説明

気泡分離器

【課題】オイル中に微小気泡が含まれている場合であっても気泡分離効率を向上させることができる小型且つ簡易な構造の気泡分離器を提供する
【解決手段】本気泡分離器10は、流体中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式の気泡分離器において、略円筒形状の本体11と、該本体に設けられ且つ気泡を含む流体を該本体の内部に導入する流体導入管(オイル導入管12)と、該本体に設けられ且つ分離された気泡を該本体の外部に排出する気体排出部(気体排出管13)と、該本体に設けられ且つ分離された流体を該本体の外部に排出する流体排出部(オイル排出口15)と、を備え、前記流体導入管の内部には、該流体導入管内を流れる流体を該流体導入管の軸方向周りに旋回させる旋回手段(螺旋板17)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡分離器に関し、さらに詳しくは、流体中に微小気泡が含まれている場合であっても気泡分離効率を向上させることができる小型且つ簡易な構造の気泡分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関の潤滑形態として、ドライサンプ式及びウェットサンプ式が一般に知られている。前者のドライサンプ式は、エンジンオイルをオイルタンクに溜め、オイルタンクからフィードポンプでエンジンオイルをエンジンの各部に圧送して潤滑し、オイルパンに落ちたオイルをスカベンジポンプでオイルタンクに戻す形態である。後者のウェットサンプ式は、エンジンオイルをオイルパンからポンプで吸い上げてエンジンの各部に圧送して潤滑し、潤滑の終わったオイルをオイルパンに自然落下させる形態である。
【0003】
上記ドライサンプ式では、スカベンジポンプでオイルタンクに戻されるオイル中に多量の気泡が混入してしまう。このオイル中に含まれる気泡はオイルフィルタ等で分離されることとなるが、完全ではなく潤滑不良を起こす恐れがあった。
一方、上記ウェットサンプ式では、オイル中には比較的少量の気泡のみが混入しており、更にポンプの圧力で気泡がつぶれるので、潤滑不良を起こす恐れは低い。しかしながら、燃費性能を向上させるためにポンプの小型化を図ることの要望があり、この場合、気泡が十分につぶれずに潤滑不良を起こす恐れがあった。
このように、上記ドライサンプ式及びウェットサンプ式のいずれであっても、内燃機関の潤滑装置では、オイル中の気泡率を下げる必要がある。
【0004】
そこで、上記問題を解決するために、オイル中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式の気泡分離器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、コーン型容器1の上端外周側に環状の予備旋回流路12を設け、この予備旋回流路12内でオイルを容器1の軸心周りの旋回流としてそのオイル中に含まれる微小気泡を結合させてから、その旋回流を容器1内に導入して遠心分離することが開示されている。
【0005】
しかし、上記特許文献1では、予備旋回流路12内でオイルを容器1の軸心周りの比較的大径の旋回流としているので、そのオイル中の極めて微小な気泡がオイルと共に遠心方向に移動されてしまい、十分な気泡分離効率を達成できない恐れがある。
また、上記特許文献1では、予備旋回流路12内を流れる旋回流が容器1内に流入する際に、その容器の流入口近傍で乱流が発生する恐れがある。
さらに、上記特許文献1では、容器1の上端外周側に予備旋回流路12を設けているので、気泡分離器が大型で且つ複雑な構造となってしまう。
【0006】
【特許文献1】特開平7−39702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、流体中に微小気泡が含まれている場合であっても気泡分離効率を向上させることができる小型且つ簡易な構造の気泡分離器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.流体中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式の気泡分離器において、
略円筒形状の本体と、
該本体に設けられ且つ気泡を含む流体を該本体の内部に導入する流体導入管と、
該本体に設けられ且つ分離された気泡を該本体の外部に排出する気体排出部と、
該本体に設けられ且つ分離された流体を該本体の外部に排出する流体排出部と、を備え、
前記流体導入管の内部には、該流体導入管内を流れる流体を該流体導入管の軸方向周りに旋回させる旋回手段が設けられていることを特徴とする気泡分離器。
2.前記旋回手段は、前記流体導入管の軸方向周りの螺旋部である上記1.記載の気泡分離器。
3.前記旋回手段は、前記流体導入管の内周方向に沿って設けられた複数の羽根部である上記1.記載の気泡分離器。
【発明の効果】
【0009】
本発明の気泡分離器によると、旋回手段によって、流体導入管内を流れる流体が流体導入管の軸方向周りの旋回流とされ、比重の大きな流体が流体導入管の内周面側に集まり、比重の小さな気泡が流体導入管の中心側に集まって微小気泡が結合される。そして、その旋回流は、本体の内部に導入されて本体の軸心周りの旋回流とされ、比重の大きな流体が本体の内周面側に集まり、比重の小さな気体が本体の中心側に集まって遠心分離される。そして、分離された気泡は気体排出部から本体の外部に排出される一方、分離された流体は流体排出部から本体の外部に排出される。
このように、旋回手段によって、流体導入管内を流れる流体を流体導入管の軸方向周りの比較的小径な旋回流としているので、その流体中に極めて微小な気泡が含まれている場合であっても、その微小気泡を流体導入管内の中心側に集めて結合させることができ、気泡分離効率を向上させることができる。また、本体内には、流体導入管の軸方向周りの旋回流が導入されるので、その旋回流の整流効果によって、その本体の導入口近傍での乱流の発生を抑制することができる。さらに、従来のように、本体の上端外周側に環状の旋回流路を設けるものに比べて、本体の外径を小さくでき、気泡分離器を小型で且つ簡易な構造とすることができる。
また、前記旋回手段が螺旋部である場合は、螺旋部によって、流体導入管内を流れる流体をより確実に旋回流とすることができる。
また、前記旋回手段が複数の羽根部である場合は、複数の羽根部によって、流体導入管内を流れる流体をより確実に旋回流とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.気泡分離器
本実施形態1.に係る気泡分離器は、流体中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式のものであって、以下に述べる、本体、流体導入管、気体排出部及び流体排出部を備えている。
【0011】
上記「本体」は、略円筒形状である限り、その形状、大きさ、材質等は特に問わない。
上記本体は、例えば、円筒テーパ部を有していることができる。
【0012】
上記「流体導入管」は、上記本体に設けられ且つ気泡を含む流体を本体の内部に導入する限り、その形状、大きさ、材質等は特に問わない。
上記流体導入管は、例えば、上記本体の上部周壁から本体の接線方向に延びていることができる。
上記流体導入管は、例えば、エンジンからオイルを吸引して流体導入管内に送出するスカベンジポンプに連絡されていることができる。
【0013】
上記「気体排出部」は、上記本体に設けられ且つ分離された気泡を本体の外部に排出する限り、その形状、大きさ、材質等は特に問わない。
上記気体排出部は、例えば、本体の上端壁から上下方向に延びる気体排気管であることができる。この気体排出管の周壁には、例えば、多数の貫通孔が形成されていることができる。
【0014】
上記「流体排出部」は、上記本体に設けられ且つ分離された流体を本体の外部に排出する限り、その形状、大きさ、材質等は特に問わない。
上記流体排出部は、例えば、本体の下部周壁又は底壁から延びる流体排出管であったり、本体の下部周壁又は底壁に形成された流体排出口であったりすることができる。
【0015】
ここで、本実施形態1.に係る気泡分離器は、上記流体導入管の内部に、以下に述べる旋回手段を設けたことを特徴とする。
【0016】
上記「旋回手段」は、流体導入管内を流れる流体を流体導入管の軸方向周りに旋回させる限り、その構成、旋回形態等は特に問わない。
上記旋回手段としては、例えば、上記流体導入管の軸方向周りの螺旋部、上記流体導入管の内周方向に沿って設けられた複数の羽根部等を挙げることができる。
上記螺旋部としては、例えば、上記流体導入管の内周面側に配設された螺旋板17(図3等参照)、流体導入管の内周面側に形成された螺旋溝22(図9等参照)、流体導入管の軸心側に配設されたリボン状の螺旋板23(図10等参照)等を挙げることができる。
上記複数の羽根部21は、例えば、上記流体導入管の内周面側に配設されていることができる(図6等参照)。また、各羽根部は、例えば、上記流体導入管の軸方向に傾斜する湾曲状の案内面を有することができる。
【0017】
尚、オイルタンク構造としては、例えば、上記実施形態1.で説明した気泡分離器と、この気泡分離器の少なくとも一部をタンク室内に配設してなるオイルタンクと、を備えることを特徴とすることができる。
上述の場合、例えば、図1に示すように、上記気泡分離器10のオイル導入管12には、エンジン7のオイルパンからオイルを吸引してオイル導入管12内に送出するスカベンジポンプSPが連絡されており、上記オイルタンク2の下部に設けられたオイル排出部3には、オイルタンク2からオイルを吸引してエンジン7に送出するフィードポンプFPが連絡されていることができる。これにより、ドライサンプ式のエンジンの潤滑形態に好適なオイルタンク構造を提供できる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
【0019】
(実施例1)
(1)オイルタンク構造の構成
本実施例1に係るオイルタンク構造1は、図1に示すように、ドライサンプ式のエンジン潤滑で用いられるオイルタンク2内に、後述する気泡分離器の一部を配設して構成されている。このオイルタンク2の下部には、タンク室2a内のオイルを排出するオイル排出部3が設けられている。このオイル排出部3には、オイルタンク2からオイルを吸引してエンジン7の各部に送出するフィードポンプFPが連絡されている。また、オイルタンク2の上部には、タンク室2a内の気体(主にブローバイガス)を排出する気体排出部4が設けられている。この気体排出部4は、周知の気液分離器5に連絡されている。
【0020】
(2)気泡分離器の構成
本実施例1に係る気泡分離器10は、図2に示すように、円筒テーパ部11aを有する本体11を備えている。この本体11の上部周壁には、本体11の接線方向に延びるオイル導入管12(本発明に係る「流体導入管」として例示する。)が設けられている。このオイル導入管12には、エンジン7のオイルパンからオイルを吸引してオイル導入管12内に送出するスカベンジポンプSPが連絡されている(図1参照)。また、本体11の上端壁の中央部には、上下方向に延びる気体排気管13(本発明に係る「気体排出部」として例示する。)が設けられている。この気体排出管13の周壁には、多数の貫通孔14が形成されている。さらに、本体11の下部周壁には、オイル排出口15(本発明に係る「流体排出部」として例示する。)が形成されている。
【0021】
上記オイル導入管12の内周面側には、図3〜5に示すように、オイル導入管12の軸方向C1周りの螺旋板17(本発明に係る「旋回手段」及び「螺旋部」として例示する。)が設けられている。この螺旋板17によって、オイル導入管12内を流れるオイルがオイル導入管12の軸方向C1周りに旋回されるようになっている。
【0022】
(3)気泡分離器の作用
次に、上記構成の気泡分離器10の作用について説明する。
図1に示すように、スカベンジポンプSPの作用で、エンジン7側から吸引されるオイルがオイル導入管12内に送り込まれる。すると、図3に示すように、螺旋板17によって、オイル導入管12内を流れるオイルは、軸方向C1周りの旋回流R1とされる。このとき、比重の大きなオイルがオイル導入管12の内周面側に集まり、比重の小さな気泡がオイル導入管12の中心側に集まって微小気泡が結合される。その後、その旋回流R1は、本体11の内部に導入されて本体11の軸方向C2周りの旋回流R2とされ、比重の大きなオイルが本体11の内周面側に集まり、比重の小さな気体が本体11の中心側に集まって遠心分離される。そして、分離された気体は、貫通孔14を介して気体排出管13からオイルタンク2内に送られる。一方、分離されたオイルは、オイル排出口15からオイルタンク2内に送られることとなる。
なお、上記オイルタンク2内のオイルは、フィードポンプFPの作用で、オイル排出部3から吸引されてエンジン7側へ送り込まれる。
【0023】
(4)実施例の効果
本実施例1では、オイル導入管12の内周面側に螺旋板17を設け、この螺旋板17によって、オイル導入管12内を流れるオイルを軸方向C1周りの比較的小径な旋回流R1としているので、そのオイル中に極めて微小な気泡が含まれていても、その微小気泡をオイル導入管12の中心側に集めて結合させることができ、気泡分離効率を向上させることができる。また、本体11内には、軸方向C1周りの旋回流R1が導入されるので、その旋回流R1の整流効果によって、その本体11の導入口近傍での乱流の発生を抑制することができる。さらに、従来のように、本体の上端外周側に環状の予備旋回流路を設けるものに比べて、本体11の外径を小さくでき、気泡分離器10を小型で且つ簡易な構造とすることができる。
【0024】
(実施例2)
次に、実施例2に係る気泡分離器20について説明する。なお、本実施例2において、上記実施例1と略同じ構成部位には同じ符号を付け詳説を省略し、以下に実施例1との主な相違点、即ち本発明に係る「旋回手段」の構成の相違点について説明する。
【0025】
本実施例2に係る気泡分離器20では、図6〜8に示すように、オイル導入管12の内周面側には、オイル導入管12の内周方向に沿って等ピッチ間隔で複数(図中3枚)の羽根部21(本発明に係る「旋回手段」として例示する。)が設けられている。これら各羽根部21は、オイル導入管12の軸方向に傾斜する湾曲状の案内面21aを有している。これら各羽根部21の案内面21aによって、オイル導入管12内を流れるオイルが軸方向C1周りに旋回されて旋回流R1とされる。従って、本実施例2の気泡分離器20であっても、上記実施例1の気泡分離器10と略同様の作用・効果を発揮することができる。
【0026】
尚、本発明においては、上記実施例1及び2に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1では、本発明に係る「螺旋部」として、オイル導入管12の内周面側に配設される螺旋板17を例示したが、これに限定されず、例えば、図9に示すように、オイル導入管12の内周面側に形成された螺旋溝22としたり、図10に示すように、オイル導入管12の軸心側に配設されたリボン状の螺旋板23としたりすることができる。
【0027】
また、上記実施例1及び2では、上記気泡分離器10,20を、ドライサンプ式のエンジン潤滑で用いられるオイルタンク2内に配設する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、上記気泡分離器10,20を、ウェットサンプ式のエンジン潤滑におけるオイルポンプの下流側のオイル通路(配管等)の途中に配設するようにしてもよい。
【0028】
また、上記実施例2では、各羽根部21の軸方向C1の位相を一致させる形態を例示したが、これに限定されず、例えば、各羽根部21の軸方向C1の位相をずらすようにしてもよい。
また、上記実施例2では、複数の羽根部の1組のみを設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば、複数の羽根部の2以上の組を軸方向C1に沿って設けるようにしてもよい。
また、上記実施例1の螺旋板17及び本実施例2の羽根部21は、オイル導入管12と一体的に形成されていたり、別部材としてオイル導入管12に後付けされていたりすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
内燃機関の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去する技術として広く利用される。特に、ドライサンプ式の潤滑装置で使用されるオイル中に含まれる気泡を除去する技術として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施例1に係るオイルタンク構造を説明するための全体説明図である。
【図2】本実施例1に係る気泡分離器の縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】螺旋板の斜視図である。
【図6】本実施例2に係る気泡分離器の横断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】羽根部の斜視図である。
【図9】他の形態の螺旋部を説明するための説明図である。
【図10】更に他の形態の螺旋部を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10,20;気泡分離器、11;本体、12;オイル導入管、13;気体排出管、15;オイル排出口、17;螺旋板、21;羽根部、22;螺旋溝、23;螺旋板、C1;軸方向、R1;旋回流。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中に含まれる気泡を除去するための遠心分離方式の気泡分離器において、
略円筒形状の本体と、
該本体に設けられ且つ気泡を含む流体を該本体の内部に導入する流体導入管と、
該本体に設けられ且つ分離された気泡を該本体の外部に排出する気体排出部と、
該本体に設けられ且つ分離された流体を該本体の外部に排出する流体排出部と、を備え、
前記流体導入管の内部には、該流体導入管内を流れる流体を該流体導入管の軸方向周りに旋回させる旋回手段が設けられていることを特徴とする気泡分離器。
【請求項2】
前記旋回手段は、前記流体導入管の軸方向周りの螺旋部である請求項1記載の気泡分離器。
【請求項3】
前記旋回手段は、前記流体導入管の内周方向に沿って設けられた複数の羽根部である請求項1記載の気泡分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−73606(P2008−73606A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−254989(P2006−254989)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】