外周に環状空間を形成し、該環状空間に前記中空環状物を収容し、前記中空環状物に流体を加圧充填し、前記中空環状物を膨らませて前記ケーブル端末部の外周に気密に圧接させ、前記碍管内に絶縁ガスを充填してなることを特徴とする請求項1記載の気密確保用金具を用いたケーブル終端接続部である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、被圧接体の外周に金具本体により環状空間を形成し、該環状空間に収容された中空環状物に流体を加圧充填するという簡単な作業により、被圧接体の外周に中空環状物を気密に圧接することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の気密確保用金具を碍管の端部とケーブル端末部の外周との間に介在させることにより、簡単な作業によりケーブル端末部を気密に封じ、絶縁媒体として絶縁ガスを使用することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明による気密確保用金具は、被圧接体の外周に配置されて、中空環状物に流体を加圧充填するという簡単な作業により、被圧接体の外周を気密に封止することができるという利点がある。
また、請求項2記載の発明によるケーブル終端接続部は、絶縁媒体として絶縁油の代わりに絶縁ガスを使用するので、絶縁媒体の費用を低減することができ、また環境に優しくなるという利点がある。また、本発明のケーブル終端接続部は、組立作業において、前記気密確保用金具を用いてケーブル端末部を気密に封止するので、従来のように鉛工を使用する場合に比して、組立作業時間が短縮するという利点がある。さらに、絶縁媒体として従来の絶縁油の代わりに絶縁ガスを使用するため、絶縁油中の気泡の発生を防ぐような長時間の真空引きを要せず、絶縁媒体の充填前の真空排気時間が短縮し、また、絶縁ガスは絶縁油と比較して拡散性がよいので、絶縁媒体の充填作業時間も短縮するという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明にかかるケーブル終端接続部の一実施形態を示す部分断面図である。図1において、図3に関して説明した部分と同部分は同符号で指示し、詳細な説明は省略する。
【0010】
本実施形態のケーブル終端接続部は、CVケーブル用ガス中終端接続部であって、エポキシ碍管11内から導体引出棒2までの構造は図3に示した従来例と同様である。エポキシ碍管11の下端面に固着されたアダプタ13には、下部銅管14aが取り付けられ、下部銅管14aには、気密確保用金具31が取り付けられている。
【0011】
気密確保用金具31は、図2に示すように、円環状の上金具本体32aと下金具本体32bとからなる金具本体32を有し、上金具本体32aと下金具本体32bは同心に中心軸方向に連結されて、ケーブル端末部10の外周に相対的に径が大きい環状空間33を形成している。環状空間33には、弾性を有するゴムからなる中空円環状物34が収容されている。中空円環状物34には、流体(気体または液体)を圧入し、封じるための封入管35が取り付けられ、封入管35は下金具本体32bを貫通して外部に導出されている。
【0012】
気密確保用金具31の下金具本体32bの下側には、ケーブル保護金具19が取り付けられており、ケーブル保護金具19の下端部は、ケーブル端末部10の防食層7に保護テープ22で固定されている。
【0013】
本実施形態は、中空円環状物34内に流体を、例えば圧力約9×105 N/m2 で圧入し、封じることにより、中空円環状物34を環状空間33の内側に膨らせて、ケーブル端末部10の遮蔽層6に気密に圧接させ、全体が気密構造になっている。また、エポキシ碍管11内には絶縁媒体としての絶縁ガス23が、例えば圧力約4×105 N/m2 で充填されている。
【0014】
本実施形態は、全体を気密構造に組み立てた後、エポキシ碍管11内を真空にし、次いで、エポキシ碍管11内に絶縁ガス23を充填し、ケーブル終端接続部とする。
【0015】
本実施形態が従来例と異なる特徴的なことは、気密確保用金具31がエポキシ碍管11の下端面にアダプタ13、下部銅管14aを介して取り付けられ、エポキシ碍管11内に挿着されたケーブル端末部10とエポキシ碍管11の間が気密に封じられ、エポキシ碍管11内には絶縁媒体として絶縁ガス23が充填されていることである。
また、他の特徴的なことは、気密確保用金具31が、金具本体32が形成する環状空間33に弾性を有する中空円環状物34を収容したものであって、中空円環状物34内に流体を圧入し、中空円環状物34を内側に膨らませて、環状空間33に挿通されているケーブル端末部10の遮蔽層6に気密に圧接させたことである。
【0016】
上述のように、本実施形態では、エポキシ碍管11内には絶縁ガス23が充填され、絶縁油が使用されていないので、また、絶縁ガス23は再利用ができるので、絶縁媒体の費用を削減することができ、また、絶縁油の廃棄処理費が不要になり、さらに、絶縁油の漏れによる環境汚染がなくなる。
また、エポキシ碍管11内に挿着されたケーブルとエポキシ碍管11の間の気密性の確保は、気密確保用金具31の中空円環状物34内に流体を圧入し、封じることにより容易に達成することができるので、従来のように労力を要する鉛工により絶縁油をエポキシ碍管11内に充填した場合に比して、組立作業を短時間で容易に行うことができる。
また、絶縁ガス23を充填するに要する作業時間は、充填前の真空引き時間が絶縁油を充填する場合に比して約1/4に減少し、絶縁ガス23の充填自体の作業時間が絶縁油の充填時間の1/5〜1/10に減少した。
さらに、AC耐圧試験および部分放電試験を行ったところ、絶縁媒体として絶縁油を用いた従来例と同等の性能を有することがわかった。
【0017】
なお、本発明の気密確保用金具は、上記実施形態に限定されることはなく、例えば中空環状物の材質は、流体が充填可能で弾性を有する材質であれば、ゴムである必要はない。
また、本発明のケーブル終端接続部の構造は、上記実施形態に示したCVケーブル用ガス中終端接続部に限らず、OFケーブル用ガス中終端接続部、あるいはケーブルの試験用端末にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るケーブル終端接続部の一実施形態の部分断面図である。
【図2】上記実施形態の要部断面図である。
【図3】従来のケーブル終端接続部の部分断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 導体
2 導体引出棒
3 ケーブル絶縁体
4 補強絶縁体
5 ベルマウス
6 遮蔽層
7 防食層
10 ケーブル端末部
11 エポキシ碍管
13 アダプタ
14a 下部銅管
17 下部シールド
19 ケーブル保護具
22 保護テープ
23 絶縁ガス
31 気密確保用金具
32 金具本体
32a 上金具本体
32b 下金具本体
33 環状空間
34 中空円環状物
35 封入管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密に圧接される被圧接体の外周に環状空間を形成する金具本体と,
前記環状空間に収容され、流体が充填可能で弾性を有する中空環状物を備え、
前記金具本体により形成された前記環状空間に収容された前記中空環状物に流体を加圧充填し、前記中空環状物を膨らませて、前記被圧接体の外周に気密に圧接させることを特徴とする気密確保用金具。
【請求項2】
ケーブル端末部を碍管内に挿着してなるケーブル終端接続部において、
前記碍管端部に前記金具本体を気密に接続して、ケーブル端末部の外周に環状空間を形成し、該環状空間に前記中空環状物を収容し、
前記中空環状物に流体を加圧充填し、前記中空環状物を膨らませて前記ケーブル端末部の外周に気密に圧接させ、前記碍管内に絶縁ガスを充填してなることを特徴とする請求項1記載の気密確保用金具を用いたケーブル終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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