説明

気泡除去装置

【課題】気泡除去装置の従来の分離方法では送られてくる液体に大量の空気が混入している場合、空気を排出してしまうことや、構成の複雑さから装置が大型化してしまうことや、除去できる空気の量に制限がある等の問題があった。
【解決手段】装置上部に開口部を設けた器に液体を注入し、気泡の浮力により気体を除去する。器に液体を注いで最下部の液体排出弁を液体で満たしておき、規定の水位を超えるとフロートが浮上して連動する液体排出弁を開き液体のみ排出する。大気圧では排出圧が足りないときにはさらにフロートが浮上して上部の開口部を塞ぎ液体の排出に注入圧を使用する。液体排出口や繋ぐチューブの内径を使用する液体が表面張力で隙間なく留まれる大きさに設定し、途中で気体が混入することなく液体を送り出すことを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気泡除去装置に関し、とくに流体搬送チューブにて送られてくる、液体とそれに溶存せずに分離している気体に関しそれらを分けて液体のみを取り出すことが可能な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気泡除去装置は液体を扱う装置の中において元々の供給される液体に混ざって流れてくる気泡や経由する様々なユニットで発生又は混入する気泡を除去するための装置である。使用する液体に溶存している気体まで取り出す場合もありその除去方法は目的により様々である。今まで気泡の除去は気泡の浮力を利用した方法や遠心力で収集する方法、熱をかける方法、減圧する方法等が考え出されてきた。
【0003】
液体中に溶存する気体に関しては積極的に除去しなくても問題ない場合が多いが、液体中に溶存せず混ざって流れてくる気泡に関しては下記のような問題がある。すなわち、液体だけを送りたい場合でも液体に溶存しない気体の固まりが混入して流れてしまう場合、実験などではその気体が液体の特性の観測を阻害する場合がある。例えば旋光計等に用いられるフローセルに気泡が入ってしまった場合、気泡により旋光度を走査するために入射される光線が遮断されてしまい、光が光検出器に到達しないため旋光度を正確に測定することができなくなる。この気泡がフローセルの管路を塞ぎきらないような小さな気泡であっても光路内に掛かっていれば光線を散乱させてしまい、やはり正確な測定結果は期待できなくなる。
また点滴では気体が血管に流れ込むと最悪の場合、血栓となってしまう。
【0004】
そのため従来から気体を液体から除去する装置として特許文献1の液体の流速を加速することによって混入している気泡を付勢して液体から分離して除去する方法や、特許文献2の液体タンクをバッファにして気泡を浮力により分離しセンサとポンプによってタンク内の液体が空にならないように制御する方法が考えられてきた。
また点滴の現場ではタコ管等のバッファを用意して対応する方法が用いられてきた。
【0005】
【特許文献1】特開平6-246105号公報(2頁)
【特許文献2】特開平6-234430号公報(2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述の従来技術では以下に示す問題を有している。特許文献1における流速加速による方法ではある程度の小さな気泡は液体と一緒にそのまま流してしまうものであり完全な分離をするものではなかった。また供給される液体に大量の空気が混入している場合には装置内の液体の水位が下がってしまい排出口に空気がそのまま流れ込んでしまう可能性がある。また、特許文献2におけるセンサとポンプによる液量制御は機構の構成が大掛かりになり小型化にも不利であるし、原理的に注入される液体に大量の空気を含んでいる場合には液体の供給が間に合わなくなり空気を流してしまう可能性がある。それを防ぐ為には更に弁を追加して規定量の液体がバッファされていなければ弁を閉じて液体が十分に補充されるまで排出を止める必要があり構成は更に複雑化する。更に排出を止める弁を設けて液体を断続的に排出する場合排出口がある程度の大きさを超えると液体は排出口にとどまることが出来なくなり空気の混入を招く可能性もある。また、タコ管などのバッファ式のものには容量に制限があり、バッファ容量を超えると気体を除去する機能が完全に失われて気泡が素通りしてしまう上、場合によってはバッファ内に溜まった空気を吸い出
して大きな気泡を流してしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明では上述した従来技術による問題点を解消するため、送られてくる液体と一緒に流れてくる気体を完全に排除し、液体のみを連続して送り出す技術を簡単な構成で小型化が可能に提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題を解決するために本発明による気泡除去装置には、下記に記載の手段を採用する。すなわち本発明の気泡除去装置は液体を貯め気体を分離する為の液体貯槽と、この槽に液体を注入する液体注入口と、この槽の下部に液体を排出する液体排出口とそれを開閉する液体排出弁と、この槽の上部に気体を排出する開口部と、液体貯槽内部に液体排出弁と連動可能に備えられたフロートにより形成されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の気泡除去装置はフロートが浮上し液体排出弁が開くまでにある程度液体貯槽に液体が貯まるようになっており、その時液体排出弁は液体中に浸っていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の気泡除去装置は液体排出口の内径を、使用する液体が表面張力で液体排出口内に隙間なく留まれる大きさにすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の気泡除去装置は液体貯槽の上部の開口部に弁を備えた気体排出口を設けた蓋を有し、フロートの上下動にこの弁の開閉を連動させることが好ましい。
【0012】
また、本発明の気泡除去装置はフロート又は弁にバネを付加してフロートの上下動により連動する弁の開閉力を調節可能な構成にすることが好ましい。
【0013】
(作用)
気泡除去装置において液体を搬送するチューブ内に溜まる気泡が不都合を生じさせるために除去したい場合、上部を大気開放した液体貯槽に気体の混入した液体を注入し、気泡の浮力により気体を除去する。装置に液体を注入して下部液体排出弁を液体で満たしておき、規定の水位を超えるとフロートが浮上して連動する液体排出弁を開き液体を液体排出口に流す。規定量まで液体の供給量が減ったり、混入する空気の割合が多くなってくると液体貯槽内の水位が下がりフロートの降下に連動して液体排出口の弁が閉じるが、液体排出口の内径を液体の表面張力で液体排出口内に留まれる大きさにしているため弁が閉じられても液体は液体排出口内に留まり流れていかない。すなわち、液体排出口の内径を、液体排出口内に表面張力によって使用する液体で満たされる大きさにしているため弁が閉じられても液体は液体排出口内に留まり流れていかない。この方式においてはもとの液体に含まれる気泡は排出口に入り込むことは無く液体の排出が再開されれば排出口に液体が留まっているため、液体は途切れなく連続して排出される。この時液体の排出は大気圧によるが、大気圧による排出力が不十分であるときにはさらに液体貯槽上部に気体排出口とこれを開閉しフロートに連動する弁を設けることによりフロートが浮上して連動する気体排出弁を閉じ、液体貯槽を密閉することにより液体の注入圧を積極的に利用して液体の排出力を補う。また、フロートまたは液体排出弁にバネを付加することにより使用する液体の性質の違いに対して変わるフロートの浮力に連動する弁の開閉力を調節することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明のように、本発明の気泡除去装置においては、下記に記載する効果を有する。
【0015】
送液中の液体に混入する気泡を除去するための気泡除去装置は送られてくる液体に大量の空気が混入している場合、空気を排出してしまうことや、構成の複雑さから装置が大型化してしまうことや、除去できる空気の量に制限がある等の問題があった。これらの課題を解決するために本発明による気泡除去装置には、下記に記載の手段を採用する。すなわち本発明の気泡除去装置は、液体貯槽に注入された時点で液体と一緒に流れてくる気体をそれ自身の浮力によって大気中に開放し液体と分離する。液体は重力によって液体排出弁のある液体貯槽下部に流れ込みある程度溜まって水位が上がったところでフロートを浮上させ、フロートに連動された液体排出弁を開き液体を排出する。フロートが初期位置に戻る水位まで液体の供給量が減ると液体排出弁が閉じるが、この時液体貯槽内にはある程度液体が溜まっていて液体排出弁が液体に浸っている状態なので空気が液体排出弁から排出されることはない。また、液体排出口の内径がある程度大きくなると元々液体排出口内にある空気を押し流すことが出来ずに液体排出口内で空気が混ざった状態になってしまうが、使用する液体が表面張力で液体排出口内に隙間なく留まれる大きさにすることで、液体排出弁が閉じた時に、液体が液体排出口内に留まるようにしており、注入される液体の供給が再開されて再び液体排出弁が開いた時に排出される液体が既に液体排出口内にある液体に途切れなく繋がることで、気体の混入を完全におさえることが可能である。このとき液体の排出は大気圧によるが、液体の排出圧が大気圧だけでは不十分なときには、さらに液体貯槽上部に空気排出口とこれを開閉しフロートに連動する弁を設けることによりフロートが浮上して連動する気体排出弁を閉じ、液体貯槽を密閉することにより液体の注入圧を積極的に利用して液体の排出力を補う。また、フロートや液体排出弁にバネを付加することにより使用する液体の性質の違いに対して変わる液体排出弁の開閉力を調節することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を利用した気泡除去装置の最適な実施形態を説明する。
【0017】
(第一の実施形態)
本発明の実施形態の一例として可能な限り簡単な構成で設計した気泡除去装置の平面図を図1の(a)に、側面図を図1の(b)に、図1(a)をA-A'で切った断面図を図2、図3、図4にしめす。直動するバルブピストン101に直接フロート102を取り付け、下部の液体排出口103の直上にシリンダ104を配した液体貯槽105とこの槽に液体を注入する液体注入口106を基本構成とする。シリンダ底部は液体排出口103に繋がる穴が開いており、この底部とバルブピストン101で液体排出弁109を形成する。図では液体排出弁109の密閉性を高めるためのゴム製のバルブシール107がバルブピストン101の底部に貼り付けてある。また、液体排出弁109部分を確実に液中に浸らせるためシリンダ104に沿って導入水路108が形成されている。液体注入口106は上面・側面・底面のどこに配しても構わないが本図では液体貯槽105の下部に設けて下側から注入する形をとっている。また、フロート102の底部はそこに空気だまりが出来ないようにテーパー形状になっている。液体貯槽105の底部形状もフロート底部形状に沿ったテーパーを付加しており、液体排出弁109が閉じている時の液体の貯まる量が極力少なくなるような形状にしている。
【0018】
図2のように液体を注入する前の状態ではバルブピストン101とフロート102の質量で液体排出弁109は閉じた状態になっている。図3(a)のように液体を液体注入口から注入すると混入して流れてくる気体は液体貯槽105を経て上部の開口部から大気中に放出される。残った液体は導入水路108を通って一番低い位置にある液体排出弁109に流れ込み水位を上げていく。ある程度水位が上がるとフロート102の浮力がバルブピストン101とフロート102の質量に打ち勝って、液体排出弁109が開放され、液体は液体排出口103に流れ込む。液体排出口103の内径は、使用する液体が表面張力で液体排出口103内に隙間なく留まれる大きさに設定されているので、液体排出口103に元々ある空気を押し流し液体のみで満たされる。すなわち、図3(b)左のように液体排出口103の内径を大きく設定すると液体が
排出口内に留まれずに重力方向に流れてしまうが、図3(b)右のように液体排出口103内径を小さく設定することにより表面張力によって使用する液体が排出口内に留まり、液体排出口103に元々ある空気を押し流し液体のみで満たされる。液体を連続して注入すれば液体排出口103から流れ出る液体も途切れることなく流れ出る。
この液体排出口103に液体排出口103内径と同程度の内径のチューブを繋げば、途中に気体が留まることなく液体が流れてゆく。
【0019】
液体の注入が止んだり、気体の混入が多く液体の供給量が排出量よりも少なくなった場合が続くと、図4のように液体貯槽105内の液体の水位が下がり、フロート102とバルブピストン101も同時に下がる。下がり続けると液体排出弁109が閉じられるが、このとき液体貯槽105内にはまだ液体が残っているので液体排出弁103に空気が進入することはない。また、液体排出弁109が閉じられると、液体排出口103内の液体にかかる水圧がゼロになるので、液体排出口103以降の液体の流れが止まる。
【0020】
液体の注入が再開されたり、気体の混入の割合が減って液体の供給が再開されると、図3(a)のように再びフロート102の浮力によってバルブピストン101が持ち上げられ、液体排出弁109が開き液体排出口103に液体が流れる。この時液体排出弁109周辺は液体で満たされているので、空気の混入は無い。
【0021】
図1から図4の説明では、フロートがバルブピストンに直接取り付いて直動しているが、切り離して連動させてもかまわないし、また回転運動にしてもかまわない。
液体排出弁の形式、フロート、液体貯槽の形状も自由であり、液体の注入場所も上面・側面でも構わない。
【0022】
(第二の実施形態)
図5〜図7は図1〜図4の実施形態をベースに、さらに上部に気体排出口202を設けた蓋201とフロート102の上部で形成する気体排出弁203を加えたものである。この実施形態の平面図を図5(a)に、側面図を図5(b)に、図5(a)をB-B'で切った断面図を図6、図7にしめす。図では気体排出弁204の密閉性を高めるためのゴム製のバルブシール203がフロート102上部に貼り付けてある。
【0023】
図1〜図4の実施形態の説明では液体は大気圧によって排出されるが、液体排出口103の先に繋ぐチューブや装置等によっては圧力損出が大きい為に大気圧では排出できない場合がでてくる。その場合、図7のように液体貯槽105内の水位はさらに上昇しフロート102も上昇する。規定の水位に達するとフロート102の上部の気体排出弁204が閉じ、気体排出口202を塞ぎ液体貯槽105が密閉されて、液体の注入圧の一部が排出圧に加わり、十分な注入圧が液体に与えられていれば液体は装置から排出可能になる。
【0024】
(第三の実施形態)
図8は図1〜図4の実施形態をベースに、さらにフロート102にバネ301を加えたもので図2に相当する断面図である。
【0025】
バネ301は使用する液体の比重が小さい場合、フロート102の浮力を補う働きをする。
この時バネ301は圧縮バネである。またバネ301は使用する液体の粘性が高い時にバルブピストン101が自重で液体排出弁109を閉じられない場合これを助ける働きをする。この時バネ301は引っ張りバネである。
【0026】
図7は本発明の気泡除去装置701が旋光計702に使われる場合の装置の構成を示す図である。旋光計に送液される試料には測定の正確度・精度を良くするために気泡が混入ていない状態でかつ送液が連続的であることが望ましい。これは旋光計内のフローセルに気泡が
入るとビームが通らなかったり、乱反射することで気泡が抜け出るまで正確な測定が出来なくなるためである。このような場合、本発明の気泡除去装置を旋光計の全段に配することで測定の障害を取り除くことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の気泡除去装置の第一の実施形態を示す平面図および側面図である。
【図2】本発明の気泡除去装置の第一の実施形態の液体注入前の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の気泡除去装置の第一の実施形態の液体注入後、フロートが浮き上がり液体排出弁が開いた状態を示す断面図および液体排出口の内径と液体の流れ方の関係を示した図である。
【図4】本発明の気泡除去装置の第一の実施形態の液体注入後、液体の供給が停止され、液体排出口に液体が排出され、フロートが下がり、液体排出弁が閉じた状態を示す断面図である。
【図5】本発明の気泡除去装置の第二の実施形態を示す平面図および側面図である。
【図6】本発明の気泡除去装置の第二の実施形態の液体注入前の状態を示す断面図である。
【図7】本発明の気泡除去装置の第二の実施形態の液体注入後、フロートが最高位置まで浮き上がり気体排出弁が閉じた状態を示す断面図である。
【図8】本発明の気泡除去装置の第三の実施形態の液体注入前の状態を示す断面図である。
【図9】本発明の気泡除去装置が旋光計に使われる場合の装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
101 バルブピストン
102 フロート
103 液体排出口
104 シリンダ
105 液体貯槽
106 液体注入口
107 バルブシール
108 導入水路
109 液体排出弁
201 蓋
202 気体排出口
203 バルブシール
204 気体排出弁
301 バネ
401 気泡除去装置
402 旋光計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に含まれている気泡を除去する装置であって、弁を備え液体を排出する液体排出口と、液体をためる液体貯槽と、液体を注入する液体注入口と、前記弁を注入される液体の水位により開閉するフロートとを有し、前記液体排出口の内径を、前記液体排出口内に表面張力によって使用する液体で満たされる大きさにする気泡除去装置。
【請求項2】
前記液体貯槽に前記フロートの上下動により開閉する弁を備え気体を排出する気体排出口を設けた蓋を有することを特徴とする請求項1に記載の気泡除去装置。
【請求項3】
前記フロートにバネを有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の気泡除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−238045(P2008−238045A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81773(P2007−81773)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】