説明

気泡シートの製造方法

【課題】キャップフィルムに形成された突起の最薄肉部の肉厚に応じてバックフィルムを薄肉化することにより、気泡シートの強度を確保しながらも、材料樹脂の使用量の削減と軽量化を図ることができる気泡シートの製造方法、及びそのような気泡シートを提供する。
【解決手段】気泡シート1が有する個々の気泡を形成する多数の突起2aから任意に一つの突起2aを選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起2aの中心を通る断面において、当該突起2aの最薄肉部の肉厚をT、当該突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚をTとしたときに、50%以上の突起において、0.9≦T/T≦1.1なる関係が成り立つようにして、気泡シート1の強度を確保しながら、バックフィルム3を薄肉化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した多数の気泡を有する気泡シートの製造方法、及びそのような気泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中空状に膨出する多数の突起が形成されたキャップフィルムに、突起内に空気を封入するバックフィルムを積層することによって形成された、独立した多数の気泡を有する気泡シートが、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用されている。
【0003】
このような気泡シートは、例えば、多数の吸引孔が設けられた成形ロールの外周面に、溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて中空状に膨出する突起を真空成形してキャップフィルムとした後に、成形された突起の開口側にバックフィルムを積層するなどして製造することができる(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−216770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したような成形ロールを用いた真空成形によって突起を形成しようとすると、樹脂フィルムが引き延ばされて形成された突起は、もとの樹脂フィルムよりも薄肉になるが、このとき突起は偏肉しており、突起の側壁よりも頂面側の角部の方が薄肉となっているということを本発明者らは見出した。
【0006】
したがって、気泡シートを製造するにあたっては、真空成形された突起の最も薄肉となる部位の厚みに着目して、この厚みを基準に強度設計をするのが好ましく、そのような最薄肉部よりも厚みのある部位は、気泡シートの強度を確保するという観点からは、必要以上に厚肉となっていることになる。
【0007】
しかしながら、従来は、このことについて深く検討されることはなかった。特に、バックフィルムについては、フィルム状に成形しやすい厚みが適当であろうという程度の認識しかなく、キャップフィルムに形成された突起の最薄肉部の肉厚に着目し、その厚みに応じてバックフィルムを薄肉化しようとする試みは今までなかった。
【0008】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、キャップフィルムに形成された突起の最薄肉部の肉厚に応じてバックフィルムを薄肉化することにより、気泡シートの強度を確保しながらも、材料樹脂の使用量の削減と軽量化を図ることができる気泡シートの製造方法、及びそのような気泡シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
また、本発明に係る気泡シートの製造方法は、多数の吸引孔が設けられた成形ロールの外周面に溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて、中空状に膨出する多数の突起が真空成形されたキャップフィルムを形成するとともに、前記突起内に空気を封入するバックフィルムを溶融状態で供給しながら熱融着によって前記キャップフィルムに積層する気泡シートの製造方法であって、前記突起を任意に一つ選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起の中心を通る断面において、当該突起の最薄肉部の肉厚をT、当該突起と対向する部位における前記バックフィルムの最薄肉部の肉厚をTとしたときに、50%以上の突起において、0.9≦T/T≦1.1なる関係が成り立つように、前記樹脂フィルムに比して、溶融状態で供給されてくる前記バックフィルムの厚みを小さくする方法としてある。
【0010】
本発明に係る気泡シートは、多数の吸引孔が設けられた成形ロールの外周面に溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて、中空状に膨出する多数の突起を真空成形してなるキャップフィルムに、前記突起内に空気を封入するバックフィルムが熱融着によって積層された気泡シートであって、前記突起を任意に一つ選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起の中心を通る断面において、当該突起の最薄肉部の肉厚をT、当該突起と対向する部位における前記バックフィルムの最薄肉部の肉厚をTとしたときに、50%以上の突起において、0.9≦T/T≦1.1なる関係が成り立つ構成としてある。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、気泡シートの強度を確保しながらも、気泡シートを製造するのに必要な材料樹脂の使用量の削減や、気泡シートの軽量化を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る気泡シートの製造工程の一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る気泡シートの実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係る気泡シートの実施形態の変形例を示す概略斜視図である。
【図4】成形ロールの外周面に設けられる吸引孔の一例を示す説明図である。
【図5】本発明に係る気泡シートの実施形態におけるフィルム送り方向に直交する方向に沿った突起の中心を通る断面を示す説明図である。
【図6】押圧ロールによってバックフィルムをキャップフィルムに密着させる例を示す説明図である。
【図7】押圧ロールによってバックフィルムをキャップフィルムに密着させたときにバックフィルムが偏肉した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、図1は、本実施形態に係る気泡シートの製造工程の一例を示す説明図である。また、図2は、本実施形態に係る気泡シートを示す概略斜視図であり、図3は、本実施形態に係る気泡シートの変形例を示す概略斜視図である。
【0014】
図1に示すように、気泡シート1を製造するには、まず、多数の吸引孔41が設けられた成形ロール40の外周面に、溶融状態にある樹脂フィルム2bを接触させて中空状に膨出する多数の突起2aを真空成形し、これによってキャップフィルム2を形成する。これとともに、溶融状態で供給されてきたバックフィルム3を熱融着によってキャップフィルム2に積層する。
これにより、突起2a内に空気が封入され、独立した多数の気泡を有する気泡シート1が製造され、剥離ロール60によって成形ロール40から剥離された気泡シート1は、図示しない巻き取りロールに巻き取られていく。
なお、吸引孔41のそれぞれは、図示しない真空ポンプにつながれており、吸引孔41内を真空吸引することによって真空成形がなされるようになっている。
【0015】
このようにして製造される気泡シート1は、図2に示すように、キャップフィルム2とバックフィルム3とからなる二層構造とするほか、図3に示すように、突起2aの頂面側にライナーフィルム7を積層した三層構造としてもよいが、これらに限定されない。
【0016】
図1に示す例において、突起2aが真空成形されてキャップフィルム2となる樹脂フィルム2bは、図示しない押し出し機に取り付けられたフラットダイ21から、材料樹脂を押し出すことによって連続して供給されるようになっている。同様に、キャップフィルム2に形成された突起2aに空気を封入するバックフィルム3は、図示しない押し出し機に取り付けられたフラットダイ31から、材料樹脂を押し出すことによって連続して供給されるようになっている。
各フラットダイ21,31から押し出されてくる樹脂フィルム2b及びバックフィルム3の厚みは、それぞれの材料樹脂の吐出量やラインスピードなどを適宜調整することで所定の厚みとすることができる。
なお、特に図示しないが、気泡シート1を図3に示すような三層構造とする場合、ライナーフィルム7も同様に、押出機に取り付けられたフラットダイから材料樹脂を押し出して連続供給することによって、突起2aの頂面側に積層されるようにすることができる。
【0017】
積層気泡シート1の製造に用いる材料樹脂、すなわち、キャップフィルム2、バックフィルム3、及びライナーフィルム7の材料樹脂としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂を単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが例示できる。プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、イソブチレン、ペンテン−1などのα−オレフィンが挙げられ、これらの他のオレフィンとの共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体のいずれであってもよい。
また、ポリエチレン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、直鎖状超低密度ポリエチレン(LVLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが例示できる。
【0018】
本実施形態にあっては、フラットダイ21から押し出された樹脂フィルム2bに比して、フラットダイ31から押し出されたバックフィルム3の厚みを小さくすることによって、キャップフィルム2に形成された突起2aの最薄肉部の肉厚を考慮し、その厚みに応じてバックフィルム3を薄肉化する。このとき、突起2aの最薄肉部の肉厚を考慮するのは、次の理由からである。
【0019】
すなわち、気泡シート1は、気泡が破断して封入された空気が漏れ出してしまうと、緩衝性などの諸機能が損なわれてしまうため、気泡が容易に破断してしまわない程度の強度が必要となるが、その強度は、突起2aの最薄肉部の肉厚に大きく依存する。したがって、突起2aの開口部を封止して突起2aとともに気泡を形成しているバックフィルム3は、突起2aと対向する部位(キャップフィルム2と融着していない部位)の最薄肉部の肉厚が、突起2aの最薄肉部の肉厚と同等でありさえすれば、気泡シート1の強度を確保した上で、バックフィルム3の薄肉化を図ることが可能になる。
【0020】
具体的には、気泡シート1が有する個々の気泡を形成する多数の突起2aから任意に一つの突起2aを選び、気泡シート1が製造される過程でキャップフィルム2やバックフィルム3が送られていく方向(フィルム送り方向)に直交する方向に沿った当該突起2aの中心を通る断面において、当該突起2aの最薄肉部の肉厚をT、当該突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚をTとしたときに、0.9≦T/T≦1.1、好ましくは0.95≦T/T≦1.05なる関係が成り立つように、それぞれの材料樹脂の吐出量やラインスピードなどを適宜調整することにより、樹脂フィルム2bに比して、溶融状態で供給されてくるバックフィルム3の厚みを小さくする。これによって、気泡シート1の強度を確保しながら、バックフィルム3を薄肉化することができ、気泡シート1を製造するのに必要な材料樹脂の使用量の削減や、気泡シート1の軽量化を可能とする。
このような関係は、全ての突起2aにおいて成り立っているのが好ましいが、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上の突起2aにおいて成り立っていれば、気泡シート1の強度を十分に確保でき、緩衝性などの諸機能が損なわれてしまうことがない。
【0021】
このようにしてバックフィルム3の薄肉化を図るにあたり、溶融状態で供給されてくるバックフィルム3の厚みを、樹脂フィルム2bの厚みに対して、どの程度の厚みとするかは、突起2aの形状に応じて適宜調整することができる。
【0022】
ここで、成形ロール40に設けられる吸引孔41の形状は、成形しようとする突起2aの形状に応じて適宜設定され、図4(b)に示すような円柱状に穿設したり、図4(c)に示すような円錐台状に穿設したりすることができる。
なお、図4は、成形ロール40に設けられる吸引孔41の一例を示す説明図である。図4(a)は、成形ロール40の外周面の一部を斜視して示す斜視図であり、成形ロール40の回転方向を矢印で示している。図4(b)は、吸引孔41を円柱状に形成した例を示す図4(a)のA−A断面に相当する断面図であり、図4(c)は、吸引孔41を円錐台状に形成した例を示す同A−A断面に相当する断面図である。
【0023】
例えば、吸引孔41の深さをd、吸引孔41の開口部の直径をD、吸引孔41の底面側の角部の曲率半径をRとしたときに、0.35×D≦d≦0.45×D、0.005×D≦R≦0.15×Dなる関係が成り立つように、吸引孔41が円柱状に穿設された成形ロール41によって突起2aを真空成形すると、突起2aの形状は、図5(a)に示すようなものとなる。
なお、図5は、フィルム送り方向に直交する方向に沿った突起の中心を通る気泡シート1の要部断面図である。
【0024】
この場合、樹脂フィルム2bの厚みと、溶融状態で供給されるバックフィルム3の厚みとの比が、好ましくは3:1〜4.5:1、より好ましくは3.25:1〜4.25:1となるように、それぞれの材料樹脂の吐出量やラインスピードなどを適宜調整することで、突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚と、突起2aの最薄肉部の肉厚とを同等にすることができる。
なお、両者の比が上記範囲に満たないと、バックフィルム3の薄肉化が不十分となる傾向にあり、上記範囲を越えると、バックフィルム3の肉厚が薄くなり過ぎてしまう傾向にある。また、図5(a)に示す例において、突起2aの最薄肉部は頂面側の角部となり、当該最薄肉部の肉厚T1は、通常、突起2aが真空成形されてキャップフィルム2となる前の樹脂フィルム2bの肉厚の25%前後の値となる。
【0025】
また、吸引孔41の深さをd、吸引孔41の開口部の直径をD、吸引孔41の底面における平坦部の直径をD、吸引孔41の底面側の角部の曲率半径をRとしたときに、0.3×D≦d≦0.4×D、0.1×D≦D≦0.85×D、0.005×D≦R≦0.25×Dなる関係が成り立つように、吸引孔41が円錐台状に穿設された成形ロール41によって突起2aを真空成形すると、突起2aの形状は、図5(b)に示すようなものとなる。
【0026】
この場合、樹脂フィルム2bの厚みと、溶融状態で供給されるバックフィルム3の厚みとの比が、好ましくは2.5:1〜3.5:1、より好ましくは2.75:1〜3.25:1となるように、それぞれの材料樹脂の吐出量やラインスピードなどを適宜調整することで、突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚と、突起2aの最薄肉部の肉厚とを同等にすることができる。
なお、両者の比が上記範囲に満たないと、バックフィルム3の薄肉化が不十分となる傾向にあり、上記範囲を越えると、バックフィルム3の肉厚が薄くなり過ぎてしまう傾向にある。また、図5(b)に示す例において、突起2aの最薄肉部は頂面側の角部となり、当該最薄肉部の肉厚T1は、通常、突起2aが真空成形されてキャップフィルム2となる前の樹脂フィルム2bの肉厚の35%前後の値となる。
【0027】
ところで、突起2a内に空気が封入される際、その雰囲気温度は100℃以上の高温になっているが、これが常温に低下すると、突起2a内に空入された空気が収縮する。このため、気泡シート1に形成された突起2aの大きさは、一般には、成形ロール40に設けられた吸引孔41よりも小さくなっているが、気泡シート1に形成された突起2aから、成形ロール40に設けられた吸引孔41の形状を推測するのは可能である。
【0028】
例えば、適当な大きさに揃えて裁断された気泡シートと、厚さ1mmの板紙とを、水平面上に気泡シート、板紙の順に交互に十枚ずつ重ねて200gのおもりを載せたときの水平面から最も上位に重ねられた板紙の上面までの高さをRとすると、気泡の高さHは(R−10)/10から求められるが、このようにして求めた気泡の高さHと、吸引孔41の深さdとの間には、H≒0.8dなる関係が成り立つ。これは、突起2a内に封入される際の空気の体積(吸引孔41の体積に相当する)をV1、そのときの温度をT1(例えば、100℃)とし、温度T2(例えば、20℃)のときに突起2a内に封入されている空気の体積をV2とすると、V1/T1=V2/T2なる関係が成り立ち(シャルルの法則)、V2/V1=T2/T1=(273+20)/(273+100)≒0.8となることからも裏づけられる。
【0029】
したがって、上記のようにして求められた気泡の高さHと、突起2aの頂面側の角部の方が最も薄肉となるという本発明者らが見出した知見を勘案すれば、気泡シート1に形成された突起2aの形状から、成形ロール40に設けられた吸引孔41の形状を推測することができる。
【0030】
前述したような成形ロール40を用いて、真空成形によって突起2aが形成されたキャップフィルム2には、成形ロール40に密着した状態のまま、突起2aの開口側にバックフィルム3が積層される。このとき、例えば、図1に二点鎖線で示す押厚ロール80により、バックフィルム3をキャップフィルム2に圧着することによって両者を互いに熱融着させることができる。
【0031】
ただし、押厚ロール80でバックフィルム3を圧着すると、図6に示すように、溶融状態にあるバックフィルム3が、押圧ロール80によって吸引孔41内に押し込まれるように部分的に引き延ばされてしまうことがある。さらに、押圧ロール80とバックフィルム3との間に空気が入り込んでしまうと、その分だけバックフィルム3が引き延ばされる量が増えてしまうことも考えられる。
このような場合には、バックフィルム3の突起2aと対向する部位が、図7に示すように偏肉してしまい、その中央部が最も薄肉になってしまう傾向があるが、このような偏肉化の程度は、キャップフィルム2に積層される際のバックフィルム3の温度や、押圧ロール80による加圧力などの諸条件によって大きく変動する。
【0032】
このため、キャップフィルム2にバックフィルム3を積層するにあたっては、バックフィルム3に偏肉を生じさせない手段によって両者を密着させて、互いに熱融着させるようにするのが、突起2aの最薄肉部の肉厚Tと、突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚をTとの間に前述の如き関係が成り立つように、両者の肉厚を安定して制御する上で好ましい。
【0033】
このような手段としては、例えば、バックフィルム3をキャップフィルム2に積層するに先だって、バックフィルム3に静電気を帯びさせることにより、バックフィルム3を静電気によってキャップフィルム2に密着させて両者を互いに熱融着させることが考えられる。このようにすれば、バックフィルム2に余計な外力が作用せず、バックフィルム3の偏肉化を抑制することができる。
【0034】
バックフィルム3の偏肉化を抑制するにあたり、気泡シート1が有する個々の気泡を形成する多数の突起2aから任意に一つの突起2aを選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起2aの中心を通る断面において、当該突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の肉厚の最大値をt3max、最小値をt3minとしたときに、少なくとも50%以上、好ましくは70%以上の突起において、1≦t3max/t3min≦1.1なる関係が成り立つようにするのが好ましく、より好ましくは1≦t3max/t3min≦1.05である。
【0035】
このような関係が成り立つように、バックフィルム3の偏肉化を抑制することで、突起2aの最薄肉部の肉厚Tと、突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚をTとの間に前述の如き関係が成り立つように、両者の肉厚をより安定して制御することができる。
【0036】
なお、図1にあっては、押圧ロール80に代えて静電気付与手段50を設置した例を示している。静電気付与手段50としては、バックフィルム3に静電気を帯びさせることができるものであれば、その具体的な態様は問わない。例えば、バックフィルム3の幅方向(フィルム送り方向に直交する方向)に沿って、複数の放電針51が並設された放電装置を利用することができ、各放電針51と、これらと対になる対電極52との間に高圧の直流電圧を印加して、バックフィルム3を間に介在させた状態で放電させるなどすればよい。この場合、放電針51の設置位置を適宜調整することで、成形ロール40を対電極として利用し、図1に示す対電極52を省略してもよい。
【実施例】
【0037】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
[実施例1]
材料樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いて、図1に示す装置(ただし、対電極52を省略して成形ロール40が対電極となるようにした)により、樹脂フィルム2bの厚みと、溶融状態で供給されるバックフィルム3の厚みとの比が4:1となるように適宜調整しつつ、ラインスピード60m/分で、目付け量40g/mの気泡シート1を製造した。
【0039】
なお、成形ロール40の外周面には、図4(a)に示すように千鳥状に配列された多数の吸引孔41を、フィルム送り方向に沿ったピッチP1が10mm、フィルム送り方向に直交する方向に沿ったピッチP2が11.5mmとなるように設けた。各吸引孔41は円柱状に穿設され(図4(b)参照)、その寸法は、深さdが4.0mm、直径Dが10mm、底面側の角部の曲率半径Rが1mmであった。
【0040】
以上のようにして製造された気泡シート1について、フィルム送り方向に直交する方向に沿った突起の中心を通る断面の概略を図5(a)に示し、図中t〜tで示す各部位の肉厚を表1に示す。
【0041】
また、得られた気泡シート1について、以下の評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0042】
[圧縮強度]
一つの気泡に対して、ロードセル荷重試験機により送り速度5mm/分で荷重をかけ、残存厚み0.2mmになるまでの最大荷重を測定した。
[引張強度]
JIS L1096 A法に準拠して、試験片幅50mm、引張速度500mm/分の条件で、フィルム送り方向(MD)と、フィルム送り方向に直交する方向(TD)のそれぞれについて引張強度を測定した。
[引張伸び率]
JIS L1096 A法に準拠して、試験片幅50mm、引張り速度500mm/分の条件で、フィルム送り方向(MD)と、フィルム送り方向に直交する方向(TD)のそれぞれについて引張伸び率を測定した。
[引裂強度]
JIS K7128−2に準拠して、試験片幅50mm、つかみ具の間隔40mmの条件で、フィルム送り方向(MD)と、フィルム送り方向に直交する方向(TD)のそれぞれについて引裂強度を測定した。
[圧縮クリープ]
150mm×150mmの試験片を10枚重ねて、これに7kgのウェイトを載せて3000Pa相当の荷重をかけた。7日経過後の残存厚みを測定し、荷重をかけた直後の厚みを100%として、これに対する割合を求めた。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様にして、樹脂フィルム2bの厚みと、溶融状態で供給されるバックフィルム3の厚みとの比が3:1となるように適宜調整しつつ、ラインスピード60m/分で、目付け量35g/mの気泡シート1を製造した。
なお、成形ロール40としては、吸引孔41の配列を、フィルム送り方向に沿ったピッチP1を10mm、フィルム送り方向に直交する方向に沿ったピッチP2を11.5mmとするとともに、各吸引孔41を、深さdが3.5mm、直径Dが10mm、吸引孔の底面における平坦部の直径Dが8.5mm、底面側の角部の曲率半径Rが1mmの円錐台状に穿設(図4(c)参照)したものを用いた。
【0044】
以上のようにして製造された気泡シート1について、フィルム送り方向に直交する方向に沿った突起の中心を通る断面の概略を図5(b)に示し、図中t〜tで示す各部位の肉厚を表1に示す。
【0045】
また、得られた気泡シート1について、実施例1と同様の評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0046】
[比較例1]
実施例1と同様にして、樹脂フィルム2bの厚みと、溶融状態で供給されるバックフィルム3の厚みとの比が65:35となるように適宜調整しつつ、ラインスピード60m/分で、目付け量40g/mの気泡シート1を製造した。
なお、成形ロール40としては、実施例2と同じものを用いた。また、バックフィルム3の積層には押圧ロール80を用いた。
【0047】
以上のようにして製造された気泡シート1について、実施例1の測定部位に相当する部位の肉厚を表1に示す。
【0048】
また、得られた気泡シート1について、実施例1と同様の評価試験を行った。その結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0052】
例えば、前述した実施形態では、突起2aが真空成形されてキャップフィルム2となる樹脂フィルム2bと、キャップフィルム2に形成された突起2aに空気を封入するバックフィルム3とが、押し出し機に取り付けられたフラットダイ21,31から押し出されて供給される例を示したが、これに限定されない。当該樹脂フィルム2bと当該バックフィルム3とは、予め所定の厚みでフィルム状に成形されたものを加熱溶融しつつ、突起2aの真空成形や、熱融着が可能な溶融状態で供給するようにしてもよい。これは、ライナーフィルム7についても同様である。
【0053】
また、前述した実施形態において、突起2aの最薄肉部の肉厚と、突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚との関係を前述の如く具体的に規定するのは、発明の外延を明確にするためである。本発明は、突起2aと対向する部位におけるバックフィルム3の最薄肉部の肉厚が、突起2aの最薄肉部の肉厚と同等となっていれば、気泡シート1の強度を確保した上で、バックフィルム3の薄肉化を図ることが可能になることを見出した点に技術的な意義がある。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、包装用の緩衝材をはじめとする各種の用途に広く利用することができる独立した多数の気泡を有する気泡シートの製造方法、及びそのような気泡シートを提供する。
【符号の説明】
【0055】
1 気泡シート
2 キャップフィルム
2a 突起
2b 樹脂フィルム
3 バックフィルム
40 成形ロール
41 吸引孔
50 静電気付与手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の吸引孔が設けられた成形ロールの外周面に溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて、中空状に膨出する多数の突起が真空成形されたキャップフィルムを形成するとともに、前記突起内に空気を封入するバックフィルムを溶融状態で供給しながら熱融着によって前記キャップフィルムに積層する気泡シートの製造方法であって、
前記突起を任意に一つ選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起の中心を通る断面において、当該突起の最薄肉部の肉厚をT、当該突起と対向する部位における前記バックフィルムの最薄肉部の肉厚をTとしたときに、
50%以上の突起において、
0.9 ≦ T/T ≦ 1.1
なる関係が成り立つように、
前記樹脂フィルムに比して、溶融状態で供給されてくる前記バックフィルムの厚みを小さくすることを特徴とする気泡シートの製造方法。
【請求項2】
前記バックフィルムを前記キャップフィルムに積層するに先だって、前記バックフィルムに静電気を帯びさせることにより、前記バックフィルムを静電気によって前記キャップフィルムに密着させて両者を互いに熱融着させる前記請求項1に記載の気泡シートの製造方法。
【請求項3】
前記吸引孔の深さをd、前記吸引孔の開口部の直径をD、前記吸引孔の底面側の角部の曲率半径をRとしたときに、
0.35×D ≦ d ≦ 0.45×D
0.005×D ≦ R ≦ 0.15×D
なる関係が成り立つように前記吸引孔が円柱状に穿設された前記成形ロールによって前記突起を真空成形するとともに、
前記樹脂フィルムの厚みと、溶融状態で供給される前記バックフィルムの厚みとの比を3:1〜4.5:1とした請求項1又は2のいずれか一項に記載の気泡シートの製造方法。
【請求項4】
前記吸引孔の深さをd、前記吸引孔の開口部の直径をD、前記吸引孔の底面における平坦部の直径をD、前記吸引孔の底面側の角部の曲率半径をRとしたときに、
0.3×D ≦ d ≦ 0.4×D
0.1×D ≦ D ≦ 0.85×D
0.005×D ≦ R ≦ 0.25×D
なる関係が成り立つように前記吸引孔が円錐台状に穿設された前記成形ロールによって前記突起を真空成形するとともに、
前記樹脂フィルムの厚みと、溶融状態で供給される前記バックフィルムの厚みとの比を2.5:1〜3.5:1とした請求項1又は2のいずれか一項に記載の気泡シートの製造方法。
【請求項5】
多数の吸引孔が設けられた成形ロールの外周面に溶融状態にある樹脂フィルムを接触させて、中空状に膨出する多数の突起を真空成形してなるキャップフィルムに、前記突起内に空気を封入するバックフィルムが熱融着によって積層された気泡シートであって、
前記突起を任意に一つ選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起の中心を通る断面において、当該突起の最薄肉部の肉厚をT、当該突起と対向する部位における前記バックフィルムの最薄肉部の肉厚をTとしたときに、
50%以上の突起において、
0.9 ≦ T/T ≦ 1.1
なる関係が成り立つことを特徴とする気泡シート。
【請求項6】
前記突起を任意に一つ選び、フィルム送り方向に直交する方向に沿った当該突起の中心を通る断面において、当該突起と対向する部位における前記バックフィルムの肉厚の最大値をt3max、最小値をt3minとしたときに、
50%以上の突起において、
1 ≦ t3max/t3min ≦ 1.1
なる関係が成り立つ請求項5に記載の気泡シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−240920(P2010−240920A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90412(P2009−90412)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【特許番号】特許第4393577号(P4393577)
【特許公報発行日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】