説明

気泡分離器

【課題】 気泡分離後の再混合を抑制することができ、特に内燃機関の潤滑装置で使用されるオイルの気泡分離効率が高い気泡分離を行うことができる気泡分離器を提供することを課題とする。
【解決手段】 本気泡分離器1は、略円筒形状の本体2と、本体に設けられ、且つ気泡を含むオイルを本体の内部に導入するオイル導入部3と、本体の天井部から本体内に延設され、且つ分離された気泡を本体の外部に排出する略円筒形状の気体排出部4と、本体に設けられ、且つ分離されたオイルを本体の外部に排出するオイル排出部5と、天井部から延設され、且つ該気体排出部の周囲に形成されている上部隔壁部6と、を備えていることを特徴とする。本発明の気泡分離器によれば、含泡オイルが気体排出部の排出孔に直接吹き付けられ、分離された気体と共に本体外に排出されるのを、上部隔壁部によって防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡分離器に関し、更に詳しくは、気泡分離後の再混合を抑制することができ、特に内燃機関の潤滑装置で使用されるオイルの気泡分離効率が高い気泡分離を行うことができる気泡分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の潤滑形態として、ドライサンプ式及びウェットサンプ式が一般に知られている。前者のドライサンプ式は、エンジンオイルをオイルタンクに溜め、オイルタンクからフィードポンプでエンジンオイルをエンジンの各部に圧送して潤滑し、オイルパンに落ちたオイルをスカベンジポンプでオイルタンクに戻す形態である。後者のウェットサンプ式は、エンジンオイルをオイルパンからポンプで吸い上げてエンジンの各部に圧送して潤滑し、潤滑の終わったオイルをオイルパンに自然落下させる形態である。
【0003】
上記ドライサンプ式では、スカベンジポンプでオイルタンクに戻されるオイル中に多量の気泡が混入してしまう。このオイル中に含まれる気泡はオイルフィルタ等で分離されることとなるが、完全に分離されずに潤滑不良を起こす恐れがあった。
一方、上記ウェットサンプ式では、オイル中には比較的少量の気泡のみが混入しており、更にポンプの圧力で気泡がつぶれるので、潤滑不良を起こす恐れは低い。しかしながら、燃費性能を向上させるためにポンプの小型化を図ることの要望があり、この場合、気泡が十分につぶれずに潤滑不良を起こす恐れがあった。
このように、上記ドライサンプ式及びウェットサンプ式のいずれであっても、内燃機関の潤滑装置では、オイル中の気泡率を下げる必要がある。
【0004】
そこで、上記問題を解決するために、内燃機関の潤滑装置において気液分離器を用いることが提案されている。
従来の気液分離器としては、円筒形状の本体内に導入される気液混合流体を液体と気体とに遠心分離するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1は、天井部に気体排出口が設けられ、その周囲に液体が侵入することを防止するための突起部が設けられている。また、気液混合流体の流入が遅いため、分離された気体は気液分離器本体の天井部に集まっており、新たに流入する気液混合流体と再混合する恐れがない。
【0005】
【特許文献1】特開2003−265984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1は、オイルの流入量が早い場合は、オイル導入口から流入するオイルによって気体が再混合して、再混合した流体が気体排出口から排出されて、気液分離効率が下がる恐れがある。また、気体排出口が流入口よりも高い位置にあり、気体排出口が流入口より下位にある場合を考慮していない。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、気泡分離後の再混合を抑制することができ、特に内燃機関の潤滑装置で使用されるオイルの気泡分離効率が高い気泡分離を行うことができる気泡分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.内燃機関の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式の気泡分離器であって、略円筒形状の本体と、該本体に設けられ且つ気泡を含むオイルを該本体の内部に導入するオイル導入部と、該本体の天井部から本体内に延設され且つ分離された気泡を該本体の外部に排出する略円筒形状の気体排出部と、該本体に設けられ且つ分離されたオイルを該本体の外部に排出するオイル排出部と、該天井部から延設され且つ該気体排出部の周囲に形成されている上部隔壁部と、を備えていることを特徴とする気泡分離器。
2.上記気体排出部は、表面に排出孔を複数具備し、上記上部隔壁部の下端より上方に位置する排出孔の総開口面積は、該上部隔壁部の下端より下方に位置する排出孔の総開口面積より大きい上記1.記載の気泡分離器。
3.上記気体排出部は、表面に排出孔を複数具備し、該排出孔の開口面積は、上記天井部から漸次小さくなる上記1.記載の気泡分離器。
4.上記気体排出部は、表面に排出孔を複数具備し、該排出孔の開口間隔は、上記天井部から下方に向かい漸次広くなる上記1.記載の気泡分離器。
5.上記上部隔壁部の下端は、上記オイル導入部の下端より下方に位置する上記1.乃至4.上記のいずれかに記載の気泡分離器。
6.上記気体排出部の下方側に位置し、上記分離された気泡と上記分離されたオイルとを隔離する下部隔壁部を更に具備する上記1.乃至5.のいずれか一項に記載の気泡分離器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気泡分離器によれば、オイル導入部によって気泡を含むオイルである含泡オイルが本体の内部に導入されるときに、含泡オイルが気体排出部の排出孔に直接吹き付けられ、分離された気体と共に本体外に排出されるのを、上部隔壁部によって防止することができるため、オイルの気泡分離効率を上げることができる。
【0010】
上部隔壁部の下端より上方の排出孔の総開口面積が、該下端より下方の排出孔の総開口面積より大きい場合は、本体上層のオイルと分離され、且つ上部隔壁部によって保護されている気体をより多く取り込むことができるため、気泡分離効率を上げることができる。
排出孔の開口面積が本体天井部から本体底部にかけて漸次小さくなる場合は、上層に多く存在する分離された気体をより多く取り込むことができるため、気泡分離効率を上げることができる。
排出孔の開口間隔が本体天井部から本体底部にかけて漸次広くなる場合は、上層に多く存在する分離された気体をより多く取り込むことができるため、気泡分離効率を上げることができる。
上部隔壁部の下端がオイル導入部の下端より下方に位置する場合は、オイル導入部から導入される含泡オイルが上部隔壁部によって遮られて気体排出部に到達しないため、気泡分離効率を上げることができる。
下部隔壁部を更に備える場合は、オイルと分離した本体下層の気体が、本体底部側のオイルと再混合しないように隔離することができるため、気泡分離効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜9を例にして本発明の気泡分離器を詳細に説明する。
本実施形態に係る気泡分離器は、内燃機関等の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式のものである。
上記気泡分離器は、例えば図1及び2に例示するように、本体2、オイル導入部3、気体排出部4、オイル排出部5及び上部隔壁部6を具備する。また、図5に例示するように、下部隔壁部7を更に備えることができる。
【0012】
上記「本体」は、通常テーパ部分を具備する略円筒形状であり、その材質及び大きさは特に問わない。
上記「オイル導入部」は、気泡を含むオイルである含泡オイルを該本体の内部に導入する導入部である。オイル導入部の構成及び形状等は特に問わない。このオイル導入部は、例えば、図1に例示するように、本体の周壁の上部から接線方向に延設されるオイル導入管3からなることができる。
尚、オイル導入部から導入されるオイルの流入速度は、オイルの粘度等によって任意に選択されるが、例えば2〜15m/s、特に好ましくは5〜12m/sとすることができる。
【0013】
上記「気体排出部」は、含泡オイルから分離された気体を本体の外部に排出し得る略円筒形状の管であればよく、その配設位置、構成等は特に問わない。この気体排出部は、例えば、図1に例示するように、本体の天井部の中心部から貫通して上下方向に延設される気体排気管4からなることができる。また、気体排出管は、その周面に分離された気体を管内に通過させる排出孔を設けることができる。
上記「排出孔」の形状、大きさ及び数は任意に選択することができる。例えば、排出孔の形状は、真円形状(例えば図1に例示する排気孔412を参照。)、トラック形状(例えば図1に例示する排気孔411を参照。)、及び楕円形状等を挙げることができる。また、各排出孔は、それぞれ異なる形状及び大きさとしてもかまわない。
このうち、上記上部隔壁部の下端より上方に位置する排出口である各上部排出孔の開口面積の総和である総開口面積は、該上部隔壁部の下端より下方に位置する排出口である下部排出孔の開口面積の総和である総開口面積より大きいのが好ましい。上部排出孔は、上部隔壁部によって遮断されて含泡オイルが侵入しないため、総開口面積が大きくても含泡オイルが侵入して効率が下がることがないからである。
また、排出孔の開口面積は、天井部から下方に向かい漸次小さくなると更に好ましい。
「開口面積が漸次小さくなる」とは、気体排出部の上下に隣接する各排出孔の大きさにおいて、下側に設けた排出孔を小さくすることで、上側でより多くの気体を排出しやすくするようにすることをいう。分離した気体8の渦は、下側が細くなる略テーパ状となるため、より気体が多く存在している上側の排出孔の開口面積を大きくすることによって、オイルが混入することなく気体を排出することができるからである。
尚、排出孔の開口面積は、任意の手段によって変えることができる。例えば図5に例示するように、上側の排気孔411の大きさを下側の排気孔412より大きくすることを挙げることができる。また、排出孔の開口面積は、気体排出部の全体として下方に向かい漸次小さくなっていればよく、途中で同じ開口面積の排出孔があってもかまわない。
更に、排出孔の開口間隔は、天井部から下方に向かい漸次広くしても更に好ましい。
「開口間隔が漸次広くなる」とは、気体排出部の上方に並ぶ排出孔の間隔に対して、下方に並ぶ排出孔の間隔を広くすることで上側の実質の開口面積を増やし、より多くの気体を排出しやすくするようにすることをいう。このように排出孔を設けることによって、開口面積が天井部から下方に向かい漸次小さくなる場合と同じ効果を奏する。尚、排出孔の開口間隔は、気体排出部の全体として下方に向かい漸次広くなっていればよく、途中で同じ開口間隔で排出孔を設けてもかまわない。また、開口間隔を下方に向かい漸次広くし、且つ開口面積を下方に向かい漸次小さくしてもよい。
【0014】
上記「オイル排出部」は、分離されたオイルを本体の外部に排出することができればよく、その配設位置、構成、形状等は特に問わない。オイル排出部の具体的な形態は、例えば、(1)分離されたオイルを一方向(本体の接線方向、半径方向、軸方向等)に向って吐出させるように構成されている形態、(2)分離されたオイルを本体の周方向の面に沿って吐出させるように構成されている形態等を挙げることができる。
上記(1)形態では、オイル排出部は、例えば図1及び2に例示するように、本体の周壁の下部又は下端壁から一方向に延びるオイル排出孔5からなっていることができる。また、上記(2)形態では、オイル排出部は、例えば、本体の周壁に、周方向に沿って延びる1又は2以上のオイル排出口を形成してなることができる。
【0015】
上記「上部隔壁部」は、本体の天井部から延設させ、気体排出部の周囲を囲うように設けられており、外側の含泡オイルと、内側の分離された気泡を隔離する隔壁である。これらを分離することによって、分離された気泡に含泡オイルが再び吹き付けられ、混合するのを防止することができる。
上部隔壁部の形状は特に限定されないが、図1及び2の上部隔壁部6に例示するように、通常円筒形状を用いる。また、図8の上部隔壁部6Aに例示するように、任意の方向にテーパを具備していてもよいし、貫通孔を設けたりしてもよい。更に、複数の上部隔壁部を同心円状等に配設してもよい。
上部隔壁部の高さは任意に選択することができるが、少なくとも上部隔壁部の下端を、上記オイル導入部の下端より下方とするのが好ましい。気体排出部に導入された含泡オイルが直接吹き付けられてオイルが気体排出部から排出されるのを上部隔壁部によって防止することができるからである。
「気体排出部の周囲を囲うように」とは、円筒形状の上部隔壁部の内側に気体排出部が位置し、且つ上部隔壁部及び気体排出部の間に含泡オイルから分離された気体が流通可能な空隙が設けられていることをいう。
【0016】
上記「下部隔壁部」は、気体排出部の下方側に設けられている隔壁である。また、下部隔壁部は、隔壁外側の含泡オイルと、隔壁内側の分離された気泡を隔離する。このような下部隔壁部は、オイルがオイル排出部から排出されるときに、分離した気体を巻き込んで気体を含んだ状態で排出されるのを防止することができる。また、気体排出部周辺の分離された気体にオイルが吹きかかることで再混合するのを防止することができる。
下部隔壁部の形状は、含泡オイルと、分離された気泡とを隔離することができれば特に限定されない。この形状として、図5の下部隔壁部7に例示するように、気体排出部4と同心軸となるように配設された円筒形状を挙げることができる。また、図8の下部隔壁部7Aに例示するようにテーパを具備していてもよい。更に、複数の下部隔壁部を同心円状等に配設してもよい。
また、図9の下部隔壁部7Bに例示するように、本体2下部を上下方向に区画する円板、又は縁部が壁面となる略円板である下部隔壁部であってもよい。
「気体排出部の下方側」とは、下部隔壁部の配設位置が気体排出部の下端より下方であればよいことをいい、例えば、図5の下部隔壁部7に例示するように、本体の底部に配設したり、図9の下部隔壁部7Bに例示するように、気体排出部4の下端に配設したりすることを挙げることができる。
「気体排出部の中心軸を中心として設けられている」とは、下部隔壁部の中心が気体排出部の中心軸上に位置するように、下部隔壁部が配設されていることをいう。導入する含泡オイルの流速が早い場合、分離した気体の渦の底が気体排出部の中心軸上に位置する本体の底部側へ接近するため、この気体の渦を下部隔壁部によってオイルと隔離することによって、分離された気体に含泡オイルが吹き付けられ、再混合するのを防止することができる。
また、下部隔壁部の高さは、例えば、図5に例示するように、テーパ状の円筒部分の下に非テーパ状の円筒部分を具備する本体2の場合、本体2の非テーパ状の円筒部分の高さを超えない高さを挙げることができる。また、下部隔壁部の上端を気体排出部の下端より上側に位置する高さとすることを挙げることができる。
更に、図5の下部隔壁部7に例示するように、下端に貫通孔71を設けたりしてもよい。このような貫通孔は、下部隔壁部内に溜まったオイルを排出することができるため、下部隔壁部内にオイルが満たされて隔壁としての効果を失うことを防止することができる。
【0017】
尚、オイルタンク構造として、例えば、上記実施形態で説明した気泡分離器をオイルタンク内に配設してなることを特徴とするものを挙げることができる。このオイルタンクは、例えば、ドライサンプ用であることができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
1.気泡分離器の構成
本実施例1に係る気泡分離器1は、図1及び2に示すように、自動車等に用いられる内燃機関の潤滑装置で使用される含泡オイル中に含まれるブローバイガス等の気泡を除去するためのものであり、本体2と、オイル導入部であるオイル導入管3と、気体排出部である気体排出管4と、オイル排出部であるオイル排出孔5と、上部隔壁部6とを備える。
【0019】
本体2は、下側が細くなる円筒テーパ状である。
オイル導入管3は、本体2の周壁の上部に設けられており、含泡オイルを本体2の内周の接線方向に導入することができる。
気体排出管4は、本体2の天井部の略中心を貫通し、本体2の下側まで設けられており、分離された気泡を本体2の外部に排気するための排出孔41が設けられている。この排出孔41は、本体2の水平方向において上部隔壁部6の下端よりも上方にあり、上部隔壁部6によって水平方向からオイルが吹きかかることがないトラック形状の上部排出孔411と、上部隔壁部6の下端よりも下方にある真円形状の下部排出孔412に分けることができる。また、全ての上部排出孔411の開口面積を足して得られる総開口面積は、全ての下部排出孔412の開口面積を足して得られる総開口面積よりも大きく、含泡オイルから分離された気体8は主に上部排出孔411から気体排出管4から本体外に排出される。
【0020】
オイル排出孔5は、本体2の周壁の下部の接線方向を延長するように設けられており、図3に示すように、分離されたオイルを本体2の外部に排出することができる。このオイル排出孔5の開口面積は、上記オイル導入管3の開口面積より大きく、オイルを効率よく排出することができる。
上部隔壁部6は円筒形状であり、本体2の天井部から延出し、気体排出管4の上方周囲を囲うように設けられている。また、上部隔壁部6の下端は、オイル導入管3の下端より下方に位置する。
【0021】
2.気泡分離器の使用
次に、上記構成の気泡分離器1の使用方法について説明する。
図3に示すように、オイル導入管3から含泡オイルを本体2の内部に導入する。すると、その導入された含泡オイルの遠心力によって、比重の大きなオイルが本体2の内壁側へ、比重の小さな気泡が本体2の中心側へ集まる。その結果、分離された気泡は、排気孔41から気体排出管4内に入り、更に本体2の外部に排気される。一方、分離されたオイルは、オイル排出孔5を通って本体2の外部に排出されることとなる。
尚、本実施例における気泡分離器の含泡オイルの流入速度は2〜15m/sである。
【0022】
また、本実施例と、上部隔壁部6を具備しない他は本実施例と同じ構成である従来例との比較を行うために、図4に示すように分離効率の比較をおこなった。使用した含泡オイルの種類は0W−20であり、80℃で気泡率が20%の気泡を含んでいる。また、オイル排出孔5から排出されたオイルの気泡率を調べ、流入前の気泡率との比率を分離効率とした。
その結果、流入速度約5〜約15m/sの範囲内において、本実施例のほうが従来例よりも分離効率が高いことが分かった。また、透明樹脂で作成した本実施例の気泡分離器を観察すると図3に例示するように、分離された気体が上部隔壁部6内に存在することを確認することができた。
【0023】
3.他の態様の気泡分離器
実施例2の気泡分離器1Aは、図5及び6に示すように実施例1の気泡分離器1に下部隔壁部7を更に設けたものである。この下部隔壁部7は、上部隔壁部6と同じ直径の円筒形状隔壁であり、気体排出管4の下方に位置する本体2底部から延設され、その上端が、気体排出管4の下端にわずかに掛かる高さである。このような実施例2の気泡分離器1Aは、オイルがオイル排出部5から排出されるときに、分離した気体8を巻き込んで気泡を含んだ状態で排出されるのを防止することができる。また、気体排出部4周辺の分離された気体にオイルが吹きかかることで再混合するのを防止することができる。
更に、実施例2の気泡分離器1Aは、複数の下部排出孔412の配設間隔を気体排出管4の下側に向かって漸次広げることによって、実質の開口面積を気体排出管4の下側に向かって漸次小さくしている。このように下部排出孔412の配設を行うことによって、上層に多く存在する分離された気体をより多く取り込むことができるため、気泡分離効率を上げることができる。
【0024】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、本発明に係る「オイル排出部」を本体の周面から延設されるオイル排出孔5から構成しているが、これに限られず、本体の底面からオイルを排出させるようにしてもよい。
また、上記実施例の気泡分離器1を、ドライサンプ式の潤滑装置におけるオイルタンク内に配設したり、ウェットサンプ式の潤滑装置におけるオイルポンプの下流側のオイル通路(配管等)の途中に配設したりできる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
自動車等の内燃機関の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去する技術として広く利用される。特に、ドライサンプ式の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例に係る気泡分離器の縦断面図である。
【図2】図1のII−II線断面図である。
【図3】気液分離を行っている様子を説明するため模式拡大図である。
【図4】流入速度の応じた分離効率を示すグラフである。
【図5】本他の実施例に係る気泡分離器の縦断面図である。
【図6】図6のII−II線断面図である。
【図7】気液分離を行っている様子を説明するため模式拡大図である。
【図8】本他の実施例に係る気泡分離器の縦断面図である。
【図9】本他の実施例に係る気泡分離器の縦断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1、1A、1B、1C、1D;気泡分離器、2;本体、3;オイル導入管、4;気体排出管、41;排出孔、411;上部排出孔、412;下部排出孔、5;オイル排出孔、6、6A;上部隔壁部、7、7A、7B;下部隔壁部、8;分離気体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式の気泡分離器であって、
略円筒形状の本体と、
該本体に設けられ且つ気泡を含むオイルを該本体の内部に導入するオイル導入部と、
該本体の天井部から本体内に延設され且つ分離された気泡を該本体の外部に排出する略円筒形状の気体排出部と、
該本体に設けられ且つ分離されたオイルを該本体の外部に排出するオイル排出部と、
該天井部から延設され且つ該気体排出部の周囲に形成されている上部隔壁部と、を備えていることを特徴とする気泡分離器。
【請求項2】
上記気体排出部は、表面に排出孔を複数具備し、上記上部隔壁部の下端より上方に位置する排出孔の総開口面積は、該上部隔壁部の下端より下方に位置する排出孔の総開口面積より大きい請求項1記載の気泡分離器。
【請求項3】
上記気体排出部は、表面に排出孔を複数具備し、該排出孔の開口面積は、上記天井部から下方に向かい漸次小さくなる請求項1記載の気泡分離器。
【請求項4】
上記気体排出部は、表面に排出孔を複数具備し、該排出孔の開口間隔は、上記天井部から下方に向かい漸次広くなる請求項1記載の気泡分離器。
【請求項5】
上記上部隔壁部の下端は、上記オイル導入部の下端より下方に位置する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の気泡分離器。
【請求項6】
上記気体排出部の下方側に位置し、上記分離された気泡と上記分離されたオイルとを隔離する下部隔壁部を更に具備する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の気泡分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−187141(P2007−187141A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7880(P2006−7880)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】