説明

気泡発生器

【課題】気泡の微細化および均一化を図ること。
【解決手段】空気が溶解した水が流入して減圧される入口流路(40)が形成された本体(31)と、入口流路(40)から水が分配流入して噴出される複数の出口流路(42)が形成されたノズル(32)とを備えている。ノズル(32)の先端面(39)には半球状の円弧凹部(43)が形成されている。各出口流路(42)は、ノズル(32)の軸心周りに配列され、噴出方向が円弧凹部(43)内で且つノズル(32)の軸心上の一点(P点)で交差するように構成されている。各出口流路(42)から噴出した水が一点で衝突し、水中の気泡が微細且つ均一になると共に、衝突によって跳ね返った水が円弧凹部(43)内に捕集されて再び前方へ流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡発生器に関し、特に、気泡の均一化および微細化に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、気体が溶解した液体を減圧して気泡を発生させ、この気泡を含む液体を浴槽等へ供給するための気泡発生器が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、浴槽内に臨むように浴槽壁面に取り付けられる気泡発生器が開示されている。この気泡発生器は、気体(空気)が溶解した液体(水)が流入する入口流路と、この入口流路に接続される分配流路と、この分配流路から分岐する複数の出口流路とを備えている。入口流路には、その流出側に水の流路断面を縮小させる絞り部が設けられている。分配流路は、入口流路を軸心とする扁平な円板状に形成され、流路が入口流路の絞り部より狭く形成されている。各出口流路は、分配流路の外周縁部にそれぞれ接続されており、分配流路の軸周りに等間隔に配列されている。
【0004】
この気泡発生器では、空気が溶解した水が入口流路および分配流路を順に流れる。その際、入口流路の絞り部および分配流路において、水が減圧され、水中に溶解していた空気が遊離して気泡が発生する。この気泡を含んだ水は、分配流路から各出口流路へ分流し、浴槽内へ噴射される。この微細気泡の噴流により、温熱効果やマッサージ効果を期待して、入浴時の快適性向上を図ろうとしている。
【特許文献1】特開2005−118542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の気泡発生器では、気泡の大きさをより微細且つ均一にすることで、入浴時の温熱効果やマッサージ効果が高まるが、上述した気泡発生器において気泡の微細化および均一化が充分に図れていないという問題があった。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、気泡の噴出口が円形に複数配列された気泡発生器において、気泡の均一化且つ微細化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、空気が溶解した液体が流入する入口流路(40)と、該入口流路(40)の液体が分配流入して噴出する複数の出口流路(42)が形成されたノズル(32)とを備えている気泡発生器を前提としている。そして、上記ノズル(32)は、先端に円弧凹部(43)が形成される一方、上記各出口流路(42)の噴出方向が上記円弧凹部(43)内の一点で交差するように上記各出口流路(42)の出口端が上記円弧凹部(43)面に開口しているものである。
【0008】
上記の発明では、入口流路(40)に流入した液体がノズル(32)の各出口流路(42)へ分流する。その際に、液体が減圧され、液中から空気が遊離して気泡が発生する。この気泡を含んだ液体は、各出口流路(42)から外部へ噴出する。例えば、本発明の気泡発生器(30)が浴槽に設けられた場合、気泡を含んだ液体が浴槽内へ噴出される。
【0009】
ここで、本発明では、各出口流路(42)の噴出方向が円弧凹部(43)内の一点で交差するように構成されているので、各出口流路(42)から噴出した液体がその一点(衝突点)に向かって流れ、互いに衝突する。この衝突により、液中の気泡が細かく砕けると共にその大きさが均一になる。そして、衝突した液体は、ノズル(32)の前方へ流れて例えば浴槽全体へ供給される。しかし、全ての液体が前方へ流れるとは限らず、衝突した液体の一部は、後方へ跳ね返る。この跳ね返った液体は、ノズル(32)の円弧凹部(43)内へ流れ、その円弧面に沿って各出口流路(42)の出口端(噴出端)へ流れる。これは、液体の噴出によって出口流路(42)の出口端付近が負圧状態になり、跳ね返った液体が誘引されるためである。つまり、跳ね返った液体が円弧凹部(43)内へ捕集される。各出口流路(42)の出口端へ流れた液体は、その出口端から噴出した液体と共に流れて、再び上述した衝突点で衝突する。この衝突により、跳ね返った液体中の気泡が一層細かく砕け且つ均一になる。その後、殆どの液体が前方へ流れる一方、一部の液体は後方へ跳ね返り、上述した作用が繰り返される。
【0010】
第2の発明は、空気が溶解した液体が流入する入口流路(40)と、該入口流路(40)の液体が分配流入して噴出する複数の出口流路(42)が形成されたノズル(32)とを備えている気泡発生器を前提としている。そして、上記ノズル(32)は、先端に円弧凹部(43)が形成される一方、上記ノズル(32)は、上記各出口流路(42)から噴出した液体が一点で衝突して、少なくとも後方へ跳ね返る液体が円弧凹部(43)内に捕集されるように構成されているものである。
【0011】
上記の発明では、入口流路(40)に流入した液体がノズル(32)の各出口流路(42)へ分流する。その際に、液体が減圧され、液中から空気が遊離して気泡が発生する。この気泡を含んだ液体は、各出口流路(42)から外部へ噴出する。例えば、本発明の気泡発生器(30)が浴槽に設けられた場合、気泡を含んだ液体が浴槽内へ噴出される。
【0012】
ここで、本発明では、各出口流路(42)から噴出した液体が一点(衝突点)で衝突する。この衝突により、液中の気泡が細かく砕けると共にその大きさが均一になる。そして、衝突した液体の殆どは、ノズル(32)の前方へ流れて例えば浴槽全体へ供給されるが、一部の液体は。後方へ跳ね返る。この跳ね返った液体は、ノズル(32)の円弧凹部(43)内に捕集される。捕集された液体は、円弧凹部(43)の円弧面に沿って各出口流路(42)の出口端(噴出端)へ流れる。これは、液体の噴出によって出口流路(42)の出口端付近が負圧状態になり、跳ね返った液体が誘引されるためである。各出口流路(42)の出口端へ流れた液体は、その出口端から噴出した液体と共に流れて、再び上述した衝突点で衝突する。この衝突により、跳ね返った液体中の気泡が一層細かく砕け且つ均一になる。その後、殆どの液体が前方へ流れる一方、一部の液体は後方へ跳ね返り、上述した作用が繰り返される。
【0013】
第3の発明は、上記第1の発明において、上記入口流路(40)が流路絞り部(35)を有している。そして、上記ノズル(32)は、各出口流路(42)が上記入口流路(40)の軸心周りに配列される一方、各出口流路(42)の噴出方向が上記入口流路(40)の軸心上の一点で交差するものである。
【0014】
上記の発明では、入口流路(40)に流入した液体が流路絞り部(38)で減圧され、液中から空気が遊離して気泡が発生する。この気泡を含んだ液体は、各出口流路(42)へ分流して外部へ噴出する。ここで、本発明では、各出口流路(42)の噴出方向が円弧凹部(43)内で且つ入口流路(40)の軸心上の一点で交差する。つまり、各出口流路(42)から噴出した液体は、円弧凹部(43)内であって、且つ、円弧凹部(43)の円弧中心を通る対称軸上の一点で衝突する。したがって、衝突して跳ね返った液体が確実に円弧凹部(43)内へ流れて捕集される。
【0015】
第4の発明は、上記第1または第3の発明において、上記出口流路(42)の噴出方向の交差角が60°以上90°以下であるものである。
【0016】
上記の発明では、各出口流路(42)から噴出した液体が互いに60°以上90°以下の角度(衝突角度)で衝突する。これにより、適切な液体の衝突力が確保されると共に、衝突によって跳ね返った液体が確実に円弧凹部(43)内へ流れる。
【0017】
第5の発明は、上記第1または第2の発明において、上記円弧凹部(43)が半球状であるものである。
【0018】
上記の発明では、円弧凹部(43)が半球状、即ち円弧凹部(43)の円弧角度が180°に形成されているので、衝突後の液体が適切に前方へ供給され、後方へ跳ね返った液体が広範に円弧凹部(43)内へ捕集される。
【0019】
第6の発明は、上記第3の発明において、上記各出口流路(42)が、入口流路(40)の軸心と平行に延びる流入側の平行通路(42a)と、該平行通路(42a)の終端から入口流路(40)の軸心側へ傾斜して延びて上記円弧凹部(43)面に開口する噴出側の傾斜通路(42b)とにより構成されているものである。そして、上記ノズル(32)は、全ての平行通路(42a)が形成された第1ブロック(32a)と、全ての傾斜通路(42b)が形成された第2ブロック(32b)とに分割されているものである。
【0020】
上記の発明では、全ての平行通路(42a)を有する第1ブロック(32a)と、全ての傾斜通路(42b)および円弧凹部(43)を有する第2ブロック(32b)とにノズル(32)が分割される。つまり、ノズル(32)は、平行通路(42a)と傾斜通路(42b)との接続位置で分割されている。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本発明によれば、各出口流路(42)の噴出方向を一点で交差させ、噴出した液体を一点(衝突点)で衝突させるようにした。したがって、気泡の大きさを一層微細且つ均一にすることができる。その結果、例えば本発明の気泡発生器(30)を浴槽に用いた場合、気泡の噴流による温熱効果やマッサージ効果を高めることができ、入浴者の快適性向上を図ることができる。
【0022】
さらに、本発明によれば、ノズル(32)の先端に円弧凹部(43)を形成し、上記液体の衝突点を円弧凹部(43)内に設定し、衝突により後方へ跳ね返った液体をその円弧凹部(43)内に捕集するようにした。したがって、跳ね返った液体を各出口流路(42)から噴出した液体と共に流して、再び衝突点で衝突させることができる。これにより、微細且つ均一にした気泡を無駄なく前方へ流すことができ、浴槽全体へ供給することができる。また、再度衝突させることにより、気泡の微細化且つ均一化を一層図ることができる。その結果、入浴者の快適性を効果的に図ることができる。
【0023】
また、第3の発明によれば、各出口流路(42)を入口流路(40)の軸心周りに配列すると共に、各出口流路(42)から噴出した液体の衝突点を円弧凹部(43)内で且つ入口流路(40)の軸心上に設定するようにした。したがって、衝突によって跳ね返った液体を確実に円弧凹部(43)内に捕集することができる。その結果、気泡の微細化且つ均一化を確実に図ることができる。
【0024】
また、第4の発明によれば、各出口流路(42)の噴出方向の交差角を60°以上90°以下としたので、液体の衝突力および衝突後に前方へ流れる水量(気泡量)を適切に確保しつつ、衝突して跳ね返った液体を確実に円弧凹部(43)内に捕集することができる。したがって、気泡の微細化且つ均一化をより効果的に達成することができる。
【0025】
つまり、交差角を過大にすると、液体の衝突力が増大して気泡の微細化且つ均一化を一層図れるが、前方への液体の供給量が減少し、また跳ね返った液体の捕集率が低下してしまう。逆に、交差角を過小にすると、前方への液体の供給量および跳ね返った液体の捕集率は確保できるが、液体の衝突力が減少して気泡の微細化且つ均一化がそれ程期待できない。
【0026】
さらに、第5の発明によれば、円弧凹部(43)を半球状にしたので、衝突後の液体を確実に前方へ供給することができると共に、後方へ跳ね返った水を広範に捕集することができる。これにより、気泡の微細化および均一化を効果的に図ることができる。
【0027】
また、第6の発明によれば、ノズル(32)を平行通路(42a)と傾斜通路(42b)との接続位置で分割するようにしたので、平行通路(42a)および傾斜通路(42b)をそれぞれのブロック(32a,32b)において1つの貫通通路として形成することができる。したがって、平行通路(42a)および傾斜通路(42b)の切削加工、引いては第2ブロック(32b)の円弧凹部(43)の切削加工が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0029】
本発明に係る気泡発生器(30)は、浴槽(5)に微細な気泡を含んだ水を供給する微細気泡供給装置(10)に設けられている。
【0030】
〈微細気泡供給装置の全体構成〉
図1に示すように、本実施形態の微細気泡供給装置(10)は、入口と出口とがそれぞれ浴槽(5)に接続された循環流路(11)を備えている。この循環流路(11)には、上流側から下流側に向かって順に、空気導入器(12)とポンプ機構(13)と気体溶解器(14)と上記気泡発生器(30)とが接続されている。
【0031】
上記空気導入器(12)は、循環流路(11)内へ気泡源となる空気を外部から導入するものである。この空気導入器(12)は、その内部の水流によって発生する負圧を利用して空気を吸入する、いわゆるエジェクター方式の空気導入器である。つまり、空気導入器(12)では、その内部を通過する水流により負圧が生じ、この負圧によって外部の空気が空気導入管(12a)を介して循環流路(11)に導入される。
【0032】
上記ポンプ機構(13)は、浴槽(5)の水を循環流路(11)内で循環させるためのものである。このポンプ機構(13)は、空気導入器(12)側から吸い込んだ水を気体溶解器(14)側へ吐出する。
【0033】
上記気体溶解器(14)は、筒状の容器内において、水に対する空気の溶解を促進させるものである。この容器内には、空気と水との接触時間や接触面積を稼ぐための例えば充填材等が設けられている。
【0034】
上記気泡発生器(30)は、空気が溶解した水を減圧して微細な気泡を発生させるためのものである。気泡発生器(30)は、浴槽(5)内に臨むように浴槽(5)の側壁面に取り付けられている。この気泡発生器(30)の詳細については後述する。
【0035】
上記循環流路(11)には、空気導入器(12)の上流側に流量計(15)が設けられている。この流量計(15)は、循環流路(11)を循環する水の流量を計測する流量計測手段を構成している。また、循環流路(11)には、気体溶解器(14)と気泡発生器(30)との間に流量調節バルブ(16)が設けられている。流量調節バルブ(16)は、開度を変更して循環流路(11)の流量を調節する流量調節手段を構成している。
【0036】
〈気泡発生器の詳細構造〉
次に、上記気泡発生器(30)の詳細構造について説明する。図2から図4に示すように、気泡発生器(30)は、循環流路(11)の流量調節バルブ(16)側に設けられる本体(31)と、浴槽(5)側に設けられるノズル(32)とを備えている。
【0037】
上記本体(31)は、略円筒状に形成され、ノズル(32)は、本体(31)の外径より小径の略円柱状に形成されている。本体(31)の一端側(図2における右端側)の内周壁には、雌ネジ部(33)が形成されている。これに対し、ノズル(32)の一端側(図2における左端側)の外周壁には、雄ネジ部(34)が形成されている。本体(31)とノズル(32)とは、雌ネジ部(33)と雄ネジ部(34)が締結されることで、一体的に組み合わされて気泡発生器(30)を構成している。
【0038】
上記本体(31)は、他端側(図2における左端側)に入口流路(40)が形成されている。この入口流路(40)には、気体溶解器(14)を流出して空気が溶解した状態となった水が流入する。入口流路(40)の流出側には、本体側絞り部(35)が形成されている。この本体側絞り部(35)は、入口流路(40)の流路断面を縮小させて水を減圧する流路絞り部、即ち減圧流路を構成している。
【0039】
具体的に、本体側絞り部(35)は、入口流路(40)の流出側に向かって縮径したテーパー面(35a)と、このテーパー面(35a)の先端側に形成される円周面(35b)とを有している。入口流路(40)は、本体側絞り部(35)が形成されることで、流入側から下流側に向かって順に、大径通路(40a)と縮径通路(40b)と小径通路(40c)とが形成されている。大径通路(40a)は比較的大径の円柱状に形成され、縮径通路(40b)は流出側に向かって縮径する台形円錐状に形成され、小径通路(40c)は大径通路(40a)よりも小径の円柱状に形成されている。
【0040】
上記本体(31)とノズル(32)との間には、分配流路(41)が形成されている。この分配流路(41)は、入口流路(40)の小径通路(40c)に接続されている。そして、分配流路(41)は、入口流路(40)の軸心を中心として径方向外側に拡がる円板状に形成されている。分配流路(41)の軸方向両側の内壁において、本体(31)側の内壁が第1内壁(36)を構成し、ノズル(32)側の内壁が第2内壁(37)を構成している。つまり、第1内壁(36)の中央には、入口流路(40)の小径通路(40c)が開口している。
【0041】
上記ノズル(32)には、複数(本実施形態では、6つ)の出口流路(42)が形成されている。さらに、ノズル(32)には、先端面(39)の中央に円弧凹部(43)が形成されている。つまり、ノズル(32)の先端中央部が半球状に凹んでいる。
【0042】
上記各出口流路(42)は、ノズル(32)の軸方向両端(図2における左右端)に亘って貫通している。そして、図3および図4にも示すように、6つの出口流路(42)は、ノズル(32)の軸心(即ち、分配流路(41)の軸心)を中心として周方向に等間隔で配列されている。つまり、入口流路(40)、分配流路(41)およびノズル(32)は、同軸に形成され、各出口流路(42)が分配流路(41)の軸心周りに配列されている。このように、気泡発生器(30)では、入口流路(40)に流入した水が分配流路(41)に流れ、その後、各出口流路(42)へ分配されて浴槽(5)内へ噴出される。
【0043】
上記各出口流路(42)は、平行通路(42a)と傾斜通路(42b)とで構成されている。
【0044】
上記平行通路(42a)は、ノズル(32)の軸方向と平行に真っ直ぐ延びている。平行通路(42a)は、流入端である一端が分配流路(41)の外縁部に接続され(図3も参照)、他端が傾斜通路(42b)の一端に接続されている。そして、この平行通路(42a)の途中には、ノズル側絞り部(38)が形成されている。ノズル側絞り部(38)は、平行通路(42a)の内周壁から径方向内側に膨出した筒状に一体形成されており、平行通路(42a)の断面を縮小させている。つまり、このノズル側絞り部(38)は、本体側絞り部(35)と同様、水を減圧する流路絞り部、即ち減圧通路を構成している。このノズル側絞り部(38)により、水中の気泡の微細化(細分化)が図られる。
【0045】
上記傾斜通路(42b)は、平行通路(42a)の他端からノズル(32)の軸心側へ傾斜して真っ直ぐ延びている。具体的に、傾斜通路(42b)は、流入端である一端が平行通路(42a)の他端に接続され、流出端(出口端)である他端が円弧凹部(43)面に開口している(図4も参照)。そして、各出口流路(42)の傾斜通路(42b)は、それぞれの軸心(即ち、噴出方向)が一点(P点)で交差するように形成されている。このP点は、ノズル(32)の軸心と先端面(39)のラインとの交点(即ち、円弧凹部(43)の円弧中心)である。つまり、ノズル(32)は、各出口流路(42)から流出(噴出)した水が円弧凹部(43)内で且つノズル(32)の軸心上(即ち、入口流路(40)の軸心上)の一点で衝突するように構成されている。この衝突により、水中の気泡を一層微細に且つ均一にさせることができる。
【0046】
さらに、上記ノズル(32)は、衝突によって後方(図2における左方向)へ跳ね返
返った水(気泡を含む)が円弧凹部(43)面に沿って各傾斜通路(42b)の流出端へ流れるように構成されている。つまり、ノズル(32)の円弧凹部(43)は、衝突して後方へ跳ね返った水を捕集する機能を有している。
【0047】
また、本実施形態では、各傾斜通路(42b)の軸心の交差角θが60°以上90°以下になるように構成されている。この交差角θの範囲は、衝突による気泡の微細化および均一化を効果的に行うための最適範囲であり、それ以外の交差角であってもよい。
【0048】
−微細気泡供給装置の運転動作−
次に、本実施形態の微細気泡供給装置(10)の運転動作について説明する。この微細気泡供給装置(10)では、ポンプ機構(13)を起動させると、浴槽(5)の水が循環流路(11)の入口へ吸い込まれて循環流路(11)の出口へ向かって流通する。
【0049】
なお、ポンプ機構(13)は、循環流路(11)の流量が例えば35リットル/分になるように調節される。この状態では、気体溶解器(14)の容器内が、300〜400kPa程度に加圧される。また、運転中は、流量計(15)によって計測された流量に基づいて流量調節バルブ(16)の開度が調節される。
【0050】
循環流路(11)の入口から流入した浴槽(5)の水は、空気導入器(12)に流入する。空気導入器(12)では、空気導入管(12a)から吸い込まれた空気が水に混入される。水に混入される空気は、比較的小さな気泡になる。この気泡を含む水は、空気導入器(12)から流出し、ポンプ機構(13)を経て気体溶解器(14)に流入する。気体溶解器(14)では、水が加圧されて水に対する空気の溶解が促進される。空気が溶解した水は、気体溶解器(14)を流出して気泡発生器(30)へ流入する。
【0051】
気泡発生器(30)へ流入した水は、入口流路(40)を流通する。この水は、本体側絞り部(35)を通過する際に減圧される。それにより、水中に溶解した空気が遊離し、水中で気泡が発生する。その後、気泡を含む水は、分配流路(41)へ流入する。分配流路(41)では、流入した水が軸心側から外周側へ向かって放射状に流通する。この流通の際にも、水が減圧され、未だ水中に残存する空気が遊離して気泡が発生する。その後、気泡を含む水は、各出口流路(42)へ分配されて流入する。
【0052】
各出口流路(42)へ流入した水は、平行通路(42a)のノズル側絞り部(38)で減圧され、水中に未だ残存していた空気が遊離して更に気泡が発生し、また比較的大きな気泡が細分化される。その後、気泡を含む水は、各傾斜通路(42b)から浴槽(5)内へ噴出される。
【0053】
図5に示すように、各傾斜通路(42b)から噴出した水(R1)は、一点(P点)で衝突する。これにより、気泡の大きさがより微細且つ均一になる。なお、衝突後の気泡の大きさは、数十ミクロンである。そして、衝突した水の殆ど(R2)は、前方へ流れて浴槽(5)全体へ拡がるが、残りの水(F1,F2)は、後方へ跳ね返る。跳ね返った水(F1,F2)は、円弧凹部(43)内に捕集される。ここで、各傾斜通路(42b)の噴出方向の交差角θが60°以上90°以下なので、水の衝突力および衝突後に前方へ流れる水量(気泡量)が適切に確保されると共に、衝突によって跳ね返った水が確実に円弧凹部(43)内に捕集される。
【0054】
円弧凹部(43)内に捕集された水(F1,F2)は、円弧凹部(43)面に当たった後、円弧凹部(43)面に沿って各傾斜通路(42b)の流出端へ流れる。これは、水の噴出によって傾斜通路(42b)の流出端付近が負圧状態になっているので、捕集された水(F1,F2)が誘引されるためである。しかも、凹部(43)が円弧状であるため、水(F1,F2)がその円弧面に沿って誘引され易い。
【0055】
各傾斜通路(42b)の流出端に誘引された水(F1,F2)は、その各流出端から噴出した水(R1)と混合して、再び一点(P点)で衝突する。そして、衝突した殆どの水(R2)が前方へ流れ、残りの水(F1,F2)が円弧凹部(43)内に捕集される。このように、衝突により後方へ流れた水は、円弧凹部(43)内に捕集されて再び前方へ流れるので、無駄なく微細且つ均一な気泡を浴槽(5)全体へ供給される。さらに、円弧凹部(43)内に捕集された水を再び衝突させるので、気泡の微細化且つ均一化を一層図ることができる。
【0056】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、各出口流路(42)の噴出方向を一点で交差させ、噴出した水を一点で衝突させるようにした。したがって、気泡の大きさを一層微細且つ均一にすることができる。その結果、気泡の噴流による温熱効果やマッサージ効果を高めることができ、入浴者の快適性向上を図ることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、ノズル(32)の先端面(39)に円弧凹部(43)を形成し、上記水の衝突点を円弧凹部(43)内で且つノズル(32)の軸心上に設定し、衝突により後方へ跳ね返った水をその円弧凹部(43)内に捕集するようにした。したがって、跳ね返った水を円弧凹部(43)面に沿って各出口流路(42)の流出端へ流し、その流出端から噴出した水と共に再び衝突させることができる。これにより、微細且つ均一にした気泡を無駄なく浴槽(5)全体へ供給することができる。また、再度衝突させることにより、気泡の微細化且つ均一化を一層図ることができる。その結果、入浴者の快適性を効果的に図ることができる。
【0058】
また、各出口流路(42)の噴出方向の交差角を60°以上90°以下としたので、水の衝突力および衝突後の前方へ流れる水量(気泡量)を適切に確保しつつ、衝突によって跳ね返った水を確実に円弧凹部(43)内に捕集することができる。つまり、交差角を過大にすると、水の衝突力が増大して気泡の微細化且つ均一化が一層期待されるが、衝突後の前方へ流れる水量(気泡量)を確保できず、また跳ね返った水を円弧凹部(43)に捕集し難くなってしまう。逆に、交差角を過小にすると、水の衝突力が減少して気泡の微細化および均一化があまり図れない。このように、本実施形態では、気泡の微細化且つ均一化を効果的に図ることができる。
【0059】
また、円弧凹部(43)を半球状にしたので、衝突後の水を確実に前方へ供給することができると共に、後方へ跳ね返った水を広範に捕集することができる。これにより、気泡の微細化および均一化を効果的に図ることができる。
【0060】
−実施形態の変形例−
本変形例は、図6に示すように、上記実施形態におけるノズル(32)の構成を変更したものである。つまり、本変形例のノズル(32)は、上記実施形態が単体で構成したのに代えて、2分割構造にしたものである。
【0061】
具体的に、本変形例のノズル(32)は、第1ブロック(32a)と第2ブロック(32b)に分割されている。この第1ブロック(32a)と第2ブロック(32b)は、平行通路(42a)と傾斜通路(42b)との接続位置で分割されている。つまり、各平行通路(42a)および各傾斜通路(42b)のうち、全ての平行通路(42a)が第1ブロック(32a)に形成され、全ての傾斜通路(42b)が第2ブロック(32b)に形成されている。
【0062】
上記両ブロック(32a,32b)は、何れも略円柱状に形成されている。第2ブロック(32b)は、第1ブロック(32a)より外径が大きく形成されている。第1ブロック(32a)の流出側端部(図6における右側端部)には、外周面に雄ネジ部(48)が形成され、中央凹部の内周面に雌ネジ部(45)が形成されている。第2ブロック(32b)の流入側端部(図6における左側端部)には、環状の凹溝が形成され、その凹溝の外側内周面に第1ブロック(32a)の雄ネジ部(46)に対応する雌ネジ部(47)が形成され、凹溝の内側内周面に第1ブロック(32a)の雌ネジ部(47)に対応する雄ネジ部(46)が形成されている。そして、これら各雌ネジ部(45,47)と各雄ネジ部(46,48)とが締結されて、両ブロック(32a,32b)が結合される。この結合により、平行通路(42a)と傾斜通路(42b)とが接続される。
【0063】
以上のように、ノズル(32)を平行通路(42a)と傾斜通路(42b)との接続位置で分割するようにしたので、平行通路(42a)および傾斜通路(42b)がそれぞれのブロック(32a,32b)において直線状の貫通通路として形成される。したがって、平行通路(42a)および傾斜通路(42b)の切削加工、引いては第2ブロック(32b)の円弧凹部(43)の切削加工が容易になる。その他の構成、作用および効果は実施形態と同様である。
【0064】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0065】
例えば、上記実施形態では、各出口流路(42)の噴出方向の交差点を円弧凹部(43)の円弧中心(P点)に設定したが、図2や図6においてそのP点から真左にずれた位置に設定するようにしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態において、各出口流路(42)の噴出方向の交差点はノズル(32)の軸心上(即ち、入口流路(40)の軸心上)以外の位置に設定するようにしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、ノズル(32)の軸心(入口流路(40)の軸心)を中心とする1つの円上に複数の出口流路(42)を配列したが、これに限らず、複数(2重や3重)の同心円上に出口流路(42)を配列するようにしてもよい。また、本発明は、複数の出口流路(42)をノズル(32)の軸心周りに配列しなくてもよく、円弧凹部(43)面に比較的不規則に開口するようにしてもよい。
【0068】
要するに、本発明に係るノズル(32)は、複数の出口流路(42)が円弧凹部(43)面に開口すると共に、各出口流路(42)の噴出方向が円弧凹部(43)内の一点で交差するものであればよく、つまり、各出口流路(42)から噴出した水が一点で衝突し、跳ね返った水が円弧凹部(43)内に捕集されるように構成されていればよい。
【0069】
また、上記実施形態では、円弧凹部(43)を半球状としたが、これに限らず、水の衝突力と前方へ流す水量(気泡量)を適切に確保でき、跳ね返った水を適切に捕集できる範囲であれば、円弧角度が180度未満の円弧形状であってもよいことは勿論である。
【0070】
また、上記実施形態では、出口流路(42)を6つとしたが、2〜5つまたは7つ以上であってもよいことは勿論である。
【0071】
また、上記実施形態では、出口流路(42)を平行通路(42a)と傾斜通路(42b)で構成するようにしたが、これに限らず、出口流路(42)の噴出方向が円弧凹部(43)内で且つノズル(32)の軸心上の一点で交差するように構成されていれば、出口流路(42)の形状は如何なるものであってもよい。例えば、平行通路(42a)はノズル(32)の軸心と平行でなくてもよく、また出口流路(42)全体が分配流路(41)の接続位置からノズル(32)の軸心側へ傾斜しながら真っ直ぐ延びて円弧凹部(43)面に開口するような形態であってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、出口流路(42)においてノズル側絞り部(38)を一体形成しているが、出口流路(42)とは別体で構成するようにしてもよいし、またノズル側絞り部(38)を省略するようにしてもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、水中に空気を溶解させて気泡を発生するようにしているが、この水中に芳香(アロマ)成分や人体に有用な成分を混入させ、気泡と共に浴槽(5)内へ供給するようにしても良い。
【0074】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上説明したように、本発明は、気体が溶解した液体を減圧することにより気泡を発生させる気泡発生器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態に係る微細気泡供給装置の構成を示す配管系統図である。
【図2】実施形態に係る気泡発生器の構成を示す縦断面図である。
【図3】実施形態に係る気泡発生器をノズル側から視て示す正面図である。
【図4】図2のA−A断面図である。
【図5】ノズルにおける液体の噴出状態を示す縦断面図である。
【図6】実施形態の変形例に係る気泡発生器の構成を示すものであり、(A)は縦断面図を示し、(B)は先端から視た正面図を示す。
【符号の説明】
【0077】
10 微細気泡供給装置
30 気泡発生器
32 ノズル
32a 第1ブロック
32b 第2ブロック
35 本体側絞り部(流路絞り部)
40 入口流路
42 出口流路
42a 平行通路
42b 傾斜通路
43 円弧凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気が溶解した液体が流入する入口流路(40)と、該入口流路(40)の液体が分配流入して噴出する複数の出口流路(42)が形成されたノズル(32)とを備えている気泡発生器であって、
上記ノズル(32)は、先端に円弧凹部(43)が形成される一方、上記各出口流路(42)の噴出方向が上記円弧凹部(43)内の一点で交差するように上記各出口流路(42)の出口端が上記円弧凹部(43)面に開口している
ことを特徴とする気泡発生器。
【請求項2】
空気が溶解した液体が流入する入口流路(40)と、該入口流路(40)の液体が分配流入して噴出する複数の出口流路(42)が形成されたノズル(32)とを備えている気泡発生器であって、
上記ノズル(32)は、先端に円弧凹部(43)が形成される一方、
上記ノズル(32)は、上記各出口流路(42)から噴出した液体が一点で衝突して、少なくとも後方へ跳ね返る液体が円弧凹部(43)内に捕集されるように構成されている
ことを特徴とする気泡発生器。
【請求項3】
請求項1において、
上記入口流路(40)は、流路絞り部(35)を有し、
上記ノズル(32)は、各出口流路(42)が上記入口流路(40)の軸心周りに配列される一方、各出口流路(42)の噴出方向が上記入口流路(40)の軸心上の一点で交差する
ことを特徴とする気泡発生器。
【請求項4】
請求項1または3において、
上記出口流路(42)の噴出方向の交差角は、60°以上90°以下である
ことを特徴とする気泡発生器。
【請求項5】
請求項1または2において、
上記円弧凹部(43)は、半球状である
ことを特徴とする気泡発生器。
【請求項6】
請求項3において、
上記各出口流路(42)は、入口流路(40)の軸心と平行に延びる流入側の平行通路(42a)と、該平行通路(42a)の終端から入口流路(40)の軸心側へ傾斜して延びて上記円弧凹部(43)面に開口する噴出側の傾斜通路(42b)とにより構成され、
上記ノズル(32)は、全ての平行通路(42a)が形成された第1ブロック(32a)と、全ての傾斜通路(42b)が形成された第2ブロック(32b)とに分割されている
ことを特徴とする気泡発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−161829(P2008−161829A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355971(P2006−355971)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】