説明

気泡入り果実加工品

【課題】高いオーバーランを有し易く、保存中に気泡を維持した気泡入り果実加工品の提供。
【解決手段】フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品であって、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチンを配合した気泡入り果実加工品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルーツコンテンツが高く、油脂含量が少なく、pHが低い気泡入り果実加工品であって、高いオーバーランを有し易く、保存中に気泡を維持した気泡入り果実加工品に関する。より詳しくは、フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品であって、高いオーバーランを有し易く、保存中に気泡を維持した気泡入り果実加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
口溶けがよく、洋菓子、和菓子、アイスクリーム等に幅広く使用できるジャムとして、起泡し、ソフトなクリーム状を呈するホイップジャムの提供が試みられてきた。しかし、果実ジャムベースに小麦蛋白分解物や高メトキシルペクチンなどの泡安定剤を併用することによって製造されるホイップジャム(例えば、特許文献1参照)や、果実ジャムを含み、油脂と不飽和脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤とで気泡されたクリーム状組成物(例えば、特許文献2参照)は、小麦蛋白分解物や油脂により味が劣り、気泡の安定性も低かった。
【0003】
ショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤はホイップクリームの製造にあたり、起泡し、更にその気泡の安定性を維持する役割を有することが知られている(例えば、非特許文献1参照)。そして、グリセリン脂肪酸モノエステル、HLB5以上のショ糖脂肪酸エステルなどの乳化剤を含むペースト状乳化気泡剤を用いて起泡し、焼成することで気泡を維持しているケーキなども製造されている(例えば、特許文献3)。
【0004】
しかし、ジャムはpHが低いため乳化剤が不安定化しやすく、油脂による気泡の維持では味が劣るという問題があった。更に、ケーキなどと異なり焼成による気泡の安定化を図ることもできない。
そこで、フルーツコンテンツが高い一方で油脂含量が低く、果実味が楽しめるとともに、気泡を安定して維持できる気泡入り果実加工品の提供が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭64−6743号公報
【特許文献2】特公昭62−36649号公報
【特許文献3】特開2004−329156
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】泡のエンジニアリング,株式会社テクノシステム, 2005年,507〜517頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高いオーバーランを有し易く、保存中に気泡を維持した気泡入り果実加工品の提供を課題とする。更に詳しくは、フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品であって、高いオーバーランを有し易く、保存中に気泡を維持した気泡入り果実加工品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチンを配合することで、フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の気泡入り果実加工品は、高いオーバーランを有し易く、冷凍保存及び冷蔵保存中にも気泡を安定して維持できる気泡入り果実加工品であり、フルーツコンテンツが高い一方で油脂含量が低いため、健康にもよく、果実味を十分に楽しむことができる。
【0009】
すなわち、本発明は次の(1)〜(6)の気泡入り果実加工品等に関する。
(1)フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品であって、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチンを配合することを特徴とする気泡入り果実加工品。
(2)0.01%以上の有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、0.03%以上のグリセリン脂肪酸モノエステルを配合し、かつ、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上1部に対し0.1〜50部のグリセリン脂肪酸モノエステルを配合する上記(1)に記載の気泡入り果実加工品。
(3)更にソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種以上を配合する上記(1)又は(2)に記載の気泡入り果実加工品。
(4)更にポリデキストロース、難消化性デキストリン又はセルロースのいずれか1種以上を配合する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の気泡入り果実加工品。
(5)オーバーランが50%以上である上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の気泡入り果実加工品。
(6)上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の気泡入り果実加工品を用いる飲食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気泡入り果実加工品は、果実味及び気泡による軽い舌触りを楽しむことができ、そのままホイップ状の食品として食することができる。また、本発明の気泡入り果実加工品は、冷凍保存及び冷蔵保存中にも気泡を安定して維持できることから、アイスクリーム、ケーキ等の製造やデコレーション等にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】凍結保存前及び凍結保存後解凍した気泡入り果実加工品の気泡の維持を示した図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の「気泡入り果実加工品」とは、攪拌等により気泡が含まれた、ホイップ状のジャム、フルーツソース、ピューレ等の果実加工品のことを言う。この「気泡入り果実加工品」は、フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品であって、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチンを配合する「気泡入り果実加工品」であればいずれのものも含まれる。
【0013】
本発明の「気泡入り果実加工品」の「フルーツコンテンツ」とは、原料として使用した果実等及びその搾汁の重量(生換算)の製品重量に対する割合であり、本発明の「フルーツコンテンツ」は、気泡入り果実加工品の果実味を高める観点から、10%以上配合されていればよく、特に20〜60%配合されていることが好ましい。また、本発明の「気泡入り果実加工品」の「可溶性固形分」は、通常「糖度」ともいわれているものであり、「果実」に含まれる糖分や、本発明の「気泡入り果実加工品」の製造に当たり配合した砂糖等の合計であるが、30%以上配合されていればよく、特に、40%〜75%配合されていることが好ましい。
本発明の「気泡入り果実加工品」の「油脂」の含量は、油脂による気泡入り果実加工品の味の劣化を防ぐ観点から10%以下であればよい。また、「気泡入り果実加工品」の「油脂」の含量は低い方が好ましいが、本発明に必要な乳化剤の合計量以上配合されていればよい。そして、本発明の「気泡入り果実加工品」の「pH」は果実加工品として必要な酸味を得るため、pH5以下であればよく、特にpH2〜4.5であることが本発明の効果を得やすく好適である。
【0014】
本発明の「気泡入り果実加工品」に含まれる「果実」には、果実、野菜又は花弁が含まれ、アンズ、バナナ、イチゴ、モモ、リンゴ、ブルーベリー、マンゴー、メロン等の果実など、ヒト等が安全に摂取できるものであればいずれのものでも良い。例えば、これらの果実そのものや、果実に砂糖等を加えて冷凍、加熱等により加工したものが挙げられる。
【0015】
本発明の「気泡入り果実加工品」に含まれる「油脂」は、脂肪酸を構成成分とするエステル化合物のうち食品として用いられる物質のことを言い、乳化剤を含む。
本発明の「気泡入り果実加工品」は、乳化剤として「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」のいずれか1種以上を配合することが必須である。
「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」等は、乳化剤として気泡の形成に働き、気泡の周りを覆って気泡を安定化する働きを有する。なお、本発明における「有機酸モノグリセリド」とは、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)の有機酸エステルのことである。
【0016】
これらの乳化剤は、ヒト等が安全に摂取できるものであればいずれのものであっても良い。特に「有機酸モノグリセリド」を用いることが好ましく、本発明において配合する「有機酸モノグリセリド」としては、例えば、乳酸モノグリセリド、酢酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド等が挙げられ、HLB値が1〜10のものを用いることが好ましく、HLB値が2〜8のものを用いることがより好ましい。
【0017】
また、本発明において配合する「ショ糖脂肪酸エステル」としては、例えば、構成する脂肪酸の炭素数が14〜22のものが挙げられ、特にHLB値が8〜16の親水性のものを用いることが好ましい。
更に、本発明において配合する「プロピレングリコール脂肪酸エステル」としては、構成する脂肪酸の炭素数が14〜22のものが挙げられ、特にHLB値が1〜5のものを用いることが好ましい。
【0018】
更に、本発明の「気泡入り果実加工品」は、「グリセリン脂肪酸モノエステル」及び「ペクチン」を配合することが必須である。
このうち「グリセリン脂肪酸モノエステル」は「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」と同様に乳化剤として、気泡の形成に働き、気泡の周りに分散して気泡を安定化する働きを有する。本発明において配合する「グリセリン脂肪酸モノエステル」としては、ヒト等が安全に摂取できるものであればいずれのものであっても良いが、例えば、構成する脂肪酸の炭素数が14〜22のものが挙げられ、特にHLB値が3〜5のものを用いることが好ましい。
【0019】
また、「ペクチン」は、酸性下でゲル化する性質があり起泡効果を高め、常温保存、更には冷蔵保存又は冷凍保存中でも「ペクチン」の存在によって、気泡を安定的に維持することができる。本発明において配合する「ペクチン」としては、ヒト等が安全に摂取できるものであればいずれのものであっても良いが、例えば、ローメトキシルペクチン(以下、LMペクチンと示す)を用いることが好ましい。「ペクチン」の配合量は、特に限定するものではないが、好ましくは0.1〜3%である。
【0020】
本発明の「気泡入り果実加工品」の「有機酸モノグリセリド」の配合量は、0.01%以上であり、好ましくは0.02〜1.5%、より好ましくは0.05〜1%である。「ショ糖脂肪酸エステル」の配合量は、0.01%以上であり、好ましくは0.05〜1.5%、より好ましくは0.1〜1.5%である。「プロピレングリコール脂肪酸エステル」の配合量は、0.01%以上であり、好ましくは0.05〜1.5%、より好ましくは0.1〜1.5%である。「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」の配合量が前記範囲より少ないと、気泡の形成及び安定化がされにくい傾向にあるため好ましくない。また、「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」の配合量が前記範囲より多くても、配合量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
また、本発明の「気泡入り果実加工品」の「グリセリン脂肪酸モノエステル」の配合量は、0.03%以上であり、好ましくは0.05%以上であり、より好ましくは0.1〜2%である。グリセリン脂肪酸モノエステルの配合量が前記範囲より少ないと、気泡の形成及び安定化がされにくい傾向にあるため好ましくない。また、グリセリン脂肪酸モノエステルの配合量が前記範囲より多くても、配合量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
【0021】
更に、「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上」1部に対し、0.1〜50部、好ましくは0.5〜10部、より好ましくは1〜8部の「グリセリン脂肪酸モノエステル」を配合することが好ましい。「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上」1部に対する「グリセリン脂肪酸モノエステル」の割合が低すぎたり高すぎたりしても、気泡の形成及び安定化がされにくい傾向にあるため好ましくない。
【0022】
本発明の「気泡入り果実加工品」には、更に「ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル」のいずれか1種以上を配合することが好ましい。
このうち「ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル」は「有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステル」と同様に乳化剤として、気泡の形成に働き、気泡の周りに分散して気泡を安定化する働きを有する。
本発明において配合する「ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル」はヒト等が安全に摂取できるものであればいずれのものであっても良く、「ソルビタン脂肪酸エステル」としては、例えば、構成する脂肪酸の炭素数が14〜22のものが挙げられ、特にHLB値が2〜9のものを用いることが好ましい。
また、「ポリグリセリン脂肪酸エステル」としては、例えば、構成する脂肪酸の炭素数が14〜22のものが挙げられ、特にHLB値が8〜16の親水性のものを用いることが好ましい。
「ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステル」の配合量は、特に限定するものではないが、好ましくは0.05〜1.5%である。
【0023】
本発明の「気泡入り果実加工品」には、果実の種類によっては、更に「ポリデキストロース、難消化性デキストリン又はセルロース」のいずれか1種以上を配合することで、気泡を維持するとともに、ボディ感のある「気泡入り果実加工品」が製造でき、好ましい。セルロースとしては、微結晶セルロース、発酵セルロース等を用いることができる。「ポリデキストロース、難消化性デキストリン又はセルロース」の配合量は、特に限定するものではないが、好ましくは0.5〜5%である。
【0024】
本発明の「気泡入り果実加工品」には、更に必要に応じてクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の酸味料も、酸味等の味の調整を目的として配合することができる。同様に、香料や洋酒等も果実の香気を増量したり、風味を増したりするために使用することができる。
【0025】
本発明の「気泡入り果実加工品」は、気泡が含まれている果実加工品であればどのようなものであっても良いが、高いオーバーランを有する「気泡入り果実加工品」であることが好ましく、50%以上、好ましくは100〜300%、より好ましくは150〜300%のオーバーランを有する「気泡入り果実加工品」であることが好ましい。
【0026】
更に、本発明の「気泡入り果実加工品」は、冷凍保存及び冷蔵保存中にも気泡を安定して維持できる「気泡入り果実加工品」であることが好ましく、例えば、気泡の安定性を5℃で保管し、壁面に1mm程度の気泡が観察されるまでの日数で評価した場合、15〜19日程度の気泡の安定性を有していることが好ましく、更に20〜24日程度、とくに25日以上の気泡の安定性を有していることが好ましい。
【0027】
このような本発明の「気泡入り果実加工品」は、従来知られているいずれの製造方法でも製造することができ、例えば次のような製造方法によっても製造することができる。
1)ピューレ状にした果実に砂糖を混合し、加熱により砂糖を溶解させた後濃縮させる。
2)1)の濃縮物に、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチン、更に必要に応じて、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種以上、ポリデキストロース、難消化性デキストリン又はセルロースのいずれか1種以上を加え、ミキサー等で分散、溶解させる。
3)2)の混合物を加熱し、94℃×4分間加熱殺菌した後、30℃まで冷却した後、起泡させ、本発明の気泡入り果実加工品を得る。
【0028】
本発明の「気泡入り果実加工品を用いる飲食品」は、本発明の「気泡入り果実加工品」を用いる飲食品であればいずれのものも含まれる。
本発明の「気泡入り果実加工品」そのものもホイップ状の飲食品であり、パン等に塗るためのスプレッドとすることもできる。また、本発明の「気泡入り果実加工品」を生地に練り込んだり、デコレーションに用いたりしたクッキー、アイスクリーム、ケーキ、プリン等も本発明の飲食品に挙げられる。更に、本発明の「気泡入り果実加工品」を紅茶、コーヒーなどにクリームとして浮かべた飲料や、本発明の「気泡入り果実加工品」と牛乳などを混ぜた果実飲料なども、本発明の飲食品に挙げられる。
【0029】
以下に本発明の気泡入り果実加工品を実施例及び比較例に基づき詳述する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
<気泡入り果実加工品の製造方法>
果実をミキサーに入れ、粉砕し、ピューレ状にした後、これに砂糖を混合し、40℃まで加熱することにより砂糖を溶解させた。混合物を60℃で加熱し、濃縮率90%まで煮詰めた。
次に、濃縮物に、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチン、更に必要に応じて、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種以上、ポリデキストロース、難消化性デキストリン又はセルロースのいずれか1種以上を加え、ミキサーで分散、溶解させた。
次に、これら混合物を加熱し、94℃で4分間殺菌した後30℃まで冷却した混合物をホバートミキサー(キッチンエイド・ミキサー KSM5、株式会社エフ・エム・アイ社製)に投入し、撹拌速度4で15分間撹拌した(撹拌温度は30℃)。得られたホイップ状物をガラス瓶に充填、密封し、本発明の気泡入り果実加工品を得た。
【0031】
実施例においては、次のものを原料として配合した。
有機酸モノグリセリド:
乳酸モノグリセリド:HLB7
酢酸モノグリセリド:HLB2
ショ糖脂肪酸エステル:HLB11、主な脂肪酸の炭素数18
プロピレングリコール脂肪酸エステル:HLB4、主な脂肪酸の炭素数16及び18
グリセリン脂肪酸モノエステル:HLB4.3、主な脂肪酸の炭素数18
ペクチン:LMペクチン(DE31)
ソルビタン脂肪酸エステル:HLB5、主な脂肪酸の炭素数16及び18
ポリグリセリン脂肪酸エステル:HLB11.6、主な脂肪酸の炭素数18
ポリデキストロース:平均分子量2000
難消化性デキストリン:平均分子量2000
セルロース:平均粒径20〜90の微結晶セルロース
【0032】
<実施例1〜4>
果実としてアンズ、バナナを用い、<気泡入り果実加工品の製造方法>に従い、表1の上段に記載の配合で気泡入りアンズ加工品及び気泡入りバナナ加工品を製造した。いずれも有機酸モノグリセリドとして乳酸モノグリセリドを用い、ペクチンとしてLMペクチンを用いた。
得られた気泡入りアンズ加工品及び気泡入りバナナ加工品の可溶性固形分、油脂含量及びpHを表1の中段に示した。また、気泡入りアンズ加工品及び気泡入りバナナ加工品について、オーバーランと気泡の安定性を、下記の評価基準で評価し、結果を表1の下段に示した。実施例として製造した気泡入りアンズ加工品及び気泡入りバナナ加工品はいずれも、冷凍保存中も気泡が安定に保たれており、冷凍後解凍したものも気泡が安定に保たれていた。
【0033】
「オーバーラン」の評価
オーバーラン:
一定体積中の(撹拌前の重量−撹拌後の重量)/(撹拌後の重量)×100の計算で求めた値
《評価基準》
A:150%以上
B:100%以上150%未満
C:50%以上100%未満
D:50%未満
【0034】
「気泡の安定性」の評価
気泡の安定性:
気泡入りイチゴ加工品を5℃で保管し、壁面に1mm程度の気泡が観察されるまでの日数
《評価基準》
A:25日以上
B:20〜24日
C:15〜19日
D:14日以下
【0035】
【表1】

【0036】
<実施例5〜10>
果実としてイチゴを用い、<気泡入り果実加工品の製造方法>に従い、表2の上段に記載の配合で気泡入りイチゴ加工品を製造した。また、比較として乳化剤の種類や配合量を変えた気泡入りイチゴ加工品も製造した。有機酸モノグリセリドとして、乳酸モノグリセリド又は酢酸モノグリセリドを用いた。
得られた気泡入りイチゴ加工品の可溶性固形分、油脂含量及びpHを表2の中段に示した。
また、各気泡入りイチゴ加工品について、オーバーランと気泡の安定性を、実施例1〜4と同様の評価基準で評価し、結果を表2の下段に示した。実施例として製造した気泡入りイチゴ加工品はいずれも冷凍保存中も気泡が安定に保たれており、冷凍後解凍したものも気泡が安定に保たれていた。
【0037】
【表2】

【0038】
<実施例11〜22>
更に、表3の上段に記載の配合で、<気泡入り果実加工品の製造方法>に従い、気泡入りイチゴ加工品を製造した。グリセリン脂肪酸モノエステル、乳酸モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステルの配合量を調整し、乳酸モノグリセリド1部に対するグリセリン脂肪酸エステルの好ましい割合を確認した。
【0039】
乳酸モノグリセリド1部に対するグリセリン脂肪酸エステルの割合は表3の中段(上)に示し、得られた気泡入りイチゴ加工品の可溶性固形分、油脂含量及びpHは表3の中段(下)に示した。
また、得られた気泡入りイチゴ加工品のオーバーランと気泡の安定性を実施例1〜4と同様の評価基準で評価し、表3の下段に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
その結果、いずれの気泡入りイチゴ加工品も、評価C以上のオーバーランと、気泡の安定性を示し、本発明の気泡入り果実加工品として有用であることが示された。実施例として製造した気泡入りイチゴ加工品はいずれも冷凍保存中も気泡が安定に保たれており、冷凍後解凍したものも気泡が安定に保たれていた。
また、特に好ましいオーバーランと気泡の安定性を有する気泡入りイチゴ加工品のグリセリン脂肪酸モノエステルの配合量は0.05%以上、更には0.1〜2%であり、有機酸モノグリセリドの配合量は0.02%以上、更には0.05〜1%であること、及び、有機酸モノグリセリド1部に対するグリセリン脂肪酸モノエステルが0.5〜10部、更には1〜8部であることが示された。
【0042】
<実施例23〜29>
更に、表4の上段に記載の配合で、<気泡入り果実加工品の製造方法>に従い、気泡入りイチゴ加工品を製造した。グリセリン脂肪酸モノエステル、ショ糖脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルの配合量を調整し、ショ糖脂肪酸エステル1部に対するグリセリン脂肪酸エステルの好ましい割合を確認した。
【0043】
ショ糖脂肪酸エステル1部に対するグリセリン脂肪酸エステルの割合は表4の中段(上)に示し、得られた気泡入りイチゴ加工品の可溶性固形分、油脂含量及びpHは表4の中段(下)に示した。また、得られた気泡入りイチゴ加工品のオーバーランと気泡の安定性を実施例1〜4と同様の評価基準で評価し、表4の下段に示した。
【0044】
【表4】

【0045】
その結果、いずれの気泡入りイチゴ加工品も、評価C以上のオーバーランと、気泡の安定性を示し、本発明の気泡入り果実加工品として有用であることが示された。実施例として製造した気泡入りイチゴ加工品はいずれも冷凍保存中も気泡が安定に保たれており、冷凍後解凍したものも気泡が安定に保たれていた。
また、好ましいオーバーランと気泡の安定性を有する気泡入りイチゴ加工品のショ糖脂肪酸エステルの配合量は0.01%以上であり、特に好ましいのが0.1〜1.5%であること、及び、ショ糖脂肪酸エステル1部に対するグリセリン脂肪酸モノエステルが0.1〜50部、特に好ましいのが0.1〜5部であることが示された。
プロピレングリコール脂肪酸エステルにおいても同様の結果が得られた。
【0046】
<実施例30〜31>
果実としてモモ、リンゴを用い、<気泡入り果実加工品の製造方法>に従い、表5の上段に記載の配合で気泡入りモモ加工品及び気泡入りリンゴ加工品を製造した。いずれも有機酸モノグリセリドとして乳酸モノグリセリドを用いた。
得られた気泡入り果実加工品のフルーツコンテンツ、可溶性固形分、油脂含量及びpHを表5の中段に示した。また、オーバーランと気泡の安定性を実施例1〜4と同様の評価基準で評価し、表5の下段に示した。気泡入りモモ加工品及び気泡入りリンゴ加工品はいずれも冷凍保存中も気泡が安定に保たれており、冷凍後解凍したものも気泡が安定に保たれていた。
【0047】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の気泡入り果実加工品の提供により、製菓工場や家庭において、果実味及び気泡による軽い舌触りを楽しむことができるホイップ状の飲食品の提供や、この気泡入り果実加工品を用いたアイスクリーム、ケーキ等の製造やデコレーション等が容易となる。高いオーバーランを有し易く、冷凍保存及び冷蔵保存中にも気泡を安定して維持できる本発明の気泡入り果実加工品は、冷蔵又は冷凍して出荷するデザートの製造にも有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルーツコンテンツが10%以上、可溶性固形分が30%以上であり、油脂含量が10%以下、pHが5以下である気泡入り果実加工品であって、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、グリセリン脂肪酸モノエステル、及びペクチンを配合することを特徴とする気泡入り果実加工品。
【請求項2】
0.01%以上の有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上と、0.03%以上のグリセリン脂肪酸モノエステルを配合し、かつ、有機酸モノグリセリド、ショ糖脂肪酸エステル又はプロピレングリコール脂肪酸エステルのいずれか1種以上1部に対し0.1〜50部のグリセリン脂肪酸モノエステルを配合する請求項1に記載の気泡入り果実加工品。
【請求項3】
更にソルビタン脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれか1種以上を配合する請求項1又は2に記載の気泡入り果実加工品。
【請求項4】
更にポリデキストロース、難消化性デキストリン又はセルロースのいずれか1種以上を配合する請求項1乃至3のいずれかに記載の気泡入り果実加工品。
【請求項5】
オーバーランが50%以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の気泡入り果実加工品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の気泡入り果実加工品を用いる飲食品。

【図1】
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【公開番号】特開2011−103841(P2011−103841A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264535(P2009−264535)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(591116036)アヲハタ株式会社 (35)
【出願人】(508257898)ダニスコジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】