説明

気泡を強化した洗浄法および化学的特性

【課題】従来の洗浄技法では簡単には除去できないこれらの種類の汚れを除去するための、改良された方法を提供する。
【解決手段】オーバーライド使用溶液の適用に先立つ前処理溶液の適用を含む定置洗浄手順を用いて、熱交換器、エバポレータ、タンクおよびその他工業装置などの装置を洗浄する方法である。ガス発生使用溶液は、前処理またはオーバーライド使用溶液のいずれかの中に存在する。ガス発生使用溶液は、汚れ上および汚れ中にガスを放出する能力をもち、汚れ破断効果を発揮して、洗浄力を強化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除去すべき汚れ上および汚れ中に、1種類以上のガスを発生させることにより、硬質表面から汚れを除去するための方法に関係する。
【背景技術】
【0002】
食品および飲料の製造など、多くの工業用途において、一般に硬質面が炭水化物、蛋白質、および硬化した汚れと、食用油汚れ、脂肪汚れ、およびその他の汚れによって汚染されるようになっている。このような汚れは、液状食材および固形食材の両方の製造から生じることがある。セルロース、単糖類、二糖類、オリゴ糖、澱粉、ゴムおよびその他の複合材料などの炭水化物汚れが乾燥すると、特に蛋白質、脂肪、油および鉱物等による他の汚れ成分と結合した場合、強固で除去しにくい汚れが形成されることがある。このような炭水化物汚れの除去は、重大な問題となることがある。同様に、蛋白質、脂肪および油脂などの他の成分も、除去しにくい汚れおよび残留物を形成することがある。
【0003】
食品汚れおよび飲料汚れは、その形成中に加熱されると、特に強固となる。食品および飲料は、様々な理由により処理中に加熱される。例えば、乳業工場では、殺菌を目的として、乳製品をパスツール殺菌装置(例えば、HTST−高温短時間殺菌装置、またはUHT−超高温殺菌装置)で加熱する。また、多くの食品および飲料製品は、蒸発の結果として濃縮または生成される。
【0004】
蒸発を使って濃縮する食品および飲料製品の例には、全乳、脱脂粉乳、練乳、乳清や乳清誘導体、バター乳、蛋白質、ラクトース溶液、および乳酸などの乳製品と、豆乳、栄養酵母や飼料酵母、および全卵などの蛋白溶液と、オレンジやその他柑橘類のジュース、リンゴジュースやその他リンゴ類のジュース、レッドベリー類のジュース、ココナッツミルク、および熱帯果実類のジュースなどのフルーツジュースと、トマトジュース、赤蕪ジュース、ニンジンジュース、および青汁などの野菜ジュースと、ブドウ糖、D型グルコース、果糖、イソメロース、麦芽糖、コーンシロップ、およびデキストリンなどの澱粉製品と、リキッドシュガー、白砂糖、砂糖水、およびイヌリンなどの糖類と、コーヒーや紅茶抽出物、ホップ抽出物、麦芽抽出物、酵母抽出物、ペクチン、および食肉および骨抽出物などの抽出物と、乳清加水分解物、スープ用調味料、乳加水分解物、および蛋白質加水分解物などの加水分解物と、ノンアルコールビールおよび麦芽汁などのビールと、ベビーフードと、卵白と、豆油と、醸造酒とが含まれる。
【0005】
定置洗浄法は、一般に飲料、ミルク、ジュースといった液体製品の処理に使用されるタンク、ライン、ポンプおよびその他処理装置の内部コンポーネントから汚れを除去するのに適した特殊な洗浄方法である。同洗浄法では洗浄液をシステムに通すが、そのコンポーネントを分解する必要は一切ない。最低限の定置洗浄法では、洗浄液を装置に通し、次いで通常処理を再開する。洗浄液の残余によって汚染されたいかなる製品も廃棄することができる。定置洗浄法は、第一次リンス洗浄、洗浄液の使用、飲料水を使った第二次リンス洗浄、そして動作の再開という手順を踏むことが多い。このプロセスはまた、洗浄水、酸性もしくは塩基性の機能性液体、溶剤、または熱水や冷水などのその他洗浄成分がプロセス中のいかなるステップでも装置と接触することのできる、その他の接触ステップを伴うこともある。洗浄および/または消毒ステップに続く最後の飲料水リンス洗浄処理は、装置の細菌汚染を防ぐために省略されることが多い。
【0006】
しかしながら、従来の定置洗浄法は、あらゆるタイプの汚れを常に充分に除去できるものではない。特に、例えばケチャップ、バーベキューソースなどの低密度の有機汚れは従来のCIP洗浄技法を使って簡単に除去できないことが分かっている。熱分解した汚れもまた、従来のCIP技法を使った除去が著しく困難である。
【0007】
醸造汚れも、表面からの除去が著しく困難な汚れの1つである。醸造ビールは、澱粉ベースの原料、例えば大麦麦芽に由来する糖類の発酵を必要とする。発酵には酵母が使用され、麦芽汁中の糖類がアルコールと炭素に変化する。発酵中に、麦芽汁はビールとなる。煮沸された麦芽汁が冷却され発酵槽に入ると、麦芽汁中に酵母が増殖し発酵のため放置される。これには、酵母のタイプおよびビールの濃度により1週間から数か月間が必要とされる。発酵中、アルコールの生成に加えて、麦芽汁中の微粒子状物質が沈殿する。発酵が完了すると、酵母もまた沈殿し、透明なビールが残るが、発酵タンクは汚れる。
【0008】
発酵は、第1発酵および第2発酵の2段階で実施されることがある。第1発酵中にほとんどのアルコールが生成されてしまうと、ビールは新たな容器に移され、第2発酵の期間に入る。第2発酵は、ビールを梱包前に長期保管する必要のあるとき、または透明度を高める必要のあるときに使用される。
【0009】

商業用醸造酒の発酵プロセス中、しばしば発酵タンクにリング状の汚れ、すなわちブランドへーフェ・リングが形成される。これは、除去が著しく困難である。従来のCIP法での洗浄では、こうしたタンクから常にこの汚れを除去できるとは限らない。そこで、醸造者はタンクの内部に登り、手作業で汚れを擦り落としている。
【0010】

したがって、従来の洗浄技法では簡単には除去できないこれらの種類の汚れを除去するため、改良された方法が必要とされている。この背景技術に反して、本発明はこれを可能とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前処理溶液に続いてオーバーライド使用溶液を適用し、これらのステップの間にリンス洗浄処理のない構成で表面から汚れを除去するための方法を提供する。ガス発生使用溶液が、前処理またはオーバーライド使用溶液のいずれかの中に存在する。ガス発生使用溶液は、二酸化炭素ガスまたはその他のガスを生成することができ、汚れ破断効果を発揮する。前処理およびオーバーライドの組み合わせは、汚れ破断効果とともに、従来の洗浄技法と比較して強化された汚れ除去を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一態様において本発明は、CIPプロセスを用いて表面から汚れを除去する方法を提供する。この方法では、前処理溶液が汚れに浸透するのに必要な時間だけ、ガス発生使用溶液を含む前処理溶液を面に適用する。次いで、オーバーライド使用溶液が面に適用される。オーバーライド使用溶液の適用により、前処理溶液が活性化され、汚れ上および汚れ中にガスが発生する。発生したガスは、表面から汚れを弛緩させ、汚れ塊を崩すことにより、実質的に表面から汚れを除去する汚れ破断効果をもたらす。弛緩した汚れは、オーバーライド溶液が面に接触した際に、容易に洗い去ることができる。また、弛緩した汚れは、オーバーライド使用溶液が適用された後のリンス洗浄処理ステップにおいて簡単に洗い去ることができる。前処理溶液およびオーバーライド使用溶液の適用の間にリンス洗浄処理ステップはない。
【0013】
ある態様において、汚れは熱分解汚れを含む。他の態様において、汚れは高密度の有機汚れを含む。他の態様において、汚れはトマトを基本とする食品汚れ、高濃度の還元糖を含む食品汚れ、および醸造汚れからなる群から選択される。
【0014】
ある態様において、洗浄すべき面は、タンク、ラインおよび処理装置からなる群から選択される。ある態様において、洗浄される処理装置は、パスツール殺菌装置、ホモジナイザー、セパレータ、エバポレータ、フィルター、乾燥器、膜、発酵タンクおよび冷却塔からなる群から選択される。他の態様において、処理装置は、乳製品、チーズ、醸造酒、飲料、食品、バイオ燃料、砂糖、および薬品製造工業で使用される処理装置からなる群から選択される。また、他の態様において、面は床、壁、食器、皿類、ポットおよびパン、熱交換コイル、オーブン、フライヤー、スモーク・ハウス、下水ライン、および車両からなる群から選択される。
【0015】
ある態様において、ガス発生溶液は、二酸化炭素発生成塩からなる水溶液を含む。二酸化炭素発生成塩は、ある態様において、炭酸塩、重炭酸塩、過炭酸塩、セスキ炭酸塩、およびその混合物で構成される。ある態様において、炭酸塩は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、プロピレン・カーボネートおよびその混合物からなる群から選択される。他の態様において、溶液中の炭酸塩の濃度は、約0.2wt%から約3.0wt%である。
【0016】
ある態様において、重炭酸塩は重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、およびその混合物からなる群から選択される。他の態様において、過炭酸塩は過炭酸ナトリウム、過炭酸リチウム、過炭酸カリウム、およびその混合物からなる群から選択される。また、他の態様において、セスキ炭酸塩はセスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸リチウム、およびその混合物からなる群から選択される。
【0017】
ある態様において、面に適用されるオーバーライド使用溶液には酸が含まれる。ある態様において、酸はリン酸、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、乳酸、ギ酸、グリコール酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸と、その混合物および誘導体からなる群から選択される。ある態様において、酸の濃度は約1wt%から約3wt%である。他の態様において、オーバーライド使用溶液は、pHを約7.5未満に低下させる。
【0018】
ある態様において、前処理溶液は約1分から約20分間面に適用される。他の態様において、前処理溶液は約10分間面に適用される。ある態様において、前処理およびオーバーライド溶液は、約2℃から約50℃の間の温度で適用される。
【0019】
ある態様において、本発明は、CIPプロセスを用いて表面から汚れを除去する方法を提供する。かかる方法は、前処理溶液が汚れに浸透するのに必要な時間だけ面に前処理溶液を適用する方法である。次に、ガス発生溶液を含むオーバーライド使用溶液が、面に適用される。オーバーライド使用溶液の適用により、前処理溶液が活性化され、汚れ上および汚れ中にガスが発生し汚れを崩す。次いで、面はリンス洗浄処理される。
【0020】
こうした態様等は、当業者および以下の詳細な説明を考慮する他の者にとって明白となろう。しかしながら、本概要および詳細な説明は、ある例を説明するに過ぎず、本発明の請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本特許または出願書類には、カラーで作成された図面が少なくとも1つ含まれる。カラー図面を含むこの特許または特許出願のコピーは、要請に応じ、必要手数料の支払いをもって特許庁から提供されるだろう。
【図1】熱分解した高密度の有機汚れが付着した2つのステンレス鋼メッシュの洗浄前を示した写真である。
【図2】汚れが付着した2つのステンレス鋼メッシュの洗浄後を示した写真である。
【図3】汚れが付着した2つのステンレス鋼メッシュの洗浄後を示した写真である。
【図4】汚れが付着した2つのステンレス鋼メッシュの洗浄後を示した写真である。
【図5】トウモロコシ・エタノール蒸留廃液の汚れが付着した2つのステンレス鋼メッシュの洗浄前を示した写真である。
【図6】総洗浄時間が20分に達した後の、トウモロコシ・エタノール蒸留廃液で汚れた2つのステンレス鋼メッシュを示した写真である。
【図7】総洗浄時間が25分に達した後の、トウモロコシ・エタノール蒸留廃液で汚れた2つのステンレス鋼メッシュを示した写真である。
【図8】トウモロコシ・エタノール蒸留廃液で汚れた2つのステンレス鋼メッシュの洗浄後を示した写真である。
【図9】醸造沈殿物で汚れた2つのステンレス鋼トレイの洗浄前を示した写真である。
【図10A】醸造沈殿物で汚れた2つのステンレス鋼トレイを60°F(約15.6℃)で洗浄した後を示した写真である。
【図10B】醸造沈殿物で汚れた2つのステンレス鋼トレイを70°F(約21.1℃)で洗浄した後を示した写真である。
【図11A】醸造沈殿物で汚れた2つのステンレス鋼メッシュの洗浄前を示した写真である。
【図11B】醸造沈殿物で汚れた2つのステンレス鋼メッシュの洗浄後を示した写真である。
【図12】汚れが付着した4つのステンレス鋼メッシュを4つの異なる洗浄溶液で洗浄した後を示した写真である。
【図13】汚れが付着した4つのステンレス鋼メッシュを4つの異なる洗浄溶液で洗浄した後を示した写真である。
【図14】汚れが付着した4つのステンレス鋼メッシュを以下の異なる4つの洗浄溶液で洗浄した後を示した写真である:撹拌ありで酸が2%の重炭酸ナトリウムのオーバーライド、撹拌なしで酸が2%の重炭酸ナトリウムのオーバーライド、散気装置により溶液内に気泡を発生させたもの、および義歯洗浄剤。
【図15】エタノール・トウモロコシ蒸留廃液で汚れた2つのステンレス鋼トレイの洗浄後を示した写真である。
【図16A】前処理時間の効果を、除去された汚れのパーセンテージで示したグラフである。
【図16B】トウモロコシ・エタノール蒸留廃液で汚れた4つのメッシュの洗浄後を示した写真である。
【図17A】水平ろ過ビール・タンクの洗浄前を示した写真である。
【図17B】水平ろ過ビール・タンクの洗浄後を示した写真である。
【図18A】汚れが付着した発酵タンクの洗浄前を示した写真である。
【図18B】汚れが付着した発酵タンクの洗浄後を示した写真である。
【図19A】醸造タンク上部の大きなブランドへーフェ・リングを示した写真である。
【図19B】図19Aに示した醸造タンクの洗浄後を示した写真である。
【図19C】図19Aに示した醸造タンクの洗浄後を示した写真である。
【図20A】汚れが付着した醸造タンクの洗浄前を示した写真である。
【図20B】図20Aに示した醸造タンクの洗浄後を示した写真である。
【図21A】汚れが付着した醸造タンクの洗浄前を示した写真である。
【図21B】図21Aの醸造タンクをTrimetaOPで30分間洗浄した後を示した写真である。
【図22A】汚れが付着した醸造タンクの洗浄前を示した写真である。
【図22B】図22Aの醸造タンクをTrimetaOPおよびStabiCIPOxiで40分間洗浄した後を示した写真である。
【図23】ブランドへーフェ・リングのあるタンクの洗浄前と洗浄後を示した2つの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ある態様において本発明は、CIPプロセスを用いて硬質表面から汚れを洗浄および除去するための方法に関するものである。従来のCIP技法では、汚れの洗浄が困難である。ある態様において本方法は、洗浄すべき面への前処理使用溶液の適用、それに続くオーバーライド使用溶液の適用を含む。ガス発生使用溶液は、前処理使用溶液中および/またはオーバーライド使用溶液中に存在する。ガス発生使用溶液は、汚れ破断効果を発揮し、洗浄および汚れ除去を強化する。ガス発生使用溶液は、さらなる便益、例えばフレーバー分解および抗菌効果を提供することができる。
【0023】
本発明をより容易に理解できるようにするため、最初に特定の用語を定義する。
【0024】
本明細書で用いられている「活性材料」という用語は、洗浄すべき表面からの汚れの除去を円滑化および/または強化する、前処理使用溶液および/またはオーバーライド使用溶液中に含まれる不活性でない材料を意味する。
【0025】
本明細書で用いられている「重量パーセント」、「wt−%」、「重量百分率」、「重量%」という用語、およびその変形は、物質の重量を組成の総重量で除算し100で乗算した、物質の濃度を意味する。本明細書で用いられる「パーセント」、「%」、およびそれに類する表現は、「重量パーセント」、「wt−%」などの類義語と理解されるものである。
【0026】
本明細書で用いられている「約」という用語は、例えば、現実世界において溶液を濃縮または使用するための典型的な計測および液体取扱手順を通じて、これらの手順中の不慮の誤りを通じて、製造、原料、または組成の作成もしくは方法の実行に使用される材料の純度の差異を通じて、ならびに同種の事象を通じて、起こり得る数量の変動を意味する。「約」という用語はまた、個々の初期混合に起因する組成の均衡条件の違いによる数量の差異も包含する。「約」という用語に修飾されているか否かを問わず、本特許請求の範囲は、その量の等量を含む。
【0027】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられている単数形は、内容が明確に指示されていない限り、複数の指示対象を含むことに注意されたい。したがって、例えば、「化合物」を含む組成への言及には、2つまたはそれ以上の化合物が含まれる。「または」という用語には、その内容が明確に指示されていない限り、一般にその意味に「および/または」を包含して用いられる。
【0028】
ある様態において本発明の方法は、一般に定置洗浄(すなわちCIP)手順を用いて洗浄される装置に適用する。かかる装置の例には、エバポレータ、熱交換器(チューブ・イン・チューブ式交換器、直接蒸気注入式、およびプレート・イン・フレーム式交換器を含む)、加熱コイル(蒸気式、火炎式、または熱伝導液加熱式を含む)、再結晶装置、結晶皿、噴霧乾燥機、ドラム式乾燥機、およびタンクが含まれる。
【0029】
本発明の方法は、一般に熱分解した汚れ、すなわち蛋白質および炭水化物などの汚れ上の塊または汚れ上の焦げを除去する必要のある、あらゆる用途に使用することができる。本明細書で用いられている「熱分解汚れ」は、熱に暴露されており、その結果として洗浄すべき面が焼かれるようになった1つまたは複数の汚れを意味する。典型的な熱分解した汚れには、処理中に加熱された食品汚れ、例えばパスツール殺菌装置中で加熱される乳製品が含まれる。本発明の方法は、高濃度の還元糖、例えば果糖、コーンシロップを含む熱分解汚れ、の除去において特に効果的である。
【0030】
本発明の方法はまた、従来の洗浄技法による除去が容易でないその他の非熱分解汚れの除去にも用いることができる。本発明の方法は、除去が困難なこうした汚れに対する強化された洗浄を提供する。本発明の方法での洗浄が最も適した汚れには、澱粉、セルロース系繊維、蛋白質、単炭水化物、およびそのいずれかと無機複合体との組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法を用いて効果的に除去される食品汚れの具体例には、野菜ジュースおよびフルーツジュース、醸造および発酵残留物、甜菜およびトウモロコシ処理中に発生する汚れ、ならびに調味料およびソース、例えばケチャップ、トマトソース、バーベキューソースの製造中に発生する汚れが含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの汚れは、製造中および梱包中において、熱交換装置の面上およびその他の面上に生じることがある。
【0031】
本発明の方法を使用できる産業の例には、乳製品、チーズ、砂糖、および醸造酒産業をはじめとする食品および飲料産業と、油脂処理産業と、工業農業およびエタノール処理と、薬品品製造産業とが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
従来のCIP処理は、一般によく知られている。このプロセスには、洗浄すべき面への希薄溶液(一般に約0.5〜3%)の適用が含まれる。この溶液が面を流れ(3〜6フィート(約0.9〜1.8メートル)/秒)、汚れを徐々に除去する。新たな溶液がその面に再適用されるか、または同じ溶液が再循環されてその面に再適用される。
【0033】

汚れ(有機、無機または両成分の混合物を含む)を除去するための一般的なCIPプロセスには、アルカリ性溶液ウォッシュ、酸性溶液ウォッシュ、次いで真水すすぎの少なくとも3つのステップが含まれる。アルカリ性溶液は、汚れを柔軟にして有機性のアルカリ可溶性汚れを除去する。次の酸性溶液は、アルカリ洗浄ステップで残った無機性の汚れを除去する。アルカリ性および酸性溶液の濃度および洗浄ステップの継続時間は、一般に汚れの耐久性によって決定される。水すすぎは、いかなる残留溶液および汚れをも除去し、装置が稼働状態に戻る前に面を洗浄する。
【0034】

従来のCIP洗浄技法とは異なり、本発明の方法は、汚れに浸透する前処理ステップを含む。前処理ステップ後に面に適用されるオーバーライド使用溶液は、汚れに浸透した前処理化学物質を活性化する。ガス発生使用溶液との組み合わせが前処理およびオーバーライドの化学的特性のいずれかに存在し、その結果、汚れ上および汚れ内にガスが発生し、汚れ破断効果を発揮する。この汚れ破断効果は、従来の洗浄技法と比較して、こうした汚れに対する洗浄を促進および強化することが認められている。
【0035】

ガス発生使用溶液
【0036】

本発明のある様態において、ガス発生使用溶液が、前処理および/またはオーバーライド使用溶液中に存在する。本明細書で用いられている「ガス発生使用溶液」とは、除去すべき汚れ上および汚れ中にガス、例えば二酸化炭素を発生させることのできる使用溶液を意味する。ある態様において、ガス発生使用溶液は、除去すべき汚れ上および汚れ中に二酸化炭素ガスを生成することができる。他の態様において、ガス発生使用溶液は、除去すべき汚れ上および汚れ中に二酸化炭素以外のガスを生成することができる。本発明の方法に従って発生させることのできる二酸化炭素以外のガスの例には、二酸化塩素、塩素、酸素が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で使用するガス発生使用溶液は、汚れ除去を円滑化および強化するガス、または洗浄すべき面上にその他の好ましい効果(例えばフレーバー分解)および/または抗菌効果をもたらすガスを生成するいかなる溶液も含むことができる。
【0037】

ある態様において、二酸化炭素ガス発生使用溶液が、洗浄すべき面に適用される。二酸化炭素ガス使用溶液は、炭酸塩、重炭酸塩、過炭酸塩、セスキ炭酸塩、および/またはその混合物を含む使用溶液とすることができる。本発明の方法で使用する炭酸塩の例には、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、プロピレン・カーボネートおよびその混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で使用する重炭酸塩の例には、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、重炭酸アンモニウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸カルシウム、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明の方法で使用するセスキ炭酸塩の例には、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸リチウム、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0038】

他の態様において、非二酸化炭素ガス発生使用溶液が使用される。例えば、ある態様において、ガス発生使用溶液は、塩素含有ガス、例えば二酸化塩素を生成する。塩素含有ガスは、例えば次亜塩素酸ナトリウムと酸の反応によって、汚れ上および汚れ中の原位置で発生させることができる。汚れ上および汚れ中の原位置でガスを発生することのできるどのガス発生使用溶液も、本発明の方法で使用することができる。
【0039】

ある態様において、ガス発生使用溶液は、汚れ上および汚れ中で2種類以上のガスを生成する。例えば、ガス発生使用溶液は、汚れ上および汚れ中で二酸化炭素ばかりでなく塩素ガスを発生することができる。これは多数の方法で達成可能である。例えば、ある態様において、前処理使用溶液は、炭酸塩だけでなく亜塩素酸ナトリウムを含むことができる。酸を含むオーバーライド使用溶液によって活性化されると、二酸化炭素と二酸化塩素の両方が汚れ上および汚れ中に発生することになる。
【0040】

表面からの汚れ除去を強化するだけでなく、選択されたガス発生使用溶液は、さらなる便益をもたらす。例えば、塩素ガスまたは二酸化塩素が汚れ上および汚れ中の原位置で発生する場合、このガスは抗菌特性を有する。さらに、食品および飲料産業において面の洗浄に使用される場合、発生するガスがフレーバー分解効果を有することがある。これはすなわち、汚れ上および汚れ中ならびに面上で発生したガスが、面上に残留する香味を分解する効果である。
【0041】

前処理またはオーバーライド使用溶液のいずれかの中に存在するガス発生使用溶液の量は、汚れの量、汚れの種類、および洗浄すべき面を含む多数の要因によって決定される。ただし、考慮される要因はこれらに限定されない。ある態様において、ガス発生使用溶液の約0.1%から約5%が、前処理またはオーバーライド使用溶液のいずれかの中に存在する。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明に包含されることを理解されたい。ある態様では、ガス発生使用溶液は約1%の炭酸塩または重炭酸塩使用溶液を含む。
【0042】

ある態様では、ガス発生使用溶液は活性化される。例えば、ガス発生使用溶液と酸の反応によってガスが発生する。本発明の方法では、ガス発生使用溶液を活性化させ、洗浄すべき面上での使用に適したいかなる酸も使用できる。典型的な酸には、リン酸、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、乳酸、ギ酸、グリコール酸、メタンスルホン酸、スルファミン酸、およびその混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。前処理またはオーバーライド使用溶液のいずれかの中に存在する酸の量および種類は、汚れの量、汚れの種類、洗浄すべき面、および使用するガス発生使用溶液の組成を含む多数の要因によって決定される。ただし、考慮される要因はこれらに限定されない。ある態様において、約0.05%から約7.0%の酸が、前処理またはオーバーライド使用溶液の中に存在する。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明に包含されることを理解されたい。ある態様において、約1%、約2%、または約3%の酸が、前処理またはオーバーライド使用溶液の中に存在する。好ましくは、約2%の酸が存在する。
【0043】

前処理使用溶液
【0044】

本発明の方法のある様態において、前処理使用溶液は、洗浄すべき面に適用される。前処理溶液の化学物質は、洗浄すべき面上における汚れの除去を促進するものを選択する。前処理溶液は、汚れにプレコートおよび浸透する。使用する特定の化学物質は、除去すべき汚れの種類、洗浄すべき面および適用するオーバーライド使用溶液を含む多様な要因に基づいて選択できる。ただし、考慮される要因はこれらに限定されない。
【0045】

ある態様において、前処理溶液は、約0.01%から約10.0%の活性成分を含む。ある態様において、前処理溶液は、約0.5%、約1%、約2%、または約3%の活性成分を含む。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0046】

ある態様において、前処理使用溶液中の活性成分は、ガス発生使用溶液を含む。ガス発生使用溶液が前処理使用溶液中に存在するとき、この溶液は、オーバーライド使用溶液、例えば酸を含むオーバーライド使用溶液を付加することで、活性化、すなわちガス発生させることができる。例えば、前処理使用溶液は、活性成分として二酸化炭素ガス発生使用溶液(炭酸塩を含む使用溶液など)および/または非二酸化炭素ガス発生使用溶液(二酸化塩素ガス発生使用溶液)を含むことができる。
【0047】

前処理使用溶液中に存在するガス発生使用溶液は、汚れとの最初の接触時にある種のガスを生成できるが、そのガスの大部分は、ガス発生使用溶液をオーバーライド使用溶液で活性化した際に発生する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、初期のガス発生は汚れ中の何らかの酸とガス発生使用溶液との反応によるものと考えられる。有効な汚れ除去に必要な汚れ破断効果をもたらすという意味において、初期のガス発生は充分ではない。
【0048】

オーバーライド使用溶液
【0049】

本発明のある様態において、オーバーライド使用溶液は、前処理使用溶液に続き、洗浄されるべき面に適用されるものである。ある様態において、オーバーライド使用溶液は、洗浄される面もしくはシステムから前処理溶液を前もって排出するか、または濯ぐことなく、前処理溶液に付加される。オーバーライド使用溶液の化学的特性は、洗浄すべき面上における汚れの除去を促進するものを選択する。使用する特定の化学的特性は、例えば、除去すべき汚れ、洗浄すべき面、および選択された前処理使用溶液の化学物質に基づいて選択できる。
【0050】

ある態様において、前処理使用溶液の適用段階とオーバーライド使用溶液の適用段階の間に濯ぎステップはない。ある態様では、前処理使用溶液の適用段階とオーバーライド使用溶液の適用段階の間に濯ぎステップがある。ある態様において、前処理使用溶液の適用段階とオーバーライド使用溶液の適用段階の間に、pH調整剤が適用される。
【0051】

本発明のある様態において、オーバーライド使用溶液は、汚れ上および汚れ中に残留している前処理使用溶液と相互作用して、ガスを発生させる。汚れ上および汚れ中に発生したガスは、汚れ破断効果を引き起こす。本明細書で用いられている「汚れ破断」または「汚れ破断効果」は、本発明の方法に則った処置の後に、表面から汚れが弛緩および解離することを意味する。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、前処理使用溶液が除去すべき汚れ中に浸透すると考えられる。次いでオーバーライド使用溶液が、汚れに適用される。前処理またはオーバーライド使用溶液のいずれかは、少なくとも1つの活性成分としてガス発生使用溶液を含む。汚れ中の前処理溶液がオーバーライド溶液と反応すると、ガス発生が開始する。ガスの「気泡」が汚れ基質を破断し、汚れ塊を壊し、汚れを表面から弛緩させる。この破断効果は単独で洗浄を果たすか、または続く洗いおよび/または濯ぎステップでの洗浄を容易にする。ある態様において、弛緩した汚れはその後、別の洗いまたは濯ぎステップによって、表面から濯ぎ落とすことができる。
【0052】

例えば、ある態様において、二酸化炭素ガス発生使用溶液を含むオーバーライド使用溶液、例えば炭酸塩を含む溶液が、洗浄すべき面に適用される。オーバーライド使用溶液の一部としてガス発生使用溶液を洗浄すべき面に適用すると、選択される前処理使用溶液は、オーバーライド使用溶液が面に適用されるときに、ガスが汚れ上および汚れ中に発生する前処理使用溶液となる。ある態様において、酸を含む前処理使用溶液は、ガス発生溶液を含むオーバーライド使用溶液の適用に先立って洗浄すべき面に適用されることになる。
【0053】

ある態様において、オーバーライド使用溶液は、約0.01%から約10.0%の活性成分を含む。ある態様において、オーバーライド使用溶液は、約0.5%、約1%、約2%、または約3%の活性成分を含む。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。ある態様において、オーバーライド使用溶液中の活性成分は、酸、および/またはガス発生溶液を含むが、これらに限定されるものではない。
【0054】

付加成分
【0055】

他の態様において、付加成分が前処理および/またはオーバーライド使用溶液中に存在してもよい。例えば、前処理および/またはオーバーライド使用溶液は、どのアルカリ性/塩基、浸透剤(界面活性剤、溶剤など)、および/またはビルダーも含むことができる。ほとんどの態様において、水は溶液の残余である。
【0056】

浸透剤
【0057】

浸透剤は、前処理および/またはオーバーライド使用溶液中に存在することができる。水混和性の浸透剤が好ましい。
【0058】

適合する浸透剤の例には、アルコール、短鎖エトキシル化アルコールおよび(1−6エトキシラート基を有する)フェノールが含まれる。有機溶剤もまた、適合する浸透剤である。浸透剤としての使用に適合する有機溶剤の例には、エステル、エーテル、ケトン、アミン、ならびに硝酸化および塩素化炭化水素が含まれる。
【0059】

他の浸透剤群としては、エトキシル化アルコールが好ましい。エトキシル化アルコールの例には、アルキル、アリール、およびアルキルアリール・アルコキシレートが含まれる。これらのアルコキシレートは、塩素群、臭素群、ベンジル群、メチル群、エチル群、プロピル群、ブチル群およびアルキル群でキャッピングすることにより、さらに修飾することができる。溶液中のエトキシル化アルコール濃度は、約0.01から約0.5wt−%が好ましい。
【0060】

浸透剤の他の群には、脂肪酸がある。脂肪酸のある例(ただしそれらに限定されない)には、CからC12の直鎖または分鎖脂肪酸がある。常温で液体の脂肪酸が好ましい。
【0061】

浸透剤としての使用が好ましい他の溶剤群は、水溶性のグリコール・エーテルである。グリコール・エーテルの例には、ジプロピレン・グリコール・メチル・エーテル(ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から商品名DOWANOL DPMで入手可)、ジエチレン・グリコール・メチル・エーテル(ダウケミカル社.から商品名DOWANOLDMで入手可)、プロピレン・グリコール・メチル・エーテル(ダウケミカル社.から商品名DOWANOL DMで入手可)、およびエチレン・グリコール・モノブチル・エーテル(ダウケミカル社.から商品名DOWANOL EBで入手可)が含まれる。
【0062】

界面活性剤もまた、前処理溶液中での使用に適した浸透剤である。適合する界面活性剤の例には、非イオン性、陽イオン性、および陰イオン性の界面活性剤が含まれる。非イオン性の界面活性剤が好ましい。非イオン性界面活性剤は、汚れ除去効果を高め、処理中の面上における溶液の接触角を低下することができる。適合する非イオン性界面活性剤の例には、アルキル−、アリール−、およびアリールアルキル−、アルコキシレート、アルキルポリグリコシドおよびその誘導体と、アミンおよびその誘導体と、アミドおよびその誘導体とが含まれる。有用な非イオン性界面活性剤にはさらに、界面活性分子の一部としてポリアルキレン・オキサイド・ポリマーを有する界面活性剤が含まれる。かかる非イオン性界面活性剤には、例えば、塩素、ベンジル、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよび他の類似するアルキルでキャップされたポリオキシエチレンおよび/または脂肪アルコールのポリオキシプロピレン・グリコール・エーテルと、アルキル・ポリグリコシドのようなポリアルキレン・オキシド遊離非イオンと、ソルビダンおよびスクロース・エステルならびにそれらのエトキシレートと、アルコキシル化エチレン・ジアミンと、グリセロール・エステル、ポリオリオキシエチレン・エステル、脂肪酸のエトキシル化およびグリコール・エステル等のカルボン酸エステルならびにそれらの類似と、ジエタノールアミン縮合物、モノアルカノールアミン縮合物およびポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のカルボン酸アミドと、エトキシル化アミンおよびエーテル・アミンならびに類似するその他非イオン化合物とが含まれる。シリコーン界面活性剤もまた使用できる。
【0063】

ポリアルキレン・オキシド・ポリマー部分を有し、適合する他の非イオン性界面活性剤には、1から約20までのエチレン・オキシド群を有するC−C24アルコール・エトキシレートの非イオン性界面活性剤と、1から約100までのエチレン・オキシド群を有するC−C24アルキルフェノール・エトキシレートと、1から約20までのグリコシド群を有するC−C24アルキルポリグリコシドと、C−C24脂肪酸エステル・エトキシレート、プロポキシレートまたはグリセリドと、C−C24モノアルカノールアミドまたはジアルカノールアミドとが含まれる。
【0064】

界面活性剤が浸透剤として使用される場合、前処理および/またはオーバーライド・溶液中の界面活性剤の量は、一般に約100ppmである。界面活性剤の許容濃度は、約0.01%から約0.5%である。
【0065】

ビルダー
【0066】

前処理溶液および/またはオーバーライド使用溶液はまた、ビルダーを含むことができる。ビルダーには、キレート剤、封鎖剤、洗剤ビルダー、およびそれらの類似物が含まれる。ビルダーは、組成または溶液を安定させることが多い。ビルダーの例には、ホスホン酸およびホスホン酸塩、フォスフェイト、アミノカルボン酸塩およびそれらの誘導体、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、エチレンジアミンおよびエチレントリアミン誘導体、ヒドロキシ酸、およびモノカルボン酸塩、ジカルボン酸塩、トリカルボン酸塩およびそれらに対応する酸が含まれる。他のビルダーには、アルミノケイ酸塩、ニトロアセテートおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が含まれる。他のビルダーには、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸(HEDTA)塩、およびジエチレントリアミン五酢酸塩を含むアミノカーボキシレートが含まれる。水溶性のビルダーが好ましい。
【0067】

特に好ましいビルダーには、EDTA(EDTA 4ナトリウムを含む)と、TKPP(3カリウム・ポリリン酸塩)と、PAA(ポリアクリル酸)およびその塩と、ホスホノブタンカルボン酸と、グルコン酸ナトリウムとが含まれる。
【0068】

前処理溶液中のビルダーの量は、もし存在すれば、一般に約0.1wt−%から約5wt−%である。ビルダーの許容濃度は、0.25wt−%から1.0wt−%および1wt−%から2.5wt−%である。
【0069】

洗浄の方法
【0070】

ある態様において、本発明は、前処理使用溶液を面に適用するステップと、オーバーライド使用溶液を面に適用するステップとを含む、表面から汚れを除去する方法を提供する。濯ぎステップは、前処理使用溶液適用とオーバーライド使用溶液適用の間に存在しても、または存在しなくてもよい。ガス発生使用溶液は、前処理使用溶液またはオーバーライド使用溶液のいずれかの中に存在する。
【0071】

ある態様において、前処理およびオーバーライド・ステップの後には、濯ぎステップのみが続く。他の態様において、前処理およびオーバーライド・ステップの後には、洗浄すべき面に適した従来のCIP法が続く。また、他の態様において、前処理およびオーバーライド・ステップの後には、米国特許出願第10/928774号および11/257874号タイトル「工業設備を前処理で洗浄するための方法(Methods for Cleaning Industrial Equipment with Pre-treatment)」に記載されているようなCIP法が続く。いずれの米国特許出願も、本明細書中で参考として援用するものである。
【0072】

選択された前処理およびオーバーライド使用溶液の組み合わせはまた、所望されるオーバーライドの比率によって決定される。本明細書で用いられている「オーバーライドの比率」という用語は、時間の経過と共に洗浄すべき面に適用される溶液1リットルごとに発生するガスのモル当量を意味する。つまり、個々の洗浄サイクルのオーバーライドの比率は、時間の経過と共に溶液1リットルごとに前処理使用溶液と反応するオーバーライド使用溶液の所定量によって生成されるガスのモル数である。前処理およびオーバーライド使用溶液の組み合わせは、洗浄する面または装置にいかなる実質的な悪影響も及ぼすことなく、実効性のある汚れ破断および洗浄効果をもたらすことのできるオーバーライドの比率を考慮して、選択されるものである。
【0073】

例えば、ある態様において、二酸化炭素ガス発生使用溶液を含む前処理使用溶液、例えば炭酸塩または重炭酸塩が、洗浄すべき面に適用される。次いで酸を含むオーバーライド使用溶液が、面に適用される。洗浄サイクルにおけるオーバーライドの比率は、過炭酸塩または重炭酸塩と反応する酸によって生成される時間あたり、すなわち洗浄サイクルの長さあたりの二酸化炭素のモル数である。
【0074】

ある態様において、約0.2%から約3.0%の二酸化炭素産生塩を含むガス発生使用溶液を含む前処理使用溶液が、洗浄すべき面に適用される。その後、濯ぎステップなしに、約2.0%の酸を含むオーバーライド使用溶液が約4分間から20分間面に適用される。オーバーライドの比率は、約(1.0x10−3CO2)分−1から(1.0x10−1CO2)分−1である。溶液1リットルあたりの発生ガスのリットル数に換算すると、オーバーライドの比率は、約(2.24x10−3リットルCO/リットル溶液)分−1から約(2.24x10−1リットルCO/リットル溶液)分−1である。
【0075】

時間
【0076】

本発明のある態様において、前処理使用溶液は、除去すべき汚れ中にその前処理使用溶液が浸透するのに充分な時間だけ面に適用される。前処理使用溶液が汚れ中に浸透すると、オーバーライド溶液を使って前処理を活性化させる際、汚れ中にガスを発生させることができる。ある態様において、前処理使用溶液は、洗浄すべき面に約1分から約30分間適用される。ある態様において、前処理使用溶液は、洗浄すべき面に約5分から約15分間適用される。ある態様において、前処理使用溶液は、面に約10分間適用される。いかなる値およびこれらの値の範囲も、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0077】

本発明のある態様において、オーバーライド使用溶液は、選択した面を有効に洗浄し、前処理化学物質を活性化する、すなわちガスを発生させるのに充分な時間だけ、面に適用される。ある態様において、オーバーライド使用溶液は約1分から約30分間適用される。ある態様において、オーバーライド使用溶液は約5分から約10分間適用される。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されることを理解されたい。
【0078】

温度
【0079】

本発明の方法は、60°C以上の高温を必要とすることなく、効果的な汚れ除去を発揮する。つまり、本発明の方法は、前処理およびまたはオーバーライド使用溶液を予熱する必要なく、効果的な汚れ除去を発揮するものである。さらに、本発明の方法においては、洗浄すべき面を予熱する必要もない。
【0080】

特に、本発明の方法は、従来のCIP洗浄法と比較して、比較的高温の場合よりも比較的低温の場合の方が効果的であることが分かっている。 いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、高温で汚れ除去が低下するのは、反応速度、すなわち前処理使用溶液とオーバーライド使用溶液の反応が増大するためであると考えられる。この反応増大の結果として、汚れ上および汚れ内でのガス発生能が低下する。
【0081】

ある態様において、前処理使用溶液およびオーバーライド使用溶液のいずれの適用も、約2℃から約50℃の温度で行われる。ある態様において、本発明の方法は、常温または室温、すなわち18℃から23℃で効果的な汚れ除去を発揮する。すべての値およびこれらの値の範囲は、本発明の方法に包含されるものとする。
【0082】

この低温での洗浄能は、高温を必要とする従来の洗浄技法と比較して、エネルギーおよびコストの節約をもたらす。さらに、本発明は、高温に耐え得ない面上においても汚れを効果的に除去する。
【0083】

また、より低温、例えば約40℃で実施された場合、本発明の方法は、より高温の場合よりも、低濃度のガス発生使用溶液で有効な汚れ除去を提供できることが分かっている。例えば、約40℃では、1%ガス発生使用溶液が約70%の汚れ除去をもたらすことが分かっている。80℃では、1%ガス発生使用溶液が約30%の汚れ除去をもたらす。したがって、本発明の方法は、低温度かつ低濃度の使用溶液で有効に汚れを除去できる。それによって、省エネルギーと、洗浄1回あたりに消費される化学物質量の低下の両方を達成できる。
【0084】

使用
【0085】

これまでCIP洗浄法としての使用について説明してきたが、本発明の方法は、他の用途での汚れ除去にも使用することができる。例えば、本発明の方法は、硬質面、例えば、壁、床、食器、皿類、ポットおよびパン(pan)、熱交換コイル、オーブン、フライヤー、スモーク・ハウス、下水ライン、および車両の洗浄に用いることができる。本発明の方法はまた、繊維、例えば布やカーペットの洗浄にも使用できる。ある態様において、本発明の方法は、洗濯物の洗浄に用いられる。例えば、前処理使用溶液が汚れに染み込むのに充分な時間だけ、この前処理使用溶液を洗濯物に適用する。オーバーライド使用溶液を洗濯物に適用すると、ガス発生および汚れ破断効果がもたらされる。このプロセスの後に通常通り洗濯機で水洗いをし、弛緩した汚れを除去することもできる。別の方法として、このプロセスの後に、弛緩した汚れおよび残留するオーバーライド使用溶液を除去するため、濯ぎステップのみを続けることもできる。他の洗濯用途には、洗濯機用洗剤および洗濯用プレスポッターとしての使用があるが、これらに限定されるものではない。
【0086】

本発明の方法はまた、死骸および食品を処理する方法としても使用できる。例えば、ガス発生使用溶液を含む前処理使用溶液を死骸または食品、例えば野菜の面に適用することができる。ガス発生使用溶液は、二酸化炭素を発生させる塩、例えば炭酸塩または重炭酸塩と、二酸化塩素ガスを発生させる化合物、例えばNaClOとを含むことができる。充分な前処理時間の後、酸を含むオーバーライド使用溶液が面に適用される。この混合物により、二酸化炭素ガスの他に、酸性化亜塩素酸ナトリウム(ASC)および二酸化塩素が面上で発生することになる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、二酸化炭素に加えてASCおよび二酸化塩素が発生することにより、面活性の増大、すなわち汚れ中のガス泡に起因する汚れ破断によって、洗浄効果が高まると考えられる。かかる方法は、より少ない化学物質を消費しながら増大した洗浄効果をもたらすであろうと考えられる。
【0087】

本発明のより完全な理解のために、以下の例を挙げてある実施例を説明する。これらの例および試験は単なる例示であり、それらに限定されるものではないことを理解されたい。
【実施例】
【0088】


【0089】

以下の成分、方法および例は、単なる例示として理解されるべきものであり、これらに限定されるものではない。
【0090】

例1−熱分解した高密度の有機汚れの除去
【0091】

熱分解した高密度の有機汚れが、以下の例での使用に供された。汚れを供するために、ケチャップ20グラムがステンレス鋼メッシュの片面に広げられ、メッシュの背面も同様に薄く覆われるように押し込まれた。被覆されたメッシュは、汚れに粘着性が出るまで60℃で20分間乾燥された。図1は、何らかの洗浄処理を行う前の2つの汚れたメッシュの写真である。
【0092】

a)単一ガス発生溶液を含む前処理使用溶液
【0093】

以下の溶液は、個別のビーカー中に160°F(約71℃)で供される:1)1%重炭酸ナトリウムと、2)2%AC−55−5。AC−55−5は、59.5%の水、3.5%のリン酸、および37.0%の硝酸を含む市販の酸性化合物である。撹拌子が各ビーカー内に置かれ、溶液は450rpmで撹拌された。
【0094】

前述のように熱分化した高濃度の有機汚れが付着したメッシュが、各ビーカー内に置かれ、10分間留められた。10分後、AC−55−5が、重炭酸溶液の入ったビーカーに追加された。2%溶液とするのに充分なAC−55−5が追加された。AC−55−5は、5分間のうちに5つの等しい追加物中に付加された。このオーバーライド・ステップの間、活発な泡立ちが溶液内ならびに汚れ上および汚れ内に観察された。この活発な泡立ちにより、汚れの断片がメッシュから遊離した。同様の汚れ破断効果は、AC−55−5溶液中では観察されなかった。図2は、ケチャップで汚れた2つのメッシュの洗浄処置後を示した写真である。この図に見られるように、重炭酸ナトリウムの後に酸オーバーライドで処理されたメッシュは、酸のみで処理されたメッシュと比較して、多大な汚れ除去効果を示した。
【0095】

b)2つ以上のガス発生溶液を含む前処理使用溶液
【0096】

前処理使用溶液中の複数のガス発生使用溶液の混合効果を測定するため、テストを実施した。2つのメッシュが、前述の熱分解した高密度の有機汚れに供せられた。
【0097】

以下の溶液は、個別のビーカー中に160°F(約71℃)で供される:1)1%重炭酸ナトリウム、および0.5%プロピレン・カーボネートと、2)2%AC−55−5。撹拌子が各ビーカー内に置かれ、溶液は450rpmで撹拌された。10分後、AC−55−5が、重炭酸ナトリウム/プロピレン・カーボネート溶液の入ったビーカーに追加された。2%溶液とするのに充分なAC−55−5が追加された。AC−55−5は、5分間のうちに5つの等しい追加物中に付加された。
【0098】

図3は、メッシュの洗浄処置後を示した写真である。この図に見られるように、ガス発生溶液の組み合わせ、すなわち重炭酸ナトリウム/プロピレン・カーボネート、続いて酸オーバーライドで処理されたメッシュは、酸のみで処理されたメッシュと比較して、多大な汚れ除去効果を示した。
【0099】

c)単一ガス発生組成を含む前処理使用溶液とアルカリ処理の比較
【0100】

単一ガス発生溶液を含む前処理使用溶液および酸性オーバーライドと、アルカリ性洗浄処理の有効性を比較するため、テストを実施した。2つのメッシュが、前述の熱分解した高密度の有機汚れに供せられた。
【0101】

以下の溶液は、個別のビーカー中に160°F(約71℃)で供される:1)1%重炭酸ナトリウム、および2)1.5%NaOH。撹拌子が各ビーカー内に置かれ、溶液は450rpmで撹拌された。10分後、AC−55−5が、重炭酸溶液の入ったビーカーに追加された。2%溶液とするのに充分なAC−55−5が追加された。AC−55−5は、5分間のうちに5つの等しい追加物中に付加された。
【0102】

図4は、メッシュの洗浄処置後を示した写真である。この図で分かるように、ガス発生溶液を含む前処理使用溶液に続いて酸性オーバーライドで処理されたメッシュは、ほぼ完全な汚れ除去効果を示した。アルカリ洗浄のみで処理したメッシュは、汚れ除去がほぼ皆無であった。
【0103】

例2−トウモロコシ・エタノール蒸留廃液の除去
【0104】

a) 80°F(約27℃)でのトウモロコシ・エタノール蒸留廃液の除去
【0105】

トウモロコシ・エタノール蒸留廃液の乾燥付着したメッシュが供せられた。メッシュは、清浄なメッシュをエタノール蒸留廃液に浸し、80℃で1時間乾燥することによって供せられた。図5は、汚れたメッシュの洗浄前を示した写真である。以下の溶液は、個別のビーカー中に80°F(約71℃)で供される:1)1%重炭酸ナトリウムと、2)2%AC−55−5。撹拌子が各ビーカー内に置かれ、溶液は450rpmで撹拌された。トウモロコシ・エタノール蒸留廃液が乾燥付着したメッシュは、各ビーカーの中に置かれた。10分後、AC−55−5が、重炭酸溶液の入ったビーカーに追加された。2%溶液とするのに充分なAC−55−5が追加された。AC−55−5は、5分間のうちに5つの等しい追加物中に付加された。メッシュは、AC−55−5が最初に重炭酸塩溶液に添加されてから10分間留められた。AC−55−5中のメッシュは、20分間、ビーカー中に留められた。
【0106】

図6は、2つのメッシュの洗浄処置後を示した写真である。この図に見られるように、酸のみで処理したメッシュと比較して、前処理/オーバーライド化学物質を使用した場合のほうが、高い汚れ除去効果が観察された。図7は、汚れた2つのメッシュを前述の方法で合計25分間(前処理10分間、その後15分間)洗浄した後の写真である。この図に見られるように、酸のみで処理したメッシュと比較して、前処理/オーバーライド化学物質(左側のメッシュ)で処理した場合のほうが、より多量の汚れが除去されていた。
【0107】

b) 130°F(約54℃)でのトウモロコシ・エタノール蒸留廃液の除去
【0108】

130°Fでのアルカリ処理と、前処理/オーバーライド洗浄プロセスの効果を比較判定するため、テストを実施した。1)1%重炭酸ナトリウム、および2)1%NaOHの2つの調法が、個別のビーカーに130°Fで供せられた。撹拌子が各ビーカー内に置かれ、溶液は450rpmで撹拌された。汚れたメッシュが、各ビーカー中に置かれた。10分後、AC−55−5が、重炭酸溶液の入ったビーカーに追加された。2%溶液とするのに充分なAC−55−5が追加された。AC−55−5は、5分間のうちに5つの等しい追加物中に付加された。メッシュは、AC−55−5が最初に重炭酸塩溶液に添加されてから10分間留められた。NaOH溶液中のメッシュは、20分間、ビーカー中に留められた。
【0109】

図8は、2つのメッシュの洗浄後を示した写真である。この図に見られるように、NaOHのみで処理したメッシュと比較して、前処理/オーバーライド化学物質(左側のメッシュ)で処理したメッシュのほうが、高い汚れ除去を示した。
【0110】

例3−醸造沈殿物の除去
【0111】

a) ステンレス鋼表面からの醸造沈殿物汚れの除去
【0112】

醸造沈殿物30ミリメートルが、ステンレス鋼トレイ中の加熱板上に煮詰まっていた。図9は、汚れたステンレス鋼トレイの洗浄前を示した写真である。個別のビーカー中にトレイAおよびトレイBが置かれ、撹拌子により450rpmの速度で撹拌された。「A」とラベル表示されたトレイは、以下の洗浄用化学物質で処理された。ガス発生溶液として重炭酸ナトリウムを含んだ前処理溶液が、トレイに15分間適用された。次いで酸性のオーバーライド使用溶液が、トレイに適用された。オーバーライド使用溶液は、2%AC−55−5を含んでいた。このオーバーライド使用溶液は、15分間適用された。トレイBは、1.5%NaOHで30分間処理された。両方のトレイは、60°Fの溶液で処理された。図10Aで見られるように、トレイAはトレイBを上回る高い洗浄効果を示した。
【0113】

第2の実験では、60°Fの代わりに70°F(約21℃)で上記と同じ洗浄用化学物質を適用し、350rpmの速度で撹拌した。図10Bに見られるように、これらの条件でトレイAはトレイBを上回る高い洗浄効果を示した。
【0114】

b) メッシュに付着した醸造沈殿物汚れの除去
【0115】

20グラムの醸造沈殿物が、ステンレス鋼メッシュに均一に適用され、硬化し僅かに茶色になるまで300°F(約149℃)で熱せられた。図11Aは、メッシュの洗浄前を示した写真である。メッシュの1つは、1%重炭酸ナトリウムの入ったビーカー中に置かれた。もう1つのメッシュは、2%AC−55−5の入ったビーカー中に置かれた。いずれの溶液も、60°F(約16℃)の温度で、撹拌子を使って350rpmで撹拌された。15分間浸した後、重炭酸溶液の入ったビーカーにAC−55−5をゆっくりと追加した。安定した泡立ちが汚れ中および溶液中に発生した。重炭酸ナトリウムと酸の入ったビーカーでは、メッシュからの汚れの弛緩が観察されたが、酸のみのビーカーでは観察されなかった。図11Bは、メッシュの洗浄後を示した写真である。この図に見られるように、重炭酸ナトリウム前処理で処理したメッシュには、高い洗浄効果が見られた。各メッシュのより明るい箇所は、汚れ除去が起こった箇所である。
【0116】

c) ビーカーに付着した醸造沈殿物(ブランドヘーフェ・リング)の除去
【0117】

発酵していない麦芽汁を醸造所から入手し、上面発酵酵母を接種した。150mLの麦芽汁を250mLのエルレンマイヤー・フラスコ中で1週間発酵させた。このあと、以前は泡で占められていた発酵ビール上部の領域に、汚れのリング、所謂ブランドヘーフェ・リングが出現した。フラスコ底面にある大半の酵母塊と共に、ビールを別の容器に静かに移した。以下の溶液170mLが、フラスコに追加された:フラスコ1)1%重炭酸ナトリウム前処理溶液、続いて5分後にAC−55−5を含んだ酸性オーバーライド溶液、およびフラスコ2)テストの継続時間を通じて2%AC−55−5。両方の溶液は、40°F(約4℃)でテストされた。フラスコに撹拌子を追加し、洗浄サイクルを通して溶液を200rpmで撹拌した。
【0118】

前処理/オーバーライド化学物質で処理されたフラスコは、酸のみで処理したフラスコと比較して大幅に高い洗浄効果を示した。
【0119】

例4−付加的ガス発生使用溶液
【0120】

本発明の方法を使用して、二酸化炭素発生能のある他のガス発生使用溶液を評価した。15グラムのケチャップをメッシュの片面に、5グラムを同じメッシュの裏面に塗った。淡褐色になるまでこのメッシュを乾燥させた。以下の溶液が、個別のビーカー中に供せられた:1)1.5%NaOH、2)1.0%NaHCO、3)1.0%NaCO、および4)1.0%KHCO。各溶液は、75°Fで供せられた。撹拌子が各ビーカー内に置かれ、溶液は350rpmで15分間撹拌された。
【0121】

15分後、20グラムのAC−55−5が、10分間のうちに溶液2、3、および4の入ったビーカーに追加された。炭酸ナトリウム溶液(3番)では、pHが約2になるように追加のAC−55−5が追加され、他の溶液(溶液2番および4番)では、オーバーライド用化学物質を追加してから同様に追加された。オーバーライド期間中、活発な泡立ち、すなわちガス発生が各ビーカー内で起こった。NaOHを含む溶液中(1番)では、泡立ちが一切観察されなかった。
【0122】

15分間の前処理時間を含む合計45分間の洗浄後、前処理/オーバーライド化学物質で補助洗浄したメッシュは、NaOH処理したメッシュと比較して高い汚れ除去を示した(図12)。各メッシュのより明るい箇所は、汚れ除去が生じた箇所を表す。汚れ除去効果を評価するため、メッシュを乾燥させ、重さを量った。その結果は、表1の通りである。
【0123】

表1
【表1】

【0124】

これらの結果から分かるように、炭酸ナトリウムで前処理したメッシュが、洗浄後に最小の重量となった。これは、この試料で最も効果的な汚れ除去が生じたことを表している。
【0125】

例5−付加的ガス発生使用溶液
【0126】

本発明の方法を使用して、二酸化炭素発生能のある他のガス発生使用溶液を評価した。15グラムのケチャップをメッシュの片面に、5グラムを同じメッシュの裏面に塗った。淡褐色になるまでこのメッシュを乾燥させた。以下の溶液が、70°F(約21℃)で4つの個別のビーカー中に供せられた:1)1%MgCO、2)1%CaCO、3)1%NaHCO、および4)1.5%NaOH。MgCOおよびCaCO溶液の入ったビーカーは、ミルク様の外見を示し、その中に固体懸濁を有していた。
【0127】

汚れたメッシュが、各ビーカー中に置かれた。各ビーカー内に撹拌子を置き、350rpmで撹拌しながらメッシュを10分間浸した。10分後、20グラムのオーバーライド使用溶液、すなわちAC−55−5が溶液1、2、3の入った各ビーカーに追加された。AC−55−5は、10分間のうちに追加された。追加のAC−55−5をMgCOおよびCaCO溶液に追加し、他のオーバーライド溶液(例えば溶液3番)と同様に、pHが約2に到達するようにした。オーバーライド期間中、溶液1、2、3の入ったビーカー内で、活発な泡立ち、すなわちガス発生が起こった。NaOHのビーカー内では、泡立ちが一切観察されなかった。
【0128】

10分間の前処理を含む合計30分間の洗浄後、メッシュは溶液から取り除かれた。図13は、メッシュの洗浄後を示した写真である。この図に見られるように、NaHCOで処理されたメッシュは、最高の洗浄結果を示した。MgCOおよびCaCOで処理されたメッシュも、優れた洗浄を示した。酸でのオーバーライドを受けなかったメッシュ(NaOHのみで処理されたメッシュ)は、微小の汚れ除去を示した。
【0129】

例6−ガス発生使用溶液の追加順序
【0130】

前処理溶液中にガス発生使用溶液を追加する方法に対し、オーバーライド使用溶液中にガス発生使用溶液を追加する方法の有効性をテストするために、以下の実験が行われた。
【0131】

この実験では、醸造沈殿物汚れを使用した。醸造沈殿物で汚れたソリッド・ステンレス鋼トレイ2つが、72°F(約22℃)で、2%AC−55−5を含む前処理使用溶液の入った個別のビーカー中に置かれた。前処理溶液を5分間適用した。溶液は、撹拌子を使って350rpmの速度で撹拌された。5分間の前処理後、10グラムのガス発生使用溶液、すなわちNaHCOを含んだオーバーライド使用溶液が、ビーカーの1つにゆっくりと追加された。第2のビーカーには、オーバーライド使用溶液を何も追加しなかった。オーバーライド使用溶液の追加後、溶液中に活発な泡立ちが観察され、その直後、洗浄溶液の上に除去された汚れの小片が蓄積した。この実験の結果、前処理使用溶液に続き、ガス発生使用溶液を含むオーバーライド使用溶液を汚れた面に適用することで、有効な汚れ除去が達成されることが分かった。
【0132】

同じ実験が、炭酸カリウム(KCO)からなるガス発生使用溶液を用いて実施された。醸造沈殿物で汚れたソリッド・ステンレス鋼トレイが、72ーF(約22℃)で、2%AC−55−5を含む前処理使用溶液の入ったビーカー中に置かれた。前処理溶液を5分間適用した。溶液は、撹拌子を使って350rpmの速度で撹拌された。20グラムのKCOを18mLの脱イオン水中に溶解したオーバーライド使用溶液が、2分間のうちに追加された。活発な泡立ちが観察され、再び汚れが除去された。反応が完了した後のpHは、約7であった。追加のAC−55−520グラムが追加された。これにより、別の短周期の気泡発生がもたらされ、最終的なpHは約1であった。
【0133】

例7−オーバーライドの速度の測定
【0134】

前述の例1で説明した通り、熱分解した高密度の有機汚れの付着したメッシュが4つ供せられた。各メッシュは、以下の溶液のいずれか1つが入ったビーカー中に置かれた:1)2%AC−55−5が5回投与で加えられた1%NaHCO3、2)2%AC−55−5が単回投与で加えられた1%NaHCO、3)1.5%NaOH、および4)2%AC−55−5。
【0135】

この実験は、70°F(約21℃)および160°F(約71℃)で実施された。70°Fでの単回投与追加の反応速度は、かなり穏やかであり、漸次追加によるオーバーライド・テストと類似していた。160°Fでは、オーバーライド使用溶液、すなわちAC−55−5の単回投与での追加後、その反応は苛烈であった。溶液の約40%が、ビーカーから噴出した。全般的な洗浄の差異は、溶液1および2の間で確定的ではなかった。しかしいずれも、溶液3および4において観察された洗浄結果を大きく上回った。具体的には、溶液1および2で処理したメッシュは約50%の汚れ除去を示し、溶液3および4で処理したメッシュは約5%の汚れ除去を示した。
【0136】

例8−ガスを発生させる従来製品との比較
【0137】

炭酸塩または重炭酸塩と酸の反応を使用してCOガスを発生させる洗浄用製品としては、様々なものが市販されている。これらの従来製品は一段階処理を採用している。つまり、本発明の方法とは異なり、反応が汚れ上および汚れ中ではなく、溶液中で起こる。本発明の洗浄方法と従来の洗浄製品を比較するために、以下の実験が行われた。
【0138】

前述の例1で説明した方法で汚れたメッシュが供せられ、以下の溶液が入ったビーカー中に置かれた:1)水および散気装置、2)パッケージの説明書きに従って使用した卓上用入れ歯洗浄剤、3)撹拌子を用いて100°F(約38℃)で撹拌した1%重炭酸ナトリウム、および4)撹拌していない1%重炭酸ナトリウム。10分間浸した後、2%AC−55−5を含んだオーバーライド溶液が溶液3および4に追加された。
【0139】

図14は、メッシュの洗浄処置後を示した写真である。また、洗浄後に試料の重さを量ったその結果は、表2の通りである。
【0140】

表2
【表2】

【0141】

図14に見られるように、本発明の方法で処理したメッシュ(試料3および4)は、散気装置によって供給される気泡の影響を受けたメッシュと比較して、優れた汚れ除去を示した。また、散気装置からの気泡で処理された試料は、試料3および4のいずれよりも重量があり、試料3および4と比較してより多くの汚れが残ったことが示された。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の方法が示した優れた汚れ除去は、汚れの外側ではなく、汚れの内側にCOの気泡が形成されたことに起因すると考えられる。気泡を面衝突させた試料(試料1)に見られる洗浄力の不足は、強化された汚れ除去の主原因が面気泡ではないことを示している。
【0142】

また図14に見られるように、入れ歯洗浄剤で処理したメッシュ(試料2)は、本発明の方法を用いて処理した他の試料(試料3および4)と比較して、強い洗浄を示さなかった。入れ歯洗浄剤で処理した試料の汚れの面上には泡が形成されたが、この泡は汚れ除去をもたらさなかった。
【0143】

また本発明の方法を従来の発泡性浴室洗浄剤と比較した。エタノール・トウモロコシ蒸留廃液で汚した2つのステンレス鋼トレイが、前述のように供せられた。1つのトレイは、炭酸ナトリウムと共に、パッケージの説明に従って使用された重硫酸ナトリウムの発泡性便器用洗浄剤を含む溶液中に置かれた。別のトレイは、25℃の1%重炭酸ナトリウム前処理使用溶液で処理された。10分後、このトレイは、2%AC−55−5オーバーライド使用溶液で20分間処理された。
【0144】

図15は、トレイの洗浄処置後を示した写真である。左のトレイは発泡性便器用洗浄剤で処理され、右のトレイはガス発生前処理使用溶液および酸性オーバーライド使用溶液で処理された。洗浄後、便器用洗浄剤で処理したトレイには14.56gの汚れが残り、前処理および酸性オーバーライド使用溶液で処理したトレイには3.65gの汚れが残った。
【0145】

便器用洗浄剤で処理した試料では溶液中に発泡が観察されたが、前処理/オーバーライド化学物質で処理したトレイと比較して、この気泡によって汚れ除去が強化されることはなかった。重ねて、いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、汚れ除去におけるこの差異は、従来の洗浄用化学物質においては溶液中にのみ泡形成があるのに対し、本発明の方法では汚れの内部に気泡が形成されることによるものと考えられる。
【0146】

例9−前処理時間
【0147】

最大の洗浄便益をもたらす前処理時間を特定するために、以下の研究を実施した。前述の例2で説明した通り、4つのメッシュをトウモロコシ蒸留廃液で等しく汚した。各メッシュは、それぞれ70°F(約21℃)の1%重炭酸ナトリウム溶液の入ったビーカー中に置かれた。酸オーバーライド使用溶液が、以下のように適用された。試料1−酸オーバーライド使用溶液が0分に追加された。試料2−酸オーバーライドが前処理の5分後に追加された。試料3−酸オーバーライドが前処理の10分後に追加された。試料4−酸オーバーライドが前処理の15分後に追加された。各試料の合計洗浄時間は30分であった。
【0148】

図16Aは、除去された汚れの量(汚れ除去率%)に対する前処理時間の効果を表したグラフである。図16Bは、前述の様々な前処理時間で洗浄したメッシュを示した写真である。これらの図に見られるように、最大の洗浄性能は10分の前処理時間で成立した。
【0149】

例10−醸造発酵タンク中の汚れ除去
【0150】

醸造汚れの除去に関して、本発明の方法の有効性を判定するために、以下の調査が実施された。
【0151】

a)ビール・タンクからの汚れ除去
【0152】

水平ろ過ビール・タンクが、以下の方法を用いて洗浄された。最初に、1%重炭酸カリウム前処理使用溶液が面に適用された。15分後、TrimetaOPを含む酸オーバーライド使用溶液が、さらに15分間で面に適用された。TrimetaOPは、湿潤および脱泡能をもつメタンスルホン酸ベースの酸性剤である。オーバーライド使用溶液の適用時、回路の観察ガラス内に泡が見られた。
【0153】

図17Aは、タンクの洗浄前を示した写真である。図17Bは、前述の方法を用いて洗浄した後のタンクの写真である。この図に見られるように、洗浄後、タンクの面上に残った汚れは大幅に取り除かれた。
【0154】

b)発酵タンクからの汚れ除去
【0155】

40日間発酵したトリプル・ボック・ビールによって極めて大きな汚れが生成され、また老朽化した発酵タンクが選択された。洗浄前にビールを排出した後、汚れを5日間放置した。以下の方法が用いられた。最初に、1%重炭酸カリウム前処理使用溶液が10分間面に適用された。10分後、TrimetaOPを含むオーバーライド使用溶液が、タンクに適用されたオーバーライド使用溶液の温度は、約50°F(約10℃)であった。
【0156】

図18Aは、洗浄前の汚れた発酵タンクの写真である。図18Bは、前述の方法で洗浄した後のタンクを示した写真である。この図に見られるように、汚れの大部分は除去されたが、汚れの除去は完全ではなかった。残留した汚れには、粘り気と弾性があった。発酵タンクの洗浄に使用される標準的な洗浄方法を考慮し、多数の変量が洗浄サイクルに導入された。具体的には、洗浄中、溶液は3つの異なる回路に10〜15分間隔で送られた(噴霧ボール、ラッキング・アーム、通気路)。これが前述の標準的な前処理/オーバーライド方法となることはなかった。
【0157】

前処理として炭酸ナトリウムを用いた別のテストでは、優れた汚れ除去を達成した。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、炭酸ナトリウムのpHおよび湿潤特性が高まった結果、汚れ除去効果が増大したものと考えられる。
【0158】

c)醸造タンクからのブランドヘーフェ・リングの除去
【0159】

タンク上部に大きなブランドヘーフェ・リングの付着したタンクが選択された。ビールは、洗浄の1週間前に排出された。以下の方法が用いられた。1%炭酸ナトリウム溶液を含む前処理使用溶液が、面に適用された。この前処理使用溶液は、約45°F(約7℃)の冷たい水道水を用いて作られた。15分間の前処理後、2%TrimetaOPを含むオーバーライド使用溶液が、約10分間で面に適用された。オーバーライド使用溶液を適用してから15分後、最終的なpHを約3.6まで下げるため、pH調整剤として20%硫酸が追加された。排出のため、タンクは水を使って手動で濯がれた。
【0160】

図19は、タンクの洗浄前を示した写真である。図19Bおよび19Cは、タンクの洗浄後を示した写真である。これらの図に見られるように、ほとんどの汚れは除去されたが、元々ブランドへーフェ・リングの下端であった、タンクの片側にある細い線は除去されなかった。
【0161】

d)醸造タンクからの汚れ除去
【0162】

醸造タンクに関して別の試験が行われた。図20Aは、タンクの洗浄前を示した写真である。1%炭酸ナトリウムを含む前処理使用溶液が、45°F(約7℃)で15分間タンクに適用された。この前処理ステップ中に、若干の泡発生があった。15分後、2%TrimetaOPを含むオーバーライド使用溶液および1ガロン(約3.8リットル)の20%硫酸が、面に10分間適用された。この溶液のpHは約7であった。タンクは、45°F(約7℃)の冷たい水道水で濯がれた。図20Bは、タンクの洗浄後を示した写真である。この図に見られるように、この方法は相当な汚れ除去をもたらした。
【0163】

本発明の方法と、TrimetaOPのみを用いる従来のタンク洗浄技法を比較するために、2つのタンクが前処理ステップなしで洗浄された。第1のタンク(図21Aに洗浄前を示す)は2%TrimetaOPのみを用いて洗浄され、第2のタンク(図22Aに洗浄前を示す)は0.5%StabiCIPOxiを付加した2%TrimetaOPを用いて洗浄された。
【0164】

図21Bは、TrimetaOPのみで30分間洗浄された後の第1のタンクの写真である。図22Bは、TrimetaOPおよびStabiCIPOxiで40分間洗浄された後の第2のタンクの写真である。これらの図に見られるように、処理後、どちらのタンクも完全には洗浄されていなかった。前処理/オーバーライドの化学的特性を用いて洗浄したタンクと比較すれば、本発明の方法によって洗浄力が強化されることは明らかである。
【0165】

e)6週間の発酵汚れの除去
【0166】

6週間発酵サイクルの生成物であるブランドヘーフェ・リングのあるタンクが選択された。このタンクは、発酵サイクルの終了時に未知の期間だけ凍結されており、次いで氷層を解かすために温水で濯がれた。1%重炭酸カリウム前処理使用溶液が面に適用された。TrimetaOP(2%)および20%硫酸を含むオーバーライド使用溶液が、面に適用された(最終的なpHは約4.5)。オーバーライド中、洗浄溶液内に汚れの大きな塊が観察された。図23は、タンクの洗浄前と洗浄後とを示した写真である。この図に見られるように、洗浄後の面上にはまだ若干の汚れが残っていた。次いで、1.75%MIPBCが面に適用された。30分間の追加洗浄でも、汚れの完全除去には失敗した。
【0167】

前処理/オーバーライド化学物質が適用された後も若干の汚れが残ったが、残った汚れは5分未満の軽いブラッシングにより除去された。こういったタンクの標準的な洗浄方法では、CIP後に残った汚れを手動で擦り落とす必要がある。これには通常、15〜20分かかる。したがって、本発明の前処理オーバーライドの化学的特性は、従来の洗浄技法と比較して、汚れ除去時間を実質的に約75%短縮した。
【0168】

例11−合計洗浄時間の比較
【0169】

本発明の方法は、洗浄の総合的な効果を増大する。すなわち、多種多様な汚れを対象に、より多量の汚れを除去する。洗浄効果のもう一つの基準は、面の洗浄に要する合計時間である。本発明の方法の態様と、酸のみの洗浄処理、アルカリのみの洗浄処理、および市販の酸ベースの洗浄処理TrimetaPSFを用いた洗浄処理とを比較するために実験が行われた。
【0170】

ステンレス鋼メッシュを20グラムのケチャップで汚し、80℃の炉で45分間乾燥させた。以下の溶液は、個別のビーカー中に80°F(約27℃)で供せられた:1%重炭酸ナトリウム、1.3%リン酸、1.5%NaOH、および2%TrimetaPSF。汚れたメッシュが、350rpmで撹拌されている各ビーカー中に置かれた。15分後、2%硫酸オーバーライド溶液が重炭酸ナトリウム溶液の入ったビーカーに追加された。硫酸オーバーライドが、15分間のうちにビーカーに追加された。最終洗浄(100%の汚れ除去)の時間は、最初のメッシュが完全に洗浄された時間を記録した。表3は、この比較試験の結果を示している。
【0171】

表3
【表3】

【0172】

表3に見られるように、本発明の態様を用いると、100%の汚れ除去が52分で達成された。従来の洗浄液では、同じ時間内で半分の汚れ除去にも到達しなかった。したがって、本発明の方法は、従来の洗浄技法と比較して、所与の時間内において50%を超える優れた汚れ除去を達成する。
【0173】

その他の態様
【0174】

これまで本発明をその詳細な説明と共に解説してきたが、前述の説明は例示を目的としたものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではないことを理解されたい。その他の態様、効果、および変更は、以下の特許請求の範囲のうちにある。
【0175】

さらに、前述のすべての特許公報の内容は、この参照によって全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0176】

また、いかなる値および範囲(例えば時間、温度、活性成分の量)が本明細書に供せられようとも、それらの値および範囲によって包含されるすべての値および範囲は、本発明の範囲のうちに包含されることを意味するものと理解されたい。さらに、それらの範囲のうちに収まるすべての値、ならびに値の範囲の上限または下限もまた、本願によって意図されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CIPプロセスを用いて表面から汚れを除去するための方法であって、前記方法が以下の、ステップを含む方法。
(a)ガス発生使用溶液(use solution)を含む前処理溶液を、前記前処理溶液が汚れに浸透するのに充分な時間だけ前記表面へ適用するステップと、
(b)オーバーライド使用溶液を前記表面に適用し、前記オーバーライド使用溶液の適用によって前処理溶液が活性化し汚れ上および汚れ中にガスを発生させ、前記ガスが汚れ破断(disruption)効果を発揮するのに充分な量発生させ、実質的に前記表面から前記汚れを除去するステップと、
(c)前記表面を濯ぐステップ。
【請求項2】
前記汚れが熱分解汚れを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記汚れが高密度有機汚れを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記汚れが、トマトをベースとする食品汚れ、高濃度の還元糖を含む食品汚れ、および醸造(brewery)汚れからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記表面がタンク、ラインおよび処理装置からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄される処理装置が、パスツール殺菌装置、ホモジナイザー、セパレータ、エバポレータ、フィルター、乾燥器、膜、発酵タンクおよび冷却塔からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記処理装置が、乳製品、チーズ、醸造酒、飲料、食品、バイオ燃料、砂糖、および薬品(pharmeceutical)製造工業で使用される処理装置からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記表面が、床、壁、食器、皿類、ポットおよびパン、熱交換コイル、オーブン、フライヤー、スモーク・ハウス、下水(sewer drain)ライン、および車両(vehicle)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス発生溶液が、二酸化炭素発生成塩からなる水溶液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素発生成塩が、炭酸塩、重炭酸塩、過炭酸塩、セスキ炭酸塩、およびその混合物を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記炭酸塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、プロピレンカーボネートおよびその混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記重炭酸塩が、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム、およびその混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記過炭酸塩が、過炭酸ナトリウム、過炭酸リチウム、過炭酸カリウム、およびその混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記セスキ炭酸塩が、セスキ炭酸ナトリウム、セスキ炭酸カリウム、セスキ炭酸リチウム、およびその混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記オーバーライド使用溶液が酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
酸が、リン酸、硝酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、乳酸、ギ酸、グリコール酸、スルファミン酸、メタンスルホン酸と、その混合物および誘導体からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記酸の濃度が約1wt%から約3wt%である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オーバーライド使用溶液がpHを約7.5未満に低下させる、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記炭酸塩の濃度が、約0.2wt%から約3.0wt%である、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記前処理溶液が、約1分から約20分間前記表面に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記前処理溶液が、約10分間前記表面に適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前処理およびオーバーライド溶液が、約2℃から50℃の間の温度で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
CIPプロセスを用いて表面から汚れを除去するための方法であって、前記方法が以下のステップを含む方法:
(a)前処理溶液を、前記前処理溶液が前記汚れに浸透するのに充分な時間だけ前記表面へ適用するステップと、
(b)ガス発生使用溶液を含むオーバーライド使用溶液を前記表面に適用し、前記オーバーライド使用溶液の適用によって前処理溶液が活性化し、汚れ上および汚れ中にガスが発生し、前記ガスが汚れ破断効果を発揮するのに充分な量発生し、実質的に前記表面から前記汚れを除去するステップと、
(c)前記表面を濯ぐステップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−514834(P2011−514834A)
【公表日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545600(P2010−545600)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【国際出願番号】PCT/IB2009/050538
【国際公開番号】WO2009/101575
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(500320453)イーコラブ インコーポレイティド (120)
【Fターム(参考)】